(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスピーカ装置を示す図である。図1(a)は、スピーカ装置の上部に配置されるスピーカユニットの一部を切り欠いて内部構造が見えるようにした上面図である。図1(b)は図1(a)に示す線A−Bに沿って見た断面図である。図1において、スピーカ装置は、スピーカユニット1、キャビネット9、活性炭10、および突起部11を備えている。なお、第1の実施形態では、動電型のスピーカを例として説明する。
スピーカユニット1は、ヨーク2、マグネット3、プレート4、ボイスコイル5、振動板6、フレーム7、およびガスケット8を備えている。ヨーク2は、底面が円形で上面が開口した箱状の形状を有している。マグネット3は、ヨーク2の底面の上側に固着される。プレート4は、マグネット3の上側に固着される。ここでは、マグネット3およびプレート4は底面が円形の円柱形状である。一方、フレーム7は、底面が円形で上面が開口した箱状の形状を有している。フレーム7の底面の中央にはヨーク2の底面と同じ大きさの取り付け孔が形成され、ヨーク2は、当該取り付け孔にはめ込んで固着される。ガスケット8は、フレーム7の上面の外周部に固着される。振動板6は、フレーム7とガスケット8との間に固着される。ボイスコイル5は、ヨーク2とプレート4との間に形成される磁気ギャップ中に配置されるように振動板6に固着される。また、フレーム7の底面は、複数の音孔12が形成される。スピーカユニット1は、全体としては円柱形状の外形形状を有している。
また、キャビネット9は、底面が円形で上面が開口した箱状の形状を有している。スピーカユニット1は、キャビネット9の開口部を覆うようにキャビネット9の内周面にその外周面が固着される。キャビネット9の深さはスピーカユニット1の高さよりも大きいので、キャビネット9の内側にはスピーカユニット1の下側に空室13が形成される。この空室13は、音孔12を介してスピーカユニット1の内部空間と接続される。また、活性炭10は空室13内に配置される。図1では、活性炭10は円柱形状に作成される。なお、第1の実施形態においては、活性炭10は、繊維状(フェルト状を含む)の活性炭(繊維状活性炭)が複数枚積層されることによって構成される。他の実施形態においては、活性炭10は1枚の繊維状活性炭により構成されてもよい。突起部11は、キャビネット9の下側の内周面に複数形成される。活性炭10は、この突起部11によって圧着されることによって保持される。複数の突起部11によって活性炭10が保持されるので、活性炭10の側面には空室14が形成されることとなる。なお、第1の実施形態においては突起部11は三角形状とするが、突起部11の形状は、活性炭10の側面に空室14を形成することができればどのような形状であってもよい。
以上のように構成されたスピーカ装置の動作を説明する。磁気回路を構成するヨーク2、マグネット3、プレート4およびボイスコイル5が駆動力発生手段として機能し、ボイスコイル5に音響信号を印加するとボイスコイル5に駆動力が発生する。その結果、ボイスコイル5に固着された振動板6が振動することによって振動板6から音が放射される。なお、動電型スピーカであるスピーカユニット1の動作は周知であるのでここでは詳細な説明を省略する。
振動板6の背面で発生した音(音圧)は、音孔12を通って空室13に伝達される。このとき、この音によって空室13の圧力が変動するが、空室13の内部には活性炭10が配置されているため、活性炭10の気体吸着の作用によって空室13内の圧力変動は抑えられる。したがって、キャビネット9の容積を拡大することと同等の効果を得られるので、低音の再生限界を拡大することができる。
ここで、キャビネット9の内周面に突起部11が形成されておらず、キャビネットの内周面と活性炭10の外周面とが全面において接触することによって活性炭10が保持される場合を考える。この場合、活性炭10はその上面のみで空室13と接触することとなる。したがって、振動板6の背面で発生した音は、空室13から活性炭10の上面を通って活性炭10の下側部分に伝達していく。このとき、音が活性炭10の内部を通って伝達するので、活性炭の音の制動効果により、音が空気中を伝達する場合に比べて音圧が低下してしまう。したがって、キャビネット9に突起部11が形成されていない場合には、再生される音の音圧レベルが低下してしまうおそれがあった。
