JP4637008B2 - 抗小麦由来非特異的脂質輸送蛋白質モノクローナル抗体。 - Google Patents

抗小麦由来非特異的脂質輸送蛋白質モノクローナル抗体。 Download PDF

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Description

本発明は、小麦由来非特異的脂質輸送蛋白質に対する抗体に関する。更に、本発明は、食品若しくは調味料中の小麦アレルゲンの検査方法及び当該方法への前記抗体の使用に関する。
食品の安全性への関心が、近年、益々高まっている。特に食物アレルギーは、重度の場合、重篤な全身性アナフェラキシー(咽頭の水腫、重度の喘息或いは低血圧等)を引き起こし、時には致命的な障害をもたらす場合もあるため、これらの食物アレルギー症状を有する消費者のみならず食品製造業者・監督官庁にとっても食品の安全性を保全する立場から極めて重要な課題である。現在、当該食物アレルギーによる症状の発生を防止する最も有効な方法は、それらの食物アレルギー発症履歴を有するか潜在的に有する対象者がその食物アレルゲンと接触することを防止するものであるが、厚生労働省は、当該観点から「アレルギー物質を含む食品については、特定のアレルギー体質を持つ方の健康危害の発生を防止する観点から、食物アレルギーを引き起こすことが明らかになった食品のうち、特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高い小麦、そば、卵、乳及び落花生の5品目(以下「特定原材料」という。)を食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号。以下「規則」という。)別表第5の2に掲げ、これらを含む加工食品については、規則第5条に定めるところにより当該特定原材料を含む旨を記載しなければならない」とし、当該5品目を含む食品に対して、それら原材料を含む旨の表示を製造者に義務づけている。
また、消費者の商品選択の幅を不当に狭めることのないよう、当該表示においては、「入っているかもしれません。」「入っている恐れがあります。」等の可能性表示を禁止し、製品への「特定原材料」混入の監視・検査義務を明確にしている。更に、食品を生産する際に、原材料としては使用していないにも関わらず、特定原材料等がごく微量混入(コンタミネーション)してしまう場合にも当該混入が必ず起こり得るならば表示を必要とし、消費者の高度の安全を確保する立場から原則として10μg/g以上程度の混入についても表示するよう求めている。従って、食品製造業者は、上記施行規則を遵守するのは勿論のこと、更なる消費者の安全と適切な商品選択の機会を提供すべく、自らの製品について十分な監視と検査を行うことが望まれている。
ここで、小麦、そば、卵、乳及び落花生の5品目からなる原材料といっても、その組成や形態は勿論のこと、当該原材料を用いる食品類の製造方法は一様ではない。小麦を例にとると、酵母や麹菌等により発酵された調味料等も当該原材料に包含されるし、更に小麦自体が原材料として用いられたとしても、やはりそれも加熱や発酵といった、引き続く食品製造の段階で大幅に変性させられることのほうが寧ろ一般的であるから、完成した食品中に含まれる小麦原材料の存在を少なくとも10μg/gの感度で検査するのは容易でない。
このような高度の検査を達成する検査方法としてはPCRを用いた特異的遺伝子の増幅に基づく検査法があげられるが、当該方法は、現在までのところ、熟練した技術と高い費用や比較的長い検査時間を要し、製造現場での迅速且つ簡便な検査という観点から不利益がある。
当該検査を実行する際の他の有効な選択肢は、上記食品原材料に由来する成分に対する抗体を利用した免疫学的検査方法である。特に、免疫学的な検査方法はELISA法等として広く普及しており、その操作も高度の熟練を必要とせず、精度のよい結果も短時間で得られるので、当該検査の目的には好適である。しかしながら、上記のように、発酵等の引き続く食品製造の段階で大幅に変性させられることのほうが一般的な小麦においては、該免疫学的検査に用いる抗体を惹起する抗原として、いかなる蛋白質等を選択するかが極めて重要な問題となることは論を待たない。つまり、小麦において、引き続く発酵処理等で分解されてしまうにも拘わらず、単に含有量が高い等の理由から安易に特定の蛋白質を選択し、それを抗原として抗体を得たとしても、実際の測定に際しては、当該蛋白質がもはや発酵・加工後の食品中に十分に残存していないこともあり、しかして当該蛋白質に対する抗体での検査は陰性となる場合もあり得、一方で、特定のアレルギー患者に対するアレルゲンとなりうる他の蛋白質等は依然として抗原性を保持しているような場合には、当該検査の目的自体が没却されかねない。言い換えれば、そのような食品の発酵乃至加工処理中に減少してしまうような蛋白質は、食品中への小麦原材料の混入等を検査する指標としては不都合な場合があるのである。
更に、麦類は主要穀物であり、小麦の他、大麦、ライ麦等、極めて近縁の食用原材料を提供する。然るに、そのような近縁種間の交差反応に基づく誤判定は、例えば、本来、小麦に対してのみアレルギー症状を示す消費者の適切な商品選択の機会が損なわれ、また製造者にあっては、誤判定による検査の信頼性の低下と、他の長時間を要するような方法の採用といった損失を招き得るのである。
よって、小麦原材料を、発酵及び/又は加熱等の加工処理による変性後においてさえも極めて鋭敏且つ正確に検査でき、更に大麦等の近縁種との間で誤判定を示さない方法の確立が望まれていた。
