JP4526103B2 - X線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体の診断部位にX線を放射しその透過X線像を検出して断層像を再構成し画像として表示するX線CT装置に関し、特に連続的に回転するスキャナ回転部に電源からX線管側へ電力を供給する手段を備えたものにおいて、上記電力供給手段の保守点検を容易にすると共に信頼性を向上することができるX線CT装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線CT装置は、X線管から扇状のX線ビームを被検体に照射し、該被検体を透過したX線を前記X線管と対向する位置に配置したX線検出器で検出し、この検出したデータを画像処理して前記被検体の断層像を得るものである。
【0003】
前記X線検出器は、円弧状に配列された数百にも及ぶ検出素子群で構成され、被検体を挟んでX線管に対向して配置されており、検出器素子の数に対応した数の放射状に分布するX線通路を形成し、X線管と検出器が一体となって被検体の周りを少なくとも180度以上回転させて一定の角度ごとに被検体の透過X線を検出する。
【0004】
このX線CT装置において、近年、“短時間で広い範囲のスキャンが可能”、“体軸方向に連続したデータが得られ、これによって三次元画像の生成が可能になる”などの特徴により、ヘリカルスキャンやスパイラルスキャンと呼ばれるら旋CTが急激に普及した。
【0005】
このら旋CTは、撮影中に積極的に撮影位置を移動させることで広範囲から多層の撮影にかかる時間を大幅に短縮して、三次元のCT撮影を可能としたものである。
【0006】
このような特徴のあるら旋CTは、固定したスキャナ本体が連続回転スキャンを行うと同時に寝台を体軸方向に連続移動させることによって、X線管を被検体に対し相対的にら旋運動をさせる。このように、ら旋スキャンは撮影中、連続回転スキャンと並行して撮影位置も変えているため、全体の撮影時間が短縮される。また、撮影中に体軸方向にも連続走査しているため、三次元データを収集していることになる。
【0007】
このら旋スキャンを実現するためには、スキャナ回転盤を連続して回転させる必要があり、そのためにはスキャナ回転盤に搭載したX線管に連続して電力を供給するための手段が必要となる。この手段とし、スリップリングとブラシから成る電力供給機構が用いられ、前記スキャナ回転盤にX線管と共に該X線管に高電圧(以下、この電圧を管電圧と呼ぶことにする)を印加するための高電圧発生装置などを搭載し、この高電圧発生装置などに前記電力供給機構を介して前記X線管から所要のX線を発生するための電力を供給する。このように、高電圧発生装置はスキャナ回転盤に搭載されて高速に回転されるために、その重量はできるだけ軽い方が望ましい。このため、X線高電圧装置には、前記高電圧発生装置の高電圧変圧器を小型、軽量化でき、かつ管電圧の脈動を小さくできるインバータ式X線高電圧装置が用いられる。
【0008】
しかし、このようなスリップリングとブラシによる電力供給機構による従来のX線CT装置は、スリップリングとブラシの機械的摺接による電力供給方法であるので、前記スリップリングとブラシとの間に大電流が流れることによって、その接触部分に摩耗や腐食が生じるものであった。すなわち、上記スキャナ回転部に搭載されている高電圧変圧器は、出力側に百数十kVもの高電圧を発生させるもので、入力側との絶縁のために内部に十分な絶縁距離を設けてあり、このために数μH〜数十μHの漏れインダクタンスがある。また、上記スリップリングとブラシとを介して流れる電流は、最大で約400Aにもなる。このような状態で、上記スキャナ回転部が回転するときにスリップリングとスキャナ固定部に設けたブラシとの間に小さな隙間が生じると、上記漏れインダクタンスの影響で電流は流れ続けようとし、上記隙間にアークが発生して局所的に高温になることがある。そして、この高温によって上記スリップリングやブラシが摩耗したり腐食することがあるので、上記スリップリングの研磨やブラシの交換などの保守点検を定期的に行わなければならず、保守点検に多くの労力と費用とを要するものである。
【0009】