これに対して、第1の実施形態では、キャビネット9に突起部11を設けることによって、空室13と接続されている空室14が活性炭10の側面に形成されている。このとき、活性炭10は、その上面および側面で空間(空室13および空室14)と接触することになる。したがって、振動板6の背面で発生した音は、空室13から活性炭10の上面を通って活性炭10の下側部分に伝達していく他、空室13から活性炭10の側面の空室14を通って活性炭10の下側部分に伝達していく。空室14を通って伝達する音については活性炭10の内部を通る場合に比べて音響損失が少ないので、空室14を設けることによって、活性炭10の内部における音響損失を減少することができる。以上より、第1の実施形態によれば、キャビネット9の内周面に突起部11が形成されていない場合に比べて、音圧レベルの低下を抑制することができる。
なお、第1の実施形態では、活性炭10として繊維状活性炭を用いたが、活性炭は粒状(紛状)のものを用いてもよいし、粒状のものを樹脂等のバインダで固めてブロック状としたものを用いてもよい。ただし、繊維状活性炭は、粒状の活性炭等に比べて気体を吸着するミクロ孔が外部との接触面により近い位置に形成されるので、低音の再生限界を拡大する効果が大きいと考えられる。また、粒状の活性炭を用いる場合には、粒状の活性炭の集合をある程度一定の形に保つための保持部材が必要となる。すなわち、活性炭10に代えて、粒状の活性炭とその内部に粒状の活性炭を保持する保持部材とを用いてもよい。保持部材とは、例えば、粒状の活性炭をその内部に保持する袋である。スピーカユニット1で発生した音は袋を介して袋の内部にも伝達するので、袋は内部に活性炭を密閉してもよい。なお、粒状の活性炭および保持部材を用いる場合には、振動等によって保持部材が変形するおそれがあるが、保持部材が変形しても突起部11の高さを大きくすることによって空室14を維持することができる。
なお、紛状の活性炭を固めてブロック状とした活性炭を用いる場合には、図2に示すように、活性炭に孔が形成されていてもよい。図2は、他の実施形態において用いられる活性炭を示す図である。図2に示すように、ブロック状の活性炭15には複数の孔16が形成される。各孔16は、それぞれ略同方向を向くように管状に形成される。この活性炭15は、キャビネット9の内部において、スピーカユニット1で発生した音の進行方向(図2に示す矢印参照)と孔16の向きとが一致する向きに配置されることが好ましい。換言すれば、活性炭15における孔16が形成された面と対向する位置にスピーカユニット1が配置されることが好ましい。このとき、孔16は、スピーカユニット1に対向する面から、スピーカユニット1から遠ざかる方向へ延びるように形成されることとなる。図1を例にとって具体的に説明すると、図2に示す活性炭15の上面がスピーカユニット1の方向を向き、活性炭15の下面がキャビネット9の底面に接するように活性炭15を配置する。活性炭15を配置する向きは、スピーカユニット1との位置関係によって決まり、例えば、後述する第2の実施形態におけるスピーカ装置(図4参照)では、孔の向きが横方向(振動板34と略平行な方向)になるように活性炭を配置することが好ましい。これによって、スピーカユニット1で発生した音は、活性炭15に遮られることなく、スピーカユニット1から遠い活性炭15の部分まで伝達する。そのため、スピーカユニット1に近い部分の活性炭15だけでなく、遠い部分においても気体吸着効果を十分に得ることができる。したがって、孔が形成されていない場合に比べて低音の再生限界を拡大する効果が大きくなる。
また、上記ブロック状の活性炭を用いる場合には、活性炭に突起部を形成し、当該突起部がキャビネットと接するようにキャビネット内に活性炭を配置するようにしてもよい。つまり、活性炭を支持するための突起部材は、活性炭自身によって構成されても構わない。これによっても、活性炭とキャビネットとの間に空室を形成することができるので、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上のように、第1の実施形態によれば、空隙を設ける等、活性炭10の形状を複雑な形状に形成しなくとも、活性炭とその周囲の空間との接触面積を多くすることができる。したがって、活性炭の吸着効果を効率よく活用することができるとともに、音圧レベルの低下を抑制することができる。また、活性炭を複雑な形状に成形する必要がないので、小型のスピーカ装置であっても製造が容易になる。
