JP2004537219A - 高調波計算のための非線形エコーサプレッサを備えたエコーキャンセラ - Google Patents
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Abstract
通信チャネルを介して相互に接続されたステーションを有する通信システムが開示され、少なくとも1つのステーションはエコーキャンセル(EC)手段を有する。EC手段は、ステーションにおける線形エコー効果をシミュレートする適応EC手段と、適応EC手段に接続され、減算器出力を有する減算器と、通信ステーションにおける追加のエコー効果をシミュレートするために減算器出力に接続された非線形EC手段とを含む。非線形EC手段は、減算器出力に接続された高調波抑制ポストプロセッサ手段として構成され、出力されたより高い高調波に基づき非線形エコーキャンセルを実行する。全二重音響エコーキャンセルのための低コストアルゴリズムが提示され、ここにおいて、周波数に依存する非線形性の減衰は、非線形に歪められたエコー成分を処理する。本システムは、モバイル電話、ビデオ電話及び会議電話などによる高負荷のハンドフリー通信に好適である。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信チャネルを介して相互に接続されたステーションを備えた通信システムであって、前記ステーションの少なくとも1つは、前記ステーションにおける線形エコー効果をシミュレートする適応EC手段と、前記適応EC手段に接続され、減算器出力を有する減算器と、前記通信ステーションにおける追加のエコー効果をシミュレートするために前記減算器出力に接続された非線形EC手段と、を含むエコーキャンセル(EC)手段を備えた通信システムに関する。
【0002】
また、本発明は、通信システムに含まれる線形成分に起因するエコーをキャンセルする、上記通信システムに適用されるエコーキャンセル手段及びそのような通信システムにおけるエコーキャンセル方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エコーキャンセリング技術は国際公開第97/45995号パンフレットによって知られる。そのエコーキャンセリング技術は、例えば通信システムにおける線形歪みに起因するエコー効果といった干渉成分を抑制する。通信システムは、近端(near end)及び遠端(far end)の話者のステーションを有する。ステーションは通信チャネルを介して相互に接続される。ステーションは、オーディオエコーパスを介して相互に接続された、ラウドスピーカ及びマイクロフォンの組み合わせと、エコーキャンセル手段とを含む。エコーキャンセル(EC)手段は、オーディオエコーパスの線形部分を評価するためにラウドスピーカに接続されたエコーキャンセラを含む。減算器の入力はマイクロフォン及びEC手段のそれぞれに接続される。ECシステムは、減算出力に接続された非線形プロセッサ(フィルタ)としてのEC手段をも含む。非線形プロセッサは、線形エコーキャンセラによって完全には処理されていない追加の線形エコーを減じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この公知のシステムには、通信システムにおける非線形成分から生じるエコー効果を処理できないという欠点があった。
【0005】
本発明の目的は、種々のタイプの線形エコー効果の他に非線形エコー効果も処理できる、エコーキャンセル特性を改善した通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った通信システムは、非線形EC手段が、減算器出力に接続されたハーモニック(高調波)抑制ポストプロセッサ手段として構成され、出力されたより高い高調波(ハーモニクス)に基づき非線形エコーキャンセルを実行することを特徴とする。
【0007】
本発明は、好適には、高調波が、通信システムにおける非線形成分に起因するという広く知られた事実を用いる。これらのいわゆる非線形性の成分は、例えば、システムにおけるメカニクスから生じ得、または、例えばラウドスピーカアンプといったラウドスピーカあるいはアンプによるエコーパスにおける非線形歪みによって引き起こされ得、あるいはシステムにおけるフィルタによって引き起こされ得、入力即ち非常に大きいライン信号振幅に起因して、あるいは、関連する通信回路に適用される半導体のような構成要素の非線形の振る舞いに起因して、飽和状態になり得る。妨げとなるこれらの高調波が非線形性の成分に起因するという限りにおいて、高調波抑制ポストプロセッサ手段によるこれらの高調波の抑制は、簡素で機能的な高度に調整された非線形エコーキャンセルのための有力な手段として提示される。近端話者信号周波数は、たとえ非線形遠端エコー信号の高調波周波数で生じたとしても、そのままである。最後に、線形エコー効果、残りの線形エコー効果の他に非線形エコー効果も、本発明に従った通信システムによって十分に抑制される。
【0008】
本発明に従った通信システムの実施例は、システムにおけるライン通信信号レベルが実効的な高調波歪みを引き起こすと、高調波抑制手段が効果的に動作するように制御されることを特徴とする。
