JP4623867B2 - 受信装置及び受信再生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばビルの構内放送設備などに用いられるディジタルデータ通信システムに関する。
【0002】
本発明において、パケット送信時間とは、送信側サンプリング周波数fsによるクロックに基づいて計測されたパケットの送信時間を言う。また、パケット受信時間とは、受信側サンプリング周波数frによるクロックで計測されたパケットの受信時間を言う。
【0003】
【従来の技術】
LANなどのネットワーク上でのディジタルデータ通信システムでは、テキストや静止画像だけでなく、音声や動画像などのデータをパケット化して通信を行う。この通信システムで音声や動画像の通信を行う場合、受信側は、送信側におけるパケットの送信間隔Δtと同じ時間間隔Δtでパケットを受信し、連続したデータを出力することが要求される。しかし、ネットワークのトラフィックの状況によっては、パケットの伝送時間に揺らぎが生じる、衝突によりパケットが欠落したり順番通り到着しない、などの不具合が生じる。これらの不具合は、再生された音声や画像の品質の劣化原因となる。
【0004】
音声や動画像をリアルタイムに伝送するディジタル通信及び再生方式の1つに、データの最後までの受信を待たずに再生する「ストリーミング再生方式」がある。ストリーミング再生方式では、送信装置側及び受信装置にそれぞれ送信バッファ及び受信バッファが設けられる。この方式における送信装置及び受信装置の処理は、次のようになる。
【0005】
例えば音声通信の場合、送信装置に入力されたアナログ音声信号は、アナログ/ディジタル変換器(ADC)によりディジタル音声データに変換され、送信バッファに蓄積される。通信システムによっては、ネットワーク回線の帯域を有効利用するために、ディジタル音声データをさらに符号化して圧縮音声符号化情報とする。送信バッファに蓄積されたディジタル音声データや圧縮音声符号化情報(以下、まとめてディジタル音声データという)は、パケットに組み立てられ、パケット単位でネットワークを介して受信装置に送信される。
【0006】
受信装置は、パケットを受信して分解し、ディジタル音声データを受信バッファに蓄積する。受信バッファのデータ蓄積量が一定以上になると、ディジタル音声データが受信バッファから読み出され、ディジタル/アナログ変換器(DAC)でアナログ音声データに変換され、出力される。通信システムによっては、受信バッファに蓄積された圧縮音声符号化情報を伸長し、ディジタル音声データを生成する復号化処理を行う。
【0007】
また、前記ストリーミング再生方式に加え、TCP/IPに準拠するデータ通信システムにおいては、RTP(Real-time Transport Protocol)が前記不具合を解決するために利用されている。RTPを用いる通信システムでは、パケットに時間情報やシーケンシャル番号を付加し、これらの情報に基づいてデータの再生を行う。前記時間情報には、送信装置でのパケット送信時間を示すタイムスタンプが含まれている。受信装置は、タイムスタンプ及びシーケンシャル番号を参照することにより、パケットを送信された順に再生することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記ストリーミング再生方式やRTPを採用したデータ通信システムは、受信側で再生されるデータの品質向上にある程度の効果を奏しているものの、十分ではない。そのため、再生中に受信バッファのデータ蓄積量がゼロになってしまい、再生が停止する「アンダーフロー」が発生する場合がある。逆に、受信したパケットを受信バッファに吸収しきれない「オーバーフロー」が発生する場合もある。オーバーフローが生じると、受信したパケットは破棄されてしまう。アンダーフローが生じると音切れが生じ、オーバーフローが生じると音声データが不連続となりノイズの発生を招き、いずれも音声品質が劣化してしまう。
【0009】
アンダーフローやオーバーフローを完全に取り除くことができない一要因として、送信側及び受信側でのサンプリング周波数の誤差が考えられる。例えば音声データ通信の場合、送信装置に入力されたアナログ音声データは、ADCにより一定のサンプリング周波数fsでサンプリングされ、アナログデータからディジタルデータに変換される。受信装置では、前記送信装置とは逆に、受信したデータがDACにより一定のサンプリング周波数frでサンプリングされ、ディジタルデータからアナログデータに変換される。
【0010】
