以下、本発明に係る燃料電池車両の冷却システムについて実施の形態を挙げ、添付の図1〜図17を参照しながら説明する。本実施の形態に係る冷却システム200は燃料電池二輪車10に搭載されている。以下、本実施の形態に係る燃料電池二輪車10において左右に1つずつ設けられた機構については、左のものの番号符号に「L」を付し、右のものの番号符号に「R」を付すことにより区別して説明する。また、理解を容易にするため、図面においても左を示す矢印に「L」、右を示す矢印に「R」を付すとともに、前を示す矢印に「Fr」、後を示す矢印に「Rr」を付して図示する。
図1〜図5に示すように、本実施の形態に係る燃料電池二輪車としての燃料電池二輪車10は、燃料電池12を搭載しており該燃料電池12から得られる電力を用いて走行する二輪車である。燃料電池12は、アノード電極に供給される水素ガスとカソード電極に供給される反応ガス(空気)とを反応させることで電力を発生する。本実施の形態では、燃料電池12としては公知のものを採用しているので、ここでは詳細には説明しない。燃料電池二輪車10は、操舵輪である前輪14と、駆動輪である後輪16と、前輪14を操舵するハンドル18と、フレーム20と、シート22とを有する。シート22はタンデム式であり、運転者が着座する前方部22aと、同乗者が着座する後方部22bが一体的に形成されている。
また、燃料電池二輪車10は、効率的に発電を行うことができるように燃料電池12を冷却して適切な温度範囲に維持するための水冷式の冷却システム200(図12参照)を有する。
フレーム20は、前方部でフォーク式のフロントサスペンション23L、23Rを軸支するヘッドパイプ24と、前方部が該ヘッドパイプ24に接続されて車体後方に向かって後下がりに傾斜した一対の上部ダウンフレーム26L、26Rと、ヘッドパイプ24からほぼ真下に向かって延在する下部ダウンフレーム28L、28Rとを有する。上部ダウンフレーム26L、26Rは、略水平な中央上部フレーム30L、30R及び後下がりに傾斜した上部ピボットフレーム32L、32Rを介してピボット34に接続されている。上部ダウンフレーム26L、中央上部フレーム30L及び上部ピボットフレーム32Lと、上部ダウンフレーム26R、中央上部フレーム30R及び上部ピボットフレーム32Rは、それぞれ1本のパイプを屈曲して形成されている。
下部ダウンフレーム28L、28Rは、略水平な中央下部フレーム36L、36R及び滑らかに後上がりに傾斜した下部ピボットフレーム38L、38Rを介してピボット34に接続されている。下部ダウンフレーム28L、中央下部フレーム36L及び下部ピボットフレーム38Lと、下部ダウンフレーム28R、中央下部フレーム36R及び下部ピボットフレーム38Rは、それぞれ1本のパイプを屈曲して形成されている。
フレーム20は、さらに、下部ピボットフレーム38Lと下部ピボットフレーム38Rのそれぞれの略中央部を上に凸のアーチ状に接続する上アーチフレーム40と、ピボット34の左右両端部を接続し、やや下に凸のアーチ状に接続する下アーチフレーム41と、中央上部フレーム30L、30Rと上アーチフレーム40の上部とを接続する上部サブフレーム42L、42Rと、下部ダウンフレーム28L、28Rの中央よりやや下方部と下部ピボットフレーム38L、38Rとを接続するサイドフレーム44L、44Rと、下部ダウンフレーム28L、28Rの略中央部と上部ダウンフレーム26L、26Rの下端部とを接続する前部サブフレーム46L、46Rと、サイドフレーム44L、44Rと中央下部フレーム36L、36Rとを接続するサブフレーム48L、48Rと、中央下部フレーム36Lと36Rとを下方から接続する下面フレーム50とを有する。上アーチフレーム40は上部ピボットフレーム32L、32Rと交差するように接続され、側面視で後傾するように後斜め上方に延在している。下アーチフレーム41には、図示しないメインスタンド及びサイドスタンドが取り付けられる。
下面視(図4参照)で、下部ピボットフレーム38L、38Rの中間より前部は前方に向かって間隔が狭まるように設定されて中央下部フレーム36L、36Rと接続されている。下部ピボットフレーム38Lと38Rとの間の最大幅は、並行な中央下部フレーム36Lと36Rとの幅の略2倍幅である。
