JP4632475B2 - 反射源位置特定方法、反射源位置特定装置、被検査体傷判定方法及び被検査体傷判定装置 - Google Patents

反射源位置特定方法、反射源位置特定装置、被検査体傷判定方法及び被検査体傷判定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波を利用して鉄道レール等の被検査体反射源の位置特定を行う反射源位置特定方法、反射源位置特定装置、及び反射源から傷の判定を行う被検査体傷判定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は従来の鉄道レール1などを超音波で探傷する際の計測状態を示す斜視図であり、図3は超音波探傷装置2の機能構成を示すブロック図である。この例では、探傷対象のレール1上を、超音波探傷装置2と接続されるケーブル3の先端に設けられた超音波探触子4を移動させてレール1の探傷を行っている。
【0003】
この際、送信部2aから一定周期で出力される送信信号が超音波探触子4に入力され内部の図示しない振動子からの超音波パルスがレール1に入射され、この超音波パルスがレール1の傷などで反射し、反射波が超音波探触子4の振動子で受信される。
【0004】
そして、この受信信号が受信部2bに入力され、増幅された後に信号処理部2cに入力される。信号処理部2cは、所定の伝搬時間、即ち超音波探触子4からレール1に入射された超音波パルスが傷などで反射して再び超音波探触子4で受信されるまでの時間の範囲のみを検出対象とするためのゲート回路を有しており、受信信号をゲート回路に通して、A/D変換後、受信信号のレベルを判定レベルと比較して反射エコーを検出し、この反射エコーデータと図示しない移動距離センサからの超音波探触子4の移動量に基づいて、レール1の傷の位置や重大性の判定を行っている。その結果が表示部2d及び記録部2eに出力され、表示及び記録が行われる。
【0005】
このようなレール探傷では、複数の超音波探触子を用いて、傷の方向性等を考慮した超音波をレールに入射して探傷を行っている。例えば、水平裂を検出するためには、屈折角(超音波がレールに入射するときの入射方向と、入射面すなわちレール表面の法線とのなす角)が0°である垂直探触子を用い、45°程度の傾きの横裂を検出するためには、屈折角が45°の斜角探触子が用いられている。
【0006】
近年では、このようなレール探傷において、反射エコーの自動化処理が進展し、例えば、特開平9−264882号公報に示されるように、反射エコーのBスコープ画像からの傷の自動判定も行われている。Bスコープ画像は、例えば、横軸に探触子位置、縦軸に反射エコーの伝搬距離をとって反射エコーをプロットするものであるが、屈折角を考慮して反射エコーの反射源の位置を算出してプロットすれば断面画像となる。この例では、Bスコープ画像あるいは断面画像における連結領域を抽出して、その特徴量を求めて判定を行っている。各連結領域は連続した反射源群、即ちマクロな一つの反射源に対応しており、特に断面画像では反射源の実体に即したものとなる。例えば、ボルト穴1bでは、垂直探触子と屈折角45°の互いに逆向きに設置された2つの斜角探触子によって、図4のように3つの連結領域が得られる。このような連結領域の特徴量に基づいて判定を行うことによって、信頼性の高い判定が可能になるとともに、データが大幅に圧縮されているために高速に判定が行える。
【0007】
ところで、溶接部の溶け込み不足や縦割れを検出するために、特開平11−118770号公報記載の探傷方法(以下、モード変換タンデム法と呼ぶことにする)が用いられることがある。この方法は、屈折角が同一の2つの斜角探触子を用いる従来のタンデム法の欠点を解決して、探触子間隔を小さくして限られたスペースでも適用可能で、かつ、底面からの反射エコーを検出することなく、さらに、損失を少なくして効率よい超音波探傷を可能とし、縦割れ傷からの反射エコーを確実に検出するものである。
【0008】
図5はこのモード変換タンデム法の原理を説明するための図である。図中、破線は横波超音波、一点鎖線は縦波超音波を表している。第一の斜角探触子41からレール1に屈折角αで入射された縦波超音波が、レール表面1aに平行な底面1dでモード変換せずに反射したのち、レール内部の縦割れ傷1e(反射点での法線はレール表面1aに平行)でモード変換して反射し、レール表面1aの法線とのなす角がβで戻ってくる横波超音波を、第二の斜角探触子42で受信している。なお、第二の斜角探触子42から横波超音波を屈折角βで送信し、レール内部の縦割れ傷1eでモード変換して反射し、第一の斜角探触子41でレール表面1aの法線とのなす角がαで戻ってくる縦波超音波を受信することも可能である。
【0009】
ここで、底面1dおよび縦割れ傷1eでの反射においては、音速と入射角または反射角の正弦関数との比は一定であるというスネルの法則が満足される。すなわち、底面1dでの反射においては、反射前後とも縦波で両者の音速が等しいため、反射波の底面の法線とのなす角(反射角)もαである。また、縦割れ傷1eでの反射においては、傷に対して入射してくる縦波超音波の反射点での法線とのなす角(入射角)90°−αと、横波反射波の反射点での法線とのなす角(反射角)90°−βとの関係は、
【0010】
【数1】
Figure 0004632475
となり、したがって、
【0011】
【数2】
Figure 0004632475
が成り立つ。ただし、C1、C2は、それぞれレール中での縦波、横波の音速で、レールすなわち鋼中の実際の音速は、C1=5900m/s、C2=3230m/sである。
【0012】
ここで、レール高さをhとし、レール長手方向にX軸、レール表面をy=0として深さ方向にY軸をとり、第一の斜角探触子41の位置を(x1,0)、第二の斜角探触子42の位置を(x2,0)とすると、縦割れ傷1eでの反射点の位置(x,y)は、次の連立方程式
【0013】
【数3】
Figure 0004632475
の解として決定される。なお、図5とは反対にx1>x2としてX軸の正方向に送信した場合は、(3)式における“x1−x”、“x2−x”は、各々“x−x1”、“x−x2”となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際の探触子は多少広がりを持った送受信特性を有するため、超音波が幅を持つことになって、探触子の位置に対して反射エコーが検出されるレール内部の反射源の位置は、1点ではなくある範囲を有することになる。そのため、反射エコーが検出されたときに、超音波の広がりを考慮せずに、第一の斜角探触子の設計上の屈折角を用いて(3)式により反射源の位置を決定するのでは、正確な位置を求めることができず、反射源の実体に即した断面画像を生成したり、その情報に基づいて信頼性の高い傷判定を行うことができないという問題がある。
【0015】