そこで,このような問題点に対処する方法として、電源からX線管側へ電力を機械的摺接によらない非接触で供給する電磁誘導作用を利用した方法が特開平7-204192号に開示されている。これは、スキャナ回転部に設けられ電源からX線管側へ電力を供給する手段として、上記インバータ式X線高電圧装置のインバータ回路の出力側に接続されると共にスキャナ回転部の固定枠の周上に第一の巻線を配置し、この第一の巻線に対向して上記スキャナ回転部の回転枠の周上に配置されると共に上記高電圧変圧器の入力側に接続された第二の巻線とを組み合わせて成る電磁誘導送電手段を設けたものである。
【0010】
また、X線検出器から画像処理装置へ検出信号を送る手段として発光素子と受光素子を組み合わせた光通信を利用した非接触伝送手段を用いたX線CT装置について特開平9-313473号に公開されている。
【0011】
これらにより、非接触でX線管に高電圧を供給し、X線検出信号を画像処理装置に伝送することができ、スリップリンク゛とブラシによる機械的摺接による前記電力送電手段及び信号伝送手段の摩耗や腐食を防止し、保守点検を容易にすると共に、装置全体の信頼性を向上することができる。
【0012】
【発明が解決しようとしている課題】
しかし、上記特開平7-204192号には、X線管のフィラメントを加熱するフィラメント加熱回路や、X線管の陽極を回転駆動するX線管の陽極回転駆動回路などの、X線発生に必要な前記高電圧発生回路以外の前記各種回路への電力供給については言及していない。
このため、前記各種回路への電力供給なしではX線CT装置として機能しないので、この各種回路への電力供給も大きな課題である。
この場合、前記各種回路への電力供給に従来と同じスリップリングとブラシの機械的摺接による電力送電方法を用いることが考えられるが、前記各種回路に必要な電力は高電圧発生回路よりも非常に小さいとは言え、数十アンペアの電流が流れるので、この方法でも摩耗や腐食の問題は残る。
【0013】
そこで本発明の目的は、高電圧発生回路だけでなく、該高電圧発生回路以外のX線管のフィラメント加熱回路やX線管の陽極回転駆動回路などのX線発生に必要な回路にも電磁誘導送電手段による非接触で電力を供給し、電源からX線管側へ電力を供給する電力供給手段の保守点検を容易にすると共に装置全体の信頼性を向上することができるX線CT装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の手段によって達成される。
【0015】
(1)X線を放射するX線管とこのX線管から放射されたX線が被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にこの検出信号を増幅するX線検出部を有し前記X線管とX線検出部とを対向させて被検体の周りに回転させるスキャナ回転部と、このスキャナ回転部のX線検出部からの出力信号を処理して診断部位の断層像を再構成する画像処理装置と、この画像処理装置からの出力信号を入力して断層像を表示する画像表示装置とを有するX線CT装置であって、直流電圧を発生する電源と、この電源からの直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、このインバータ回路の出力側に接続されると共に上記スキャナ回転部の固定枠の周上に配置された第一の巻線と上記スキャナ回転部の回転枠の周上に上記第一の巻線に対向して配置された第二の巻線とを組み合わせて成る電磁誘導送電手段と、この電磁誘導送電手段の第二の巻線の出力電圧を該第二の巻線と絶縁して複数種類の出力電圧を発生する絶縁変圧器とを有し、この絶縁変圧器の出力を上記X線管からのX線発生に必要なX線発生系手段に供給する。
【0016】
(2)前記(1)の電磁誘導送電手段は、その第一の巻線をスキャナ回転部の固定枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付け、第二の巻線をスキャナ回転部の回転枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付けて成り、前記第一の巻線で発生する磁束が前記各鉄心を介して第二の巻線に鎖交するようにした。
【0017】
(3)前記(1)のX線発生系手段は、直流の高電圧を発生しこれを前記X線管に印加する高電圧発生回路と前記X線管の陽極回転機構に該X線管の陽極を回転させる電力を供給する陽極回転駆動回路と前記X線管のフィラメントを加熱するフィラメント加熱回路などのX線発生に必要な回路と、これらの高電圧発生回路、陽極回転駆動回路、フィラメント加熱回路などを制御する回路の電源である制御電源回路から成り、前記絶縁トランスの出力電圧を前記各回路にそれぞれ絶縁して供給する。