送信装置のサンプリング周波数fsと受信装置のサンプリング周波数frとは同一でなければならない。ところが、送信装置及び受信装置においてサンプリング周波数を発生させる発振器が設計上は同一であっても、実際に発生する周波数fsとfrとにはわずかな誤差が存在する。この誤差のために、同一時間内でのデータ数が送信側と受信側とで異なってしまい、結果として受信バッファのアンダーフローやオーバーフローが生じてしまう。
【0011】
本発明は、RTPを用いたディジタルデータ通信において、再生されるデータの品質を高める技術を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本願第1発明は、送信側サンプリング周波数fsの送信装置に通信網を介して接続された受信装置であって、受信手段と、受信バッファと、周波数生成手段と、時間生成手段と、変換手段と、補正手段と、を備える受信装置を提供する。
【0013】
受信手段は、前記通信網を介し、ディジタルデータ及びパケット送信時間を含む第1及び第2パケットを前記送信装置から順次受信する。受信バッファは、前記ディジタルデータを一時的に蓄積する。周波数生成手段は、受信側サンプリング周波数frを生成する。時間生成手段は、前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記第1パケット及び前記第2パケットそれぞれのパケット受信時間を生成する。変換手段は、前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記受信バッファに蓄積されているディジタルデータを取り出し、前記受信側サンプリング周波数frに従ってアナログデータに変換する。補正手段は、前記第1パケット及び前記第2パケットの各々についてのパケット送信時間及びパケット受信時間に基づいて、前記第1パケットを受信してから前記第2パケットを受信するまでのパケット受信間隔と前記第1パケットを送信してから前記第2パケットを送信するまでのパケット送信間隔との差を検出し、検出結果に基づいて両者の差が縮まるように前記受信側サンプリング周波数frを補正する。
【0014】
送信装置は、連続する2個のパケットP1、P2を、時刻T1、T2でサンプリングしてA/D変換する。両パケットのパケット送信時間の差ΔTs=T2−T1を、パケット送信間隔と呼ぶ。両パケットの受信装置は、時刻T3、T4で両パケットを受信し、D/A変換する。両パケットのパケット受信時間の差ΔTr=T4−T3を、パケット受信間隔と呼ぶ。
【0015】
仮にfs<frとすれば、パケット送信間隔1/fsとパケット受信間隔1/frとの差は、N*(1/fs−1/fr)=(ΔTs−ΔTr)となる(Nは正数であり、1パケット中に含まれるディジタルデータのサンプル数)。この差を元に、受信側サンプリング周波数frを補正し、送信側サンプリング周波数fsとの誤差を減少させる。送信側及び受信側でのサンプリング周波数の誤差に起因するアンダーフローやオーバーフローを抑制し、再生されるデータの品質を高めることができる。
【0016】
本願第2発明は、前記第1発明において、前記周波数生成手段としてVCO(Voltage Control Oscillator)を用い、前記補正手段は前記VCOへの印加電圧を調整することにより、前記受信側サンプリング周波数frを補正する受信装置を提供する。
【0017】
本願第3発明は、送信側サンプリング周波数fsの送信装置に通信網を介して接続された受信装置であって、受信手段と、受信バッファと、周波数生成手段と、時間生成手段と、変換手段と、補正手段と、を備える受信装置を提供する。
【0018】
信手段は、前記通信網を介し、ディジタルデータ、パケット送信時間及び通し番号を含むm個(m≧2)のパケットを前記送信装置から受信する。受信バッファは、前記ディジタルデータを一時的に蓄積する。周波数生成手段は、受信側サンプリング周波数frを生成する。時間生成手段は、前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記第1パケット及び前記第2パケットそれぞれのパケット受信時間を生成する。変換手段は、前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記受信バッファに蓄積されているディジタルデータを取り出し、前記受信側サンプリング周波数frに従ってアナログデータに変換する。補正手段は、前記通し番号順に生成されたn個(n≧2)のパケットで構成されるパケット群ごとに、最初のパケットP1及び最後のパケットPnの各々についてのパケット送信時間とパケット受信時間とに基づいて、前記パケットP1を受信してから前記パケットPnを受信するまでのパケット受信間隔ΔTrと前記パケットP1を送信してから前記パケットPnを送信するまでのパケット送信間隔ΔTsとの差を検出し、以下の条件に基づいて印加されるVCO(Voltage Control Oscillator)への電圧値Vc(V)に基づいて前記受信側サンプリング周波数frを補正する。