【0009】
本発明に従った通信システムのこの実施例の利点として、通信システムにおけるライン信号レベルが、非線形歪みが期待され得る及び/又は実際に生じるような状態にある場合に、高調波抑制手段が動作を開始するだけということがある。
【0010】
本発明に従った通信システムのさらなる実施例は、高調波抑制手段が、上記高調波を抑制するためのスペクトルゲイン関数を計算するスペクトルゲイン計算手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に従った通信システムの利点として、スペクトルゲイン関数あるいはシステムにおける代表的な通信信号のスペクトル周波数成分の振幅の計算に関連する計算が、例えば適正な高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて比較的簡単に達成できることがある。
【0012】
本発明に従った通信システムのさらなる実施例は、高調波抑制手段が、非線形性を有する記憶を考慮に入れることを特徴とする。
【0013】
この実施例は、非線形性を示す反響すなわち記憶効果を好適に処理する。
【0014】
以下、本発明に従った通信システムが、さらなる追加の利点と共に明確にされ、添付図面が参照され、図面においては、同様の構成要素は同じ参照番号によって参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、通信システム2における1つのステーション1を示す。一般的に、通信システム2は、双方向通信チャネル3を介して互いに接続された2つ以上のステーション1を有する。通信システム2は、例えば、オーディオ及び/あるいはビデオ会議システムあるいは携帯電話システムであり得る。そのようなシステムは、ハンドフリーシステムであってもなくてもよい。図1の実施例において、システム2は、ラウドスピーカ4及びマイクロフォン5によって形成される少なくとも1つのオーディオパスPを有する。いわゆるライン信号は、遠端話者を有する遠端ステーションから、近端話者を有する近端ステーション1へ、ハイブリッドあるいはフォーク回路を介して、並びに、いくつかのラインアンプ及びフィルタ(図示せず)を介して、チャネル3上を送られる。
【0016】
そのようなステーション1は、エコーをキャンセルするエコーキャンセル(EC)手段6を備える。エコーは、ラウドスピーカ4によるライン信号出力の一部がマイクロフォン5へのエコーパスPを介してフィードバックされることによって生じ、遠端リスナによって聴かれ、逆の場合も同様にして、近端リスナによって聴かれる。EC手段6は、基本的にエコーパスPに並列に接続された適応EC手段7を備える。EC手段6は、ステーション1におけるエコーパスPの線形エコー効果をシミュレートする。いくつかの好適な適応フィルタアルゴリズムが、S.Haykin, Prentice-Hall(NJ, USA)によって著された教科書「適応フィルタ理論」(ISBN 0-13-004052-5025)に記述され、その内容がここに含まれる。いくつかの好適な適応フィルタアルゴリズムは、例えば、(正規化された)最小2乗平均アルゴリズム、周波数領域適応フィルタアルゴリズム、アフィン写像アルゴリズムである。フィルタアルゴリズムを選択することに加え、近端話者がアクティブになったときに、適切なメカニズムが、EC手段6において適用されるフィルタ係数適応過程を停止あるいは少なくとも減速する必要がある。理想的に、適応フィルタは、ラウドスピーカ4及びマイクロフォン5間の伝達関数の線形部分を模倣して、マイクロフォン5によって受け取られるファー(far)エコーを推定する。EC手段6は、さらに、2つの入力9、10及び出力11を有する減算器8を備える。減算器入力9は、適応EC手段7に接続され、入力10は、マイクロフォン5に接続される。入力10におけるマイクロフォン信号から、適応EC手段7によって推定されたエコーを減算した後、近端話者信号だけが、減算器出力11において維持される。
【0017】
実際、明らかに、そのような適応EC手段7は、通信システム1におけるエコーを部分的に除去できるだけである。システム1におけるEC手段6は、さらに、減算器出力11に接続されたダイナミックEC手段12を備える。これらのダイナミックEC手段12は、話者を含む部屋における動きといった、線形歪みのダイナミックエコー効果を追加的に処理可能である。これは、特に、通信システム1が、ハンドフリーで移動可能な1以上のステーション1を有するハンドフリーシステムである場合に起こる。また、部屋内における音響特性が継続的に変化し、適応EC手段6におけるトラッキングの困難性を引き起こす。また、これらのEC手段6は、あまりに少ない係数を有するので、パスあるいは複数のパスPの正確な伝達関数をモデリングできず、線形エコーキャンセルの結果は低質になる。ダイナミックEC手段12は、スペクトル・ポストプロセッサを構成し、部屋における動き及び及びアンダーモデリング(under modeling)を同時に処理し、追加の線形エコーを常時十分に抑制する。ダイナミックEC手段12の動作及び構成の詳細が国際公開第97/45995号パンフレットに記載され、その内容がここに含まれる。
