JP4623067B2 - 医療用処置用具 - Google Patents
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Description
この装置を使用することにより、気腹下で摘出臓器周囲の剥離などの処置を十分に行った後、臓器を取出す場所に3〜5cm程度の小切開をおき、その小切開口から対象臓器を体外に取りだして病変部の切離、摘出、縫合を術者が直接見て、手術を行うことができる。しかしながら、「糸で切開部を開創すると切開部の腹壁に糸がめり込み十分な開創が困難である。」「固定部材間隔調整用シートを固定する突起が付設されている他、概シートが開創部の周りに付設されており、臓器を引き出しての処置が困難になる」等の問題点があった。
(1)筒状部材の一方の端側の開口部には第一の固定部材を付設し、他方の端側の開口部には第二の固定部材を付設した切開創に留置する医療用処置具において、前記第二の固定部材には両固定部材間の長さを調整するとともに、両固定部材間にたわんだ状態で配置可能とされ、開創に使用される2つ以上の引張りベルトの一端がそれぞれ付設され、前記第一の固定部材の体表接地面に対して垂直な側面には前記引張りベルトを係止めする手段を有するベルト抵抗調整部材が付設され、前記引張りベルトの一部は、前記筒状部材の内側に位置し、かつ、前記引張りベルトの他端は、それぞれ前記第一の固定部材の前記側面および前記ベルト抵抗調整部材を前記筒状部材の内側から外側に水平方向に貫通して配置されている医療用処置用具、(2)前記引張りベルトを係止めする手段が、前記ベルト抵抗調整部材の前記引張りベルトを通すスリット付近に形成された凹凸であり、前記引張りベルトには、前記凹凸に対応し、前記凹凸に係止されるラチェット溝が形成されている(1)の医療用処置用具、(3)前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸がノコギリ歯形状である(2)記載の医療用処置用具、(4)前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸と、前記引張りベルトの前記ラチェット溝との係止めを解除する手段を有している(2)または(3)記載の医療用処置用具、(5)前記係止めを解除する手段が前記引張りベルトの前記ラチェット溝と前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸の間に挿入される薄板である(4)記載の医療用処置用具、(6)前記係止めを解除する手段が前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸に接続され、前記ベルト抵抗調整部材から突出する突起部である(4)記載の医療用処置用具、(7)前記ベルト抵抗調整部材、前記引張りベルトの両方又は片方の少なくとも一部分が、縦弾性率0.05〜10kg/mm2の材料で構成される(1)〜(6)いずれか記載の医療用処置用具、である。
腹腔鏡下手術の術中には、簡単に気腹下処置と腹腔外処置との切り替えができ、直視下における創部直下の処置が容易である為、術者のストレスが軽減され、手術時間のスピードアップが図られ、更には、開腹手術より手術創が小さく患者への負担が軽いために、患者の術後入院期間も短くなり、患者、病院にとって大きなメリットがある。更に、術後の切開跡は目立たない程小さく、美容上有効である。
構造を簡単に説明すると第二の固定部材(2)は臓器取り出し用の開口部(12)を持ち、筒状部材(5)の開口部(12)に沿って固定される。筒状部材(5)のもう一端は第一の固定部材(1)に接続される。第二の固定部材(2)には任意の数の引張りベルト(3)を付設する。引張りベルト(3)はベルト抵抗調整部材(4)のスリット(18)を通し配置する。ベルト抵抗調整部材(4)は、第一の固定部材(1)に配置される。第一の固定部材(1)には、気腹ガスの漏れを防ぐコンバーター(6)が付設される。コンバーター(6)には気密部材(7)がほぼ中央に付設される。筒状部材(5)と引張りベルト(3)は腹壁の厚さよりも長く、任意の腹壁の厚さにも設置することが可能であり、引張りベルト(3)に張力を与えることで切開創の開創が可能である。コンバーター(6)は第一の固定部材(1)に簡便に取り付けることが可能であるため、気腹操作と臓器を取り出しての操作の移行が簡便である。コンバーター(6)には気密部材(7)が付設されているため、トロッカー等を設置することができ、鉗子等を用いた処置が可能である。
