JP4626123B2 - ポリフェニレンスルフィド繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂の有する優れた耐熱性、耐薬品性を維持しつつ、ポリフェニレンスルフィド樹脂の使用量を低減させることのできるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものであり、またポリフェニレンスルフィド繊維の有する優れた耐熱性、耐薬品性を維持しつつ、ポリフェニレンスルフィド樹脂の使用量を低減させることのできるポリフェニレンスルフィド繊維、およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す。)は優れた耐熱性、耐薬品性などの特徴を活かして、当初はエンジニアリングプラスチックや耐熱性フィルムなどで実用化がなされてきたが、近年では、繊維分野においてもその用途が拡がりつつあり、例えば、バグフィルターなどの用途に有用視され、その需要量も拡大している。しかしPPS樹脂は、その原料の製造工程が煩雑で、また重合工程で用いる重合溶媒の処理工程が必要となるなど、製造が煩雑で高価となることから、その用途が制限され、さらなる新規用途を開拓する上で障害を生じている。このような現状から、PPS樹脂の使用量を減じながら、PPS樹脂の特性を失わない、経済性に優れた材料の開発が要望されており、その方法として、他の熱可塑性樹脂を配合しポリマーアロイ化する方法が有望視されている。
【0003】
特許文献1には、PPS樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂からなる組成物が開示されており、さらに相溶性を改良するためさらにエポキシ樹脂を配合する方法を教示しているが、同文献には、本発明記載のPPS樹脂よりなるポリマーアロイの分散径については全く開示されていない。本発明者らの検討によれば、同文献記載の方法では、分散径を小さく制御することは困難であった。またポリマーアロイ中の分散径が大きいと、繊維として用いる場合、紡糸時の紡糸安定性が悪くなり、さらに延伸時にはボイドが発生し脆くなるなどの問題があることから、より微細に構造制御する方法が要望されていた。
【0004】
また、特許文献2には、ポリエステル樹脂を主成分とする繊維にPPS樹脂を配合した、ポリエステル系繊維が開示されている。同文献は、ポリエステル樹脂を主成分とする繊維の改質を目的とし、少量のPPS樹脂を配合したものであり、本発明のPPS繊維の特性を維持しつつ、PPS繊維の使用量を減じて経済性を向上させるという技術思想は開示されておらず、また同文献に記載の添加量でPPS樹脂を使用し、同文献記載の方法で繊維を製造してもPPS繊維の特性を維持することは困難であった。さらに同文献には、本発明記載のPPS繊維中における分散径については全く開示されていない。
【0005】
特許文献3には、特定の温度域で互いに相溶する部分相溶系のポリマーブレンドを相溶状態で溶融紡糸した繊維を、その後熱処理等でスピノーダル分解あるいは核生成と成長により相分解させ、繊維横断面中に0.001〜0.4μmの分散構造を形成させたポリマーブレンド繊維が記載されている。しかしながら同文献記載の発明では主としてポリエステル系樹脂が使用されており、PPS樹脂の使用は記載されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭59−58052号公報(第2−3頁)
【特許文献2】
特開昭61−252315号公報(第3頁)
【特許文献3】
特開平8−113829号公報(第5−7頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂の有する優れた耐熱性、耐薬品性を維持しつつ、ポリフェニレンスルフィド樹脂の使用量を低減させることのできるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することをその課題とし、またポリフェニレンスルフィド繊維の有する優れた耐熱性、耐薬品性を維持しつつ、ポリフェニレンスルフィド樹脂の使用量を低減させることのできるポリフェニレンスルフィド繊維を提供することをその課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド繊維において特定構造としたポリフェニレンスルフィド繊維を見いだし本発明を完成させるにいたった。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなるポリフェニレンスルフィド繊維であり、該ポリフェニレンスルフィド繊維中で前記ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂と前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が、構造周期0.001〜2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの分散構造を形成し、その後延伸してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド繊維、
(2)ポリフェニレンスルフィド樹脂と、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド繊維であり、該ポリフェニレンスルフィド繊維におけるポリフェニレンスルフィド樹脂の含有量が40重量%以上であることを特徴とする(1)に記載のポリフェニレンスルフィド繊維、
(3)前記ポリフェニレンスルフィド繊維における両相連続構造または分散構造がスピノーダル分解により相分離させることによって形成されたものであることを特徴とする、(1)〜(2)のいずれか1項記載のポリフェニレンスルフィド繊維、
(4)前記ポリフェニレンスルフィド繊維が、溶融混練を経て得られたものであることを特徴とする請求項(1)〜(3)いずれか1項記載のポリフェニレンスルフィド繊維、
(5)前記ポリフェニレンスルフィド繊維が、溶融混練時の剪断下で相溶化させた後、吐出後の非剪断下で相分離させることにより得られたものであることを特徴とする(4)記載のポリフェニレンスルフィド繊維、
(6)ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなるポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法であって、前記ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂をスピノーダル分解により相分離させて、構造周期0.001〜2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの分散構造を形成させ、その後延伸することを特徴とするポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法、
