JP4629784B2 - 臨床診断支援システム - Google Patents
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Description
医療現場における診療業務は、臨床診断業務と治療業務からなる。臨床診断業務では、医師は、疾患を特定するために問診・医療面接、身体診察、臨床検査等を利用して、最終的な疾患を確定診断する。また、治療業務では、医師は、確定診断により特定した疾患に対応して最適な治療方針を設定し、設定した治療方針に沿った治療行為を開始する。したがって、臨床診断で的確な診断を行うことが最適な治療方針選択のために必須である。
確定診断で的確な診断を行うためには、一般に、患者の症候(主訴、所見)から予想される病名(候補疾患名)を列挙し、候補疾患に対応する生化学検査や画像検査等の複数の臨床検査を組み立てて実行し、それらの検査結果を解読して候補疾患群の中から疾患を特定することが必要となる。即ち、一般的な臨床診断は、(1)病名列挙、(2)検査組立、及び、(3)検査結果の解読という3つの手順からなる。特に、検査結果の解読では、検査結果の変動内容(以下、単に「検査変動」ということがある。)を候補疾患の各々が発病時に呈する固有の検査変動と照合して、検査陰性となった疾患は除外すると共に、検査陽性となった疾患の中から特定の疾患を選出する。したがって、臨床診断では、病名列挙で列挙した候補疾患の全てについて、確定診断に必要となる検査を漏らすことなく把握して検査を組立て、実施した各検査の検査変動を各候補疾患の固有の検査変動と漏れなく照合することが的確な診断につながり、ひいては、最適な治療法選択につながる。
ここで、臨床医師は、臨床診断において、自己が有する医学知識や経験に基づき上記3つの手順を実行するが、一人の医師が多岐にわたる医療分野ごとの知識を全て具有することは困難であるため、必要に応じて、医学書の該当事項を参照し、また、医学書だけで判明しない事項については、医学書の記載等を手がかりに医学専門書等のその他の医学情報源を参照することが必要になる。しかし、医師が、臨床診断業務中の短時間で、医学書から医学専門書等にわたって末広がりとなる情報を的確に取得することは事実上困難である。一方、このような診断業務を自動的に行う自動診断システムが各種提案されているが、いずれも、いまだ実用的なレベルには達していない。
上記診断業務を支援するためのシステムとして、例えば、以下のものが提案されている。
しかし、後述するように、いかなる検査法(いかなる検査変動)を使用しても全疾患の1割前後で確定診断することができないのが現状である。したがって、上記特許文献1及び2を含め、従来の臨床診断支援システムは、既存の全検査項目を網羅する構成であったとしても、やはり、確定診断に適用することは困難であり、特に、自動診断システムにより確定診断を行うことはできない。また、検査変動が固定固有変動と随伴固有変動とに区分可能で、かつ、それらが異なる観点から臨床診断に利用可能である点(固定固有変動は疾患選出・同定に、随伴固有変動は疾患選出・同定に加えて発症条件同定に使用可能である点)は本発明者の知見によるものであり、従来は特に認識されることなく検査が行われていた。特に、臨床検査は、疾患を同定するために固定固有変動型検査に相当する検査項目を利用して行われており、随伴固有変動型検査については、その疾患について固有併発症が発症した場合等、特定の発症条件を確認してから別個の検査として実施されている。したがって、特に随伴固有変動は、現在の医療現場で臨床診断に活用されていないのが現状であり、全固有変動のうち随伴固有変動に相当する8割前後の固有変動が臨床診断で有効に活用されていないことになる。当然、上記特許文献1及び2を含め、従来の臨床診断支援システムも、診断対象の疾患自体については考察しているものの、その発症条件や随伴固有変動については全く考慮しておらず、やはり、全固有変動のうち随伴固有変動に相当する8割前後の固有変動を利用していないことになる。
本発明者は、臨床診断について鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を獲得し、この知見に基づいて本発明の臨床診断支援システムを完成した。
1)検査変動の把握・細分化・活用
本発明者は、上記診断業務における3つの手順(病名列挙、検査組立、検査結果解読)を臨床診断における短時間で医師が円滑かつ的確に進めることができるよう、医学書に記載の医学情報を網羅的かつ体系的に臨床現場の医師に提供できる電算システム(即ち、臨床診断支援システム)を開発すべく、疾患と症候との関係や疾患と検査項目との関係等について鋭意調査研究した。特に、上記のとおり、臨床診断において各検査の検査変動を各候補疾患の固有の検査変動と照合することが的確な診断につながることから、本発明者は、かかる検査変動の重要性に着目し、現在の臨床医学で知られている疾患ごとの全検査項目について、それぞれ、疾患ごとに検査項目の検査結果がどのように変動するか(どのような検査変動を呈するか)を網羅的かつ個別的に調査・検証し、疾患ごと及び検査項目ごとに検査変動がどのような動向を有するか(以下、この検査変動の動向を単に「検査動向」ということがある。)を特定することにより、診断・疾患の特定を向上させることを可能にした。
2−1)固有変動の数(最小単位の検査変動)
現在、全疾患について使用可能な臨床検査の検査項目数は約1000項目あることが確認されている。また、各検査項目の検査結果の変動内容(検査変動)は、疾患ごとに固有の変動を呈する固有変動となるが、1個の検査項目の検査結果が複数の疾患で種々の変動を呈する(同様の変動内容を呈したり異なる変動内容を呈したりする)ため、全疾患に対する全検査項目の全固有変動数は、上記のとおり、合計で約17000個あることを本発明者は確認している。即ち、臨床診断で使用する検査項目の検査変動は、全体で約17000個の最小単位に区分することができる点を本発明者は想到した。
更に、検査項目の固有変動は、上記のとおり、「固定固有変動」と「随伴固有変動」とに二分することができることに本発明者は想到した。このうち、固定固有変動は、ある検査項目について、特定の疾患が発病したときにはその疾患の発症条件とは無関係に常に固有の(同一の)変動内容となる固有変動であり、その疾患自体によってその変動内容を解釈することができるものである。一方、随伴固有変動は、ある検査項目について、特定の疾患が発病しても固有の(同一の)変動内容となることなく、その疾患について固有のある発症条件が発生したときにはじめて(その発症条件に随伴して)固有の(同一の)変動内容となる固有変動である。したがって、固定固有変動は、対応する疾患が発病したときは常に同一の変動内容となることから、検査結果が変動したことを確認することで直ちに当該疾患の同定に使用することができる。一方、随伴固有変動は、対応する疾患が発病したときに常に同一の変動内容となることがない(発症条件が発現して初めて同一の変動内容となる)ものの、変動することに変わりはことから、やはり、検査結果の変動したことを確認することで対応する疾患の同定に使用することができる。
また、本発明者が全検査項目の全固有変動について上記固定固有変動と随伴固有変動のいずれに該当するかを確認したところ、全検査項目の全固有変動中、随伴固有変動が約3/4〜4/5(全固有変動数の約77%)を占めることを確認している。
3−1)発症条件の考察
臨床診断の特徴として、確定診断で診断名を1疾患名(正式病名)に絞るだけでは有効な治療法を選択することができないことが多い。即ち、同じ1疾患でも、発症条件により治療法が異なる。例えば、ある原因疾患について、症例により腎炎・肝炎・心不全・肺炎・髄膜炎・貧血等、その原因疾患に特有で異なった種々の臓器障害のいずれかを主症状として発症してくるのが一般的な発病経過となる。また、そのうち、どの臓器疾患を主症状として発症するかは症例ごとの発症条件によって異なる。しかも、複数の障害臓器が合併して発症する例が多いのみならず、1臓器といっても、例えば血液では赤血球・白血球・血小板・蛋白成分等、障害臓器が更に部位ごとに細分化される。このように、これら疾患に固有の臓器障害や固有併発症等、上記した発症条件は、疾患ごとに異なるが、障害を受ける臓器や部位等によって治療法が大きく異なるため、疾患名よりも臓器障害名や固有併発症等の発症条件の方が治療法選択のためには重要な場合が多い。したがって、実際は、診断名と各種発症条件の双方を同時に確定しない限り十分な臨床診断になりえない。加えて、通常は、1つの原因疾患に対して複数の鑑別疾患が存在し、これら鑑別疾患群の中から原因疾患以外の疾患を除外し、最終的に1つの原因疾患に絞り込むのが確定診断であるが、これら鑑別疾患も、疾患ごとに原因疾患と似た複数の臓器障害や固有併発症等の発症条件を呈してくるのが一般的である。したがって、臨床診断では、鑑別疾患自体の考察も不可避であるのに加え、鑑別疾患の発症条件についての考察も不可避となる。
このように、臨床診断では疾患ごとに各種発症条件を考慮した考察が必須となるため、検査組立においても、固定固有変動のみならず随伴固有変動も含めた検査組立を行うことが必須となる。即ち、検査組立において、病名列挙した候補疾患の各々について、その固定固有変動のみならず随伴固有変動も確認できる検査項目を選定する必要がある。また、検査結果解読においても、選定した検査項目の固定固有変動と随伴固有変動とを、明確に区別した形で体系的・視覚的に情報提供する必要がある。前記固有変動表に格納した固定固有変動及び随伴固有変動に基づき、かかる体系的・視覚的な情報提供を行うのが後述する検査配列表である。
臨床診断においては、単一の検査結果の変動内容を確認するだけで目的の疾患を確定診断できることは少なく、一つの疾患の発病を確認するためには複数の検査項目についての検査変動を比較検討すること(以下、この複数の検査変動の比較検討を単に「複数項目比較検討」ということがある。)が有用であり、それら複数の検査結果がそれぞれ特有の変動内容となったときにその疾患が発病したと判断することができる。現在の医療現場でも、かかる複数項目比較検討が漠然と使用されてはいるが、意図して使用されることはなく、また、「複数項目比較検討」という用語すらない。即ち、現在の医療現場では、複数項目比較検討について体系的に複数項目比較検討できる体制は整っておらず、確実性の点で満足できる仕組みが提供されていない。そこで、本発明者は、本件臨床診断支援システムに複数項目比較検討を意図的に導入し、固有変動表の固定固有変動を電算処理して前記検査配列表に複数項目比較検討可能な態様で表示できるような構成としている(詳細は後述)。
後に詳述するように、前記固有変動表には正式病名(疾患名)、検査項目及び検査動向を互いに関連付けて格納するが、このうち、検査項目(臨床検査)は、一定数の検査で陽性化する高価な特異的検査と、多数の検査で陽性化する安価な非特異的検査(生化学検査が大半)と、それら特異的検査及び非特異的検査のどちらとも決めがたい中間型検査の3種類に三大分類することができる。
特異的検査は、一定数の検査変動が臨床所見と合致すれば確定診断することができる有用な検査である。即ち、特異的検査は、一定数の検査項目で診断名の特定(確定診断)が可能となる有用な検査である。一方、特異的検査は、高価なため、予想した疾患が間違っていた場合に高額な費用が無駄になることが多いため、検査組立の際には厳選して使用する必要がある。また、本発明者の知見によれば、特異的検査のある疾患の割合は全体の約20%程度であり、特に、成人では有用性のある検査項目が半減する(疾患全体の約10%程度となる)ため、殆どの場合、特異的検査だけを使用した検査組立は困難である。なお、特異的検査は、対応する疾患について常に固有の(同一の)検査変動(即ち、固定固有変動)を呈する固定固有変動型の特異的検査と、対応する疾患について特定の発症条件が発現したときにのみ固有の(同一の)検査変動を呈する随伴固有変動型の特異的検査とに二分することができる。
非特異的検査は、短時間で結果が判明する安価な生化学検査が大半を占めることから、初回の検査組立で多くの数を使用することができる。一方、非特異的検査(特に生化学検査)は、多数の疾患で陽性化する検査が多いことから、非特異的検査は、該当疾患を漏らすことなく拾い上げるのには有用である。また、非特異的検査の場合、多数の疾患で陽性化する検査が多いため、複数の検査項目の検査変動を比較検討すること(固定固有変動の複数項目比較検討)により、拾い上げた多数の疾患数から少数の候補疾患へと絞り込むことが必須となる。即ち、非特異的検査は、特定の疾患について特異的な検査変動を呈するものではないため、複数項目比較検討を使用しない限り、疾患の特定には限界がある。更に、非特異的検査が呈する検査変動は、特異的検査と同様、対応する疾患について常に固有の(同一の)検査変動(即ち、固定固有変動)を呈する固定固有変動型の特異的検査と、対応する疾患について特定の発症条件が発現したときにのみ固有の(同一の)検査変動を呈する随伴固有変動型の特異的検査とに二分することができるが、前記固定固有変動型の非特異的検査よりも、前記随伴固有変動型の非特異的検査の方が遥かに数が多い。このうち、随伴固有変動型の非特異的検査は、対応する疾患の発症条件が多種多様となるため、複数項目比較検討には適さない。したがって、特異的検査を併用せずに非特異的検査だけで実用性のある検査組立を行うことは不可能に近い。
中間的検査は、患者の全身状態や特定の臓器の状態について所見を得るのに有用な検査である。肺炎、尿路感染症、糖尿病、腎炎等、中間的検査だけで確定診断できる疾患もある。これらの中間的検査は、対応する疾患についての特異的検査ということができる。また、中間的検査は、特異的検査や非特異的検査と同様、対応する疾患について常に固有の(同一の)検査変動(即ち、固定固有変動)を呈する固定固有変動型の中間的検査と、対応する疾患について特定の発症条件が発現したときにのみ固有の(同一の)検査変動を呈する随伴固有変動型の中間的検査とに二分することができる。中間的検査の例としては、画像診断(レントゲン、CT等)、赤沈(血沈とも呼び、単に赤血球が沈みこむ速度のことをいう。慢性の重症炎症性疾患で亢進するが、疾患特異性は皆無に近い)、検尿(尿のテープ検査や顕微鏡検査)、心電図等が代表的なものである。
