JP4619219B2 - 被験者選定装置 - Google Patents
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Description
また、治験等の臨床試験の支援に関する技術とは別に、医療分野においては、患者の生存時間を解析するための技術がある(例えば、特許文献2参照)。
そして、被験者に早期離脱や中止が生じた場合には、治験中止報告書を作成し、新たに被験者となる新規対象者のエントリを待つことになる。
このように、治験プロトコールの被験者選定基準に従って被験者を選定するだけでは、治験の効率が悪いという欠点があった。
また、生存時間解析の技術は、臨床試験の支援技術とは直接的な関係はなく、臨床試験の支援に用いられることもなかった。
臨床試験の被験者を候補者の中から選定する被験者選定装置であって、
過去の罹患事例における患者情報を集めた疫学データを取得する疫学データ取得手段と、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、前記候補者毎に前記臨床試験の実施期間内に該候補者の症状の変化により臨床試験の実施が中止される確率であるリスク値を求めるリスク関数を導出するリスク関数導出手段と、
前記リスク関数を記憶するリスク関数記憶手段と、
前記候補者毎に、少なくとも該候補者の識別情報と、前記リスク関数の共変量に対応する所定の因子の観測値と、を含む候補者情報を記憶する候補者情報記憶手段と、
前記臨床試験の実施期間情報を取得する実施期間情報取得手段と、
前記リスク関数記憶手段からリスク関数を読み出し、前記候補者情報記憶手段から候補者毎に候補者情報を読み出し、前記リスク関数の独立変数に、前記候補者情報の共変量に対応する所定の因子の観測値と前記実施期間情報取得手段が取得した実施期間情報とを代入し、前記リスク関数の従属変数である前記リスク値を前記候補者毎に求めるリスク値演算手段と、
前記臨床試験の計画症例数Nを記憶する計画症例数記憶手段と、
前記計画症例数記憶手段から計画症例数Nを読み出し、前記候補者の中から、前記リスク値演算手段が求めたリスク値が小さい順にN人の候補者を選択し、該選択された候補者の識別情報を出力する識別情報出力手段と、を備え、
前記リスク関数導出手段は、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、患者iの共変量ベクトルziと時間tとの関数であるハザード関数h(zi,t)を導出する手段と、
p(i,t)=1−h(zi,t)の演算を行うことにより、前記リスク関数として関数p(i,t)を導出する手段と、を有する、
ことを特徴とする。
臨床試験の被験者を候補者の中から選定する被験者選定装置であって、
過去の罹患事例における患者情報を集めた疫学データを取得する疫学データ取得手段と、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、前記候補者毎に前記臨床試験の実施期間内に該候補者の症状の変化により臨床試験の実施が中止される確率であるリスク値を求めるリスク関数を導出するリスク関数導出手段と、
前記リスク関数を記憶するリスク関数記憶手段と、
前記候補者毎に、少なくとも該候補者の識別情報と、前記リスク関数の共変量に対応する所定の因子の観測値と、を含む候補者情報を記憶する候補者情報記憶手段と、
前記臨床試験の実施期間情報を取得する実施期間情報取得手段と、
前記リスク関数記憶手段からリスク関数を読み出し、前記候補者情報記憶手段から候補者毎に候補者情報を読み出し、前記リスク関数の独立変数に、前記候補者情報の共変量に対応する所定の因子の観測値と前記実施期間情報取得手段が取得した実施期間情報とを代入し、前記リスク関数の従属変数である前記リスク値を前記候補者毎に求めるリスク値演算手段と、
前記リスク値演算手段が求めた前記候補者毎のリスク値を候補者の識別情報に関連付けて記憶するリスク値記憶手段と、
前記臨床試験の計画症例数Nを記憶する計画症例数記憶手段と、
前記計画症例数記憶手段から計画症例数Nを読み出し、前記候補者の中からN人を抽出するすべての組み合わせを求め、該組み合わせ毎に、抽出された候補者である抽出候補者の識別情報を取得する候補者抽出手段と、
