JP4627259B2 - 鉄道車両の騒音低減装置とその騒音低減方法 - Google Patents
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鉄道車両では、一般に、空調機器用及び電動機冷却用の吸気口及び排気口が車両の進行方向左右側に多数配置されており、これらの吸気口及び排気口にはルーバが装着されている。図9(A)に示すように、例えば、東北新幹線のように左側通行の車両102が下り線(東京方面から仙台方面)101Aを走行する場合には、進行方向左側(一般に山側)の吸気口104Aから空気を吸気して、進行方向右側(一般に海側)の排気口104Bからこの空気を排出している。一方、図9(B)に示すように、車両102が上り線(仙台方面から東京方面)101Bを走行する場合にも、進行方向右側(一般に山側)の吸気口104Aから空気を吸気して、進行方向左側(一般に海側)の排気口104Bからこの空気を排出している。このように従来の鉄道車両では、通常、下り線101Aを走行する場合と上り線101Bを走行する場合に空気の出入口を変更しておらず、常に一方の側(例えば山側)から空気を吸気し他方の側(例えば海側)からこの空気を排出している。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1に示すように、吸気口(3A,3B)及び排気口(4A,4B)を有する鉄道車両(2)が発生する騒音を低減する鉄道車両の騒音低減装置であって、前記吸気口及び前記排気口をそれぞれ開閉する開閉部(6)と、前記開閉部を開閉動作させる制御部(7)とを備え、前記制御部は、前記鉄道車両が複線(1A,1B)を左側通行するときには、進行方向右側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出するように前記開閉部を開閉動作させ、前記鉄道車両が複線を右側通行するときには、進行方向左側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出するように前記開閉部を開閉動作させることを特徴とする鉄道車両の騒音低減装置(5)である。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る移動体の騒音低減装置を概略的に示す構成図であり、図1(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図1(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
図1に示す沿線W1,W2は、軌道1に沿って存在する土地(領域)であり、軌道1を挟み二つに分かれて存在する。沿線W1は、下り線1Aの中心線から近い側(上り線1Bの中心線から遠い側)の土地であり、例えば東北新幹線の場合には下り線1Aを東京方面から仙台方面に向かう車両2の進行方向左側(山側)の土地である。沿線W2は、上り線1Bの中心線から近い側(下り線1Aの中心線から遠い側)の土地であり、例えば東北新幹線の場合には上り線1Bを仙台方面から東京方面に向かう車両2の進行方向左側(海側)の土地である。
図1に示す開閉部6は、吸気口3A,3B及び排気口4A,4Bを開閉する装置であり、吸気口3A,3B及び排気口4A,4Bにそれぞれ設置されている。開閉部6は、いずれも同一構造であり、以下では図2に示す吸気口3Aに配置された開閉部6について説明する。開閉部6は、図2に示すように、ルーバ6aと、回転軸6bと、リンク部材6c,6dと、駆動部6eなどを備えている。
図1(A)に示すように、下り線1Aを車両2が走行するときには、吸気口3A及び排気口4Bが開放し吸気口3B及び排気口4Aが閉鎖して、吸気口3Aから取り入れられた空気が排気口4Bから排出する。一般に、下り線1Aを車両2が走行するときには、この下り線1Aに近い沿線W1側がこの下り線1Aから遠い沿線W2側よりも騒音対策の優先度が高く騒音対策が重要視される。このため、図2(B)に示すように、沿線W1側の吸気口3B及び排気口4Aを開閉部6が閉鎖すると、車両表面2bとルーバ6aとがほぼ同一面となり、これらの吸気口3B及び排気口4Aから発生する騒音が低減して沿線W1側の騒音が低減する。一方、図2(A)に示すように、吸気口3A及び排気口4Bを開閉部6が開放すると、これらの吸気口3A及び排気口4Bから騒音が発生するが、沿線W1よりも沿線W2が下り線1Aから離れており沿線W2側に与える騒音による影響は少ない。
(1) この第1実施形態では、吸気口3A,3B及び排気口4A,4Bを開閉部6がそれぞれ開閉し、車両2の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されているときに、騒音対策が重要視されている一方の側の開閉部6を制御部7が閉鎖動作させ、他方の側の開閉部6を制御部7が開放動作させる。その結果、図9に示すような従来の車両102のように左右いずれの側からも発生した騒音のうち、騒音対策が重要視されている側から発生する騒音を低減することができるため、沿線騒音を低減することができる。
図3は、この発明の第2実施形態に係る移動体の騒音低減装置を概略的に示す構成図であり、図3(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図3(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。以下では、図1及び図2に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図3に示す騒音低減装置5は、開閉部6と、制御部7と、速度検出部8と、路線情報記憶部9と、現在位置検出部10などを備えている。制御部7は、車両2が通過する沿線W1,W2の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、開閉部6の開閉動作を逆にする。
例えば、沿線W1側には住居が少なく沿線W2側には住居が多い場合や、沿線W1,W2側にはいずれも防音壁などの防音構造物が存在するが沿線W2側にはこの防音構造物よりも高い位置に住居がある場合などがある。このような場合には、一般的な事情とは異なり、沿線W1側よりも沿線W2側のほうが特別な事情により騒音対策の優先度が高く騒音対策が重要視される。図3(A)に示すように、下り線1Aを車両2が走行すると、車両位置検出部10のATS車上子が出力する絶対位置情報に基づいて制御部7が車両2の絶対位置を検出する。そして、次のATS地上子に車両2が到達するまで速度検出部8が出力する距離パルス信号を制御部7が積算して車両2の現在位置を検出し、開閉部6の開閉動作を逆にする必要があるか否かを制御部7が判断する。開閉部6の開閉動作を逆にする必要があると制御部7が判断したときには、吸気口3A及び排気口4Bを開閉部6に閉鎖させ、吸気口3B及び排気口4Aを開閉部6に開放させると、沿線W2側の騒音が低減される。