【0019】
受信側及び送信側サンプリング周波数fr及びfsとの差は実際には非常にわずかなので、例えば100個毎に周波数frを補正すると良い。例えば、100個目のパケットP100及び200個目のパケットP200が時刻T1及びT2でサンプリングされたとすると、両パケットのパケット送信間隔ΔTs=T2−T1となる。また、パケットP100及びパケットP200が時刻T3及びT4で受信されたとすると、両パケットのパケット受信間隔ΔTr=T4−T3となる。両者の差(ΔTs−ΔTr)を検出し、受信側サンプリング周波数frを補正する。
【0023】
願第発明は、送信側サンプリング周波数fsの送信装置に通信網を介して接続された受信装置に用いられる受信再生プログラムであって、前記通信網を介し、ディジタルデータ及びパケット送信時間を含む第1パケット及び第2パケットを前記送信装置から順次受信する受信手段、前記ディジタルデータを受信バッファに一時的に蓄積する蓄積ステップ、受信側サンプリング周波数frを生成するための周波数生成ステップと、前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記第1パケット及び前記第2パケットのパケット受信時間を生成するための時間生成手段、前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記受信バッファに蓄積されているディジタルデータを取り出し、前記受信側サンプリング周波数frに従ってアナログデータに変換する変換手段、及び前記第1パケット及び前記第2パケットの各々についてパケット送信時間及びパケット受信時間に基づいて、前記第1パケットを受信してから前記第2パケットを受信するまでのパケット受信間隔と前記第1パケットを送信してから前記第2パケットを送信するまでのパケット送信間隔との差を検出し、検出結果に基づいて両者の差が縮まるように前記受信側サンプリング周波数frを補正する補正手段、としてコンピュータを機能させるための受信再生プログラムを提供する。
【0024】
本願第9発明は、音声入力手段と、音声送信手段と、音声受信手段と、音声出力手段とを含む放送システムを提供する。音声入力手段とは、マイクロホンやCDプレーヤなどの音声再生機器などのアナログ音声を入力するための手段である。
【0025】
音声送信手段は、前記音声入力手段に接続され、入力された音声を送信側サンプリング周波数fsに基づいてサンプリングすることによりディジタル音声データに変換し、前記ディジタル音声データとパケット送信時間とを含む第1パケット及び第2パケットを伝送路に出力する。音声受信手段は、前記音声送信手段と前記伝送路を介して接続され、前記ディジタル音声データを受信側サンプリング周波数frに基づいてアナログ音声データに変換する。音声出力手段は、前記音声受信手段に接続され、前記アナログ音声データを出力する。
【0026】
前記音声受信手段は、前記第1パケット及び第2パケットを順次受信するパケット受信手段と、前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記第1パケット及び前記第2パケットそれぞれのパケット受信時間を生成する時間生成手段と、前記第1パケット及び前記第2パケットの各々についてパケット送信時間及びパケット受信時間に基づいて、前記第1パケットを受信してから前記第2パケットを受信するまでのパケット受信間隔と前記第1パケットを送信してから前記第2パケットを送信するまでのパケット送信間隔との差を検出し、検出結果に基づいて両者の差が縮まるように前記受信側サンプリング周波数frを補正する補正手段と、を備えている。
【0028】
【発明の実施の形態】
<発明の概要>
本発明は、パケット送信時間をディジタルデータと共に送受信するディジタル通信システムの受信装置を提供する。本発明に係る受信装置は、送信装置とのサンプリング周波数の差を検出し、その差を減少させる。具体的には、受信装置は、通常の受信処理及び再生処理に加え、補正処理を実行する。
【0029】