上面視(図3参照)で、中央上部フレーム30Lと30Rとの間隔は、中央下部フレーム36Lと36R(図4参照)との間隔とほぼ同じであって、運転者が跨ぐことのできる幅に設定されている。サイドフレーム44L及び44Rは、中央上部フレーム30L、30Rよりも外方に張り出している。サイドフレーム44Lと中央上部フレーム30Lとの間隔、及びサイドフレーム44Rと中央上部フレーム30Rとの間隔は、人の足幅よりも広く設定されており、運転者が足を置くステップ板(足着き部)51R、51Lが設けられる。該ステップ板51R、51Lは、フェアリング140(図1参照)と一体的に形成されている。
フレーム20は、さらに、上アーチフレーム40の上辺部から後方に向かって緩やかに後上がりに延在する一対の後方上部フレーム52L、52Rと、略中間高さ部から後方に向かって後上がりに延在する一対の後方下部フレーム54L、54Rとを有する。後方上部フレーム52L、52Rは略直線状に延在している。後方下部フレーム54L、54Rは、側面視(図1及び図2参照)で後方上部フレーム52L、52Rに対して略並行であって、下面視(図4参照)では後輪16よりも前の部分は下部ピボットフレーム38L、38Rと同幅の間隔であり、それよりも後方の部分は挟幅間隔に設定されている。幅の広い前方と狭い後方部は、緩やかに幅が変化するように接続されている。後方上部フレーム52Lと52Rとの間隔及び、後方下部フレーム54Lと54Rとの間隔は、それぞれ後輪16よりもやや広い幅の間隔に設定されている。後方上部フレーム52L、52Rと後方下部フレーム54L、54Rとは縦補助フレーム56L、56Rで接続されている。
このように構成されるフレーム20によれば、上部ダウンフレーム26L、26R、中央上部フレーム30L、30R、上部サブフレーム42L、42R、下部ダウンフレーム28L、28R、中央下部フレーム36L、36R、下部ピボットフレーム38L、38R及び上アーチフレーム40で略囲まれる部分が機器搭載領域60となっている。また、後方上部フレーム52L、52R及び後方下部フレーム54L、54Rで略囲まれる部分がタンク支持領域62となっている。
機器搭載領域60には、燃料電池12と、電圧調整を行うVCU(Voltage Control Unit)64と、冷却システムの冷却液を循環させるウォータポンプ66と、冷却水中のイオンを除去して燃料電池12の地絡を防ぐイオン交換器68と、反応ガス(空気)を圧縮する過給器(スーパチャージャ、ポンプ又はコンプレッサとも呼ばれる)70と、燃料電池12に供給される反応ガスと燃料電池12から排出される使用済み反応ガスとの間で水分の交換を行う加湿器72と、反応に使用されなかった余剰水素ガス中で所定の膨張作用等により生成された水分を回収する気液分離器(キャッチタンク)74と、パージした水素ガスを使用済み反応ガスで希釈する希釈ボックス76と、流入空気量を検出するエアフローセンサ78と、暖機運転時及び過冷却時に冷却水の循環経路を切り換えるサーモスタット79が設けられている。
気液分離器74は、燃料電池12において反応に使用されなかった余剰水素中の生成水が回収される。
図6に示すように、過給器70及び加湿器72の一部は、ステップ板51L、51Rよりも下に設けられている。過給器70及び加湿器72は機器搭載領域60の中では比較的重い機器であって、ステップ板51L、51Rよりも下に設けられることにより、燃料電池二輪車10が低重心化し、走行安定性が向上する。また、ステップ板51L、51Rの形状や幅を過給器70及び加湿器72に影響されることなく設計自由度が向上し、特にスクータ型の燃料電池二輪車に好適に適用される。
また、過給器70は後述する冷却ファン109bの通風路に設けられており(図1及び図2参照)、過給器70に対する空冷効果が促進される。同様に、ウォータポンプは後述する冷却ファン109aの通風路に設けられており、ウォータポンプ駆動用モータに対する空冷効果が促進される。
過給器70は、ECU92の作用下に回転するモータ70aを有する。モータ70aの回転方向は図2の矢印Bで示すように側面視の平面上で回転し、前輪14及び後輪16の回転方向(矢印C)と同じ方向(図2中で反時計方向)に設定されている。これにより、前輪14及び後輪16の回転のジャイロ効果にモータ70aの回転のジャイロ効果が加わり、走行安定性が向上する。また、モータ70aの回転速度が変化する際にも、燃料電池二輪車10を左右に傾動するようなモーメントが発生することがない。この場合、モータ70aの回転方向は前輪14、後輪16の回転方向と逆であってもよい。
