JP4627590B2 - 曲面スクリーン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲面スクリーンにかかり、特に、大画面を得るために画像が投影される曲面スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、投影型の表示装置は、投影装置と被投影材料から構成されている。
投影装置には、スライドプロジェクタや映写装置が利用され、被投影材料には、反射率が高いスクリーンやビル等の壁面が利用されている。この被投影材料へ、投影装置により画像を投影することによって、画像を表示している。このように、画像を表示するには、投影して表示する画像を予め用意しなければならないが、カメラ等の撮影装置の制約上、通常、写真画像等の平面性が高い画像を用いている。
【0003】
投影光学系は平面画像を基にするので、被投影材料も平面的な形状が要求される場合が多い。従って、略平面的なスクリーンや壁面へ写真画像等を投影している。このように、略平面的なスクリーンや壁面へ画像を投影する場合に、臨場感を増大させるには、被投影領域を増大させ、大画像を投影することが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、大画像を投影するためには、投影側から正確な緯度及び経度が設定されていなければならない。従って、スクリーンを組み立てたり、投影装置の位置を設定したりするときには、その組立や設定を実際の画像やテストパターン画像を表示させながら、調整する必要があり、調整作業が煩雑かつ長時間を要することになる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、画像を投影するスクリーン等の被投影対象面を容易に設定することができる曲面スクリーンを得ることが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の曲面スクリーンは、焦点を有する曲面形状に形成されかつ、被投影側に前記焦点を通過する直線から前記焦点を通過しかつ緯度方向及び経度方向の少なくとも一方向に略一定の角度間隔になる各直線と被投影側の曲面とが交差する複数の位置に、光の照射により発光する発光媒質が形成された被投影対象部材を備えたことを特徴とする。
【0007】
画像を曲面に表示するためには、その対象となる曲面スクリーンを正確に設置しなければならない。本発明の曲面スクリーンは、焦点を有する曲面形状に形成された被投影対象部材を備えている。従って、その焦点位置にユーザの視点を位置するようにすれば、ユーザの視線方向をその焦点からの立体角として捉えることができ、画像として立体角を考慮して投影させることで、ユーザの視線方向に沿った画像を提示できる。曲面スクリーンの被投影対象部材には、発光媒質が形成されている。この発光媒質は、被投影側に焦点から略一定の立体角の直線が到達すべき複数の位置に形成されており、光の照射によって発光する。従って、被投影対象部材で発光する位置は、焦点から略一定の立体角方向の複数の輝点になる。曲面スクリーンの位置や向きを調整することにより、これらの輝点の間隔や隣り合う輝点により生じる立体角を調整することで、ユーザの視点位置を焦点に設定したとき、その視点位置に対して曲面スクリーンを容易に調整することができる。
【0008】
前記発光媒質は、緯度線、経度線または格子状の緯度線及び経度線が発光されるように、前記緯度方向に略一定の角度間隔になる隣り合う直線を含む面、及び前記経度方向に略一定の角度間隔になる隣り合う直線を含む面の少なくとも一方の面と被投影側の曲面とが交差する複数の曲線位置に形成することができる。
【0009】
前記では、被投影側に焦点から略一定の立体角の直線が到達すべき複数の位置に発光媒質を形成することで、その発光は、輝点になる。ところが、複数の点が散在するのでは、調整を行うオペレータに分かりづらい場合がある。そこで、略一定の立体角の直線が少なくとも一方向に連続して到達すべき複数の曲線位置に発光媒質を形成する。すなわち、例えば、焦点を有する曲面形状として球面形状を想定すると、所謂、緯度線及び経度線の少なくとも一方を提示できる。これによって、焦点から一定の立体角を、線分で提示でき、容易に把握することができる。
【0010】
また、前記発光媒質は、紫外線照射により発光するようにしてもよい。
【0011】
曲面スクリーンは画像を表示するためのものであるので、投影によって画像を表示するときに、前記発光媒質の発光はかならずしも必要ではない。そこで、一般に目視しづらい紫外線照射により、発光媒質が発光するようにすれば、通常画像表示のときに用いられる発熱光源等の可視光線による光の照射では発光せずに、画像のみを提示することができる。すなわち、曲面スクリーンの調整時のみ紫外線照射により発光媒質が発光するように用いることができる。