また、上記目的は以下の手段によっても達成される。
【0018】
(4)X線を放射するX線管とこのX線管から放射されたX線が被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にこの検出信号を増幅するX線検出部を有し前記X線管とX線検出部とを対向させて被検体の周りに回転させるスキャナ回転部と、このスキャナ回転部のX線検出部からの出力信号を処理して診断部位の断層像を再構成する画像処理装置と、この画像処理装置からの出力信号を入力して断層像を表示する画像表示装置とを有するX線CT装置であって、直流電圧を発生する電源と、この電源からの直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、このインバータ回路の出力側に接続されると共に上記スキャナ回転部の固定枠の周上に配置された第一の巻線と前記スキャナ回転部の回転枠の周上に前記第一の巻線に対向して配置された複数の第二の巻線とを組み合わせて成る電磁誘導送電手段と、この電磁誘導送電手段の複数の第二の巻線の出力を前記X線管からのX線発生に必要なX線発生系手段に供給することを特徴とするX線CT装置。
【0019】
(5)前記(4)の電磁誘導送電手段は、その第一の巻線をスキャナ回転部の固定枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付け、複数の第二の巻線をスキャナ回転部の回転枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付けて成り、前記第一の巻線で発生する磁束が前記各鉄心を介して複数の第二の巻線に鎖交するようにした。
【0020】
(6)前記(4)のX線発生系手段は、直流の高電圧を発生しこれを前記X線管に印加する高電圧発生回路と前記X線管の陽極回転機構に該X線管の陽極を回転させる電力を供給する陽極回転駆動回路と前記X線管のフィラメントを加熱するフィラメント加熱回路などのX線発生に必要な回路と、これらの高電圧発生回路、陽極回転駆動回路、フィラメント加熱回路などを制御する回路の電源である制御電源回路から成り、前記複数の第二の巻線の出力を前記各回路にそれぞれ絶縁して供給する。
さらに、上記目的は以下の手段によっても達成される。
【0021】
(7)X線を放射するX線管とこのX線管から放射されたX線が被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にこの検出信号を増幅するX線検出部を有し前記X線管とX線検出部とを対向させて被検体の周りに回転させるスキャナ回転部と、このスキャナ回転部のX線検出部からの出力信号を処理して診断部位の断層像を再構成する画像処理装置と、この画像処理装置からの出力信号を入力して断層像を表示する画像表示装置とを有するX線CT装置であって、直流電圧を発生する電源と、この電源からの直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、このインバータ回路の出力側に接続されると共に前記スキャナ回転部の固定枠の周上に配置された第一の巻線と前記スキャナ回転部の回転枠の周上に前記第一の巻線に対向して配置された複数の第二の巻線とを組み合わせて成る電磁誘導送電手段と、この電磁誘導送電手段の複数の第二の巻線のうちの任意の巻線の出力電圧を入力すると共に該第二の巻線の残りの巻線と絶縁して複数種類の出力電圧を発生する絶縁変圧器とを有し、前記残りの第二の巻線の出力と前記絶縁変圧器の出力を前記X線管からのX線発生に必要なX線発生系手段に供給することを特徴とするX線CT装置。
【0022】
(8)前記(7)の電磁誘導送電手段は、その第一の巻線をスキャナ回転部の固定枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付け、複数の第二の巻線をスキャナ回転部の回転枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付けて成り、前記第一の巻線で発生する磁束が前記各鉄心を介して複数の第二の巻線に鎖交するようにした。
【0023】