図1及び図2に戻り、燃料電池12は、機器搭載領域60における後方部で、左右を上部ピボットフレーム32L、32R及び上アーチフレーム40で囲まれる部分に設けられている。また、燃料電池12は長手方向面12eと水平面とのなす傾斜角θ(図13参照)は略70°となるように後傾して配置されており、長手方向面12eが略上下方向を指向している。なお、ここでいう長手方向面12eは側面視で上面12a及び下面12bよりも長手側の面であって、奥行き方向(左右方向)には無関係である。
また、図1及び図2から明らかなように燃料電池12はシート22の下に配置され、一層詳細には、運転者が着座する前方部22aの下に配置されている。
このように、重量の重い燃料電池12をシート22における運転者が着座する前方部22aの下に配置することにより、図13に示すように、燃料電池二輪車10の全体の重心Gは、例えば、燃料電池12の車長方向幅L内に含まれるように設定されている。また、側面視で長手方向面12eが略上下を指向するように配置されていることにより、燃料電池12の車長方向端部12f、も重心Gから近い位置に配置され、重心Gの近傍に重量が集中する。これにより、燃料電池二輪車10の旋回やバンク等の運動性能が向上する。さらに、運転者は前方部22aに着座することから燃料電池12の近くで運転をすることになり、一体感のある運転操作感覚が得られる。
なお、重心Gの車長方向位置は前輪14と後輪16の荷重の比から求めることができる。重心Gは冷却液、燃料等が充填されていない乾燥重量に対応するものでもよいし、冷却液、燃料等が充填された運転重量に対応するものであってもよい。
また、燃料電池12の長手方向面12eは後傾するように配置されていることから、側面視で同様に後傾している上アーチフレーム40に沿って配置され、固定が容易である。また、後傾することにより燃料電池12は後輪16に対向するように配置され、レイアウト上のバランスがよく、機器搭載領域60内のスペースが有効に用いられる。さらに、後傾することにより、燃料電池12背面部にはスイングアーム130の揺動動作の支障とならず、且つ不必要に広くない適度な空間が確保される。
このように燃料電池12をシート22における前方部22aの下方に配置するとともに、後輪16に対向する向きに適切に配置するためには、長手方向面12eと水平面とのなす傾斜角θ(図13参照)を45°〜90°となるように後傾又は直立して配置されているとよい。
図1及び図2に戻り、VCU64はやや扁平の箱形であって、機器搭載領域60における中央上部で、左右を中央上部フレーム30L、30Rで囲まれる部分に設けられている。ウォータポンプ66及びイオン交換器68はVCU64よりもやや前方で、左右を前部サブフレーム46L、46Rで囲まれる部分に設けられている。ウォータポンプ66は、イオン交換器68よりも上方に設けられている。
図6、図7及び図8に示すように、過給器70、サーモスタット79及び加湿器72はVCU64の下方で、左右を中央下部フレーム36L、36R及びサイドフレーム44L、44Rで囲まれる部分に設けられている。過給器70及びサーモスタット79は加湿器72よりも前方に設けられている。図8(下面視)に示すように、加湿器72は中央下部フレーム36Lと中央下部フレーム36Rとの幅とほぼ同幅で配置されている。過給器70の幅は中央下部フレーム36Lと中央下部フレーム36Rとの幅よりやや狭く、過給器70の右側(図8中の上側)にはサーモスタット79が配置されている。
気液分離器74及び希釈ボックス76は、燃料電池12の下方に設けられており、気液分離器74は、希釈ボックス76よりも左方に設けられている(図17参照)。なお、図示しないが、気液分離器74は希釈ボックス76よりも車体前方に設けられていてもよい。
タンク支持領域62には、燃料電池12に供給する水素ガスを高圧状態で貯蔵する左右一対の燃料ボンベ80L、80Rと、該燃料ボンベ80L、80Rに水素ガスを供給する燃料充填口82と、各燃料ボンベ80L、80Rに設けられたインタンク電磁弁84L、84Rと、中央部には調圧ユニット86及び燃料充填口82が設けられている(図16参照)。