補正処理では、パケットP1及びPn(n≧2)のパケット送信間隔ΔTsとパケット受信間隔ΔTrとの差を検出する。検出された差から受信側サンプリング周波数frを補正し、送信側サンプリング周波数fsとの差を減縮させる。
【0030】
図1は、本発明の概要を示す概念説明図である。送信装置は、サンプリング周波数fsで動作し、時刻T1〜T2の間に、100個のパケットP1〜P100を生成する。パケットP1とパケットP100とのパケット送信時間のずれΔTd=T2−T1を、パケット送信間隔という。
【0031】
受信装置は、サンプリング周波数frで動作し、パケットP1〜P100は時刻T3からT4の間で受信される。パケットP1とパケットP100との受信時間のずれΔTr=T4−T3を、パケット受信間隔という。
【0032】
補正処理では、パケットP1及びP100のパケット送信間隔ΔTsとパケット受信間隔ΔTrとの差を検出し、この差が少なくなるように受信側サンプリング周波数frを補正する。以上の処理を、100個のパケット単位で繰り返す。
【0033】
これにより、送信装置と受信装置とのサンプリング周波数の誤差による受信バッファのオーバーフローやアンダーフローを防止し、再生されるデータの品質を高めることができる。
【0034】
<第1実施形態例>
次に、本発明の受信装置を適用した音声通信システムについて、実施形態例を挙げて詳細に説明する。
【0035】
[構成]
図2は、第1実施形態例に係る音声通信システムの構成を示すブロック図である。音声通信システム10は、送信装置1と受信装置2とがLANなどのネットワーク3により接続されて構成されている。なお、図1では、ネットワーク3に接続されている送信装置1及び受信装置2はそれぞれ1つしか示されていないが、通常は複数の送信装置及び受信装置がネットワーク3に接続される。また、送信装置1と受信装置2とは、一体に構成されていても良い。
【0036】
送信装置1は、入力部11、増幅器12、ADC13、入力バッファ14、符号化部15、送信バッファ16、送信部17、VCO18及びTSカウンタ19を有している。マイクなどの入力部11に入力された音声は、アナログ音声信号に変換される。このアナログ音声信号は、増幅器12により増幅され、VCO18が発生するサンプリング周波数fsに基づいてADC13によりディジタル音声データに変換され、入力バッファ14に蓄積される。符号化部15は、入力バッファ14に蓄積されているディジタル音声データを圧縮音声符号化情報に符号化し、送信バッファ16に蓄積する。なお、VCO18は、印加電圧により発生するサンプリング周波数fsを変化させることができる。
【0037】
送信部17は、送信バッファ16のデータをパケットに組み立て、一定の時間間隔でネットワーク3に送出する。このパケットには、RTPヘッダが含まれている。RTPヘッダには、タイムスタンプ及びシーケンス番号が含まれている。タイムスタンプは、TSカウンタ19がサンプリング周波数fsに基づいて生成され、パケットの最初のサンプルを生成した時間を表す。シーケンス番号は、パケットの順番を示す。パケットの構成については後述する。なお、ディジタル音声データを符号化しない場合、符号化部15を省略することができる。
【0038】
受信装置2は、受信部21、受信バッファ22、復号化部23、出力バッファ24、DAC25、増幅部26、出力部27、VCO28、TSカウンタ29及び補正部210を有している。ネットワーク3に送出されたパケットは、受信部21により受信され、分解されて受信バッファ22に格納される。受信バッファ22に蓄積された圧縮音声符号化情報は、復号化部23により復号化及び伸長され、ディジタル音声データになる。このディジタル音声データは、出力バッファ24に格納され、DAC25によりサンプリング周波数frでアナログ音声信号に変換される。サンプリング周波数frは、VCO28により生成される。アナログ音声信号は、増幅部26により増幅され、スピーカなどの出力部27から空気中に拡声される。送信装置1側の符号化部15が省略される場合、受信装置2の復号化部23を省略することができる。スピーカなどの出力部27は、受信装置2と独立に設けてもよい。
【0039】
TSカウンタ29は、サンプリング周波数frに基づいてタイムスタンプを生成し、補正部210に渡す。後述するように、タイムスタンプの値そのものではなく値の差が補正処理に用いられるので、タイムスタンプの初期値は任意で良い。タイムスタンプフォーマットは前述と同様である。補正部210は、n個(nは自然数)のパケットを受信するたびに、n個のパケットの中で最初のパケットP1と最後のパケットPnとのパケット送信間隔ΔTsと、パケット受信間隔ΔTrとの誤差を検出する。さらに、検出された誤差に基づいて、受信側サンプリング周波数frを送信側サンプリング周波数fsに近づけるよう補正する。