【0012】
前記被投影対象部材は、予め定めた大きさでかつ、前記曲面形状で形成された部分部材を複数接続して形成することができる。
【0013】
本発明の曲面スクリーンでは、一体構造で形成することも可能であるが、大型の曲面スクリーンになると、製造が困難である。そこで、曲面スクリーンを複数のパーツに分割して組み立てることにより、容易に大型の曲面スクリーンを形成することができる。この各々のパーツは、部分部材として、予め定めた大きさでかつ、前記曲面形状で形成することで、複数を接続すれば、大型の曲面スクリーンを形成することができる。この場合、被投影対象部材の発光媒質の発光によって、焦点から一定の立体角を、容易に把握することができるので、組立も容易となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。本実施の形態は、広視野角視覚シミュレータに本発明を適用したものである。
【0015】
展示会やイベント会場などのプレゼンテーションを行う空間では、画像を提示させることが多く、その画像には、写真画像やCG等の二次元画像が用いられることが多い。この場合、スクリーン等への平面的な表示は、単に二次元画像の拡大であり、視覚的な臨場感を伴う画像表示を得るものではない。そこで、その視覚的な臨場感という感覚を考慮することを意図して、大画面の表示には、二次元画像を曲面へ投影して表示させることが有効であるという知見を得た。本実施の形態では、ユーザの視線で画像を視覚することを想定して、二次元画像を投影するための演算に反映させている。
【0016】
〔広視野角視覚シミュレータ〕
図1に示すように、本実施の形態の広視野角視覚シミュレータ10は、曲面スクリーン12、6つの液晶プロジェクタ14、16、18、20、22、24、ブレンディング・ユニット26及び画像処理装置28を備えている。曲面スクリーン12は移動可能であるが、本実施の形態では、地面に固定されている。また、6つの液晶プロジェクタ14〜24は、フレーム30によって固定されており、そのフレーム30は地面に固定されている。6つの液晶プロジェクタ14〜24は、ブレンディング・ユニット26に接続されており、ブレンディング・ユニット26は画像処理装置28に接続されている。
【0017】
曲面スクリーン12は、予め定めた曲面形状をしており、本実施の形態では、球面の一部を抽出した曲面を採用する。球面は、その中心点が焦点であり、その焦点位置がユーザOPの視点位置となるように、曲面スクリーン12の形状を定める。曲面スクリーン12は、球面に限定されるものではなく、焦点を有する曲面であればよい。また、焦点は1つに限定されるものではなく、複数あってもよい。
【0018】
また、画像処理装置28には、表示するための画像の基となる基準画像の画像データが記憶されており、記憶された画像データを画像処理して、ブレンディング・ユニット26へ出力する。ブレンディング・ユニット26は、6つの液晶プロジェクタ14〜24で投影される画像を、曲面スクリーン12上で合成するための処理を実施するものであり、各液晶プロジェクタ用の画像データに変換した後に、液晶プロジェクタ14〜24の各々に出力する。これによって、曲面スクリーン12には6つの液晶プロジェクタ14〜24からの各々の画像が投影される。
【0019】
上記構成による広視野角視覚シミュレータの各部の詳細、及び広視野角視覚シミュレータの組立時に用いる装置の詳細を説明する。
【0020】
〔液晶プロジェクタ〕
液晶プロジェクタ14〜24は、縦横の6箇所に設置される(図1参照)。上下で分類すると、上段には液晶プロジェクタ14、16、18、下段には液晶プロジェクタ20、22、24が設置され、左右で分類すると、左側には液晶プロジェクタ14、20、中側には液晶プロジェクタ16、22、右側には液晶プロジェクタ18、24が設置されている。
【0021】
図2に示すように、本実施の形態の広視野角視覚シミュレータ10では、ユーザOPがスクリーン12を視覚可能な視界(視点位置Oを焦点とする立体角)が、ユーザOPの視覚範囲Sとして規定する。スクリーン12を上下方向で考えると、中側の液晶プロジェクタ16は、スクリーン12の下部の投影領域を担当し、液晶プロジェクタ22は、スクリーン12の上部の投影領域を担当する。すなわち、液晶プロジェクタ16、22の投影軸は交差し、上部に設置される液晶プロジェクタ16がスクリーン12の下部の投影領域Sdcを投影し、下部に設置される液晶プロジェクタ22がスクリーン12の上部の投影領域Sucを投影する。これら液晶プロジェクタ16、22の投影領域はスクリーン12の中央部で重複するように設定されている。
【0022】