特異的検査のない疾患の同定については、固定固有変動型の非特異的検査の複数項目比較検討や中間的検査の複数項目比較検討による診断が必要となる。
前記特異的検査の固有変動、中間的検査のいずれも固定固有変動型の検査と随伴固有変動型の検査とに二分することができるが、随伴固有変動型の検査が大半を占めている。
現状では、前記特異的検査により検査可能な疾患の数は全疾患中の約20%程度であり、多くの疾患では単一の特異的検査による確定診断をすることができない。
上記のとおり、特異的検査は、一定数の疾患でのみ陽性化するため、少数の特異的検査を使用するだけで特定の疾患の確定診断が可能となる。したがって、全ての疾患について特異的検査が存在すれば、少数の特異的検査の各検査変動から検査結果を解読することにより診断名の特定が可能となる。しかし、現状では、特異的検査が網羅する疾患は、全疾患中の約20%程度であり、全疾患について特異的検査のみで検査組立を行うことはできない。即ち、現状では、非特異的検査を活用しない限り臨床診断を行うことができない。一方、非特異的検査の多くは、多数の疾患で陽性化するため、疾患の特定のためには、ある程度の数の固定固有変動型の非特異的検査の検査変動を相互に比較して検討すること(複数項目比較検討)が必要となる。例えば、検査項目をA,B,Cとし、診断名を甲、乙、丙とすると、「A低下・B正常・C増加なら甲」、「A陽性・B増加・C低下なら乙」、「A低下・B増加・C正常なら丙」というように複数の検査項目の検査変動を相互に比較して検討し、検査結果を解読して疾患を特定する必要がある。この場合、有用な検査結果を得るためには、疾患に応じた十分な数(通常、20個以上)の非特異的検査を使用する必要がある。同時に、有用な検査結果を得るためには、疾患に応じて必要な数の中間的検査も使用する必要がある。即ち、特異的検査の数が十分でない現状の臨床診断では、有用な検査結果を得るためには、できる限り少数の特異的検査、十分な数の非特異的検査及び中間的検査を使用して検査を組み立てる必要がある。
臨床診断法としては、臨床所見から診断名の見当をつけた上で、当該疾患と当該疾患の類似疾患(鑑別疾患)について確認する検査を行い、その検査結果から鑑別疾患を除外していく「鑑別検査」による診断法と、一定の症候(症状・徴候)を呈する疾患群を網羅する検査を一括して行い、その検査結果から該当疾患を探し出す「症候検査」による診断法とがある。鑑別検査は、心筋梗塞や肺炎等の急速発症する疾患で頻用されることが多く、症候検査は、緩徐発症する一般疾患で頻用されることが多いが、双方を併用することも少なくない。即ち、鑑別検査による診断法及び症候検査による診断法の双方とも、臨床診断の正確性を高め、疾患の見逃しを予防するために不可欠の臨床診断法である。
8−1)生化学検査
上記のように、前記特異的検査は、1個または数個の検査項目のみで診断名の特定が可能な有用な検査であるが、前記非特異的検査としての生化学検査は、非常に多くの疾患で陽性化することもあって、鑑別診断の一部を除き、特異的検査と同様にして少数の検査項目で疾患を特定することは困難である。しかしながら、生化学検査は、多数の検査項目の固有変動を複数項目比較検討することにより、疾患の鑑別や絞込みが可能となる有用な検査である(固定固有変動型の場合)。また、生化学検査は、安価で患者への侵襲度(患者に苦痛を与える程度)が低いため、鑑別検査及び症候検査のいずれの検査組立でも、安価な生化学検査が日常検査の70%以上を占めるほど頻用される。よって、生化学検査は、非特異的検査として、考えうる疾患名の選出(同定)に有用であると共に、複数項目比較検討による疾患の絞込みにも好適な検査となる。
一方、生化学検査による複数項目比較検討により検査結果を解読する場合、生化学検査の検査結果の固定固有変動を複数項目比較検討して疾患の鑑別や絞込みをすることになる。即ち、この場合、複数の生化学検査の検査結果がある疾患に特有の固定固有変動を呈する場合(例えば、上記説明の検査変動「A低下・B正常・C増加」の場合)、その固定固有変動を呈する疾患(上記説明の疾患「甲」)の存在を推定できる。このように、固定固有変動確認用の生化学検査の検査結果を複数項目比較検討することにより疾患の鑑別・絞込みを行うことができる。そして、絞り込んだ各疾患の発症条件の発現を確認するために随伴固有変動確認用の検査項目(主に生化学検査)の検査結果を解読することにより各疾患についての固有併発症や臓器障害等を確認することができる。ここで、上記のように、生化学検査の固有変動は、前記随伴固有変動が約70%を占め、やはり、固定固有変動の割合が少ないことが確認されている。しかし、生化学検査自体の数が非常に多く、また、生化学検査は各々が数十個以上の疾患で陽性化する検査であるため、その固定固有変動数も相当なものとなり、複数項目比較検討による疾患の鑑別・絞込みに十分な数の固定固有変動が存在する。その一方、生化学検査を含む非特異的検査の随伴固有変動を使用して複数項目比較検討して疾患を絞り込んだり鑑別したりすることは、一部の非特異的検査の場合は可能であるが、上記のとおり、大部分の非特異的検査の場合は逆に煩雑な解読作業となる。したがって、非特異的検査の複数項目比較検討は、主に、その固定固有変動によって(即ち、非特異的検査のうちの固定固有変動型検査によって)疾患自体の発病を確認するため(疾患名を選出または同定するため)に使用し、疾患の発症条件の確認は、特異的検査や非特異的検査や中間的検査のそれぞれの随伴固有変動を個別に確認して(即ち、随伴固有変動型の特異的検査、非特異的検査及び必要な中間的検査によって)行うことが必要となる。
このことから、鑑別検査及び症候検査のいずれの検査組立においても、数個の特異的検査と一定数の非特異的検査と必要な中間的検査とを組み合わせて、できる限り目的疾患の全体を選出した上で、それらのうちの固定固有変動型検査の固定固有変動を複数項目比較検討することにより、それぞれの疾患を鑑別することが有用である。
上記の知見に基づき、本発明者は以下の構成A〜Dを備える臨床診断支援システムを発明した。
A:固有変動格納手段(固有変動表)
Aa:固定固有変動・随伴固有変動・結合疾患名
Aa−1)固有変動の区分格納
固有変動格納手段(固有変動表)は、正式病名からなる疾患名と、臨床検査の検査項目と、検査項目の検査結果の変動内容を示す検査変動とを、それぞれ、互いに関連付けて格納する。また、固有変動格納手段は、全検査項目の各々について、対応する1以上の疾患が発病した場合にその検査項目が呈する1以上の検査変動を、固定固有変動と随伴固有変動とに区分してその検査項目に関連付けて格納する。
検査項目の固定固有変動は、当該検査項目について、特定の疾患が発病したときにはその疾患の発症条件とは無関係に常に同一の変動内容となる固有変動である。
したがって、当該検査項目は、対応する疾患自体の発病を確認するための検査、即ち、固定固有変動を呈する検査(固定固有変動型検査)として使用される。
検査項目の随伴固有変動は、当該検査項目について、特定の疾患が発病しても固有の変動内容となることなく、当該疾患について特有の発症条件が1つまたは複数発生したときにはじめて固有の変動内容となる固有変動、即ち、当該疾患について特有の発症条件が1つまたは複数発生するまでは変動内容が一定とならない固有変動である。
検査項目が随伴固有変動を呈する疾患の発症条件としては、疾患の病期、疾患の合併症(固有併発症)、疾患の発症臓器(罹患臓器)、疾患の発症部位、疾患の病因、疾患の病型、疾患の経由原疾患、絶食、内服中断、低免疫能等がある。
したがって、当該検査項目は、対応する疾患の発症条件を確認するための検査、即ち、随伴固有変動を呈する検査(随伴固有変動型検査)として使用される。
前記随伴固有変動型検査は、その疾患自体の発病を確認する検査項目ではないため、従来、臨床診断において当該疾患用の検査として使用されるものではなく、本発明者の上記の知見に基づきその疾患に関連付けられた検査である。
固有変動表では、一つの疾患に対して、前記固定固有変動型検査の検査項目名とその固定固有変動とがそれぞれ関連付けて格納されることに加え、前記随伴固有変動型検査の検査項目名とその随伴固有変動とがそれぞれ関連付けて格納される。
固定固有変動型検査について、固定固有変動は、対応する疾患名のみ(発症条件のない疾患名)を、当該疾患が発病したときにその検査項目が常に呈する固有の検査変動の内容に関連付けたものである(即ち、疾患名+検査変動内容からなる表現(説明文形式)となっている)。
Ab−1)臨床診断における疾患の発症条件情報の取得困難性
上述したように、臨床診断では、疾患名を確定する必要に加え、確定した疾患の発症条件を確認しないと、有効な治療法を選択することができないという特有の事情がある。即ち、1疾患に特異的な固有病状だけで全経過を経緯する疾患は少なく、同一疾患でありながら、発症する主臓器が症例ごとに異なったり、その疾患に頻発する特有な種々の合併症(固有併発症)も症例ごとに異なることが多い。従って、1疾患でありながら、症例ごとに状況に応じて多彩な病像となるため、必要検査や検査動向も大きく変動してくる。この点は、発症条件および随伴固有変動に関して説明したとおりである。
ここで、疾患ごとの固有併発症や臓器名の種類は、その疾患の既定の病態であり、関与する検査項目や検査動向も、孫引き操作が必要であるものの既定項目として医学的に既に決定されている。
固有変動表に格納する検査項目名は、全科的に共通して使用でき、重複することなく、しかもそれ以上細分化する必要のない最小単位の項目からなっている。医学書で多く見られる専門的特殊用語を避け、基礎医学用語などを使って全科的に応用可能な用語で統一されるよう配慮され、若しくは、統一性に疑問がある場合は注釈が挿入されている。
固有変動表では、各疾患の固定固有変動型検査については、一つの疾患に対して、固定固有変動型検査の検査項目名とその固定固有変動とがそれぞれ関連付けて格納されるが、この固定固有変動は、対応する疾患名のみ(発症条件のない疾患名)を、当該疾患が発病したときにその検査項目が常に呈する固有の検査変動の内容に関連付けたものである(即ち、疾患名+検査変動内容からなる説明文形式となっている)。即ち、固定固有変動型検査の場合も、その検査変動で使用する疾患名は、発症条件をゼロとした結合疾患名と考えることができる。
上記のように、固有変動表では、随意の1疾患の病態・病像説明に関して、固有併発症など発現率の低い随伴固有変動も固定固有変動と同格の因子として格納されている。即ち、固有変動表は、ありうる全ての最小単位の検査項目を格納すると共に、其々の具体的な検査動向(検査変動)も(発症条件のない)疾患名及び結合疾患名に対応して格納している。結果的に、医学書でみられる総ての固有変動が、極めて稀な事項まで固有変動表に含まれている。
随伴固有変動は、固有変動表中の全固有変動の77%を占めることを発明者は確認している。即ち、随伴固有変動型検査が固有変動表中の検査の77%を占めている。したがって、上記の通り、随伴固有変動を活用しない限り効果的な臨床診断を行うことができない。
ここで、発症条件は分類法によっても大きく異なるが、種類が少なくとも数百を超えて、疾患数や検査項目数よりはるかに多い。しかも病期・誘発疾患名・罹患臓器名・食事摂取時間など、検査項目と違って、無数に近い無関係な異種要素からなり、また、相互に重複することも多いため、電算化用にデータベース化するのが極めて困難な因子である。即ち、単に発症条件を画一的に格納しても有効な検索を行うことができず、また、有効な検索を行うための識別子(ID)等を付与しようとしても、数百以上の識別子が必要となり現実的なデータベースを構成することができない。
これに対して、本発明は、上記のように本来は三次元構造であるデータを、結合疾患名を導入することで二次元データ構造として固有変動表に予め格納するようにしたため、三次元データ構造の場合のような発症条件に応じた抽出処理を行う必要がなく、必要な疾患ごとの検査項目と検査変動を1回の抽出処理で固有変動表から抽出して検査配列表に表示することができ、疾患ごとに目的とする検査項目の全てを漏らすことなく抽出することが可能である。
固有変動表には、疾患ごとの各検査項目に対して、その検査が当該疾患を肯定できる肯定用検査であることを示す識別子(例えば、「肯定」または「1」等)と、その検査が当該疾患の鑑別疾患を肯定することにより当該疾患を否定できる否定用検査であることを示す識別子(例えば、「否定」または「3」等)と、その検査が肯定用検査でも否定用検査でもない(主に当該疾患の発症条件に応じた随伴固有変動を確認するための検査である)ことを示す識別子(例えば、「全身」または「2」等)とが関連付けて格納されている。
上記で説明した固有変動表の代表例を図1に示す。固有変動表中、「疾患」の項目欄(データ列)には、全ての疾患(正式病名)が格納され、各疾患に対応する全ての検査項目が「検査項目」の項目欄(データ列)に関連付けて格納され、各行の疾患及び検査項目の対に対応する検査動向が「検査動向」の項目欄(データ列)に関連付けて格納されている。下記の固有変動表は、説明の便宜上、そのうちの一部(疾患A及び疾患Bに相当する部分)のみを表示している。また、説明の便宜上、疾患Aの後に疾患Aの鑑別疾患である疾患Bを表示しているが、固有変動表はリレーショナルデータベースのテーブルとして実現可能であるため、通常のリレーショナルデータベースにおけるテーブル(表)と同様、疾患の並び順は任意である。また、「種別」の項目欄(データ列)には、前記鑑別検査で検査配列表に指定した疾患(想定した診断名)に対応して表示する検査項目を前記肯定用検査、否定用検査及び全身用検査のいずれかに区別及び整列すると共に、肯定用検査、否定用検査及び全身用検査のそれぞれを表す記号を付して表示するためのデータ(以下、「検査種類データ」ということがある。)が、疾患と検査項目との各対に対応して格納されている。また、「検査動向」の項目欄(データ列)には、疾患と検査項目との各対に対応する検査変動の内容が説明文形式で格納されている。なお、下記固有変動表の例では、説明の便宜上、括弧書き部分(「本疾患」、「(疾患Aの固定固有変動の説明文)」等の注記)を記載しているが、実際の固有変動表ではこれらの注記はなく、また、疾患Bの検査動向中の「(疾患Aの鑑別疾患)」)といった注記も、疾患Bが疾患Aの鑑別疾患であることを説明するために記載したものであり、実際の固有変動表ではこれらの注記はない。各疾患についての鑑別疾患については後記鑑別疾患マスタファイルを使用して一連の鑑別疾患群を抽出・整列できるため、このような注記は必要ない。