各燃料ボンベ80L、80Rは両端半球の円柱形状であって、車体後方部において中心から左右にオフセットした位置に設けられている。具体的には、燃料ボンベ80L、80Rは上面視(図3参照)で車長方向に延在しており、側面視(図1参照)でシート22に沿って後上がりとなるように配置されている。後方上部フレーム52L及び後方下部フレーム54Lは、燃料ボンベ80Lの上端稜線部及び下端稜線部に略沿って延在している。燃料ボンベ80Lは、両端が後方上部フレーム52L及び後方下部フレーム54Lに固定された2本のバンド90によって支持されている。同様に、後方上部フレーム52R及び後方下部フレーム54Rは、燃料ボンベ80Rの上端稜線部及び下端稜線部に略沿って延在している。燃料ボンベ80Rは、両端が後方上部フレーム52R及び後方下部フレーム54Rに固定された2本のバンド90によって支持されている。
燃料ボンベ80L、80Rは燃料電池二輪車10を構成するパーツの中で比較的大きいパーツであるが、中心線から左右にオフセットした位置に設けられていることにより、上面視で後輪16とほとんど重なることがなく、後輪16の上下方向サスペンションストロークを十分に確保することができる。これにより、路面からの衝撃を緩和しやすくなり、燃料電池二輪車10の乗り心地の向上を図ることができる。
燃料充填口82は左右の燃料ボンベ80L、80R略前端部中間位置であって、シート22の下に設けられており、上方を指向している(図16参照)。シート22の下方には燃料電池二輪車10の統括的な制御を行うECU(Electric Control Unit)92が設けられている。該ECU92は燃料電池12の制御も行う。燃料充填口82及びECU92は、上面及び側面がシート22に覆われるように配置されており、該シート22を前方のヒンジ22cを中心として開くときには露呈され、燃料充填及び所定のメンテナンスを行うことができる。ECU92の上面には凹部92aが形成されており、収納スペースとして利用可能である。
下部ダウンフレーム28R、28Lの直前部には燃料電池12を冷却するためのラジエータ100が設けられている。該ラジエータ100は高さが幅の略2倍の板状であって(図9参照)、両側部が下部ダウンフレーム28R、28Lに沿うように設けられている。ラジエータ100は、燃料電池12で加温された冷却水がウォータポンプ66を介して供給される一次側の第1タンク102と、放熱して冷却された冷却水を排出する二次側の第2タンク104と、第1タンク102と第2タンク104の間に設けられ、外気と熱交換を行う冷却部106とを有する。第1タンク102は冷却部の左側、第2タンク104は冷却部の右側に設けられている。
図9に示すように、第1タンク102及び第2タンク104は、ラジエータ100の左右側面部において上端部から下端部に沿った長尺形状である。第2タンク104の下端よりやや上方部には、放熱して冷却された冷却水を排出する第1排出口104aが設けられ、上端部にはラジエータキャップ104b及びリザーバタンク112に接続される補給口104cが設けられている。ラジエータキャップ104bは、冷却システム200(図12参照)の系統内圧力を一定に保つように作用し、圧力が上昇したときに内部のバルブを開いて、過剰な冷却液又は混入空気を補給口104cからリザーバタンク112に逃がし、圧力が低いときには不足する冷却液をリザーバタンク112から補給する。リザーバタンク112はラジエータキャップ104bよりも上方に配置されている。
第1タンク102の略上端部には、加温された冷却水が導入される導入口102aが設けられ、略下端部にはサーモスタット79に接続される第2排出口102bが設けられている。
冷却部106は、第1タンク102と第2タンク104とを連通させる多数の細管106aと、これらの細管106aの間に設けられた正面視波形の冷却フィン106bとからなる。この冷却部によれば、細管106aを通過する冷却液は冷却フィン106bから放熱して冷却される。また、冷却フィン106bは通気しやすくしかも面積が大きいため冷却効果が高い。
ラジエータ100の裏面上部には冷却ファン109aが設けられ、裏面下部には冷却ファン109bが設けられている。これらの冷却ファン109a、109bの空気吸い込み作用により冷却フィン106bの通気が促進され、ラジエータ100の放熱効果が向上する。
図5に示すように、フロントサスペンション23L、23Rの上部には、ヘッドパイプ24を介してハンドル18が接続されている。ハンドル18は略T字形状であって、下端部がヘッドパイプ24に挿入されている支軸部18aの左側には外気を取り込むエアクリーナ110が設けられ、右側にはラジエータ100に冷却液を補充するリザーバタンク112が設けられている。エアクリーナ110とリザーバタンク112は、支軸部18aを中心とした略対象位置にバランスよく配置され、フレーム20の一部に固定されている。