同様な観点から、本発明者の一部の者は、先に大麦において上記の要件を満足するようなポリクローナル抗体の創出を報告している(非特許文献1)。当該抗体は、大麦由来の非特異的脂質輸送蛋白質(non−specific Lipid Transfer Protein:以下、「LTP」と略すことがある。)に対して惹起されたものであり、該抗体は、ビール製造時の発酵処理後においても当該大麦由来LTP(以下、「大麦LTP」と略すことがある。小麦由来LTPについても同じ。)を感度よく検出することが示され、また小麦等他の植物由来のLTPとの交差反応も、所与の検査の許容範囲内であることが確認された。
しかしながら、上記食品衛生法施行規則における特定5品目にも掲げられる一方で、食品原材料としては極めて多様な形態で且つ一般的に流通し、従って、大麦等と比べても、時としては製造工程中に予期せずして混入する事態すら想定し得る小麦原材料については、それを更に高感度で検出することが望まれていた。
成田宏史等:「大麦アレルゲン・LTPの定量化」、日本食品科学工学会第51回大会講演集第92頁(2004年)
従って、本発明は、発酵及び/又は加熱等の加工処理による変性後においてさえも極めて鋭敏且つ正確に小麦原材料の存在を検出でき、更に大麦等の近縁種との間で誤判定を示さない、当該原材料の検査方法を提供することを目的とする。とりわけ、食品原材料としては一般的であるにも拘わらず、食品アレルゲンとしていっそうの配慮が要求される小麦についての、極めて高感度な検査方法を提供することは意義深い。
小麦LTPに対して極めて特異的且つ高親和性である特定のモノクローナル抗体が得られた。当該抗小麦LTPモノクローナル抗体は、該LTP蛋白質をラットに対する免疫原として使用して調製されたポリクローナル抗体に比べても、少なくとも10000倍以上高い感度を有していた。また、サンドイッチELISA測定時において、当該モノクローナル抗体の小麦由来LTPに対する感度は、大麦由来のそれに対するそれの100万倍高く、両者に対する当該抗小麦LTPモノクローナル抗体の交差反応性は、実質的に無視できるものであった。
更には、当該モノクローナル抗体の検出限界は、非特許文献1における大麦LTP測定系で確認されたラット抗大麦LTPポリクローナル抗体の、当該大麦抗原に対する検出限界である0.3ng/mlに比べても、少なくとも100倍程度低く、より鋭敏なものであった。
従って、本発明の第一の局面では、
(1)受託番号がFERM P−20687又はFERM P−20688であるハイブリドーマにより生産される、小麦由来非特異的脂質輸送蛋白質に対するモノクローナル抗体(抗小麦LTPモノクローナル抗体)が提供される。
上記抗体を用いることで、醤油やビール等の、発酵或いは発酵及び/又は加熱等の処理がなされた食品類に存在する小麦LTPが感度よく検出されることが示され、これは、当該抗体を用いる検査が、従来の小麦主要蛋白質の1つであるグリアジンに対する抗体でも検査が困難であったような特定の食品においても好適に適用できることを示している。とりわけ、現実的な食品アレルゲン表示においては、個々のアレルゲン蛋白質を網羅してそれらを個別に検査するのではなく、上記グリアジンのような代表的蛋白質の存在を「指標」として、食品への小麦原材料自体の使用・混入を一括的に検査・表示することが一般的である。その際、いっそう高感度の検出が必要な当該アレルゲン表示において、検査の際に抽出される溶液中に存在する含有量的には、高々、抽出前の小麦総蛋白質の約0.6重量%程度と見積もられる小麦LTPのみを指標成分として利用するためには、如何にそれが発酵や加熱に対して安定であったとしても、その十分な検出感度が確保されなければならないのであり、しかして、小麦LTPに対して極めて特異的且つ高親和性である上記特定のモノクローナル抗体の当該用途での意義は大きい。
従って、本発明の第二の局面では、
(2)発酵及び/又は加工食品中の小麦アレルゲンの検査方法であって、上記(1)のモノクローナル抗体により前記食品中の小麦由来非特異的脂質輸送蛋白質の存在を検出することを特徴とする方法が提供される。
上記検査においては、使用すべき本発明に係る抗体を含んだキットを用いることが簡便である。従って、本発明の第3においては、
(3)上記(1)のモノクローナル抗体を含む食品アレルゲン検査用キットが提供される。
本発明においては、発酵及び/又は加工食品中の小麦アレルゲンの存在を、小麦原材料の使用或いは混入として検査する。しかして、本明細書で用いる「小麦アレルゲン」の用語は、小麦に対する食物アレルギー患者がアレルゲンとして認識するあらゆる小麦由来の成分を意味する。最も一般的な当該アレルゲンとしては、小麦の主要蛋白質であるグロブリン、アルブミン、グリアジン或いはグルテニンを例示することができ、また本発明の小麦LTPを認識する患者も存在し得るし、前記蛋白質以外の成分がアレルゲンとなりうる場合もある。