(9)前記(7)のX線発生系手段は、直流の高電圧を発生しこれを前記X線管に印加する高電圧発生回路と前記X線管の陽極回転機構に該X線管の陽極を回転させる電力を供給する陽極回転駆動回路と前記X線管のフィラメントを加熱するフィラメント加熱回路などのX線発生に必要な回路と、これらの高電圧発生回路、陽極回転駆動回路、フィラメント加熱回路などを制御する回路の電源である制御電源回路から成り、前記残りの第二の巻線の出力と前記絶縁トランスの出力を前記各回路にそれぞれ絶縁して供給する。
【0024】
そして、上記(1)、(4)、(7)のいずれの手段でもX線発生系手段の各回路の直流電源部は共用することもできる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるX線CT装置の実施例を示す全体構成のブロック図である。
【0026】
このX線CT装置は、被検体の診断部位にX線を放射しその透過X線量分布を検出して断層像を再構成して画像として表示するもので、図1に示すように、電源1と、インバータ回路2と、絶縁トランス570と、高電圧発生回路520と、X線管560の陽極回転駆動回路510と、X線管560のフィラメント加熱回路530と、制御電源回路540と、X線検出部550と、画像処理装置9と、画像表示装置10とを有し、上記電源1からX線管560側へ電力を供給する手段としてスキャナ回転部5に電磁誘導送電手段4を備え、さらにX線検出部550から画像処理装置9へ検出信号を送る手段としてスキャナ回転部に設けた前記X線検出部550からの出力信号を光に変換する発光素子7cとスキャナ固定部に設けた光を電気信号に変換する受光素子8cとによる信号伝送手段とを備えて成る。
【0027】
上記電源1は、インバータ回路2に供給する直流電圧を発生するもので、図1においては商用の交流電源101と、この交流電源の電圧を所望の直流電圧に変換するコンバータ回路102と、このコンバータ回路の出力電圧を平滑するコンデンサ103とから成る。なお、この電源1の入力電源としての商用電源は、単相交流電源を例としてあげたが、これは三相交流電源でも良く、また、前記電源1は、直流電圧を発生するものであれば上記の構成に限らず、例えばバッテリであっても良い。
【0028】
インバータ回路2は、上記電源1から出力された直流電圧を高周波の交流に変換するもので、この変換された高周波交流電圧を共振コンデンサ3とこれと直列に接続される回路のインダクタンス(電磁誘導送電手段4、絶縁トランス570、高電圧変圧器524の漏れインダクタンスなどの回路系に存在するインダクタンス成分であるが、前記高電圧変圧器524の漏れインダクタンスがほとんどを占める)との共振作用によって生じる電力をX線管560などに供給する。
【0029】
電磁誘導送電手段4は、スキャナ固定部に設けた第一の巻線401とスキャナ回転部に設けた第二の巻線402などから成り、後述の機構による電磁誘導作用により前記インバータ回路2の出力を回転部5に搭載した絶縁トランス570に非接触で送電する。
【0030】
複数出力をもつ絶縁トランス570は、上記インバータ回路2から出力された交流電圧を、電磁誘導送電手段4を介して該絶縁トランス570の巻数比倍の電圧に変換し、この変換された電圧をそれぞれ高電圧発生回路520、X線管の陽極回転駆動回路510、フィラメント加熱回路530、制御電源回路540に入力する。
【0031】
高電圧発生回路520は、コンバータ回路521と、平滑コンデンサ522と、インバータ回路523と、高電圧変圧器524とから構成され、コンバータ回路521は、上記絶縁トランス570から出力された交流電圧を直流電圧に変換し、この変換された直流電圧を平滑コンデンサ522で平滑し、この平滑された直流電圧をインバータ回路523で高周波の交流に変換してこれを高電圧変圧器524で昇圧する。この昇圧した交流電圧を高電圧整流器525で直流の高電圧に変換してこれをX線管560に印加し、X線管560からX線を放射する。
【0032】
X線管の陽極回転駆動回路510は、X線放射時におけるX線管560の陽極ターゲットの負荷を軽減するために該X線管の陽極回転駆動機構の固定子コイル561に三相交流電圧を供給するための回路である。上記絶縁トランス570から出力された交流電圧をコンバータ回路511で直流に変換し、これを平滑コンデンサ512で平滑してこの電圧をインバータ回路513で設定した周波数の三相交流電圧に変換し、これを前記固定子コイル561に供給して、前記X線管560の陽極を所定の回転数で回転させる。