図10に示すように、エアクリーナ110は方形の底部110aと、該底部110aの上面を覆う蓋部110bとからなり、底部110aの下面が斜め下後方を指向する向きに設定されている。蓋部110bは中央部が膨出しており、該膨出部の上部に空気供給口110cが設けられてる。エアクリーナ110の内部には吸気空気を浄化するフィルターが設けられており、蓋部110bを取り外すことにより該フィルターを交換可能である。図11に示すように、リザーバタンク112は一部に凹部112aのある略長球形状であって、支軸部18aと同様に上方やや後方に向かうように配置されており、頂部の冷却水供給口112bは上方を指向している。
図1、図2及び図5に示すように、前輪14と下部ダウンフレーム28L、28Rとの間で、ラジエータ100よりも外側には一対の二次バッテリ120L、120Rが設けられている。二次バッテリ120L、120Rは、縦方向に長尺な略角柱形状であって、前方に向かってやや凸となるように中央高さ部で緩やかに屈曲している。このような形状により、二次バッテリ120L、120Rの下部背面は、所定のプレートを配設することにより運転者の走行時の足置き部として使用可能である。
また、二次バッテリ120L、120Rは、サイドフレーム44L、44Rの前端部近傍から斜め前方に向かうように配置されており、下端部はステー122L、122Rによって下部ダウンフレーム28L、28Rに接続され、上端部はステー124L、124Rによってヘッドパイプ24に接続されている。このように、二次バッテリ120L、120Rが下部ダウンフレーム28L、28Rに設けられていると、前輪14及び後輪16にかかる荷重が同等となり、走行状態での重量バランスが向上する。二次バッテリ120L、120Rは同機能であって、充放電とも1/2ずつの電流を分担する。
前輪14は、フロントサスペンション23L、23Rの下端部に回転自在に軸支されている。後輪16は、ピボット34を中心に回転可能なスイングアーム130に支持されており、インホイールモータ132と該インホイールモータ132を駆動するモータドライバ134が設けられている。上アーチフレーム40の上部とスイングアーム130の左側面上部との間にはリアサスペンション136が設けられている。インホイールモータ132及びモータドライバ134は水冷式であって高効率且つ高出力である。
また、図1及び図2から明らかなように、シート22の前方部は下方に大きく窪んだ形状であることから、燃料電池二輪車10はスクータ式二輪車に分類される。燃料電池二輪車10は、仮想線で示すように略全体がフェアリング140により覆われている。
このような燃料電池二輪車10では、始動時に二次バッテリ120L、120Rからインホイールモータ132や所定のヒータ等に電力が供給され、暖機運転が行われる。暖機後には、燃料電池12で発電した電力がインホイールモータ132に供給され走行可能となる。
また、スロットル開度が増加した場合等で要求出力上昇の程度が比較的小さいときには、燃料電池12の出力に対して二次バッテリ120L、120Rの出力を重畳的にインホイールモータ132に供給し、高いレスポンスが得られる。要求出力の程度がより大きいときには、二次バッテリ120L、120Rの出力を重畳的に供給するとともに、燃料電池12の出力を増大させてスロットル開度に対する追従性が向上する。
次に、燃料電池12を冷却して適切な温度範囲に維持するための水冷式の冷却システム200について、図11〜図14を参照しながら説明する。
図11及び図12に示すように、冷却システム200は、ウォータポンプ66、イオン交換器68、サーモスタット79、ラジエータ100、リザーバタンク112を有する。冷却システム200は、基本的に、熱源としての燃料電池12で加温された冷却水を第1主管路202によりラジエータ100に供給し、該ラジエータ100で放熱して冷却された冷却水を第2主管路204により燃料電池12へ供給して、冷却水を循環させている。ウォータポンプ66は第1主管路202の途中に設けられており、冷却水を循環駆動させている。
