JP4632008B2 - トリアジン化合物含有廃水の処理による尿素合成方法 - Google Patents

トリアジン化合物含有廃水の処理による尿素合成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、トリアジン化合物(メラミン、アンメリン、アンメリド、シアヌル酸など)を含有する廃水を連続的に加水分解により処理すると共に、そのトリアジン化合物の加水分解により得られるアンモニアと二酸化炭素とを回収し、尿素合成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メラミン製造工程、シアヌル酸製造工程、又はこれらを取り扱う工程からは、メラミン、アンメリン、アンメリド、シアヌル酸などのトリアジン化合物、そしてトリアジン化合物の製造原料である尿素を含む廃水が排出される。
【0003】
ソビエト特許第345103号明細書、特開昭51-126967号公報、及び米国特許第5386079号明細書に、メラミンなどのトリアジン化合物の加水分解技術を中心とした廃水処理技術が開示されている。これらの技術は廃水を酸性又はアルカリ性に調整した後に高温高圧下で処理することにより加水分解を促し、トリアジン化合物をアンモニアと二酸化炭素へ分解するものである。
【0004】
その加水分解条件に関して、ソビエト特許第345103号明細書ではアルカリ性廃水を温度120〜200℃の自然発生圧力下の条件を提案している。特開昭51-126967号公報では酸性廃液(pH:0〜6)を225〜275℃の自然発生圧力下の条件を提案している。そして、米国特許第5386079号明細書では酸性廃液(pH:2.5以下)を130〜170℃の自然発生圧力下の条件、又はアルカリ性廃水(pH:11以上)を120〜175℃の自然発生圧力下の条件を提案している。
【0005】
上記の先行技術には、生成するアンモニアと二酸化炭素とを工業的に効率よく回収又は利用する方法は提案されていない。
【0006】
また、特開昭55-149676号公報には、尿素及びメラミン製造工程より発生する尿素含有廃液の処理及び有効利用方法として、高温高圧で尿素含有廃水を処理して尿素を加水分解させ、そして生成したアンモニア及び二酸化炭素を廃水より除去して、アンモニアと二酸化炭素の混合ガスを純粋なアンモニアガス及び純粋な二酸化炭素ガスに分離回収することを開示している。
【0007】
トリアジン化合物含有廃水処理によって発生する希薄なアンモニア濃度と二酸化炭素濃度を有する廃水からのアンモニアと二酸化炭素の有効な回収方法は提案されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、トリアジン化合物含有廃水を処理すると共に、発生する希薄なアンモニア濃度と二酸化炭素濃度を有する廃水からのアンモニアと二酸化炭素を回収し、尿素の合成に利用する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、トリアジン化合物含有廃水の処理による尿素合成方法は、下記の工程(A)、(B)及び(C):
(A) 250〜300℃の温度、0.5〜2時間の平均滞留時間、及び6〜10MPaの自然発生圧力の条件下でメラミン、アンメリン、アンメリド及びシアヌル酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上のトリアジン化合物0.5〜2重量%のトリアジン化合物濃度と、9〜12のpHとを有する廃水を加水分解させる工程、
(B) (A)工程で得られた廃水を蒸留操作により15〜35重量%の水蒸気濃度を有するアンモニアと二酸化炭素との混合ガスと、缶出液とに分離させる工程、及び
(C) (B)工程で得られたアンモニアと二酸化炭素との混合ガスを尿素製造工程よりの工程液に吸収させて、65〜75重量%の水分を有するアンモニア過剰カルバミン酸アンモニウム溶液を調整させて、尿素製造工程へ供給する工程からなる。
【0010】
