JP4638039B2 - 周波数ドメインの非線形プロセッシングを使用したエコー・サプレッションを提供するための方法および装置 - Google Patents

周波数ドメインの非線形プロセッシングを使用したエコー・サプレッションを提供するための方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は通信システムに関し、より詳細には双方向通信リンクにおけるエコー・サプレッションに関する。
【0002】
(発明の背景)
多くの通信システム、たとえば陸上通信線およびワイヤレス電話システムにおいては、しばしば双方向通信リンクを介して2つのシステムのユーザ間で音声信号の伝送が行われる。その種のシステムにおいては、通常、当該通信リンクの一端において、近端ユーザの発語が近端のマイクロフォンによって検出され、続いてリンクを介して遠端のラウドスピーカに向けて伝送され、そこで再生されて遠端ユーザに提供される。その逆に遠端ユーザの発語は、遠端のマイクロフォンによって検出され、続いて通信リンクを介して近端のラウドスピーカまで伝送され、そこで再生されて近端ユーザに提供される。
【0003】
この通信リンクのいずれの端においても、ラウドスピーカの出力が近傍のマイクロフォンによって検出され、意図せずして通信リンクを介して返され、ユーザの観点からは許容しがたい破壊的なフィードバック、つまりエコーを招く結果となる。この問題は、ユーザの身体によるマイクロフォンとラウドスピーカの間の効果的な遮断が得られないハンズ‐フリー電話において深刻になる。さらに、陸上通信線ネットワークにおけるハイブリッド接合のインピーダンス不整合からも類似の破壊的エコーを招き得る。
【0004】
従来的にエコー・サプレッションは、通信信号に含まれる不要エコー成分を推定し、除去する適応フィルタを採用したエコー・キャンセリング回路の使用によって達成されている。たとえば、「Echo−Canceling System and Method Using Echo Estimate to Modify Error Signal(エコー推定値を使用してエラー信号を修正するエコー・キャンセリング・システムおよび方法)」と題された1995年12月12日に特許されている米国特許第5,475,731号は、有限インパルス応答(FIR)適応フィルタにおける平均最小二乗(LMS)および正規化平均最小二乗(NLMS)アルゴリズムの使用を開示している。
【0005】
これらの周知のエコー・キャンセリング・テクニックがエコーの一部を除去することは知られているが、エコー・キャンセリングの後においても可聴残留エコーが残っていることも少なくない。この種の残留エコーは、比較的低いレベルであるにもかかわらず、極めて耳障りであり、したがって除去を必要とする。現時点において残留エコー・サプレッションは、通常、エコー・キャンセラに続いて何らかの形式の非線形プロセッサ(NLP)を使用することによって達成されている。たとえば、前述の米国特許第5,475,731号にある従来のセンタ−クリッピングNLPについての説明を参照されたい。
【0006】
ほとんどの周知のNLPは、残留エコーを含む通信信号の部分を完全に除去してしまう。その結果、近端ならびに遠端の話者がともにアクティブなとき(つまり同時に発語があるとき)、これらの周知のNLPは、残留エコーを通過させるか、あるいは近端の発語ならびに残留エコーの両方を除去することになる。それに加えて、複合バックグラウンド・ノイズがあるような状況(たとえば、カー・オーディオがついたままの車内においてハンズ‐フリー携帯電話を使用しているとき)において周知のNLPが使用されると、残留エコーとともに、バックグラウンド・サウンドも除去されてしまう。結果としてもたらされる空隙を埋める試みとして、あらかじめ計算された快適なノイズを追加することもできるが、処理後の信号がしばしば変動的であり、受け側のユーザの観点からは煩わしいものとなる。
【0007】
これらの結果として、通信信号に含まれる残留エコーを除去するための改良された方法および装置に対するニーズが高まっている。
【0008】
(発明の要約)
本発明は、周波数ドメインの非線形プロセッシング・テクニックを提供することによって、上記の、ならびにそのほかのニーズを充足する。概して本発明に従った非線形プロセッサのフィルタリング特性は、通信信号に含まれる残留エコー成分の電力スペクトルと、全体的な通信信号自体のそれとを比較することによって動的に調整される。より具体的に述べると、残留エコーが支配的な信号周波数のみを非線形プロセッサがブロックするように、非線形プロセッサのフィルタリング特性が調整される。好都合な点は、本発明に従った非線形プロセッサは、全会話を通じて、残留エコーを実際に抑圧する間であっても全二重通信を可能にすることである。
【0009】
本発明に従った一例のエコー・サプレッサは、通信信号の電力スペクトルを計算し、かつ当該通信信号に含まれる残留エコー成分の電力スペクトルを推定するべく構成されたプロセッサを備える。さらにこの例のエコー・サプレッサは、通信信号を処理し、かつそれにより残留エコー成分を抑圧するべく構成された適応フィルタを備える。この適応フィルタのフィルタリング特性は、通信信号の電力スペクトルに基づいて、かつ推定した残留エコーの電力スペクトルに基づいて調整される。
【0010】
通信信号における残留エコーを抑圧するための、本発明に従った一例の方法は、通信信号の電力スペクトルを計算するステップ、および残留エコーの電力スペクトルを推定するステップを含む。この例の方法によれば、計算した通信信号の電力スペクトルに基づいて、かつ推定した残留エコーの電力スペクトルに基づいてフィルタリング特性が調整され、調整した当該フィルタリング特性を用いて通信信号がフィルタリングされて残留エコーが抑圧される。
