JP4627972B2 - 清酒酵母識別培地及び清酒酵母以外の酵母の存在確認方法 - Google Patents

清酒酵母識別培地及び清酒酵母以外の酵母の存在確認方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡便に清酒酵母と清酒酵母以外の酵母とを識別する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
清酒の製造は、米,米麹及び水等を混合して成るもろみに清酒酵母を加え、該もろみを発酵させることにより行われるが、清酒の製造は、一般的には開放状態で行われるため、もろみは外部からの微生物汚染の恐れがある。
【0003】
清酒酵母以外の酵母(微生物である。以下、野生酵母という。)による汚染が発生した場合、そのまま発酵を進めてしまうと良好な清酒を製造することができない。
【0004】
即ち、もろみに野生酵母が付着すると、該もろみが野生酵母によって汚染され、このもろみが汚染された状態のまま発酵が進むと、所謂おいしい清酒が製造されない。
【0005】
従って、例えばもろみに清酒酵母を加えた後に(発酵途中で)、該清酒酵母を加えたもろみに野生酵母が付着していないかどうかを識別し、仮に野生酵母がもろみ中に存在していた場合には、例えば前記もろみに更に清酒酵母を加え、もろみ中の清酒酵母を野生酵母よりも優勢とすることで該野生酵母を淘汰するなどの手段を講じてもろみが腐敗しないよう管理している。
【0006】
ところで、これまでの清酒製造工程における清酒酵母と野生酵母とを識別する方法としては、TTC(2,3,5−triphenyl tetrazolium cloride)染色法(秋山,古川:農化,36,354(1962))があり、今日まで利用されている。
【0007】
このTTC染色法とは、所定の染色手段により、清酒酵母を染色させることで、染色されない野生酵母を識別するものである。
【0008】
しかしながら、このTTC染色法による識別においては、操作方法に熟練を要することに加え、培地の殺菌時間,培養時間,反応時間などの操作条件の違いから色相に再現性を欠くため、その識別(判別)にも熟練を要し、よって、簡便には行えないという問題点を有し、また、一部の野生酵母でも反応が起こってしまうという問題点も報告されており(菅間,大内,忍頂寺,野白:醸協,61,164(1966))、改善の余地がある。
【0009】
一方、清酒製造の際に使用される最も一般的な清酒酵母である協会酵母(日本醸造協会販売の清酒酵母)は、培地中の無機リン酸濃度を上げると酸性フォスファターゼを生産しないことがわかっており、この性質を利用することで野生酵母を識別する方法が提案されている(溝口,藤田:醸協,77,361(1982))。
【0010】
即ち、無機リン酸濃度を、清酒酵母が酸性フォスファターゼを生成せず、野生酵母が酸性フォスファターゼを生成する所定濃度以上に設定することで、該酸性フォスファターゼの有無により、清酒酵母と該清酒酵母以外の酵母とを識別するものである。
【0011】
この酸性フォスファターゼの存在の有無により清酒酵母と該清酒酵母以外の酵母とを識別する方法は特異性が高いため、精度よく識別することができる。
【0012】
しかしながら、この識別方法においては、酵母の酸性フォスファターゼの存在の有無を確認するために、該酸性フォスファターゼを検出するための検出試薬(酵素基質及び発色剤)を培地の調製とは別に調製して寒天と共に重層し、これにより、酸性フォスファターゼの存在の有無を確認するのが一般的であり、手間がかかる上に操作が煩雑であるという問題点がある。
【0013】
また、前述の検出試薬は、酢酸緩衝液(0.1M,pH4.0)とα−ナフチルリン酸ナトリウムとFast blue saltBとから成り、該検出試薬は、常温では非酵素的な着色が進むことから、これを防止するために冷蔵庫において保存しなければならず、よって、大量に調製して長期間保存することは難しいなど、保存性に劣る。
【0014】
従って、この酸性フォスファターゼの有無により清酒酵母と野生酵母とを識別する方法も、結局のところ、TTC染色法と同様、容易に清酒酵母と野生酵母とを識別することができないという現状である。
【0015】
本発明は、簡便に清酒酵母と野生酵母とを識別することができるものであり、試料酵母を適当に希釈して培地に接種するだけで簡便に清酒酵母と野生酵母を識別できる技術を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨を説明する。
【0017】
リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol混合されている状態において、酸性フォスファターゼ活性を示さない清酒製造に使用される清酒酵母と、酸性フォスファターゼ活性を示す清酒酵母以外の酵母とを、後者を青色にすることで両者を識別する培地であって、この培地1リットルあたり少なくともリン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.2g混合され、pHが4.0乃至4.5に設定されていることを特徴とする清酒酵母識別培地に係るものである。
