JP4620860B2 - 超音波組織評価装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波を利用して生体組織の状態を評価する超音波組織評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、踵骨等の生体組織に超音波を放射し、生体組織内を伝搬する超音波の音速や、減衰度合いなどを測定することにより、生体組織の状態を評価する超音波組織評価装置が一般に使用されている。
【0003】
現在一般に使用されている超音波組織評価装置の多くは、互いに向かい合った一対の超音波振動子の間に生体組織を位置させ、一方の超音波振動子から超音波パルスを送信し、他方の超音波振動子が、これを受信する構成となっている。
【0004】
このような超音波組織評価装置を使用する場合、送信側の超音波振動子から受信側の超音波振動子までの経路上に空気が介在すると、超音波の反射・減衰が生じるため、音速や減衰度合いの正確な測定・評価が行えなくなる。
【0005】
そのため、超音波組織評価装置は、超音波振動子と生体組織との間に音響整合材を介在させることにより、超音波振動子と生体組識との間に空気が介在しないよう構成されている。
【0006】
超音波振動子と生体組織との間に音響整合材を設置する方法としては、従来より様々な方法が用いられている。現在では、使用時の利便性から、超音波振動子の振動面の前方に接触子を設け、さらに超音波振動子と接触子との間に音響整合材を充填することにより構成された一対の振動子ユニットを対向配置するとともに、これらの振動子ユニットの間隔を生体組織の形状に合わせて変更可能に構成し、生体組織を所定圧力にて挟持することによって接触子と生体組織とを接触させる方法が広く用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来の組織評価装置のように、対向配置された一対の振動子ユニットの間隔を変更することによって生体組識を挟持する構造の組織評価装置は、測定の際に両超音波振動子間の距離を測定しなくてはならない。そのため、従来の組織評価装置には、たとえばレーザー測長器などの測距手段が設けられていた。しかし、このレーザー測長器は、超音波振動子とは別系統の測距手段であるため、装置の構成が複雑になるとともに、測定の操作が煩雑になる。
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明は、装置の構成や測定の操作が単純な超音波組織評価装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
【0010】
(1) 被検体に対して超音波の送受信を行って組織評価を行う超音波組織評価装置であって、
超音波振動子と、被検体表面に接触する被検体接触面を有する接触子と、該接触子および前記超音波振動子の間の空間に充填された音響整合材とを有し、被検体挿入部を挟んで対向する一対の振動子ユニットと、
前記一対の振動子ユニットを支持する基台とを有しており、
前記一対の振動子ユニットの両接触子のうちの少なくとも一方の接触子の前記超音波振動子に対する移動によって、前記一対の振動子ユニットの両被検体接触面の距離を変更する接触面間距離変更手段と、
前記超音波振動子から送信波を送信すると共に、当該送信波の前記被検体接触面での反射波を前記超音波振動子によって受信し、前記接触子内の音響整合材中を伝搬する超音波の伝搬時間を測定する機能と、前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子間の超音波の伝搬時間を測定する機能とを有する伝搬時間測定手段と、
前記伝搬時間測定手段によって測定された伝搬時間から、前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離を求める測距手段とを備えており、
前記接触子を予め規定された位置に設置した初期状態における前記一対の振動子ユニットのうちの一方の振動子ユニットの前記超音波振動子と該一方の振動子ユニットの前記被検体接触面との距離をL c としたとき、前記初期状態において、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を送信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記一方の振動子ユニットの前記被検体接触面で反射し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t c を測定し、前記音響整合材の内部を伝搬する超音波の音速V c を下記式(1)により求め、
V c =2L c /t c …(1)
前記一対の振動子ユニットの両接触子によって被検体を所定圧力で挟持した状態において、前記一対の振動子ユニットのうちの一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記一方の振動子ユニットの前記被検体接触面で反射し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t m を測定し、他方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記他方の振動子ユニットの前記被検体接触面で反射し、前記他方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t m を測定し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記他方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間tを測定し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離L m を下記式(2)により求め、前記他方の振動子ユニットの前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離L f を下記式(3)により求め、