症候検査では、後述する症候群マスタファイルを使用して症候ごとにその症候を呈する全ての疾患(疾患群)を収集すると共に、収集した疾患ごとに対応する検査項目を固有変動表から収集し、これらの検査項目を定型検査として使用する。なお、症候検査では、鑑別検査のように、検査項目を肯定用検査等に区分して抽出することはない。また、固有変動表から収集した疾患ごとの検査項目についての検査動向は、そのままでは1症候について相当の数となり、検査配列表にそのまま表示すると逆に確認が煩雑となるため、後述する臨床マスタファイルにおいて検査項目ごとに集約して表現し直した後、対応する疾患に関連付けて格納している。
B−1)症候ごとの疾患群の格納
症候対応疾患群格納手段は、ある症候が発症したときに発病が想定される全ての疾患を当該症候対応の疾患群として当該症候に関連付けて格納する。
症候対応疾患群格納手段としての症候群マスタファイルの代表例を図2に示す。なお、上記のとおり、本発明では、通常は1疾患が複数の症候に属する構成としているため、下記症候群マスタファイルのように、例えば、疾患A及び疾患Bが症候イ及び症候ロに関連付けて格納されることになる。
C−1)疾患ごとの鑑別疾患の格納
鑑別疾患格納手段は、各疾患についての鑑別疾患を当該疾患対応の鑑別疾患群として当該疾患に関連付けて格納する。
鑑別疾患格納手段としての鑑別疾患マスタファイルの代表例を図3に示す。
D−1)検査変動の整理・統合
本発明では、上記のように、症候検査及び鑑別検査のいずれでも、固有変動表の検査動向データをそのまま抽出して検査配列表に表示するのではなく、固有変動表の検査動向データを整理統合して臨床マスタファイルに格納している。即ち、症候検査において、各症候には同一の検査項目であっても疾患ごとに異なる検査変動(「検査動向」欄の説明文)が関連付けて格納されているため、このまま固有変動から症候に関連付けられる検査変動を抽出すると、上記のとおり、1症候について相当数の検査変動が検査配列表に表示されて逆に煩雑となるため、1検査項目に属する全ての検査変動を当該検査項目に関連付けて臨床マスタテーブルの「検査動向」の項目欄(データ列)に当該症候と関連付けて1データとして格納している。また、鑑別検査においても、肺炎のような複合疾患(複数の原疾患が発症する疾患)は、同一の検査項目であっても原疾患ごとに異なる検査変動が関連付けて格納されているため、このまま固有変動から症候に関連付けられる検査変動を抽出すると、上記のとおり、1症候について相当数の検査変動が検査配列表に表示されて逆に煩雑となるため、やはり、1検査項目に属する全ての検査変動を当該検査項目に関連付けて臨床マスタテーブルの「検査動向」の項目欄(データ列)に当該疾患(複合疾患)と関連付けて1データとして格納している。そして、症候検査で指定した症候の疾患群または鑑別検査で指定した疾患の鑑別疾患群に関するデータ(検査項目名、検査動向等)を臨床マスタファイルから抽出して、それらを検査配列表に列挙表示するようにしている。
臨床マスタファイルの代表例を図4に示す。なお、下記の臨床マスタファイル中、「疾患(症候)」の項目欄(データ列)には、全ての疾患(正式病名)または症候(症候名)が格納され、各疾患に対応する全ての検査項目または各症候に属する全ての検査項目が「検査項目」の項目欄(データ列)に関連付けて格納され、各行の疾患(症候)及び検査項目の対に対応する検査動向が「検査動向」の項目欄(データ列)に関連付けて格納されている。下記の固有変動表は、説明の便宜上、そのうちの一部(疾患A、疾患(複合疾患)X、症候イに相当する部分)のみを表示している。また、説明の便宜上、疾患Aの後に疾患(複合疾患)X、症候イを表示しているが、上記のとおり、疾患や症候の並び順は任意である。また、鑑別検査用の検査項目には、「種別」の項目欄(データ列)に、前記肯定用検査、否定用検査及び全身用検査のいずれかの検査種類データが、疾患と検査項目との各対に対応して格納されている。なお、症候検査また、「検査動向」の項目欄(データ列)には、疾患または症候と検査項目との各対に対応する検査変動の内容が説明文形式で格納されているが、この検査変動の内容は、上記のとおり、症候については1検査項目に属する複数の検査変動を整理統合した説明文形式であり、複合疾患についても1検査項目に属する複数の検査変動を整理統合した説明文形式である。なお、下記固有変動表の例では、説明の便宜上、括弧書き部分(「(原疾患)」、「(疾患Aの固定固有変動の説明文)」等の注記)を記載しているが、実際の固有変動表ではこれらの注記はない。
Ea:表形式による病態説明
医学書で最も主要な部分に当る疾患の病態説明を、医学書が一般的な説明文形式で表現するのに対して、本発明は、固有変動表を利用して、下記の検査配列表による検査変動(検査動向)の一覧表として表現する。
Eb1)症候検査の場合
Eb1−1)検査変動(固定固有変動及び随伴固有変動)の抽出
検査項目別固有変動抽出表示手段は、前記症候対応疾患群格納手段に格納した症候のいずれかが指定されたときは、前記症候対応疾患群格納手段から当該指定に係る症候に関連付けた前記症候関連の疾患群(全ての病名)を抽出する。また、抽出した疾患群の各疾患名に基づき、前記固有変動格納手段から、当該疾患群の各疾患に関連付けた検査項目(全ての検査項目名)を抽出し、かつ、抽出した検査項目の各々に関連付けた検査変動としての固定固有変動及び随伴固有変動(各固有変動の説明文)を抽出する。
そして、検査項目別固有変動抽出表示手段は、抽出した検査項目を列挙表示すると共に、列挙表示した各検査項目に対応付けて、当該各検査項目について抽出した全ての前記固定固有変動及び前記随伴固有変動を一括表示する。
更に、症候検査で一つの症候を指定すると当該症候に関連付けた全ての疾患が抽出される一方、抽出した疾患の各々について、当該疾患に関連付けた2個以上の定型検査としての固定固有変動型検査が抽出され、これら2個以上の定型検査としての固定固有変動型検査が検査配列表に一覧表示される。即ち、指定した症候に属する疾患の各々について、当該疾患に関連付けた検査項目名と検査変動とが検査配列表に列挙表示される(検査項目名が「項目名」欄に、検査変動が「検査動向」欄にそれぞれ表示される)。
また、症候検査で一つの症候を指定すると当該症候に関連付けた全ての疾患が抽出される一方、抽出した疾患において、同一の検査項目によって鑑別可能な全ての疾患(鑑別疾患群)とその検査変動とが当該検査項目に関連付けて表示される(検査項目名が「項目名」欄に、検査変動が「検査動向」欄にそれぞれ表示される)。即ち、検査配列表の一つの検査項目の「検査動向」欄中に、当該検査によって相互に鑑別可能な複数の疾患の検査変動が表示される。
症候検査では、検査配列表に表示される症候対応の検査項目は、その検査変動の種別に応じて、検査配列表の上から下へと、固定固有変動型検査及び随伴固有変動型検査の順に並ぶように表示される。
まず、検査配列表の一番上から下へと、抽出疾患の固定固有変動を確認してその発病を判断するための一連の固定固有変動型検査が表示される。この最初に表示される一連の固定固有変動型検査は、抽出した各疾患についての固定固有変動を複数項目比較検討できるよう表示される。即ち、抽出した疾患の一つ(例えば、疾患A)についての一連の検査項目名とその固定固有変動とが、検査配列表の上から下へと連続的に列挙表示される。
また、一連の固定固有変動型検査に続いて、抽出疾患の随伴固有変動を確認してその発症条件を判断するための一連の随伴固有変動型検査が上から下へと表示される。この随伴固有変動型用検査については、抽出疾患についての一連の検査項目名とその随伴固有変動とが、検査配列表の上から下へと連続的に列挙表示される。
上記で説明した症候検査で表示する検査配列表の代表例を図5に示す。
なお、該当疾患が固定固有変動型検査、随伴固有変動型検査のいずれであるかを示す識別子(「固定」、「随伴」または「1」、「2」等)を設けて「種別」の欄に表示してもよいが、実際のシステムでは係る識別子は設けていない(検査配列表への表示もされない)。これは、随伴固有変動は発症条件を付した結合疾患名として表示されるため、固定固有変動と簡単に区別することができ、あえて固定固有変動と随伴固有変動を区別して格納する必要がないためである。ただし、固定固有変動と随伴固有変動を識別してデータ抽出する等の必要性が生じれば、それらに識別子を付して区別して格納することも可能である。
Eb2−1)検査変動(固定固有変動及び随伴固有変動)の抽出
一方、検査項目別固有変動抽出手段は、前記固有変動格納手段に格納した疾患のいずれかが指定されたときは、前記鑑別疾患格納手段から当該指定に係る疾患に関連付けた当該疾患関連の鑑別疾患群を抽出すると共に、前記固有変動格納手段から、前記指定に係る疾患に関連付けた検査項目を抽出し、かつ、抽出した検査項目の各々に関連付けた検査変動としての固定固有変動及び随伴固有変動を抽出する一方で、前記鑑別疾患群の各疾患に関連付けた検査項目を抽出し、かつ、抽出した検査項目の各々に関連付けた検査変動としての固定固有変動及び随伴固有変動を抽出する。
そして、検査項目別固有変動抽出手段は、抽出した検査項目を列挙表示すると共に、列挙表示した各検査項目に対応付けて、当該各検査項目について抽出した全ての前記固定固有変動及び前記随伴固有変動を一括表示する。
更に、鑑別検査で一つの疾患を指定すると当該疾患が抽出されると共に当該疾患に関連付けた全ての鑑別疾患が抽出される一方、抽出した疾患(指定疾患及びその鑑別疾患)の各々について、当該疾患に関連付けた2個以上の定型検査としての固定固有変動型検査が抽出され、これら2個以上の定型検査としての固定固有変動型検査が検査配列表に集合化して表示される(この固定固有変動型検査として、平均すると数個程度の特異的検査と、それより多くの非特異的検査が表示される)。即ち、指定した疾患とその鑑別疾患の各々について、当該疾患に関連付けた検査項目名と検査変動とが検査配列表に列挙表示される(検査項目名が「項目名」欄に、検査変動が「検査動向」欄にそれぞれ表示される)。
また、鑑別検査で一つの疾患を指定すると当該疾患が抽出されると共に当該疾患に関連付けた全ての鑑別疾患が抽出される一方、抽出した指定疾患及びその鑑別疾患において、同一の検査項目によって鑑別可能な全ての疾患(鑑別疾患群)とその検査変動とが当該検査項目に関連付けてその検査変動中に表示される(検査項目名が「項目名」欄に、検査変動が「検査動向」欄にそれぞれ表示される)。即ち、検査配列表の一つの検査項目の「検査動向」欄中に、指定疾患と共に当該検査によって鑑別可能な鑑別疾患の検査変動が表示される。
鑑別検査では、検査配列表に表示される検査項目は、その検査変動の種別に応じて、検査配列表の上から下へと、肯定用検査、全身用検査及び否定用検査の順に並ぶように表示される。
まず、検査配列表の一番上から下へと、指定疾患の固定固有変動を確認してその発病を判断するための一連の肯定用検査が表示される。この最初に表示される一連の肯定用検査は固定固有変動型検査からなり、抽出した指定疾患についての固定固有変動を複数項目比較検討できるよう表示される。即ち、指定した疾患についての一連の検査項目名とその固定固有変動とが、検査配列表の上から下へと連続的に列挙表示される。
また、一連の肯定用検査に続いて、指定疾患の随伴固有変動を確認してその発症条件を判断するための一連の全身用検査が上から下へと表示される。この全身用検査は随伴固有変動型検査からなり、指定した疾患についての一連の検査項目名とその随伴固有変動とが、検査配列表の上から下へと連続的に列挙表示される。なお、上記のように、全身用検査には一部固定固有変動型検査もある。
更に、一連の全身用検査に続いて、鑑別疾患の固定固有変動を確認してその発病を判断することにより、指定疾患の非発病を判断するための一連の否定用検査が表示される。この一連の否定用検査は固定固有変動型検査からなる。即ち、各鑑別疾患についての検査項目名とその固定固有変動とが、検査配列表の上から下へと連続的に列挙表示される。
上記で説明した鑑別検査で表示する検査配列表の代表例を図6に示す。
1)発明の特徴及び特有の作用効果
上記のように、本件発明に係る臨床診断支援システムは、従来の臨床診断支援システムでは疾患ごとの診断が主目的であるのに対して、随伴固有変動、発症条件、結合疾患名、固有変動表、検査配列表、複数項目比較検討、症候検査、鑑別検査、定型検査、症候群マスタファイル、臨床マスタファイル等、過去の臨床診断支援システムに使用されたことのない数々の新規な構成を採用している。要するに、本発明に係る臨床診断支援システムは、その要旨として、下記の特徴A〜Dを備え、これにより、特有の効果Eを発揮する。
固有変動表は、各疾患に対して、その疾患自体の発病を確認するための検査項目である固定固有変動型検査の検査項目名とその検査変動(検査結果の変動内容)である固定固有変動を関連付けて格納することに加え、その疾患の発症条件を確認するための検査項目である(従来はその疾患自体の同定用には使用されていない)随伴固有変動型検査の検査項目名とその検査変動である随伴固有変動をも当該疾患に関連付けて格納する。なお、固定固有変動及び随伴固有変動は、いずれも、対応する検査項目の検査結果の変動内容を最小単位となるよう細分化して表現したものである。