また、例えば従来のレール探傷車によるレール探傷においては、探傷中にレールの種類が変わってレール高さが変わることがあるため、レール高さを既定値として予め与えることは難しく、そのような場合に、モード変換タンデム法において反射源の位置の算出を行うことはさらに困難を極めることになる。
【0016】
さらには、被検査体がレールの場合には、ボルト穴のような人工構造や、継目での遊間部(レール端面)において、モード変換タンデム法によって反射エコーが検出されることがあり、モード変換タンデム法だけからでは、これらと傷とを識別することができないという問題がある。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、第1の目的は、モード変換タンデム法で検出された反射エコーについて、正確に反射源の位置を算出することができる反射源位置特定方法及び反射源位置特定装置、並びに反射源の実体に即した情報から信頼性の高い判定を行う被検査体傷判定方法及び被検査体傷判定装置を提供することを目的としている。
【0018】
また、第2の目的は、第1の目的に加えて、被検査体の表面から底面(背面)までの距離が変わっても、問題なく反射源の位置の特定ができる反射源位置特定方法及び反射源位置特定装置、被検査体傷判定方法及び被検査体傷判定装置を提供することを目的とする。
【0019】
さらに、第3の目的は、第1の目的に加えて、被検査体がレールの場合に、モード変換タンデム法によってボルト穴のような人工構造や、継目での遊間部(レール端面)からの反射エコーが検出されても、これらを傷と判定しない被検査体傷判定方法及び被検査体傷判定装置を提供することを目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、被検査体の表面に第一の斜角探触子及び第二の斜角探触子を当接させて、第一の斜角探触子から縦波超音波を送信し、その縦波超音波が底面(背面)でモード変換せずに反射したのち、被検査体内部の反射源でモード変換して反射した横波超音波を第二の斜角探触子で受信して、または、第二の斜角探触子で横波超音波を送信し、その横波超音波が被検査体内部の反射源で縦波超音波にモード変換して反射したのち、底面(背面)でモード変換せずに反射した縦波超音波を第一の斜角探触子で受信することによって前記被検査体を探傷して、検出された反射エコーに基づいて反射源の位置を特定する方法であって、
前記被検査体の表面、底面(背面)及び被検査体内部の反射源の法線は平行であり、かつ、底面(背面)での反射及び被検査体内部の反射源での反射においてはスネルの法則を満足するものとして、第一または第二の斜角探触子から被検査体へ入射する超音波の屈折角のある角度範囲で、第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置と、表面から底面(背面)までの距離とを一定としたときの、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する近似式を予め求めておき、
反射エコーが検出されたときに、超音波が送信されてから該検出された反射エコーが受信されるまでの伝搬時間と前記近似式から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出し、さらに、第一の斜角探触子または第二の斜角探触子の位置を用いて、検出された反射エコーの反射源の位置を特定することを特徴とする。または、本発明は、被検査体の表面に第一の斜角探触子及び第二の斜角探触子を当接させて、第一の斜角探触子から縦波超音波を送信し、その縦波超音波が底面(背面)でモード変換せずに反射したのち、被検査体内部の反射源でモード変換して反射した横波超音波を第二の斜角探触子で受信して、または、第二の斜角探触子から横波超音波を送信し、その横波超音波が被検査体内部の反射源で縦波超音波にモード変換して反射したのち、底面(背面)でモード変換せずに反射した縦波超音波を第一の斜角探触子で受信することによって前記被検査体を探傷して、検出された反射エコーに基づいて反射源の位置を特定する反射源位置特定装置であって、
第一の斜角探触子及び第二の斜角探触子の位置を計測する探触子位置計測手段と、
反射エコーを検出して、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間を計測する反射エコー検出手段と、
検出された反射エコーの反射源の位置を特定する反射源位置特定手段であって、
前記被検査体の表面、底面(背面)及び被検査体内部の反射源の法線が平行であり、かつ、底面(背面)での反射及び被検査体内部の反射源での反射においてはスネルの法則を満足するものとして、第一または第二の斜角探触子から被検査体へ入射する超音波の屈折角のある角度範囲で、第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置と、表面から底面(背面)までの距離とを一定としたときの、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する近似式を用いて、超音波が送信されてから該検出された反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する相対位置算出手段と、
前記相対位置算出手投で算出された第一または第二の斜角探触子に対する反射源の相対的位置と、第一または第二の斜角探触子の位置とから、検出された反射エコーの反射源の位置を決定する位置決定手段と、からなる前記反射源位置特定手段と、
を有することを特徴とする。被検査体内部の反射源の法線が、表面、底面(背面)と平行であり、かつ底面での反射及び反射源での反射においてスネルの法則が満足するものとした場合に、モード変換タンデム法による超音波の伝搬時間と、反射源との位置には、一定の関係が成り立つので、伝搬時間及び被検査体の表面から底面(背面)までの距離を用いて、反射エコーの反射源の位置を特定することができる。従って、斜角探触子の屈折角に広がりがあったとしても、この屈折角に依存せずに、反射源を特定することができる。伝搬時間から反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する近似式を予め求めておくことにより、迅速に反射源の位置を特定することができるようになる。
【0021】