また、液晶プロジェクタ16、22の投影軸は、ユーザOPの視線方向と異なる方向に設定されている。これは、液晶プロジェクタによる投影がユーザOPの影になることを避けるためである。すなわち、ユーザが視認位置から画像を視認する場合、その視認する画像は視認方向に沿う方向で投影されることが望ましいが、反射型の被投影対象曲面へ投影するときにはユーザにかぶりが生じる。これを避けるため、視認位置以外の位置から投影する。
【0023】
同様に、左側の液晶プロジェクタ14がスクリーン12の下部の投影領域Sulを担当しかつ液晶プロジェクタ20がスクリーン12の上部の投影領域Sulを担当する(図4参照)。また、右側の液晶プロジェクタ18がスクリーン12の下部の投影領域Surを担当しかつ液晶プロジェクタ24がスクリーン12の上部の投影領域Surを担当する。そして、これら液晶プロジェクタ14、20及び18、24の投影領域はスクリーン12の中央部で重複するように設定される。
【0024】
図3に示すように、スクリーン12を左右方向で考えると、中側の液晶プロジェクタ16はスクリーン12の中央部の投影領域を担当し、左右側の液晶プロジェクタ14、18は、スクリーン12の右部、左部の投影領域を担当する。すなわち、液晶プロジェクタ14、16、18の投影軸は交差し、中央部に設置される液晶プロジェクタ16がスクリーン12の中央部の投影領域Sdcを投影し、左部に設置される液晶プロジェクタ14がスクリーン12の右部の投影領域Sdrを投影し、右部に設置される液晶プロジェクタ18がスクリーン12の左部の投影領域Sdlを投影する。これら液晶プロジェクタ14、16、18の投影領域はスクリーン12上で隣り合う投影領域が重複されるように設定されている。
【0025】
同様に、液晶プロジェクタ20、22、24の投影軸は交差し、中央部に設置される液晶プロジェクタ22がスクリーン12の中央部の投影領域Sucを投影し、左部に設置される液晶プロジェクタ20がスクリーン12の右部の投影領域Surを投影し、右部に設置される液晶プロジェクタ24がスクリーン12の左部の投影領域Sulを投影する。これら液晶プロジェクタ20、22、24の投影領域はスクリーン12上で隣り合う投影領域が重複されるように設定される。
【0026】
図4に、上記説明したスクリーン12上の投影領域の分割状態を示した。液晶プロジェクタ14は、スクリーン12の右下部の投影領域Sdrを投影する。この投影領域Sdrは、垂直方向の境界線40と水平方向の境界線32とで分割した領域で規定され、上部投影領域との重複領域Br、左部投影領域との重複領域Bdr、上部と左斜上部と左部との投影領域との重複領域Bbrを含んでいる。
液晶プロジェクタ16は、スクリーン12の中央下部の投影領域Sdcを投影する。この投影領域Sdcは、垂直方向の境界線36、42と水平方向の境界線32とで分割した領域で規定され、上部投影領域との重複領域Bc、左部投影領域との重複領域Bdl、右部投影領域との重複領域Bdr、上部と左斜上部と左部との投影領域との重複領域Bbl、上部と右斜上部と右部との投影領域との重複領域Bbrを含んでいる。液晶プロジェクタ18は、スクリーン12の左下部の投影領域Sdlを投影する。この投影領域Sdlは、垂直方向の境界線38と水平方向の境界線32とで分割した領域で規定され、上部投影領域との重複領域Bl、右部投影領域との重複領域Bdl、上部と右斜上部と右部との投影領域との重複領域Bblを含んでいる。
【0027】
同様に、液晶プロジェクタ20は、垂直方向の境界線40と水平方向の境界線34とで分割したスクリーン12の右上部の投影領域Surを投影するもので、重複領域Br,Bur,Bbrを含んでいる。液晶プロジェクタ22は、垂直方向の境界線36、42と水平方向の境界線34とで分割したスクリーン12の中央上部の投影領域Sucを投影するもので、重複領域Bc,Bul,Bur,Bbl,Bbrを含んでいる。液晶プロジェクタ18は、垂直方向の境界線38と水平方向の境界線34とで分割したスクリーン12の左上部の投影領域Sulを投影するもので、重複領域Bl,Bul,Bblを含んでいる。
【0028】
〔曲面スクリーン〕
図5に示すように、球面形状に形成された大画面の曲面スクリーン12を形成するため、本実施の形態では、各々球面の一部を抽出した6個の曲面パーツ12ul,12uc,12ur,12dl,12dc,12drを接続させて組立可能に構成する。曲面スクリーン12を曲面パーツ12ul〜12drで分離構成するのは、運搬を容易としかつ組み立てをも容易とするためである。なお、本実施の形態では、6個の曲面パーツを接続して曲面スクリーンを形成する場合を説明するが、分割数は6個に限定するものではなく、分割することなく、1つの曲面スクリーンを形成してもよく、2個以上の複数の曲面パーツを接続して曲面スクリーンを形成してもよい。
【0029】