【0018】
いま図2を参照して、ECスペクトルプロセッサ手段12の動作を説明する。ここで、周波数スペクトルの例が2つの状態でプロットされており、望まれないエコー成分は実線で示され、望まれる近端成分が破線で示される。遠端話者は、振幅周波数スペクトル|X|を有するライン信号xを生成する。マイクロフォンは、振幅周波数スペクトル|E|を有する、望まれない音響エコーeを、振幅周波数スペクトル|S|を有する所望の近端信号sに加算して受け取る。適応EC手段7は、ラウドスピーカ信号xをフィルタに通して、振幅周波数スペクトル|Y|を有する推定エコー信号yを生成する。アンダーモデリング及び話者が存在する部屋における動きの影響を受けるため、残存信号rから完全にはエコーがなくならず、そのことは残存振幅スペクトル|R|の例から分かる。信号y、rの両方とも、ダイナミックEC手段、いわゆるダイナミックエコーサプレッサ(DES)12の入力となり、これは、残存エコーをさらに抑制する。この目的のため、DES12は、信号yからスペクトルゲイン関数Aを計算する。破線によって示されるように、この関数Aは、信号xからも計算され得る。DES12の出力qは、修正された振幅スペクトル|A||R|及び修正されていないRのフェーズから復元される。信号qには線形エコーが存在せず、その周波数スペクトルから分かるように、依然として所望の近端信号sを含む。
【0019】
次に、ゲイン関数Aの計算についてさらに詳しく説明する。DES12は、Bサンプルの入力フレームを集め、その入力データをウィンドウし、その結果を、|Y(f;lB)|、|Z(f;lB)|及び|R(f;lB)|に示される、スペクトル振幅成分に変換する。fは周波数インデックス、lBはデータフレームインデックスであり、Bサンプリングした後に1単位上昇させられる。次に、DES12は、周波数に依存する(非負の)減衰A(f;lB)を、以下の式に従って|R(f;lB)|に適用する。
【0020】
【数1】
γe は、エコー減数ファクタと称される定数であり、典型的には1よりも少し大きい。さらに、ある周波数においてA(f;lB)>1のとき、A(f;lB)は1にセットされる。従って、近端信号と同等の強い遠端エコー(yはエコーの推定値であることに注意する)を伴った帯域では残存信号rは減衰し、近端信号が遠端エコーよりも大きい帯域では残存信号rはおよそ同じに維持される。最後に、減衰した残存信号は時間領域に戻され、そのため、ダイナミックEC手段12の入力では元のフェーズが用いられる。適応EC手段7及びダイナミックEC手段12による結合処理は、非常に強固な全二重アルゴリズムを与え、例えば部屋内における反響(適応EC手段7によって処理できない)といった音響特性を変える部屋内における動きを処理でき、また、アンダーモデリングを処理できる。
【0021】
様々な変更が、上述した線形エコーキャンセル処理に対してなされ得る。例えば、マイクロフォン信号におけるノイズの推定値が利用できる場合、DES12は、ノイズ振幅スペクトラム|N(f;lB)|に基づき、ノイズの抑制を達成する。そのとき、減衰A(f;lB)は、以下の式によって与えられる。
【0022】
【数2】
上の式において、γnは、ノイズ減数ファクタである。
【0023】
さらに、(ショート)適応EC手段7によってカバーされなかった、音響の推定された後部反響音を用いて、|Y(f;lB)|を増大できる。
【0024】
別の例として、連続したフレームの減衰A(f;lB)が、より段階的なフレームの推移(gradual frame transition)を達成するために、時間が経つと(over time)、ローパスフィルタリングされる。
【0025】
図3は、通信システム1に用いられるダイナミックEC手段12及び非線形ポストプロセッサ・エコーキャンセル手段13を有する音響エコーキャンセル手段6を示す。非線形EC手段13は、EC手段12を介して減算器出力11に接続される。非線形EC手段13は、出力されたより高い高調波(ハーモニクス)に基づいて非線形エコーキャンセルを実行するダイナミックEC手段12に接続されたハーモニック(高調波)抑制ポストプロセッサ手段として構成される。
【0026】
次に、非線形EC手段13の動作について説明する。非線形EC手段13は、特に、特別なスペクトルの減算器を用いて、出力信号qの非線形エコー成分を除去する。前述に示したスペクトルの例は、図3に示す黒塗りで示すように、非線形エコー成分の高調波をさらに含む。DES12の出力qは、依然として、エコー成分、即ち、非線形高調波を含む。これらの高調波の抑制のために、適応EC手段7の出力信号yから、スペクトルのゲイン関数B(f;lB)が計算される。この目的のため、さらに、信号x(破線)を用いることができる。非線形スペクトルの高調波抑制ポストプロセッサ手段の出力pは、修正された振幅スペクトル|B(f;lB)| |Q(f;lB)|及び修正されていないQ(f;lB)のフェーズから復元され、それはR(f;lB)のフェーズと同一である。
【0027】
スペクトルのゲイン関数B(f;lB)は、全体のゲイン関数A'(f;lB)=A(f;lB) B(f;lB)
【数3】
を満たす。
【0028】