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態におけるスピーカ装置を示す図である。図3(a)は、スピーカ装置の上面の一部を切り欠いて内部構造が見えるようにした平面図である。図3(b)は図3(a)の線C−Dに沿って見た断面図であり、図3(c)は図1(a)の線E−Fに沿って見た断面図である。図3において、スピーカ装置は、スピーカユニット20、フレーム24、活性炭25、および突起部26を備えている。なお、第2の実施形態では、圧電型のスピーカを例として説明する。
スピーカユニット20は、圧電方式のスピーカであり、圧電素子21および23と、中間電極22とを備えている。フレーム24は内部に空室27を有しており、上面の一部に孔が形成されている。中間電極22は、この孔を塞ぐようにその外周がフレーム24に固着される。圧電素子21は中間電極22の一方の面に貼り付けられ、圧電素子23は中間電極22の一方の面に貼り付けられる。一方、活性炭25はフレーム24の内部の空室27に配置される。活性炭25はスピーカユニット20の直下空間の外側に配置される。なお、第2の実施形態においては、活性炭25は上面および下面の面積が他の面よりも大きい板状の形状である。突起部26は活性炭25の直上空間に複数配置され、各突起部26はフレーム24の内側上面に固着される。活性炭25は、この突起部26とフレーム24の底面とによって圧着されることによって支持される。また、突起部26は、細長い直方体形状であり、各突起部26の間に空間28が形成されるように配置される。したがって、活性炭25の上面とフレーム24の内側上面との間には空間28が形成される。また、図3においては、活性炭25が配置される部分のフレーム24の厚さは、配置されない部分の厚さに比べて厚くなっている。
以上のように構成されたスピーカ装置の動作を説明する。圧電方式のスピーカユニット20では、中間電極22の両面に貼り付けられた圧電素子21および23に電圧が印加されると、圧電素子21および23が伸縮または屈曲することによって中間電極22が振動して、音が発生する。なお、圧電型スピーカであるスピーカユニット20の動作は周知であるのでここでは詳細な説明を省略する。
スピーカユニット20の背面で発生した音はフレーム24の空室27に放射される。このとき、この音によって空室13の圧力が変動するが、空室27の内部には活性炭25が配置されているため、活性炭25の気体吸着の作用によって空室27内の圧力変動は抑えられる。したがって、フレームの内部空間の容積を拡大することと同等の効果を得られるので、低音の再生限界を拡大することができる。
また、活性炭25の上面とフレーム24の内側上面との間には突起部26によって複数個の空間28が確保されているので、スピーカユニット20の背面から放射された音は、空間28を通って活性炭25の広い上面から内部に伝達される。したがって、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様、音が活性炭25の内部を伝達することによる音響損失を減少して、スピーカ装置の再生音圧を向上することができる。
なお、第2の実施形態においては、活性炭25の上面側のみを突起部26によって支持するようにしたが、他の面についても突起部によって支持するようにしてもよい。図4は、第2の実施形態の変形例に係るスピーカ装置を示す図である。なお、図4は、図3(b)と同じ向きから見たスピーカ装置の断面図であり、図3と同じ構成要素には同じ参照符号を付している。
図4においては、フレーム24の内側上面に加えて内側下面にも突起部26が固着されている。したがって、活性炭25は、上面および下面の両側で突起部26によって支持されている。これによって、活性炭25の両側に空間28が形成されるので、活性炭25と外部空間との接触面積は約2倍となり、活性炭における音響損失の影響をさらに低減することが期待される。