検査配列表は、各疾患について当該疾患に関連付けた全ての固定固有変動型検査の検査項目名及び全ての随伴固有変動型検査の検査項目名を当該疾患と対応付けて順に表示すると共に、各固定固有変動型検査の検査項目名にその固定固有変動を関連付けて表示し、かつ、各随伴固有変動型検査の検査項目名にその随伴固有変動を関連付けて表示する。なお、検査配列表は、当該疾患に関連付けた固有変動表の固有変動をそのまま抽出して表示するのではなく、当該疾患に関連付けた固有変動表の固有変動を集約して表現した一連の固有変動(集約化固有変動)を格納する臨床マスタから当該疾患の集約化固有変動を抽出して表示する。
このとき、検査配列表は、随伴固有変動には該当する疾患名とその発症条件とを表す結合疾患名を関連付けて表示し、固定固有変動には該当する疾患名のみ(発症条件のない結合疾患名)を関連付けて表示する。
また、このとき、検査配列表は、一疾患について少なくとも2以上の固定固有変動を抽出して表示することで、一疾患について2以上の固定固有変動を相互に比較検討して診断すること(複数項目比較検討)を可能とする。
上記A〜Dの構成により、疾患自体の確認用としては従来は使用されていない(疾患に関連した合併症や罹患臓器の確認等に使用されている)随伴固有変動型検査を、その検査変動である随伴固有変動と共に疾患に関連付けて抽出・表示することができる。その結果、固定固有変動型検査及び随伴固有変動型検査の固定固有変動により疾患名を確定診断することができることに加え、随伴固有変動型検査の随伴固有変動を確認することにより当該疾患の発症条件を確認することができ、確認した発症条件に基づいて当該疾患についての有効な治療法を選択することができる。
特に、上記Cの構成により、検査項目・疾患名・発症条件の3要素からなる三次元構造のデータを、疾患名及び発症条件の2要素を一次元化することで二次元構造(表形式)のデータとして固有変動表に格納し、かつ、検査配列表に表示することができる。
従来の臨床検査システムの大半が当初から自動診断を目的としてきたのに対し、本発明では、種々の変動因子をそれ以上分類できない単位まで細分化・単一化したまま、それを再び臨床に合うよう再構築して、医学業務に基本的な電算化応用を導入したものである(保険業務などを含まない)。細分化した変動因子(ID項目)は、主単位である疾患名(病名IDで一意に識別される)、検査項目(項目IDで一意に識別される)、検査動向乃至固有変動(疾患ごとに異なる変動内容であって、病名IDと項目IDの複合IDで識別される)の3種である。病状変化や検査変化が発症条件ごとに異なるため、発症条件を単位として再分化しており、前記固有変動表による立方体のデータ構造に基づいている。他に、臨床医学で症候検査や鑑別検査など、避けられない診断手法が種々ある症候マスタファイルに症候IDと、後述する統括表の検索用に上下ID(異常値ID)を追加している。これら発症条件や固有変動の表現としては、現医療界の記述をそのまま使っているため、本発明は即座に臨床応用可能であるとともに、電算化が望まれる臨床医学の大半が本発明により実現可能となった。電算機械が計算してくるデータの多さと発症条件の細分化・精度などについて誰も経験しておらず、本発明で10個を超える業務(一般検査、症候検査、見逃検索等)がすべて新規と言っても過言ではない。なお、疾患名が決まることで、望ましい検査組立を診察前から元来決められるため、複数疾患からなる鑑別検査、症候検査でも定型検査の設定が事前に可能であり、本件で初めて定型検査を組むことが出来た。結果的に、臨床業務の極めて広い分野で即座の本件応用が可能であり、予想されなかった価値高い新業務も沢山生まれて、其々が数秒で完了できるなど、医療電算化に広く応用できる新技術に該当する。
次に、上記の特徴を有する本システムの具体的構成について説明する。
[全体構成]
本臨床診断支援システムでは、上記のように、全ての固有変動を格納した固有変動表に基づき臨床マスタファイルを作成し、この臨床マスタファイルを基幹ファイルとして、更に、検査項目マスタファイル、症候マスタファイル、病名マスタファイル、疾患群マスタファイル、鑑別疾患マスタファイルを使用し、後述するコンピュータによる処理手順により、最終的に、臨床診断に必要かつ十分な医療情報としての固有変動情報を体型的に表示する検査配列表を加工して画面表示する。かかる臨床診断支援システムの概略的な全体構成を、図8及び図9に基づいて説明する。図8は本臨床診断支援システムによる症候検査処理用の各機能実現手段の全体構成を示し、図9は本臨床診断支援システムによる一般検査処理用の各機能実現手段の全体構成を示す。なお、下記各手段(機能実現手段)は、パーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータ装置のハードウエア(CPU,ROM,RAM,HDD等)を使用してその機能を実現し、各種処理(手順)をコンピュータに実行させる。
症候検査の場合、上記のように、固有変動マスタファイル11または臨床マスタファイル12から、指定された症候に関連付けた全ての候補疾患ごとに、関連付けた各検査項目の固定固有変動及び随伴固有変動を全て抽出するが、このとき、当該一群の候補疾患群のについての固有変動表が(上記したとおり図7に示すような立方体のデータ構造で)作成され、検査動向ファイル33aに格納されることになる。そして、この検査動向ファイル33aに基づき作成した検査配列表63は、検査動向抽出手段33が臨床マスタファイル12から固有変動データを取得する場合は、図5に示すようなものとなる。
一般検査の場合、上記のように、固有変動マスタファイル11または臨床マスタファイル12から、指定された疾患及び同疾患に関連付けた全ての鑑別疾患ごとに、関連付けた各検査項目の固定固有変動及び随伴固有変動を全て抽出するが、このとき、当該一群の鑑別疾患群についての固有変動表が作成され、検査動向ファイル33aに格納されることになる。そして、この検査動向ファイル33aに基づき作成した検査配列表63は、検査動向抽出手段33が臨床マスタファイル12から固有変動データを取得する場合は、図6に示すようなものとなる。ここで、この検査配列表63に表示されるデータ項目「種類」(「肯定用」、「否定用」、「全身用」)は、固有変動マスタファイル11及び臨床マスタファイル12に追加のデータ項目として各検査項目に関連付けて格納することにより、検査配列表63に各検査に対応付けて表示することができる。なお、「肯定用」とは、当該検査項目の固有変動が確認できれば当該固有変動に対応する疾患や発症条件の存在が肯定できるものをいい、「否定用」とは、当該検査項目の固有変動が確認できれば当該固有変動に対応する疾患の存在が否定できるものをいう。また、「全身用」とは、前記肯定用検査項目及び否定用検査項目以外の検査項目であり、患者の全身状態を観察(チェック)するための検査項目である。また、該当する全ての疾患の動向を表示する建前から、「本症に特異的事項なし」や「その他の鑑別疾患に特異的事項なし」等の内容が原則的に全ての項目に記載されている。なお、「特異的事項なし」とは、検査結果がほぼ変動しないことをいう。
本臨床診断支援システムは、更に、図示しない検索手段を備えている。上記症候検査及び一般検査のいずれでも、検索手段によって所望の疾患名を指定することにより、検査配列表63内の所望の疾患及びその固有変動を検索して抽出・表示することができる。これにより、複数項目比較検討を行う際に、検索手段により検査配列表63中の特定の疾患名を指定して検索することで、関連する全ての疾患名や検査項目の内容(固有変動等)を短時間で確認したり、指定した疾患に関連する複数の固有変動を一覧表示等によりまとめて確認することができ、特定の疾患を診断するための検査配列表63を利用した複数項目比較検討を簡単に行うことができる。
また、検査配列表63は、検査項目ごとに発症条件別の結合疾患名や其の固有変動を表示して、複数項目比較検討等による確定診断に必要な情報を表示するが、ユーザーが確認したい疾患情報について、ユーザーに対してより詳細で理解容易な情報を提供すべく、固有併発症、固有の罹患臓器の種類、発症時点から末期までの経緯等の情報を、疾患や症候ごとに検査配列表63の近傍(上方位置等)に疾患概要説明65または症候概要説明62として表示する。これにより、ユーザーが、確認したい疾患について、検査配列表63による検査項目の種類や検査動向(疾患の固有変動)と共に、同疾患概要説明65または症候概要説明62による追加情報を合わせて確認することができ、当該疾患についての医療情報の全容を容易に想定することができる。
1.ユーザーインターフェース(GUI)を参照した処理の説明
図10乃至図13は、本発明の一実施例に係る臨床診断支援システムのユーザインタフェースを使用して、各種検査及び各種検索を行った場合の画面構成を示す。図10〜図13に示すように、本実施例の臨床診断支援システムとしての医療情報データベース装置(以下、単に「医療情報DB」と表記することがある。)は、ユーザーが、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を使用して、必要な項目を段階的に選択するだけで、コンピュータに所望の医療情報の提供処理を実行させるようになっている。ここで、本医療情報DBは、図示はしないが、通常のコンピュータ用アプリケーションシステムやデータベースシステムと同様、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置のハードウエア(CPU,ROM,RAM,HDD等)を各種機能実現手段(ウインドウ内のイベント駆動ボタン等に対応するロジック事項手段等)として各種機能を実現させ、後述する各種処理(処理)をコンピュータに実行させる。即ち、医療情報DBは、通常は、後述する処理用のソフトウエアプログラム(アプリケーションプログラム)を実装したデータベースシステムとして、コンピュータ装置のハードディスク(HDD)等の外部記憶装置に格納され、使用時に外部記憶装置から呼出すことにより、CPU,RAM等のハードウエアを利用して各種機能実現手段により対応する各種機能を実現する。無論、本医療情報DBの機能の一部を、ソフトウエアプログラムとしてではなくハードウエアロジックにより実現することも可能である。
詳細には、本医療情報DBを起動した操作画面では、まず、図10に示す各種ウインドウのうち、統括表ウインドウ110のみが最初に画面表示される。統括表ウインドウ110は、一般検査ボタン111、症候検査ボタン112、上下3段に配置されたプルダウンメニューからなる第1乃至第3の異常値選択ボックス113〜115、単疾患ボタン116、関連疾患ボタン117、限定疾患ボタン118、プルダウンメニューからなる症候選択ボックス119、プルダウンメニューからなる異常値選択ボックス120、実施ボタン121、見逃ボタン122、用語入力ボックス123、実施ボタン124、病名入力ボックス125、検索ボタン126、消去ボタン127及び中止ボタン128を上から順に配置している。統括表ウインドウ110は、以下に述べるように、病名分類や症候分類からの病名や検査項目の検査、異常値(=異常検査値)や症侯からの病名や検査項目の検索等、種々の検査や検索に使用され、常時画面表示されている。
図10は本実施例の医療情報DBによる一般検査処理時の画面構成を示す。なお、以降で述べる各処理の詳細については、フローチャート及びデータ構造と共に後述する。まず、図10に示すように、統括表ウインドウ110の一般検査ボタン111をクリック等して選択実行することにより、一般検査処理(上記鑑別検査の処理)が実行される。なお、図10は、一般検査ボタン111をクリックした状態を示す。一般検査処理では、まず、病名分類情報提供処理が実行され、病名分類ウインドウ130が画面表示される。病名分類ウインドウ130は、病名分類の全てを(固有変動表、臨床マスタファイル等の対応マスタファイルから)データ抽出して病名分類表131内に列挙してリスト表示するものである。病名分類とは、病名の大まかな分類をいい、例えば、呼吸器、循環器、血液疾患等の分類がある。次に、病名分類ウインドウ130の病名分類表131内の各行はクリック等により選択実行自在となっており、選択実行自在であることを示すために特定の異色(例えば黄色)で塗りつぶし表示されている(図中では斜線表示)。そして、病名分類ウインドウ130の病名分類表131内のいずれかの行(いずれかの病名分類)をクリック等して選択実行することにより、病名目次情報提供処理が実行され、病名目次ウインドウ140が画面表示される。なお、図10では、病名分類表131の特定の病名分類である「全身」をクリックした状態を示す。病名目次ウインドウ140は、病名分類表131で選択した病名分類に属する全ての病名を(固有変動表、臨床マスタファイル等の対応マスタファイルから)データ抽出して病名目次としての病名一覧表141内に列挙してリスト表示するものである。図10は、病名分類表131で「全身」を選択した場合に、病名一覧表141に対応する病名(「糖原病」等)がリスト表示された状態を示す。