【0033】
フィラメント加熱回路530は、X線管の陽極と陰極間に電流(以下、この電流を管電流と呼ぶことにする)を流して所要のX線照射量を発生すためのX線管のフィラメントを加熱する回路で、上記絶縁トランス570から出力された交流電圧をコンバータ回路531で直流に変換し、これを平滑コンデンサ532で平滑してこの電圧をインバータ回路533で所定周波数の単相交流電圧に変換し、この電圧を加熱トランス535を介してX線管560のフィラメントに印加して該フィラメントを所定の温度に加熱する。
【0034】
制御電源回路540は、上記高電圧発生回路520、X線管の陽極回転駆動回路520、X線管のフィラメント加熱回路530のそれぞれの制御回路へ直流電源を供給する回路で、上記絶縁トランス570の出力電圧を整流回路541で直流電圧に変換する回路である。
【0035】
X線検出部550は、上記X線管560から放射され被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にその検出信号を増幅するもので、上記の透過X線量分布を検出する検出器551と、この検出器551からの検出信号を増幅するプリアンプ552とから成る。
画像処理装置9は、上記X線検出部550からの出力信号を入力して処理し、被検体6の診断部位の断層像を再構成するものである。
画像表示装置10は、上記画像処理装置9からの出力信号を入力して断層像を表示するもので、例えばテレビモニタから成る。
【0036】
このように、スキャナ回転部5には、上記高電圧発生回路520と、高電圧整流器525と、X線管560と、X線検出部550に加え、上記X線管の陽極回転駆動回路510と、X線管のフィラメント加熱回路510と、制御電源回路540とが搭載され、上記X線管6とX線検出部550とが被検体6を挟んで対向し上記被検体6の周りを回転するようになっている。
【0037】
スキャナ回転部5は、中心部に被検体挿入用の開口部が形成された回転枠を有し,この回転枠の一側面に、上記絶縁トランス570、高電圧発生回路520、高電圧整流器525、X線管の陽極回転駆動回路510、フィラメント加熱回路530、制御電源回路540、X線管560、X線検出部550を搭載し、前記回転枠の胴部の周りには検出信号伝送用の発光素子7cを(図1の7c)を設け、この発光素子に対向してスキャナの固定枠に受光素子8c(図1の8c)を設けて、これらによって被検体を透過したX線検出信号を画像処理装置9に伝送する。
【0038】
図2は上記電磁誘導送電手段4の具体的な構造である。同図(a)はスキャナの被検体挿入用開口部51と固定枠55と回転枠52との位置関係を示す断面図、(b)は図2(a)の破線で囲んで示した電磁誘導送電手段4の部分を拡大した斜視図である。
【0039】
先ず、スキャナ回転枠52は、固定枠55の内側にて軸方向に所定距離だけ離して設けた軸受406a,406bによって回転可能に取り付けられている。固定枠55の内側面と回転枠52の外周面にはそれぞれ対向して第一の鉄心404と第二の鉄心405が配置されている。各々の鉄心は一体でも良いが、複数に分割されていても良い。また、一方の鉄心が一体で、他方の鉄心が分割されているという組み合わせでも良い。第一の鉄心404に設けた溝には、インバータ回路2の出力側に接続された第一の巻線401が嵌め込み固定され、第二の鉄心405に設けた溝には、絶縁トランス570の入力側に接続された第二の巻線402が嵌め込み固定される。電磁誘導送電手段4を上記のように構成することにより、図1に示すインバータ回路2から供給された交流電流が第一の巻線401に流れると、図2(b)に示すように、対向する第一の巻線401及び第二の巻線402,及び対向する円形で断面がコの字形の第一の鉄心404と、同じく円形で断面がコの字形の第二の鉄心405とで構成された外鉄形の変圧器に磁気回路が形成され磁束φが発生する。すると、磁束φに鎖交している第二の巻線402に電圧が誘起され、この第二の巻線402から図1に示す絶縁トランス570に交流電圧を供給することができる。このようにして、X線管560の管電圧を発生する高電圧発生回路520と高電圧整流回路525に加えて、X線を発生するに必要なX線管の陽極回転駆動回路510、X線管のフィラメント加熱回路530、前記回路を制御する回路の電源である制御電源回路540にも非接触で電力を供給することができるようになる。