また、前記反射源位置特定方法において、第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置毎に、かつ、表面から底面(背面)までの距離毎に、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する近似式を予め求めておき、反射エコーが検出されたときに、そのときの第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置及び表面から底面(背面)までの距離に対応する前記近似式から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出し、さらに、第一または第二の斜角探触子の位置を用いて、検出された反射エコーの反射源の位置を特定することができる。または、前記反射源位置特定装置において、前記相対位置算出手段は、前記第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置、前記被検査体の表面から底面(背面)までの距離に応じた近似式を用いて、前記伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する。第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との間の相対的位置毎、かつ表面から底面(背面)までの距離毎に、近似式を求めることにより、探傷環境の変化に対応することができる。
【0022】
また、前記反射源位置特定方法において、前記伝搬時間が所定の範囲内である反射エコーのみを対象として処理を行うことができる。または、前記反射源位置特定装置において、前記反射源位置特定手段は、前記伝搬時間が所定の範囲内である反射エコーについて反射源の位置を特定することができる。伝搬距離が所定の範囲内にある反射エコーのみを対象とすることにより、不正な反射エコーやノイズを除去することができる。所定の範囲とは、例えば、入射される超音波の屈折角の広がりに見合った伝搬距離の範囲とするとよい。
【0023】
また、前記反射源位置特定方法において、前記被検査体の表面から底面(背面)までの距離を、その表面に当接した超音波の送受信用の垂直探触子により超音波を送信してから底面(背面)で反射したエコーが受信されるまでの伝搬時間及び超音波の音速から算出することができる。または、前記反射源位置特定装置において、さらに、前記被検査体の表面に当接される超音波の送受信用の垂直探触子を有し、前記反射エコー検出手段は、この送受信用の垂直探触子によって検出された反射エコーについても反射エコーを検出して伝搬時間を計測するものであり、送受信用の垂直探触子により超音波を送信してから底面(背面)で反射したエコーが受信されるまでの伝搬時間及び超音波の音速から、前記被検査体の表面から底面(背面)までの距離を算出する表面底面間距離算出手段を有することができる。垂直探触子による超音波の送受信の時間から表面底面間距離を求めることにより、被検査体の表面底面(背面)間距離の変化に対応することができる。
【0024】
また、被検査体傷判定方法は、前記反射源位置特定方法を実施し、特定した反射源の位置に基づいて被検査体の傷を判定するのは、複数の反射源の位置が特定されたときに、これら複数の反射源の位置から被検査体内で連続した反射源であると推定できる反射源群を抽出し、次に、抽出した反射源群について一つまたは複数の特徴量を算出して、その特徴量に基づいて前記被検査体の傷を判定することによって行うことができる。連続した反射源であると推定できる反射源群を抽出することから、その反射源群の特徴によって、例えば、人工構造と傷とを識別することができるようになる。
【0025】
また、前記被検査体傷判定方法において、被検査体内で連続した反射源であると推定できる反射源群を抽出するのは、特定された各反射源の位置をプロットした場合に得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出することであり、抽出した反射源群について一つまたは複数の特徴量を算出するのは、抽出した各連結領域について、一つまたは複数の特徴量を算出することとすることができる。または、被検査体傷判定装置は、前記反射源位置特定装置と、複数の反射源の位置が特定されたときに、特定された各反射源の位置をプロットして得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出する抽出手段と、抽出した各連結領域について、一つまたは複数の特徴量を算出する特徴量算出手段と、特徴量算出手段で算出された特徴量に基づいて前記被検査体の傷を判定する判定手段と、を有することができる。連結領域の特徴量から傷を判定することから、その特徴量によって例えば人工構造と傷とを識別することができるようになる。
【0027】
また、被検査体傷判定方法において、被検査体がレールであり、さらに、反射源の位置が複数個特定されたときに、特定された各反射源の位置をプロットした場合に得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出し、連結領域の位置を特徴量として算出し、さらに、超音波の送信用及び/または受信用の1つまたは複数の垂直または斜角探触子により超音波を送信して検出された反射エコーに基づいて、レールに存在するボルト穴等の人工構造を検出し、前記連結領域の特徴量である位置と、検出された人工構造の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを人工構造からの反射エコーであると判定することができる。さらに、人工構造を検出した結果に基づいて、レールの継目における遊間部を検出し、前記連結領域の特徴量である位置と、検出された遊間部の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを遊間部からの反射エコーであると判定することができる。または、被検査体傷判定装置において、被検査体をレールとすることができ、また、超音波レール探傷車におけるレール探傷車とすることができる。この場合の前記被検査体傷判定装置において、さらに、超音波の送信用及び/または受信用の1つまたは複数の垂直または斜角探触子と、反射源の位置が複数個特定されたときに、特定された各反射源の位置をプロットした場合に得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出する抽出手段と、該連結領域の位置を特徴量として算出する特徴量算出手段と、前記超音波の送信用及び/または受信用の1つまたは複数の垂直または斜角探触子により超音波を送信して検出された反射エコーに基づいて、レールに存在するボルト穴等の人工構造を検出する人工構造検出手段と、前記連結領域の特徴量である位置と、検出された人工構造の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを人工構造からの反射エコーであると判定する判定手段と、を有することができる。さらに、人工構造検出手段での人工構造の検出結果に基づいて、レールの継目における遊間部を検出する遊間検出手段を有し、前記判定手段は、前記連結領域の特徴量である位置と、検出された遊間部の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを遊間部からの反射エコーであると判定することができる。