(7)前期延伸が、先ず1.0〜1.5倍の1次延伸を行った後、引き続き2.0〜4.0倍の2次延伸を行う方法であることを特徴とする(6)記載のポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法、
(8)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融紡糸することによりスピノーダル分解を誘発することを特徴とする(6)または(7)記載のポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法、
(9)前記ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂を溶融混練し、その剪断下で相溶化させ、溶融紡糸の際、紡出後の非剪断下で相分離させることを特徴とする(8)記載のポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明で用いるPPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体であり、
【0012】
【化1】
【0013】
耐熱性の点から、上記構造式で示される繰返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上を含む重合体であることが好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
【0014】
【化2】
【0015】
本発明で用いられるPPS樹脂は、例えば通常公知の方法即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法或は特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造できる。本発明において上記の様に得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することも可能であり、さらに、これらの処理を2種類以上行うことももちろん可能である。また、これらの処理を行ったPPS樹脂を、2種類以上の混合で使用することももちろん可能であり、2種類以上の混合で使用する場合の具体的方法として、空気中加熱により架橋したPPS樹脂と熱処理を行っていないPPS樹脂の混合、酸水溶液による洗浄を行ったPPS樹脂と有機溶媒による洗浄を行ったPPS樹脂の混合、有機溶媒で洗浄したPPS樹脂と有機溶媒で洗浄を行っていないPPS樹脂の混合などが例示できる。
【0016】
本発明で用いられるPPS樹脂の分子量については、特に制限はないが、後述のスピノーダル分解する際の条件に関連するため、適宜選択する必要があり、この分子量に関するパラメーターである溶融粘度については、通常5〜1,000Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のものが使用されるが、中でも10〜500Pa・sのものが好ましく用いられる。
【0017】
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃であり、時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この加熱処理温度と時間を適宜コントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は減圧仕様、またはシール性の高い仕様の通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0018】
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は静置型の加熱装置でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0019】
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用することもできる。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。
【0020】
また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0021】
PPS樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧で或いは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0022】
PPS樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。
【0023】
すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
【0024】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂(以下PET樹脂と略す場合がある)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂のホモポリマが最も好ましいが、テレフタル酸成分の一部をイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等の一種またはそれ以上で置換したものでもよく、また、エチレングリコールの一部を1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の一種またはそれ以上で置換したものでもよいが、共重合率を15モル%以下の範囲とするのが望ましく、さらには5モル%以下の範囲とするのがより望ましい。
【0025】
本発明で用いられるPET樹脂の分子量については、特に制限がないが、後述のスピノーダル分解する際の条件に関連するため、適宜選択することが好ましく、この分子量に関するパラメーターである極限粘度については、通常は0.6以上(25℃、オルソクロロフェノール溶液)のものが使用されるが、中でも0.7以上のものが好ましく用いられる。上限としては1.5以下であることが好ましい。