前記リスク値記憶手段から、前記候補者抽出手段が取得した抽出候補者の識別情報に関連付けて記憶されているリスク値を読み出し、該読み出したリスク値に基づいて、前記組み合わせ毎に、前記臨床試験の実施にかかる費用の期待値である経費期待値を求める経費期待値演算手段と、
前記経費期待値演算手段が求めた経費期待値の最も小さい組み合わせにおける抽出候補者の識別情報を出力する識別情報出力手段と、を備え、
前記リスク関数導出手段は、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、患者iの共変量ベクトルz i と時間tとの関数であるハザード関数h(z i ,t)を導出する手段と、
p(i,t)=1−h(z i ,t)の演算を行うことにより、前記リスク関数として関数p(i,t)を導出する手段と、を有し、
前記候補者情報記憶手段に記憶されている候補者情報は、候補者毎に、該候補者の臨床試験が実施される施設を識別するための施設識別情報を含み、
前記経費期待値演算手段は、
被験者一人の臨床試験の実施が中止された場合に発生する損害額Aを記憶する損害額記憶手段と、
前記施設識別情報により特定される施設毎に、該施設に臨床試験を依頼する場合に一律に発生する費用である固定費Bを記憶する固定費記憶手段と、
前記施設識別情報により特定される施設毎に、該施設に被験者一人の臨床試験の実施を依頼する場合に発生する費用である単位受託費Cを記憶する単位受託費記憶手段と、
前記候補者抽出手段が取得した抽出候補者iの識別情報に関連付けて記憶されている施設識別情報を前記候補者情報記憶手段から読み出し、該読み出した施設識別情報に基づいて、前記抽出候補者iの組み合わせで臨床試験が実施される場合に使用される施設jを特定する施設特定手段と、
前記施設特定手段が特定した施設j毎に、前記抽出候補者iの組み合わせで臨床試験が実施される場合の施設jでの実施人数である受託症例数Mjを計数する受託症例数計数手段と、
前記リスク値記憶手段から、前記抽出候補者iの識別情報に関連付けて記憶されているリスク値p(i)を読み出し、前記損害額記憶手段から損害額Aを読み出し、前記固定費記憶手段から、前記施設特定手段が特定した施設jの固定値B(j)を読み出し、前記単位受託費記憶手段から、前記施設特定手段が特定した施設jの単位受託費C(j)を読み出し、前記受託症例数計数手段から、前記施設特定手段が特定した施設jの受託症例数Mjを取得し、前記組み合わせ毎に、経費期待値Sを
ことを特徴とする。
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る治験支援システムの構成例を示すブロック図である。
本実施の形態に係る治験支援システムは、図示するように、治験実際施設である複数の病院のそれぞれが備える病院情報処理装置1と、治験実施のための被験者の選定を行うセンターが備える被験者選定装置2と、過去に疫学研究で集められた過去の罹患事例における患者情報である疫学データを記憶する疫学データ記憶装置3と、を備え、複数の病院情報処理装置1と被験者選定装置2とが通信ネットワーク4を介して接続され、被験者選定装置2と疫学データ記憶装置3とが通信ネットワーク5を介して接続されている。
患者情報の匿名化は、例えば、患者情報の中の個人特定情報のうち、患者の氏名、住所、生年月日等を削除し、病院毎に付与される患者の識別情報である病院別患者IDを残すことにより行われる。これにより、患者情報を受信するセンターでは、患者情報から患者の氏名等を特定することができなくなる。
ここで、リスク関数とは、被験者が早期離脱や中止により治験実施期間内にドロップアウトする確率を求めるための関数であり、その詳細は後述する。
図2は、被験者選定装置2の構成例を示すブロック図である。
被験者選定装置2は、図示するように、通信部31と、入力部32と、出力部33と、記憶部34と、制御部35と、を備え、各部はバス36を介して互いに接続されている。
出力部33は、様々な情報を出力するものであり、ディスプレイ等の表示装置を備える。例えば、出力部33には、選定された被験者の被験者情報が表示出力される。