【0011】
この実施態様によれば、フィルタリング特性を、たとえばスペクトル減算テクニックを使用して調整することができる。それに代えて、フィルタリング特性の個々の係数を、その係数に対応する周波数における残留エコー内の電力と全通信信号内の電力の直接比較に基づいてセットすることもできる。
【0012】
スタンドアロン構成(つまり、先行するエコー・キャンセラがない場合)については、エコーのリターン・パスの減衰係数を推定するステップ、および推定した減衰係数を用いてエコー・ソース信号の電力スペクトル・サンプルをスケーリングし、それにより残留エコーの電力スペクトル・サンプルを提供するステップを通じて残留エコーの電力スペクトルの推定を行うことができる。先行する適応エコー・キャンセラが存在する場合には、当該エコー・キャンセラから提供されるエコー成分の推定値の電力スペクトルを計算するステップ、およびエコー成分の推定値の電力スペクトルを(適応エコー・キャンセラの動作に基づいて)スケーリングし、それにより残留エコーの電力スペクトル推定値を提供するステップを通じて残留エコーの電力スペクトルの推定を行うことができる。
【0013】
エコー成分の推定値の電力スペクトルのスケーリングには、適応エコー・キャンセラのエコー戻り損失エンハンスメントを決定するステップ、およびエコー成分の推定値の電力スペクトルにエコー戻り損失エンハンスメントを乗じて残留エコーの電力スペクトルの推定値を提供するステップを含めることができる。それに代えて、エコー成分の推定値の電力スペクトルのスケーリングに、適応エコー・キャンセラのエコー戻り損失エンハンスメントを決定するステップ、エコー成分の推定値の電力スペクトルに関する平均値を計算するステップ、当該平均値にエコー戻り損失エンハンスメントを乗じて飽和値を提供するステップ、エコー成分の推定値の電力スペクトルにエコー戻り損失エンハンスメントを乗じてスケーリング済みスペクトルを提供するステップ、および飽和値においてスケーリング済みスペクトルをクリッピングし、それにより残留エコーの電力スペクトルの推定値を提供するステップを含めることもできる。
【0014】
さらに好都合な点は、本発明が、フィルタリング後の(つまりエコーを抑圧した後の)通信信号に適切な快適ノイズを追加する方法および装置を提供することである。概略を述べれば、通信信号のノイズ成分の電力スペクトルが推定され、推定したノイズ成分の電力スペクトルに基づいて、かつ優勢なエコー・サプレッション・フィルタリング特性に基づいて快適ノイズが作られる。一例とする実施態様によれば、抑圧される周波数(つまり、フィルタリング特性がエネルギを除去し、それによってエコーを抑圧している周波数)において快適ノイズの追加が行われ、その結果、それらの周波数における総合エネルギが優勢なノイズのそれに等しくなる。
【0015】
上記の、ならびにそのほかの本発明の特徴および利点について、以下添付図面に示した例を参照しながら説明する。なお当業者であれば、ここで説明する実施態様が例証ならびに理解を目的として提供されており、そこには各種の等価実施態様が企図されていることを認識されよう。
【0016】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明の周波数ドメイン非線形プロセッシング・テクニックは、可聴音およびネットワークのエコー・サプレッションに関して等しく適用することができる。したがって本発明の教示を実装することができる構成として、図1には可聴音エコー・サプレッション・システム100を、図2にはネットワーク・エコー・サプレッション・システム200をそれぞれ示した。ここに示されているように、一例とする可聴音のエコー・サプレッション・システム100は、マイクロフォン110、ラウドスピーカ120、線形エコー・キャンセラ130、非線形プロセッサ140、快適ノイズ・ジェネレータ150、および第1および第2の加算デバイス160、170を備えている。また一例として示したネットワーク・エコー・サプレッション・システム200は、図1に示したエコー・キャンセラ130、非線形プロセッサ140、快適ノイズ・ジェネレータ150、および加算デバイス160、170のほかに、ハイブリッド接合210および第3の加算デバイス220を備えている。以下、図1および2に示した各種エレメントの機能を説明するが、当業者であれば、それが、たとえば周知のディジタル信号プロセッサ・コンポーネント、1ないしは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、または汎用ディジタル・コンピュータを使用して実装し得ることを認識されるであろう。
【0017】
動作においては、図1に示したラウドスピーカ120が遠端オーディオ信号x(t)を受け取り、対応する可聴音信号を近端システムのユーザ(図示せず)に向けて出力する。同時に、マイクロフォン110が近端発語成分v(t)、近端ノイズ成分v(t)、およびラウドスピーカ出力の反射の結果として得られるエコー成分s(t)を含む可聴音信号を受け取る。マイクロフォン110は、受け取ったこの可聴音信号を対応するオーディオ信号y(t)に変換し、それが第1の加算デバイス160の加法入力に印加される。それとは別に、線形エコー・キャンセラ130が、マイクロフォン信号y(t)のエコー成分s(t)の推定値s^(t)(注:英文明細書においては^がsの直上にある;他も同じ)を提供する周知の適応フィルタリング・テクニックを使用して遠端オーディオ信号x(t)を処理する。結果として得られるエコー推定値s^(t)は、第1の加算デバイス160の減法入力に印加され、その結果、それがマイクロフォン信号y(t)から減じられてエコー‐キャンセル済みの信号、つまりエラー信号e(t)が提供される。