L m =V c t m /2 …(2)
L f =V c t f /2 …(3)
前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子の間の距離をLとしたとき、下記式により、被検体組識内の音速Vを求め、この被検体組識内の音速Vを用いて被検体組織の評価を行うことを特徴とする超音波組織評価装置。
V=[L−(L m +L f )]/[t−{(t m +t f )/2}]
【0011】
(2) 被検体に対して超音波の送受信を行って組織評価を行う超音波組織評価装置であって、
超音波振動子と、被検体表面に接触する被検体接触面を有する接触子と、該接触子および前記超音波振動子の間の空間に充填された音響整合材とを有し、被検体挿入部を挟んで対向する一対の振動子ユニットと、
前記一対の振動子ユニットを支持する基台とを有しており、
前記一対の振動子ユニットの両接触子のうちの少なくとも一方の接触子の前記超音波振動子に対する移動によって、前記一対の振動子ユニットの両被検体接触面の距離を変更する接触面間距離変更手段と、
前記超音波振動子から送信波を送信すると共に、当該送信波の前記被検体接触面での反射波を前記超音波振動子によって受信し、前記接触子内の音響整合材中を伝搬する超音波の伝搬時間を測定する機能と、前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子間の超音波の伝搬時間を測定する機能とを有する伝搬時間測定手段と、
前記伝搬時間測定手段によって測定された伝搬時間から、前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離を求める測距手段とを備えており、
前記一対の振動子ユニットのうちの一方は、前記接触子の前記被検体接触面と前記超音波振動子との距離が変更可能となっており、他方は、前記接触子の前記被検体接触面と前記超音波振動子との距離が固定されており、
前記距離が固定されている前記振動子ユニットにおいて、前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離をL f としたとき、前記超音波振動子から送信波を送信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記被検体接触面で反射し、前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t f を測定し、前記音響整合材の内部を伝搬する超音波の音速V c を下記式(7)により求め、
V c =2L f /t f …(7)
前記一対の振動子ユニットの両接触子によって被検体を所定圧力で挟持した状態で、前記距離が変更可能となっている前記振動子ユニットにおいて、前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記被検体接触面で反射し、前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t m を測定し、
前記一対の振動子ユニットの両接触子によって被検体を所定圧力で挟持した状態で、前記一対の振動子ユニットのうちの一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が他方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間tを測定し、
前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離L m を下記式(2)により求め、
L m =V c t m /2 …(2)
前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子の間の距離をLとしたとき、下記式により、被検体組識内の音速Vを求め、この被検体組識内の音速Vを用いて被検体組織の評価を行うことを特徴とする超音波組織評価装置。
V=[L−(L m +L f )]/[t−{(t m +t f )/2}]
【0013】
(3) 前記接触面間距離変更手段は、伸縮可能な部材であり、当該部材の伸縮によって前記被検体接触面と前記超音波振動子との距離が変更されるようになっていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の超音波組識評価装置。
【0014】
(4) 前記部材は、蛇腹状に形成されていることを特徴とする上記(3)に記載の超音波組織評価装置。
【0015】
(5) 前記一対の超音波振動子は、当該両超音波振動子間の距離が一定に保持されるように固定されていることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の超音波組織評価装置。