例えば、制御部35が、ROM352や記憶部34に記憶されている制御プログラムに従って上記各部を制御することにより、被験者選定装置2において、被験者選定処理等が行われる。
図3は、被験者選定装置2の機能構成例を示すブロック図である。
なお、図3に示す被験者選定装置2の各構成要素は、図2に示す制御部35が、同じく図2に示す通信部31、入力部32、出力部33、又は記憶部34を制御することにより、実現することができる。
また、既に説明した構成と同じ機能を有する部分については、同じ符号を付してその説明を省略する。
図4は、匿名化患者情報データベース21に記憶されている患者情報のデータ構成例を示す図である。
図示するように、患者情報は、患者毎の個人特定情報、生活歴、既往歴、検査値等の情報からなる。そして、それぞれの情報はさらに細分化された情報を有する。匿名化患者情報データベース21に記憶されている患者情報は、病院情報処理装置1の患者情報データベースに記憶されている患者情報を匿名化したものであり、この匿名化により、個人特定情報のうち、生年月日、職業、出生地等の情報が削除されている。
また、匿名化患者情報受信部41は、患者情報を匿名化患者情報データベース21に蓄積する際に、センター側で患者を識別するための患者IDと、送信元の病院を識別するための病院IDと、を個人特定情報に付加する。
なお、治験適格者情報データベース22には、治験適格者抽出部43が抽出した患者の患者IDのみを記録しておき、抽出した患者のその他の患者情報は、必要に応じて、匿名化患者情報データベース21を参照することにより取得するようにしてもよい。
具体的には、例えば、計画症例数判別部44は、まず、治験プロトコール取得部42から治験プロトコールに記載の計画症例数Nを読み出す。ここで、計画症例数とは、治験において選定すべき被験者の数である。
次に、計画症例数判別部44は、治験適格者抽出部43で抽出されて治験適格者情報データベース22に記憶されている治験適格者情報を参照し、治験適格者の数をカウントする。そして、カウントした治験適格者数と計画症例数Nとを比較し、治験適格者数が計画症例数Nより大きいか否かを判別する。
選定被験者表示部45は、計画症例数判別部44から出力された患者IDを、選定した被験者の情報として表示する。
治験適格者である患者は、合併症発生や重症転化するリスクを内包している。そのため、被験者選定装置2は、具体的には、臨床データ等の治験適格者の個人情報から、治験実施期間内に臨床症状悪化、併発症の発生する確率をシミュレーションし、その値の低いものから順に治験対象として好ましいと判断し、治験適格者に優先順位を付ける。そして、この優先順位に基づいて被験者の選定を行う。
疫学データは疾患(罹患病名)毎に作成されている。そして、疫学データにおいて、患者から観測される変量としては、図示するように、例えば、患者ID(標本ID)、年齢、性別、罹患病名及び発症日、診療日時及びその時の診断(重症度)、検査項目及び結果(検査値)、合併症の有無、経過観察期間等が挙げられる。
図3に戻り、疫学データ受信部46は、疫学データ記憶装置3から疫学データを受信する。具体的には、疫学データ記憶装置3が例えばFTP(File Transfer Protocol)サーバ機能を有し、被験者選定装置2にFTPソフトウェアがインストールされている場合には、疫学データ受信部46は、図2の入力部32への操作に応じて、適宜、疫学データをダウンロードすることができる。
この確率密度関数p(i,t)は、換言すると、患者iが治験実施期間t内にドロップアウトする確率を算出するための関数であり、以後、リスク関数と呼ぶ。そして、このリスク関数p(i,t)を、患者情報に適用することにより、患者毎に、治験途中で脱落するか否かの確率(治験の実施が中止される確率)であるリスク値pを求めることができる。
なお、このリスク関数p(i,t)の導出計算にはリアルタイム処理は要求されないため、特に高速な解法は必要なく、Cox比例ハザード法等の周知の生存時間解析手法を用いることができる。