【0018】
また、リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol混合されている状態において、酸性フォスファターゼ活性を示さない清酒製造に使用される清酒酵母と、酸性フォスファターゼ活性を示す清酒酵母以外の酵母とを、後者を青色にすることで両者を識別する培地であって、この培地1リットルあたり少なくともリン酸二水素カリウムが1.0g乃至1.5g、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.2g混合され、pHが4.0乃至4.5に設定されていることを特徴とする清酒酵母識別培地に係るものである。
【0019】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の清酒酵母識別培地において、前記培地にはグルコースが10.0g乃至20.0g、ペプトンが1.5乃至2.0g、酵母エキスが1.5g乃至2.0g、硫酸マグネシウム7水和物が0.3乃至0.4g混合されていることを特徴とする清酒酵母識別培地に係るものである。
【0020】
また、リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol混合されている状態において、酸性フォスファターゼ活性を示さない清酒製造に使用される清酒酵母以外の酵母の存在を確認する方法であって、培地として、リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmolが混合されると共に、前記清酒酵母以外の酵母が生成する酸性フォスファターゼにより分解され且つ色が青色に変化する5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.2g混合され、pHが4.0乃至4.5の培地を採用し、この培地に清酒製造工程中のもろみを接種し、このもろみの青色への変化を確認することで、前記清酒酵母以外の酵母が前記もろみ中に存在するか否かを確認することを特徴とする清酒酵母以外の酵母の存在確認方法に係るものである。
【0021】
また、請求項4に記載の清酒酵母以外の酵母の存在確認方法において、前記培地には、グルコース、ペプトン、酵母エキス、硫酸マグネシウム7水和物が混合されていることを特徴とする清酒酵母以外の酵母の存在確認方法に係るものである。
【0022】
【発明の作用及び効果】
培地中に、該培地1リットルあたりリン酸イオンが7.3mmol以上混合されている状態において、無機リン酸により酸性フォスファターゼの生産が抑制される清酒酵母があり、この清酒酵母以外の酵母は酸性フォスファターゼの生産抑制を受けないことは、これまで知られている(溝口,藤田:醸協,77,361(1982))。
【0023】
また、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltは、酸性フォスファターゼの存在により分解されて青色色素を生成する性質を有することは知られている。
【0024】
また、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g以上混合されていると、酸性フォスファターゼにより分解されて生成される青色色素を良好に視認することができることを確認した。尚、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltの混合量が0.05g未満となると、酸性フォスファターゼにより分解されて生成される青色色素の量が少なくなり、青色色素の良好な視認ができなくなる。
【0025】
従って、培地中に、該培地1リットルあたりリン酸イオンが7.3mmol以上、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g以上混合されて成る該培地に試料酵母(もろみから分取した酵母)を接種し、該試料酵母を培養して青色色素の有無を視認するだけで、該試料酵母中に清酒酵母以外の酵母が存在するか否かを簡便に確認することができる。
【0026】
即ち、リン酸イオンの濃度を、清酒酵母が酸性フォスファターゼを生産せず、野生酵母が酸性フォスファターゼを生産する濃度に設定すると共に、培地中に酸性フォスファターゼにより分解されて青色色素を生成する5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltを、該青色色素を良好に視認できる量、即ち、0.05g以上加えることで、野生酵母以外の酵母の存在を簡便に確認することができる。
【0027】
また、前記培地のpHが4.0乃至4.5になるよう設定することにより、培地を酸性の状態とすることで雑菌の繁殖を抑制でき、よって、酵母の培養及び清酒酵母と野生酵母との識別を良好に行うことができる。
【0028】
以上、本発明によれば、従来のように、酸性フォスファターゼの有無を確認するための検出試薬を培地の調製とは別に調製する必要がなく、また、該検出試薬を冷蔵保存する手間もなく、その上、培地に該検出試薬を重層するといった煩わしい作業も必要とせずに清酒酵母と清酒酵母以外の酵母(野生酵母)とを簡易に識別することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本実施例は、酒造りにおいて使用されている清酒酵母と、清酒酵母以外の雑多な野生酵母とを識別できる培地に係るものである。