再び、ある周波数で、A'(f;lB)>1のとき、A'(f;lB)は1にセットされる。実際は、それは、上で実行された結合されたゲインA'(f;lB)であり、ゲインA'(f;lB) 及びB(f;lB)は別々に存在しないことに注意すべきである。スペクトル|\(f;lB)|は、|Y(f;lB)|の特別な形であり、以下によって定められる。
【0029】
【数4】
【数5】
また、G(y;lB)(0≦G(y;lB)≦1)は実数であり、推定されたエコーレベルに比例する。また、G(y;lB)=G0(Py, direct(lB) + Py, diffuse(lB))である。
【0030】
G0は、0≦G(y;lB)≦1であり、Py, direct(lB)が以下の式によって与えられる推定された直接エコー寄与のパワーであるような、固定された定数である。
【0031】
【数6】
ここで、D(0≦D≦1)は、適応EC手段7の出力yの直接/拡散音レートに従って選ばれる固定パラメータである。全ての拡散音のパワー寄与Py, diffuse(lB)は、適応ECフィルタ手段7の出力yの拡散部分のパワー寄与で最初のオーダリカージョン(order recursion)として計算され得る。
【0032】
(ここで、拡散部分は、メモリパラメータαrevを伴った
【数7】
即ち、
【数8】
によって与えられる)
αrevの適正な値は、αrev=10-q, q=6B/(FsT60) によって与えられる。
【0033】
ここで、Fsは、サンプリング周波数、T60は、部屋音響の残響時間である。
【0034】
手段13による上述した非線形ポスト処理の結合された効果は以下の通りである。低いエコーレベルにおいて非線形性が僅かであることが期待できる場合、G(y;lB)は小さい数であり、A'(f;lB)=A(f;lB)となり、非線形性抑制手段13は事実上無効となる。上昇したエコーレベルでは、エコー歪みは相対的に増大する。この振る舞いは、G(f;lB)の増加値によってシミュレートされる。G(f;lB)の増加に伴い、非線形高調波が期待される周波数において、A' (f;lB)<A(F;lB)を得ることができ、その結果、非線形エコーは抑制される。
【0035】
図4及び図5の例は、非線形高調波抑制手段13の動作を説明するための振幅スペクトルを示す。両図において、左側は、出力信号yの短時間振幅スペクトル|Y(f;lB)|を示す。図4において、|Y(f;lB)|の絶対レベルは、図5よりも小さく、そのことは、概念的に、表示“(低)”“(高)”によって示される。両図の右側は、シェイプされた振幅スペクトル|\(f;lB)|を両ケースに対して示す。図4において、エコーレベルは小さく、従って、非線形性が期待されず、G(f;lB)は小さく、式(1)により、|¥(f;lB)|≒|Y(f;lB)|を得る。図5において、エコーレベルは非常に大きいため、非線形性が期待され、G(f;lB)は非常に大きく、式(1)により、非線形性が期待される周波数において、|\(f;lB)|>|Y(f;lB)|を保持でき、この結果、A' (f;lB)<A(F;lB)となり、非線形性は抑制される。同時に、2重通話(ダブルトーク)の間、多くの周波数が存在し、近端信号振幅は|\(f;lB)|よりも大きく(A' (f;lB)>0がもたらされる)、この結果、近端話者は遠端話者を阻害し得、全二重通信は可能に維持される。
【0036】
さらなる式(1)の拡張は、非線形性が記憶を有し得ることを考慮に入れる。式(1)においてなされるように、|\(f;lB)|の計算のために現在の|Y(f;lB)|を考慮するだけでは十分ではない。種々の周知の方法で組み込まれ得る記憶は、
【数9】
で表される。ここで、βは、期待される非線形性の記憶に依存する固定パラメータ(0≦β<1)である。
【0037】
上述では、好ましい実施例及び最適な可能性ある形態を参照して説明してきたが、これらの実施例は、関係のある装置の例を制限するものではなく、添付されたクレームの範囲内で、種々の修正、特徴及び特徴の組み合わせが、当業者にとって理解され得る。さらに、上述したアルゴリズムは、多くのマイクロフォンあるいは多くのラウドスピーカを有するマルチチャネル全二重システムへ直接拡張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に従った通信システムの可能性ある実施例の概念図である。
【図2】従来技術の通信システムにおいて線形エコーキャンセルのためにポストプロセッサ手段を備えた音響エコーキャンセラを示す。
【図3】図1の通信システムにおいて線形及び非線形エコーキャンセルのためのポストプロセッサ手段を備えた音響エコーキャンセラを示す。
【図4】非線形エコーキャンセルのための図3に示すポストプロセッサ手段の動作を説明する振幅スペクトルを示す。
【図5】非線形エコーキャンセルのための図3に示すポストプロセッサ手段の動作を説明する振幅スペクトルを示す。
【0001】
本発明は、通信チャネルを介して相互に接続されたステーションを備えた通信システムであって、前記ステーションの少なくとも1つは、前記ステーションにおける線形エコー効果をシミュレートする適応EC手段と、前記適応EC手段に接続され、減算器出力を有する減算器と、前記通信ステーションにおける追加のエコー効果をシミュレートするために前記減算器出力に接続された非線形EC手段と、を含むエコーキャンセル(EC)手段を備えた通信システムに関する。
