JP4625188B2 - エネルギー吸収保護部材 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明は、特に保護に適用され、衝撃に対して身体の部分を保護する必要のある人々が身に付ける衣服や衣装に組み込むのに特に適している新規のエネルギー吸収部材に関する。保護部材は、人が誤って接触するかもしれない戸枠または壁端のような対象物に備え付けてもよい。
【０００２】
本発明の保護部材は、医療分野での使用、スポーツマン、オートバイ乗り、外出着（サイクリング/ローラーブレード）、作業服、防護服、機動隊用装備、油井作業員装備、または映画製作班等による使用およびガードレール、エネルギー吸収壁または床の被覆材などのその他多くの用途において特に適用可能である。

【０００３】
衝撃エネルギーを吸収および/または分散させる１つの既存の方法は、エネルギー吸収素材からパッドを製造することである。そのようなパッドは通常発泡体から形成され、保護を必要とする人によって身に付けられるか、または衝撃を受ける可能性のある備品の一部に取り付けられる。固定パッドは、使用の際に曲げる必要がないため可撓性または硬質であってもよい。いくつかの用途において、硬質パッドは着用者によって身に付けられる。例えば、手足の部分を曲げたり、関節を曲げる必要がないため、ラグビーまたはサッカー選手の場合はすねパッドとして、クリケット競技者の場合は前腕パッドとして着用される。しかしながら、関節を保護する必要がある場合は、高度な可撓性が要求される。従って、着用者にパッドを快適に着用できるような必須レベルの可動性を提供するために保護パッドを可撓性素材から形成する必要がある。
【０００４】
身体衝撃保護は、硬質の外殻（例えば、ローラーブレードパッドとして用いられるような）または発泡体の薄板の形態（スキーパンツの挿入物として用いられる）のどちらかに基づくため、現在利用できるものは限定されている。しかしながら、発泡体薄板は保護水準が低く、硬質な外殻は着用時に不快感を与える。
【０００５】
保護部材は、エネルギー吸収素材が外包内に含まれ、衝撃を受けるまでは軟質かつ可撓性のままであるが、衝撃を受けると特性が変化して一時的に硬化することが記載された米国特許第5138722号により公知である。しかしながら、外包の形状は衝撃エネルギーを早急に吸収し分散させるにはあまり有効ではない。
【０００６】
従って、本発明の目的は衝撃エネルギーをより効果的に吸収して分散し、軟質かつ可撓性であり、さらに高エネルギー吸収特性を有する保護部材を提供することである。本発明のさらなる目的は、衣服やその一部に永久的に取り付けられ、衣服やその一部として仕立てることができるエネルギー吸収部材を提供することである。
【０００７】
本発明によれば、外包に含まれ、衝撃を受けるまでは軟質かつ可撓性のままであるが、衝撃を受けると特性が変化して一時的に硬化するエネルギー吸収素材を備えた保護部材を提供する。本発明は、外包を、衝撃力の方へ向けられた頂点を有する少なくとも１つの巻回部で形成することによって、頂点に加えられた衝撃力をその素材が硬化に伴って吸収し、前記衝撃後に通常の可撓性状態に復帰することを特徴とする。
エネルギー吸収素材は外包に封入され、衝撃が継続する間、衝撃力を吸収し、その荷重を分散させることが好ましい。エネルギー吸収素材は、機械的特性が衝撃で変化するダイラタント化合物（dilatent compound）のような歪速度感応性素材であることが好ましい。
【０００８】
好ましい素材は、カタログ番号または商品番号3179のダウコーニングで販売される素材のようなジメチルシロキサン水素終端化ポリマー（“水素終端化”は、“水素末端化”と称することもある）である。
【０００９】
封入用外包が発泡体、織地、プラスチック、ゴムまたは金属あるいはこれらの素材を組み合わせたものから形成することができ、エネルギー吸収素材を包含し、それが外包から外に出るのを防止することができる。しかしながら、外包は通常、熱可塑性のエラストマーから形成されることが好ましい。好ましくは、非晶質グリコール軟質部分を含む結晶性PBT硬質部分を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーが特に適していることが分かっている。デュポン社から商標HYTRELで販売されている熱可塑性エラストマーが素材として好ましい。
【００１０】
封入用外包は実質的に平板状であるが、長手方向に波形加工されているのが好ましい。各波形の側面の角度は決定的ではないが、５４°が優れたエネルギー吸収の結果をもたらすことが分かっている。
【００１１】
封入用外包は、外面および内面を有し、可撓性発泡体層をその内面に接合させることができる。いくつかの使用において、発泡体層を片面だけかまたは内面および外面の両方に接着してもよい。
【００１２】
別の実施形態において、保護部材は、長手方向に弓形の溝形部品である。複数個のこれらの部品は、１つの部品が隣接する部品に対して長軸が９０°となるように隣接する部品に連結されて、保護素材のシートが形成される。シートを形成するため、各部品の角は、隣接部品の角と連結されている。