第一の固定部材(1)は筒状部材(5)の開口部(12)に沿って付設される。通常、射出成形、圧縮成形によって作製される。筒状部材(5)表面に密着して熱溶着または接着固定されるか、Oリング等を使用して物理的な締め付けにより固定される。形状は円形や多角形等で中央に臓器取り出し用の開口部(12)を持つ形状で特には限定しないが、開口部(12)に術者の握りこぶしが挿入可能で、腹上に設置した場合に嵩張らない程度の大きさが望ましく、外寸が直径50〜300mmの大きさ、内寸が直径30〜280mmのリング形状がよい。第一の固定部材(1)の高さはできるだけ低い方が、第一の固定部材(1)の開口部(12)から臓器を体表に引き出し易くなる他、開口部(12)を支点として柄の長い処置具を体内に挿入する場合に処置範囲が広くなり好ましく、5〜50mmであることが好ましい。
また、ベルト抵抗調整部材(4)を固定する部位にリブを設置する方が気密性が向上し望ましい。
第二の固定部材(2)は筒状部材(5)の開口部に沿って付設される。通常、射出成形、圧縮成形または押出成形チューブの加工によって作製される。筒状部材(5)に包まれ、密着して熱溶着または接着固定されるか、第二の固定部材(2)表面に密着して熱溶着または接着固定される。或いはOリング等を使用して物理的な締め付けにより固定されてもよい。腹腔鏡補助下大腸切除術を行う場合、約20〜80mmの小切開に対して内径約30〜120mm、外径約40〜200mmに設定することが好ましい。厚さは腹腔内で嵩張らないことが要求されるため、0.5〜10mm程度が好ましい。切開創から腹腔内に第二の固定部材(2)を折り曲げて挿入するため、素材はある程度の弾力を備えている方が好ましい。第二の固定部材(2)の材質は塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、SEBS樹脂、シリコーンゴム等や、ステンレス鋼等の金属が使用される。
引張りベルト(3)は第二の固定部材(2)に接続され、ベルト抵抗調整部材(4)のスリット(18)を通すように配置する。引張りベルト(3)の幅は、図2に示すがごとく切開創を大きく(なるべく円形に)開創するために10mm以上であることが望ましいが、過度に幅広いと切開創へ挿入し難くなるため、10〜60mmの範囲であることが好ましい。厚さは体表での用具の高さを低く抑えるために0.1〜5mmのシート状であることが好ましい。引張りベルト(3)の長さは種々な腹壁に対応するために長い方が良いが、長すぎると開創した際に体表に露出し、トロッカー等の穿刺部位を制限するため、実用的な長さとして30〜200mmとすることが好ましい。
ベルト抵抗調整部材(4)は第一の固定部材(1)に付設される。ベルト抵抗調整部材(4)は引張りベルト(3)を通すスリット(18)が付設されている。スリット(18)は気密性を確保する為に、引張りベルトの断面とほぼ同じ形状とした方が好ましい。このスリットの周辺には引張りベルト(3)の凹凸と対応する凹凸(19)が付設され、引張りベルト(3)に係り止めし、開創状態が収縮することを抑制する。ベルト抵抗調整部材(4)は、第一の固定部材(1)に配置するときに気密を保つようにリブ(14)または凹部を付設することが望ましい。一例を図5に示す。
筒状部材(5)は肉厚0.05〜3mmの平面またはテーパーのかかった筒状であり、通常、押出成形またはインフレーション成形等により作製されるが特に限定されない。筒状部材(5)の大きさは処置を行う部位、目的によって異なるが、腹腔鏡補助下大腸切除術に使用される場合、外径が30〜300mmが望ましい。使用時には内視鏡や鉗子等の処置具が頻繁に出入りするため、嵩張らず、適度に柔軟で、更に、処置具等が当たっても切れたり裂けたりし難い材質を選ぶのが良く、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、SEBS樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム等の材質が好ましい。