ここで注意を要する点は、個別の食物アレルギー患者が認識するアレルゲンは必ずしも一様でなく、ある患者はグロブリンのみを単独のアレルゲンとして認識し得るし、またある患者はアルブミン、グリアジン、グルテニン又はLTP或いはそれらのうちの複数をアレルゲンとして認識する場合も想定されるということである。加えて、そのように具体的なアレルゲン蛋白質が特定されている患者はまだしも、それが十分には特定されていない患者も多い。更には、必ずしもこれらのアレルゲンが一様に小麦原材料を使用した食品内に存在するわけではなく、原材料の処理や食品製造工程の如何によっては、グロブリンが既に除かれていたりグリアジンが殆ど分解されていることも想定される。そうすると、このようなアレルギー現象や食品製造工程の多様性、そして広く消費者一般を対象とする食品流通の特性を考慮すれば、寧ろ、特定のアレルゲンを個別に検出するよりは、所与の食品への小麦原材料の使用・混入として小麦アレルゲンの存在を一括的に検査・表示する方が合理的であり且つ安全を期す上でも好適であると考えられ、従って、本発明において「小麦アレルゲンの検査」というときには、個々の小麦アレルゲン蛋白質の検出ではなく、食品内における小麦原材料の存在を検査することを意味するのである。
ここで更に注意を要するのは、一概に小麦原材料といっても、食物アレルゲンとしての観点からは、小麦の穀粒や、麦芽、更には全粒粉や製粉等の一般的な原材料のほか、それが更に高度に加工された形態も含まれなければならないという点である。例えば、味噌や醤油等の調味料は、それ自体で最終製品ではあるが、それが更に他の食品への風味付け等において原材料的に用いられているし、ビール等の酒類もまた同様に、例えばエキスや香味料等として用いられており、従って、本明細書における「食品」には、麺類、焼成食品のみならず、味噌や醤油等の調味料類やビール等の酒類も包含される一方で、それらの調味料類や酒類も「小麦原材料」に含められる場合がある。
しかして、そのように多様な小麦原材料の使用・混入を検査し、消費者に対して表示するためには、小麦に固有の指標成分を定めてその存在を検査するのが最も簡便である。しかしながら、上記のとおり、食品原材料の組成や形態、食品製造方法は多様であり、特に小麦おいては当該原材料自体が発酵や酵素処理、加熱等の工程により著しく変性されることのほうが一般的であるから、その指標成分としては、発酵や酵素処理、或いは加熱等の処理において著しく変性若しくは減少するようなものを選択すべきではなく、例えば、醤油やビール等の発酵工程を経る食品における小麦原材料の指標成分は、少なくとも酵母や麹菌等或いは関連する蛋白質分解酵素等に対して耐性であるべきである。
以上に鑑みて、本発明においては、食品への小麦原材料の使用・混入を検査するにあたり、上記の指標成分として小麦LTPに着目した。ここで、LTPとは、アミラーゼ/プロテアーゼ・インヒビター・ファミリーに属するとの報告もあるし、また最近では、クチン(クチクラの主成分;脂肪酸の重合物質)の分泌・蓄積に関連する植物の防御蛋白質(pathogenesis related protein)の1つであるPR−14としても知られており、植物界に広く分布している。そしてLTPそれ自体も汎アレルゲンとして問題となっている蛋白質である。より詳細に、当該蛋白質は、主に植物組織の表層細胞に分布して脂質膜を形成し、且つ抗カビ、抗微生物能を有する、小胞体から膜組織へリン脂質を輸送する生体防御蛋白質の一種であり、分子量約9kDaで4対のS−S結合があり、熱や消化酵素に対して安定性があることが報告されている。このうち、小麦LTPについては、そのアミノ酸配列も既に明らかとなっている(NCBIアクセッション番号P24296及びS.Tassin,W.F.Broekaert,D.Marion,D.P.Acland,M.Ptak,F.Vovelle,P.Sodano;Biochemistry,Vol.37,pp.3623−3637,1998)。
しかしながら、本発明における小麦LTPの検出は、該蛋白質に対して極めて特異的且つ高親和性である特定のモノクローナル抗体の使用により更に特徴付けられる。つまり、これまでに繰り返し記載した食品原材料の組成や形態及び食品製造方法の多様性にも拘わらず、いっそう高感度の検出が求められる食品アレルゲン表示において、当該原材料の主要成分であるようなグロブリン、アルブミン、グリアジン或いはグルテニンを検出するならまだしも、含有量的には指標成分として必ずしも十分とは言えない少数成分であるLTPを利用するためには、その十分な検出感度が確保されなければ、如何にそれが発酵や加熱に対して安定であったとしても、なお完全ということはできないのである。
従って、上記のとおり、本発明の小麦LTPの検出は、そのような高感度の検出を可能ならしめる特定の抗小麦LTPモノクローナル抗体の使用により特徴付けられるのであり、より特定的には、受託番号が「FERM P−20687」及び「FERM P−20688」として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されたハイブリドーマにより生産され、夫々、以下に「5G」及び「7E」として呼称される2種類のモノクローナル抗体の使用により特定されるのである。この5G及び7Eは、小麦LTP蛋白質をラットに対する免疫原として使用して調製されたポリクローナル抗体に比べても、少なくとも10000倍以上高い感度を有する。また、サンドイッチELISA測定時において、当該モノクローナル抗体の小麦由来LTPに対する感度は、大麦由来のそれに対するものの100万倍高く、従って、両者に対する5G及び7Eの交差反応性は、実質的に無視できるものであった。更には、5G及び7Eの検出限界は、前掲の非特許文献1における大麦LTP測定系で確認されたラット抗大麦LTPポリクローナル抗体の、当該大麦抗原に対する検出限界である0.3ng/mlに比べても、少なくとも100倍程度低く、極めて鋭敏なものであった。しかして、それら特定の抗体の使用により、多様な食品での小麦アレルゲン検査における所与の目的が達成されることが確認されたのである。