【0026】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、PPS樹脂とポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるものであり、かつ該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中で、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記ポリエステル樹脂が、構造周期0.001μm〜2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001μm〜2μmの分散構造を形成している。かかる構造となるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得る方法としては、後述のスピノーダル分解を利用する方法が好ましく、さらには後述の剪断場依存型相溶解・相分解を利用する方法が、さらなる微細な構造制御を容易にすることからより好ましく用いられる。
【0027】
以下、一般に2成分の樹脂からなるポリマーアロイにおける構造制御方法を説明する。2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系には、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
【0028】
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
【0029】
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂2ΔGmix/∂φ2)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂2ΔGmix/∂φ2<0の不安定状態であり、外側では∂2ΔGmix/∂φ2>0である。
【0030】
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
【0031】
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。
相溶しているか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends,Leszek A Utracki,hanserPublishers,Munich Viema NewYork,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
【0032】
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速に変化させた場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
【0033】
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]−1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
【0034】
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行する。
【0035】
ここで本発明にいうところの分散構造とは、片方の樹脂成分が主成分であるマトリックスの中に、もう片方の樹脂成分が主成分である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
【0036】
一方、上述の準安定領域での相分離である核生成と成長では、その初期から海島構造である不規則な分散構造が形成されてしまい、それが成長するため最終的に均一な分散構造が得られにくい。
【0037】
またこれらの両相連続構造もしくは分散構造が、スピノーダル分解によって形成されたものかを確認するためには、規則的な周期構造を有しているかを確認することが有効である。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が必要である。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λmは、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θmを用いて次式
Λm =(λ/2)/sin(θm/2)
により計算することができる。
【0038】
ここでPPS樹脂とPET樹脂からなるポリマーアロイにおいて、スピノーダル分解を実現させるためには、PPS樹脂とPET樹脂を相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とする。
【0039】
まずこのPPS樹脂とPET樹脂で相溶状態を実現する方法としては、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、溶解度パラメータの差の小さいPPS樹脂とPET樹脂ではその分子量を選ぶことにより溶融混練で相溶化するため、それを利用した溶融混練法が挙げられる。中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練による相溶化が、実用上好ましく用いられる。
【0040】
なお、PPS樹脂とPET樹脂とを溶融混練する場合、用いる樹脂のいずれもが繊維や三次元成形品などの成形用途に通常用いられるような程度の分子量を有する場合には、高度の剪断下で行うことにより、相溶化することができ、いずれか一方、若しくは両方の分子量を低下させることにより、より低剪断下で相溶化させることができる。
【0041】
溶融混練により相溶化させるには、相溶化する条件を満足させ得る性能を有する限り、通常の単軸押出機、または2軸押出機を用いることができるが、中でも2軸押出機を用いることが好ましい。また相溶化のための温度は、PPS樹脂、およびPET樹脂の分子量の組み合わせによっても異なり、一概にはいえないが、溶融混練時の温度で相溶となる様適宜PPS樹脂および/またはPET樹脂の分子量を低下させた場合の相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより設定することができる。この低分子量PPSとしては、溶融粘度0.01〜5未満Pa・sのものが好ましく用いられ、また低分子量PETとしては、極限粘度0.6未満のものが好ましく用いられ、下限としては、PPS樹脂とPET樹脂の組成によっても異なり、一概にはいえないが、所望の成形方法で成形できる範囲のものであれば構わない。
【0042】