コンバーター(6)は第一の固定部材(1)上に設置し、気腹時に腹腔内の気密を確保するためのものである。着脱を行う場合、第一の固定部材(1)との凹凸やネジによって固定しても良いが、コンバーター(6)の端にツメ(11)を付設し、第一の固定部材(1)の側面に嵌合する様式をとった方が簡便で好ましい。通常射出成形、圧縮成形などで成形される。コンバーター(6)は図1(B)、図12のように開口部のない気密部材(7)を取り付け、これを刺入して用いるタイプや図13のように第一の気密部材(8)と第二の気密部材(9)を付設したタイプ、図14のように第一の気密部材(8)と第二の気密部材(9)を一体成形したタイプが考えられる。コンバーター(6)には気密部材(7)が付設され、その中央に窓(10)を形成する。窓(10)の大きさは挿入する処置具等の大きさによって決められ直径1〜250mm、好ましくは直径1〜150mmに設定することが適当である。高さは処置の際に邪魔にならないように1〜40mmが適当である。その材質は塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルフォン樹脂等の硬質樹脂かシリコーンゴム、天然ゴム、NBR等の合成ゴムが使用される。
気密部材(7)は図12のようにトロッカーや鉗子挿入時に気密を保つために配置される。開口部のない隔膜である。厚さは0.1〜3mmが好ましい。これは、0.1mm未満では炭酸ガスの圧力により弁が変形され易くなり、3mmを超えると鉗子等の処置具を挿入する際の摩擦抵抗が大きくなり、挿入が困難となるためである。内径は処置具等の外径に合わせ、0.5mm〜80mmが好ましい。トロッカー等の処置具を挿入した際に気密が保てるように、気密部材の材質は引き裂き強度が5〜100N/mmであることが好ましい。更に、可とう性を有するものがより好ましく例えば天然ゴム、シリコーンゴム、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、SEBS樹脂等が好適である。
第一の気密部材(8)は鉗子等を挿入していない時に気密を保つために設置するものであり、近位端の先端をキャップ等で閉じたり、図13のように、内部にフラップタイプの弁やダックビルタイプの弁等の弁部材を付設しても良い。また、単にシートにスリット加えた図14のようなタイプでも良い。スリットの長さは挿入するトロッカー、処置具、又は腕のサイズにあわせて設定すればよく、1〜250mm、特に1〜150mmが好ましい。図14のように一体成形をする場合はスリットが裂けた場合でも第二の気密部材まで引き裂けないように肉厚部を設置したりすることが望ましい。キャップ等で閉じる場合は近位端入口に嵌合部材を取り付け、それとの凹凸で嵌合させたり、ネジによって固定しても良い。キャップは通常射出成形などで成形され、その材質は塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルフォン樹脂など若干硬質の樹脂かシリコーンゴム、天然ゴム、NBR等の合成ゴムなどが使用される。フラップタイプの弁は通常、腹腔鏡外科手術等で使用されるトロッカーに内蔵されているような硬質の成型品とバネ部材を組み合わせた物でも、シリコーンゴムのような弾性部材をフラップ形状に成形、加工して使用しても良い。フラップタイプの弁は体外側に開くことはなく、体内側にのみに動くので、処置具等が挿入されていない時は体内側の陽圧によりフラップが体外方向に押されて閉じる構造である。フラップタイプの弁は射出成形や圧縮成形などで成形され、その材質は塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルフォン樹脂、シリコーンゴム等が使用される。ダックビルタイプの弁も同様に射出成形や圧縮成形で成形され、主としてシリコーンゴム等の弾性材料で作製される。