図11は本実施例の医療情報DBによる症候検査処理時の画面構成を示す。図11に示すように、統括表ウインドウ110の症候検査ボタン112をクリック等して選択実行することにより、症候検査処理が実行される。この症候検査処理は、画面に統括表ウインドウ110のみが表示される初期状態、前記一般検査処理の各種ウインドウが表示された状態等、任意のタイミングで実行可能である。例えば、図11に示すように、統括表ウインドウ110の症候検査ボタン112を選択実行すると、症候検査処理において、まず、症候分類情報提供処理が実行され、統括表ウインドウ110を除いて、それまでに表示されていた全てのウインドウ(病名目次ウインドウ140、検査保管表ウインドウ150等)が閉じられ、図11に示すように、新たに症候分類ウインドウ230が画面表示される。なお、検査保管表ウインドウ200または病名保管表ウインドウ210が表示されている場合は、当該検査保管表ウインドウ200及び病名保管表ウインドウ210は、閉じられることなく表示継続される。症候分類ウインドウ230は、症候分類の全てを(症候マスタファイル等の対応マスタファイルから)データ抽出して症候分類表231内に列挙して階層的にリスト表示するものである。症候分類は、症候の大まかな分類であり、例えば、意識障害、肝機能異常、貧血等である。また、症候分類ウインドウ230は、症候分類として、通常の症候以外に、異常値(特定の検査項目の異常値であって、検査値が上下(上昇または下降)した場合に陽性となるもの)も、対応マスタファイルから抽出して、症候の一つとして列挙して症候分類表231にリスト表示する。即ち、本医療情報DBは、異常値も重要な症侯の一つとして、症侯と同様に検査できるようしている。
本実施例の医療情報DBによる3項目検索処理について説明する。図12に示すように、第1〜第3の異常値選択ボックス113〜115で所定の異常値項目をリスト表示(プルダウン表示)されたものからそれぞれ選択し、単疾患ボタン116、関連疾患ボタン117または限定疾患ボタン118のいずれかをクリック等して選択実行することにより、3項目検索処理の単疾患検索処理、関連疾患検索処理または限定疾患検索処理が実行される。この3項目検索処理は、画面に統括表ウインドウ110のみが表示される初期状態、前記一般検査処理、症候検査処理等の各種ウインドウが表示された状態であっても、任意のタイミングで実行可能である。なお、第1〜第3の異常値選択ボックス113〜115に表示される異常値は、所定の検査項目で正常値(または正常値範囲)を超える異常値(上向き矢印「↑」で示す)、正常値(または正常値範囲)未満の異常値(下向き矢印「↓」で示す)、または陽性(プラスマーク「+」で示す)等の検査異常が確認された検査項目である。そして、3項目検索処理では、一般検査処理、症候検査処理等の各種ウインドウが表示された状態で単疾患ボタン116等を選択実行すると、統括表ウインドウ110、検査保管表ウインドウ200及び病名保管表ウインドウ210を除き、それまで表示されていた病名目次ウインドウ140等が全て閉じられ、新たな病名目次ウインドウ140が画面表示される。この新たに表示された病名目次ウインドウ140は、選択した3項目の異常値(単疾患検索では3つの異常値のうちの1つ、関連疾患検索では2つ、限定疾患検索では3つ)が該当したときに存在が推定される全ての病名を(臨床マスタファイル等の対応マスタファイルから)データ抽出して病名一覧表141内に列挙してリスト表示するものである。図12は、統括表ウインドウ110の第1〜第3の異常値選択ボックス113〜115で、それぞれ、「ESR↑」、「TP↑」、「Cr↑」を選択して限定疾患ボタン116を押した場合に、これら3項目の全てが該当する場合に存在が推定される疾患(病名)が全て抽出され、病名目次ウインドウ140の病名一覧表141に、それらの疾患の病名がリスト表示された状態を示す。
図12に示すように、統括表ウインドウ110の用語入力ボックス123に任意の用語(医学用語)を入力し、実施ボタン124をクリック等して選択実行することにより、用語検索処理が実行される。用語検索処理では、用語検索票ウインドウ250が新たに画面表示される。用語検索票ウインドウ250は、入力した用語を含む疾患概要とその疾患概要を有する病名との組を対応するマスタファイル(病名マスタファイル等)からデータ抽出し、用語欄251にその病名を、用語説明欄252にその疾患概要を表示するものである。入力した用語を含む疾患概要とその病名との組(レコード)が複数ある場合、全ての組の疾患概要及び病名がデータ抽出される。即ち、用語検索票ウインドウ250は、下端部に改ページ部253を配置し、改ページ部253の次へボタン、戻るボタン、最終ページボタン、トップページボタンのいずれかをクリックすることにより、次ページや前ページを開いたり、最終ページやトップページにジャンプしたりできるようになっている。このように、用語検索処理は、診断業務中に、内容の分らない医学用語の説明を検索する処理である。また、用語検索処理は、上記各処理の途中にかかわらず、任意のタイミングで実行可能な処理である。また、用語検索処理では、用語入力ボックス123に入力した用語を含む全疾患の「疾患概要」が用語検索票ウインドウ250に表示されるので、同用語検索ウインドウ250に対する用語検索を行うことで、当該用語の記載部分を簡単に検索可能である。例えば、図12の状態では、候補疾患として「多発性骨髄腫(MM)」を疾患概要ウインドウ160に表示して内容を確認しているが、この場合において、使用者が、当該疾患に関連する用語として、「T細胞」の内容を確認したい場合、統括表ウインドウ110の用語入力ボックスに「T細胞」と入力して実施ボタン124を押す。これにより、「T細胞」という用語を文章中に含む全ての疾患概要とその病名がデータ抽出され、改ページ部253を操作することで用語検索票ウインドウ250に順次表示される。
本実施例の医療情報DBによる症候検索処理の複合検索処理について説明する。図13に示すように、統括表ウインドウ110の症候選択ボックス119で所定の症候(症候分類230と同一項目がリスト表示される)を選択すると共に異常値選択ボックス120で異常検査項目(3項目検索の異常値と同一項目がリスト表示される)を選択し、実施ボタン121をクリック等して選択実行することにより、症候検索処理のうちの一つである複合検索処理が実行される。この複合検索処理は、画面に統括表ウインドウ110のみが表示される初期状態、前記一般検査処理、症候検査処理、3項目検索処理等の各種ウインドウが表示された状態であっても、任意のタイミングで実行可能である。そして、複合検索処理では、一般検査処理、症候検査処理、3項目検索処理等の各種ウインドウが表示された状態で実施ボタン121を選択実行すると、統括表ウインドウ110、検査保管表ウインドウ200及び病名保管表ウインドウ210を除き、それまで表示されていた病名目次ウインドウ140等が全て閉じられる。例えば、図12の状態から、症候選択ボックス119で所定の症候を選択すると共に異常値選択ボックス120で異常検査項目を選択して実施ボタン121を選択実行すると、図13に示すように、それまで表示されていた病名目次ウインドウ140等が全て閉じられ、新たな病名目次ウインドウ140が画面表示される。この新たに表示された病名目次ウインドウ140は、選択した症候及び異常値の両者(両条件)が該当したときに存在が推定される全ての病名を(臨床マスタファイル等の対応マスタファイルから)データ抽出して病名一覧表141内に列挙してリスト表示するものである。図13は、統括表ウインドウ110の症候選択ボックス119及び異常値選択ボックス120で、それぞれ、「口渇感」及び「K↓」を選択して実施ボタン121を押した場合に、両条件が該当したときに存在が推定される疾患(病名)が全て抽出され、病名目次ウインドウ140の病名一覧表141に、それらの疾患の病名(「尿細管アシドーシス(RTA)」等)がリスト表示された状態を示す。
本実施例の医療情報DBによる症候検索処理の見逃検索処理について説明する。統括表ウインドウ110の症候選択ボックス119で所定の症候を選択し、見逃ボタン122をクリック等して選択実行することにより、症候検索処理のうちの一つである見逃検査処理が実行される。なお、見逃検査処理では、異常値選択ボックス120での選択は不要である。この見逃検索処理は、画面に統括表ウインドウ110のみが表示される初期状態、前記一般検査処理、症候検査処理、3項目検索処理等の各種ウインドウが表示された状態であっても、任意のタイミングで実行可能である。そして、見逃検索処理では、一般検査処理、症候検査処理、3項目検索処理等の各種ウインドウが表示された状態で実施ボタン121を選択実行すると、統括表ウインドウ110、検査保管表ウインドウ200及び病名保管表ウインドウ210を除き、それまで表示されていた病名目次ウインドウ140等が全て閉じられる。例えば、図13の状態から、症候選択ボックス119で所定の症候を選択して見逃ボタン122を選択実行すると、それまで表示されていた病名目次ウインドウ140等が全て閉じられ、新たな病名目次ウインドウ140が画面表示される。この新たに表示された病名目次ウインドウ140は、選択した症候が該当した場合において生化学検査に異常を認めないときに「異常なし」と判断されやすい(見逃されやすい)全ての疾患(病名)を(臨床マスタファイル等の対応マスタファイルから)データ抽出して病名一覧表141内に列挙してリスト表示するものである。例えば、統括表ウインドウ110の症候選択ボックス119で「口渇感」を選択して見逃ボタン121を押した場合に、当該症候に該当し、かつ、当該症候に関して汎用される検査(本書類中では「汎用検査」と称するが、詳細は見逃検索処理の項で詳述)で異常値が出ない場合に存在が推測される(見逃す可能性がある)疾患(病名)が全て抽出され、病名目次ウインドウ140の病名一覧表141に、それらの疾患の病名(「唾液腺腫大疾患」等)がリスト表示される。
2.本医療情報DBのデータ構造・動作・処理
以下、本実施例の医療情報DBの動作(各処理)について、図14〜図21のフローチャート、及び、図22〜図25のテーブルを参照しながら説明する。まず、本実施例の医療情報DBのデータ構造(テーブル構造)について説明する。
本実施例の医療情報DBは、マスタテーブル(マスタファイル)として、前記検査マスタファイルとしての検査マスタテーブル(検査MT)(図示略)、前記病名マスタファイルとしての病名マスタテーブル(病名MT)(図示略)、前記症候マスタファイルとしての図22の症候マスタテーブル(症候MT)、前記疾患群マスタファイルとしての疾患群マスタテーブル(疾患群MT)、前記臨床マスタファイルとしての臨床マスタテーブル(臨床MT)、前記鑑別マスタファイルとしての鑑別マスタテーブル(鑑別MT)及び図23の異常値マスタテーブル(異常値MT)を備えている。
検査マスタテーブルは、マスタデータとして、前記検査配列表ウインドウ150の検査項目欄51や検査概要ウインドウ180に表示する検査項目関連データ(レコード)を定義して格納する。検査マスタテーブルは、データ項目(カラム)として、「大分類」、「項目名」、「項目ID」、「検査概要」、「表示順序」等を有し、これらのデータ項目に対応する個々のデータ要素(フィールド)を関連付けて(テーブルの各行に一レコードとして)格納する。このうち、「項目名」は、診断で使用される全ての検査項目名を格納し、「項目ID」は、検査項目を一意に識別する検査項目IDを検査項目名に関連付けて格納する。また、「検査概要」は、各検査項目の検査時の使用目的、注意事項、動向等を説明するための参考文を、各検査項目IDや各検査項目名に関連付けて格納する。そして、前記検査配列表ウインドウ150の検査項目欄151の特定の検査項目をクリックしたときに、当該検査項目について関連付けした「検査概要」の参考文が検査マスタテーブルから抽出され、検査概要ウインドウ180の検査概要表示欄182に表示される。更に、「表示順序」は、検査配列表ウインドウ150における検査項目の表示順序を定義する英数字を検査項目名や項目IDに関連付けて格納し、抽出した検査項目が、この順番にしたがって昇順(降順でも可能)に並べられ、検査配列表ウインドウ150にリスト表示される。検査マスタテーブルには、存在する全ての検査項目についての情報が格納されている。
病名マスタテーブルは、マスタデータとして、前記病名分類ウインドウ130の病名分類表131に表示する病名分類、病名目次ウインドウ140の病名一覧表141や疾患概要ウインドウ160の病名表示欄161に表示する病名、同疾患概要ウインドウ160の疾患概要表示欄162に表示する疾患概要等の病名関連データ(レコード)を定義して格納する。病名マスタテーブルは、データ項目(カラム)として、「分類ID」、「分類(分類名)」、「疾患順」、「病名ID」、「病名」、「疾患概要」等を有し、これらのデータ項目に対応する個々のデータ要素(フィールド)を関連付けて(テーブルの各行に一レコードとして)格納する。そして、統括表ウインドウ110の一般検査ボタン111をクリックしたときに、この分類IDの順序にしたがって病名分類が昇順(降順でも可能)に並べられ、病名分類ウインドウ130の病名分類表131に全て表示される。更に、「病名」は、診断で使用される全病名を格納し、これらの病名のいずれか1以上が、病名目次ウインドウ140の病名一覧表141等に選択的に表示される。「病名ID」は、病名を一意に識別する英数字であり、病名IDに関連付けて格納される。ここで、「病名」には、病名以外に、前記症候目次ウインドウ240に表示される[基]で始まる症候名、例えば、「[基]貧血」等も格納されている。同様に、「病名」には、病名以外に、前記症候目次ウインドウ240に表示される[基]で始まる異常値、例えば、「[基]WBC↓」等も格納されている。この場合、「病名」に格納する症候名([基]貧血」等)または異常値(「[基]WBC↓」等)には、症候及び異常値用に特に用意した病名IDが関連付けて格納される。即ち、症候及び異常値用の病名IDは、病名用の病名IDと明確に区別した番号(英数字)から開始するよう付番することが好ましい。具体的には、病名の病名IDは、病名数に応じて例えば「1〜3000」の番台とし、[基]症候及び[基]異常値の病名IDは、「6000〜」の番台とする。また、「疾患概要」は、病名の概略を説明する概略文(症候の場合は当該症候と当該症候に属する疾患の概要説目文)を病名IDや病名に関連付けて格納する。そして、前記病名目次ウインドウ140で特定の病名をクリックしたときに、当該病名について関連付けした概略文が病名マスタテーブルから抽出され、前記疾患概要ウインドウ160の疾患概要表示欄162に表示される。同様に、前記鑑別疾患目次ウインドウ170で特定の鑑別病名をクリックしたときにも、当該鑑別病名(即ち、病名)について関連付けした概略文が病名マスタテーブルから抽出され、前記鑑別疾患概要ウインドウ190の鑑別疾患概要表示欄192に表示される。「疾患順」は、「病名」から病名を抽出して病名目次ウインドウ140に表示する際に、その表示順序を定義する英数字であり、この疾患順にしたがって病名が病名目次ウインドウ140に昇順(降順でも可能)に並べてリスト表示される。病名マスタテーブルには、存在する全ての病名についての情報が格納されている。