そこで次に溶融混練により相溶状態としたPPS樹脂とPET樹脂からなるポリマーアロイを、スピノーダル曲線の内側の不安定状態として、スピノーダル分解せしめるに際し、不安定状態とするための温度、その他の条件はPPS樹脂、およびPET樹脂の分子量の組み合わせによっても異なり、一概にはいえないが、上記相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより設定することができる。
【0043】
このスピノーダル分解で相分離した後は、所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。かかるスピノーダル分解による構造生成物を固定化する方法としては、急冷等による短時間での相分離相の一方または両方の成分の構造固定や、結晶化によって自由に運動できなくなることを利用した構造固定が挙げられる。また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には所望の粒子間距離に到達した段階で構造を固定すればよい。
【0044】
本発明のPPS樹脂とPET樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、樹脂組成物中、前記PPS樹脂とPET樹脂とが構造周期0.001〜2μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの範囲の分散構造に構造制御されていることが必要であるが、さらに優れた機械特性を得るためには、構造周期0.001〜1.2μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1.2μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.001〜0.8μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜0.8μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましい。
【0045】
またこの部分相溶系によるスピノーダル分解の他に、非相溶系においても溶融混練によってスピノーダル分解を誘発すること、例えば溶融混練時等の剪断下で一旦相溶し、非剪断下で再度不安定状態となり相分解するいわゆる剪断場依存型相溶解・相分解によってもスピノーダル分解による相分離が可能であり、この場合においても、上記部分相溶系の場合と同じくスピノーダル分解様式で分解が進行し規則的な両相連続構造を有する。さらにこの剪断場依存型相溶解・相分解は、スピノーダル曲線が剪断場により変化し、不安定状態領域が拡大するため、スピノーダル曲線が変化しない部分相溶系の温度変化による方法に比べて、その同じ温度変化幅においても実質的な過冷却度(│Ts−T│)が大きくなり、その結果、上述の関係式におけるスピノーダル分解の初期過程における構造周期を小さくすることが容易となり、構造の微細化が容易となるためより好ましく用いられる。
【0046】
上記剪断場依存型相溶解・相分解する樹脂の組み合わせとしては、剪断下で相溶し、非剪断下でスピノーダル分解するような組み合わせであり、前述の通常用いられる分子量の範囲のPPS樹脂とPET樹脂からなるポリマーアロイがこれに該当する。
【0047】
剪断下での溶融混練により相溶化させるには、相溶化の条件を満足させ得る性能を有する限り、通常の単軸押出機、または2軸押出機を用いることができるが、中でも高剪断を賦与できるようスクリューアレンジとした2軸押出機を用いることが好ましい。ここで相溶化する温度、スピノーダル分解するための温度、その他の条件はPPS樹脂、およびPET樹脂の分子量の組み合わせによっても異なり、一概にはいえないが、種々の剪断条件下での相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより条件を設定することができる
次に上記剪断下で溶融混練により相溶状態としたPPS樹脂とPET樹脂からなるポリマーアロイを、非剪断下でスピノーダル曲線の内側の不安定状態として、スピノーダル分解せしめるに際し、不安定状態とするための温度、その他の条件は、PPS樹脂、およびPET樹脂の分子量の組み合わせによっても異なり、一概にはいえないが、種々の剪断条件下での相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより設定することができる。この剪断場依存型相溶解・相分解でのスピノーダル分解による、構造の微細化をより効果的に生じさせるためには、上記剪断条件下での相図の変化幅が大きくなるよう、PPS樹脂、およびPET樹脂の分子量の組み合わせを選択することが好ましい。
【0048】
このスピノーダル分解で相分離した後は、所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。かかるスピノーダル分解による構造生成物を固定化する方法としては、急冷等による短時間での相分離相の一方または両方の成分の構造固定や、結晶化によって自由に運動できなくなることを利用した構造固定が挙げられる。また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には所望の粒子間距離に到達した段階で構造を固定すればよい。
【0049】
本発明のPPS樹脂とPET樹脂を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、構造周期0.001〜2μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの範囲の分散構造に構造制御されているが、さらに優れた機械特性を得るためには、構造周期0.001〜1.2μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1.2μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.001〜0.8μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜0.8μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましい。
【0050】
また、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に、さらにPPS樹脂と、PET樹脂を含むブロックコポリマーやグラフトコポリマーやランダムコポリマーなどのコポリマーである第3成分を添加することは、相分解した相間における界面の自由エネルギーを低下させ、両相連続構造における構造周期や、分散構造における分散粒子間距離の制御を容易にするため好ましく用いられる。この場合通常、かかるコポリマーなどの第3成分は、それを除く2成分の樹脂からなるポリマーアロイの各相に分配されるため、2成分の樹脂からなるポリマーアロイ同様に取り扱うことができる。