第二の気密部材(9)は鉗子等を挿入している際に気密を保つために配置され、円形の穴の開いたシール弁等を付設しても良い。シール弁は射出成形、圧縮成形、シート加工等により作製され、近位端入口やコンバーター(6)に熱溶着または接着される。シール弁の厚さは0.1〜3mm程度が好ましい。これは、0.1mm未満では炭酸ガスの圧力により弁が変形され易くなり、3mmを超えると鉗子等の処置具を挿入する際の摩擦抵抗が大きくなり、挿入が困難となるためである。内径は処置具等の外径に合わせ、0.5mm〜30mmが適当である。シール弁の材質は、可とう性を有するものが好ましく例えば天然ゴム、シリコーンゴム、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、SEBS樹脂等が好適である。
次に本発明による医療用処置用具の実際の使用方法について説明する。腹腔鏡補助下大腸切除術を行う場合、まず、複数本のトロッカーを腹部に挿入し、臓器摘出予想部位に約3〜5cm程度の小切開を置く。その小切開に第二の固定部材(2)を挿入する。引張りベルト(3)を引張り切開創を図2のように開創する。
次にコンバーター(6)を第一の固定部材(1)に気密に固定する。コンバーター(6)の気密部材(7)よりトロッカー等を刺入し、そこから腹腔鏡、処置具を挿入して大腸の剥離、リンパ節の郭清、血管の処理などの処置を腹腔鏡下で行い、十分な受動ができた後、コンバーター(6)を取り外して大腸を体外へ取り出し、直視下で患部付近の大腸の切離・縫合等を行った後、体内へ大腸を戻す。
再度、コンバーター(6)を第一の固定部材(1)に取り付け、再気腹を行い、腹腔内を十分に観察する。再度、処置が必要な場合は気腹下で処置を行うか、気腹を落とし、コンバーター(6)を取り外して処置を行う。処置中に引張りベルトの解除が必要になった場合には解除手段を使用して解除する。
2 第二の固定部材
3 引張りベルト
4 ベルト抵抗調整部材
5 筒状部材
6 コンバーター
7 気密部材
8 第一の気密部材
9 第二の気密部材
10 窓
11 ツメ
12 開口部
13 体表設置面
14 リブ
15 腹腔内
16 体表面
17 ラチェット溝
18 スリット
19 凹凸
20 薄板
21 突起部
22 切り欠き部
23 バネ
24 凹凸操作部
Claims (7)
- 筒状部材の一方の端側の開口部には第一の固定部材を付設し、他方の端側の開口部には第二の固定部材を付設した切開創に留置する医療用処置具において、前記第二の固定部材には両固定部材間の長さを調整するとともに、両固定部材間にたわんだ状態で配置可能とされ、開創に使用される2つ以上の引張りベルトの一端がそれぞれ付設され、前記第一の固定部材の体表接地面に対して垂直な側面には前記引張りベルトを係止めする手段を有するベルト抵抗調整部材が付設され、
前記引張りベルトの一部は、前記筒状部材の内側に位置し、かつ、前記引張りベルトの他端は、それぞれ前記第一の固定部材の前記側面および前記ベルト抵抗調整部材を前記筒状部材の内側から外側に水平方向に貫通して配置されている医療用処置用具。 - 前記引張りベルトを係止めする手段が、前記ベルト抵抗調整部材の前記引張りベルトを通すスリット付近に形成された凹凸であり、
前記引張りベルトには、前記凹凸に対応し、前記凹凸に係止されるラチェット溝が形成されている請求項1の医療用処置用具。 - 前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸がノコギリ歯形状である請求項2記載の医療用処置用具。
- 前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸と、前記引張りベルトの前記ラチェット溝との係止めを解除する手段を有している請求項2または3記載の医療用処置用具。
- 前記係止めを解除する手段が前記引張りベルトの前記ラチェット溝と前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸の間に挿入される薄板である請求項4記載の医療用処置用具。
- 前記係止めを解除する手段が前記ベルト抵抗調整部材の前記凹凸に接続され、前記ベルト抵抗調整部材から突出する突起部である請求項4記載の医療用処置用具。
- 前記ベルト抵抗調整部材、前記引張りベルトの両方又は片方の少なくとも一部分が、縦弾性率0.05〜10kg/mm2の材料で構成される請求項1〜6いずれか記載の医療用処置用具。
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