人工構造やレールの継目において形成される遊間部を傷と判定することがなく、信頼性の高い傷判定を行うことができる。尚、ここで、送信用及び/または受信用の1つまたは複数の垂直または斜角探触子とは、送信用及び受信用の垂直探触子、送信用の斜角探触子と受信用の斜角探触子、送受信用及び受信用の斜角探触子等の1つまたは複数の組み合わせが考えられる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明による被検査体傷判定方法を実施するための、または本発明による被検査体傷判定装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。被検査体傷判定装置10は、探触子ブロック40、多チャネル超音波送受信部14、探触子位置計測部16、反射エコー検出部18、伝搬距離算出部20、表面底面間距離算出部22、反射源位置特定部24、連結領域抽出部26、特徴量算出部28、人工構造検出部30、遊間検出部32及び判定部34を備えている。以上の各部は、ゲート回路、A/D変換器、カウンタ、論理回路、CPU、メモリ、I/O回路等によって実現することができる。
【0030】
以下、各部の詳細をその作用と共に説明する。
【0031】
探触子ブロック40は、例えば、図6に示すように、モード変換タンデム用の第一の斜角探触子41及び第二の斜角探触子42、送受信用の垂直探触子(屈折角0°)44及び互いに逆向きに設置された2つの送受信用の斜角探触子(例えば屈折角45°)43,45が所定の位置関係で配置されているものからなる。第一の斜角探触子41は、該探触子41からの(または探触子41への)縦波超音波の屈折角が例えば20°となるように設定されている一方で、第二の斜角探触子42は、該探触子42への(または探触子42からの)横波超音波の屈折角が例えば59°となるように設定されている。これらの角度は、▲1▼第一の斜角探触子41からレール1に縦波超音波が入射される際の効率、▲2▼レール1の底面での反射効率、▲3▼傷での横波超音波へのモード変換効率、▲4▼さらに、第二の斜角探触子42での横波超音波の入射効率を考慮し、非常に効率のよい探触を行うことが可能である角度となっている。縦波超音波の屈折角は、5°乃至30°程度であることが好ましく、その場合、横波超音波の屈折角は、57°乃至62°程度となる。
【0032】
多チャネル超音波送受信部14は、探触子ブロック40の各探触子41,42,44,43及び45に対応した各チャネル(モード変換タンデムチャネル、垂直チャネル、+45°チャネル及び−45°チャネル)の送受信部を備えている。
【0033】
探触子ブロック40はレール1上を接触して移動し、その位置が探触子位置計測部16によって計測される。この際、多チャネル超音波送受信部14は、探触子位置計測部16からの探触子位置データに基づいて、各チャネルとも一定間隔で送信信号を第一の斜角探触子41または送受信用探触子44,43,45に出力し、その結果、各探触子の図示しない振動子から超音波パルスがレール1に入射される。この超音波パルスがレール1の傷などで反射し、その反射エコーが第二の斜角探触子42または送受信用の探触子の振動子44,43,45で受信されると、この受信信号が多チャネル超音波送受信部14で増幅され、反射エコー検出部18へと出力される。なお、ここでのモード変換タンデムチャネルは、第一の斜角探触子41から縦波超音波を送信し、第二の斜角探触子42で横波超音波を受信するものとする。勿論、第二の斜角探触子42から横波超音波を送信し、第一の斜角探触子41で縦波超音波を受信する場合も同様に適用できることは言うまでもない。
【0034】
反射エコー検出部18は、多チャネル超音波送受信部14からの各チャネルの受信信号を、まず、ゲート回路によって所定の伝搬時間の範囲のみを検出対象として選択してA/D変換する。ゲート回路は、例えば、垂直チャネルではレール表面から入射された超音波が底面で反射して戻って来るのに要する時間に応じたゲート設定がなされる。モード変換タンデムチャネルでは、第一の斜角探触子41の設計上の屈折角とレール高さによって伝搬時間は計算上は定まるが、前述のように超音波が幅を持つことや、レールの種類によってレール高さが変わることを見込んでゲートが比較的広く設定される。
【0035】
次に、受信信号レベルと所定の判定レベルを比較し、受信信号レベルが判定レベル以上の場合を反射エコーとして、例えばその受信信号レベルと伝搬時間を検出する。なお、受信信号レベルが連続して判定レベル以上である場合、つまり、反射エコーが時間的に幅を持つ場合は、例えば、受信信号レベルはその極大値とし、伝搬時間には、受信信号レベルが極大値となるときまたは判定レベルを越えたときの伝搬時間を採用することができる。
【0036】
伝搬距離算出部20は、反射エコー検出部18において検出されたモード変換タンデムチャネルを除く、各チャネルの反射エコーについて、超音波の音速に伝搬時間を乗ずることによって伝搬距離を算出する。垂直チャネルの超音波は縦波、±45°チャネルの超音波は横波で、鋼製のレール中の音速はそれぞれC1=5900m/s、C2=3230m/sである。
【0037】
表面底面間距離算出部22は、垂直チャネルで検出された反射エコーの伝搬距離から表面底面間距離、即ち、レール高さを求めるもので、例えば、想定されるレール高さの約2倍の伝搬距離の反射エコーが連続的に検出されていることを条件としてレールの底面からの反射エコーを抽出し、その伝搬距離の1/2をレール高さとする。なお、レールの種類としては、60kg、50T、50kgN、50kgPS、40kgN、37kgA及び30kgAがあり、それぞれのレール高さは174mm、160mm、153mm、144.46mm、140mm、122.24mm及び107.95mmである。
【0038】
反射源位置特定部24は、各チャネルで検出された反射エコーの反射源の位置を特定するものである。まず、モード変換タンデムチャネルについての反射源の位置特定について説明する。反射源位置特定部24は、モード変換タンデムチャネルでの反射源の位置特定を行うための手段として、反射源の探触子からの相対的位置を算出する相対位置算出部24−1と、該相対位置算出部24−1で算出された相対的位置と、探触子の位置とから反射源の位置を決定する位置決定部24−2と、からなる。
【0039】
図5のように、レール長手方向にX軸、レール表面をy=0として深さ方向にY軸をとり、第一の斜角探触子41の位置を(x1、0)、第二の斜角探触子42の位置を(x2、0)、表面底面間距離(レール高さ)をhとし、第一の斜角探触子41からX軸の負方向に屈折角αで縦波超音波がレールに入射したとすると、反射源の位置(x,y)は、前述の(3)式の解として求められる。また、このとき、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間tは、