【0040】
[パケット構成]
図3に、送受信されるパケットの構成例を示す。パケットには、IPヘッダ、UDPヘッダ、RTPヘッダ及び音声ディジタルデータが含まれている。IPヘッダには、送信元のIPアドレス、送信先のIPアドレスなどが記述されている。UDPヘッダには、送信元ポート番号、送信先ポート番号、メッセージ長などが記述されている。なお、IPパケットのデータ部にUDPパケットではなくTCPパケットを用いることもでき、その場合にはUDPヘッダに代えてTCPヘッダが用いられる。RTPヘッダには、下記の情報が含まれている。
【0041】
a)バージョン
b)パディング
c)CSRC:CSRC識別子を何個含んでいるかを示す。
【0042】
d)ペイロードタイプ
e)シーケンス番号:パケットの順番を示す。
f)タイムスタンプ:パケットの先頭のデータをサンプリングした時間を表す。
【0043】
g)SSRC:送信装置の識別子
h)CSRC:元の送信者の識別子リスト。
[処理]
次に、前記構成を有する受信装置2が行う処理の流れについて詳細に説明する。受信装置2は、受信処理、再生処理及び補正処理の3つの処理を独立に実行する。以下、これらの処理について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0044】
(1)受信処理
図4(a)は、受信装置2が行う受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。受信装置2は、送信装置1から通信の開始を示すコマンドを受信することにより、以下の処理を開始する。
【0045】
ステップS1:受信部21は、通信の終了を示すコマンドを送信装置1から受信するまで、以下のステップS2〜S5までの処理を行う。通信の終了を示すコマンドを受信すると、処理を終了する。
【0046】
ステップS2:受信部21は、パケットを待機しており、パケットを受信すると、ステップS3に移行する。
ステップS3、S4、S5:受信部21は、受信バッファ22に新たなデータを書き込む空きメモリがあるか否かを判断する(S3)。空きメモリがあれば、受信したパケットを受信バッファ22に格納する(S4)。空きメモリがない場合、ステップS5に移行し、受け取ったパケットを破棄する(S5)。
【0047】
以上の処理により、受信バッファ22に次々にデータを蓄積する。
(2)再生処理
図4(b)は、受信装置2が行う再生処理の流れの一例を示すフローチャートである。受信装置2は、送信装置1から通信の開始を示すコマンドを受信することにより、以下の処理を開始する。
【0048】
ステップS11:復号化部23は、再生開始条件が満たされたか否かを判断し、満たされた場合は音声の再生処理を行う。再生開始条件の一例としては、「受信バッファ22に蓄積されるデータ量≧しきい値D1」が挙げられる。しきい値D1としては、ネットワーク負荷や再生速度を考慮した上で、通信システムに適合する経験値を求める。
【0049】
ステップS12:復号化部23は、受信バッファ22にデータがあるか否かを判断する。すなわち、復号化部23は、受信バッファ22のアンダーフローが起きるまで以下のステップS13、S14及びS15を繰り返し、音声の再生を行う。受信バッファ22のアンダーフローが発生すると、後述するステップS16に移行する。
【0050】
ステップS13、S14、S15:復号化部23は、受信バッファ22から圧縮音声符号化情報を1ブロック分ずつ読み出す(S13)。ついで、1ブロックに含まれているサンプリングデータを、順次伸長及び復号化し、出力バッファ24に格納する(S14)。出力バッファ24に格納されたディジタル音声データは、DAC25によりサンプリング周波数frでアナログ音声信号に変換され、増幅部26により増幅されて出力部27から空気中に拡声される。1ブロックに含まれるサンプリングデータを全てアナログデータに変換して出力するまで、再生を行う(S15)。1ブロック分のデータの再生が終了すると、前記ステップS12に戻る。
【0051】
ステップS16:受信バッファ22にデータがなくなった場合、復号化部23は、通信終了のコマンドを送信装置1から受信したか否かを判断する。“Yes”と判断すると処理を終了する。“No”と判断した場合は、すなわちアンダーフローが生じている場合は、ステップS11に戻り再生開始条件が満足されるのを待機する。
【0052】