リスク関数p(i,t)は、ある地域の疫学研究(コホートstudy)にて得られたデータを基に、コックス回帰の基礎となる統計モデル(比例ハザードモデル)を用いることで算出することができる。
これに関しては従来から、SASシステム(統計解析パッケージ)のPHREGプロシージャを利用して生存時間解析を行うことが知られている。
h(zi,t)
=h0(t)・exp(βTzi)
=h0(t)・exp(β1zi1+β2zi2+・・・+βpzip) ・・・(1)
また、h0(t)は、すべての共変量の影響がゼロである基準人の時間tにおける生存確率(ベースラインハザード)である。
次に、ハザード関数とリスク関数との関係であるが、図5に示した疫学データを用いて生存時間解析を行った場合の“生存”とは、合併症を併発しない等の意味であるから、臨床症状悪化等による治験中止の確率関数であるリスク関数p(i,t)は、次のようにして求められる。
p(i,t)=1−h(zi,t) ・・・(2)
なお、リスク関数導出部47におけるリスク関数p(i,t)の導出は、前述のようにリアルタイム処理の必要はないため、予め適当な時に行っておき、記憶しておけばよい。
さらに、リスク値算出部48は、治験適格者情報データベース22から治験適格者i毎に、リスク関数p(i,t)の共変量に対応する因子の観測値を読み出す。具体的には、例えば図5に示す疫学データに基づいてリスク関数が導出された場合には、リスク値算出部48は、治験適格者情報データベース22に記憶されている患者情報から、治験適格者の年齢、性別、罹患病名及び発症日、診療日時及び重症度、検査項目及び検査値等の因子の観測値を読み出す。
そして、リスク値算出部48は、読み出した治験実施期間及び各因子の観測値をリスク関数p(i,t)に代入し、治験適格者毎にリスク値pを算出し、治験適格者の患者IDとリスク値pとを関連付けて被験者選定部49に出力する。
図示するように、被験者選定部49においては、治験適格者の患者IDが、リスク値pが低い順(昇順)にソートされる。そして、例えば計画症例数N=4の場合には、リスク値の低い上位4人が被験者として選定される。
これにより、センターでは、早期離脱や中止の確率が低い被験者を優先的に選定することができ、被験者の選定を行う者は、そのように選定された被験者を選定被験者表示部45の表示を見ることにより知ることができる。
なお、ここで説明する被験者選定処理は、図2における制御部35が、ROM352や記憶部34に記憶されている制御プログラムに従って、通信部31、入力部32、出力部33、又は記憶部34を制御することにより実行される。また、以下のフローチャートの説明において、制御部35による通信制御、メモリ制御等の通常のコンピュータによる処理と同一の処理については、理解を容易にするため、逐一言及することを避ける。
上記第1の実施の形態においては、生存時間解析を行うことにより個体iに対するリスク値pを求め、このリスク値pを利用して被験者の選定を行った。
しかし、例えば次のような場合には、上記第1の実施の形態において説明した方法では単純にリスク値pを求めることができない。
・患者から観測される変量に欠測値がある場合
・疫学解析した地域コホートと治験適格者情報データベース22のデータカラムに一部、相互運用性がない(同じような項目があっても互換性が無い)場合
被験者の選定において考慮できるパラメータは、リスク値以外にも存在し、例えば、治験実施施設である患者が通院する病院(治験受託機関)には、同意取得率、受託単価(治験に要する費用)、被験者エントリー率(スケジュールどおりに進捗するか)等のパラメータが存在し、これらのパラメータはトータルの治験コスト(治験費用)と密接に関連する。
第2の実施の形態においては、これらのパラメータをリスク値と複合し、数理計算法等の手法を用いることで目的とする評価関数を導出し、治験のトータルコストを最小化するよう被験者を選定する。
a.それぞれの患者は、匿名化患者情報データベース21に患者情報を送信した病院のどれか一つに必ずかかっている。
b.被験者一人が脱落(治験実施中止)することで発生する損害(その患者に投じた費用)の平均額をAとする。
c.製薬会社等の治験依頼者が、病院j(受託予定症例数Mj)に治験依頼する際に必要となるコストを次の2つに分ける。