図13及び図14に示すように、第1主管路202の一端は上継手(接続部)206を介して燃料電池12の上面12aに接続されており、第2主管路204の一端は下継手208を介して燃料電池12の下面12bに接続されている。上継手206は、側面視(図13参照)で上面12aの中央部で、背面視(図14参照)で略左端部に設けられている。下継手208は、側面視(図13参照)で下面12bの中央部で、背面視(図14参照)で略右端部に設けられている。
上継手206は、上方にやや突出しており、燃料電池12に接続される下部206aと、該下部206aと第1主管路202とを接続する上部206bとからなる。下部206aは下面が燃料電池12の上面12aに整合するように傾斜しており、上面は略水平となっている。下部206aの上面は燃料電池12の前面上端部12dと略同じ高さに設定されている。
上部206bは、内部流通路が略90°の屈曲形状であって、第1主管路202が前方を指向するように設けられている。また、上部206bには、内部流通路と連通した短筒(エア抜き孔)206cと、該短筒206cの上面を塞ぐカバー206dが設けられている。短筒206cは、上部206bの屈曲部から斜め上方に向かって配設されている。カバー206dは短筒206cに対して開閉可能である。第1主管路202は、上部206bから前面上端部12dまでは略水平であり、前面上端部12dを越えて前下がりに傾斜している。
下継手208は下方にやや突出しており、下面12bに対して垂直な筒部208aと、該筒部208aと第2主管路204とを接続するエルボ208bとからなる。第2主管路204は、エルボ208bから前方を指向するように配設されている。
このような第1主管路202及び第2主管路204の接続方法により、冷却液は第1主管路202から燃料電池12内に導入されて内部の発電セルを冷却することにより加温されて第2主管路204から導出され、ウォータポンプ66の作用下に循環する。
また、第1主管路202が燃料電池12の上面12aに接続されていることにより、燃料電池12内に混入した空気は上方に浮き上がることから第1主管路202へとスムーズに排出され、効率的に抜き出すことができる。これにより、燃料電池12の発電効率の低下を抑制することができる。第1主管路202へ排出された空気は、やがてラジエータキャップ104bからリザーバタンク112へと排出される。
また、第2主管路204の一端は燃料電池12の下面12bに接続されていることから、第2主管路204内に空気が混入している場合にも、燃料電池12を介して第1主管路202へと排出される。
さらに、図14に示すように、第1主管路202及び第2主管路204は、燃料電池12の上面12a及び下面12bにおける車幅方向外寄りに設けられていることから、燃料電池12の前方部又は後方部にスペースが確保されて他の機器のレイアウト上、第1主管路202及び第2主管路204が支障となることがない。これにより、燃料電池12の前方にはVCU64が配置可能になっている(図1及び図2参照)。
なお、第1主管路202及び第2主管路204はできるだけ車幅方向外寄りに設けるとよいが、第1主管路202及び第2主管路204はそれぞれ所定の径を有しており、しかも上継手206及び下継手208を介して接続されることから、外側面12hに対して多少の余裕A(図14参照)が必要である。該余裕Aは、第1主管路202及び第2主管路204の径Rを基準として、R≦A≦3Rに設定するとよい。これにより、燃料電池12に対する第1主管路202及び第2主管路204の接続に無理がなく、第1主管路202及び第2主管路204が外側面12hよりも外側に張り出すおそれがなく、しかも燃料電池12の前方部又は後方部にスペースが確保される。
燃料電池12と第1主管路202との接続部である上継手206には、カバー206dにより開閉可能な短筒206cが設けられていることから、燃料電池12内を浮き上がってきた空気を該短筒206cから抜くことができる。つまり、冷却液交換後等にカバー206dを適量開くことにより、冷却システム200の系統内に混入した空気を迅速且つ効率的に抜くことができる。
また、第1主管路202は、前面上端部12dよりも前方の部分は前下がりに傾斜していることから、この部分に含まれる空気も上昇して短筒206cから抜くことができる。このように、短筒206cが局所的に高い位置に設けることから、第1主管路202内に空気を溜まることを防止できる。なお、短筒206cは、冷却水の導入にも用いることができる。