そして、(A)工程は、メラミン製造工程等から発生したアルカリ性廃液(pH9〜12が望ましい。酸性の場合は水酸化ナトリウム等を添加して調整する)をポンプを用いて圧力を上昇させ、そして熱交換器にて廃液の温度を上昇させた後、加水分解反応装置である槽型高圧容器又は管型高圧容器にて、メラミンをはじめとするトリアジン化合物を加水分解する工程である。
【0011】
加水分解条件としては、温度250〜300℃及び平均滞留時間0.5〜2時間を採用すると、圧力6〜10MPa(水蒸気、アンモニア、二酸化炭素などの自然発生圧力)にて、廃水中の残存トリアジン化合物の合計の濃度が0.5〜2重量%程度から0.01重量%以下に低減できて好ましい。
【0012】
pHを9〜12に調整するには、アルカリ性物質の添加が必要である。アルカリ性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。特に水酸化ナトリウムが好ましい。例として、処理後の廃液中には遊離型の水酸化ナトリウム濃度として0.4〜400ppmが必要である。なお、メラミン製造工程より発生するトリアジン化合物含有廃水では、フェノール型水酸基を有するアンメリン、アンメリド、シアヌル酸などのトリアジン化合物と、廃液中の溶存炭酸より発生する炭酸イオン、炭酸水素イオンと中和塩を形成するため塩を形成する固定型の水酸化ナトリウムの添加も必要となる。実質的に、遊離型と固定型との合計水酸化ナトリウム濃度は、数千ppmとなる。
【0013】
加水分解反応装置において、管型高圧容器又は槽型高圧容器を用いる。槽型高圧容器内では邪魔板等を設け、容器内の流れが短絡しないようにするのが望ましい。
【0014】
(B)工程は、(A)工程にて発生したアンモニアと二酸化炭素とを廃水と分離する工程である。装置としては、蒸留塔(精留塔、パーシャルコンデンサー付き蒸留塔など)を用いる。例としてパーシャルコンデンサー付き蒸留塔では、加水分解後の廃液は(B)工程の蒸留塔にてアンモニアと二酸化炭素を蒸発留出させ、パーシャルコンデンサーにて、水蒸気濃度として15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%である高濃度のアンモニアと二酸化炭素との混合ガスにさせる。缶出液はトリアジン化合物とアンモニアとを実質的に含まない廃水として排出させる。
【0015】
(C)工程は、(B)工程から留去されたアンモニアと二酸化炭素との混合ガスを吸収塔にて回収、尿素製造工程などのこれらを原料とする製造工程へ払い出す工程である。
【0016】
ここで尿素製造工程においては余剰な水は生産量の減少やエネルギー使用量の増加につながるので、吸収塔では吸収液として尿素製造工程等で使用される液を用い、アンモニア及び二酸化炭素濃度を上げて尿素製造工程等に返送する。
【0017】
なお、(B)工程及び(C)工程の運転条件は、(A)工程の温度及び圧力から低い領域で任意に選ぶことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明の実施例を示したものである。
【0019】
メラミン製造工程等から発生したアルカリ性廃液(pH9〜12が望ましい。廃液のpHが酸性の場合はあらかじめ水酸化ナトリウム等を添加して調整する)を熱交換器(1)にて昇温、ポンプ(2)を用いて加水分解条件にまで圧力を上昇させ、熱交換器(3)及び加熱炉型高温熱交換器(4)を用いて加水分解条件である温度にまで昇温する。ここで、熱交換器(1)は蒸留塔(6)からの缶出液の熱回収のため、熱交換器(3)は槽型高圧容器(5)からの加水分解後の廃水からの熱回収のために用いられる。槽型高圧容器(5)内で廃水を滞留させ、メラミンをはじめとするトリアジン化合物をアンモニアと二酸化炭素へ加水分解する。一般に廃水中のこれらトリアジン化合物濃度は0.5〜2%である。例としてメラミンの加水分解反応は、メラミン、アンメリン、アンメリド、シアヌル酸、そして最終的にアンモニアと二酸化炭素へと逐次的に起こり、それぞれの段階で水を消費してアンモニアと二酸化炭素とが生成する。また廃水中に尿素があれば、これもアンモニア、二酸化炭素へ加水分解される。加水分解条件は、温度250〜300℃、圧力6〜10MPa(自然発生圧力以上)、平均滞留時間0.5〜2時間で、トリアジン化合物の合計の濃度が0.5〜2重量%程度の廃水が槽型高圧容器で0.01重量%以下に低減できる。なお、槽型高圧容器内には邪魔板等を設け、容器内の流れが短絡しないようにするのが望ましい。