【0016】
(6) 前記一対の振動子ユニットの少なくとも一方に、前記音響整合材の温度を測定するための測温手段が設けられていることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の超音波組織評価装置。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の超音波組織評価装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳述する。
以下、本発明の第1実施形態の超音波組織評価装置について説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態の超音波組織評価装置を示す側面図である。図2は、図1に示す超音波組織評価装置の初期状態を示す断面側面図である。図3は、図1に示す超音波組織評価装置の作動状態を示す断面側面図である。
【0022】
本発明の超音波組織評価装置の第1実施形態1aは、図1に示すように、基台20と、基台20に固定された一対の振動子ユニット10a、10bとを有している。
【0023】
振動子ユニット10a、10bは、図1に示すように、評価対象となる被検体が挿入される被検体挿入部20を挟んで対向するように配置されており、脚部23a、23bを介して基台20に固定されている。
【0024】
また、振動子ユニット10a、10bは、図2に示すように、それぞれの振動面15a、15bが対向するように配置された超音波振動子11a、11bを備えている。
【0025】
超音波振動子11a、11bの各振動面15a、15bの前方には、ポリウレタンなどの超音波透過性に優れた材質によって形成された接触子12a、12bが設けられている。また、超音波振動子11a、11bの振動面15a、15bと接触子12a、12bとの間には、ひまし油などの液体の音響整合材14a、14bが充填されている。
【0026】
また、超音波振動子11a、11bは両超音波振動子11a、11b間の距離が一定に保持されるように振動子ユニット10a、10bに固定されている。超音波振動子11a、11bのそれぞれの後端からはコード16a、16bが延出しており、後に詳述する送受信ユニット(図示せず)等に接続されている。
【0027】
振動子ユニット10aの接触子12aには、図1に示すように、超音波振動子11aの振動面15aに垂直な方向に伸縮可能な蛇腹状の伸縮部材17が取り付けられている。そして、それによって接触子12aが超音波振動子11aに対して移動可能になっている。
【0028】
また、振動子ユニット10aの上方には、整合材貯留容器18が設けられている。整合材貯留容器18は、前記伸縮部材17の収縮時に前記超音波振動子11aの振動面15aと接触子12aの間に収容しきれなくなった音響整合材14aをその内部に貯留する機能を有しており、音響整合材14aが当該整合材貯留容器18から接触子12aへと移動するか、あるいは反対に接触子12aから整合材貯留容器18へと移動することにより、接触子12aは、当該接触子12aや伸縮部材17の内部に音響整合材14aが常に充填された状態で、超音波振動子11aに対して移動するようになっている。
【0029】
なお、振動子ユニット10bは、上述した振動子ユニット10aと異なり、前記伸縮部材17や整合材貯留容器18などを備えておらず、接触子12bと超音波振動子11bの振動面15bとの距離が固定されている。また、本実施形態では、接触子12a、12bの被検体22との接触面を被検体接触面13a、13bとして説明する。
【0030】
次に、本発明の第1実施形態の超音波組織評価装置の内部構成について説明する。
【0031】
図5は、本発明の第1実施形態の超音波組識評価装置の内部構成を示すブロック図である。
【0032】
図中、超音波振動子11a、11bは、送受信ユニット30a、30bにそれぞれ接続されており、超音波振動子11a、11bのそれぞれが送信、受信のいずれにも使用することができるようになっている。また、送受信ユニット30a、30bは、制御部31と接続されている。
【0033】
制御部31には、前記送受信ユニット30a、30bのほかに操作部32、記憶部33、演算部34、表示部35、温度センサー19などが接続されている。
以下、これらの動作を詳述する。
【0034】
操作部32に対する指示の入力によって検査が開始すると、制御部31は、送受信ユニット30a(あるいは30b)に対してトリガーを送信する。このトリガーを受信した送受信ユニット30a(あるいは30b)は、所定のパルスを超音波振動子11a(あるいは11b)に送信する。そして、このパルスを受信した超音波振動子11aは、その振動面から送信波を発信する。超音波振動子11aから発信された送信波は、音響整合材や被検体などを通過した後、対向配置された超音波振動子11bに受信されるか、あるいは、接触子12aの被検体接触面13aを境界とした反射波となって超音波振動子11aに受信される。
【0035】
超音波振動子11aまたは11bによって受信された信号は、送受信ユニット30aまたは30bに設けられた受信アンプ(図示せず)等によって増幅された後に制御部31へと送信される。そして制御部31は、この受信された信号に基づいて伝搬時間や減衰度合い等の測定値を算出する。
【0036】