【００１３】
本発明のいくつかの実施形態を例示としてのみ、添付図面を参照して説明する。
【００１４】
図１および２に、素材２を入れるために密閉封入箇所を提供するために周辺部５にて連結させた上層３および下層４からなる外包に封入された多数のエネルギー吸収素材２を備える本発明の保護部材１を示す。しかしながら、外包を単一体の素材から吹込み成型してもよい。
【００１５】
エネルギー吸収素材２は、通常、低歪速度下で柔軟性があり、パテ状物質と同様に作用する歪速度感応性ポリマー、非ニュートン流体またはダイラタント化合物であってもよい。しかしながら、衝撃が加えられると、素材２はただちに柔軟な状態から変化し、瞬時に硬化することによって衝撃エネルギーを吸収し、分散させる。好ましい素材は、ダウ コーニング社によって製造され、カタログ番号または商品番号３１７９で販売されている素材のようなジメチルシロキサン水素終端化ポリマーである。
【００１６】
外包を構成する上層３および下層４は、デュポン社によって製造され、商標HY-TRELで販売されている熱可塑性エラストマー素材から形成されるのが好ましい。この素材は、裂けたり破れたりすることなく衝撃エネルギーに耐えるのに十分な強度を有するが、同時に上層３および下層４を介して伝え、パテ状エネルギー吸収素材２により吸収させる。
【００１７】
この独特な多層エネルギー吸収部材は、保護が必要でない場合には、身体の動作に応じて屈曲可能なため、着用時は非常に快適である。しかしながら、衝撃を与えられた場合は、エネルギー吸収部材中の歪速度感応性ポリマーが瞬時に反応し、衝撃を吸収し分散する半剛体構造を形成し、最大限の保護をもたらす。単独試験により、本発明のエネルギー吸収部材は通常の発泡体および/またはプラスチック系よりも実質的により効果的であることが確認された。
【００１８】
本発明の能動的保護システム（APS）を、衝撃試験に付し、その結果を商標"Dianese"でオートバイ乗りに販売されている公知の衝撃保護部材で行われた同一の衝撃試験と比較した。圧力の大きさおよび衝撃による力の分布を記録するため、それが受ける衝撃圧力の段階に応じて色が変化する特別なフィルムを用いる。