【0002】
また、本発明は、通信システムに含まれる線形成分に起因するエコーをキャンセルする、上記通信システムに適用されるエコーキャンセル手段及びそのような通信システムにおけるエコーキャンセル方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エコーキャンセリング技術は国際公開第97/45995号パンフレットによって知られる。そのエコーキャンセリング技術は、例えば通信システムにおける線形歪みに起因するエコー効果といった干渉成分を抑制する。通信システムは、近端(near end)及び遠端(far end)の話者のステーションを有する。ステーションは通信チャネルを介して相互に接続される。ステーションは、オーディオエコーパスを介して相互に接続された、ラウドスピーカ及びマイクロフォンの組み合わせと、エコーキャンセル手段とを含む。エコーキャンセル(EC)手段は、オーディオエコーパスの線形部分を評価するためにラウドスピーカに接続されたエコーキャンセラを含む。減算器の入力はマイクロフォン及びEC手段のそれぞれに接続される。ECシステムは、減算出力に接続された非線形プロセッサ(フィルタ)としてのEC手段をも含む。非線形プロセッサは、線形エコーキャンセラによって完全には処理されていない追加の線形エコーを減じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この公知のシステムには、通信システムにおける非線形成分から生じるエコー効果を処理できないという欠点があった。
【0005】
本発明の目的は、種々のタイプの線形エコー効果の他に非線形エコー効果も処理できる、エコーキャンセル特性を改善した通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った通信システムは、非線形EC手段が、減算器出力に接続されたハーモニック(高調波)抑制ポストプロセッサ手段として構成され、出力されたより高い高調波(ハーモニクス)に基づき非線形エコーキャンセルを実行することを特徴とする。
【0007】
本発明は、好適には、高調波が、通信システムにおける非線形成分に起因するという広く知られた事実を用いる。これらのいわゆる非線形性の成分は、例えば、システムにおけるメカニクスから生じ得、または、例えばラウドスピーカアンプといったラウドスピーカあるいはアンプによるエコーパスにおける非線形歪みによって引き起こされ得、あるいはシステムにおけるフィルタによって引き起こされ得、入力即ち非常に大きいライン信号振幅に起因して、あるいは、関連する通信回路に適用される半導体のような構成要素の非線形の振る舞いに起因して、飽和状態になり得る。妨げとなるこれらの高調波が非線形性の成分に起因するという限りにおいて、高調波抑制ポストプロセッサ手段によるこれらの高調波の抑制は、簡素で機能的な高度に調整された非線形エコーキャンセルのための有力な手段として提示される。近端話者信号周波数は、たとえ非線形遠端エコー信号の高調波周波数で生じたとしても、そのままである。最後に、線形エコー効果、残りの線形エコー効果の他に非線形エコー効果も、本発明に従った通信システムによって十分に抑制される。
【0008】
本発明に従った通信システムの実施例は、システムにおけるライン通信信号レベルが実効的な高調波歪みを引き起こすと、高調波抑制手段が効果的に動作するように制御されることを特徴とする。
【0009】
本発明に従った通信システムのこの実施例の利点として、通信システムにおけるライン信号レベルが、非線形歪みが期待され得る及び/又は実際に生じるような状態にある場合に、高調波抑制手段が動作を開始するだけということがある。
【0010】
本発明に従った通信システムのさらなる実施例は、高調波抑制手段が、上記高調波を抑制するためのスペクトルゲイン関数を計算するスペクトルゲイン計算手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に従った通信システムの利点として、スペクトルゲイン関数あるいはシステムにおける代表的な通信信号のスペクトル周波数成分の振幅の計算に関連する計算が、例えば適正な高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて比較的簡単に達成できることがある。
【0012】
本発明に従った通信システムのさらなる実施例は、高調波抑制手段が、非線形性を有する記憶を考慮に入れることを特徴とする。
【0013】
この実施例は、非線形性を示す反響すなわち記憶効果を好適に処理する。
【0014】