【0051】
本発明でのポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の組成については特に制限がないが、PPS樹脂とPET樹脂の合計100重量%に対して、通常PPS樹脂が40重量%以上が好ましく用いられ、さらにPPS樹脂の特性を効果的に発現するため好ましい組成として、60〜95重量%の範囲がより好ましく、特に65〜95重量%の範囲が好ましい。
【0052】
本発明においては、強度及び寸法安定性等を向上させるため、必要に応じて充填材を用いてもよい。充填材の形状としては繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状の充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。かかる充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0053】
強度及び寸法安定性等を向上させるため、かかる充填材を用いる場合、その配合量は特に制限はないが、通常PPS樹脂100重量部に対して30〜400重量部であることが好ましい。
【0054】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0055】
これらの添加剤は、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、少なくとも2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法が挙げられる。
【0056】
本発明から得られるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形方法は、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、溶融紡糸、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができるが、中でも溶融紡糸して得た繊維として用いることが好ましい。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
ここで部分相溶系におけるスピノーダル分解を利用したポリフェニレンスルフィド繊維の製法としては、単軸あるいは2軸押出機を用いて溶融混練時の温度において、PPS樹脂とポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を一旦相溶解させたPPS樹脂組成物を細孔から紡出し、紡出後の紡出糸条を、口金直下に設置され通常150〜230℃の温度に温調されたチムニーを通過する際にスピノーダル分解させ、さらにダクトを通過させ、このダクト内で冷風で冷却することにより該スピノーダル分解の構造を固定化し繊維を得る方法が好ましい例として挙げられるが、ここでは特に限定されるものではない。またダクト内での冷風の温度は通常10〜30℃の範囲を用いるが、100℃以下であれば温風を用いてもよい。さらには紡糸用の押出機に供給する前に、予め2軸押出機を用いて相溶化させその構造を凍結させたペレットを用いることがより好ましい。
【0065】
また上記得られた未延伸糸は、延伸することももちろん可能であり、延伸する方法は、特に制限はなく、紡糸して一旦巻き取った後延伸しても、紡糸に続いて延伸しても、また高速紡糸しても良いが、延伸する際は、通常先ず1.0〜1.5倍の1次延伸を行った後、引き続き2.0〜4.0倍の2次延伸を行う方法が好ましい例として挙げられる。さらに延伸時の熱処理温度は、通常90℃〜130℃で熱処理する方法が通常好ましく用いられる。この延伸糸は、さらにその構造を安定化させ用いることが好ましい。この安定化のための条件としては、通常0.9〜0.99の延伸倍率、すなわち弛緩条件下で熱処理(通常150〜265℃)を行いながら延伸歪みを緩和させた後、ワインダーに巻き取る。またこの延伸糸の構造周期や粒子間距離は、延伸により、増大するが、かかる延伸糸中においてもPPS樹脂とポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂が構造周期0.001〜2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの分散構造を形成した繊維であれば、上述のポリフェニレンスルフィド繊維の特徴を有し、本発明の好ましいポリフェニレンスルフィド繊維が得られる。さらにPPS樹脂の特性をより効果的に発現させるためには、前記PPS樹脂とポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂が構造周期0.001〜1.2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1.2μmの分散構造とすることが好ましく、さらには構造周期0.001〜0.8μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜0.8μmの分散構造とすることが好ましい。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
ここで剪断場依存型相溶解・相分解におけるスピノーダル分解を利用したポリフェニレンスルフィド繊維の製法としては、まず溶融混練時の剪断下により相溶化させる必要があり、これには相溶化の条件を満足させ得る性能を有する限り、通常の単軸押出機、または2軸押出機が用いられるが、中でも高剪断を賦与できるようなスクリューアレンジとした2軸押出機を用いることが好ましい。また上記紡糸用の押出機の可塑化工程での相溶化を確実に実現させる方法として、予め2軸押出機で相溶化するのに十分な剪断をかけながら、溶融混練し相溶化させ、吐出後氷水中などで急冷し相溶化状態で構造を固定させた材料を用いて紡糸する方法などが好ましい例として挙げられる。次にこの剪断下で一旦相溶化させたPPS樹脂とポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を細孔から紡出し、紡出後の非剪断下で不安定状態となった紡出糸条を、口金直下に設置され通常150〜230℃の温度に温調されたチムニーを通過する際にスピノーダル分解させ、さらにダクトを通過させ、このダクト内で冷風で冷却することにより該スピノーダル分解の構造を固定化し繊維を得る方法が好ましい例として挙げられるが、ここでは特に限定されるものではない。またダクト内での冷風の温度は通常10〜30℃の範囲を用いるが、100℃以下であれば温風を用いてもよい。