この処理では、再生開始条件が満たされると再生処理を開始し、受信バッファに蓄積データがある限り再生処理を繰り返す。
(3)補正処理
図3は、補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。この処理では、補正部210は、100個のパケットからなるパケット群G1、G2、G3・・・を、シーケンス番号順に生成する。そして、パケット群を生成するたびに、パケット群の最初と最後のパケットのパケット送信間隔ΔTs及びパケット受信間隔ΔTrの差を求め、受信側サンプリング周波数frを補正する。以下の処理においては、次の変数を用いる。
【0053】
SNe:パケット群の最後のパケットのシーケンシャル番号
SN0:パケット群の最初のパケットのシーケンシャル番号
SNm:通信開始後m番目のパケットPm(mは自然数)のシーケンシャル番号
STSe:パケット群の最後のパケットの送信側タイムスタンプ
STS0:パケット群の最初のパケットの送信側タイムスタンプ
STSm:パケットPmの送信側タイムスタンプ
RTSe:パケット群の最後のパケットの受信側タイムスタンプ
RTS0:パケット群の最初のパケットの受信側タイムスタンプ
RTSm:パケットPmの受信側タイムスタンプ
なお、説明を容易にするため、パケットは順次受信されると仮定する。受信装置2は、送信装置1から通信の開始を示すコマンドを受信することにより、以下の処理を開始する。
【0054】
ステップS21:補正部210は、通信の終了を示すコマンドを送信装置1から受信するまで、以下のステップS22〜S212の処理を行う。通信の終了を示すコマンドを受信すると、処理を終了する。
【0055】
ステップS22:補正部210は、パケットを待機しており、パケットを受信すると、ステップS23に移行する。
ステップS23:補正部210は、受信したパケットPmの受信側タイムスタンプRTSmを、TSカウンタ29から取得する。
【0056】
ステップS24:補正部210は、受信したパケットPmのシーケンシャル番号SNmをRTPヘッダから取得し、SNe=SNmとする。通信開始時(m=1)であれば、SNe=SN1となる。
【0057】
ステップS25:補正部210は、受信したパケットPmの送信側タイムスタンプSTSmをRTPヘッダから取得し、STSe=STSmとする。通信開始時(m=1)であれば、STSe=STS1となる。
【0058】
ステップS26:補正部210は、通信開始後、最初のパケットの受信であるか否かを判断し、“Yes”と判断するとステップS27に移行する。“No”と判断すると、後述するステップS210に移行する。
【0059】
ステップS27、S28、S29:通信を開始後最初のパケットP1を受信すると、補正部210は、SN0、STS0及びRTS0に初期値を設定する。すなわち、SN0=SN1、STS0=STS1、RTS0=RTS1とする(S27、S28、S29)。ここで、受信側タイムスタンプRTS1は、TSカウンタ29から取得可能である。その後、ステップS21に戻り、通信終了まで次のパケットの受信を待機する。
【0060】
ステップS210:補正部210は、通信開始後2番目以降のパケットを受信する毎に、シーケンシャル番号順に100個のパケットからなる新たなパケット群Gn(n=1,2,3・・・)を生成できるか否かを判断する。新たなパケット群Gnを生成するたびにステップS211〜S212の処理を行う。新たなパケット群を生成できない場合、ステップS21に戻り、次のパケットの受信を待機する。なお、1つのパケット群に含まれるパケット数は、パケット送信間隔ΔTsとパケット受信間隔ΔTrとの差を検出しやすい範囲で、適宜変更可能である。
【0061】
ステップS211:補正部210は、VCO28に印加する電圧値Vcを補正する。例えば、新たな電圧値Vcは、以下のようにして算出することができる。
Vc(V)=Vcp+D・Vmax/2F
ここで、Vcp:補正前の電圧値
Vmax:VCO制御電圧の上限
F:VCO制御電圧の振幅(+方向及び−方向)
D=A・(ΔTs−ΔTr)/ΔTr
ΔTs=STSe−STS0
ΔTr=RTSe−RTS0
A:変換係数
である。
【0062】
ステップS212:補正部210は、前記ステップS211で算出した電圧値Vcを、VCO28に出力する。これにより、新たな電圧Vcに基づいて受信側サンプリング周波数frが生成される。図6は、上記の式に基づいてサンプリング周波数の誤差が修正される関係を示す。図中上向き矢印は電圧や周波数の上昇を、下向き矢印は下降を示す。すなわち、fs<frであれば、Vcを上昇させてfrの値を減少させる。fs>frであれば、Vcを減少させてfrを上昇させる。