図22の症候マスタテーブルは、マスタデータとして、前記症候分類ウインドウ230の症候分類表231等に表示する症候関連データ(レコード)を定義して格納するものである。症候マスタテーブルは、データ項目(カラム)として、「症候ID」、「症候」、「順」を有し、これらのデータ項目に対応する個々のデータ要素(フィールド)を関連付けて(テーブルの各行に一レコードとして)格納する。このうち、「症候」は、診断で使用する全ての症候についての分類であり、「症候」は、上記のように、症候以外に異常値も症候と同様にして検索処理に活用すべく格納する。この症候及び異常値が、症候分類ウインドウ230の症候分類表231に表示される。また、「症候ID」は、症候(症候や異常値)を一意に識別する英数字であり、症候及び異常値に関連付けて格納される。更に、「順」は、前記症候分類ウインドウ230における症候及び異常値の表示順序を定義する英数字を症候及び異常値や症候IDに関連付けて格納する。そして、統括表ウインドウ110の症候検査ボタン112をクリックしたときに、症候マスタテーブルの「順」の表示順序にしたがって「症候」の症候及び異常値が昇順(降順でも可能)に並べられ、前記症候分類ウインドウ230の症候分類表131に全て表示される。症候マスタテーブルには、使用する全ての症候についての情報が格納され、また、異常値については、代表的な検査項目(主に生化学検査)に係る異常値が格納されている。
疾患群マスタテーブルは、マスタデータとして、病名マスタテーブルの病名と図22の症候マスタテーブルの症候または異常値とを互いに関連付けて格納するものであり、病名マスタテーブルの病名関連データと症候マスタテーブルの症候関連データとの関係を定義する。疾患群マスタテーブルは、データ項目(カラム)として、「症候ID」、「症候」、「内順」、「病名ID」及び「病名」を有し、これらのデータ項目に対応する個々のデータ要素(フィールド)を関連付けて(テーブルの各行に一レコードとして)格納する。このうち、「症候ID」及び「症候」は、症候マスタテーブルの「症候ID」及び「症候」に対応し、疾患群マスタテーブルは、症候マスタテーブルの全ての症候及び異常値を症候IDと共に格納する。また、「病名ID」及び「病名」は、病名マスタテーブルの「病名ID」及び「病名」に対応し、疾患群マスタテーブルは、病名マスタテーブルの全ての病名を病名IDと共に格納する。ここで、病名マスタテーブルの項で説明したように、「病名」には、病名以外に、症候及び異常値(前記症候目次ウインドウ240に表示される[基]症候や[基]異常値、例えば、[基]「貧血」や[基]Fe↓等)も格納され、当該症候及び異常値に関連付けて症候及び異常値用の病名IDが格納される。このように、疾患群マスタテーブルは、各症候及び各異常値について、当該症候または異常値が該当したとき、即ち、当該症候や異常値が発生したときに存在が推定される全ての病名関連データ(病名ID、病名)を、当該症候または異常値に関連付けて格納する。そして、前記症候分類ウインドウ230で特定の症候または異常値をクリックしたときに、当該症候または異常値について関連付けて格納した一連の病名(当該症候及び異常値を含む)が、疾患群マスタテーブルの「病名」から抽出され、当該症候([基]症候)または異常値([基]異常値)を先頭として、症候目次ウインドウ240の症候病名一覧表241にリスト表示される。また、「内順」は、同一症候IDを有する症候または異常値の中での病名の表示順序を定義する英数字であり、この内順にしたがって、同一症候または同一異常値について複数の病名([基]症候・[基]異常値及び病名)が症候目次ウインドウ240に昇順(降順でも可能)に並べてリスト表示される。疾患群マスタテーブルには、前記病名マスタテーブルの全病名([基]疾患・[基]異常値を含む)と前記症候マスタテーブルの全ての症候及び異常値との間で考えうる全ての組合せについての情報が格納されている。
臨床マスタテーブルは、マスタデータとして、検査マスタテーブルの検査項目関連データと病名マスタテーブルの病名関連データとを互いに関連付けて格納するものであり、検査マスタテーブルの検査項目関連データと病名マスタテーブルの病名関連データとの関係を定義する。臨床マスタテーブルは、データ項目(カラム)として、「病名ID」、「病名」、「級」、「要」、「項目ID」、「項目名」、「検査動向」、「異常値ID」を有し、これらのデータ項目に対応する個々のデータ要素(フィールド)を関連付けて(テーブルの各行に一レコードとして)格納する。このうち、「病名ID」及び「病名」は、病名マスタテーブルの「病名ID」及び「病名」に対応し、臨床マスタテーブルは、病名マスタテーブルの全病名を病名IDと共に格納する。ここで、病名マスタテーブルの項で説明したように、「病名」には、病名以外に、症候及び異常値も格納され、当該症候または異常値に関連付けて症候用の病名IDが格納される。また、「項目ID」及び「項目名」は、検査マスタテーブルの「項目ID」及び「項目名」に対応し、臨床マスタテーブルは、検査マスタテーブルの全検査項目の項目名について、各病名に該当する項目名を全て関連付けて、即ち、各病名の病名IDに該当する項目名の項目IDを全て関連付けて格納する。即ち、臨床マスタテーブルは、各病名について、当該病名に該当する(当該病名の疾患の診断について使用される)全ての項目名や項目IDを、当該病名や病名IDに関連付けて格納する。
鑑別マスタテーブルは、マスタデータとして、病名マスタテーブルの病名と当該病名と同一鑑別疾患群に属する鑑別病名(鑑別疾患名)とを互いに関連付けて格納するものである。鑑別マスタテーブルは、データ項目(カラム)として、「病名ID」、「病名」、「鑑別ID」、「鑑別病名」を有し、これらのデータ項目に対応する個々のデータ要素(フィールド)を互いに関連付けて(テーブルの各行に一レコードとして)格納する。このうち、「病名ID」及び「病名」は、病名マスタテーブルの「病名ID」及び「病名」に対応し、鑑別マスタテーブルは、病名マスタテーブルの全病名を病名IDと共に格納する。ここで、病名マスタテーブルの項で説明したように、「病名」には、病名以外に、症候及び異常値も格納され、「病名」の症候または異常値に関連付けて当該症候用の病名IDが格納される。「鑑別病名」は、各病名について同一鑑別疾患群に属する全ての病名(鑑別病名)を格納する。また、「鑑別ID」は、鑑別病名を一意に識別する鑑別IDを鑑別病名に関連付けて格納する。鑑別マスタテーブルは、各病名について、当該病名と同一鑑別疾患群に属する全ての鑑別病名を、当該病名に関連付けて格納する。即ち、鑑別マスタテーブルでは、各病名について、当該病名も含む全ての病名が、鑑別病名として関連付けされている。そして、前記病名目次ウインドウ140で特定の病名をクリックしたときに、当該病名と同一の鑑別疾患群に属する鑑別病名の全て(当該病名を除く)が、鑑別疾患目次ウインドウ170の鑑別病名一覧表171に表示される。鑑別マスタテーブルには、前記病名マスタテーブルの全病名([基]疾患及び[基]異常値を含む)について存在する全ての鑑別病名との組合せについての情報が格納されている。
図23の異常値マスタテーブルは、検査マスタテーブルの検査項目名のうち、統括表ウインドウ110の異常値選択ボックス113〜115及び異常値選択ボックス120に表示する異常値(異常に係る検査項目)のみを選択的に格納する。異常値マスタテーブルは、データ項目(カラム)として、「順」、「異常値ID」、「異常値」を有し、これらのデータ項目に対応する個々のデータ要素(フィールド)を互いに関連付けて(テーブルの各行に一レコードとして)格納する。このうち、「異常値」は、検査マスタテーブルに格納した検査項目のうち、異常値選択ボックス113〜115及び異常値選択ボックス120に表示する検査項目を異常値として格納する。また、「異常値ID」は、異常値を一意に識別する英数字であり、各異常値に関連付けて格納される。更に、「順」は、異常値選択ボックス113〜115及び異常値選択ボックス120における異常値の表示順序を定義する英数字を異常値や異常値IDに関連付けて格納する。そして、異常値が「順」の表示順序どおりに昇順(降順も可能)で並べられ、各異常値選択ボックス113〜115や異常値選択ボックス120にリスト表示される。異常値マスタテーブルには、検査マスタテーブルに格納する検査項目のうちの主なもの(即ち、検査価値が高く臨床で頻用される検査項目)だけが、異常検査項目情報(異常値)として格納されている。なお、前記臨床マスタテーブルに格納する異常値IDは、異常値マスタテーブルに格納する異常値IDに対応しており、臨床マスタテーブルの項目IDに関連付けされている。即ち、関連付けした異常値IDの異常値の検査項目名と項目IDの項目名(検査項目名)は同一となる。
本実施例の医療情報DBは、上記のようなデータ構造(検査マスタテーブル、病名マスタテーブル、症候マスタテーブル、疾患群マスタテーブル、臨床マスタテーブル、鑑別マスタテーブル及び異常値マスタテーブル)を使用して、図14〜図21に示すような各種処理を実行することにより、各種医療情報の提供機能を実現する。詳細には、まず、本医療情報システムでは、コンピュータの電源をオンして、医療情報DBを起動すると、コンピュータの起動画面に統括表ウインドウ110が表示される。この状態から、ユーザーは、STEP101以降の一般検査処理、STEP201以降の症候検査処理、3項目検索処理(フローチャートは図示略)、症候検索処理(複合検索処理、フローチャートは図示略)、STEP421以降の症候検索処理(見逃検索処理)、のいずれかを選択して実行可能である。ユーザーがいずれかの処理を選択して実行すると、各処理に対応して各種ウインドウ(病名分類ウインドウ130等)がそれぞれ画面表示されて医療情報が提供される。そして、一般検査処理、症候検査処理、3項目検索処理、症候検索処理(複合検索処理または見逃検索処理)の各処理で必要な医療情報を得たら、通常は、ユーザーは、次のSTEP30で統括表ウインドウ110の中止ボタン128をクリックする(押す)ことなく、本医療システムを終了することになる。一方、これらの処理で必要な医療情報を得ることができずに再度各処理を最初から実行した場合等、何らかの理由により処理を中止したい場合、ユーザーは、STEP30で統括表ウインドウ110の中止ボタン128を押すと、統括表ウインドウ110以外の画面展開している全てのウインドウが閉じられる。同時に、検査保管表ウインドウ200や病名保管表ウインドウ210の保存内容が全消去されると共に、検査保管表ウインドウ200及び病名保管表ウインドウ210も閉じられる。また、統括表ウインドウ110の入力内容等は全て消去される。この場合、ユーザーは、再度、一般検査処理等を実行することができる。
コンピュータの起動画面において一般検査処理を選択した場合について、図14にしたがって説明する。図14に示すように、一般検査処理では、まず、STEP101で統括表ウインドウ110の一般検査ボタン111がクリックされると、STEP102で、病名マスタテーブルから全ての病名分類情報(分類ID、分類)が抽出されてグループ化され、STEP103で、全ての分類(=病名分類)が病名分類ウインドウ130にリスト表示される。そして、STEP103で、抽出された分類名が、分類IDの順番で、病名分類ウインドウ130の病名分類表131にリスト表示される(分類IDは非表示)。次に、STEP104で、病名分類ウインドウ130に表示された病名分類のいずれかをクリックして選択すると、STEP105で、選択された分類に対応する全病名情報(病名ID、病名、疾患順)が病名マスタテーブルから抽出され、STEP106で、病名目次ウインドウ140にリスト表示される。そして、STEP106で、抽出された病名が、所定の順序(疾患順の順番)で、病名目次ウインドウ140の病名一覧表141にリスト表示される。なお、このとき、病名マスタテーブルの「病名」において当該分類IDに関連付けられた症候([基]症候)及び異常値([基]異常値)は、抽出対象から除外される。即ち、病名マスタテーブルにおいて、症候及び異常値は、病名の病名IDと明確に区分した病名IDを有し、例えば、6000番台から病名IDが開始するため、STEP105では、かかる6000番未満の病名IDの病名のみを抽出している。