【0018】
エラー信号e(t)は、エコー推定値s^(t)を提供するために線形エコー・キャンセラ130に返されるとともに、非線形プロセッサ140の入力に印加される。詳細については後述するが、非線形プロセッサ140は、エコー推定値s^(t)に基づいてエラー信号e(t)のフィルタリングを行ってエコー抑圧済み出力信号eNLP(t)を提供し、それが第2の加算デバイス170の加法入力に印加される。これについても詳細を後述するが、快適ノイズ・ジェネレータ150は、エラー信号e(t)に基づいて、かつ非線形プロセッサ140の優勢なフィルタリング特性に基づいて快適ノイズ信号c(t)を提供する。この快適ノイズ信号c(t)は、第2の加算デバイス170の第2の加法入力に印加され、その結果、非線形プロセッサ140のエコー抑圧済み出力信号eNLP(t)に加算されて、エコー抑圧済みノイズ追加出力信号eNLP+CN(t)が提供される。
【0019】
図2に示したネットワーク・システム200においては、ハイブリッド接合210が遠端オーディオ信号x(t)を受け取り、対応する可聴音信号を近端システムのユーザ(図示せず)に向けて出力する。それとは別に、ハイブリッド接合210におけるインピーダンス不整合によって、遠端信号x(t)のエコーs(t)が、近端で受け取られた音声信号v(t)およびノイズ信号v(t)と加法結合され(第3の加算デバイス220を介する形で概念的に示している)、第1の加算デバイス160の加法入力に返される。図1に示したシステム100の場合と同様に、線形エコー・キャンセラ130が周知の適応フィルタリング・テクニックを使用して遠端オーディオ信号x(t)を処理し、近端信号y(t)のエコー成分s(t)の推定値s^(t)を提供する。結果として得られるエコー推定値s^(t)は、第1の加算デバイス160の減法入力に印加され、その結果、それが近端信号y(t)から減じられてエコー‐キャンセル済みの信号、つまりエラー信号e(t)が提供される。非線形プロセッサ140および快適ノイズ・ジェネレータ150は、図1に関しての説明(また後述する詳細な説明)と同様にエラー信号e(t)に作用し、エコー抑圧済みノイズ追加出力信号eNLP+CN(t)を提供する。
【0020】
可聴音システム100およびネットワーク・システム200のいずれにおいても、エラー信号e(n)は、近端の発語v(n)、バックグラウンドのノイズv(n)およびエコーs(n)の和からエコー推定値s^(n)を減じたものに等しく、次式で表される(ただしこれにおいてnは、時間ドメインのサンプルを表すために使用されている)。
Figure 0004638039
【0021】
それに加えて、残留エコーs(n)(注:英文明細書においてはがsの直上にある;他も同じ)は、次式のように真のエコーs(n)から推定によるエコーs^(n)を減じたものとして定義される。
Figure 0004638039
【0022】
本発明によれば、非線形プロセッサ140のフィルタリング特性は、エラー信号e(n)および残留エコーs(n)に基づいて動的に計算される。より具体的に述べると、エラー信号e(n)のスペクトル的な内容と、残留エコーs(n)のスペクトル的な内容の推定値が比較され、非線形プロセッサ140のフィルタリング特性が、ある意味で残留エコーs(n)がエラー信号e(n)の支配的な成分となる周波数のみを通過するように調整される。
【0023】
エラー信号e(n)のスペクトル的な内容と残留エコーs(n)のそれを比較するため、まずエラー信号e(n)およびエコー推定値s^(n)を周波数ドメインに変換する。たとえば、Mポイント高速フーリエ変換(FFT)を使用して、時間ドメインのサンプルから、直接、対応する周波数ドメインの信号E(k)、S^(k)(注:英文明細書においては^がSの直上にある;他も同じ)を計算することができる(ただしこれにおいてkは、2/Mのステップにおける0から0.5にわたる離散的周波数を表す)。それに代えて、周波数ドメインの結果における変動を低減するためには、まず、エラー信号eおよびエコー推定値s^について、たとえばそれぞれの信号に関するN個の時間ドメインのサンプルのセットに基づいて次数pの自己回帰(AR)モデルを計算することができる。その後、ゼロによるパディングを行ったAR(p)のシーケンスのMポイントFFTから、希望する離散周波数ドメインの変量E(k)およびS^(k)が導かれる。変数p、N、およびMに関する実用上の適切な値は、それぞれ10、160、および256となる。当然のことながら、エラー信号eのモデリングに使用する次数pを、エコー推定値s^のモデリングに使用するそれと異なるものとすることは可能である。
【0024】
周波数ドメインのシーケンスE(k)およびS^(k)の計算が完了すれば、次に示すように、サンプルごとの態様で各シーケンスに、それぞれの共役複素数を乗じることによって、各シーケンスに対応する電力スペクトル密度(PSD)を計算することができる。
Figure 0004638039
【0025】
続いて残留エコーの電力スペクトル密度ΦS〜を、推定によるエコーの電力スペクトル密度ΦS^から推定することができる。第1の近似は、エコー・キャンセラから提供されるエコー戻り損失エンハンスメント(ERLE)を使用して得られる。エコー・キャンセラのERLEは、エコー・キャンセラによって達成されるエコー・サプレッションのレベルの表示を提供し、エコー・キャンセラのERLEを計算する方法はよく知られている。残留エコーに関するスペクトルと推定によるエコーに関するスペクトルが類似であるとの仮定を使用すれば、残留エコーの電力スペクトル密度は、次に示すように、推定によるエコーの電力スペクトル密度からERLE dB低い値であると推定することができる。