以下、本発明に従った通信システムが、さらなる追加の利点と共に明確にされ、添付図面が参照され、図面においては、同様の構成要素は同じ参照番号によって参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、通信システム2における1つのステーション1を示す。一般的に、通信システム2は、双方向通信チャネル3を介して互いに接続された2つ以上のステーション1を有する。通信システム2は、例えば、オーディオ及び/あるいはビデオ会議システムあるいは携帯電話システムであり得る。そのようなシステムは、ハンドフリーシステムであってもなくてもよい。図1の実施例において、システム2は、ラウドスピーカ4及びマイクロフォン5によって形成される少なくとも1つのオーディオパスPを有する。いわゆるライン信号は、遠端話者を有する遠端ステーションから、近端話者を有する近端ステーション1へ、ハイブリッドあるいはフォーク回路を介して、並びに、いくつかのラインアンプ及びフィルタ(図示せず)を介して、チャネル3上を送られる。
【0016】
そのようなステーション1は、エコーをキャンセルするエコーキャンセル(EC)手段6を備える。エコーは、ラウドスピーカ4によるライン信号出力の一部がマイクロフォン5へのエコーパスPを介してフィードバックされることによって生じ、遠端リスナによって聴かれ、逆の場合も同様にして、近端リスナによって聴かれる。EC手段6は、基本的にエコーパスPに並列に接続された適応EC手段7を備える。EC手段6は、ステーション1におけるエコーパスPの線形エコー効果をシミュレートする。いくつかの好適な適応フィルタアルゴリズムが、S.Haykin, Prentice-Hall(NJ, USA)によって著された教科書「適応フィルタ理論」(ISBN 0-13-004052-5025)に記述され、その内容がここに含まれる。いくつかの好適な適応フィルタアルゴリズムは、例えば、(正規化された)最小2乗平均アルゴリズム、周波数領域適応フィルタアルゴリズム、アフィン写像アルゴリズムである。フィルタアルゴリズムを選択することに加え、近端話者がアクティブになったときに、適切なメカニズムが、EC手段6において適用されるフィルタ係数適応過程を停止あるいは少なくとも減速する必要がある。理想的に、適応フィルタは、ラウドスピーカ4及びマイクロフォン5間の伝達関数の線形部分を模倣して、マイクロフォン5によって受け取られるファー(far)エコーを推定する。EC手段6は、さらに、2つの入力9、10及び出力11を有する減算器8を備える。減算器入力9は、適応EC手段7に接続され、入力10は、マイクロフォン5に接続される。入力10におけるマイクロフォン信号から、適応EC手段7によって推定されたエコーを減算した後、近端話者信号だけが、減算器出力11において維持される。
【0017】
実際、明らかに、そのような適応EC手段7は、通信システム1におけるエコーを部分的に除去できるだけである。システム1におけるEC手段6は、さらに、減算器出力11に接続されたダイナミックEC手段12を備える。これらのダイナミックEC手段12は、話者を含む部屋における動きといった、線形歪みのダイナミックエコー効果を追加的に処理可能である。これは、特に、通信システム1が、ハンドフリーで移動可能な1以上のステーション1を有するハンドフリーシステムである場合に起こる。また、部屋内における音響特性が継続的に変化し、適応EC手段6におけるトラッキングの困難性を引き起こす。また、これらのEC手段6は、あまりに少ない係数を有するので、パスあるいは複数のパスPの正確な伝達関数をモデリングできず、線形エコーキャンセルの結果は低質になる。ダイナミックEC手段12は、スペクトル・ポストプロセッサを構成し、部屋における動き及び及びアンダーモデリング(under modeling)を同時に処理し、追加の線形エコーを常時十分に抑制する。ダイナミックEC手段12の動作及び構成の詳細が国際公開第97/45995号パンフレットに記載され、その内容がここに含まれる。
【0018】
いま図2を参照して、ECスペクトルプロセッサ手段12の動作を説明する。ここで、周波数スペクトルの例が2つの状態でプロットされており、望まれないエコー成分は実線で示され、望まれる近端成分が破線で示される。遠端話者は、振幅周波数スペクトル|X|を有するライン信号xを生成する。マイクロフォンは、振幅周波数スペクトル|E|を有する、望まれない音響エコーeを、振幅周波数スペクトル|S|を有する所望の近端信号sに加算して受け取る。適応EC手段7は、ラウドスピーカ信号xをフィルタに通して、振幅周波数スペクトル|Y|を有する推定エコー信号yを生成する。アンダーモデリング及び話者が存在する部屋における動きの影響を受けるため、残存信号rから完全にはエコーがなくならず、そのことは残存振幅スペクトル|R|の例から分かる。信号y、rの両方とも、ダイナミックEC手段、いわゆるダイナミックエコーサプレッサ(DES)12の入力となり、これは、残存エコーをさらに抑制する。この目的のため、DES12は、信号yからスペクトルゲイン関数Aを計算する。破線によって示されるように、この関数Aは、信号xからも計算され得る。DES12の出力qは、修正された振幅スペクトル|A||R|及び修正されていないRのフェーズから復元される。信号qには線形エコーが存在せず、その周波数スペクトルから分かるように、依然として所望の近端信号sを含む。
【0019】