図11及び図12に示すように、サーモスタット79は第2主管路204の途中に設けられている。サーモスタット79は、4つのポート79a、79b、79c、79dを有しており、このうちポート79a及び79bが第2主管路204に接続され、通常時にはラジエータ100で冷却された冷却水を燃料電池12に供給するようにポート79aとポート79bが連通している。ポート79cはバイパス管路210を介して第1タンク102の第2排出口102bに接続されている。第2排出口102bは、第1タンク102及び導入口102aを介して第1主管路202と接続されており、しかもこれらの連通部には絞りや弁となるようなものは存在しないことから、ポート79cは第1主管路202と直接的に連通していることと等価な回路となっている。また、冷却水の一部はポート79dからイオン交換器68を通り第1主管路202に対して継手209を介して接続され、循環するように構成されている。
サーモスタット79は、冷却液の温度によって連通路を切り替える機能を有し、暖機運転時にはポート79aが遮断されるとともにポート79cが開放されて、ポート79cとポート79bが連通する。これにより、ウォータポンプ66から吐出した冷却水は、導入口102a、第1タンク102、第2排出口102b及びバイパス管路210を通り、ポート79aからサーモスタット79に導入され、ポート79bから燃料電池12に戻される。したがって、冷却水は暖機運転時には冷却部106を通らずに循環するため不必要に冷却されることがなく、燃料電池12が適温となるまで迅速に昇温させることができる。
このように、第1タンク102とサーモスタット79とをバイパス管路210で接続することにより、回路上、サーモスタット79は第1主管路202と接続されていることになる。つまり、第1タンク102が第1主管路202の流路の一部として作用することになり、バイパス管路210は第1タンク102までの短い管路として設定することができ、管路の取り回しが容易となるとともに構成部品のレイアウトの自由度が高まる。具体的には、図4及び図8(下面視)に示すように、バイパス管路210は車体の下面に沿って配設され、しかもその長さは短く設定される。
仮に、第1タンク102に接続しない場合には、図11の仮想線で示すように、第1主管路202に分岐継手212を設けるとともに、バイパス管路210’を縦方向に長く、しかも左右に横断するように配設する必要があり、過給器70、イオン交換器68及びウォータポンプ66のレイアウトが制限される。これに対して本実施の形態では、バイパス管路210を第1タンク102の低い位置に接続していることから、このような不都合がない。
また、第1タンク102は縦方向に長尺形状であって、第1主管路202とバイパス管路210は、第1タンク102における長尺方向の中心位置から見て対向する側に接続されていることから、第1タンク102の長さが有効に利用され、第1主管路202とバイパス管路210が離間して配置され、この間のスペースが確保されてレイアウトの自由度が一層高まる。
なお、第1タンク102からバイパス管路210を介して接続される切替弁はサーモスタット79のように冷却液の温度に反応して切り替え動作を行うものに限らず、例えば、タイマー動作や所定の演算結果に基づいて切り替えを行うものであってもよい。
また、冷却システム200おける冷却液の循環方向は、図12の破線で示すように逆向きであってもよい。つまり、燃料電池12で加温された冷却液をポート79bからサーモスタット79に導入し、切替作用によって第1排出口104a又は第2排出口102b(この場合、それぞれ導入口として作用する。)に導出し、ラジエータ100内で放熱し、又は冷却部106をバイパスして導入口102a(この場合、導出口として作用する。)からウォータポンプ66に供給するようにしてもよい。ウォータポンプ66を逆に回転させることことにより、冷却水は第1主管路202を通って燃料電池12に返還される。このように、冷却液の循環方向は逆であってもバイパス管路210から第1タンク102を介して第1主管路202に連通する経路が形成されることから、前記の場合と同様に管路の取り回しが容易となるとともに構成部品のレイアウトの自由度が高まるという効果を奏する。
冷却システム200では、ラジエータ100で冷却する対象となる熱源は燃料電池12に限らず、内燃機関やモータ等であってもよい。