この第2実施形態では、車両2が通過する沿線W1,W2の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、開閉部6の開閉動作を制御部7が逆にする。このため、通常の場合とは異なる特別な事情によって沿線W1,W2の騒音対策の優先度が逆になるようなときに、騒音対策の事情に応じて沿線騒音を低減することができる。
図4は、この発明の第3実施形態に係る移動体の騒音低減装置を概略的に示す構成図であり、図4(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図4(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
図4に示す騒音低減装置5は、吸排気口11A,11Bを有する車両2が発生する騒音を低減する装置である。風向切替部12は、吸排気口11Aと吸排気口11Bとの間を流れる空気の風向を切り替える装置である。風向切替部12は、例えば、空調機器用や電動機冷却用に外部から空気を取り込み外部に排出するためのブロワ、圧縮機、ファンなどの送風機を備えている。風向切替部12は、空気を送り出す方向を逆転可能であり、吸排気口11Aから吸排気口11Bに向かって空気を送り出す送風動作と、吸排気口11Bから吸排気口11Aに向かって空気を送り出す送風動作とに切り替わる。制御部7は、車両2の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されているときに、騒音対策が重要視されている一方の側の吸排気口11A又は吸排気口11Bから空気を排出し他方の側の吸排気口11A又は吸排気口11Bから空気を取り入れるように、風向切替部12の切替動作を制御する。制御部7は、例えば、図4(A)に示すように、車両2が下り線1Aを左側通行するときには、進行方向右側の吸排気口11Aから取り入れた空気を進行方向左側の吸排気口11Bから排出するように、風向切替部12の切替動作を制御する。一方、制御部7は、図4(B)に示すように、車両2が上り線1Bを左側通行するときには、進行方向右側の吸排気口11Bから取り入れた空気を進行方向左側の吸排気口11Aから排出するように、風向切替部12の切替動作を制御する。
この第3実施形態では、図1〜図3に示す合計4個の吸気口3A,3B及び排気口4A,4Bを図4に示す合計2個の吸排気口11A,11Bに削減することができるため、騒音低減装置5の構成が簡単になり低コスト化を図ることができる。また、この第3実施形態では、騒音対策が重要視されている側の吸排気口11Bから空気が排出するため、この吸排気口11Bの周辺の空気層が厚くなり、吸排気口11Bに気流が直接衝突するのが抑えられ、吸排気口11Bから発生する騒音を低減することができる。
図5は、この発明の第4実施形態に係る移動体の騒音低減装置の通常の場合の動作状況を概略的に示す構成図であり、図5(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図5(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。図6は、この発明の第4実施形態に係る移動体の騒音低減装置の特別な場合の動作状況を概略的に示す構成図であり、図6(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図6(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
図7は、この発明の第5実施形態に係る移動体の騒音低減装置の通常の場合の動作状況を概略的に示す構成図であり、図7(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図7(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。図8は、この発明の第5実施形態に係る移動体の騒音低減装置の特別な場合の動作状況を概略的に示す構成図であり、図8(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図8(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、移動体として新幹線(登録商標)を例に挙げて説明したが、高速で走行する磁気浮上式鉄道や自動車などの移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、東北新幹線を例に挙げて説明したが、東海道新幹線などについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、吸気口3A,3B、排気口4A,4B及び吸排気口11A〜11Dを車両2の側面に配置した場合を例に挙げて説明したが、このような配置場所を限定するものではない。例えば、車両2の中心軸に対して左右の妻面、床下、屋根上に吸気口3A,3Bなどを配置した場合についてもこの発明を適用することができる。
1A 下り線
1B 上り線
1a レール
2 車両(移動体)
2a 車体
2b 車両表面
3A,3B 吸気口
4A,4B 排気口
5 騒音低減装置
6 開閉部
6a ルーバ
6b 回転軸
6c,6d リンク部材
6e 駆動部
6f ピストンロッド
7 制御部
8 速度検出部
9 路線情報記憶部
10 現在位置検出部
11A〜11D 吸排気口
12 風向切替部
W1,W2 沿線
Claims (10)
- 吸気口及び排気口を有する鉄道車両が発生する騒音を低減する鉄道車両の騒音低減装置であって、
前記吸気口及び前記排気口をそれぞれ開閉する開閉部と、
前記開閉部を開閉動作させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記鉄道車両が複線を左側通行するときには、進行方向右側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出するように前記開閉部を開閉動作させ、前記鉄道車両が複線を右側通行するときには、進行方向左側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出するように前記開閉部を開閉動作させること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減装置。 - 請求項1に記載の鉄道車両の騒音低減装置において、