・一律に発生する固定費B(j):主に治験をコーディネートする人件費
・症例数に比例する受託費{C(j)×Mj}:ここで、C(j)は被験者一人に対する単位受託費
そして、固定費B(j)及び単位受託費C(j)には、病院j間で差が存在する。
なお、図1及び図2に示した第1の実施の形態に係る治験支援システム及び被験者選定装置2の構成は、第2の実施の形態に係る治験支援システム及び被験者選定装置2と共通する。
また、図8における、匿名化患者情報受信部41、治験プロトコール取得部42、治験適格者抽出部43、計画症例数判別部44、選定被験者表示部45、疫学データ受信部46、リスク関数導出部47、リスク値算出部48は、図3に示した第1の実施の形態に係る被験者選定装置2と同じ機能を有するため、同じ符号を付してその説明を省略する。
治験適格者組み合わせ部52は、治験プロトコール取得部42から治験プロトコールに記載の計画症例数Nを読み出す。そして、治験適格者情報データベース22に登録されている治験適格者を被験者候補として、その中から、計画症例数N人を選び出すすべての組み合わせを求める。さらに、治験適格者組み合わせ部52は、求めた組み合わせ毎に、その組み合わせを構成する治験適格者(抽出候補者)の患者ID及び病院IDを、治験適格者情報データベース22から読み出し記憶しておく。
図9は、病院に対する治験コストを記憶するデータテーブルの例を示す図である。
図9(a)は、病院に対する治験コストのうち、病院j毎の固定費B(j)を記憶するデータテーブルであり、病院を特定する病院IDに関連付けてその病院の固定費が記憶されている。図9(b)は、病院に対する治験コストのうち、病院j毎の単位受託費C(j)である症例比例報酬を記憶するデータテーブルであり、病院IDに関連付けてその病院の症例比例報酬が記憶されている。
図9(a)及び(b)に示すデータテーブルは、前提費用記憶部53を構成する図2の記憶部34に格納されており、次に説明する治験費用算出部54が治験費用を算出する際に、必要に応じて読み出される。
なお、治験費用算出部54における治験費用の算出動作の詳細は後述する。
選定被験者表示部45は、組み合わせ選択部55から出力された患者IDを、選定された被験者の情報として表示する。
本実施の形態においてはコストの大小を評価値とするため、治験費用算出部54では、患者のリスク値pをコストへと変換する動作を行う。
既に説明したように、個体iのリスク値はp(i)である。そして、前述した前提条件bのもとでは、個体iにかかる治験で発生するコスト(損害の期待値)は、p(i)×Aとなる。
そのため、治験適格者組み合わせ部52が求めた組み合わせ毎の損害の期待値を考えると、1つの組み合わせにおける損害の期待値は、組み合わせを構成する治験適格者i毎に計算したp(i)×Aの和となる。
なお、計算不能な患者のリスク値の代替として、計算可能な患者のリスク値の平均値を用いてもよい。
1つの組み合わせにおける治験依頼費を求める場合、治験費用算出部54は、まず、その組み合わせを構成する各治験適格者の病院IDを取得し、その組み合わせ内において同じ病院IDの治験適格者の数をカウントする。これにより、治験費用算出部54は、その組み合わせで治験を実施する場合の病院jと、その病院jで治験が実施される被験者数を示す受託予定症例数Mjを取得する。
そして、この場合、病院jへの治験依頼費は、固定費B(j)と受託費{C(j)×Mj}の和となる。
このため、1つの組み合わせにおける治験依頼費は、その組み合わせにおいて治験が実施される病院j毎に計算したB(j)+C(j)×Mjの和となる。
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る被験者選定処理の例を示すフローチャートである。
なお、図10に示す被験者選定処理は、図7に示した第1の実施の形態に係る被験者選定処理に、ステップ24及びステップ25を追加したものに相当する。
次に、制御部35は、患者の抽出数が治験プロトコールに記載の計画症例数より大きいか否かを判別する(ステップS22)。