また、制御部31は、これらの測定値を演算部34に入力し、演算を行う。演算部34は、組識内の音速を求めるために必要な演算処理を行う機能を有している。また、記憶部33は、後に詳述する各種工程で求められた測定値を記憶する機能を有しており、記憶部33に記憶された測定値は、組識内の音速を求める演算の際に使用される。
【0037】
このようにして、制御部31および演算部34の演算によって求められた音速や減衰度合い等の測定値は、被検体組識の評価に使用される。
【0038】
次に、本発明の第1実施形態の超音波組織評価装置を使用した組識内音速測定方法の一例を説明する。
【0039】
本発明の第1実施形態の超音波組織評価装置1aでの処理は、整合材内音速演算工程と、測距工程と、振動子間伝搬時間測定工程と、組識内音速演算工程とを有している。
【0040】
整合材内音速演算工程とは、振動子ユニット10a、10b内にそれぞれ設けられている音響整合材14a、14bの音速Vcをパルスエコー法によって測定する工程である。この工程は、温度の変化によって音響整合材の音速、減衰度合い等の特性が変化することから、測定時の音響整合材の正確な音速Vcを求めるために行われる。なお、音響整合材として、たとえばひまし油を使用した場合、室温付近ではひまし油の温度が1℃変化すると、ひまし油の内部を伝搬する超音波の音速が3m/s程度変化する。
【0041】
この整合材内音速演算工程を行うことによって、音響整合材14a、14bの内部を通過する超音波の正確な音速を後の工程の演算に使用することができ、周囲の環境の変化などに関わらず安定した測定結果を得られるようになっている。
【0042】
より詳しくは、まず、振動子ユニット10aに接続された伸縮部材17を収縮させ、図2に示すように接触子12aを初期位置に設置する。なお、この状態を初期状態とする。
【0043】
この初期状態において、超音波振動子11aの振動面15aからパルス等の送信波を発信する。この送信波は、接触子12aの被検体接触面13aを境界とした反射波となり、当該超音波振動子11aの振動面15aから受信される。
【0044】
そして、前記送信波が超音波振動子11aの振動面15aから送信され、同振動面15aに受信されるまでの間の伝搬時間tcを制御部31によって測定する。
【0045】
本実施形態においては、この初期状態における超音波振動子11aと被検体接触面13aとの距離Lcが予め規定された一定値になるように設定されている。
そして、この工程で測定された伝搬時間tcと、前記距離Lcとから、演算部34によって、次式(1)によって音響整合材14a、14bの内部を伝搬する超音波の音速Vcを算出する。
Vc=2Lc/tc …(1)
【0046】
この工程にて測定・算出された伝搬時間tcおよび音速Vcは、記憶部33に記憶され、後の工程の演算の際に使用される。
【0047】
測距工程とは、振動子ユニット10a、10bに設けられた接触子12a、12bによって被検体22を所定圧力で挟持し、その状態における各振動子ユニット10a、10bの超音波振動子11a、11bと被検体接触面13a、13bとの距離Lm、Lfを前記整合材内音速演算工程と同様にパルスエコー法によって測定する工程である。
【0048】
より詳しくは、まず、伸縮部材17を伸長させ、各接触子12a、12bの被検体接触面13a、13bを被検体22の両側面に所定圧力で接触させる。なお、この状態を作動状態とする。この作動状態において、まず、超音波振動子11aからパルス等の送信波を発信し、その送信波が、接触子12aの被検体接触面13aを境界とした反射波となり、当該超音波振動子11aに受信されるまでの伝搬時間tmを測定する。
【0049】
次に、超音波振動子11bから送信波を発信し、その送信波が、接触子12bの被検体接触面13bを境界とした反射波となり、当該超音波振動子11bに受信されるまでの伝搬時間tfを測定する。そして、前記整合材内音速演算工程において求められた音速Vcと、この工程において測定された伝搬時間tm、tfと、次式(2)、(3)とから、演算部34によって超音波振動子11aと被検体接触面13aとの距離Lm、Lfを求める。
Lm=Vctm/2 …(2)
Lf=Vctf/2 …(3)
【0050】
また、本発明の超音波組織評価装置においては、両超音波振動子11a、11bの距離Lが一定値となることから、この距離Lと前記距離Lm、Lfとから、次式(4)によって図3に示した被検体22の幅Lhが求められる。
Lh=L−(Lm+Lf) …(4)
【0051】
なお、この工程においては、音響整合材14aと、音響整合材14bの特性が同一であるものとして測定を行っている。これは後述する測定方法についても同様である。
【0052】
振動子間伝搬時間測定工程とは、図3に示すように、被検体22を接触子12a、12bで挟持した作動状態において両超音波振動子11a、11bの間を伝搬する超音波の伝搬時間tを測定する工程である。
【0053】
より詳しくは、前記測距工程と同様に、被検体22の両側面を接触子12a、12bによって所定圧力で挟持した作動状態で、超音波振動子11aの振動面15aからパルス等の送信波を発信する。そして、その送信波が、両超音波振動子11a、11bの間、すなわち音響整合材14a、被検体22および音響整合材14bの内部を通過し、超音波振動子11bの振動面15bに受信されるまでの伝搬時間tを測定する。
【0054】
組識内音速演算工程とは、前記測距工程で測定された各振動子ユニット10a、10bの超音波振動子11a、11bと被検体接触面13a、13bとの距離Lm、Lfと、前記振動子間伝搬時間測定工程で測定された伝搬時間tと、に基づいて被検体22の組識内の音速Vを演算する工程である。