【0040】
【数4】
Figure 0004632475
となる。
【0041】
ここで、実際には超音波が幅を持ち、屈折角αが第一の斜角探触子41の設計上の屈折角のような一定値ではなく、ある範囲の値を取ることになる。今、第一の斜角探触子41の位置(x1,0)に対する反射源の相対的位置を(x−x1,y)=(xr,y)、第一の斜角探触子41の位置(x1,0)に対する第二の斜角探触子42の相対的位置を(x2−x1,0)=(d,0)とおいて、d=50mm、第一の斜角探触子41の設計上の屈折角を20°とする。さらに、レール種類が60kgレールで、h=174mmとする。そして、屈折角αが20°±5°の範囲の値をとるとすると、αを1°おきに変化させたとき、xr、y、tは(3)式及び(4)式から以下の表のようになる。
【0042】
【表1】
Figure 0004632475
また、tとxr、yの関係をグラフにすると図7に示すものとなる。この図から、xr、yはtの1次式a・t+bで十分正確に近似できることがわかり、具体的には、xrについてはa=−3.1、b=213、yについてはa=1.3、b=−46となる。
【0043】
以上では60kgレールを例にとって説明したが、他のレール種類に対しても同様にして近似式を求めることができる。なお、この例では、第一の斜角探触子41と第二の斜角探触子42とが所定の位置関係にあってdが一定であるが、そうでない場合には、想定されるdの値あるいはそのうちのいくつかの値毎に、近似式を求めておけば良い。
【0044】
反射源位置特定部24の相対位置算出部24−1は、モード変換タンデムチャネルについて、以上のようにして予め求められた近似式を用いて、反射エコー検出部18で求められた伝搬時間tと、表面底面間距離算出部22で求められた表面底面間距離(レール高さ)hから、まず、反射エコーの反射源の第一の斜角探触子41に対する相対的位置(xr,y)を求める。すなわち、レール高さhに対応する近似式を用いて、伝搬時間tから反射源の相対的位置(xr,y)を算出する。このとき、実際に求められたレール高さhが、想定したレール高さのいずれとも一致しないときは、例えば、想定したレール高さの中で最も値の近いものに対応する近似式を用いれば良い。あるいは、想定した中で最も値の近い2つのレール高さに対応するそれぞれの近似式から相対的位置を算出し、その単純平均また重み付け平均によって反射源の相対的位置を求めてもよい。
【0045】
次に、位置決定部24−2において、上記のようにして求めた反射源の第一の斜角探触子41に対する相対的位置(xr,y)と、探触子位置計測部16によって計測された第一の斜角探触子41の位置(x1,0)とから、x=xr+x1により、最終的に反射エコーの反射源の位置(x,y)を決定する。
【0046】
なお、反射エコーの伝搬時間tは、第一の斜角探触子41からレール1に入射される縦波超音波の広がり、すなわち設計上の屈折角(例えば20°)と指向角から決まる最小屈折角及び最大屈折角によって制限されることになる。従って、最小屈折角及び最大屈折角がわかっている場合には、それに応じて決定される伝搬距離の範囲の反射エコーのみを対象とすることにより、不正な反射エコーやノイズを除去することができる。
【0047】
反射源位置特定部24は、その他のチャネルについては、図8に示すように、反射エコーの伝搬距離2rと、探触子位置計測部16によって計測された探触子の位置(x0,0)及び符号付きの(設計上の)屈折角θから、反射源の位置(x,y)を次式により求める。
【0048】
【数5】
Figure 0004632475
連結領域抽出部26は、各チャネル毎に、反射源位置特定部24で算出された反射源の位置をプロットした場合に得られる断面画像において、連結しているプロット点の集合を一つの連結領域として抽出するものである。これにより、算出された複数の反射源の位置からレール内において連続した反射源と推定できる反射源群を抽出することができる。この抽出は、例えば、ラベリングと呼ばれる画像処理手法を用いて行うことができる。ラベリングは、連結領域ごとにラベル(番号)を割り付ける処理を行うもので、例えば、「コンピュータ画像処理入門」(田村監修 総研出版 1985年)に記載されている。また、別の方法として、特開平9−264881号公報記載の方法を用いることも可能である。後者による連結領域抽出方法について以下に簡単に説明する。
【0049】
まず、反射エコーが検出されてその反射源の位置が算出されるたびに、この位置と、すでに使用されている割付番号を最後に割り付けられた反射エコーの反射源の位置とを比較して、両者の距離が所定範囲である場合に、前記検出された反射エコーに、その既に使用されている割付番号を割り付ける。この所定範囲とは、例えば、以下式(7)〜(9)のいずれかを満足する範囲とすることができる。尚、(x、y)は反射エコーが検出されたときのその反射源の位置であり、(xi,yi)は、割付番号iを最後に割り付けられた反射エコーの反射源の位置であり、p、q、r、sは所定値、max(A、B)はAとBのうちの大きい方を表す。
【0050】
【数6】
Figure 0004632475
割付番号iを割り付けられた反射エコーの反射源(xi,yi)と検出された反射エコーの反射源(x,y)とが、所定範囲にあるときには、反射源(xi,yi)と連結されているものと判定し、その反射エコーに割付番号iを割り付ける。他方、検出されたエコーの反射源(x、y)と反射源(xi,yi)とが上記(7)、(8)、(9)式のいずれかを満足しなかったときには、連結していないものと判定し、前記検出された反射エコーに未使用の割付番号を割り付ける。
【0051】
この処理手順によって、断面画像上での連結領域ごとに異なる割付番号が割り付けられ、その連結領域が抽出されることになる。このようにして抽出される各連結領域は、連続した反射源群、即ちマクロ的な一つの反射源に対応している。
【0052】
特徴量算出部28は、連結領域抽出部26で抽出された各チャネルごとの各連結領域について、特徴量を求めるものである。特徴量としては、まず、連結領域の位置を表すものとして、例えば、連結領域の重心または連結領域の両端点の中心を求める。ここで、連結領域の両端点の位置は、先に説明した連結領域抽出部26での連結領域抽出処理において、ある割付番号を最初に割り付けられた反射エコーと最後に割り付けられた反射エコーの、それぞれの反射源の位置として求められる。別の特徴量として、連結領域の大きさ(例えば、その連結領域に対応する反射エコーの数による)や長さ(例えば、その連結領域の両端点間距離による)、さらに、反射エコー検出部18から反射エコーの受信信号レベルの最大値などを求める。
【0053】