【0020】
槽型高圧容器(5)からの廃水は熱交換器(3)で冷却された後、調節弁で圧力を下げ、蒸留塔(6)へ供給される。蒸留塔(6)ではスチーム等を熱源とし、アンモニア、二酸化炭素を留去、缶出液はトリアジン化合物、アンモニアを含まない廃水として、熱交換器(1)で冷却された後に排出される。一方、留去されたガス(アンモニア、二酸化炭素、水蒸気の混合ガス)のコンデンサーとして、同伴水分を最小とするためパーシャルコンデンサー(7)を用い、水蒸気を含む高濃度のアンモニアと二酸化炭素ガスとを含む混合ガスとして、次の吸収塔(8)へ送出する。
【0021】
吸収塔(8)ではパーシャルコンデンサー(7)からの混合ガスを吸収液に吸収し、尿素製造工程等のアンモニア、二酸化炭素を原料とする製造工程へ送出する。吸収液として尿素製造工程等の工程液を受入れ吸収液として使用し、アンモニア濃度と二酸化炭素濃度とを上げて尿素製造工程等に返送する。
【0022】
尿素製造工程等においては余剰な水は生産量の減少やエネルギー使用量の増加につながるので、余剰水を最少とするため、蒸留塔(6)のコンデンサーとしてパーシャルコンデンサー(7)を採用して、留出分をガス体で取り出すことで高濃度のアンモニアと二酸化炭素の混合ガスを得ることができ、更に吸収塔(8)の吸収液は新たな用役等は用いずに、尿素製造工程の工程水(80〜90重量%の水分を有するアンモニア過剰の希薄カルバミン酸アンモニウム溶液)を吸収液として使用して、65〜75重量%の水分を有するアンモニア過剰の濃厚カルバミン酸アンモニウム溶液にさせる。そして尿素の原料として尿素製造工程に供給する。
【0023】
なお、蒸留塔(6)から吸収塔(8)までは同圧とし、これらの運転条件は、槽型高圧容器(5)の温度及び圧力から低い領域で任意に選ぶことができ、例えば尿素製造工程等へ払い出す液中の余剰水を少なくするために操作圧力を高くしたり、また蒸留塔(6)の熱源として低圧スチームを使用して操作圧力を低くすることが可能である。低圧スチームとしては、工場内の余剰スチームを利用することで、より経済的な運転をすることもできる。
【0024】
【実施例】
実施例1
図1の装置においての実施例を示す。
【0025】
メラミン製造工程から発生したアルカリ性廃液(pH11、メラミン濃度0.4重量%、アンメリン濃度0.2重量%、アンメリド濃度0.1重量%、尿素濃度0.2重量%、水酸化ナトリウム濃度0.4%)17t/hを熱交換器(1)にて温度100℃に上昇させ、ポンプ(2)を用いて圧力9MPaにまで上昇させて、熱交換器(3)及び高温加熱器である加熱炉(4)を用いて温度270℃にまで更に温度を上昇させた。次に、槽型高圧容器(5)内でその廃水を平均滞留時間1.5時間に保持させ、廃水中のメラミンをはじめとするトリアジン化合物をアンモニア、二酸化炭素へと加水分解させて、残存トリアジン化合物の合計濃度を0.001重量%に低減させた。槽型高圧容器(5)は総容量34m3、内部に邪魔板を有していた。槽型高圧容器(5)からの廃水は熱交換器(3)で温度150℃へ冷却させた後、調節弁で廃水圧力を9MPaから蒸留塔操作圧力である0.17MPaへ減圧させ、蒸留塔(6)へ供給した。
【0026】
次に、蒸留塔(6)に圧力0.23MPaのスチームを蒸留塔底部へ吹き込み蒸留塔底部温度110℃として、アンモニアと二酸化炭素とを留去させて、缶出液はトリアジン化合物とアンモニアを含まない廃水として、熱交換器(1)で温度50℃に冷却された後に排出させた。一方、留去されたガス(アンモニアと二酸化炭素と水蒸気との混合ガス)はパーシャルコンデンサー(7)にて温度80℃に冷却させ、主に水蒸気を凝縮させることにより高濃度のアンモニアと二酸化炭素を含有する混合ガス(アンモニアと二酸化炭素と水蒸気の重量比:アンモニア濃度45%、二酸化炭素濃度30%、水蒸気濃度25%)として取り出し、吸収塔(8)へ送出した。操作圧力0.15MPaの吸収塔(8)ではパーシャルコンデンサー(7)からの混合ガスを尿素製造工程から受け入れた80〜90重量%の水分を有するアンモニア過剰希釈カルバミン酸アンモニウム溶液工程液に混合ガスを吸収させ、その工程液のアンモニアと二酸化炭素の濃度を上げて65〜75重量%の水分を有するアンモニア過剰濃厚カルバミン酸アンモニウム溶液として尿素製造工程に返送した。