【0040】
図3に本発明の要部である電磁誘導送電手段及びこの電磁誘導伝送手段からスキャナ回転部に搭載する各種回路に電源を供給する第二の実施例を示す。
【0041】
この実施例における電磁誘導送電手段4は、第一の実施例と同じ原理に従うものであるが、スキャナ固定部に設けた第一の巻線401に対向してスキャナ回転部に複数の第二の巻線402a〜402dを設け、第二の巻線402aは高電圧発生回路520の入力側に、第二の巻線402bはX線管の陽極回転駆動回路510の入力側に、第二の巻線402cはフィラメント加熱回路530の入力側に、第二の巻線402dは制御電源回路540の入力側に接続して、前記第二の巻線402a〜402dに誘起される電圧をX線発生に必要な各種回路に供給するものである。
【0042】
図4に上記第二の実施例における電磁誘導送電手段4の具体的な構造を示す。
同図(a)はスキャナの被検体挿入用開口部51と固定枠55と回転枠52との位置関係を示す断面図、(b)は図4(a)の破線で囲んで示した電磁誘導送電手段4の部分を拡大した斜視図である。
【0043】
先ず、回転枠52は、固定枠55の内側にて軸方向に所定距離だけ離して設けた軸受406a,406bによって回転可能に取り付けられている。固定枠55の内側面と回転枠52の外周面にはそれぞれ対向して第一の鉄心404と第二の鉄心405が配置されている。各々の鉄心は一体でも良いが、複数に分割されていても良い。また、一方の鉄心が一体で、他方の鉄心が分割されているという組み合わせでも良い。第一の鉄心404に設けた溝には、図1に示すインバータ回路2の出力側に接続された第一の巻線401が嵌め込み固定され、第二の鉄心405に設けた溝には、第二の巻線402a〜402dが嵌め込み固定される。
【0044】
電磁誘導手段4を上記のように構成することにより、インバータ回路2からの高周波の交流電流が第一の巻線401に流れると、図4(b)に示すように、対向する第一の巻線及び第二の巻線402a〜403d、及び対向する円形で断面がコの字形の第一の鉄心404と同じく円形で断面がコの字形の第二の鉄心405とで構成された外鉄形の変圧器に磁気回路が形成され磁束φが発生する。すると、磁束φに鎖交している第二の巻線402a〜402dに電圧が誘起され、この第二の巻線402a〜403dから図3に示す高電圧発生回路520、陽極駆動回路510、加熱回路530、制御電源回路540に交流電圧を供給することができる。
【0045】
この第二の実施例では、絶縁トランスが不要となるので、スキャナ回転部に搭載する回路を小型、軽量にすることができる。
【0046】
図5に本発明の要部である電磁誘導送電手段及びこの電磁誘導伝送手段からスキャナ回転部に搭載する各種回路に電源を供給する第三の実施例を示す。
【0047】
この実施例による電磁誘導送電手段4は、第一、第二の実施例と同じ原理に従うものであるが、少なくとも二つの第二の巻線402が第一の巻線401に対向している。第二の巻線402aは絶縁トランス571の入力側に接続してこの絶縁トランス571の出力をそれぞれフィラメント加熱回路530と制御電源回路540に供給し、第二の巻線402bはX線管の陽極回転駆動回路510の入力側に、第二の巻線402cは高電圧発生回路520の入力側に接続する。
【0048】
この実施例では、第一の実施例で示した絶縁トランス570を小形にできるという特徴がある。なお、絶縁トランス571の出力は、加熱回路530の入力側と制御電源回路540の入力側に接続しているが、高電圧発生回路520の入力側やあるいは陽極駆動回路510の入力側でも良く、絶縁トランス571の出力端子数,電磁誘導送電手段4の出力端子数もこれに限るものではない。
【0049】
図6に本発明の要部である電磁誘導送電手段及びこの電磁誘導伝送手段からスキャナ回転部に搭載する各種回路に電源を供給する第四の実施例を示す。
【0050】