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係るスピーカ装置を示す図である。図5(a)は、スピーカ装置の上面の一部を切り欠いて内部構造が見えるようにした平面図である。図5(b)は、図5(a)の線K−Lに沿って見た断面図である。図5において、スピーカ装置は、アクチュエータ30、キャビネット31、サスペンション32、内枠33、振動板34、活性炭35、仕切板36、および突起部37を備えている。第3の実施形態においては、音を発生するスピーカユニットは、アクチュエータ30および振動板34によって構成される。
キャビネット31は、上面が開口した箱状の形状である。内枠33は、その外周がキャビネット31の内周と一致する環状の形状であり、その外周面がキャビネット31の内周面に固着される。サスペンション32は内枠33の上面に固着される。振動板34は、サスペンション32の上面に固着される。振動板34は、キャビネット31の開口部と同じ大きさであり、当該開口部を覆うように配置される。一方、仕切板36は、キャビネット31の開口部と同じ大きさであり、内枠33の下面およびキャビネット31の内周面に固着される。仕切板36には複数の音孔39および、アクチュエータ30の外周よりも大きな取り付け孔が形成されている。また、アクチュエータ30の上面と振動板34の下面とは固着される。
また、キャビネット31の底面内側には複数の円柱状の突起部37が形成される。活性炭35は、下面の突起部37と上面の仕切板36とによって狭持される。図5では、活性炭35は、アクチュエータ30の底面よりも大きな孔を有する直方体形状であり、当該孔の位置にアクチュエータ30が位置するように配置される。以上のように、活性炭35は、音孔39を介して仕切板36の上方の空室38とその上面において接しており、仕切板36の下方の空室40とその側面および下面において接している。
以上のように構成されたスピーカ装置の動作を説明する。第3の実施形態においては、アクチュエータ30およびそれに接続される振動板34によって音が発生する。すなわち、音響信号がアクチュエータ30に印加されると、アクチュエータ30は音響信号に応じた振動を振動板34に伝達する。伝達された振動によって、振動板34は音を発生する。
振動板34の背面で発生した音およびアクチュエータ30から直接発生した音は、空室38および40に放射される。このとき、この音によって空室38および40の圧力が変動するが、空室38および40に活性炭35が配置されているため、活性炭35の気体吸着の作用によって空室38および40内の圧力変動は抑えられる。したがって、キャビネット31の内部空間の容積を拡大することと同等の効果を得られるので、低音の再生限界を拡大することができる。
また、活性炭35の上面には空室38が確保され、下面には空室40が確保されているので、振動板34の背面で発生した音およびアクチュエータ30から直接発生した音は、空室38および40を通って活性炭35に伝達される。したがって、第3の実施形態においても第1の実施形態と同様、音が活性炭35の内部を伝達することによる音響損失を減少して、スピーカ装置の再生音圧を向上することができる。
また、第3の実施形態では、スピーカ装置の上面全面が振動板34であるので、キャビネット31の内部に仕切板36を設けることによって、活性炭35を上から支持している。これによって、活性炭35が振動板34に接触して振動板34の動きを阻害することによって歪音が発生することを防止することができる。また、仕切板36に音孔39を形成することによって、活性炭35と空間との接触面積を大きくするようにしている。
なお、第3の実施形態に係るスピーカ装置は、例えば振動板34の全面にポスターを貼り付けたようなボードスピーカや、あるいは、薄型であることを生かして5.1チャンネルの壁掛けタイプのサラウンドスピーカ等に応用することができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明に係るスピーカ装置を機器に搭載した例を説明する。まず第4の実施形態においては、スピーカ装置を携帯端末装置に搭載した例を説明する。図6は、第4の実施形態に係る携帯端末装置の一例である携帯電話機を示す図である。ここで、図6(a)は内部構造をわかり易くするために携帯電話機の一部を切り欠いた正面図であり、図6(b)は携帯電話機の側面図であり、図6(c)は携帯電話機の背面図である。