【0063】
補正部210は、サンプリング周波数frの補正後、ステップS27〜S29の処理を行う。すなわち、次のパケット群Gn+1のSN0、STS0及びRTS0として、現在のパケット群GnのSNe、STSe及びRTSeを設定する。例えば、パケットP1〜P100からなるパケット群G1を生成した場合、次のパケット群G2について、SN0=SN100、STS0=STS100、RTS0=RTS100とする。その後、前記ステップS21に戻り、通信終了まで前述の処理を繰り返す。
【0064】
以上の処理により、補正部210は、この例では100個のパケットからなるパケット群をシーケンス番号順に生成する。そして、新たなパケット群を生成する毎に、最初と最後のパケットのパケット送信間隔とパケット受信間隔との誤差を検出し、受信側サンプリング周波数を補正する。
【0065】
<その他の実施形態例>
(A)前述の実施形態例では、音声通信システムについて説明したが、本発明に係る受信装置は、音声通信だけでなく、動画像通信にも好ましく用いられる。また、静止画像、テキストデータなどの受信装置としても好適である。
【0066】
(B)コンピュータに前述の処理を実行させるプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明に含まれる。ここで記録媒体としては、コンピュータが読み書き可能なフロッピーディスク、ハードディスク、半導体メモリ、CD-ROM、DVD、光磁気ディスク(MO)、その他のものが挙げられる。
【0067】
【発明の効果】
本発明を用いれば、ストリーム再生方式を採用した通信システムの受信装置で再生される音声の品質を高めることを期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念説明図。
【図2】第1実施形態例に係る通信システムの構成を示すブロック図。
【図3】第1実施形態例におけるパケット構成の一例を示す説明図。
【図4】第1実施形態例における受信処理及び再生処理。
(a)受信処理の流れを示すフローチャート。
(b)再生処理の流れを示すフローチャート。
【図5】第1実施形態例における補正処理の流れを示すフローチャート。
【図6】サンプリング周波数fs、frとVCOへの印加電圧との関係を示す説明図。
【符号の説明】
1;送信装置
2;受信装置
3;ネットワーク
22;受信バッファ
28;VCO(受信側)
29;TSカウンタ(受信側)
210;補正部

Claims (5)

  1. 送信側サンプリング周波数fsの送信装置に通信網を介して接続された受信装置であって、
    前記通信網を介し、ディジタルデータ及びパケット送信時間を含む第1及び第2パケットを前記送信装置から順次受信する受信手段と、
    前記ディジタルデータを一時的に蓄積する受信バッファと
    信側サンプリング周波数frを生成する周波数生成手段と、
    前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、受信するパケットのパケット受信時間を生成する時間生成手段と、
    前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記受信バッファに蓄積されているディジタルデータを取り出し、前記受信側サンプリング周波数frに従ってアナログデータに変換する変換手段と、
    前記第1パケット及び前記第2パケットの各々についてのパケット送信時間及びパケット受信時間に基づいて、前記第1パケットを受信してから前記第2パケットを受信するまでのパケット受信間隔と前記第1パケットを送信してから前記第2パケットを送信するまでのパケット送信間隔との差を検出し、検出結果に基づいて両者の差が縮まるように前記受信側サンプリング周波数frを補正する補正手段と、
    を備える受信装置。
  2. 前記周波数生成手段としてVCO(Voltage Control Oscillator)を用い、
    前記補正手段は前記VCOへの印加電圧を調整することにより、前記受信側サンプリング周波数frを補正する、請求項1に記載の受信装置。
  3. 送信側サンプリング周波数fsの送信装置に通信網を介して接続された受信装置であって、
    前記通信網を介し、ディジタルデータ、パケット送信時間及び通し番号を含むm個(m≧2)のパケットを前記送信装置から受信する受信手段と、
    前記ディジタルデータを一時的に蓄積する受信バッファと