図14の疾患概要情報の提供処理(STEP110)について、図15にしたがって説明する。図15に示すように、疾患概要情報の提供処理(その1)では、図14のSTEP107で選択された病名の病名IDに基づき、STEP111において、その病名の疾患概要が病名マスタテーブルの「疾患概要」から抽出される。次に、STEP112で、抽出した病名の疾患概要が疾患概要ウインドウ160に表示される。次に、STEP113で、疾患概要ウインドウ160に表示した病名を一時保存する場合(YESの場合)、ユーザーは、STEP114で疾患概要ウインドウ160の病名メモボタン163をクリックする。すると、STEP115で、疾患概要ウインドウ160の病名ID及び病名が、病名用一時格納領域としての病名保管テーブル(病名保管T)に保存され、STEP116で、当該病名用一時格納領域に保存した病名を病名保管表ウインドウ210に表示する。なお、疾患概要ウインドウ160に表示した病名をSTEP113で保存しない場合(NOの場合)、STEP30の中止・終了処理に移行する。次に、STEP117で、病名目次ウインドウ140において選択した前記病名以外に疾患概要を確認したい病名(次候補)がある場合、ユーザーは、STEP118で病名目次ウインドウ140の別の病名をクリックする。すると、処理はSTEP111へ復帰し、STEP112で次候補の病名の疾患概要を新たな疾患概要ウインドウ160に表示し、当該次候補の病名を前記病名保管表ウインドウ210に更に追加表示することが可能となる(STEP113〜STEP116)。よって、ユーザーは、必要な数の病名を病名目次ウインドウ140から選択して、各々の病名の疾患概要を疾患概要ウインドウ160で逐次確認し、必要な病名を病名保管表ウインドウ210に逐次追加して表示することができる。次に、STEP119で、病名保管表ウインドウ210に保管して表示した別の病名について、疾患概要ウインドウ160、鑑別疾患目次ウインドウ170及び検査配列表ウインドウ150を表示して内容を再確認したい場合(STEP119でYESの場合)、STEP120で、病名保管表ウインドウ210から所望の病名をクリックして選択する。すると、処理は、STEP111(疾患概要情報提供処理の最初の処理)、STEP121(鑑別疾患情報提供処理の最初の処理)、STEP131(検査項目情報提供処理の最初の処理)に同時に移行する(図15のB点から同図15のB点、図16のB点、図17のB点へと移行)。一方、ユーザーが、必要な全ての病名を確認及び保存して次候補となる病名がないと判断した場合(STEP119でNOの場合)、STEP30の中止・終了処理に移行する。
図14の鑑別疾患情報の提供処理について、図16にしたがって説明する。図16に示すように、鑑別疾患情報の提供処理では、図14のSTEP107で選択された病名の病名IDに基づき、STEP131において、その病名と同一疾患群に属する全ての鑑別病名やその鑑別ID等(鑑別疾患情報)が、鑑別マスタテーブルから抽出される。なお、このとき、選択した病名(「鉄欠乏性貧血(IDA)」)自体も鑑別疾患群に属するため、この選択した病名が抽出されないよう、選択した病名の病名ID(「1」)と同一の鑑別ID(「1」)を有する鑑別病名は、抽出対象外とされる。即ち、鑑別マスタテーブルに格納した鑑別病名は、病名マスタテーブルに格納した病名と1対1で対応し、同一の鑑別疾患群に属するものが病名マスタテーブルの各病名に関連付けて鑑別マスタテーブルに格納されている。よって、鑑別IDは、鑑別病名が病名と同一の場合、その病名の病名IDと同一の番号となる。
図14の検査項目情報の提供処理について、図17にしたがって説明する。図17に示すように、検査項目情報の提供処理では、図14のSTEP108で共通テーブルに保存した全ての検査項目情報が、STEP151において抽出され、STEP152において全ての検査項目情報が、検査配列表ウインドウ150に一覧表示される。選択した病名の病名IDに基づき、STEP151において、選択した病名と対応する全ての検査項目情報が、前記共通テーブルから抽出される。即ち、まず、選択した病名の病名IDをキーとして、共通テーブルに保存している検査項目情報(「級」の検査項目の種別記号、「要」のチェック有無情報、「項目名」の検査項目名、「表示順序」の順番、「検査動向」の検査動向説明文等)が、全ての行(レコード)について抽出される。次に、抽出された各行の検査項目情報は、STEP152において、検査配列表ウインドウ150の表示に供される。即ち、「項目名」の検査項目名は、その項目IDに対応する「表示順序」の順番(昇順)で検査項目欄151に上から順に表示される。また、「級」の検査項目の種別記号(「*」、「−」、「 」)は、検査項目欄51に表示した対応する検査項目名の先頭に付加して表示される。また、「要」のチェック有無情報(「0」、「−1」)にしたがって、検査項目欄151に表示した検査項目名に対応するチェック欄153のチェックマークが表示される(「0」の場合はチェックOFFで「−1」の場合はチェックON)。また、「検査動向」の検査動向説明文は、検査項目欄151に表示した検査項目名に対応して検査動向表示欄152に表示される。
コンピュータの起動画面において症候検査処理を選択した場合について、図18にしたがって説明する。図18に示すように、症候検査処理では、まず、STEP201で統括表ウインドウ210の症候検査ボタン112がクリックされると、STEP202で、症候マスタテーブルから全ての症候情報(症候ID、症候及び異常値)が抽出され、STEP203で、全ての症候が症候分類ウインドウ230にリスト表示される。そして、STEP203で、抽出された症候及び異常値が、「順」の番号順で、症候分類ウインドウ230の症候分類表231にリスト表示される(症候IDは非表示)。次に、STEP204で、症候分類ウインドウ230に表示された症候または異常値のいずれかをクリックして選択すると、STEP205で、選択された症候または異常値に対応する全症候・病名情報(症候ID、症候または異常値、病名ID、病名、疾患順)が病名マスタテーブル及び疾患群マスタテーブルから抽出され、STEP206で、症候目次ウインドウ240にリスト表示される。なお、このときの抽出病名には、当該症候IDの症候([基]症候)または異常値([基]異常値)が含まれる。そして、STEP206で、抽出された全病名が、疾患群マスタテーブルの「内順」を参照して、所定の順序(内順の番号順)で、症候目次ウインドウ240の症候病名一覧表241にリスト表示される。
図18の疾患概要情報の提供処理(STEP210)について、図19にしたがって説明する。図19に示すように、疾患概要情報の提供処理(その2)では、STEP207で[基]症候が選択された場合を示し、この場合、STEP211からSTEP212に進み、選択された[基]症候の病名IDに基づき、その[基]症候の疾患概要が病名マスタテーブルの「疾患概要」から抽出される。次に、STEP213で、抽出した[基]症候の疾患概要が疾患概要ウインドウ160に表示される。次に、STEP214で、疾患概要ウインドウ160に表示した[基]症候を一時保存する場合(YESの場合)、ユーザーは、STEP215で疾患概要ウインドウ160の病名メモボタン163をクリックする。すると、STEP216で、疾患概要ウインドウ160の病名ID及び[基]症候が、病名用一時格納領域としての病名保管テーブル(病名保管T)に保存され、STEP217で、当該病名用一時格納領域に保存した[基]症候を病名保管表ウインドウ210に表示する。即ち、症候検査処理においては、[基]症候が、一般検査処理における病名の場合と同様にして病名用一時格納領域に保存され、病名保管表ウインドウ210に表示される。なお、疾患概要ウインドウ160に表示した[基]症候をSTEP214で保存しない場合(NOの場合)、STEP30の中止・終了処理に移行する。
統括表ウインドウ110の異常値選択ボックス113〜115で特定の異常値を選択した状態で、統括表ウインドウ110の単疾患ボタン116、関連疾患ボタン117または限定疾患ボタン118のいずれかを押すと、選択した異常値の異常値IDに基づき、選択した異常値が該当する背景疾患の病名IDと病名(単疾患検索の場合は1個の異常値が該当する全ての病名、関連疾患検索の場合は2個の異常値が該当する全ての病名、限定疾患検索の場合は3個の異常値が該当する全ての病名)が、臨床マスタテーブルから全て抽出され、作業テーブル(一時記憶領域)、即ち、3項目検索用格納領域としての3項目検索用病名テーブル(3項目検索用病名T)に保存される。
複合検索処理について説明する。統括表ウインドウ110の症候選択ボックス119の症候を選択すると共に、異常値選択ボックス120の異常値を選択した状態で、統括表ウインドウ110の実施ボタン121を押す。すると、選択した症候の症候IDに基づき、選択した症候が該当する疾患の病名IDと病名の組が、疾患群マスタテーブルから全て抽出されると共に(第1の処理)、選択した異常値の異常値IDに基づき、選択した異常値が該当する疾患の病名ID、病名、項目ID及び項目名の組が、臨床マスタテーブルから全て抽出される(第2の処理)。そして、次のSTEP413で、第1の処理で抽出した病名IDと病名の組と、第2の処理で抽出した病名IDと病名の組とがAND条件で比較されて、そのうちの同一の病名IDを有する病名のみが抽出され、選択した症候及び異常値の両者が該当した場合に予想される疾患(候補疾患)として、作業テーブル(一時記憶領域)、即ち、複合検索用格納領域としての複合検索用病名テーブル(複合検索用病名T)に保存される。
見逃検索処理(STEP420)について、図21のフローチャート、並びに、図24及び図25のテーブルにしたがって説明する。図21に示すように、統括表ウインドウ110の症候選択ボックス119の症候を選択した状態で、STEP421において、統括表ウインドウ110の見逃ボタン122を押す。すると、STEP422で、選択した症候の症候IDに基づき、選択した症候が該当する疾患の病名IDと病名の組が、疾患群マスタテーブルから全て抽出される。次に、STEP423において、抽出した病名IDに基づいて、臨床マスタテーブルにおいて当該抽出した病名ID及び病名の組を参照し、それらの病名(疾患)のうち、特定の安価な生化学検査を中心とする検査(本書類中では「汎用検査」と称している)で診断されるものを選択して抽出する。詳細には、検査マスタテーブルは、検査項目として、血清関連の検査(「血清関連」)、生化学検査I(生化I)、生化学検査II(生化II)、生化学検査III(生化III)等、現存する全ての検査項目を格納している。(なお、本明細書中で使用する「生化I」や「生化II」は、保険で扱う生化Iや生化IIとは内容が異なる。)しかし、これらは、大きく分けて安価な生化学検査と高価な特異的検査に2分することができる。このうち、生化学検査は、安価であるため、初回から検査範囲に含むことが多い検査項目である。一方、特異的検査は、初回から検査に使われる場合も勿論あるが、高額なこともあって、一般的には主に生化学検査の結果を受けて二次検査に多用される性格の検査である。そして、初回の検査には、前記安価な生化学検査を中心とする汎用検査のみが使用される場合も考えられる。
上記臨床診断支援システムにおける固有変動表の作成処理の一例について、以下に実際の具体的なデータを使用して説明する。
1)関節リウマチ
図26は疾患として「関節リウマチ」の発症条件「臓器:心臓」を例にとって固有変動マスタファイルの該当データ部分を作成する場合を示すテーブル図である。図27は疾患として「関節リウマチ」を例にとって全ての固有変動を追加した場合の固有変動マスタファイルの対応部分を示すテーブル図である。
図28は症候「高血糖」に関する固有変動を検査項目「CBC」について固有変動マスタファイルに格納する場合の処理を説明するテーブル図である。固有変動マスタファイル11では、上記のように、同一の検査項目であっても疾患ごとに異なる複数の固有変動が格納され、1つの検査項目について複数行の(疾患ごとに異なる)レコードが存在するため、このまま各行のレコードのデータ内容を抽出して検査配列表63に表示すると、表示行が膨大となってその全容の把握が逆に困難になる可能性がある。したがって、本臨床診断支援システムでは、固有変動マスタファイル11に基づき、ある症候に属する疾患ごとに同一の検査項目について複数行にわたる固有変動のデータ(同一の検査項目について、当該症候に属する疾患ごとに異なる複数の検査変動の説明)を1つのデータ(当該検査項目について当該症候に属する疾患ごとの検査変動をまとめた説明)として臨床マスタファイル12に格納し手いる。即ち、同一の症候について、固有変動表では複数行にわたる1つの検査項目に関する複数の固有変動データを1つのデータに結合して単一のデータとして表現し、当該症候が指定されたときは、同一の検査項目についてはこの単一のデータを臨床マスタファイル12から抽出して検査配列表63に表示するようにしている。なお、このデータ集約処理は、上記で説明したように、前記検査配列表加工表示手段53により、複数行にわたる1つの検査項目のデータを1行に結合して複数の固有変動を単一のデータとして表現し、検査配列表63に表示することができる。
図29は肺炎に関する固有変動を検査項目「AST」について固有変動マスタファイルに格納する場合の処理を説明するテーブル図である。
肺炎は、肺に親和性を持つ起炎菌により発症するが、本臨床診断支援システムでは、まず、(別症候とする特殊なウイルス性肺炎は除いて)肺炎の起炎菌として18種類の起炎菌を使用して、鑑別マスタファイル17の鑑別病名として格納している。そして、例えば、鑑別マスタファイルを参照して病名「肺炎」についての全鑑別疾患(全鑑別病名)を抽出すると共に、抽出した全病名について、固有変動マスタファイルを参照して、当該病名に関連付けられた検査項目「AST」とその固有変動とを抽出すると(これら両ファイルの当該抽出データ部分を結合すると)、図29に示すように、病名「肺炎」に属する鑑別病名群についての検査項目「AST」に関しては、固有変動マスタファイルには、当該病名「肺炎」に属する鑑別病名群(「マイコプラズマ症」等)について(合計14個の)個別の固有変動が格納されていることがわかる(図29の下側のテーブル参照)。したがって、本臨床診断支援システムでは、これらの固有変動データを集約して(当該鑑別病名群についての)単一データの固有変動(検査動向)として臨床マスタファイルの「固有変動(検査動向)」のデータ項目の対応レコード部分に格納し(図29の上側のテーブル参照)、病名「肺炎」を指定したときの当該鑑別病名群の当該検査項目「AST」に関する固有変動としては、この集約した単一データの固有変動を検査配列表63の検査動向欄に表示する。したがって、検査配列表63で単一項目として表示される(本来は14個の固有変動からなる)固有変動データを見るだけで、鑑別病名の固有変動の比較検討が可能になり、複数行にわたるデータを見てそれらを比較検討をする場合と比較して、作業性が向上する。また、固有変動マスタファイル11の固有変動の内容をそのまま集約して臨床マスタファイル12の固有変動の内容とするため、疾患名や固有変動データの漏れがなくなり、また、正確かつ専門的な構文として表示することが可能となる。