【0073】
また上記得られた未延伸糸は、延伸することももちろん可能であり、延伸する方法は、特に制限はなく、紡糸して一旦巻き取った後延伸しても、紡糸に続いて延伸しても、また高速紡糸しても良いが、延伸する際は、通常先ず1.0〜1.5倍の1次延伸を行った後、引き続き2.0〜4.0倍の2次延伸を行う方法が好ましい例として挙げられる。さらに延伸時の熱処理温度は、通常90℃〜130℃で熱処理する方法が通常好ましく用いられる。この延伸糸は、さらにその構造を安定化させ用いることが好ましい。この安定化のための条件としては、通常0.9〜0.99の延伸倍率、すなわち弛緩条件下で熱処理を行いながら延伸歪みを緩和させた後、ワインダーに巻き取る。またこの延伸糸の構造周期や粒子間距離は、延伸により、増大するが、かかる延伸糸中においてもPPS樹脂とポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂が構造周期0.001〜2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの分散構造を形成した繊維であれば、上述のポリフェニレンスルフィド繊維の特徴を有し、本発明の好ましいポリフェニレンスルフィド繊維が得られる。さらにPPS樹脂の特性をより効果的に発現させるためには、前記PPS樹脂ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂が構造周期0.001〜1.2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1.2μmの分散構造とすることが好ましく、さらには構造周期0.001〜0.8μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜0.8μmの分散構造とすることが好ましい。
【0074】
ここでPET樹脂については、特にPPS樹脂と相溶化パラメーターが近似しており、相溶性に優れることから、PPS樹脂とPET樹脂の合計100重量%に対して、通常PPS樹脂が40重量%以上の組成であれば、上記のように厳密に構造を制御しなくとも、PPS樹脂の特徴を損なわないポリフェニレンスルフィド繊維を得ることができる。さらにPPS樹脂の特性を効果的に発現するため好ましい組成として、60〜95重量%の範囲がより好ましく、特に65〜95重量%の範囲が好ましい。なお、厳密に構造を制御することにより、制御しない場合に比較して、PPS樹脂の特徴をより顕著に維持したポリフェニレンスルフィド繊維が得られるのは前述のとおりである。
【0075】
なお、本発明の目的を逸脱しない範囲で、さらにヒンダートフェノール系、アミン系、ホスファイト系、チオエステル系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤、赤外線吸収剤などの安定剤、シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、クノフタロン系などの有機顔料、無機顔料、蛍光増白剤、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、架橋ポリスチレンなどの粒子、抗菌剤、制電剤などの添加剤を重合時に添加するあるいは重合後のポリエステルに併用して混合するなどによって含有させても良い。
【0076】
さらに、必要に応じて繊維とした後の後加工によりリン系、ブロム系などの難燃剤を付加したり、染料や前記顔料などで着色したり、前記紫外線吸収剤、撥水剤、防カビ剤、消臭剤、抗菌剤、制電剤などを付与することもできる。
【0077】
本発明のポリフェニレンスルフィド繊維は、ポリフェニレンスルフィド繊維の有する優れた耐熱性、耐薬品性を維持しつつ、経済性に優れるため、バグフィルター、モーター結束紐、モーターバインダーテープおよび抄紙用ドライヤーカンバス、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア、乾燥機または熱処理機内搬送用ベルトおよびフィルターなどの用途に好適に用いることができる。
【0078】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
【0079】
参考例(PPS樹脂の重合)
(PPS−1)
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.004kg(25モル)、およびN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)4.5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP3kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、274℃で1.5時間反応した。冷却後、反応生成物を温水で2回洗浄し、次にこのスラリーを撹拌機付きオートクレーブにイオン交換水3kgと共に入れ190℃まで昇温し、190℃到達後、室温まで冷却後濾過し、さらに熱湯で数回洗浄した。これを濾過後、80℃で24時間減圧乾燥してPPS樹脂、2.48kgを得た。このPPS樹脂は直鎖状であり、溶融粘度80Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)、ガラス転移温度89℃、結晶融解温度280℃であった。
【0080】
溶融粘度はキャピラリー型溶融粘度測定装置(東洋精機社製CAPIROGRAPH−1C)を用いて、オリフィスL/D=20(内径1mm)で測定し、ガラス転移温度、結晶融解温度はDSC(PERKIN−ELMER社製DSC−7)を用いて、昇温速度20℃/分で測定した。
【0081】
実施例1〜6
表1記載の組成からなる原料を、押出温度320℃に設定し、ニーディングゾーンを2箇所有し、スクリュー回転数を300rpmの高速で回転させた2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した。本ガットはいずれも透明であり、また該ガットから超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったが、いずれのサンプルについても0.001μm以上の構造物がみられず相溶化していることを確認した。このことから、本系は、押出温度320℃の押出機中の剪断下で相溶化することがわかる。
【0082】