    信側サンプリング周波数frを生成する周波数生成手段と、
    前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、受信するパケットのパケット受信時間を生成する時間生成手段と、
    前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記受信バッファに蓄積されているディジタルデータを取り出し、前記サンプリング周波数frに従ってアナログデータに変換する変換手段と、
    前記通し番号順に生成されたn個(n≧2)のパケットで構成されるパケット群ごとに、最初のパケットP1及び最後のパケットPnの各々についてのパケット送信時間とパケット受信時間とに基づいて、前記パケットP1を受信してから前記パケットPnを受信するまでのパケット受信間隔ΔTrと前記パケットP1を送信してから前記パケットPnを送信するまでのパケット送信間隔ΔTsとの差を検出し、以下の条件に基づいて印加されるVCO(Voltage Control Oscillator)への電圧値Vc(V)に基づいて前記受信側サンプリング周波数frを補正する補正手段と、
    を備える受信装置。
    Vc(V)=Vcp+D・Vmax/2F
    ここで、Vcpは補正前の電圧値、VmaxはVCO制御電圧の上限、FはVCO制御電圧の振幅(+方向及び−方向)、D=A・(ΔTs−ΔTr)/ΔTr、ΔTs=STSe−STS0、ΔTr=RTSe−RTS0、Aは変換係数。
  4. 送信側サンプリング周波数fsの送信装置に通信網を介して接続された受信装置に用いられる受信再生プログラムであって、
    前記通信網を介し、ディジタルデータ及びパケット送信時間を含む第1パケット及び第2パケットを前記送信装置から順次受信する受信手段、
    前記ディジタルデータを受信バッファに一時的に蓄積する蓄積ステップ
    信側サンプリング周波数frを生成するための周波数生成ステップと、
    前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記第1パケット及び前記第2パケットのパケット受信時間を生成するための時間生成手段、
    前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記受信バッファに蓄積されているディジタルデータを取り出し、前記受信側サンプリング周波数frに従ってアナログデータに変換する変換手段、及び
    前記第1パケット及び前記第2パケットの各々についてパケット送信時間及びパケット受信時間に基づいて、前記第1パケットを受信してから前記第2パケットを受信するまでのパケット受信間隔と前記第1パケットを送信してから前記第2パケットを送信するまでのパケット送信間隔との差を検出し、検出結果に基づいて両者の差が縮まるように前記受信側サンプリング周波数frを補正する補正手段、
    としてコンピュータを機能させるための受信再生プログラム。
  5. 放送システムであって、
    音声入力手段と、
    前記音声入力手段に接続され、入力された音声を送信側サンプリング周波数fsに基づいてサンプリングすることによりディジタル音声データに変換し、前記ディジタル音声データとパケット送信時間とを含む第1パケット及び第2パケットを順次伝送路に出力する音声送信手段と、
    前記音声送信手段と前記伝送路を介して接続され、前記ディジタル音声データを受信側サンプリング周波数frに基づいてアナログ音声データに変換する音声受信手段と、
    前記音声受信手段に接続され、前記アナログ音声データを出力する音声出力手段とを含み、
    前記音声受信手段は、
    前記第1パケット及び第2パケットを順次受信するパケット受信手段と、
    前記受信側サンプリング周波数frに基づいて、前記第1パケット及び前記第2パケットそれぞれのパケット受信時間を生成する時間生成手段と、
    前記第1パケット及び前記第2パケットの各々についてパケット送信時間及びパケット受信時間に基づいて、前記第1パケットを受信してから前記第2パケットを受信するまでのパケット受信間隔と前記第1パケットを送信してから前記第2パケットを送信するまでのパケット送信間隔との差を検出し、検出結果に基づいて両者の差が縮まるように前記受信側サンプリング周波数frを補正する補正手段と、
    を備えている放送システム。
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