次に、ゲイン関数Aの計算についてさらに詳しく説明する。DES12は、Bサンプルの入力フレームを集め、その入力データをウィンドウし、その結果を、|Y(f;lB)|、|Z(f;lB)|及び|R(f;lB)|に示される、スペクトル振幅成分に変換する。fは周波数インデックス、lBはデータフレームインデックスであり、Bサンプリングした後に1単位上昇させられる。次に、DES12は、周波数に依存する(非負の)減衰A(f;lB)を、以下の式に従って|R(f;lB)|に適用する。
【0020】
【数1】
γe は、エコー減数ファクタと称される定数であり、典型的には1よりも少し大きい。さらに、ある周波数においてA(f;lB)>1のとき、A(f;lB)は1にセットされる。従って、近端信号と同等の強い遠端エコー(yはエコーの推定値であることに注意する)を伴った帯域では残存信号rは減衰し、近端信号が遠端エコーよりも大きい帯域では残存信号rはおよそ同じに維持される。最後に、減衰した残存信号は時間領域に戻され、そのため、ダイナミックEC手段12の入力では元のフェーズが用いられる。適応EC手段7及びダイナミックEC手段12による結合処理は、非常に強固な全二重アルゴリズムを与え、例えば部屋内における反響(適応EC手段7によって処理できない)といった音響特性を変える部屋内における動きを処理でき、また、アンダーモデリングを処理できる。
【0021】
様々な変更が、上述した線形エコーキャンセル処理に対してなされ得る。例えば、マイクロフォン信号におけるノイズの推定値が利用できる場合、DES12は、ノイズ振幅スペクトラム|N(f;lB)|に基づき、ノイズの抑制を達成する。そのとき、減衰A(f;lB)は、以下の式によって与えられる。
【0022】
【数2】
上の式において、γnは、ノイズ減数ファクタである。
【0023】
さらに、(ショート)適応EC手段7によってカバーされなかった、音響の推定された後部反響音を用いて、|Y(f;lB)|を増大できる。
【0024】
別の例として、連続したフレームの減衰A(f;lB)が、より段階的なフレームの推移(gradual frame transition)を達成するために、時間が経つと(over time)、ローパスフィルタリングされる。
【0025】
図3は、通信システム1に用いられるダイナミックEC手段12及び非線形ポストプロセッサ・エコーキャンセル手段13を有する音響エコーキャンセル手段6を示す。非線形EC手段13は、EC手段12を介して減算器出力11に接続される。非線形EC手段13は、出力されたより高い高調波(ハーモニクス)に基づいて非線形エコーキャンセルを実行するダイナミックEC手段12に接続されたハーモニック(高調波)抑制ポストプロセッサ手段として構成される。
【0026】
次に、非線形EC手段13の動作について説明する。非線形EC手段13は、特に、特別なスペクトルの減算器を用いて、出力信号qの非線形エコー成分を除去する。前述に示したスペクトルの例は、図3に示す黒塗りで示すように、非線形エコー成分の高調波をさらに含む。DES12の出力qは、依然として、エコー成分、即ち、非線形高調波を含む。これらの高調波の抑制のために、適応EC手段7の出力信号yから、スペクトルのゲイン関数B(f;lB)が計算される。この目的のため、さらに、信号x(破線)を用いることができる。非線形スペクトルの高調波抑制ポストプロセッサ手段の出力pは、修正された振幅スペクトル|B(f;lB)| |Q(f;lB)|及び修正されていないQ(f;lB)のフェーズから復元され、それはR(f;lB)のフェーズと同一である。
【0027】
スペクトルのゲイン関数B(f;lB)は、全体のゲイン関数A'(f;lB)=A(f;lB) B(f;lB)
【数3】
を満たす。
【0028】
再び、ある周波数で、A'(f;lB)>1のとき、A'(f;lB)は1にセットされる。実際は、それは、上で実行された結合されたゲインA'(f;lB)であり、ゲインA'(f;lB) 及びB(f;lB)は別々に存在しないことに注意すべきである。スペクトル|\(f;lB)|は、|Y(f;lB)|の特別な形であり、以下によって定められる。
【0029】
【数4】
【数5】
また、G(y;lB)(0≦G(y;lB)≦1)は実数であり、推定されたエコーレベルに比例する。また、G(y;lB)=G0(Py, direct(lB) + Py, diffuse(lB))である。
【0030】
G0は、0≦G(y;lB)≦1であり、Py, direct(lB)が以下の式によって与えられる推定された直接エコー寄与のパワーであるような、固定された定数である。
【0031】
【数6】
ここで、D(0≦D≦1)は、適応EC手段7の出力yの直接/拡散音レートに従って選ばれる固定パラメータである。全ての拡散音のパワー寄与Py, diffuse(lB)は、適応ECフィルタ手段7の出力yの拡散部分のパワー寄与で最初のオーダリカージョン(order recursion)として計算され得る。
【0032】
(ここで、拡散部分は、メモリパラメータαrevを伴った
【数7】
即ち、
【数8】
によって与えられる)
αrevの適正な値は、αrev=10-q, q=6B/(FsT60) によって与えられる。
【0033】
ここで、Fsは、サンプリング周波数、T60は、部屋音響の残響時間である。
【0034】