【００１９】
試験を行うため、Dianeseおよび本発明のAPSの一片に比較試験で衝撃を与えた。以下の４枚の写真により衝撃を記録する。

（黒い部分が少ないところは圧力が低いことを示す、すなわち保護が良好）
【００２０】
APS部材の内部表面上では非常に薄い灰色の領域のみが認識されたのに対し、Dianese部材の内部表面上ではかなりの黒い領域が認識されたことから、本発明のAPSエネルギー吸収部材は、公知の"Dianese"パッドよりも非常に優れていたことが写真から見受けられる。このことは、本発明のAPS部材が、その内部表面を通過する力が比較的にほとんどないため、極めて高水準の保護を提供することを明確に例証している。
【００２１】
図３〜５は、エネルギー吸収特性を増大させるための複数個の波形部を有する波形形状を有する本発明によるエネルギー吸収部材の他の形態を示す。エネルギー吸収部材は、外包内にエネルギー吸収素材２を含包するために周辺部５（図２参照）で封止された上下層（HY-TRELシート）３および４を備える（図４を参照）。図３〜５に示す波形エネルギー吸収部材の構造は、部材がその長手方向に一連の波形部８を有する点以外は図１および２に示す構造と同一である。そのエネルギー吸収特性を増大させ、また快適さを高めるために、外包の外面７（下層４の外面）に発泡体層９を接合してもよい。外包は、衝撃後に元の形状に復帰することができるように十分な厚さでなければならない。0.5〜1.5mmが特に満足のいく厚さであることが分かった。
【００２２】
図５において、衝撃荷重Iを矢印の方向でエネルギー吸収部材１に加えると、荷重Iは波形部８の頂点８Aにより、その両側で下方へ分散される。それは素材が硬化するにつれてせん断力を生じ、それによって衝撃荷重を吸収する。頂点８Aはとがっているよりはむしろ湾曲している方が好ましい。なぜならこれは衝撃荷重Iを各波形部８の両側で下方分散させることをさらに助けるからである。
【００２３】
発泡裏張材９は必須というよりはむしろ好ましく、通常は着用者の快適さを高めるためにエネルギー吸収部材の内部表面に備えられる。
【００２４】
図４は、図５に示すようなシート素材作成時の使用に特に適した本発明によるエネルギー吸収部材１の他の形態を示す。各エネルギー吸収部材１は、外包を構成する上層３および下層４と、その間に封入されたパテ状エネルギー吸収素材２とを備える。エネルギー吸収部材１は、溝状または弓状でもよく、必須ではないが、穴１１を有するそれぞれの角において足部またはパッド１０の形状を有する連結手段を有することが好都合である。しかしながら、それは円錐形、またはエネルギーを吸収できる形のいずれかであってもよい。
【００２５】
図５において明確に分かるように、複数個の溝状エネルギー吸収部材１を、例えば足部１０を用いて互いに連結させ、いくつかの面において柔軟かつ湾曲可能なシート素材を形成することが可能である。シートの各エネルギー吸収部材１は、衝撃荷重をシート素材に加えたとき、各部材１内にある通常では柔軟なエネルギー吸収素材２が一時的に硬化して荷重を吸収し、衝撃エネルギーを吸収した直後は素材２は即座に通常の柔軟な状態に復帰すると述べたエネルギー吸収部材と全く同様に作用する。
【００２６】
図５に示すシートの形状は、互いに縦軸が垂直となるように連活された各エネルギー吸収部材１を用いてシート素材を形成することができる方法の１つの例にすぎない。他の形状も可能である。
【００２７】
本発明のエネルギー吸収部材の特に有用な用途を図６に示す。図６において、エネルギー吸収肘パッド１６および肩パッド１７が衣服１５に組み込まれている。類似したパッドを１本のズボンのひざ、向こうずねまたはももの部分（図示せず）に組み込んでもよい。
【００２８】
図７は、本発明による肘パッドのデザインを示す。これはスパー２３を用いて主体部分に取り付けられた任意のアウトリガー２１、２２を有する細長の主体部分２０を備える。主体部分２０は、着用者の肘関節を受け入れるためのドーム形部分２４を有する。図７に示すエネルギー吸収部材は、それが外包を構成するHYTRELからなる上層３および下層４の間に封入されたエネルギー吸収パテ状素材２を備えると既に述べた実施形態と同様の構造である。主体部分２０およびアウトリガー２１に図示するように波形に加工されており、従って図２〜５に示す保護部材に構造上類似している。
【００２９】
使用時には、着用者はドーム形部分２４内に肘関節をはめ込むようにして主体部分２０を衣服の袖の内部に取り付けるであろう。細長の本体部分２０は通常、着用者の腕に沿って同軸上に延び、アウトリガー２１および２２は腕を両側で囲むように折り曲げられるだろう。従って、肘部分はその肘関節に対する直接的な衝撃から保護され、肘関節の両側の腕の部分もまた保護されるであろう。図９に示す保護部材は着用者の袖の中、例えば伸縮性ポケットの中に挿入されてもよいし、あるいはまた、縫い合わせるかまたは熱接着することによって衣服を形成するための織物に一体部分として取り付けられてもよい。
【００３０】
図７に示す実施形態は肘パッドであるが、例えば、肩、ひざまた腰まわり等のとうな他の身体部分を保護するために、同じように機能しつつ、そのデザインを変えても構わない。
【００３１】
図８および９は本発明のエネルギー吸収部材１のさらなる実施形態を示す。その部材は、例えばひざ、肘または腰まわりの関節を保護するために本発明のエネルギー吸収パッドが取り付けられた織物層またはチューブ１２を備える。エネルギー吸収部材１は、好ましくはHYTRELのような素材で形成された外包を構成する上層３および下層４と、その間に封入されたパテ状のエネルギー吸収素材（柔軟性素材）２とを備える。上層３および下層４の端部は、パテ状素材を密閉するために、互いに周辺部５（図２参照）で結合することが好ましい。しかしながら、上層３および下層４を、表面が好ましくはポリウレタンまたはその他の膜などの防水加工素材を用いて被覆された織物素材で形成し、その中にエネルギー吸収素材２を封入および包含してもよい。
【００３２】
エネルギー吸収特性を補助するために、環状発泡リング１３を下層４の外面７に接合することができる。織物素材から形成されるスペーサー１４を、環状発泡リング１３内に取り付けて、エネルギー吸収素材（パテ層）２が使用者の保護されるべき手足に触れないようにすることが好ましい。
【００３３】
図９においてより明確に分かるように、衝撃荷重Iが着用者の手足１２に適合させたエネルギー吸収部材１に加えられると、エネルギーの衝撃は最初に矢印T方向にそって横方向に分散させる。それによって、衝撃荷重Iが着用者のけい骨１２Aからそらされる。最初の衝撃は、柔軟状態から硬化状態へ変化するエネルギー吸収素材（パテ状素材）２により吸収されるが、荷重は部材１の外縁部へ横方向から伝導され、外包の上層（発泡リング）３および着用者の手足１２の柔肌または柔筋中に荷重Eとして吸収される。先に記載および図示したエネルギー吸収部材が衝撃力Iを骨１２Aから上層３の中および足の脂肪組織中に移動させることは理解されるであろう。エネルギー吸収部材１は図１〜３または７に示す波形部８を含むように成形することができる。
【００３４】
本発明の能動的保護システム（APS）は擦過傷および衝撃から人体を保護する。この可撓性システムは衣服に直接組み込んでもよい。APSは通常の状態では柔軟であり、身体の動きに容易に適合し、従って非拘束的である。APSは、衝撃を受けるとただちに硬化し、通常の可撓性で快適な状態に復帰する前にその衝撃力を分散し吸収する。
【００３５】
APSは、層状に組み合わせた２つの素材から形成される。このシステムの中心部は、衝撃に反応し、可撓性の外包を構成する上下層３、４に封入される優れた歪速度感応性ポリマー素材２である。このシステムは相互的に作用するように設計されており、どちらかの素材を単独で用いる場合よりも、衝撃性能の優位な増加を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の保護部材の１つの形態である斜視図である。
【図２】図１の波形の保護部材の断面図である。
【図３】図２の丸で囲まれた保護部材の一部の拡大図である。
【図４】本発明の保護部品の図である。
【図５】図４に示す相互に連結した複数個の保護部品からなるシート素材の図である。
【図６】本発明の保護部材を組み込んだ衣服を着用した人の斜視図である。
【図７】肘保護装置として使用される本発明の保護部材の別の形態図である。
【図８】保護部材の別の形態の断面図である。
【図９】着用者の向うずねに位置する図６および７の保護部材の図である。