上記抗体を用いた小麦アレルゲン検査では、一般的に用いられるいずれの免疫学的手法をも用い得ることが容易に理解されよう。例えば、当該検査の非限定的な例としては、いわゆる競合アッセイ法やサンドイッチアッセイ法をあげることができる。当該サンドイッチアッセイの一例では、本発明の5G又は7Eのいずれか一方がウェル底面などの固相のコーティングに用いられてキャプチャー側抗体を提供し、同じ抗体或いは当該キャプチャー側抗体とは別のもう一方の抗体が放射性物質や着色粒子又は酵素で標識されて検出側抗体を提供する。
特に好ましいサンドイッチアッセイにおいては、後者の態様、すなわち、5Gをキャプチャー側抗体とした場合には7Eを検出側抗体に利用し、或いは7Eをキャプチャー側抗体とした場合には5Gを検出側抗体に利用する。そして、このような2種の抗体双方の使用はいっそう高い検出感度を与え得る点で有利である。
次いで、上記のようなキャプチャー側抗体を有するウェル内に検査すべき食品ないしその抽出/希釈液が添加され、所定時間インキュベートされた後、該希釈液等をウェルから取り除き、好適な緩衝液等によりウェル内を充分に洗浄後、検出側の抗体がウェルに添加される。所定のインキュベーションの後、ウェル内を洗浄し、キャプチャー側抗体−小麦LTP抗原−検出側抗体複合体の生成を検出する。検出は、検出側抗体に標識された標識物質の性質に依存し、放射性標識であれば放射線量が、着色粒子標識であれば発色量や吸光度が、また酵素標識(ELISA法)であれば、更に適当な基質をウェルに添加し、所定のインキュベーション後の吸光度が検出される。なお、上記ELISA法で酵素標識に用いる酵素に特に制限はなく、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼやアルカリ性フォスファターゼ等の酵素が有利に使用される。西洋ワサビペルオキシダーゼで標識する場合は、当該酵素の基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン等がその基質として利用可能である。アルカリ性フォスファターゼを使用する場合は、基質としてp−ニトロフェニル燐酸が基質としてあげられる。
なお、本発明の抗体として、上記5G及び7Eの他、当該抗体を酵素消化処理して得られるような該抗体の反応性フラグメントも用いることもできる。当該抗体フラグメントの例には、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、F(v)フラグメント、H鎖モノマー又はダイマー、L鎖モノマー又はダイマー、1個のH鎖及び1個のL鎖からなるダイマー等が含まれる。該フラグメントは、例えばペプシンやパパイン等のプロテアーゼにより完全な抗体を消化するか、消化後、必要に応じて還元剤で処理することにより得ることができる。H鎖及びL鎖モノマーは、完全な抗体をジチオスレイトール等の還元剤で処理した後、精製した鎖状体を分離することにより得ることもできる。
本発明の小麦アレルゲン検査方法は、本発明の5G及び/又は7Eを含むキットを用いて容易に実施することができる。サンドイッチ法に基づくELISA用キットの例では、キャプチャー用としての本発明の抗体からなる試薬と、検出用としての酵素標識した本発明の抗体からなる試薬及び適切な酵素基質がキットに含まれ得る。洗浄用の緩衝液や、ウェルへの非特異的吸着を抑制するブロッキング用試薬等が更に含まれてもよい。そのようなキットの構成及びその製造方法は当業者にとって公知であろう。
更に説明せずとも、これまでの説明を与えられた当業者は、本発明を充分に活用し得る。以下、説明のみの目的で実施例を与える。
小麦LTPの精製方法
(1)粗精製
小麦全粒粉(日清フーズ製粉製)150gに5倍量(750mL)の蒸留水を加え、マグネチックスターラー(SW−400N−1、NISSIN社製)で攪拌しながら4℃で一晩(15時間)抽出した。溶液を遠心管に移し、10,000xG、4℃、20分間の条件で遠心分離(CF15R、日立工機社製)を行った。上清を別の容器に移し取り、メスシリンダーで液量を測定したところ、565mLの上清を得た。
その上清に40%飽和硫酸アンモニウム濃度になるように、硫酸アンモニウム(ナカライテスク社製)を137g加え、4℃で一時間マグネチックスターラー(HW−15、KOIKE社製)で攪拌し、4℃で一晩放置した。溶液を遠心管に移し、10,000xG、4℃、20分間の条件で遠心分離を行った。上清を別の容器に移し取り、メスシリンダーで液量を測定したところ、608mLの上清を得た。その上清が80%飽和硫酸アンモニウム濃度になるように、硫酸アンモニウム(ナカライテスク社製)を173g加え、4℃で一晩マグネチックスターラー(SW−400N−1、NISSIN社製)で攪拌し、4℃で一晩放置した。溶液を遠心管に移し、10,000xG、4℃、20分間の条件で遠心分離を行った。
沈殿を回収し、透析チューブ(分画分子量3500、Spectrum社製)に入れ、1Lの20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.6)に対して4℃で8回の外液交換を行い透析した。透析した溶液を遠心管に移し、10,000xG、4℃、20分間の条件で遠心分離を行ない、上清に粗精製物を得た。
(2)陰イオン交換カラムクロマトグラフィー