制御部35は、抽出数が計画症例数以下であると判別すると(ステップS22;No)、抽出した患者をすべて出力し(ステップS23)、被験者選定処理を終了する。
この「リスク値以外のパラメータを含めた総合判断処理」において、制御部35は、まず、ループ(繰り返し)1として、図10のステップS21において匿名化患者情報データベース21から抽出した患者(治験適格者)のうち、N人を抜き出すすべての組み合わせに対し、ステップS32〜S34の処理を実施する(ステップS31)。具体的には、例えば、制御部35は、記憶部34から治験プロトコールに記載の計画症例数Nを読み出し、治験適格者情報データベース22に登録されている治験適格者から、計画症例数N人分を抜き出すすべての組み合わせを求める。
制御部35は、ステップS32で計算したSが最小値であると判別すると(ステップS33;Yes)、S及びそのSを与える組み合わせを構成するN人のリストを記憶部34に保存する(ステップS34)。そして、ステップS31に示したループ1の終了条件を判別する。一方、最小値でないと判別すると(ステップS33;No)、ステップS34をスキップして、ループ1の終了条件を判別する。
続いて、制御部35は、記憶部34に最終的に保存されたN人のリストを出力部33に出力し(ステップS36)、「リスク値以外のパラメータを含めた総合判断処理」を終了して図10の被験者選定処理に戻る。
よって、製薬会社等の治験依頼者の立場において治験コストを最小にする被験者を選定することができる。
また、この「リスク値以外のパラメータを含めた総合判断処理」では、治験適格者情報データベース22に登録されている治験適格者(被験者候補)からN人選び出すすべての組み合わせについてSを計算し、その最小値を保存することで、簡単にSを最小にする解を導出することができる。
この「治験にかかるコストの総和計算処理」において、制御部35は、まず、被験者の脱落による損害計算処理を行う(ステップS41)。この処理により、制御部35は、1つの組み合わせに対して、被験者が脱落することで発生する損害p1を計算する。なお、この「被験者の脱落による損害計算処理」の詳細は後述する。
続いて、制御部35は、P1+P2+P3をコストの総和としてSに代入し(ステップS44)、「被験者の脱落による損害計算処理」を終了して図11の「リスク値以外のパラメータを含めた総合判断処理」に戻る。
この「被験者の脱落による損害計算処理」において、制御部35は、まず、P1に0を代入する(ステップS51)。
次に、制御部35は、ループ2として、変数iの初期値を0とし、変数iを1ずつ増加し、変数iがNより小さい間、ステップS53〜S55の処理を実行する(ステップS52)。ここで、変数iは、1つの組み合わせを構成するN人の治験適格者(i=0〜N−1)を表す。
制御部35は、リスク値p(i)が計算可能であると判別すると(ステップS53;Yes)、P1+p(i)×Aの計算を行い、計算した値をP1に代入してP1の値を更新する(ステップS54)。そして、ステップS52に示したループ2の終了条件を判別する。なお、Aは、前述したように、被験者一人当たりの脱落により発生する損額額(平均)である。
この「被験者の脱落による損害計算処理」により、p1は、1つの組み合わせにおける被験者の脱落による損害額となる。
例えば、上記第2の実施の形態は、患者情報に欠測値等があり単純にリスク値を求めることができない場合として説明したが、患者情報に欠測値等がなく、すべての患者に対してリスク値を求めることができる場合にも、上記第2の実施の形態で説明した治験費用の計算を行って被験者を選定してもよい。その場合には、より正確に評価値となるコストを計算することができ、より効率的に治験を実施するための被験者選定を行うことができる。
例えば、患者個人の車保有の有無、患者の自宅から治験実施病院までの距離、年齢、勤務先等を被験者選定のためのパラメータとして考慮してもよい。これらのパラメータを考慮した場合には、治験実施期間中に自動車事故等によりドロップアウトする確率が高い被験者を事前にはじくことができ、被験者のドロップアウトによる治験費用の増大及び治験実施期間の延長を防ぐことができる。