人工構造検出部30は、特徴量算出部28で抽出された特徴量、例えば重心に基づいて、ボルト穴1b等の人工構造を検出するものである。前述したように、ボルト穴に対しては垂直チャネル及び±45°チャネルによって、図4のような断面画像が得られることが判明している。すなわち、この3つのチャネルでのボルト穴1bを反射源とする連結領域の位置関係は決まっている。さらに、ボルト穴1bはレール1の腹部に存在することも判っている。そこで、例えば、「垂直チャネルの連結領域の重心がレール1の腹部に位置し、かつ、その重心位置に対して所定の範囲内に重心位置を有する+45°及び−45°チャネルの連結領域が共に存在すること」を条件としてボルト穴1bを識別することが可能である。この際、ボルト穴1bの中心位置(x,y)は、例えば、垂直チャネルの連結領域の重心位置(p,q)をもとに、kをボルト穴の半径程度の所定値として、x=p、y=q+kにより求められる。
【0054】
なお、他の人工構造である、ボルト穴より小さいボンド穴、メイハン穴も同様にして識別が可能である。
【0055】
遊間検出部32は、人工構造検出部30で検出されたボルト穴の位置関係から、レールの遊間部を検出し、その位置を求めるものである。これは、例えば、特開平10−2887号公報記載の方法を用いて行うことができる。レールの継目においては、図11に示したように、隣合うレール1,1間に継目板6を渡し、継目板6と各レール1,1のボルト穴1b、1b’にボルトを貫通させて、レール1,1及び継目板6を締結している。こうして連結されるレール1,1間に形成される遊間部1cからの反射エコーは不安定となり、遊間部1cを確実に検出することができないので、傷と誤判定してしまうおそれがある。しかしながら、遊間部1cの直ぐ両側に位置するボルト穴1b’とレール1の端面の間隔d1、ボルト穴1b’と遊間部1cの直ぐ両側に位置しないボルト穴1bとの間の間隔d2及びレール1の継目部のボルト穴の個数は、レールの種類(前述の60kg、50T、50kgN、50kgPS、40kgN、37kgA及び30kgA)によって予め定められているので、ボルト穴1b、1b’の位置から遊間部1cを検出することができる。
【0056】
上記種類のレール1は、ボルト穴1b’とレールの端面の間隔d1及びボルト穴1b,1b’間の間隔d2によって、二つのグループに区分することができ、
(1)60kg、50T、50kgN、40kgNの場合
d1=77mm、d2=130mm、ボルト穴数=4又は6
(2)50kgPS、37kg、30kgの場合
d1=60.5mm、d2=127mm、ボルト穴数=4
と定まっている。(1)のグループのレール1では、遊間部1cの両側のボルト穴1b’、1b’ 間の間隔は、154mm+遊間部の間隔(通常、数mm〜20mm程度)となり、他のボルト穴1b、1b’の間隔d2(即ち130mm)と明白な差異があるため、例えば150mm以上180mm以下の間隔であることを条件として、人工構造検出部30で検出されたボルト穴のうち、レール1の遊間部1cの直ぐ両側に位置するボルト穴1b’、1b’を認識することができる。このボルト穴1b’、1b’を認識することができれば、その中心をレール1の遊間部1cとして判定することができる。一方、(2)のグループに属するレール1では、遊間部1cの両側のボルト穴1b’の間隔は121mm+遊間部1cの間隔であり、他のボルト穴1b間の間隔と略等しく、遊間部1cの両側のボルト穴1b’を間隔だけから識別することは困難である。しかしながら、このグループではボルト穴数が4個と定められているので、4つのボルト穴が略一定間隔で存在することになる。そこで、例えば、120mm以上145mm以下の間隔で4つのボルト穴1b、1b’が検出された場合に、これをレール継目部のボルト穴群であると認識し、その中心をレール1の遊間部1cとする。
【0057】
こうして、遊間検出部32において、人工構造検出部30で検出されたボルト穴の位置関係から、レールの遊間部1cを検出する。
【0058】
次に、判定部34は、人工構造検出部30で検出された人工構造に対応する連結領域以外の連結領域について、その特徴量に基づいて、傷であるか否か及び傷と判定した場合の重大性の判定等を行う。
【0059】
モード変換タンデムチャネルにおいては、図9に示すようにボルト穴1b等を反射源とする反射エコーが観測されることがある。したがって、モード変換タンデムチャネルでの連結領域の特徴量、例えば重心が、人工構造検出部30で検出されたボルト穴1bの中心に対して所定範囲内に位置する場合は、その連結領域はボルト穴1bを反射源とする反射エコーによるものであると判定する。ボンド穴やメイハン穴についても同様に判定できる。
【0060】
また、モード変換タンデムチャネルにおいては、図10に示すようにレールの継目の遊間部1cで、レール1の端面を反射源とする反射エコーが観測されることがあり、同様にして、例えば、重心位置が検出された遊間部の位置に対して所定の範囲内となっている連結領域を、レール遊間部からの反射エコーによるものであると判定する。
【0061】
さらに、特開平10−2887号公報に記載されているように、レール遊間部においては他のチャネルでも反射エコーが観測されることがあり、例えば、他チャネルでの連結領域の特徴量が遊間検出部32で重心位置が検出された遊間部の位置に対して所定の範囲内となっている連結領域を、レール遊間部からの反射エコーによるものであると判定する。
【0062】
以上によって人工構造もしくはレール遊間部からの反射エコーによる連結領域であると判定されなかった連結領域に対しては、レール傷としての判定を行う。この判定は、例えば次の様にして行う。まず、チャネルの種類によって、垂直チャネルでは水平裂、±45°チャネルでは傾き45°程度の横裂、モード変換タンデムチャネルでは縦割れと判定する。また、連結領域の大きさや最大エコー高さによって、傷の重大性を判定する。
【0063】
反射源位置特定部24で算出された各反射エコーの反射源位置を表したレールの断面画像や判定結果は、図1に示していない表示部や記録部によって、表示及び記録される。これらには、例えば、CRTでの画面表示、ハードディスク等の記憶媒体への記録、記録紙への印字等の方法が用いられる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、モード変換タンデム法で検出された反射エコーについて、その伝搬時間及び被検査体の表面から背面までの距離から反射源の位置を特定し、反射源の実体に即した情報から信頼性の高い判定を行うことが可能となる。
【0065】
また、請求項または1記載の発明によれば、入射される超音波の屈折角と広がりに見合った伝搬時間の反射エコーのみに注目することによって、不正な反射エコーやノイズを除去することができる。
【0066】
また、請求項または1記載の発明によれば、探傷途中で被検査体の表面から底面(背面)までの距離が変わったとしても、問題なく上記の反射源の位置の特定ができる。