【0030】
培地には、該培地1リットルあたりリン酸イオン7.3mmol以上、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g以上が混合されている。
【0031】
具体的には、培地1リットルあたりリン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.20gが混合されている。
【0032】
更に具体的には、リン酸イオンを付与し得る化合物として無機リン酸が採用されている。
【0033】
本実施例では、無機リン酸としてリン酸二水素カリウム(KHPO)が採用されている。
【0034】
このリン酸二水素カリウムは培地1リットルあたり1.0g乃至1.5gの量混合されている。
【0035】
本実施例において、培地に混合させる5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltの量を0.05g以上に設定したのは、0.05g未満とすると、酸性フォスファターゼにより分解されることで生成される青色色素の量が少なくなり、該青色色素を視認しにくくなってしまうからである。
【0036】
尚、本実施例では、無機リン酸としてリン酸二水素カリウムを採用したが、培地中にリン酸イオンを所望濃度供給することができ、且つ、清酒酵母と野生酵母との識別を阻害しない無機リン酸であれば、どのようなものを採用しても良い。
【0037】
培地には、グルコース,ペプトン,酵母エキス及び硫酸マグネシウム7水和物(MgSO・7HO)が混合されている。このグルコース,ペプトン,酵母エキス及び硫酸マグネシウム7水和物は、酵母を培養する際に必要とされる栄養素である。これにより、酵母は良好に培養され、清酒酵母と野生酵母とを良好に識別することができる。
【0038】
具体的には、グルコースは、培地1リットルあたり10.0g乃至20.0g混合されている。
【0039】
また、ペプトンは、培地1リットルあたり1.5g乃至2.0g混合されている。これにより、検体中の酵母にアミノ酸類を供給して該酵母の培養を良好に行うことができる。
【0040】
また、酵母エキスは、培地1リットルあたり1.5g乃至2.0g混合されている。
【0041】
また、硫酸マグネシウム7水和物は、培地1リットルあたり0.3g乃至0.4g混合されている。
【0042】
前記培地には、酵母の培養に影響のない酸性物質が混合され、前記培地のpHが4.0乃至4.5に設定されている。
【0043】
即ち、培地には、前記酸性物質としてクエン酸1水和物(C・HO)が混合されている。
【0044】
具体的には、クエン酸1水和物は、培地1リットルあたり0.27g混合されている。
【0045】
これにより、培地を酸性の状態として雑菌の繁殖を抑制でき、よって、酵母の培養及び清酒酵母と野生酵母との識別を良好に行うことができるようにしている。
【0046】
尚、本実施例では、培地を酸性の状態とするためにクエン酸1水和物が混合された構成としたが、培地を酸性の状態にでき且つ酵母の増殖に影響を与えない物質であれば適宜採用しても良く、例えば、塩酸や乳酸を採用しても良い。
【0047】
本実施例によれば、培地中に、該培地1リットルあたりリン酸二水素カリウムが1.0g乃至1.5g(即ち、7.3mmol乃至11.0mmol)混合されている状態においては、清酒酵母は無機リン酸により酸性フォスファターゼの生産が抑制され、清酒酵母以外の酵母は酸性フォスファターゼの生産抑制を受けない。
【0048】
また、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltは、酸性フォスファターゼの存在により分解されて青色色素を生成する性質を有する。
【0049】
また、培地に5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.20g混合されていることで、酸性フォスファターゼにより分解されて生成される青色色素を良好に視認することができる。
【0050】
従って、培地中に、該培地1リットルあたりリン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.20g混合されて成る該培地にもろみ(即ちもろみから分取した酵母)を接種し、該もろみを培養して青色色素の有無を視認するだけで、該もろみ中に清酒酵母以外の酵母が存在するか否かを確認することができる。
【0051】
本実施例の培地を用いた清酒酵母と野生酵母との識別は、基本的には、清酒製造工程中、どの段階においても実施が可能であるが、例えば米,米麹及び水等から成るもろみに清酒酵母を加えた後、発酵途中でもろみの一部を分取し、該分取したもろみを本実施例の培地によって培養すると、前述の作用により、野生酵母が存在すれば該野生酵母は青色に染色され、清酒酵母は染色されないから、培地上のもろみに野生酵母が存在すると、該もろみは青色を呈することになる。