前記制御部は、前記鉄道車両が複線を左側通行しているときに、進行方向左側の沿線側の騒音よりも進行方向右側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向左側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出するように前記開閉部の開閉動作を逆にし、前記鉄道車両が複線を右側通行しているときに、進行方向右側の沿線側の騒音よりも進行方向左側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向右側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出するように前記開閉部の開閉動作を逆にすること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減装置。 - 吸排気口を有する鉄道車両が発生する騒音を低減する鉄道車両の騒音低減装置であって、
一方の前記吸排気口と他方の前記吸排気口との間を流れる空気の風向を切り替える風向切替部と、
前記風向切替部の切替動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記鉄道車両が複線を左側通行するときには、進行方向右側の前記吸排気口から取り入れた空気を進行方向左側の前記吸排気口から排出し、前記鉄道車両が複線を右側通行するときには、進行方向左側の前記吸排気口から取り入れた空気を進行方向右側の前記吸排気口から排出するように、前記風向切替部の切替動作を制御すること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減装置。 - 請求項3に記載の鉄道車両の騒音低減装置において、
前記制御部は、前記鉄道車両が複線を左側通行しているときに、進行方向左側の沿線側の騒音よりも進行方向右側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向左側の前記吸排気口から取り入れた空気を進行方向右側の前記吸排気口から排出し、前記鉄道車両が複線を右側通行しているときに、進行方向右側の沿線側の騒音よりも進行方向左側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向右側の前記吸排気口から取り入れた空気を進行方向左側の前記吸排気口から排出するように、空気を取り入れる側と空気を排出する側とが逆になるように、前記風向切替部の切替動作を逆にすること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減装置。 - 吸排気口を有する鉄道車両が発生する騒音を低減する鉄道車両の騒音低減装置であって、
前記吸排気口を開閉する開閉部と、
前記開閉部を開閉動作させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記鉄道車両が複線を左側通行するときには、進行方向右側の前記給排気口から取り入れた空気を進行方向左側の前記吸排気口から排出するように前記開閉部を開閉動作させ、前記鉄道車両が複線を右側通行するときには、進行方向左側の前記給排気口から取り入れた空気を進行方向右側の前記吸排気口から排出するように前記開閉部を開閉動作させること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減装置。 - 請求項5に記載の鉄道車両の騒音低減装置において、
前記制御部は、前記鉄道車両が複線を左側通行しているときに、進行方向左側の沿線側の騒音よりも進行方向右側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向左側の前記給排気口から取り入れた空気を進行方向右側の前記吸排気口から排出するように前記開閉部の開閉動作を逆にし、前記鉄道車両が複線を右側通行しているときに、進行方向右側の沿線側の騒音よりも進行方向左側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向右側の前記吸排気口から取り入れた空気を進行方向左側の吸排気口から排出するように前記開閉部の開閉動作を逆にすること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減装置。 - 吸気口及び排気口を有する鉄道車両が発生する騒音を低減する鉄道車両の騒音低減方法であって、
前記鉄道車両が複線を左側通行するときには、進行方向右側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出し、前記鉄道車両が複線を右側通行するときには、進行方向左側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出すること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減方法。 - 請求項7に記載の鉄道車両の騒音低減方法において、
前記鉄道車両が複線を左側通行しているときに、進行方向左側の沿線側の騒音よりも進行方向右側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向左側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出し、前記鉄道車両が複線を右側通行しているときに、進行方向右側の沿線側の騒音よりも進行方向左側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向右側の前記吸気口から取り入れた空気を同じ側の前記排気口から排出するように、空気を取り入れる側と空気を排出する側とを逆にすること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減方法。 - 吸排気口を有する鉄道車両が発生する騒音を低減する鉄道車両の騒音低減方法であって、
前記鉄道車両が複線を左側通行するときには、進行方向右側から取り入れた空気を進行方向左側の前記吸排気口から排出し、前記鉄道車両が複線を右側通行するときには、進行方向左側から取り入れた空気を進行方向右側の前記吸排気口から排出すること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減方法。 - 請求項9に記載の鉄道車両の騒音低減方法において、
前記鉄道車両が複線を左側通行しているときに、進行方向左側の沿線側の騒音よりも進行方向右側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向左側の前記吸排気口から取り入れた空気を進行方向右側の前記吸排気口から排出し、前記鉄道車両が複線を右側通行しているときに、進行方向右側の沿線側の騒音よりも進行方向左側の沿線側の騒音を低減するときには、進行方向右側の前記吸排気口から取り入れた空気を進行方向左側の前記吸排気口から排出するように、空気を取り入れる側と空気を排出する側とを逆にすること、
を特徴とする鉄道車両の騒音低減方法。
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