図6に示すように、曲面スクリーン12は、ベース材12Pと、そのベース材12Pの表面(曲面の凹側)に塗布された塗布層12Qから構成されている。塗布層12Qには、紫外線蛍光インクが含まれており、紫外線が照射されることで、紫外線蛍光インクが蛍光する構成とされている。この紫外線照射には、所謂ブラックライトによる照射が可能である。本実施の形態では、紫外線蛍光インクが縦横一定間隔となるように格子状に塗布されている。紫外線蛍光インクは、曲面パーツを球状に組み立てたときに曲面スクリーン12の焦点から一定の立体角毎に線が出現するように、すなわち一定の緯度経度の線分が出現するように、格子状に塗布されている。従って、曲面スクリーン12には、一般的な電球や蛍光灯の照明ではなにも出現しないが、紫外線ランプ48による紫外線の照射によって、緯度線44、経度線46が格子状に出現する。
【0030】
なお、本実施の形態では、格子状に出現する緯度線44、経度線46を用いて説明するが、連続した線分でなくともよい。すなわち、球面の緯度及び経度が表現できればよく、十字線でもよいし、緯度線や経度線を別々に交差することなく出現させるように紫外線蛍光インクを塗布してもよい。また、球面の全ての面にわたって出現する必要もない。すなわち、詳細は後述するが、曲面パーツを組み立てるとき(球面スクリーンを形成するとき)に、各曲面パーツの向きや、曲面スクリーンの全体の位置が把握できればよく、点や所定形状のマークを塗布してもよいし、主要部のみの紫外線蛍光インク塗布でもよい。
【0031】
また、緯度線44及び経度線46の何れか一方のみの塗布でも良く、何れか一方を点や所定形状のマークを散在させ、他方を線分で提示してもよい。
【0032】
〔立体角表示装置〕
次に、立体角表示装置50について説明する。立体角表示装置50は、曲面スクリーン12を組み立てるとき、または位置調整するときに用いるものであり、画像を表示するときには特に必要とするものではない。
【0033】
図7に示すように、立体角表示装置50は、ハロゲンランプ等の一般的な白熱光源52を備えており、その光源52は半球状のカバー54の中心(焦点)位置に固定されている。この白熱光源は点光源として機能するものであり、アーク灯等の発光管を用いることができる。カバー54は台座56に固定されている。台座56の下部には、移動装置55が取り付けられている。移動装置55は、鉛直方向(図7の矢印Z方向)の移動調整、水平方向(図7の矢印X方向)の移動調整、前後方向(図7の矢印Y方向)の移動調整、及びこれらの各方向を軸とした回転方向(図7の矢印Rx,Ry,Rz方向)の移動調整が可能とされる構成である。なお、これらの移動方向は、少なくとも1方向を備えるものであってもよい。この構成により、光源52及びカバー54の位置を自由に調整することができる。すなわち、ユーザOPの視点位置Oを自由に設置することができる。
【0034】
半球状のカバー54の表面または裏面には、光源52から予め定めた一定の立体角による光線が射出されるように、すなわち、等立体角光線を射出するための明暗パターンが設けられている。
【0035】
例えば、図8(A)に示すように、半球状のカバー54の表面または裏面には、一定の緯度経度の線分を形成し、その交点位置から少なくとも光を射出するために、スリットが形成されている。半球状のカバー54は半径50cmの球体の一部から構成され、カバー54に形成されるスリットのパターンの一例は、図8(B)に示すように、その内側が明部で外側が暗部となる十字形状のパターン54Aを採用することで、緯度線と経度線の交点を表現できる。また、図8(C)に示すように、その内側が明部で外側が暗部となる円形状のパターン54Bを採用することもできる。以下の説明では、円形状のパターン54Bが複数形成された明暗パターンが、半球状のカバー54の表面または裏面に設けられた例を説明する。
【0036】
このように、明暗パターンを半球状のカバー54の表面または裏面に形成することで、緯度線と経度線の交点位置である予め定めた一定の立体角による光線が射出される。従って、光源52を、ユーザOPの視点位置に設置し、光源52を点灯することで、ユーザOPの一定の立体角による視線方向を光線として表示できる。これによって、図9に示すように、曲面スクリーン12上には、光源52から射出された光のうち、円形状のパターン54Bを通過した円形の輝点58が出現する。曲面スクリーン12上に出現した輝点58は、ユーザOPの一定の立体角による視線方向の光線の延長線上の位置に出現する。
【0037】
なお、上記では、予め定めた一定の立体角で少なくとも光線が射出される明暗パターンを説明したが、上記の明暗を逆転させ、光が射出されない部分で予め定めた一定の立体角を表現するようにしてもよい。すなわち、半球状のカバー54を、透明材質(例えばアクリル)で形成し、一定の立体角の位置に、図8(B)または図8(C)に示すパターンの不透明部を形成することで、明暗パターンを構成することができる。