図6において、携帯電話機は、上部ケース50、下部ケース51、アンテナ52、液晶画面53、ヒンジ部54、取付部55、仕切板56、活性炭57、スピーカユニット58、突起部59、およびキャビネット60を備えている。図6に示す携帯電話機は、本体が上部ケース50および下部ケース51からなる折りたたみ式である。上部ケース50と下部ケース51とはヒンジ部54によってヒンジ部54を中心に回転可能に接続される。ヒンジ部54は、取付部55によって上部ケース50に取り付けられている。上部ケース50には、その上部にアンテナ52が取り付けられ、正面の上側には液晶画面53が設けられる。スピーカ装置(活性炭57、スピーカユニット58、突起部59、およびキャビネット60)は、上部ケース50の内部であって液晶画面53の下側に配置される。以下、携帯電話機に内蔵されるスピーカ装置について説明する。
図7は、図6に示す携帯電話機に内蔵されるスピーカ装置の内部構成を説明するための図である。なお、図7においては、スピーカ装置の内部構成を見やすくする目的で、細長い直方体形状の突起部59が平行に配置されているものとして示しているが、実際には図6に示すように突起部59は放射状に配置されている。また、図7では上部ケース50のくぼみ63を省略している。
図6および図7において、キャビネット60は、内部に空間を有する形状であり、液晶画面53と取付部55との間に設けられる。キャビネット60は、支持部65によって上部ケース50に固着されている。仕切板56はキャビネット60内の空間を2分割して2つの空室を形成する。キャビネット60には、各空室に対応する2つのスピーカユニット58が取り付けられる。以上によって、スピーカユニット58の背面側(図7では上側)には空室62が形成される。複数の突起部59は、それぞれ放射状に配置されるようにキャビネット60下面に固着される。活性炭57は、突起部59とキャビネット60の上面とによって狭持される。なお、上部ケース50の背面側のくぼみ63には音孔64が形成される。音孔64は、スピーカユニット58に対向する位置に配置される。また、図6に示すように、キャビネット60には細孔61が形成される。細孔61は、直径がφ0.5mm程度の非常に小さな貫通孔である。
以上のように構成された携帯電話機の動作を説明する。アンテナ52から受信信号が受け取られると、図示しない信号処理部で処理された電気信号が左右のスピーカユニット58に入力されて、例えば受信呼出し用のメロディ音が音孔64から再生される。また、第2の実施形態と同様に、活性炭57の下面とキャビネット60の内側下面との間には突起部59によって空室62が確保されている。したがって、第4の実施形態においても第2の実施形態と同様、音が活性炭57の内部を伝達することによる音響損失を減少して、スピーカ装置の再生音圧を向上することができる。
ここで、上部ケース50の液晶画面53と取付部55との間の空きスペースにキャビネット60を配置することによって、キャビネット60について最大限の容積を確保している。キャビネット60の形状は一般的な直方体ではなく異形状となっているが(図6参照)、キャビネット60に設けた突起部59によって異形状の活性炭35との間に通気路(空室62)を容易に確保することができる。また、活性炭と空間との接触面積を増加させるための微細な加工(図14参照)を活性炭57自体に施す必要がないので、携帯電話機に搭載するような小型のスピーカ装置であってもその製造が容易になる。
また、細孔61は、上述したように非常に小さい孔であるので音響インピーダンスが非常に大きく、スピーカ音の再生時には、この細孔61から再生音が抜けることはほとんどない。この細孔61は、温度上昇等によって空室62内の空気圧が上昇することによってスピーカユニット58の振動板に膨張圧が加わり、振動板が変形することを防止することを目的として形成される。例えば真夏の海のような高温の環境下に携帯電話機がある場合、携帯電話機の温度上昇にともないキャビネット60内の空室62の空気が熱膨張して空室62内の空気圧が上昇し、振動板を変形させてしまうことが考えられるが、細孔61を形成することによってこれを防止することができる。温度上昇にともなう空室62の空気圧上昇は、再生音の周波数成分に比べてほぼ直流的な変化である。したがって、温度上昇にともない空室62の空気圧上昇が変化する場合には細孔61は音響インピーダンスとして作用することなく、膨張にともなう空気圧は細孔61より排出される。なお、活性炭57は、携帯電話機の外部から細孔61を介して湿気や不要ガス、タバコの煙等を吸着するとその性能が劣化する。