陰イオン交換樹脂(Q−セファロース、10mL、アマシャムバイオサイエンス社製)を直径1.6cm、高さ5cmのカラム管に詰め、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.6)を1mL/min.で流し平衡化を行った。そこに上記で得られた粗精製液15mL(5.9mg/mL:88mg蛋白質)をアプライし、その後15mLの平衡化緩衝液でカラムを洗浄し、非吸着画分を試験管に取り分けた。その後35mLの1Mの塩化ナトリウムを含有した平衡化緩衝液でカラムを洗浄し、吸着画分を試験管に取り分けた。当該クロマトグラムを図1に示した。
(3)pH調整
陰イオン交換カラムの非吸着画分に6M−HCl(ナカライテスク社製)を加えpHを5に調整した。pHはpHメーター(F−12、ホリバ社製)で確認した。
(4)陽イオン交換カラムクロマトグラフィー
陽イオン交換樹脂(トヨパール CM 650M、9mL、東ソー社製)を直径1.6cm、高さ4.5cmのカラム管に詰め、20mMリン酸緩衝液(pH5)を1.17mL/min.で流し平衡化を行った。そこに上記でpHを5に調整した溶液79mL(1.1mg/mL:85mg蛋白質)をアプライし、その後15mLの平衡化緩衝液でカラムを洗浄し、非吸着画分を試験管に取り分けた。その後平衡化緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度0.1Mから0.35Mに直線的に変化させ54分かけて流すことにより吸着画分を2mLずつ試験管に取り分けた。当該クロマトグラムを図2に示した。
(5)SDS−PAGE
陽イオン交換カラムで溶出した吸着画分を(1)、(2)及び(3)と分け(図2参照)SDS−PAGEに供し(NuPAGE 10%Bis−Tris Gel、インビトロジェン)、CROSSPOWER1000(アトー社製)80mAの定電流で45分間電気泳動を行った。ゲルをクマシーブリリアントブルーR−250(CBB)で染色しLTPに相当するバンドがある(1)及び(2)画分をプールした。
(6)疎水クロマトグラフィー
上記の陽イオン交換カラムの溶出画分(1)及び(2)の24mLに終濃度1.6Mになるように硫酸アンモニウム5.8gを加えた。疎水性クロマト樹脂(トヨパール Butyl 650M、5mL、東ソー社製)を直径1.6cm、高さ2.5cmのカラム管に詰め、1.6M硫酸アンモニウム/20mMリン酸緩衝液(pH7)を1mL/min.で流し平衡化を行った。そこに上記で硫酸アンモニウム濃度を1.6Mに調整した溶液25mL(1.6mg/mL:40mg蛋白質)をアプライしその後10mLの平衡化緩衝液でカラムを洗浄し、非吸着画分を試験管に取り分けた。その後平衡化緩衝液中の硫酸アンモニウム濃度を60分かけ1.6Mから0Mに直線的に変化させ吸着画分を2mLずつ試験管に取り分けた。当該クロマトグラムを図3に示した。
(7)SDS−PAGE
上記の疎水クロマトカラムで溶出した画分を(1)、(2)及び(3)と分け(図3参照)SDS−PAGEに供し電気泳動を行った。ゲルをクマシーブリリアントブルーR−250で染色しLTPに相当するバンドがある(1)画分をプールした。
(8)アミノ酸配列の解析
上記の(1)画分5μLをプロテインシーケンサー(Procise 491HT、アプライドバイオシステムズ社製)に供し、N末18残基のアミノ酸配列の解析を行ったところ、小麦LTPのアミノ酸配列と一致した。SDS−PAGEでの分子量とアミノ酸配列より得られた(1)画分は小麦LTPであると判断した。
モノクローナル抗体の作製
(1)免疫脾臓細胞の調製
6−8週令の雌BALB/cマウスの腹腔内に、抗原として上記で得られた小麦LTP100μgと完全フロイントアジュバント(Freund’s complete adjuvant、Difco社製)とのエマルジョン(1容:1容)を投与した。2週間後、上記の抗原100μgと不完全フロイントアジュバント(Freund’s imcomplete adjuvant、Difco社製)とのエマルジョン(1容:1容)を腹腔内に投与し、さらに2週間後抗原25μgを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」と略す。)を腹腔内に投与した。その3日後にマウスを屠殺し、脾臓を摘出してこれをほぐし、基本培地(RPMI−1640培地(ナカライテスク社製)に100mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO社製)、結晶ペニシリンGカリウム1万単位/L、ストレプトマイシン10mg/Lを加えた培地)に懸濁した後、脾臓細胞を遠心分離で回収した。
(2)細胞融合とHAT選択
上記で調製した脾臓細胞と10%ウシ胎仔血清添加基本培地(以下、「血清添加培地」と略す。)で培養した対数増殖期のマウスミエローマ細胞P3U1を10:1の比率になるように混合し、基本培地で2回洗浄した。遠心分離により細胞を回収し、細胞ペレットに平均分子量1500の50%ポリエチレングリコール溶液(ベーリンガーマンハイム山之内製薬)1mLを1分かけて添加し、その後1分間静置した。さらに20mLの基本培地を10分間かけて添加し、細胞液を希釈した後、遠心分離により細胞を回収した。この細胞を40mLのHAT培地(4×10−7Mアミノプテリン、1.6×10−5Mチミジン、及び1×10−4Mヒポキサンチンを含む血清添加培地)に懸濁し、96穴プレート4枚に分注し、湿度100%、炭酸ガス5%、37℃で培養を開始した。培養開始の翌日、HAT培地を各ウェルに100μL添加し、以後2ないし3日ごとに半量の培地を新たなHAT培地と交換し、培養を続けた。その結果、ほとんどすべてのウェルでハイブリドーマの増殖が認められた。