【0038】
〔曲面スクリーンの調整〕
次に、立体角表示装置50を用いた曲面スクリーン12の調整を説明する。まず、ユーザOPの視点位置O(図1)を中心として、6個の曲面パーツ12ul〜12drを組立て、曲面スクリーン12を形成する。このときには、紫外線ランプ48及び立体角表示装置50(白熱光源52)を点灯する。従って、曲面スクリーン12上には、紫外線ランプ48による紫外線の照射によって緯度線44及び経度線46が格子状に出現すると共に、光源52から射出された光のうち円形状のパターン54Bを通過した円形の輝点58が出現する。
【0039】
図10に示すように、組立当初は、曲面スクリーン12の位置とユーザOPの視線方向との相対関係が成立しないので、ユーザOPの一定の立体角による視線方向の光線の延長線上にある輝点58と、緯度線44及び経度線46の交点とは一致しない。そこで、ユーザOPの視線方向、すなわち立体角表示装置50により出現した輝点58を基準として、図11に示すように、6個の曲面パーツ12ul〜12drの設置位置(左右、上下、前後、回転)を調整し、輝点58を緯度線44及び経度線46の交点と一致させる。
【0040】
このようにして、曲面スクリーン12の位置をユーザOPの視線方向との相対関係が成立するように調整する。すなわち、ユーザOPの視線方向に合致した緯度経度で、曲面スクリーン12の曲面が位置するように設定される。従って、曲面スクリーン12の焦点は、ユーザOPの視点Oに設置される。
【0041】
〔ブレンディング・ユニット〕
次に、ブレンディング・ユニット26を説明する。ブレンディング・ユニット26は、6つの液晶プロジェクタ14〜24から投影される画像の各々を、曲面スクリーン12上で画像を隙間なく提示するためのユニットである。本実施の形態では、ブレンディング・ユニット26は、隣接する画像の一部を重複させつつ投影して、その重複領域の輝度を調整することで、曲面スクリーン12上で隙間なく画像を表示させるためのものである。そこで、ブレンディング・ユニット26において設定する、投影画像の明るさ分布について説明する。
【0042】
図12は、1つの液晶プロジェクタから投影する画像の明るさ分布を模式的に示したものである。この液晶プロジェクタから投影する画像の明るさ分布は、その周囲(八方)に他の画像が投影されることを想定している。詳細には、液晶プロジェクタの投影画像の投影領域60は、ブレンド境界線62、63、64、65により分割された、部分領域Pc,Pcu,Pcd,Pl,Plu,Pld,Pr,Pru,Prdから形成される。
【0043】
部分領域Pcは、周囲の液晶プロジェクタからの投影画像が重複することがない単一の投影画像の領域である。従って、部分領域Pcの投影画像は、入力画像の明るさを100%そのまま維持して投影することになる。この部分領域Pcに対して、上下方向について明るさを考えると、部分領域Pcuは、上部の液晶プロジェクタからの投影画像を重複させるための領域であり、部分領域Pcuの投影画像は、入力画像の明るさを予め定めた勾配の分布となる特性で投影することになる。また、部分領域Pcdは、下部の液晶プロジェクタからの投影画像を重複させるための領域であり、部分領域Pcdの投影画像は、入力画像の明るさを予め定めた勾配の分布となる特性で投影することになる。従って、上下方向の明るさ特性は、図12の左側部位に示した特性66に設定している。
【0044】
部分領域Pl,Plu,Pld,Pr,Pru,Prdについては、上下方向の明るさについて見れば、部分領域Pc,Pcu,Pcdと同様である。なお、部分領域Pluは、上部の液晶プロジェクタからの2つの投影画像を重複させるための領域であることを想定すると、投影画像を重複させたときの明るさが、本来の投影画像の明るさになる値にすればよい。例えば、部分領域Pcuの明るさ分布の上限値を重複画像数で除算した値にすればよい。部分領域Pld,Pru,Prdについても同様のため、説明を省略する。
【0045】
次に、部分領域Pcに対して、左右方向について明るさを考えると、部分領域Plは、左部の液晶プロジェクタからの投影画像を重複させるための領域であり、部分領域Plの投影画像は、入力画像の明るさを予め定めた勾配の分布となる特性で投影することになる。また、部分領域Prは、右部の液晶プロジェクタからの投影画像を重複させるための領域であり、部分領域Prの投影画像は、入力画像の明るさを予め定めた勾配の分布となる特性で投影することになる。従って、左右方向の明るさ特性は、図12の下側部位に示した特性68に設定している。
【0046】
部分領域Plu,Pcu,Pruと,Pld,Pcd,Prdとについては、左右方向の明るさについて見れば、部分領域Pl,Pc,Prと同様である。なお、部分領域Pluは、左部の液晶プロジェクタからの2つの投影画像を重複させるための領域であることを想定すると、投影画像を重複させたときの明るさが、本来の投影画像の明るさになる値にすればよい。例えば、部分領域Plの明るさ分布の上限値を重複画像数で除算した値にすればよい。部分領域Pld,Pru,Prdについても同様のため、説明を省略する。