したがって、細孔61の出口は携帯電話機本体の内部に形成して、空室62と外気とを直接接続しないようにすることが好ましい。また、活性炭57が例えば繊維状の場合、繊維状活性炭の細かな破片が細孔61から携帯電話の内部に排出されることがある。この繊維状活性炭の破片は炭素であることから、電気回路に付着すると電気回路をショートさせる可能性がある。これを防ぐために、細孔61には、活性炭の破片が通過できない細かさの防塵ネットを設けることが好ましい。また、防塵ネットが防湿効果を持った材料であれば、細孔61を通じて外部の湿気が空室62の内部に侵入することを防止することができるので、活性炭57が湿気を吸着することによって空気の吸着効果が低下することを低減させることができる。
図8は、第4の実施形態に係る携帯電話機の音圧周波数特性を示す図である。なお、図8に示す音圧周波数特性おいては、スピーカユニット58は口径14mmの動電型方式、空室62の容積は1cc、突起部59の高さは0.5mm、活性炭57は繊維状活性炭で重量が23mg、スピーカユニットへの入力電力は0.2W、音孔64と測定マイクとの距離は0.1mとしている。また、図8において、曲線Aは、活性炭を配置しない場合の音圧周波数特性を示し、曲線Bは、突起部のないキャビネットに活性炭を挿入した場合の音圧周波数特性を示し、曲線Cは、キャビネットに突起部を設けて活性炭を配置した場合の音圧周波数特性を示す。
図8の曲線Aに示されるように、スピーカのキャビネット60内に活性炭を配置しない場合、キャビネット60が1ccと小容積のために低音の共振周波数が高く、1.3kHz付近で音圧の山が生じている。また、図8の曲線Bに示されるように、突起部なしでキャビネットに活性炭を挿入した場合、1kHz以下の音圧レベルが上昇して、活性炭によるキャビネットの等価容積拡大の効果が得られていることがわかる。しかし、1kHz〜2kHzの帯域では、活性炭による音響損失が大きいため、大幅に音圧レベルが低下して音圧特性の平坦性が損なわれている。これらに対して、図8の曲線Cに示されるように、キャビネットに突起部を設けて活性炭を配置した場合、空室と活性炭との接触面積が増加するので、曲線Bに対して1kHz〜2kHzの帯域で3dB近く音圧レベルが上昇し、1kHz以上の帯域において平坦な音圧周波数特性を実現されていることがわかる。以上のように、第4の実施形態によれば、コンパクトな本体であっても低音再生に優れた携帯電話機を実現することができる。
なお、第4の実施形態では、キャビネット60は上部ケース50内であって液晶画面53の下側に配置しているが、スピーカ装置の配置位置はどこでもよく、例えば、液晶画面53の上部、背面、あるいは下部ケース51内等、どの位置に配置されても問題はない。また、第4の実施形態では、キャビネット60内の2つの空室62は同形状としたが、配置条件により左右非対称な形状としてもよい。この場合、形状は非対称であっても容積が等しくなるように空室62を形成することが、2つのスピーカ装置で低音の再生限界が同じになるので好ましい。
また、第4の実施形態では、細孔61をキャビネット60の壁面に設けたが、細孔61にチューブ状の細管を接続することによって、携帯電話機の上部ケース内の任意の位置に細孔61の出口を配置することができる。したがって、上記細管を用いることによって、外気と接触のしにくい場所に細孔61の出口を容易に配置することができる。
また、第4の実施形態では、突起部59は角棒状であったが、図9に示されるように円柱状としても同様の効果が期待できる。なお、突起部59の形状は円錐状、角錐状等、どのような形状であってもよい。また、第4の実施形態では突起部59は活性炭57の片側のみに設けられたが、活性炭57の両側に突起部を設け、突起部によって活性炭57を両側から狭持するようにしてもよい。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態として、スピーカ装置を車両に搭載した例を説明する。図10は、車両用ドアの概観図である。まず図11は、図10の線G−Hに沿って見た車両用ドアの断面図である。図10および図11において、車両用ドアは、窓ガラス71、キャビネット72、スピーカユニット73、内壁74、インナーパネル75、アウターパネル76、音響管77、グリル78、活性炭79、突起部80および81、ならびに、仕切板82を備えている。