(3)抗体産生ハイブリドーマの取得
小麦LTPに結合する抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングはELISAにより行った。5μg/mLの小麦LTPを50μLずつELISA用96穴プレートに加え、37℃で1時間吸着させた後、プレートをPBSで3回洗浄した。各ウェルに1%牛血清アルブミンを含むPBS溶液(以下、「BSA−PBS」と略す。)を200μL添加し、37℃で1時間吸着させ、蛋白質の非特異的吸着がおこらないように各ウェルを完全にブロックし、さらにプレートをPBSで3回洗浄した。各ウェルに前述で得られたハイブリドーマの培養上清50μLを添加し、37℃で1時間抗原抗体反応を行った。このプレートをトリス−塩酸緩衝液(150mM塩化ナトリウムを含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4):以下、「TBS」と略す。)で1回、0.05%ツイーン20(Bio−Rad社製、ELISA grade)含有TBS(以下、「Tween20−TBS」と略す。)で5回、さらにTBSで1回洗浄し、未反応の抗体を除去した。次に、各ウェルに0.1%BSAを含むTween20−TBS(以下0.1%BSA−Tween20−TBS)で5000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗マウス免疫グロブリンG抗血清(カッペル社製)を50μL添加し、37℃で1時間反応させ、TBSで1回、Tween20−TBSで5回、TBSで1回洗浄し、ついで各ウェルに基質であるp−ニトロフェニルリン酸を1mg/mL含むジエタノールアミン緩衝液(10%ジエタノールアミン、0.5mM MgCl、pH9.8)を100μL添加し、37℃で1時間反応させ、マイクロプレートリーダー(Model 3550、Bio−Rad社製)を用いて反応液の405nmにおける吸光度を測定し、固相抗原と結合した抗体を検出した。その結果3ウェルにおいての陽性が確認できた。
(4)ハイブリドーマのクローニング
抗体産生陽性ウェル3個中の細胞を、限界希釈法によりクローニングした。増殖培地として、10%FBS RPMI−1640培地に増殖因子としてのORIGEN(IGEN社製のB細胞増殖因子を含む溶液)を10%になるように添加したものを用いた。なお抗体産生細胞のスクリーニングは前述と同様のELISAを行い、陽性クローンを再度クローニングすることにより、小麦LTP固相に結合するモノクローナル抗体を産生する2種の細胞株5G及び7Eを樹立した。
(5)モノクローナル抗体の免疫グロブリンのサブクラスの決定
モノクローナル抗体産生細胞株が培養上清液中に分泌するモノクローナル抗体について、その免疫グロブリンのサブクラスを、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて調べた。モノクローナル抗体はすべてIgG1であり、軽鎖はκであった。
ELISAの系の開発
(1)抗体の精製方法
BALB/cマウスに腹水癌を誘導するために0.5mlのプリスタンを腹腔内投与し、投与3〜10日後に1×10個のモノクローナル抗体産生細胞を腹腔内に移植した。約2週間後に腹水を採取し、これをプロテインG セファロース(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて純化し、PBSに対して透析後、4℃で保存した。腹水1mLあたり約5mgの精製抗体を得た。
(2)サンドイッチ定量系の確立
モノクローナル抗体5G(5μg/mL PBS溶液)50μlをそれぞれELISAプレートに固相化したのち、PBSで3回洗浄した。各ウェルにBSA−PBSの200μLを添加し、37℃で1時間ブロッキングした。その後、各ウェルをPBSで3回洗浄し、希釈液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)50μL中の小麦LTPを0、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300又は1000ng/mLの濃度で添加し、37℃で1時間放置した。洗浄液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)で6回洗浄後、ペルオキシダーゼ標識モノクローナル抗体「7E」、ペルオキシダーゼ標識ウサギポリクローナル抗体又はペルオキシダーゼ標識ラットポリクローナル抗体/希釈液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)を50μLずつ添加し、37℃で1時間放置した。その後、洗浄液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)で6回洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)溶液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)100μLを添加し、室温で20分間反応させ、反応停止液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)100μLの添加により反応停止を行い、450nmにおける吸光度を測定した。また、同様の実験をモノクローナル抗体7Eで固相化した場合についても行い、その際、ペルオキシダーゼ標識モノクローナル抗体5Gで試験した。結果を図4に示した。図から、モノクローナル抗体同士のサンドイッチが成立した上、5G、7Eのどちらを固相化した場合でも検量線の立ち上がりが0.003ng/mLと、他の抗体と比較して抜きん出て(少なくとも10000倍以上)感度の高いことが確認できた。