【0047】
上述の上下方向の明るさ分布と、左右方向の明るさ分布を合成することによって、各部分領域の明るさ特性を決定できる。従って、液晶プロジェクタ14〜24の各々について、隣接する液晶プロジェクタの位置及び個数から、上記明るさ分布を定めることができる。このように、ブレンディング・ユニット26によって、投影画像の明るさ分布を設定して、その設定された明るさ分布で液晶プロジェクタ14〜24の各々から画像を投影すれば、曲面スクリーン12上では画像が隙間なく提示されると共に、重複領域における明るさも他の投影領域と同様の分布として提示することができる。
【0048】
なお、ブレンディング・ユニット26は、液晶プロジェクタ毎に、明るさ分布(特性66、68)を予め求めて記憶したものを用いても良く、その明るさ分布(特性66、68)を、微調整する機能を追加してもよい。
【0049】
また、ブレンディング・ユニット26は、液晶プロジェクタ14〜24の各々から投影する投影画像の投影位置を調整する調整機能を有することができる。この調整機能は、曲面スクリーン12上における投影画像の位置を調整するものである。
【0050】
上記では、線形の明るさ特性について説明したが、線形特性に限定されるものではなく、関数により定まる曲線や折れ線、それらの組み合わせであってもよい。また、ブレンド境界線は、直線に限定されるものではなく、関数により定まる曲線や折れ線、それらの組み合わせであってもよい。
【0051】
〔画像処理装置〕
画像処理装置28には、表示するための画像の基となる基準画像(平面的な二次元画像)の画像データが記憶されており、記憶された画像データを画像処理して、ブレンディング・ユニット26へ出力する。画像処理装置28では、曲面スクリーン12に表示される画像をユーザの視線で視覚することを想定して、記憶している平面的な二次元画像の画像データを、ユーザの視線と異なる方向から投影するための投影画像に変換処理するものである。なお、画像処理装置28は、以下に説明する機能以外に、輝度調整、色調整、及びトリミング調整等の所謂画像処理として知られる一般的な機能を含むことができる。
【0052】
図13を参照して、まず、変換処理のための初期設定である、液晶プロジェクタとユーザの位置関係を、液晶プロジェクタ16、22を代表例として説明する。曲面スクリーン12は、その焦点位置O(球の中心点)にユーザOPの視点位置が位置することを想定して設置されている。液晶プロジェクタ16は、曲面スクリーン12の下方の投影を担当するものであり、ユーザOPの視界のうち下方(曲面スクリーン12の下方)を平面近似的に設定した平面スクリーン(以下、仮想スクリーン)70を目視することを仮定する。仮想スクリーン70に画像を投影するには、液晶プロジェクタ16は、仮想スクリーン70の上端70Aを中心とした円周上でかつ上端70Aから仮想スクリーン70に垂直な方向の位置16pに、設置する。このようにすることで、液晶プロジェクタ16から曲面スクリーン12の投影領域(仮想スクリーン70)まで画像が投影される空間と、視認位置との錯綜が回避できる。
【0053】
同様に、液晶プロジェクタ22は、曲面スクリーン12の上方の投影を担当するものであり、ユーザOPの視界のうち上方(曲面スクリーン12の上方)を平面近似的に設定した仮想スクリーン72を目視することを仮定し、仮想スクリーン72の上端72Aを中心とした円周上でかつ上端72Aから仮想スクリーン72に垂直な方向の位置22pに、設置する。このようにすることで、液晶プロジェクタ22から曲面スクリーン12の投影領域(仮想スクリーン72)まで画像が投影される空間と、視認位置との錯綜が回避できる。なお、液晶プロジェクタ18、20、24、26も同様のため、説明を省略する。
【0054】
次に、画像変換の基本原理について説明する。
図14に示すように、液晶プロジェクタ22は、曲面スクリーン12からの距離Qx、高さQz、水平方向の移動量Qy、投影方向の角度Qq、投影軸の回転角Qrの各々をパラメータとして設定可能である。液晶プロジェクタ22から、曲面スクリーン12として仮想的に近似した仮想スクリーン72へ画像を投影するものとして、各値を初期設定値に設定する。液晶プロジェクタ22から仮想スクリーン72へ画像を投影することを仮定すると、液晶プロジェクタ22からの投影方向80(図14の一点鎖線で示した投影線の方向)に投影される仮想スクリーン72上の画素76は、実際には、曲面スクリーン12上に画素74として投影される。
【0055】