この実施例は、上記の高電圧発生回路520とX線管の陽極回転駆動回路510の直流電源部を共用にして該高電圧発生回路と陽極回転駆動回路を一体にしたものである。図6の高電圧発生&陽極回転駆動回路580はこれを示し、これによって第一、第二、第三の実施例に比べて電磁誘導送電手段から出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路を1回路ぶんだけ少なくなり、小形にできるという特徴がある。さらにこの実施例は、第一の実施例と同様、電磁誘導送電手段4の出力側に絶縁トランス572のみが接続されている構成であるが、第一の実施例に比べて前記絶縁トランスの出力巻線が1回路ぶん少なくて済むので、該絶縁トランスも小形できる。また、この実施例では、高電圧発生回路520と陽極駆動回路510の少なくとも二つの回路を一体化しているが、その他の加熱回路530、制御電源回路540も含み全て一体化、また別の組み合せで一体化しても良い。また、この実施例では、第一の実施例と同様に、電磁誘導送電手段4の出力側に絶縁トランス572のみが接続されている構成であるが、第二の実施例のように絶縁トランスを用いない構成としても良く、第三の実施例のように絶縁トランスを一部の回路の入力側に設けても良い。
【0051】
なお、以上に示した実施例では、スキャナ回転部5に搭載される装置群の小形化をメリットとしている。小形化されることにより、スキャナ回転部5はより大きな遠心力に耐えることができるので、より速いスピードで回転できる。これにより、“短時間で広い範囲のスキャンが可能”、“体軸方向に連続したデータが得られ、これによって三次元画像の生成が可能になる”などのら旋CTスキャン対応のX線CT装置に好適なものとなる。
また、上記実施例においては、鉄心の形状としてコの字形としたが、第一の巻線401aで発生した磁束が、第一の鉄心404及び第二の鉄心405を介して第二の巻線402bに鎖交するようにすれば、上記形状にかかわらず、他の形状にすることも可能である。
【0052】
以上のように本発明の主旨は、高電圧発生回路だけでなく、フィラメント加熱回路やX線管の陽極回転駆動回路などのX線発生に必要な前記高電圧発生回路以外の回路にも電磁誘導送電手段によって電力を供給することを可能にするものであれば、上記の実施例に限らずにどのような実施形態でも良い。
【0053】
【発明の効果】
以上に説明したように、高電圧発生回路だけでなく、フィラメント加熱回路やX線管の陽極回転駆動回路などのX線発生に必要な前記高電圧発生回路以外の回路にも電磁誘導送電手段によって電力を供給するようにしたので、X線発生系への電力供給手段の保守点検が容易になり、かつ信頼性が向上するX線CT装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるX線CT装置の第一の実施例を示す全体構成のブロック図。
【図2】図1の本発明による第一の実施例の電磁誘導送電手段の具体的構造図。
【図3】本発明の要部である電磁誘導送電手段及びこの電磁誘導伝送手段からスキャナ回転部に搭載する各種回路に電源を供給する第二の実施例図。
【図4】図3の本発明による第二の実施例の電磁誘導送電手段の具体的構造図。
【図5】本発明の要部である電磁誘導送電手段及びこの電磁誘導伝送手段からスキャナ回転部に搭載する各種回路に電源を供給する第三の実施例図。
【図6】本発明の要部である電磁誘導送電手段及びこの電磁誘導伝送手段からスキャナ回転部に搭載する各種回路に電源を供給する第四の実施例図。
【符号の説明】
1…電源、2…インバータ回路、4…電磁誘導送電手段、5…スキャナ回転部、6…被検体、7c…発光素子、8c…受光素子、52…スキャナ回転枠、55…スキャナ固定枠、101…商用交流電源、401…電磁誘導送電手段4の第一の巻線、402…電磁誘導送電手段4の第二の巻線、404…電磁誘導送電手段4の第一の鉄心、405…電磁誘導送電手段4の第二の鉄心、406a,406b…軸受、510…X線管の陽極回転駆動回路、524…高電圧変圧器、570,571,572…絶縁トランス、530…フィラメント加熱回路、540…制御電源回路、550…X線検出部、560…X線管、561…X線管の陽極回転機構の固定子コイル
Claims (6)
- X線を放射するX線管とこのX線管から放射されたX線が被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にこの検出信号を増幅するX線検出部を有し前記X線管とX線検出部とを対向させて被検体の周りに回転させるスキャナ回転部と、このスキャナ回転部のX線検出部からの出力信号を処理して診断部位の断層像を再構成する画像処理装置と、この画像処理装置からの出力信号を入力して断層像を表示する画像表示装置とを有するX線CT装置であって、直流電圧を発生する電源と、この電源からの直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、このインバータ回路の出力側に接続されると共に上記スキャナ回転部の固定枠の周上に配置された第一の巻線と前記スキャナ回転部の回転枠の周上に前記第一の巻線に対向して配置された複数の第二の巻線とを組み合わせて成り、複数種類の出力電圧を発生する電磁誘導送電手段と、該複数種類の出力電圧を前記X線管からのX線発生に必要なX線発生系手段に供給することを特徴とするX線CT装置。