次に、燃料電池12を冷却して水素ガスを供給するための水素系統システム300について、主に図15〜図17を参照しながら説明する。
図15に示すように、水素系統システム300は、燃料充填口82と、燃料ボンベ80L、80Rと、調圧ユニット86と、イジェクタユニット304と、気液分離器74と、希釈ボックス76と、サイレンサ306とを有し、燃料電池12に対して水素ガスを供給するとともに、反応後のガスを循環させ、又は排出する系統である。
図15及び図16に示すように、水素ガスは、燃料ボンベ80Lに対して、燃料充填口82からチェック弁308L及びインタンク電磁弁84Lを介して高圧で充填される。また、燃料ボンベ80Rに対しては、チェック弁308Lの二次側から分岐した管路307からチェック弁308R及びインタンク電磁弁84Rを介して右側の燃料ボンベ80Rと同時に高圧で充填される。燃料ボンベ80L、80Rが不測の事態により高温又は高圧の状況下に置かれたときには、内部の水素ガスは排出管312L、312Rを通って放出される。
調圧ユニット86は、上流側から手動弁314、電磁遮断弁316、第1レギュレータ318及び第2レギュレータ320が回路上直列的に接続されている。手動弁314は、燃料ボンベ80L、80Rに対する元閉めの弁であり、通常は開かれている。電磁遮断弁316は、燃料電池二輪車10の運転、停止に応じて開閉される。第1レギュレータ318は高圧の水素ガスを所定の圧力まで降圧する。第2レギュレータ320は運転状況等に応じて、イジェクタユニット304に対する供給圧力を調整する。
イジェクタユニット304は、調圧ユニット86から供給される水素ガスを冷却する熱交換器322と、該熱交換器322の下流側に並列配置されたイジェクタ324及び差圧レギュレータ326とを有する。イジェクタ324及び差圧レギュレータ326の二次側は燃料電池12に接続されており、差圧レギュレータ326によって空気側の圧力に対して所定圧力に調整された水素ガスが供給される。イジェクタ324の吸気作用によって気液分離器74から未反応の水素ガスが吸い込まれて再び燃料電池12に導入されて循環経路を形成している。
燃料電池12に供給された水素ガスは、反応ガスと化学反応を起こして発電した後、湿潤な余剰ガスとして排出され、管路330を通って気液分離器74に供給される。
図17に示すように、管路330を通って供給されるオフガスは、右端部から加湿器72に導入され、内部の中空糸膜集合体において過給器70から供給されるスイープガスと水分交換を行い、中央よりやや左側の下部から管路332に排出される。一方、過給器70から供給される高温で乾燥したスイープガスは、管路334、管路338を通り、左端部から加湿器72内に導入され、オフガスと水分交換を行って加湿された後、右端部から管路340に排出される。この後、加湿されたスイープガスは管路340を通って燃料電池12に供給される。
また、低温始動時に燃料電池12を迅速に暖めるためにバイパス弁336の切り替えにより管路342から直接に燃料電池12に供給することができる。管路340と管路342は合流して燃料電池12の供給継手344に接続されている。なお、各管路配置の理解が容易なように、図17では燃料電池12の本体の図示を省略している。
図15に戻り、気液分離器74では供給された湿潤な水素ガスから水分を分離抽出し、電磁弁350を介して希釈ボックス76に供給、排出する。一方、分離された未反応の水素ガスは、返還管路352を介してイジェクタ324に返還され、又は運転状況に応じて電磁弁354を介して希釈ボックス76に供給される。希釈ボックス76で水素濃度が空気オフガスで希釈された排気ガスはサイレンサ306を介して排気される。
上述したように、本実施の形態に係る燃料電池車両の冷却システム200によれば、第1主管路202が燃料電池12の上面12aに接続されていることにより、燃料電池12内に混入した空気は上方に浮き上がることから第1主管路202へとスムーズに排出され、効率的に抜き出すことができる。これにより、燃料電池の発電効率の低下を抑制することができる。
また、第2主管路204の一端は燃料電池12の下面12bに接続されていることから、第2主管路204内に空気が混入している場合にも、燃料電池12を介して第1主管路204へと排出される。
本発明に係る燃料電池車両の冷却システムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。