Claims (17)

1. 外包に含まれ、衝撃力を受けるまでは軟質かつ可撓性のままであるが、衝撃を受けると特性が変化して一時的に硬化するエネルギー吸収素材を備え、外包を、衝撃力の方へ向けられた頂点を有する少なくとも１つの波形部で形成することによって、頂点に加えられた衝撃力を素材が硬化するまで吸収し、前記衝撃後に通常の可撓性状態に復帰することを特徴とする保護部材。
2. 前記エネルギー吸収素材が外包に封入されてなることを特徴とする請求項１に記載の保護部材。
3. 前記エネルギー吸収素材の機械的特性が衝撃で変化することを特徴とする請求項１または２に記載の保護部材。
4. 前記エネルギー吸収素材が歪速度感応性素材であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１つに記載の保護部材。
5. 前記エネルギー吸収素材がダイラタント化合物であることを特徴とする請求項１〜４のいずれか１つに記載の保護部材。
6. 前記エネルギー吸収素材がジメチルシロキサン水素終端化ポリマーであることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１つに記載の保護部材。
7. 前記外包が長手方向に波形加工され、複数個の前記波形部を含むことを特徴とする請求項１〜６のいずれか１つに記載の保護部材。
8. 前記各波形部の側面の角度が５４°であることを特徴とする請求項７に記載の保護部材。
9. 前記エネルギー吸収素材を含む外包の外面に可撓性発泡体層が接合していることを特徴とする請求項１〜８のいずれか１つに記載の保護部材。
10. 前記外包は発泡体、織地、プラスチック、ゴムまたは金属あるいはこれらの素材を組み合わせたものからなり、前記エネルギー吸収素材を含包し、それが前記外包から外に出るのを防止することを特徴とする請求項１〜９のいずれか１つに記載の保護部材。
11. 前記外包がエラストマーで形成されてなることを特徴とする請求項１〜９のいずれか１つに記載の保護部材。
12. 前記エラストマーが非晶質グリコール軟質部分を含む結晶性PBT硬質部分を有することを特徴とする請求項１１に記載の保護部材。
13. 請求項１〜１２のいずれか１つに記載の複数個の保護部材から形成され、複数個の前記保護部材がシートを形成するために互いに連結されていることを特徴とする保護素材シート。
14. 前記各保護部材が長軸を有し、１つの保護部材が隣接する保護部材に対して長軸が90°となるように隣接する保護部材に連結されていることを特徴とする請求項１３に記載の保護素材シート。
15. 前記各保護部材がそれ自身を隣接する保護部材に連結させるための手段を有し、隣接する保護部材の端部が互いに接合してシートを形成することを特徴とする請求項１３または１４に記載の保護素材シート。
16. 請求項１〜１２のいずれか１つに記載の保護部材または請求項１３〜１５のいずれか１つに記載の保護素材シートが不変的に取り付けられた、ある長さの繊維素材。
17. 請求項１６に記載の繊維素材からなる衣服またはその一部分。

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