- 前記電磁誘導送電手段は、その第一の巻線をスキャナ回転部の固定枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付け、複数の第二の巻線をスキャナ回転部の回転枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付けて成り、前記第一の巻線で発生する磁束が前記各鉄心を介して複数の第二の巻線に鎖交するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
- 前記X線発生系手段は、直流の高電圧を発生しこれを前記X線管に印加する高電圧発生回路と前記X線管の陽極回転機構に該X線管の陽極を回転させる電力を供給する陽極回転駆動回路と前記X線管のフィラメントを加熱するフィラメント加熱回路などのX線発生に必要な回路と、これらの高電圧発生回路、陽極回転駆動回路、フィラメント加熱回路などを制御する回路の電源である制御電源回路から成り、前記複数の第二の巻線の出力を前記各回路にそれぞれ絶縁して供給することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
- X線を放射するX線管とこのX線管から放射されたX線が被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にこの検出信号を増幅するX線検出部を有し前記X線管とX線検出部とを対向させて被検体の周りに回転させるスキャナ回転部と、このスキャナ回転部のX線検出部からの出力信号を処理して診断部位の断層像を再構成する画像処理装置と、この画像処理装置からの出力信号を入力して断層像を表示する画像表示装置とを有するX線CT装置であって、直流電圧を発生する電源と、この電源からの直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、このインバータ回路の出力側に接続されると共に前記スキャナ回転部の固定枠の周上に配置された第一の巻線と前記スキャナ回転部の回転枠の周上に前記第一の巻線に対向して配置された複数の第二の巻線とを組み合わせて成り、複数種類の出力電圧を発生する電磁誘導送電手段と、この電磁誘導送電手段の複数の第二の巻線のうちの任意の巻線の出力電圧を入力すると共に前記任意の巻線と絶縁して複数種類の出力電圧を発生する絶縁変圧器とを有し、前記任意の巻線とは異なる残りの第二の巻線の出力と前記絶縁変圧器の出力を前記X線管からのX線発生に必要なX線発生系手段に供給することを特徴とするX線CT装置。
- 前記電磁誘導送電手段は、その第一の巻線をスキャナ回転部の固定枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付け、複数の第二の巻線をスキャナ回転部の回転枠の周上に配置されたリング状の鉄心に巻き付けて成り、前記第一の巻線で発生する磁束が前記各鉄心を介して複数の第二の巻線に鎖交するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
- 前記X線発生系手段は、直流の高電圧を発生しこれを前記X線管に印加する高電圧発生回路と前記X線管の陽極回転機構に該X線管の陽極を回転させる電力を供給する陽極回転駆動回路と前記X線管のフィラメントを加熱するフィラメント加熱回路などのX線発生に必要な回路と、これらの高電圧発生回路、陽極回転駆動回路、フィラメント加熱回路などを制御する回路の電源である制御電源回路から成り、前記残りの第二の巻線の出力と前記絶縁変圧器の出力を前記各回路にそれぞれ絶縁して供給することを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
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