Figure 0004638039
【0026】
しかしながら、実験データの考察から、実際には残留エコーがしばしば、エコー評価値からERLE dB下がった値より高くなることが明らかになり、特に、スペクトル内の最大エネルギに比較して低いエネルギを有する周波数に関してそれが見られた(発語の場合は、通常、より高い周波数となる)。たとえば、図3を参照すると、実際の残留エコー曲線320が、低い周波数範囲(図において0から0.25までの範囲)に関しては、実際の推定によるエコー曲線310から約ERLE dB(図においては約15dB)下がった値に概略で一致しているが、高い周波数範囲(図において0.25から0.5までの範囲)に関しては、推定によるエコー曲線310から約ERLE dB下がった値より大きくなっている。
【0027】
より良好な近似を提供するために、ERLEの測定を周波数に依存させた形で行うことができる。しかしながら、それを行うためには静的分布(実際にERLEは、時間だけでなく周波数においても変動することが少なくない)が必要となり、また、より高い周波数帯域に大きな近端エネルギが存在する場合においては、望ましくない程度まで近端信号のクリッピングが導かれる可能性がある。より現実的な解決策は、次に示すように、推定によるエコーの電力スペクトル密度の平均レベルからERLE dB下がった値において残留エコーの電力スペクトル密度の推定値を飽和させることによって達成される。
Figure 0004638039
【0028】
その後この残留エコーの電力スペクトル密度の推定値を使用して、非線形プロセッサに関する概略のフィルタリング特性、すなわち伝達関数H(k)を導くことができる。たとえば次に示すように、直感的に正しいエコー・クリッピング・フィルタH(k)の提供に、スペクトル減算の教示(しばしばノイズ消去の意味において使用される)を適用することができる。
Figure 0004638039
ただしこれにおいて、δは減算係数である。経験的な研究から、エコー・サプレッションに関しては、δの値を1〜4の範囲にすると適当であることがわかった。
【0029】
実用上は、上記の式から直接フィルタH(k)を決定することは過度に複雑であり(つまり、標準的なディジタル信号プロセッシング・コンポーネントを使用して平方根を計算することは、好ましいとされないことが多い)、さらに推定誤差に起因してエコーの減衰レベルが満たされないことがある。より単純かつ確実にクリッピングできる解決策は、残留エコーがある意味で支配的な周波数のビンからすべての電力を除去し、その一方で残留エコーが支配的でない(従って知覚的にすでにマスクされている)周波数のビンからの電力をすべて通過させることである。たとえば、各周波数のビンkについて、クリッピングの評価基準は次のようになる。
Figure 0004638039
【0030】
上記の式が電力スペクトル密度の急激な変化を(H(k)=1とH(k)=0の間における時間的に急峻な変化に起因して)提供するが、実用上はフィルタリング特性をスムージングし、あるいは平均して緩やかな変換を提供することができる。これを行うことによって、(音楽のトーン等の)ひずみを最小にしつつ、高いパフォーマンスが提供される。たとえば、スムージングしたNLPフィルタHav(k)を次のように更新することができる。
Figure 0004638039
ただしこれにおいて、αに適切な値として、経験的な研究から、たとえば0.6が明らかになっている。
【0031】
その後、スムージングしたNLP伝達関数Hav(k)を使用して、周波数ドメイン・バージョンのエラー信号E(k)(時間ドメインのエラー信号e(n)のMポイントFFTから導かれる)をフィルタリングし、その結果を逆高速フーリエ変換(IFFT)を使用して時間ドメインに戻す。言い換えるとエコーが抑圧されたNLP出力が、次式によって与えられる。
Figure 0004638039
ただしこれにおいて「・」は、ベクトルHavとEの要素ごとの乗算を表す。これに代えて、周波数ドメインのHavおよびEの変換を最初に行った後、畳み込みを行ってNLP出力を提供することもできる。
【0032】
前述の式によって与えられるNLP出力は、希望に応じて効率的に残留エコーを抑圧するが、受け側のユーザの観点から見ると、除去された周波数によってバックグラウンドの変動がもたらされることに注意を要する。しかしながら、本発明の別の側面によれば、除去されたエネルギを作為的に置き換えることによってこの効果を減少させることができる。具体的に述べると、抑圧された周波数においてエネルギを追加し、その結果、それらの周波数における合計のエネルギを優勢なバックグラウンドのノイズ・レベルに等しくすることによって、出力信号をスムージングすることが可能になる。
【0033】
たとえば、音声アクティビティ検出器(VAD)を使用して、NLPの入力における発語(ソースまたはエコーのいずれか)の有無を決定することができる。発語の休止間は、VADからノイズのみが存在することが示され、次式に従って優勢なバックグラウンド・ノイズの電力スペクトル密度の推定値を更新することができる。
Figure 0004638039
【0034】
VADの機能を実装する方法はよく知られている。また、経験的な研究から、ノイズ推定値の更新時に、携帯電話に関しては約1/2秒間、固定電話回線に関してはそれより長い期間にわたってバックグラウンド・ノイズが静止しているとの仮定に妥当性があることが明らかになっている。
【0035】
次に、発語の間に推定されたバックグラウンド・ノイズを残留エコーの期間(一方または双方が話す場合)に使用して、フィルタHav(k)によって生じた空隙を効果的に埋める快適ノイズ・スペクトルを提供する。言い換えると、快適ノイズ・スペクトルC(k)は、次式に従って生成することができる。