なお、上記のペルオキシダーゼ標識ウサギポリクローナル抗体及びペルオキシダーゼ標識ラットポリクローナル抗体は、常法によりウサギ又はラットに免疫して抗体を作製し、抗原固相化カラムを通すことにより抗原特異的抗体を得、その特異的抗体を中根法で酵素標識することで調製した。
(3)大麦LTPに対する交差反応性(競合ELISA実験)
5μg/mlの小麦LTPを50μLずつELISA用96穴プレートに加え、37℃で1時間固相化させた後、PBSで3回洗浄した。各ウェルにBSA−PBSの200μLを添加し、37℃で1時間ブロッキングした。プレートをPBSで3回洗浄した後、モノクローナル抗体5G又は7Eの1μg/mL溶液を50μLと、小麦LTP又は大麦LTP溶液(0、1、3、10、30、100、300又は1000μg/mL/0.1%BSA−Tween20−TBS)を50μLずつ添加し、37℃で1時間反応を行った。次にTBSで1回、Tween20−TBSで5回、TBSで1回洗浄後、各ウェルに0.1%BSA−Tween20−TBSで5000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗マウス免疫グロブリンG抗血清を50μL添加し、37℃で1時間反応させ、TBSで1回、Tween20−TBSで5回、TBSで1回洗浄し、ついで各ウェルにp−ニトロフェニルリン酸を1mg/mL含むジエタノールアミン緩衝液(10%ジエタノールアミン、0.5mM MgCl、pH9.8)を100μL添加し、37℃で1時間反応させ、405nmにおける吸光度を測定した。結果を図5に示した。図には、本発明のモノクローナル抗体に関する、固相抗原小麦LTPに対しての遊離抗原小麦LTP及び大麦LTPの競合反応が示されており、その結果、大麦LTPでは阻害(競合)が全くかからず、本発明のモノクローナル抗体5G及び7Eでは、大麦LTPとの交差反応性がないことが確認できた。
なお、大麦LTPは、上記小麦LTPの精製方法に準じて調製した。
(4)モノクローナル抗体同士のサンドイッチELISA
モノクローナル抗体5G又は7EのPBS溶液(5μg/mL)50μlをそれぞれELISAプレートに固相化したのち、PBSで3回洗浄した。各ウェルにBSA−PBSの200μLを添加し、37℃で1時間ブロッキングした。その後、PBSで3回洗浄し、各ウェルに小麦LTPを0、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300又は1000ng/mL/希釈液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)として、或いは大麦LTPを0、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、3000、10000、30000、100000、300000又は1000000ng/mL/希釈液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)として50μLずつ添加し、37℃で1時間放置した。洗浄液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所)で6回洗浄後、ペルオキシダーゼ標識モノクローナル抗体7E又は5G/希釈液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)を50μLずつ添加し、37℃で1時間放置した。洗浄液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)で6回洗浄後、TMB(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)の100μLを添加し、室温で20分間反応させ、反応停止液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)100μLの添加により反応停止を行い、450nmにおける吸光度を測定した。結果を図6に示した。図から、小麦に比べて大麦の検出は1/100万程度も感度が鈍く、従って競合ELISA同様に交差性が実質的に無視でき、一方で、小麦LTPでの検量線の立ち上がりが0.003ng/mLと、極めて鋭敏な検出が可能なことが判る。
(5)ウエスタン解析