【0055】
より詳しくは、被検体22の組識内の音速Vを被検体22の幅Lhと、前記振動子間伝搬時間測定工程において被検体22の組識内を伝搬する被検体内伝搬時間thとから、次式(5)によって算出する。
V=Lh/th …(5)
【0056】
なお、被検体内伝搬時間thは、前記振動子間伝搬時間測定工程において測定された振動子間伝搬時間tと、前記測距工程において測定された音響整合材14a、14bの内部を通過する超音波の伝搬時間tm、tfとから、次式(6)によって求められる。
th=t−{(tm+tf)/2} …(6)
【0057】
また、この工程において算出された音速Vは、被検体内を伝搬する超音波の減衰率などとともに被検体組識の評価に使用される。
【0058】
本実施形態の超音波組織評価装置の接触子12a、12bは、一方は移動可能に設置され、他方は固定されているが、上述した操作によって被検体組識内の音速を測定するのであれば、両接触子を移動可能に設置することが可能である。
【0059】
以下、本発明の第1実施形態の超音波組織評価装置1aを使用した組識内音速測定方法の他の例を説明する。
【0060】
本発明の第1実施形態の超音波組織評価装置1aを使用した組識内音速測定方法の他の例は、上述した測定方法と同様に、整合材内音速演算工程と、測距工程と、振動子間伝搬時間測定工程と、組識内音速演算工程とを有する。
【0061】
この方法の整合材内音速演算工程は、上述した測定方法と異なり、超音波振動子11aに対して接触子12aが移動可能となっている振動子ユニット10aの音響整合材14aの音速を演算するのではなく、超音波振動子11bに対して接触子12bが固定されている振動子ユニット10bの音響整合材14bの音速をパルスエコー法によって求める工程となっている。
【0062】
より詳しくは、超音波振動子11bの振動面15bからパルス等の送信波を発信する。そして、その送信波が接触子12bの被検体接触面13bを境界とした反射波となり、当該超音波振動子11bの振動面15bに受信されるまでの間の伝搬時間tfを制御部31によって測定する。本実施形態においては、超音波振動子11bと被検体接触面13bとの距離Lfが一定値となることから、この工程で測定された伝搬時間tfと、前記距離Lfと、次式(7)とから、演算部34によって音響整合材14a、14bの内部を伝搬する超音波の音速Vcを演算する。
Vc=2Lf/tf …(7)
【0063】
なお、測距工程、振動子間伝搬時間測定工程、および組識内音速演算工程は、上述した測定方法と同一なので説明を省略する。
【0064】
なお、本実施形態においては、被検体22を接触子12a、12bによって挟持するか否かに関わらず、超音波振動子11bと被検体接触面13bとの距離Lfが一定値になるため、どちらの状態で伝搬時間tfを測定してもよい。また、本実施形態は、上述した測定方法のように接触子12aを初期位置に設置する作業を省略できることから、整合材内音速演算工程を簡略化できる利点がある。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態の超音波組織評価装置について説明する。
図4は、本発明の超音波組織評価装置の第2実施形態を示す断面側面図である。図6は、本発明の第2実施形態の超音波組織評価装置の内部構成を示すブロック図である。
【0066】
本発明の第2実施形態の超音波組織評価装置1bは、図4に振動子ユニット10aの音響整合材14aの温度を測定するための温度センサー19を有している。また、この温度センサー19は、図6に示すように、制御部31に接続されている。なお、その他の構成については、上述した第1実施形態の超音波組織評価装置1aと同一であるので説明を省略する。
【0067】
以下、本発明の第2実施形態の超音波組識評価装置1bを使用した組識内音速測定方法を説明する。
【0068】
本発明の第2実施形態の超音波組織評価装置1bを使用した組識内音速測定方法は、上述した2つの測定方法と同様に、整合材内音速演算工程と、測距工程と、振動子間伝搬時間測定工程と、組識内音速演算工程とを有する。
【0069】
この方法の整合材内音速演算工程は、上述した第1実施形態の超音波組織評価装置1aの組識内音速測定方法と異なり、図4に示すように、振動子ユニット10aに設けられた温度センサー19によって音響整合材14aの温度rを測定し、その温度rに基づいて音響整合材14a、14b内を伝搬する超音波の音速Vcを求める工程となっている。
【0070】
より詳しくは、振動子ユニット10aに設けられた温度センサー19によって音響整合材14aの温度rを測定し、この温度rと、次式(8)とから演算部34によって音速Vcを算出する。
Vc=αr+β …(8)
【0071】
この式(8)において、αは、音響整合材内の音速Vcの温度勾配、すなわち当該音速Vcの関数の比例定数であり、βはその切片、すなわちr=0の場合の音速である。なお、前記αおよびβの値は、予め実験等によって規定された値であり、記憶部33に記憶されている。また、式(8)は一例であり、音速Vcは温度rを用いた他の関数によって求めることもできる。
【0072】
なお、測距工程、振動子間伝搬時間測定工程、および組識内音速演算工程は、上述した2つの測定方法と同一なので説明を省略する。
【0073】