次に、上記ダイから吐出後、氷水中に急冷し構造を固定したガットを用い、加熱プレスにより表1記載の温度、時間で熱処理後、急冷し構造を固定したシート(厚み0.2mm)を作製した。該シートから厚み100μmの切片を切り出し、小角X線散乱、または光散乱を測定した。表1には該ピーク位置(θm)から下式で計算した、構造周期(Λm)を記した。なお、分散構造を有する場合の粒子間距離も両相連続構造における構造周期と同じ方法で算出される。
Λm =(λ/2)/sin(θm/2)
またこの切片から超薄切片を切り出したサンプルについて透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行い、構造の状態を観察した結果を表1に記した。
【0083】
以上のことから、2軸押出機の剪断下において相溶化したサンプルは、加熱プレスでのシート化時にスピノーダル分解により相分離し、その後急冷することにより構造が固定されたものと考えられる。
【0084】
次に該シートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.2mmのサンプルを切り出し、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度、180℃に温度調節された熱風オーブン中で30分間放置後の初期長さに対する熱収縮率(%)を表1に記した。
【0085】
また、使用樹脂は、以下に示すものを使用した。
PPS−1:PPS樹脂(上述の参考例で重合したPPS樹脂)
PET−1:ポリエチレンテレフタレート樹脂(極限粘度0.62(25℃、オルソクロロフェノール溶液)
PBT−1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(極限粘度1.00(25℃、オルソクロロフェノール溶液)。
【0086】
比較例1
熱処理温度を320℃で3分間行ったこと以外は、実施例3と同様であり、該サンプルの引張強度、熱収縮率を測定した結果、および構造周期、構造の状態を観察した結果を表1に記載した。
【0087】
本例の様に、熱処理温度が高く構造の粗大化が進行し、かかる構造周期が本発明範囲を外れると、機械特性、耐熱性に劣るものしか得られなかった。
【0088】
比較例2
PPS樹脂とのアロイ成分をポリブチレンテレフタレート樹脂とした以外は、実施例3と同様に溶融混練し、ダイから吐出後すぐに氷水中に急冷し、構造を固定したガットを得たが、本サンプルは濁っており、また該ガットから超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡にて1000倍に拡大して観察を行うと、2.0μm以上の不均一な分散構造物が観測された。このことから、本サンプルは、押出温度320℃の押出機中の剪断下で相溶化していないことがわかる。本サンプルについても、実施例3と同様に引張強度、熱収縮率を測定した結果、および構造の状態を観察した結果を表1に記載した。
【0089】
【表1】
【0090】
これらの結果から、本発明のPPS樹脂とPET樹脂からなる特定構造周期の両相連続構造物、分散構造物が、優れた機械特性、耐熱性を有していることがわかる。
【0091】
実施例7〜9
表2記載の組成からなる原料を、押出温度320℃に設定し、ニーディングゾーンを2箇所有し、スクリュー回転数を300rpmの高速で回転させた2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した。本ガットはいずれも透明であり、また該ガットから超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったが、いずれのサンプルについても0.001μm以上の構造物がみられず相溶化していることを確認した。このことから、本系は、押出温度320℃の押出機中の剪断下で相溶化することがわかる。
【0092】
さらに、上記ダイから吐出後、氷水中に急冷し構造を固定し相溶化した状態のガットを、ストランドカッターに供給し、ペレットを作製した。次にかかるペレットを用いて、10トール真空下の状態で押出機型紡糸機によりポリマ温度が315℃になるように再度溶融し、紡糸パック中で溶融ポリマを5μの細孔を有する金属フィルターで濾過した後、孔径0.30mm、孔深度/孔径の比が4の吐出孔を50ホール有する紡糸口金を通して紡出し、吐出量は巻取り糸条が220dtexとなるように製糸条件に合わせた。口金面下10cmの雰囲気温度が220℃に設定されたチムニーを通過させ(チムニー通過時間:1秒)、この糸条をただちに25℃の冷風で冷却し、次いで、600m/分の速度で回転する50℃に加熱した引取りロールで引取り、この未延伸糸条を一旦巻き取ることなく連続して90℃に加熱したフィードロールとの間で1.10倍の1次延伸を行った。引き続いてフィードロールと105℃の第1延伸ロールとの間で3.0倍の2次延伸を行った。さらに、糸条に200℃の第2延伸ロールとリラックスロールとの間で0.98倍の弛緩処理を施し、ワインダーで巻き取ることにより、ポリフェニレンスルフィド繊維を得た。また得られたポリフェニレンスルフィド繊維の断面から超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったところ、いずれのサンプルも両相連続構造物、若しくは分散構造物が存在することを確認した。さらに得られたポリフェニレンスルフィド繊維から別途サンプルを切り出し小角X線散乱装置、または光散乱装置を用いて測定したところ、いずれのサンプルもピークが観測された。表2には該ピーク位置(θm)から下式で計算した、構造周期(Λm)を記した。なお、分散構造を有する場合の粒子間距離も両相連続構造における構造周期と同じ方法で算出される。
Λm =(λ/2)/sin(θm/2)
以上のことから、2軸押出機の剪断下において相溶化したサンプルは、押出機型紡糸機での溶融紡糸時にスピノーダル分解により相分離し、その後急冷することにより構造が固定され、延伸しても良好な構造を保持していたものと考えられる。
【0093】
次に上記延伸糸について、繊維特性として、強度(cN/dtex)、伸度(%)をJISL 1013の方法に準拠し、試長25cm、引張り速度30cm/分の条件で測定し、耐熱性の指標として熱収縮率を180℃に温度調節された熱風オーブン中で30分間放置後の初期長さに対する熱収縮率(%)として求め、結果を表2に記した。
【0094】
実施例10
PPS樹脂/PET樹脂の組成を、45/55(重量%)とした以外は、実施例7〜9と同様に、溶融混練し、ダイから吐出後すぐに氷水中に急冷し、構造を固定したガットを得たが、本サンプルは濁っており、また該ガットから超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡にて1000倍に拡大して観察を行うと、2.0μm以上の不均一な分散構造物が観測された。このことから、本サンプルは、押出温度320℃の押出機中の剪断下で相溶化していないことがわかる。本サンプルについても、実施例7〜9と同様に延伸糸を作製し、延伸糸の強度、伸度、熱収縮率を測定した結果、および構造の状態を観察した結果を表2に記載した。