インナーパネル75は、内壁74とアウターパネル76との間に配置される。インナーパネル75にはスピーカユニット73と同じ大きさの孔が設けられており、スピーカユニット73は、当該孔にはめ込むようにインナーパネル75に取り付けられる。スピーカユニット73は、その前面が内壁74側を向くように配置される。インナーパネル75の孔の周囲には当該孔を覆うように音響管77が接続され、音響管77は、内壁に取り付けられたグリル78とスピーカユニット73の前面とによって空間を形成する。
一方、キャビネット72は、一面が開口した箱状の形状であり、開口部によってスピーカユニット73が囲まれるようにインナーパネル75に接続される。キャビネット72は、インナーパネル75とアウターパネル76との間の空間に配置される。また、キャビネット72には、細孔84が形成される。第1および第2突起部80および81は、円錐状の形状を有しており、キャビネット72の内部に形成される。具体的には、第1突起部80は、キャビネット72の内周側面に形成される。また、第2突起部81は、インナーパネル75の側面に形成される。活性炭79は、キャビネット72内部の空室83に配置され、第1突起部80と第2突起部81とによって狭持される。仕切板82は、キャビネット72の内部において活性炭79とスピーカユニット73との間でキャビネット72の内部空間を仕切るように配置される。仕切板82には、図示しない複数の孔が形成されている。
以上のように構成された車両用ドアに搭載されたスピーカ装置の動作を説明する。図示しない車室内のオーディオ装置(例えばCDプレーヤ)からの音楽信号がスピーカユニット73に印加されると、スピーカユニット73の前面からの音はグリル78から車室内に放射される。ここで、活性炭79の一方の側面とキャビネット72との間には第1突起部80によって空間が確保されている。また、活性炭79の他方の側面とインナーパネル75との間には第2突起部81によって空間が確保されている。したがって、第5の実施形態においても上記第1〜第4の実施形態と同様、音が活性炭79の内部を伝達することによる音響損失を減少して、スピーカ装置の再生音圧を向上することができる。
ここで、第5の実施形態では、第1および第2突起部80および81がスパイクとなり、活性炭79に突き刺さる程度に圧着している。これによって、車両の走行時に車体が振動した場合でも、活性炭79は各突起部80および81によって安定に保持される。また、空室83には複数個の音孔を有する仕切板82が設けられる。これによって、仮に、活性炭79が車両の振動によって各突起部80および81によって保持できなくなったとしても、落下する活性炭79を仕切板82によって受け止めることができる。つまり、仕切板82によって活性炭79がドアの下部方向に完全に落下することを防止できる。
また、細孔84は第4の実施形態と同様、空室83の温度上昇にともなう空気膨張を防止するものである。第5の実施形態においては、細孔84の出口はインナーパネル75とアウターパネル76との間の空間に設けられる。
以上のように、第5の実施形態によれば、限定された容積となる車室空間内に搭載されるスピーカ装置のキャビネット容積を大きくすることなく、豊かな低音再生が可能なスピーカシステムを実現することができる。
なお、第5の実施形態では、スピーカ装置(キャビネット72、スピーカユニット73、活性炭79、突起部80および81、仕切板82)は、インナーパネル75とアウターパネル76との間の空間に設けられたが、インナーパネル75と内壁74との間の空間に設けられてもよい。また、第5の実施形態では、スピーカ装置を車両用ドアに搭載する例を示したが、フロントパネルやリアトレイ、車体の天井部など、スピーカ装置を車両の様々な位置に搭載することができる。これらの場合、キャビネットの形状は車体の形状に沿った形状とする必要があるが、本発明によれば、省スペースでも豊かな低音を十分な音圧で再生することができる車載用のスピーカ装置を実現可能である。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態として、スピーカ装置を薄型テレビに搭載した例を説明する。図12は、第6の実施形態に係る薄型テレビの構成を示す図である。ここで、図12(a)は薄型テレビの正面外観図であり、図12(b)は図12(a)の線I−Jに沿って見た薄型テレビの断面の一部を示す図である。図12において、薄型テレビは、薄型テレビの筐体90、キャビネット91、スピーカユニット92、細孔93、活性炭94、および突起部95を備えている。