小麦粗抽出液10μg及び小麦LTP5μgをSDS−PAGEに供し、電気泳動を行った後、ゲル上の蛋白質を170mAの定電流で90分間ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(Bio−Rad社製)に転写し、5%スキムミルクを含むPBSによるブロッキングを室温で1時間行った。その後、PBSで3回洗浄し、モノクローナル抗体5G及び7Eそれぞれ1μg/mLを室温、1時間で反応させた。次に、TBSで1回、Tween20−TBSで5回、TBSで1回洗浄し、0.1%BSA−Tween20−TBS溶液で1000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗マウス免疫グロブリンG抗血清で室温、1時間の反応を行った。その後、TBSで1回、Tween20−TBSで5回、TBSで1回洗浄し、アルカリフォスファターゼ発色キット(ナカライテスク社製)による発色を行った。結果を図7に示した。図中のバンドの染色パターンからも本発明の抗体が小麦LTP特異的抗体であることが確認された。また、ウエスタンでも使用可能であることから、これらの抗体は一次構造認識であることがわかる。
測定系の応用
(1)サンプル調製
食品1gに対して希釈液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)19mLを加え、ミルサー(ミルサー700G、岩谷産業社製)で10秒間×3の抽出を行い、その混合液を遠心管に移し、3,000xG、4℃、20分間の条件で遠心分離を行った。遠心上清をろ過し(No.2、アドバンテック社製)、そのろ液を食品サンプルとした。
(2)ELISAによる食品の定量
モノクローナル抗体5GのPBS溶液(5μg/mL)50μlをそれぞれELISAプレートに固相化したのち、PBSで3回洗浄した。各ウェルにBSA−PBSの200μLを添加し、37℃で1時間ブロッキングした。その後、洗浄液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)で6回洗浄し、各ウェルに小麦LTPを0、0.001、0.003、0.0625、0.0125、0.025又は0.05ng/mL/希釈液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)の50μLとして、或いは上記の食品サンプル(市販の醤油及びビールより調製)を50μLずつ添加し、37℃で1時間放置した。洗浄液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)で6回洗浄後、ペルオキシダーゼ標識モノクローナル抗体7Eを50μLずつ添加し、37℃で1時間放置した。洗浄液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)で6回洗浄後、TMB(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)100μLを添加し、室温で20分間反応させ、反応停止液(小麦グリアジンキット、森永生科学研究所社製)100μLの添加により反応停止を行い、450nmにおける吸光度を測定した。結果を表1に示す。なお、小麦LTPから小麦蛋白質への換算値は0.006(標準小麦試料中で検出された小麦LTPの量を、該試料中の既知小麦蛋白質の量で除して見積もった係数)で除した値で示した。また、比較としてグリアジンキット(森永生科学研究所社製)プロトコールに準じて行った測定結果を示している。
Figure 0004637008
本発明のモノクローナル抗体に依れば、小麦原材料の使用・混入を極めて簡便且つ鋭敏に検査することができるので、各種の食品に対して当該検査を適用でき、しかしてそれらの食品製造業において有用である。
図1は、小麦LTP精製時の陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにおけるクロマトグラムである。縦軸は280nmでの吸光度を、横軸は溶出体積(mL)を示している。 図2は、小麦LTP精製時の陽イオン交換カラムクロマトグラフィーにおけるクロマトグラムである。縦軸は280nmでの吸光度を、横軸は溶出体積(mL)を示している。 図3は、小麦LTP精製時の疎水クロマトグラフィーにおけるクロマトグラムである。縦軸は280nmでの吸光度を、横軸は溶出体積(mL)を示している。 図4は、本発明の抗小麦LTPモノクローナル抗体とポリクローナル抗体(比較)の小麦LTPに対する反応性の相違を表す。縦軸は450nmにおける吸光度を、横軸は小麦LTPの濃度(ng/mL)を示している。 図5は、本発明の抗小麦LTPモノクローナル抗体の大麦LTPに対する交差反応性を表す競合ELISAの結果である。縦軸は405nmにおける吸光度を、横軸は各LTPの濃度(ng/mL)を示している。 図6は、本発明の抗小麦LTPモノクローナル抗体同士のサンドイッチELISA実験結果と、該実験での大麦LTPに対する交差反応を表す。縦軸は450nmにおける吸光度を、横軸は各LTPの濃度(ng/mL)を示している。 図7は、本発明の抗小麦LTPモノクローナル抗体によるウエスタン解析結果を表す図面代用写真である。

Claims (3)

  1. 受託番号がFERM P−20687又はFERM P−20688であるハイブリドーマにより生産される、小麦由来非特異的脂質輸送蛋白質に対するモノクローナル抗体。
  2. 発酵及び/又は加工食品中の小麦アレルゲンの検査方法であって、該方法は、請求項1に記載のモノクローナル抗体により前記食品中の小麦由来非特異的脂質輸送蛋白質の存在を検出することを特徴とする、前記方法。
  3. 請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む食品アレルゲン検査用キット。
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