なお、上記第1実施形態および第2実施形態の超音波組織評価装置1aおよび1bの振動子ユニット10aの整合材貯留容器18に音響整合材14aを接触子12aおよび伸縮部材17に圧送するためのポンプ等を設けることが可能であり、そのポンプを制御部31で制御することによって上記各操作を自動化することが可能である。
【0074】
最後に、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲で、種々の変更および改良が可能であることは言うまでもない。たとえば、温度センサーを使用して室温など周囲の環境の変化を測定結果に反映させることが可能である。
【0075】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、測距手段としてレーザー測長器等の別系統の測距手段を設ける必要がなく、当該装置に本来備わっている超音波振動子などの測距手段のみで測定を行うことができることから、装置の構成を簡素化することができ、測定の操作を簡単に行うことができる。また、当該超音波組織評価装置を音響整合材中を伝搬する超音波の音速を測定の度に求める構成とすることで、音響整合材の温度等の特性の変化に関わらず、常に安定した測定結果が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波組織評価装置の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示す超音波組織評価装置の初期状態を示す断面側面図である。
【図3】図1に示す超音波組織評価装置の作動状態を示す断面側面図である。
【図4】本発明の超音波組織評価装置の第2実施形態を示す断面側面図である。
【図5】本発明の超音波組織評価装置の第1実施形態の内部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の超音波組織評価装置の第2実施形態の内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1a、1b 超音波組織評価装置
10a、10b 振動子ユニット
11a、11b 超音波振動子
12a、12b 接触子
13a、13b 被検体接触面
14a、14b 音響整合材
15a、15b 振動面
16a、16b コード
17 伸縮部材
18 整合材貯留容器
19 温度センサー
20 被検体挿入部
21 基台
22 被検体
23a、23b 脚部
30a、30b 送受信ユニット
31 制御部
32 操作部
33 記憶部
34 演算部
35 表示部
Claims (6)
- 被検体に対して超音波の送受信を行って組織評価を行う超音波組織評価装置であって、
超音波振動子と、被検体表面に接触する被検体接触面を有する接触子と、該接触子および前記超音波振動子の間の空間に充填された音響整合材とを有し、被検体挿入部を挟んで対向する一対の振動子ユニットと、
前記一対の振動子ユニットを支持する基台とを有しており、
前記一対の振動子ユニットの両接触子のうちの少なくとも一方の接触子の前記超音波振動子に対する移動によって、前記一対の振動子ユニットの両被検体接触面の距離を変更する接触面間距離変更手段と、
前記超音波振動子から送信波を送信すると共に、当該送信波の前記被検体接触面での反射波を前記超音波振動子によって受信し、前記接触子内の音響整合材中を伝搬する超音波の伝搬時間を測定する機能と、前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子間の超音波の伝搬時間を測定する機能とを有する伝搬時間測定手段と、
前記伝搬時間測定手段によって測定された伝搬時間から、前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離を求める測距手段とを備えており、
前記接触子を予め規定された位置に設置した初期状態における前記一対の振動子ユニットのうちの一方の振動子ユニットの前記超音波振動子と該一方の振動子ユニットの前記被検体接触面との距離をL c としたとき、前記初期状態において、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を送信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記一方の振動子ユニットの前記被検体接触面で反射し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t c を測定し、前記音響整合材の内部を伝搬する超音波の音速V c を下記式(1)により求め、
V c =2L c /t c …(1)
前記一対の振動子ユニットの両接触子によって被検体を所定圧力で挟持した状態において、前記一対の振動子ユニットのうちの一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記一方の振動子ユニットの前記被検体接触面で反射し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t m を測定し、他方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記他方の振動子ユニットの前記被検体接触面で反射し、前記他方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t m を測定し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記他方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間tを測定し、前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離L m を下記式(2)により求め、前記他方の振動子ユニットの前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離L f を下記式(3)により求め、