【0052】
もろみが青色を呈した場合、即ち、もろみ中に野生酵母が多く存在していた場合には、例えばもろみに清酒酵母を更に加えて該もろみ中の清酒酵母を野生酵母よりも優勢として該清酒酵母により野生酵母を淘汰し、清酒酵母のみによりもろみを発酵させる。
【0053】
本実施例は上述のようにするから、培地1リットルあたりリン酸二水素カリウムが7.3mmol乃至11.0mmol(即ち、重量にしてリン酸二水素カリウム1.0g乃至1.5g。)混合されていることで、清酒酵母は無機リン酸により酸性フォスファターゼの生成が抑制され、野生酵母は酸性フォスファターゼの生産抑制を受けず、これにより、該酸性フォスファターゼによって5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが分解されて青色色素が生成され、該青色色素を視認することで野生酵母の存在を確認でき、これにより、清酒酵母と野生酵母とを識別することができる。
【0054】
即ち、リン酸イオンの濃度を、清酒酵母が酸性フォスファターゼを生産せず、野生酵母が酸性フォスファターゼを生産する濃度に設定して該リン酸イオンを混合し、且つ、培地中に酸性フォスファターゼにより分解されて青色色素を生成する5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltを加えることで、野生酵母が生成する酸性フォスファターゼの有無を簡便に確認することができる。
【0055】
これにより、従来のように、酸性フォスファターゼの有無を確認するための検出試薬を培地の調製とは別に調製する必要がなく、また、該検出試薬を冷蔵保存する手間もなく、その上、培地に該検出試薬を重層するといった煩わしい作業も必要とせずに清酒酵母と清酒酵母以外の酵母とを簡易に識別することができる。
【0056】
次に、本実施例の実験例を以下に示す。
【0057】
第一実験例
第一実験例は、本実施例の培地に、清酒酵母として最も一般的な協会9号酵母(日本醸造協会販売の清酒酵母)を接種し培養した実験例である。
【0058】
先ず、培地を調製した。
【0059】
この培地は、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Salt0.05g、リン酸二水素カリウム(KHPO)1.0g、グルコース10.0g、ペプトン2.0g、酵母エキス1.5g、硫酸マグネシウム7水和物(MgSO・7HO)0.4g、クエン酸1水和物(C・HO)0.27g、寒天30.0g及び水1リットルを混合して形成し、そのpHを4.5に設定した。
【0060】
続いて、培地を沸騰水浴中にて20分間保持し、殺菌した。これにより、培地中に存在する雑菌を死滅させ、酵母を良好に培養して清酒酵母と野生酵母とを識別することができる。
【0061】
続いて、殺菌後の培地をペトリ皿に分注して固化させ、清酒酵母として一般的な協会9号酵母を約10個/ml接種した。
【0062】
続いて、協会9号酵母を接種した培地を、30℃の環境下で3日間培養した。
【0063】
第一実験例によると、培地で生育した酵母は染色されないことが確認された。
【0064】
これにより、協会9号酵母(清酒酵母)は、上記リン酸イオン濃度(約7.3mmol)では酸性フォスファターゼを生産しないといえる。
【0065】
第二実験例
第二実験例は、第一実験例で調製した培地に野生酵母を接種して培養した実験例である。
【0066】
尚、第二実験例で用いた野生酵母は、従来法であるジアゾ染色法によって染色される酵母(即ち、野生酵母。)を採用した。
【0067】
培地に野生酵母を約10個/ml接種し、該野生酵母を30℃の環境下で3日間培養した。
【0068】
第二実験例によると、生育した野生酵母はすべて青色に染色されたことが確認された。
【0069】
これにより、野生酵母は、上記リン酸イオン濃度では、酸性フォスファターゼを生産し、該生産された酸性フォスファターゼによって5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが分解されて青色色素が生成されるといえる。
【0070】
第三実験例
第三実験例は、第一実験例で調製した培地に協会9号酵母及び野生酵母を接種して培養した実験例である。
【0071】
先ず、培地に協会9号酵母と野生酵母とを1:1の割合で接種し、該協会9号酵母及び野生酵母を30℃の環境下で3日間培養した。
【0072】
第三実験例によると、生育した野生酵母はすべて青色に染色され、協会9号酵母は染色されず、これにより、該野生酵母と協会9号酵母との夫々を容易に識別できることが確認された。
【0073】
これにより、本実施例の培地を用いて試料酵母を培養するだけで、清酒酵母と野生酵母とを容易に識別することができるといえる。
【0074】
第四実験例
第四実験例は、清酒の仕込み方法(難波ほか:醸協,73.295(1978))に従って清酒を仕込み、これを試料として使用することで、本実施例の培地(第一実験例で調製した培地)の有効性を検討した実験例である。即ち、本実施例の培地が、清酒製造に用いられる一般的なもろみに対して有効にその作用効果を発揮し得るかどうかを検討した実施例である。