140:病名目次ウインドウ
150:検査配列票ウインドウ、160:疾患概要ウインドウ
170:鑑別疾患目次ウインドウ、180:検査概要ウインドウ
190:鑑別疾患概要ウインドウ、200:検査保管票ウインドウ
210:病名保管票ウインドウ、230:症候分類ウインドウ
240:症候目次ウインドウ、250:用語検索票ウインドウ
Claims (6)
- データベースシステムとしてコンピュータ装置の記憶装置に格納され、前記コンピュータ装置のハードウエアを前記機能実現手段として機能させることで所定の機能を実現する臨床診断支援システムであって、
前記機能実現手段は、固有変動格納手段及び検査配列表示手段を備え、
前記固有変動格納手段は、
各疾患に対して、その疾患が発病したときには必ず同一の検査結果となることを利用してその疾患自体の発病を確認するために使用可能な検査項目である固定固有変動型検査の検査項目名と、その疾患が発病したときの当該固定固有変動型検査の検査結果の変動内容を示す表現である固定固有変動とを当該疾患に関連付けてコンピュータ装置の第1の記憶領域に格納すると共に、
その疾患が発病したときに必ずしも同一の検査結果とはならない一方でその疾患に固有の発症条件が発症したときには必ず同一の検査結果となることを利用してその疾患に固有の発症条件を確認するために使用可能な検査項目である随伴固有変動型検査の検査項目名と、その疾患に固有の発症条件が発症したときの当該随伴固有変動型検査の検査結果の変動内容を示す表現である随伴固有変動とを当該疾患に関連付けて前記第1の記憶領域に格納し、
前記固定固有変動及び前記随伴固有変動として、いずれも、対応する検査項目の検査結果の変動内容を最小単位となるよう細分化して表現したものを前記第1の記憶領域に格納すると共に、
前記固定固有変動に対応する疾患の疾患名を当該固定固有変動に関連付けて前記第1の記憶領域に格納し、かつ、前記随伴固有変動に対応する疾患の疾患名と対応する発症条件の発症条件名とを結合した結合疾患名を当該随伴固有変動に関連付けて前記第1の記憶領域に格納し、
前記検査配列表示手段は、
各疾患について、前記第1の記憶領域から、その疾患に関連付けた全ての前記固定固有変動型検査の検査項目名とその固定固有変動、並びに、その疾患に関連付けた全ての前記随伴固有変動型検査の検査項目名とその随伴固有変動とを抽出し、各疾患について当該疾患に関連付けた全ての固定固有変動型検査の検査項目名及び全ての随伴固有変動型検査の検査項目名を、当該疾患と対応付けて検査配列表示部に順に列挙表示すると共に、各固定固有変動型検査の検査項目名にはその固定固有変動を対応付けて前記検査配列表示部に表示し、かつ、各随伴固有変動型検査の検査項目名にはその随伴固有変動を対応付けて前記検査配列表示部に表示すると共に、
前記固定固有変動には、当該固定固有変動が関連付けられた疾患名のみを対応付けて表示し、かつ、前記随伴固有変動には、当該随伴固有変動が関連付けられた結合疾患名を対応付けて表示し、
更に、一の疾患について少なくとも2以上の前記固定固有変動を前記第1の記憶領域から抽出して前記検査配列表示部に列挙表示することで、当該一の疾患について前記2以上の固定固有変動を相互に比較検討して診断する複数項目比較検討を可能とする
ことを特徴とする臨床診断支援システム。 - 更に、
症候を前記コンピュータ装置の第2の記憶領域に格納する症候格納手段と、
前記症候格納手段に格納した症候ごとに、その症候が発症したときに発病が疑われる疾患である候補疾患を当該症候に関連付けて前記コンピュータ装置の第3の記憶領域に格納する疾患群格納手段と、
前記第2の記憶領域に格納した症候のうちの特定の症候を指定する症候指定手段と、
前記症候指定手段により特定の症候が指定されたときに、当該指定された症候に関連付けた前記候補疾患を前記前記第3の記憶領域から抽出する候補疾患抽出手段と、
前記症候指定手段により特定の症候が指定されたときに、前記候補疾患抽出手段が抽出した候補疾患の各々に関連付けた前記固定固有変動型検査項目の検査項目名及びその固定固有変動と、当該候補疾患の各々に関連付けた前記随伴固有変動型検査の検査項目名及びその随伴固有変動とを、それぞれ、前記第1の記憶領域から抽出する固有変動抽出手段とを備え、
前記検査配列表示手段は、前記固有変動抽出手段を含み、
前記症候指定手段により特定の症候が指定されたとき、
前記固有変動抽出手段は、前記第1の記憶領域から、前記候補疾患抽出手段が抽出した前記候補疾患の各々について、前記候補疾患の各々に関連付けた前記固定固有変動型検査項目の検査項目名及びその固定固有変動を少なくとも2以上抽出すると共に、前記候補疾患の各々に関連付けた前記随伴変動型検査項目の検査項目名及びその随伴固有変動を抽出し、
前記検査配列表示手段は、前記検査配列表示部としての検査配列表の左側に、前記固有変動抽出手段が抽出した全ての前記検査項目名を上から下へと順に列挙表示すると共に、前記検査配列表の右側に、前記検査配列表に列挙表示した前記検査項目名の各々に対応して前記固定固有変動及び前記随伴固有変動を上から下へと列挙表示し、
前記検査配列表示手段は、更に、前記検査配列表に列挙表示した前記固定固有変動に対して当該固定固有変動が該当する疾患の疾患名のみを対応付けて表示すると共に、前記検査配列表に列挙表示した前記随伴固有変動に対して当該随伴固有変動が該当する前記結合疾患名を対応付けて表示する
ことを特徴とする請求項1記載の臨床診断支援システム。 - 更に、
前記第1の記憶領域に格納した疾患ごとに、当該疾患と鑑別関係にある疾患であり、かつ、前記第1の記憶領域に格納した疾患でもある鑑別疾患を、当該疾患に関連付けて前記コンピュータ装置の第2の記憶領域に格納する鑑別疾患格納手段と、
前記第1の記憶領域に格納した疾患のうちの特定の疾患を指定する疾患指定手段と、
前記疾患指定手段により特定の疾患が指定されたときに、当該指定された疾患に関連付けた前記鑑別疾患を前記第2の記憶領域から抽出する鑑別疾患抽出手段と、
前記疾患指定手段により特定の疾患が指定されたときに、当該指定された疾患に関連付けた前記固定固有変動型検査項目の検査項目名及びその固定固有変動と、当該指定された疾患に関連付けた前記随伴固有変動型検査の検査項目名及びその随伴固有変動とを、それぞれ、前記第1の記憶領域から抽出することに加え、前記鑑別疾患抽出手段が抽出した鑑別疾患の各々に関連付けた前記固定固有変動型検査項目の検査項目名及びその固定固有変動と、当該鑑別疾患の各々に関連付けた前記随伴固有変動型検査の検査項目名及びその随伴固有変動とを、それぞれ、前記第1の記憶領域から抽出する固有変動抽出手段とを備え、
前記検査配列表示手段は、前記固有変動抽出手段を含み、
前記疾患指定手段により特定の疾患が指定されたとき、
前記固有変動抽出手段は、前記第1の記憶領域から、前記指定された疾患について、当該疾患に関連付けた少なくとも2以上の前記固定固有変動型検査項目の検査項目名及びその固定固有変動を抽出すると共に、当該指定された疾患に関連付けた前記随伴変動型検査項目の検査項目名及びその随伴固有変動を抽出することに加え、前記鑑別疾患抽出手段が抽出した前記鑑別疾患の各々について、前記鑑別疾患の各々に関連付けた前記固定固有変動型検査項目の検査項目名及びその固定固有変動を抽出し、
前記検査配列表示手段は、前記検査配列表示部としての検査配列表の左側に、前記固有変動抽出手段が抽出した全ての前記検査項目名を集合化して順に列挙表示すると共に、前記検査配列表の右側に、前記検査配列表に列挙表示した前記検査項目名の各々に対応して前記固定固有変動及び前記随伴固有変動を集合化して列挙表示する一方、前記指定された疾患について抽出した前記固定固有変動を集合化して列挙表示し、かつ、前記指定された疾患について抽出した前記随伴固有変動を集合化して列挙表示すると共に、前記鑑別疾患について抽出した前記固定固有変動を集合化して表示し、
前記検査配列表示手段は、更に、前記検査配列表に列挙表示した前記固定固有変動に対して当該固定固有変動が該当する疾患の疾患名のみを対応付けて表示すると共に、前記検査配列表に列挙表示した前記随伴固有変動に対して当該随伴固有変動が該当する前記結合疾患名を対応付けて表示する
ことを特徴とする請求項1記載の臨床診断支援システム。 - 更に、
前記第1の記憶領域に格納した疾患ごとに、前記固定固有変動型検査の検査項目名及びその固定固有変動、並びに、前記随伴固有変動型検査の検査項目名及びその随伴固有変動をそれぞれ関連付けてコンピュータ装置の第2の記憶領域に格納する臨床データ格納手段と、
前記第2の記憶領域に格納した疾患のうちの特定の疾患を指定する疾患指定手段と、
前記疾患指定手段により特定の疾患が指定されたときに、当該指定された疾患に関連付けた前記固定固有変動型検査項目の検査項目名及びその固定固有変動と、当該指定された疾患に関連付けた前記随伴固有変動型検査の検査項目名及びその随伴固有変動とを、それぞれ、前記第2の記憶領域から抽出する固有変動抽出手段とを備え、
前記臨床データ格納手段は、前記第1の記憶領域において疾患ごとに関連付けられた前記固定固有変動型検査の検査項目名を、その疾患自体の発病を確認するための肯定用検査の検査項目名として当該疾患に関連付けて前記第2の記憶領域に格納することに加え、前記第1の記憶領域においてその疾患の鑑別疾患となる疾患に関連付けられた前記固定固有変動型検査の検査項目名をも、当該鑑別疾患の発病を確認することで当該疾患自体の発病を否定するための否定用検査として当該疾患に関連付けて前記第2の記憶領域に格納し、
前記臨床データ格納手段は、更に、前記第1の記憶領域において疾患ごとに関連付けられた前記固定固有変動型検査の固定固有変動であって前記肯定用検査となる検査の固定固有変動を、その疾患の疾患名及び当該肯定用検査の検査項目名にそれぞれ関連付けて前記第2の記憶領域に格納することに加え、前記第1の記憶領域においてその疾患の鑑別疾患となる疾患に関連付けられた前記固定固有変動型検査の固定固有変動であって前記否定用検査となる検査の固定固有変動をも、その疾患の疾患名及び当該否定用検査の検査項目名及び当該鑑別疾患の疾患名にそれぞれ関連付けて前記第2の記憶領域に格納し、
前記疾患指定手段により特定の疾患が指定されたとき、
前記固有変動抽出手段は、前記指定された疾患について、当該疾患に関連付けた少なくとも2以上の前記肯定用検査項目の検査項目名及びその固定固有変動を前記第2の記憶領域から抽出すると共に、当該指定された疾患に関連付けた前記随伴変動型検査項目の検査項目名及びその随伴固有変動を前記第2の記憶領域から抽出することに加え、当該疾患に関連付けた前記否定用検査項目の検査項目名及びその固定固有変動を前記第2の記憶領域から抽出し、
前記検査配列表示手段は、前記検査配列表示部としての検査配列表の左側に、前記固有変動抽出手段が抽出した全ての前記検査項目名を上から下へと順に列挙表示すると共に、前記検査配列表の右側に、前記検査配列表に列挙表示した前記検査項目名の各々に対応して前記固定固有変動及び前記随伴固有変動を上から下へと列挙表示する一方、前記指定された疾患について抽出した前記肯定用検査の固定固有変動を集合化して表示し、かつ、前記指定された疾患について抽出した前記随伴固有変動を集合化して表示すると共に、前記指定した疾患について抽出した前記否定用検査を集合化して表示し、
前記検査配列表表示手段は、更に、当該検査配列表において前記肯定用検査の検査項目名には当該肯定用検査であることを示す肯定検査用種別記号を、前記否定用検査には当該否定用検査であることを示す否定検査用種別記号をそれぞれ付して表示することを特徴とする請求項1記載の臨床診断支援システム。 - 前記固有変動抽出手段は、指定した疾患が除外診断法により診断されるものである場合は、当該疾患の鑑別疾患の各々に関連付けた前記否定用検査項目とその固定固有変動とを前記第2の記憶領域から抽出し、
前記検査配列表表示手段は、前記固有変動抽出手段が抽出した前記否定用検査項目を前記検査配列表に列挙して表示することを特徴とする請求項4記載の臨床診断支援システム。 - 更に、
症候を前記コンピュータ装置の第3の記憶領域に格納する症候格納手段と、
前記症候格納手段に格納した症候ごとに、その症候が発症したときに発病が疑われる疾患である候補疾患を当該症候に関連付けて前記コンピュータ装置の第4の記憶領域に格納する疾患群格納手段と、
前記第3の記憶領域に格納した症候のうちの特定の症候を指定する症候指定手段と、
前記症候指定手段により特定の症候が指定されたときに、当該指定された症候に関連付けた前記候補疾患を前記第4の記憶領域から抽出する候補疾患抽出手段とを備え、
前記臨床データ格納手段は、更に、前記検査項目として、現存する全ての検査項目の項目名と当該検査項目を一意に識別する項目IDとを関連付けて前記第2の記憶領域に格納すると共に、前記検査項目のうち、生化学検査からなる汎用検査項目を特定の前記項目IDと関連付けて前記第2の記憶領域に格納する一方、前記汎用検査項目の特定の項目IDを当該汎用検査項目により検出可能な特定の疾患の疾患名と関連付けて前記第2の記憶領域に格納し、
更に、
前記症候指定手段により特定の症候を指定することにより、当該指定された症候と関連付けた全ての疾患を前記第4の記憶領域から抽出した後、当該抽出した疾患のうち、前記汎用検査項目の特定の項目IDと関連付けられた前記特定の疾患以外の疾患のみを抽出して当該疾患を前記検査配列表に列挙表示する見逃疾患抽出表示手段を備えることを特徴とする請求項4または5記載の臨床診断支援システム。
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