【0067】
さらに、請求項、1、1記載の発明によれば、被検査体がレールの場合に、ボルト穴のような人工構造や、継目での遊間部(レール端面)を傷と判定することはなく、信頼性の高い傷判定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による被検査体傷判定装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】従来の鉄道レールなどを超音波で探傷する際の計測状態を示す斜視図である。
【図3】図2の超音波探傷装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】ボルト穴付近におけるBスコープ画像図である(ボルト穴を重畳して表す)。
【図5】モード変換タンデム法の原理を表す説明図である。
【図6】探触子ブロックの構成を表す説明図である。
【図7】伝搬時間tと、反射源の位置(xr、y)の関係を表すグラフである。
【図8】送受信用斜角探触子と、反射エコーの反射源との位置関係を表す説明図である。
【図9】タンデム用の送信用及び受信用の斜角探触子と、ボルト穴との位置関係を表す説明図である。
【図10】タンデム用の送信用及び受信用の斜角探触子と、レールの継目部との位置関係を表す説明図である。
【図11】レールの継目部の構成の説明図である。
【符号の説明】
1 レール
1b ボルト穴
1c 遊間部
16 探触子位置計測部(探触子位置計測手段)
22 表面底面間距離算出部(表面底面間距離算出手段)
24 反射源位置特定部(反射源位置算出手段)
24−1 相対位置算出部(相対位置算出手段)
24−2 位置決定部(位置決定手段)
26 連結領域抽出部(抽出手段)
28 特徴量算出部(特徴量算出手段)
30 人工構造検出部(人工構造検出手段)
34 判定部(判定手段)
41 第一の斜角探触子
42 第二の斜角探触子
44 垂直探触子
43 送受信用斜角探触子
45 送受信用斜角探触子

Claims (17)

  1. 被検査体の表面に第一の斜角探触子及び第二の斜角探触子を当接させて、第一の斜角探触子から縦波超音波を送信し、その縦波超音波が底面(背面)でモード変換せずに反射したのち、被検査体内部の反射源でモード変換して反射した横波超音波を第二の斜角探触子で受信して、または、第二の斜角探触子で横波超音波を送信し、その横波超音波が被検査体内部の反射源で縦波超音波にモード変換して反射したのち、底面(背面)でモード変換せずに反射した縦波超音波を第一の斜角探触子で受信することによって前記被検査体を探傷して、検出された反射エコーに基づいて反射源の位置を特定する方法であって、
    前記被検査体の表面、底面(背面)及び被検査体内部の反射源の法線は平行であり、かつ、底面(背面)での反射及び被検査体内部の反射源での反射においてはスネルの法則を満足するものとして、第一または第二の斜角探触子から被検査体へ入射する超音波の屈折角のある角度範囲で、第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置と、表面から底面(背面)までの距離とを一定としたときの、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する近似式を予め求めておき、
    反射エコーが検出されたときに、超音波が送信されてから該検出された反射エコーが受信されるまでの伝搬時間と前記近似式から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出し、さらに、第一の斜角探触子または第二の斜角探触子の位置を用いて、検出された反射エコーの反射源の位置を特定することを特徴とする反射源位置特定方法。
  2. 請求項記載の反射源位置特定方法において、
    第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置毎に、かつ、表面から底面(背面)までの距離毎に、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する近似式を予め求めておき、
    反射エコーが検出されたときに、そのときの第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置及び表面から底面(背面)までの距離に対応する前記近似式から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出し、さらに、第一または第二の斜角探触子の位置を用いて、検出された反射エコーの反射源の位置を特定することを特徴とする反射源位置特定方法。
  3. 請求項1または2記載の反射源位置特定方法において、
    前記伝搬時間が所定の範囲内である反射エコーのみを対象として処理を行うことを特徴とする反射源位置特定方法。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の反射源位置特定方法において、
    前記被検査体の表面から底面(背面)までの距離を、その表面に当接した超音波の送受信用の垂直探触子により超音波を送信してから底面(背面)で反射したエコーが受信されるまでの伝搬時間及び超音波の音速から算出することを特徴とする反射源位置特定方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の反射源位置特定方法を実施し、
    複数の反射源の位置が特定されたときに、これら複数の反射源の位置から被検査体内で連続した反射源であると推定できる反射源群を抽出し、次に、抽出した反射源群について一つまたは複数の特徴量を算出して、その特徴量に基づいて前記被検査体の傷を判定することを特徴とする被検査体傷判定方法。
  6. 請求項記載の被検査体傷判定方法において、
    被検査体内で連続した反射源であると推定できる反射源群を抽出するのは、特定された各反射源の位置をプロットした場合に得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出することであり、
    抽出した反射源群について一つまたは複数の特徴量を算出するのは、抽出した各連結領域について、一つまたは複数の特徴量を算出することである被検査体傷判定方法。
  7. 被検査体がレールであり、
    請求項1ないし4のいずれか1項に記載の反射源位置特定方法を実施し、
    さらに、
    反射源の位置が複数個特定されたときに、特定された各反射源の位置をプロットした場合に得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出し、連結領域の位置を特徴量として算出し、