【0075】
第四実験例では、酵母として、協会9号酵母及び従来法で染色が確認された野生酵母であるNO.28(日本醸造協会頒布の酵母)を採用した。
【0076】
先ず、もろみに、協会9号酵母とNO.28(日本醸造協会頒布の酵母)とを、1:3の割合で混合して接種し、15℃の環境下で15日間培養した。5日ごとにもろみを適当に希釈して培地に接種し、30℃の環境下で3日間培養した。
【0077】
第四実験例によれば、野生酵母はすべて青色に染色され、協会9号酵母は染色されず、これにより、該野生酵母と協会9号酵母との夫々を容易に識別できることが確認された。
【0078】
また、図1に見られるように、経時と共に、全体重量が減少していることが確認された。よってもろみは正常に発酵した。故に、本実施例の培地は、清酒製造工程で用いられるもろみに対し、前記作用効果を確実に発揮できることが確認された。
【0079】
また、図2に見られるように、協会9号酵母は、5日目までもろみ中の酵母数が増加してその後減少し、NO.28は、10日目までもろみ中の酵母数が増加してその後減少することが確認された。
【0080】
これにより、適当に希釈したもろみを本実施例の培地に接種して培養するだけで、もろみ中の酵母の種類を識別でき、夫々の酵母の菌数を分けて計測することが可能であるといえる。
【0081】
以上から、本実施例の培地を用いた識別方法は、従来法で必要であった重層による発色操作や試薬の調製,保存が不用となり作業効率が格段に向上できるといえる。
【0082】
近年食品製造においては、安全性、衛生管理等の工程管理に注目が集まっており、清酒関係においても衛生管理の必要性がある。本実施例の培地を用いることにより、清酒製造における汚染酵母の識別が大変簡便に行うことができる。また、最近生産量の増加しているアルコール濃度の低い清酒では、産膜性の汚染酵母による変敗が起こりやすく、このような汚染を防止するための衛生管理にも本実施例の培地は使用可能であり清酒製造現場の近代化に役立つといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例のもろみの発酵経過を示す説明図である。
【図2】 本実施例のもろみ中の酵母数を示す説明図である。

Claims (5)

  1. リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol混合されている状態において、酸性フォスファターゼ活性を示さない清酒製造に使用される清酒酵母と、酸性フォスファターゼ活性を示す清酒酵母以外の酵母とを、後者を青色にすることで両者を識別する培地であって、この培地1リットルあたり少なくともリン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.2g混合され、pHが4.0乃至4.5に設定されていることを特徴とする清酒酵母識別培地。
  2. リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol混合されている状態において、酸性フォスファターゼ活性を示さない清酒製造に使用される清酒酵母と、酸性フォスファターゼ活性を示す清酒酵母以外の酵母とを、後者を青色にすることで両者を識別する培地であって、この培地1リットルあたり少なくともリン酸二水素カリウムが1.0g乃至1.5g、5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.2g混合され、pHが4.0乃至4.5に設定されていることを特徴とする清酒酵母識別培地。
  3. 請求項1,2いずれか1項に記載の清酒酵母識別培地において、前記培地にはグルコースが10.0g乃至20.0g、ペプトンが1.5乃至2.0g、酵母エキスが1.5g乃至2.0g、硫酸マグネシウム7水和物が0.3乃至0.4g混合されていることを特徴とする清酒酵母識別培地。
  4. リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmol混合されている状態において、酸性フォスファターゼ活性を示さない清酒製造に使用される清酒酵母以外の酵母の存在を確認する方法であって、培地として、リン酸イオンが7.3mmol乃至11.0mmolが混合されると共に、前記清酒酵母以外の酵母が生成する酸性フォスファターゼにより分解され且つ色が青色に変化する5−bromo−4−chloro−3−indolyl Phosphate Disodium Saltが0.05g乃至0.2g混合され、pHが4.0乃至4.5の培地を採用し、この培地に清酒製造工程中のもろみを接種し、このもろみの青色への変化を確認することで、前記清酒酵母以外の酵母が前記もろみ中に存在するか否かを確認することを特徴とする清酒酵母以外の酵母の存在確認方法。
  5. 請求項4に記載の清酒酵母以外の酵母の存在確認方法において、前記培地には、グルコース、ペプトン、酵母エキス、硫酸マグネシウム7水和物が混合されていることを特徴とする清酒酵母以外の酵母の存在確認方法。
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