手段13による上述した非線形ポスト処理の結合された効果は以下の通りである。低いエコーレベルにおいて非線形性が僅かであることが期待できる場合、G(y;lB)は小さい数であり、A'(f;lB)=A(f;lB)となり、非線形性抑制手段13は事実上無効となる。上昇したエコーレベルでは、エコー歪みは相対的に増大する。この振る舞いは、G(f;lB)の増加値によってシミュレートされる。G(f;lB)の増加に伴い、非線形高調波が期待される周波数において、A' (f;lB)<A(F;lB)を得ることができ、その結果、非線形エコーは抑制される。
【0035】
図4及び図5の例は、非線形高調波抑制手段13の動作を説明するための振幅スペクトルを示す。両図において、左側は、出力信号yの短時間振幅スペクトル|Y(f;lB)|を示す。図4において、|Y(f;lB)|の絶対レベルは、図5よりも小さく、そのことは、概念的に、表示“(低)”“(高)”によって示される。両図の右側は、シェイプされた振幅スペクトル|\(f;lB)|を両ケースに対して示す。図4において、エコーレベルは小さく、従って、非線形性が期待されず、G(f;lB)は小さく、式(1)により、|¥(f;lB)|≒|Y(f;lB)|を得る。図5において、エコーレベルは非常に大きいため、非線形性が期待され、G(f;lB)は非常に大きく、式(1)により、非線形性が期待される周波数において、|\(f;lB)|>|Y(f;lB)|を保持でき、この結果、A' (f;lB)<A(F;lB)となり、非線形性は抑制される。同時に、2重通話(ダブルトーク)の間、多くの周波数が存在し、近端信号振幅は|\(f;lB)|よりも大きく(A' (f;lB)>0がもたらされる)、この結果、近端話者は遠端話者を阻害し得、全二重通信は可能に維持される。
【0036】
さらなる式(1)の拡張は、非線形性が記憶を有し得ることを考慮に入れる。式(1)においてなされるように、|\(f;lB)|の計算のために現在の|Y(f;lB)|を考慮するだけでは十分ではない。種々の周知の方法で組み込まれ得る記憶は、
【数9】
で表される。ここで、βは、期待される非線形性の記憶に依存する固定パラメータ(0≦β<1)である。
【0037】
上述では、好ましい実施例及び最適な可能性ある形態を参照して説明してきたが、これらの実施例は、関係のある装置の例を制限するものではなく、添付されたクレームの範囲内で、種々の修正、特徴及び特徴の組み合わせが、当業者にとって理解され得る。さらに、上述したアルゴリズムは、多くのマイクロフォンあるいは多くのラウドスピーカを有するマルチチャネル全二重システムへ直接拡張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に従った通信システムの可能性ある実施例の概念図である。
【図2】従来技術の通信システムにおいて線形エコーキャンセルのためにポストプロセッサ手段を備えた音響エコーキャンセラを示す。
【図3】図1の通信システムにおいて線形及び非線形エコーキャンセルのためのポストプロセッサ手段を備えた音響エコーキャンセラを示す。
【図4】非線形エコーキャンセルのための図3に示すポストプロセッサ手段の動作を説明する振幅スペクトルを示す。
【図5】非線形エコーキャンセルのための図3に示すポストプロセッサ手段の動作を説明する振幅スペクトルを示す。
Claims (6)
- 通信チャネルを介して互いに接続されたステーションを備えた通信システムであって、
前記ステーションの少なくとも1つは、前記ステーションにおける線形エコー効果をシミュレートする適応EC手段と、前記適応EC手段に接続され、減算器出力を有する減算器と、前記通信ステーションにおける追加のエコー効果をシミュレートするために前記減算器出力に接続された非線形EC手段と、を含むエコーキャンセル(EC)手段を備え、
前記非線形EC手段は、出力されたより高い高調波に基づいて非線形エコーキャンセルを実行する、前記減算器出力に接続された高調波抑制ポストプロセッサとして構成されたことを特徴とする通信システム。 - 前記高調波抑制手段は、前記システムにおけるライン通信信号レベルが、実効的な高調波歪みを引き起こした場合に、動作を開始するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
- 前記高調波抑制手段は、前記高調波の抑制のためにスペクトルゲイン関数を計算するスペクトルゲイン計算手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信システム。
- 前記高調波抑制手段は、非線形性を有した記憶を考慮に入れることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の通信システム。
- 請求項1乃至4のいずれかに従った前記通信システムに適用されるエコーキャンセル手段。
- 通信システムにおける線形成分に起因するエコーをキャンセルするエコーキャンセル方法であって、
前記線形成分に起因するエコーをキャンセルするために用いるデータから、非線形成分に起因するエコーをキャンセルするための高調波データを抽出することを特徴とするエコーキャンセル方法。
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