【0095】
実施例11
ニーディングゾーンにおけるニーディングエレメント間のクリアランスを半減させた高剪断用エレメントとした以外は、実施例10と同様に、溶融混練し、ダイから吐出後すぐに氷水中に急冷し、構造を固定したガットは透明であり、該ガットから超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察したが、0.001μm以上の構造物がみられず相溶化していることを確認した。
このことから、本サンプルは、実施例10より高剪断を付加することにより相溶化することがわかる。本サンプルについても、実施例7〜9と同様に延伸糸を作製し、延伸糸の強度、伸度、熱収縮率を測定した結果、および構造の状態を観察した結果、構造周期を測定した結果を表2に記載した。
【0096】
【0097】
比較例3
PPS樹脂/PET樹脂の組成を、35/65(重量%)とした以外は、実施例11と同様に、溶融混練し、ダイから吐出後すぐに氷水中に急冷し、構造を固定したガットを得たが、本サンプルは濁っており、また該ガットから超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡にて1000倍に拡大して観察を行うと、2.0μm以上の不均一な分散構造物が観測された。このことから、本サンプルは、押出温度320℃の押出機中の高剪断下でも相溶化していないことがわかる。本サンプルについても、実施例7〜9と同様に延伸糸を作製し、延伸糸の強度、伸度、熱収縮率を測定した結果、および構造の状態を観察した結果を表2に記載した。
【0098】
また、使用樹脂は、以下に示すものを使用した。
PPS−1:PPS樹脂(上述の参考例で重合したPPS樹脂)
PET−2:ポリエチレンテレフタレート樹脂(o.c.p中、濃度1%、25℃で測定した極限粘度0.81)
【0099】
【表2】
【0100】
これらの結果から、PPS樹脂と特定量のPET樹脂を配合してなるポリフェニレンスルフィド繊維で、PPS樹脂の有する優れた機械特性、耐熱性を有していることがわかる。
【0101】
【発明の効果】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂と特定量のポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を配合してなるポリフェニレンスルフィド繊維で、ポリフェニレンスルフィド樹脂の有する優れた特性を有するポリフェニレンスルフィド繊維を得ることができる。
Claims (9)
- ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなるポリフェニレンスルフィド繊維であり、該ポリフェニレンスルフィド繊維中で前記ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂と前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が、構造周期0.001〜2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの分散構造を形成し、その後延伸してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド繊維。
- ポリフェニレンスルフィド樹脂と、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド繊維であり、該ポリフェニレンスルフィド繊維におけるポリフェニレンスルフィド樹脂の含有量が40重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド繊維。
- 前記ポリフェニレンスルフィド繊維における両相連続構造または分散構造がスピノーダル分解により相分離させることによって形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項記載のポリフェニレンスルフィド繊維。
- 前記ポリフェニレンスルフィド繊維が、溶融混練を経て得られたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のポリフェニレンスルフィド繊維。
- 前記ポリフェニレンスルフィド繊維が、溶融混練時の剪断下で相溶化させた後、吐出後の非剪断下で相分離させることにより得られたものであることを特徴とする請求項4記載のポリフェニレンスルフィド繊維。
- ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含んでなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなるポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法であって、前記ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂をスピノーダル分解により相分離させて、構造周期0.001〜2μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜2μmの分散構造を形成させ、その後延伸することを特徴とするポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法。
- 前期延伸が、先ず1.0〜1.5倍の1次延伸を行った後、引き続き2.0〜4.0倍の2次延伸を行う方法であることを特徴とする請求項6記載のポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法。
- ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融紡糸することによりスピノーダル分解を誘発することを特徴とする請求項6または7記載のポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法。
- 前記ポリエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂を溶融混練し、その剪断下で相溶化させ、溶融紡糸の際、紡出後の非剪断下で相分離させることを特徴とする請求項8記載のポリフェニレンスルフィド繊維の製造方法。
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