従って、ユーザOPは、画素74を目視することになるので、視線方向82(図14の実線で示した視線方向)と仮想スクリーン72との交点78に画素を形成すればよい。そこで、画素74を目視するための視線方向82の緯度θ、経度φを求めることにより極座標を算出する。この極座標から交点78の座標を求める。これによって、仮想スクリーン72上の画素76から交点78への移動量を求めることができる。これらの処理を液晶プロジェクタ22からの投影方向の全て、すなわち全ての画素の座標について求めることにより、平面的な二次元画像の画像データを、ユーザの視線方向に合致した画像として投影するための画像データに変換する変形フィルタ(ジオメトリフィルタ)を求めることができる。
【0056】
上記の変形フィルタによって、平面スクリーンに格子状に画像を表示する画像データは、液晶プロジェクタの投影領域に対応して、変形される。以下の説明では、上記変形フィルタを用いて画像を変形させた画像データを得る変換処理を、ジオメトリ変換という。例えば、図15に示すように、液晶プロジェクタの投影画像の投影領域60は、投影方向の極座標に応じて変形されることになる。
【0057】
なお、上記では、隣接する画像の一部を重複させるブレンディング・ユニット26と、基準画像(平面的な二次元画像)の画像データを投影画像に変換する画像処理装置28とを、各々別個に構成した場合を説明したが、本発明は、この構成に限定されるものではない。すなわち、ブレンディング・ユニット26は、隣接する画像の一部を重複させつつ投影するときにその重複領域の輝度を調整して曲面スクリーン12上で隙間のない画像を表示させるために各画像を調整し、画像処理装置28は、曲面スクリーン12に表示すべき基準画像(平面的な二次元画像)の画像データを、ユーザの視線と異なる方向から投影する投影画像に変換する(ジオメトリ変換)。
【0058】
これらのブレンディング・ユニット26及び画像処理装置28は、1つの装置で上記の機能を兼ね備えるように構成してもよく、また機能を分散させてもよい。機能を分散させる場合には、ブレンディング・ユニット26に、上記ジオメトリ変換の機能を追加すればよい(ブレンディング・ジオメトリ・ユニット)。この場合、画像データを記憶するメモリは、ブレンディング・ユニット26に備えても良く、画像処理装置28に備えても良い。
【0059】
また、ブレンディング・ユニット26及び画像処理装置28は、専用の装置を設けて構成してもよく、上記機能をソフトウェアで構築し、コンピュータによって実行されるように構成してもよい。
【0060】
〔画像表示〕
次に、本実施の形態の広視野角視覚シミュレータ10において、曲面スクリーン12へ、ブレンディング・ユニット26及び画像処理装置28で処理された画像を、6つの液晶プロジェクタ14〜24から投影する過程を説明する。なお、ここでは、画像処理装置28で実行される処理ルーチンの流れに従って説明する。
【0061】
図16に示すように、広視野角視覚シミュレータ10の電源が投入されると、画像処理装置28では、ステップ100へ進み、各種パラメータの初期値を読み取る。この初期値には、液晶プロジェクタの位置関係、液晶プロジェクタの各々において曲面スクリーン12上に投影すべき投影領域の位置関係がある。なお、ブレンディング・ユニット26では、液晶プロジェクタの各々の明るさ分布の特性が読み取られるものとする。
【0062】
次のステップ102では、液晶プロジェクタ14〜24の各々について、ステップ100で読み取った初期値が画像変換のために設定され、次のステップ104において、曲面スクリーン12に投影するための画像データを読み取る。このステップ104で読み取る画像データは平面的な二次元画像の画像データである。次のステップ106では、上記ステップ104で読み取った画像データを、ユーザOPの視線方向に合致した画像として提示するための変換処理を実行する。
【0063】
ステップ106の変換処理は、液晶プロジェクタ14〜24の各々について定まる投影領域に投影する投影画像を、画像データから抽出し、その抽出した画像データすなわち各投影画像の画像データについて実行される。この変換処理は、上述の変形フィルタ(ジオメトリフィルタ)によって、画素毎に座標変換する処理である。この処理により、曲面スクリーン12に表示される画像として、平面的な二次元画像の画像データをユーザの視線と異なる方向から投影するときに、ユーザの視線方向に合致した投影画像に変換されることになる。
【0064】
次のステップ108では、ブレンディング・ユニット26から、隣接する液晶プロジェクタの位置及び個数から定まる、液晶プロジェクタ14〜24の各々の明るさ分布を読み取ることで、投影画像の各々の画像データの明るさ(輝度)を設定する。次のステップ110では、液晶プロジェクタ14〜24の各々に画像データを出力して、曲面スクリーン12へ画像を表示する。なお、ステップ108の処理は、ブレンディング・ユニット26によって行っても良い。