第6の実施形態に係る薄型テレビにおいては、スピーカ装置(キャビネット91、スピーカユニット92、細孔93、活性炭94、および突起部95)は、テレビ本体の下部に配置される。具体的には、キャビネット91はテレビの画面の下側に配置される。スピーカユニット92は、キャビネット91の開口部に取り付けられる。スピーカユニット92とキャビネット91とによって空室97が形成される。空室97内において、複数の突起部95はキャビネット91に接続される。活性炭94は突起部95によって支持される。図12(b)では、活性炭94はその上面、下面、および側面で突起部95によって支持されている。なお、キャビネット91には、細孔96が形成される。なお、薄型テレビには、左右2つのスピーカ装置が搭載される。2つのスピーカ装置の構成は同じである。
以上のように構成された薄型テレビに搭載されたスピーカ装置の動作を説明する。図示しない信号処理部からの音響信号が左右のスピーカユニット92に入力されることによってスピーカユニット92から音が再生される。ここで、活性炭94の上面、下面および側面とキャビネット91との間には突起部95によって空間が確保されている。したがって、第6の実施形態においても上記第1〜第5の実施形態と同様、音が活性炭94の内部を伝達することによる音響損失を減少して、スピーカ装置の再生音圧を向上することができる。また、キャビネット91に細孔96を形成することによって、第4の実施形態と同様、空室97の温度上昇にともなう空気膨張を防止することができる。
なお、薄型テレビについては更なる薄型化が要望されてきている一方、活性炭のような気体吸着部材を用いない場合には低音再生を行うためには大きなキャビネット容積が必要となり、薄型化を阻害する要因となっている。ここで、本発明によれば、気体吸着部材を用いることによってキャビネット容積を縮小することが可能となり、また、突起部で気体吸着部材を支持することによって音圧レベルの低下を防止することができるので、豊かな低音再生が可能な薄型テレビを実現することができる。なお、第6の実施形態では、キャビネット91は薄型テレビの画面の下側に配置されたが、画面の両側に配置することも可能である。
以上のように、第6の実施形態によれば、スピーカ装置の搭載機器が薄型テレビのようなオーディオ映像機器である場合でも、本発明を適用することができ、省スペースで低音再生が可能なオーディオ映像機器を実現することができる。特に、平面化が進む液晶やPDP等の平面テレビでは、スピーカキャビネットの占める容積がセットの薄型化、コンパクト化を阻害する要因となってきているので、本発明が特に有効である。
また、上記第1〜第6の実施形態においては、突起部は、キャビネットと一体的に形成されてもよいし、キャビネットに突起部11を接着することによって形成されてもよい。いずれにしても、活性炭を複雑な形状に加工することに比べて容易に作成することができる。
また、上記第2〜第6の実施形態においても第1の実施形態と同様、活性炭は、繊維状活性炭を用いる他、粒状の活性炭の集合および保持部材を用いてもよいし、粒状の活性炭の集合を固めてブロック状にしたものであってもよい。さらに、第2〜第6の実施形態においてブロック状の活性炭を用いる場合、スピーカユニットで発生した音の進行方向と孔の向きとが一致する向きに、活性炭に孔が形成されていてもよい。また、ブロック状の活性炭を用いる場合には、活性炭に突起部を形成し、当該突起部がキャビネットと接するようにキャビネット内に活性炭を配置するようにしてもよい。また、活性炭に代えて、その他の気体吸着材料、例えば、ゼオライト、シリカ(SiO2 )、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO3 )、マグネシア(MgO)、四三酸化鉄(Fe3O4)、モレキュラーシーブ、フラーレン、カーボンナノチューブ等を用いてもよい。
なお、上記第4〜第6の実施形態において、スピーカユニットは、動電型、圧電型、静電型、電磁型等、どのような駆動方式であってもよい。その他、スピーカユニットは第3の実施形態に係るスピーカ装置であってもよい。