    さらに、超音波の送信用及び/または受信用の1つまたは複数の垂直または斜角探触子により超音波を送信して検出された反射エコーに基づいて、レールに存在するボルト穴等の人工構造を検出し、
    前記連結領域の特徴量である位置と、検出された人工構造の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを人工構造からの反射エコーであると判定する、
    ことを特徴とする被検査体傷判定方法。
  8. 請求項記載の被検査体傷判定方法において、さらに、
    人工構造を検出した結果に基づいて、レールの継目における遊間部を検出し、前記連結領域の特徴量である位置と、検出された遊間部の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを遊間部からの反射エコーであると判定することを特徴とする被検査体傷判定方法。
  9. 被検査体の表面に第一の斜角探触子及び第二の斜角探触子を当接させて、第一の斜角探触子から縦波超音波を送信し、その縦波超音波が底面(背面)でモード変換せずに反射したのち、被検査体内部の反射源でモード変換して反射した横波超音波を第二の斜角探触子で受信して、または、第二の斜角探触子から横波超音波を送信し、その横波超音波が被検査体内部の反射源で縦波超音波にモード変換して反射したのち、底面(背面)でモード変換せずに反射した縦波超音波を第一の斜角探触子で受信することによって前記被検査体を探傷して、検出された反射エコーに基づいて反射源の位置を特定する反射源位置特定装置であって、
    第一の斜角探触子及び第二の斜角探触子の位置を計測する探触子位置計測手段と、
    反射エコーを検出して、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間を計測する反射エコー検出手段と、
    検出された反射エコーの反射源の位置を特定する反射源位置特定手段であって、
    前記被検査体の表面、底面(背面)及び被検査体内部の反射源の法線が平行であり、かつ、底面(背面)での反射及び被検査体内部の反射源での反射においてはスネルの法則を満足するものとして、第一または第二の斜角探触子から被検査体へ入射する超音波の屈折角のある角度範囲で、第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置と、表面から底面(背面)までの距離とを一定としたときの、超音波が送信されてから反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する近似式を用いて、超音波が送信されてから該検出された反射エコーが受信されるまでの伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する相対位置算出手段と、
    前記相対位置算出手投で算出された第一または第二の斜角探触子に対する反射源の相対的位置と、第一または第二の斜角探触子の位置とから、検出された反射エコーの反射源の位置を決定する位置決定手段と、からなる前記反射源位置特定手段と、
    を有することを特徴とする反射源位置特定装置。
  10. 請求項記載の反射源位置特定装置において、
    前記相対位置算出手段は、前記第一の斜角探触子と第二の斜角探触子との相対的位置、前記被検査体の表面から底面(背面)までの距離に応じた近似式を用いて、前記伝搬時間から、検出された反射エコーの反射源の第一または第二の斜角探触子に対する相対的位置を算出する
    ことを特徴とする反射源位置特定装置。
  11. 請求項9または10記載の反射源位置特定装置において、
    前記反射源位置特定手段は、前記伝搬時間が所定の範囲内である反射エコーについて反射源の位置を特定することを特徴とする反射源位置特定装置。
  12. 請求項9ないし11のいずれか1項に記載の反射源位置特定装置において、さらに、
    前記被検査体の表面に当接される超音波の送受信用の垂直探触子を有し、
    前記反射エコー検出手段は、この送受信用の垂直探触子によって検出された反射エコーについても反射エコーを検出して伝搬時間を計測するものであり、
    送受信用の垂直探触子により超音波を送信してから底面(背面)で反射したエコーが受信されるまでの伝搬時間及び超音波の音速から、前記被検査体の表面から底面(背面)までの距離を算出する表面底面間距離算出手段を有することを特徴とする反射源位置特定装置。
  13. 請求項9ないし12のいずれか1項に記載の反射源位置特定装置において、
    被検査体がレールであることを特徴とする反射源位置特定装置。
  14. 請求項9ないし13のいずれか1項に記載の反射源位置特定装置
    複数の反射源の位置が特定されたときに、特定された各反射源の位置をプロットして得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出する抽出手段と、
    抽出した各連結領域について、一つまたは複数の特徴量を算出する特徴量算出手段と
    特徴量算出手段で算出された特徴量に基づいて前記被検査体の傷を判定する判定手段と、を有する、ことを特徴とする被検査体傷判定装置。
  15. 被検査体がレールであり、
    請求項9ないし12のいずれか1項に記載の反射源位置特定装置と、
    超音波の送信用及び/または受信用の1つまたは複数の垂直または斜角探触子と、
    反射源の位置が複数個特定されたときに、特定された各反射源の位置をプロットした場合に得られるであろう断面画像において、連結しているプロット点の集合である連結領域を抽出する抽出手段と、
    該連結領域の位置を特徴量として算出する特徴量算出手段と、
    前記超音波の送信用及び/または受信用の1つまたは複数の垂直または斜角探触子により超音波を送信して検出された反射エコーに基づいて、レールに存在するボルト穴等の人工構造を検出する人工構造検出手段と、
    前記連結領域の特徴量である位置と、検出された人工構造の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを人工構造からの反射エコーであると判定する判定手段と、
    を有することを特徴とする被検査体傷判定装置。
  16. 請求項15記載の被検査体傷判定装置において、さらに、
    人工構造検出手段での人工構造の検出結果に基づいて、レールの継目における遊間部を検出する遊間検出手段を有し、
    前記判定手段は、前記連結領域の特徴量である位置と、検出された遊間部の位置とが所定の関係にあるとき、その連結領域に対応する反射エコーを遊間部からの反射エコーであると判定することを特徴とする被検査体傷判定装置。
  17. 請求項15または16記載の被検査体傷判定装置を備えた超音波レール探傷車。
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