L m =V c t m /2 …(2)
L f =V c t f /2 …(3)
前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子の間の距離をLとしたとき、下記式により、被検体組識内の音速Vを求め、この被検体組識内の音速Vを用いて被検体組織の評価を行うことを特徴とする超音波組織評価装置。
V=[L−(L m +L f )]/[t−{(t m +t f )/2}] - 被検体に対して超音波の送受信を行って組織評価を行う超音波組織評価装置であって、
超音波振動子と、被検体表面に接触する被検体接触面を有する接触子と、該接触子および前記超音波振動子の間の空間に充填された音響整合材とを有し、被検体挿入部を挟んで対向する一対の振動子ユニットと、
前記一対の振動子ユニットを支持する基台とを有しており、
前記一対の振動子ユニットの両接触子のうちの少なくとも一方の接触子の前記超音波振動子に対する移動によって、前記一対の振動子ユニットの両被検体接触面の距離を変更する接触面間距離変更手段と、
前記超音波振動子から送信波を送信すると共に、当該送信波の前記被検体接触面での反射波を前記超音波振動子によって受信し、前記接触子内の音響整合材中を伝搬する超音波の伝搬時間を測定する機能と、前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子間の超音波の伝搬時間を測定する機能とを有する伝搬時間測定手段と、
前記伝搬時間測定手段によって測定された伝搬時間から、前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離を求める測距手段とを備えており、
前記一対の振動子ユニットのうちの一方は、前記接触子の前記被検体接触面と前記超音波振動子との距離が変更可能となっており、他方は、前記接触子の前記被検体接触面と前記超音波振動子との距離が固定されており、
前記距離が固定されている前記振動子ユニットにおいて、前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離をL f としたとき、前記超音波振動子から送信波を送信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記被検体接触面で反射し、前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t f を測定し、前記音響整合材の内部を伝搬する超音波の音速V c を下記式(7)により求め、
V c =2L f /t f …(7)
前記一対の振動子ユニットの両接触子によって被検体を所定圧力で挟持した状態で、前記距離が変更可能となっている前記振動子ユニットにおいて、前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が前記被検体接触面で反射し、前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間t m を測定し、
前記一対の振動子ユニットの両接触子によって被検体を所定圧力で挟持した状態で、前記一対の振動子ユニットのうちの一方の振動子ユニットの前記超音波振動子から送信波を発信し、前記送信波を送信したときから、該送信波が他方の振動子ユニットの前記超音波振動子によって受信されるまでの伝搬時間tを測定し、
前記一方の振動子ユニットの前記超音波振動子と前記被検体接触面との距離L m を下記式(2)により求め、
L m =V c t m /2 …(2)
前記一対の振動子ユニットの両超音波振動子の間の距離をLとしたとき、下記式により、被検体組識内の音速Vを求め、この被検体組識内の音速Vを用いて被検体組織の評価を行うことを特徴とする超音波組織評価装置。
V=[L−(L m +L f )]/[t−{(t m +t f )/2}] - 前記接触面間距離変更手段は、伸縮可能な部材であり、当該部材の伸縮によって前記被検体接触面と前記超音波振動子との距離が変更されるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波組識評価装置。
- 前記部材は、蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の超音波組織評価装置。
- 前記一対の超音波振動子は、当該両超音波振動子間の距離が一定に保持されるように固定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波組織評価装置。
- 前記一対の振動子ユニットの少なくとも一方に、前記音響整合材の温度を測定するための測温手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波組織評価装置。
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