Figure 0004638039
ただしこれにおいてN(k)は、単位変動当たりのホワイト・ノイズ・シーケンスのフーリエ変換である。
【0036】
これに代えてC(k)を、次式に従って生成することもできる。
Figure 0004638039
これにおいて位相ψ(k)は、1からM/2-1までの区間において、kに関し、-πからπまでの範囲にランダムに分布するものとし、かつ、ψ(0)=ψ(M/2)=0とする。ナイキスト周波数M/2を超える周波数については、次式からこの位相が与えられる。
Figure 0004638039
【0037】
C(k)内の位相が共役軸対称であることから、実数の時間ドメイン・シーケンスc(n)が保証される。結果として得られる快適ノイズは、続いてエコー抑圧済み出力信号に加算され、次に示すように、エコー抑圧済みノイズ追加信号が生成される。
Figure 0004638039
【0038】
これに代えて、次のように、まず周波数ドメイン内においてエコー抑圧済みノイズ追加信号を計算し、続いて時間ドメインに変換することもできる。
Figure 0004638039
【0039】
要するに本発明は、たとえばエコー・サプレッションのための、周波数ドメインの非線形プロセッシング・テクニックを提供する。本発明に従った非線形プロセッサは、概して、たとえば通信信号内の残留エコーが支配的な(つまり残留エコーの電力が当該通信信号内の全体的な電力の所定パーセンテージを超える)周波数のエネルギを除去する。本発明はさらに、除去するエネルギを置換することにより、結果として得られる信号を滑らかにする方法、たとえば受け側のユーザの知覚対象としてのエコー抑圧済み信号を改善する方法を教示している。好都合な点は、本発明に従った非線形プロセッサが、会話全体にわたる間の残留エコーを抑圧できることである。当業者であれば、上述した本発明のアルゴリズムが、サンプルごと、あるいはブロックごとの態様において適用可能であることを理解されよう。また当業者においては、上記のプロシージャの実行時に周波数ビンのグループ化を行えば、演算の複雑性が軽減され、かつ高速化が得られることを認識されるであろう。
【0040】
図4に、本発明に従った特に有用なアルゴリズム400をフローチャートの形で示した。ステップ410においては、次数pの自己回帰モデルを(たとえば、周知のレビンソン‐ダービン・アルゴリズムを使用して)時間ドメインの推定値から計算し、ステップ420においては、結果として得られた時間ドメインのモデルを(たとえばFFTにより)周波数ドメインに変換する。同様に、ステップ415および425においては、時間ドメインのエラー信号を(次数qの自己回帰モデルを使用して)モデリングし、周波数ドメインに変換する。次に、ステップ430において、結果として得られた周波数ドメインのシーケンスを比較し、非線形プロセッサの伝達関数Hを準備する。たとえば、NLPフィルタHの各タップに対応するタップ周波数について、推定によるエコーの電力と、エラー信号の電力の所定割合を示す値を比較し、その大小に応じて、そのタップを1または0にセットすることができる。
【0041】
ステップ440においては、エラー信号のFFTが計算され、ステップ450においては、結果として得られた周波数ドメインのエラー・シーケンスが、NLPフィルタHによってフィルタリングされ(つまり、要素ごとに乗算され)、周波数ドメインのエコー抑圧済み出力信号が提供される。一方、ステップ460においては、フィルタ関数Hのスケーリングが行われ、ステップ470においては、エラー信号のバックグラウンド・ノイズにおける優勢なレベルに等しい大きさを持ったランダム化した快適ノイズが生成される。すでに説明したように、この快適ノイズは優勢なバックグラウンド・ノイズの推定値を基礎として生成され、ノイズの推定値は、エラー信号内に発語が存在しないときに限って更新される(図においてはこれを、ステップ445のVADを経由することによって示している)。ステップ460および470の結果は、ステップ480において合成され、NLPフィルタHによってエラー信号から除去されたエネルギに適切に置き換わるべく固有の調整がなされた快適ノイズが提供される。ステップ490においては、結果として得られた快適ノイズが、要素ごとにエコー抑圧済み出力信号に加算されて、周波数ドメインのエコー抑圧済みノイズ追加出力信号が提供される。最後に、ステップ495においてIFFTが使用され、エコー抑圧済みノイズ追加出力信号が時間ドメインに変換される。
【0042】
当業者であれば、本発明が、例示を目的としてここで説明した具体的な実施例に限定されることなく、各種の変形実施態様が企図されていることを理解されるであろう。たとえば、開示したNLPの実施態様は、先行するエコー・キャンセラを含むシステムを参照して説明されているが、同じNLPの実施態様をスタンドアロン・デバイスとして使用しても、従来のオン/オフ・スイッチングによって提供されるものより優れた解決策を提供することができる。先行するエコー・キャンセラおよびそれに続くNLPに関して上に示した導出の論理は、すべてのエコー評価値s^をエコーを生じさせるエコー原因信号x(t)に置き換えることによって、容易にスタンドアロンのNLPにも適用することができる。その場合、予測されるエコーのリターン・パスまたは測定されたそれに基づいてエコー原因信号(たとえばラウドスピーカの信号)より低い、所定の固定レベルもしくは動的に調整されるレベルにおいて残留エコーを推定することができる。したがって、以上の説明によってではなく、本発明の範囲は付随する特許請求の範囲によって定義され、請求項の意味と両立し得るすべての等価態様は、それに包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による教示を実装することができる一例の可聴音エコー・サプレッション・システムを示したブロック図である。