【0027】
そして、返送した濃厚カルバミン酸アンモニウム溶液は、尿素製造工程において尿素合成原料として使用された。
【0028】
実施例2
メラミン製造工程から発生したアルカリ性廃液(pH11、メラミン濃度0.4重量%、アンメリン濃度0.2重量%、アンメリド濃度0.1重量%、尿素濃度0.2重量%、水酸化ナトリウム濃度0.4%)43L/hをポンプを用いて圧力7MPaまでに上昇させ、加熱器を用いて温度270℃にまで上昇させ、槽型高圧容器内で廃水を平均滞留時間70分間に保持させ、メラミンをはじめとするトリアジン化合物をアンモニアと二酸化炭素へ加水分解した。よって、残存トリアジン化合物の合計濃度を0.005重量%に低減させた。槽型高圧容器は総容量50Lで、内部に邪魔板を有していた。
【0029】
実施例3
メラミン製造工程から発生したアルカリ性廃液(pH11、メラミン濃度0.4重量%、アンメリン濃度0.2重量%、アンメリド濃度0.1重量%、尿素濃度0.2重量、水酸化ナトリウム濃度0.4%)40L/hをポンプを用いて7MPaにまで昇圧、加熱器を用いて温度270℃にまで上昇させ、槽型高圧容器内で廃水を平均滞留時間75分間保持させ、メラミンをはじめとするトリアジン化合物をアンモニアと二酸化炭素へ加水分解した。残存トリアジン化合物の合計濃度を0.015重量%に低減させた。槽型高圧容器は総容量50Lで、内部に邪魔板は有してなかった。
【0030】
実施例4
メラミン製造工程から発生したアルカリ性廃液(pH11、メラミン濃度0.4重量%、アンメリン濃度0.2重量%、アンメリド濃度0.1重量%、尿素濃度0.2重量、水酸化ナトリウム濃度0.4%)5L/hをポンプを用いて7MPaにまで昇圧、加熱器を用いて温度270℃にまで上昇させ、管型高圧容器内で廃水を平均滞留時間60分間保持させ、メラミンをはじめとするトリアジン化合物をアンモニアと二酸化炭素へ加水分解した。残存トリアジン化合物の合計濃度を0.001重量%以下に低減させた。管型高圧容器は総容量5Lであった。
【0031】
【発明の効果】
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例を示したものである。実線は液の流れを、破線はガスの流れを示し、番号は装置を表している。
【符号の説明】
(1) … 熱交換器
(2) … ポンプ
(3) … 熱交換器
(4) … 加熱炉
(5) … 槽型高圧容器
(6) … 蒸留塔
(7) … パーシャルコンデンサー
(8) … 吸収塔

Claims (1)

  1. 下記の工程(A)、(B)及び(C):
    (A) 250〜300℃の温度、0.5〜2時間の平均滞留時間、及び6〜10MPaの自然発生圧力の条件下でメラミン、アンメリン、アンメリド及びシアヌル酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上のトリアジン化合物0.5〜2重量%のトリアジン化合物濃度と、9〜12のpHとを有する廃水を加水分解させる工程、
    (B) (A)工程で得られた廃水を蒸留操作により15〜35重量%の水蒸気濃度を有するアンモニアと二酸化炭素との混合ガスと、缶出液とに分離させる工程、及び
    (C) (B)工程で得られたアンモニアと二酸化炭素との混合ガスを尿素製造工程よりの工程液に吸収させて、65〜75重量%の水分を有するアンモニア過剰カルバミン酸アンモニウム溶液を調整させて、尿素製造工程へ供給する工程、
    からなるトリアジン化合物含有廃水の処理による尿素合成方法。
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