【0065】
このように、本実施の形態では、曲面スクリーン12に表示される画像として、平面的な二次元画像の画像データをユーザの視線と異なる方向から投影するときに、ユーザの視線方向に合致した投影画像に変換される。そして、各々の投影画像の明るさ分布を設定して、その設定された明るさ分布で液晶プロジェクタ14〜24の各々から画像を投影するので、ユーザの視線方向に合致した画像が曲面スクリーン12上に表示されると共に、曲面スクリーン12上では画像が隙間なく提示され、重複領域における明るさも他の投影領域と同様の分布として提示することができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、焦点を有する曲面形状に形成された被投影対象部材には、被投影側に焦点から略一定の立体角の直線が到達すべき複数の位置に発光媒質が形成されているので、光の照射による発光で、焦点から略一定の立体角方向の位置が輝くことになり、曲面スクリーンの位置や向きを容易に調整することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる広視野角視覚シミュレータの概念構成を示すブロック図である。
【図2】広視野角視覚シミュレータの液晶プロジェクタによる鉛直方向の投影領域を説明するための概念図である。
【図3】広視野角視覚シミュレータの液晶プロジェクタによる水平方向の投影領域を説明するための概念図である。
【図4】スクリーン12に投影する液晶プロジェクタの投影領域の分割状態を示したイメージ図である。
【図5】曲面スクリーンを形成するため、接続による組立可能な構成の曲面パーツの説明図である。
【図6】紫外線照射で緯度線及び経度線が出現する曲面スクリーンの構成図である。
【図7】立体角表示装置の概念構成を示すブロック図である。
【図8】立体角表示装置で等立体角光線を射出するために半球状のカバーに形成された明暗パターンを説明するためのイメージ図である。
【図9】曲面スクリーン上に立体角表示装置で等立体角光線による輝点が表示される状態を説明するためのイメージ図である。
【図10】曲面スクリーンの位置調整前の状態を説明するためのイメージ図である。
【図11】曲面スクリーンの位置調整後の状態を説明するためのイメージ図である。
【図12】ブレンディング・ユニットで設定する投影画像の明るさ分布の説明図である。
【図13】液晶プロジェクタとユーザの位置関係を示すイメージ図である。
【図14】ユーザの視線方向に合致した画像を投影するための変形フィルタを説明するための説明図である。
【図15】変形フィルタにより格子状画像が変形される状態を示したイメージ図である。
【図16】画像処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 広視野角視覚シミュレータ
12 曲面スクリーン(曲面スクリーン)
12P ベース材(被投影対象部材)
12Q 塗布層(被投影対象部材、発光媒質)
12ul〜12dr 曲面パーツ
14、16、18、20、22、24 液晶プロジェクタ
26 ブレンディング・ユニット
28 画像処理装置
44 緯度線(曲線位置に形成された発光媒質)
46 経度線(曲線位置に形成された発光媒質)
50 立体角表示装置
52 光源
54 カバー
54A,54B パターン
55 移動装置
58 輝点
O 視点位置(焦点位置)
Claims (4)
- 焦点を有する曲面形状に形成されかつ、被投影側に前記焦点を通過する直線から前記焦点を通過しかつ緯度方向及び経度方向の少なくとも一方向に略一定の角度間隔になる各直線と被投影側の曲面とが交差する複数の位置に、光の照射により発光する発光媒質が形成された被投影対象部材を備えたことを特徴とする曲面スクリーン。
- 前記発光媒質は、緯度線、経度線または格子状の緯度線及び経度線が発光されるように、前記緯度方向に略一定の角度間隔になる隣り合う直線を含む面、及び前記経度方向に略一定の角度間隔になる隣り合う直線を含む面の少なくとも一方の面と被投影側の曲面とが交差する複数の曲線位置に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の曲面スクリーン。
- 前記発光媒質は、紫外線照射により発光することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲面スクリーン。
- 前記被投影対象部材は、予め定めた大きさでかつ、前記曲面形状で形成された部分部材を複数接続して形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の曲面スクリーン。
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