【図2】 本発明による教示を実装することができる一例のネットワーク・エコー・サプレッション・システムを示したブロック図である。
【図3】 代表的なエコー信号と対応する残留エコー信号の周波数ドメインにおける比較を提供し、それによりさらに本発明の特定の側面に関する動機を提供するグラフである。
【図4】 本発明に従った残留エコーの抑圧方法の一例におけるステップを示したフローチャートである。

Claims (29)

  1. 通信信号に含まれる残留エコーを抑圧する方法において:
    前記通信信号は、入力信号に基づき、かつ、前記入力信号のエコー成分の推定値に基づいて適応エコー・キャンセラによって出力され、
    エコーキャンセル済みの信号である通信信号の電力スペクトルを計算するステップ;
    前記エコー成分の推定値の電力スペクトルを計算するステップと、
    前記エコー成分の推定値の電力スペクトルを、前記適応エコー・キャンセラの動作に基づいてスケーリングし、前記残留エコーの電力スペクトル推定値を提供するステップとにより、
    前記残留エコーの電力スペクトルを推定するステップ;
    前記計算した前記通信信号の電力スペクトルと、前記推定した前記残留エコーの電力スペクトルを比較するステップ;
    前記比較するステップの結果に基づいてフィルタリング特性を調整するステップ;および、
    前記調整したフィルタリング特性を使用して前記通信信号をフィルタリングし、前記残留エコーを抑圧するステップ;
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記通信信号の電力スペクトルを計算するステップは:
    前記通信信号の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記通信信号の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップ;および、
    前記通信信号の複素周波数ドメインにおける各サンプルにその共役複素数を乗じ、前記通信信号の電力スペクトル・サンプルを提供するステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  3. 前記通信信号の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記通信信号の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップは、前記通信信号の時間ドメインにおける多数のサンプルの高速フーリエ変換を計算するステップを含むことを特徴とする前記請求項2記載の方法。
  4. 前記通信信号の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記通信信号の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップは、さらに、前記高速フーリエ変換の計算に先行して、前記時間ドメインにおけるサンプルに関する自己回帰モデルを計算するステップを含むことを特徴とする前記請求項3記載の方法。
  5. 前記残留エコーは、エコー・リターン・パスを介して伝送されるソース信号からもたらされ、それにおいて前記残留エコーの電力スペクトルを推定するステップは:
    前記ソース信号の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記ソース信号の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップ;
    前記ソース信号の複素周波数ドメインにおける各サンプルにその共役複素数を乗じ、前記ソース信号の電力スペクトル・サンプルを提供するステップ;
    前記エコー・リターン・パスの減衰係数を推定するステップ;および、
    前記推定した減衰係数を用いて前記ソース信号の前記電力スペクトル・サンプルのスケーリングを行い、前記残留エコーの推定による電力スペクトル・サンプルを提供するステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  6. 前記エコー・リターン・パスの減衰係数の推定は静的であることを特徴とする前記請求項5記載の方法。
  7. 前記エコー・リターン・パスの減衰係数は、動的に推定されることを特徴とする前記請求項5記載の方法。
  8. 前記ソース信号の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記ソース信号の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップは、前記ソース信号の時間ドメインにおける多数のサンプルの高速フーリエ変換を計算するステップを含むことを特徴とする前記請求項5記載の方法。
  9. 前記ソース信号の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記ソース信号の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップは、さらに、前記高速フーリエ変換の計算に先行して、前記時間ドメインにおけるサンプルに関する自己回帰モデルを計算するステップを含むことを特徴とする前記請求項8記載の方法。
  10. 前記エコー成分の推定値の電力スペクトルを計算するステップは:
    前記エコー成分の推定値の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記エコー成分の推定値の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップ;および、
    前記エコー成分の推定値の複素周波数ドメインにおける各サンプルにその共役複素数を乗じ、前記エコー成分の推定値の電力スペクトル・サンプルを提供するステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  11. 前記エコー成分の推定値の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記エコー成分の推定値の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップは、前記エコー成分の推定値の時間ドメインにおける多数のサンプルの高速フーリエ変換を計算するステップを含むことを特徴とする前記請求項10記載の方法。
  12. 前記エコー成分の推定値の時間ドメインにおける多数のサンプルを、前記エコー成分の推定値の複素周波数ドメインにおける対応する数のサンプルに変換するステップは、さらに、前記高速フーリエ変換の計算に先行して、前記時間ドメインにおけるサンプルに関する自己回帰モデルを計算するステップを含むことを特徴とする前記請求項11記載の方法。
  13. 前記エコー成分の推定値の電力スペクトルをスケーリングするステップは:
    前記適応エコー・キャンセラのエコー戻り損失エンハンスメントを決定するステップ;および、
    前記エコー成分の推定値の電力スペクトルに前記エコー戻り損失エンハンスメントを乗じ、前記残留エコーの電力スペクトルの推定値を提供するステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  14. 前記エコー成分の推定値の電力スペクトルをスケーリングするステップは:
    前記適応エコー・キャンセラのエコー戻り損失エンハンスメントを決定するステップ;
    前記エコー成分の推定値の電力スペクトルに関する平均値を計算するステップ;
    前記平均値に前記エコー戻り損失エンハンスメントを乗じ、飽和値を提供するステップ;
    前記エコー成分の推定値の電力スペクトルに前記エコー戻り損失エンハンスメントを乗じ、スケーリングしたスペクトルを提供するステップ;および、
    前記飽和値において前記スケーリングしたスペクトルのクリッピングを行い、前記残留エコーの電力スペクトルの推定値を提供するステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  15. kを有限な正の整数値とするとき、前記エコー成分の推定値の電力スペクトルがΦ(k)によって与えられ、前記適応エコー・キャンセラのエコー戻り損失エンハンスメントがERLEによって与えられ、かつ、前記残留エコーの電力スペクトルの推定値が:
    Figure 0004638039
    (注:英文明細書においては^がSの直上にある)
    に従って計算されることを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  16. 前記エコー戻り損失エンハンスメントは、周波数の関数として可変であり、ERLE(k)として与えられることを特徴とする前記請求項15記載の方法。
  17. kを有限な正の整数値とするとき、前記エコー成分の推定値の電力スペクトルがΦ(k)によって与えられ、前記適応エコー・キャンセラのエコー戻り損失エンハンスメントがERLEによって与えられ、かつ、前記残留エコーの電力スペクトルの推定値が:
    Figure 0004638039
    (注:英文明細書においては^がSの直上にあり; ̄がΦの直上にある)
    に従って計算されることを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  18. 前記エコー戻り損失エンハンスメントは、周波数の関数として可変であり、ERLE(k)として与えられることを特徴とする前記請求項17記載の方法。
  19. kを有限な正の整数値とするとき、前記フィルタリング特性がH(k)によって与えられ、前記計算した前記通信信号の電力スペクトルがΦ(k)によって与えられ、前記推定した前記残留エコーの電力スペクトルがΦ(k)によって与えられるものとし、それにおいて前記フィルタリング特性は、減算係数をδとして:
    Figure 0004638039
    に従って計算されることを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  20. kを有限な正の整数値とするとき、前記フィルタリング特性がH(k)によって与えられ、前記計算した前記通信信号の電力スペクトルがΦ(k)によって与えられ、前記推定した前記残留エコーの電力スペクトルがΦ(k)によって与えられるものとし、それにおいて前記フィルタリング特性は、減算係数をδとして:
    Figure 0004638039
    に従って計算されることを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  21. 前記フィルタリング特性H(k)は、時間的に平均されることを特徴とする前記請求項20記載の方法。
  22. さらに、前記フィルタリングした前記通信信号に快適ノイズを追加するステップを包含することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  23. 前記フィルタリングした前記通信信号に快適ノイズを追加するステップは:
    前記通信信号のノイズ成分の電力スペクトルを推定するステップ;および、
    前記推定した前記通信信号のノイズ成分の電力スペクトルに基づいて前記快適ノイズを作り出すステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項22記載の方法。
  24. kを有限な正の整数値とするとき、前記フィルタリング特性がH(k)によって与えられ、前記推定した前記通信信号のノイズ成分の電力スペクトルがΦv2(k)によって与えられるものとし、それにおいて前記快適ノイズのスペクトルC(k)は、単位変動当たりのホワイト・ノイズ・シーケンスのフーリエ変換をN(k)として:
    Figure 0004638039
    に従って計算されることを特徴とする前記請求項23記載の方法。
  25. エコーキャンセル済みの信号である通信信号の電力スペクトルを計算し、エコーキャンセル前の前記通信信号のエコー成分の推定値の電力スペクトルを計算し、かつ前記エコー成分の推定値の電力スペクトルから前記通信信号に含まれる残留エコー成分の電力スペクトルを推定するべく構成されたプロセッサ;および、
    前記通信信号を処理し、それによって前記残留エコー成分を抑圧するべく構成された適応フィルタ;を備えるエコー・サプレッサであって、
    前記適応フィルタのフィルタリング特性は、前記計算した前記通信信号の電力スペクトルと前記推定した前記残留エコー成分の電力スペクトルの比較によって調整されることを特徴とするエコー・サプレッサ。
  26. エコーキャンセル済みの信号である通信信号内に含まれる残留エコーを抑圧するためのデバイスであって:
    前記通信信号の電力スペクトルを計算するための手段;
    エコーキャンセル前の前記通信信号のエコー推定値の電力スペクトルを計算するための手段;
    前記エコー推定値の電力スペクトルから前記残留エコーの電力スペクトルを推定するための手段;
    前記計算した前記通信信号の電力スペクトルと、前記推定した前記残留エコーの電力スペクトルを比較するための手段;
    前記比較するステップの結果に基づいてフィルタリング特性を調整するための手段;および、
    前記調整したフィルタリング特性を使用して前記通信信号をフィルタリングし、残留エコーを抑圧するための手段;
    を備えることを特徴とするデバイス。
  27. エコーキャンセル済みの信号である通信信号に含まれる残留エコーを抑圧する方法において:
    前記残留エコーは、エコー・リターン・パスを介して伝送されるソース信号からもたらされ、
    前記通信信号の電力スペクトルを計算するステップ;
    前記ソース信号の時間ドメインにおける多数のサンプルの自己回帰モデルを計算するステップと、
    前記自己回帰モデルの高速フーリエ変換を計算し、前記ソース信号の複素周波数ドメインにおける多数のサンプルを提供するステップと、
    前記ソース信号の複素周波数ドメインにおける各サンプルにその共役複素数を乗じ、前記ソース信号の電力スペクトル・サンプルを提供するステップと、
    前記エコー・リターン・パスの減衰係数を推定するステップと、
    前記推定した減衰係数を用いて前記ソース信号の前記電力スペクトル・サンプルのスケーリングを行い、前記残留エコーの推定による電力スペクトル・サンプルを提供するステップとにより、
    前記残留エコーの電力スペクトルを推定するステップ;
    前記計算した前記通信信号の電力スペクトルに基づき、かつ前記推定した前記残留エコーの電力スペクトルに基づいてフィルタリング特性を調整するステップ;および、
    前記調整したフィルタリング特性を使用して前記通信信号をフィルタリングし、残留エコーを抑圧するステップ;を含み、
    それにおいて、前記計算するステップおよび前記推定するステップの少なくとも一方において、時間ドメインの信号の自己回帰モデルから電力スペクトルが導かれることを特徴とする方法。
  28. 前記通信信号の電力スペクトルを計算するステップは:
    前記通信信号の時間ドメインにおける多数のサンプルの自己回帰モデルを計算するステップ;
    前記自己回帰モデルの高速フーリエ変換を計算し、前記通信信号の複素周波数ドメインにおける多数のサンプルを提供するステップ;および、
    前記通信信号の複素周波数ドメインにおける各サンプルにその共役複素数を乗じ、前記通信信号の電力スペクトル・サンプルを提供するステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項27記載の方法。
  29. 前記通信信号は、入力信号に基づき、かつ、前記入力信号のエコー成分の推定値に基づいて適応エコー・キャンセラによって出力され、それにおいて前記残留エコーの電力スペクトルを推定するステップは:
    前記エコー成分の推定値の時間ドメインにおける多数のサンプルの自己回帰モデルを計算するステップ;
    前記自己回帰モデルの高速フーリエ変換を計算し、前記エコー成分の推定値の複素周波数ドメインにおける多数のサンプルを提供するステップ;
    前記エコー成分の推定値の複素周波数ドメインにおける各サンプルにその共役複素数を乗じ、前記エコー成分の推定値の電力スペクトル・サンプルを提供するステップ;および、
    前記エコー成分の推定値の電力スペクトル・サンプルを、前記適応エコー・キャンセラの動作に基づいてスケーリングし、前記残留エコーの電力スペクトル推定値を提供するステップ;
    を包含することを特徴とする前記請求項27記載の方法。
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