例えば、製薬会社等の治験委託者の要望を汲んだ形で治験計画を設定することを目的に、受託機関数を最小にする観点や、治験実施期間を最短にする観点等の評価関数を設定し、これらの評価関数により被験者を選定してもよい。
また、上記実施の形態では、比例ハザードモデルを用いてリスク関数を導出した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、例えばロジスティックモデルを利用した他の生存時間解析方法を用いてリスク関数を導出してもよい。
例えば、上記実施の形態では、被験者選定装置のプログラムが、メモリ等に予め記憶されているものとして説明した。しかし、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理動作を実行をする被験者選定装置を構成してもよい。
また、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等してもよい。
2 被験者選定装置
3 疫学データ記憶装置
4,5 通信ネットワーク
21 匿名化患者情報データベース
22 治験適格者情報データベース
31 通信部
32 入力部
33 出力部
34 記憶部
35 制御部
36 バス
41 匿名化患者情報受信部
42 治験プロトコール取得部
43 治験適格者抽出部
44 計画症例数判別部
45 選定被験者表示部
46 疫学データ受信部
47 リスク関数導出部
48 リスク値算出部
49 被験者選定部
51 リスク値記憶部
52 治験適格者組み合わせ部
53 前提費用記憶部
54 治験費用算出部
55 組み合わせ選択部
351 CPU
352 ROM
353 RAM
Claims (2)
- 臨床試験の被験者を候補者の中から選定する被験者選定装置であって、
過去の罹患事例における患者情報を集めた疫学データを取得する疫学データ取得手段と、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、前記候補者毎に前記臨床試験の実施期間内に該候補者の症状の変化により臨床試験の実施が中止される確率であるリスク値を求めるリスク関数を導出するリスク関数導出手段と、
前記リスク関数を記憶するリスク関数記憶手段と、
前記候補者毎に、少なくとも該候補者の識別情報と、前記リスク関数の共変量に対応する所定の因子の観測値と、を含む候補者情報を記憶する候補者情報記憶手段と、
前記臨床試験の実施期間情報を取得する実施期間情報取得手段と、
前記リスク関数記憶手段からリスク関数を読み出し、前記候補者情報記憶手段から候補者毎に候補者情報を読み出し、前記リスク関数の独立変数に、前記候補者情報の共変量に対応する所定の因子の観測値と前記実施期間情報取得手段が取得した実施期間情報とを代入し、前記リスク関数の従属変数である前記リスク値を前記候補者毎に求めるリスク値演算手段と、
前記臨床試験の計画症例数Nを記憶する計画症例数記憶手段と、
前記計画症例数記憶手段から計画症例数Nを読み出し、前記候補者の中から、前記リスク値演算手段が求めたリスク値が小さい順にN人の候補者を選択し、該選択された候補者の識別情報を出力する識別情報出力手段と、を備え、
前記リスク関数導出手段は、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、患者iの共変量ベクトルziと時間tとの関数であるハザード関数h(zi,t)を導出する手段と、
p(i,t)=1−h(zi,t)の演算を行うことにより、前記リスク関数として関数p(i,t)を導出する手段と、を有する、
ことを特徴とする被験者選定装置。 - 臨床試験の被験者を候補者の中から選定する被験者選定装置であって、
過去の罹患事例における患者情報を集めた疫学データを取得する疫学データ取得手段と、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、前記候補者毎に前記臨床試験の実施期間内に該候補者の症状の変化により臨床試験の実施が中止される確率であるリスク値を求めるリスク関数を導出するリスク関数導出手段と、
前記リスク関数を記憶するリスク関数記憶手段と、
前記候補者毎に、少なくとも該候補者の識別情報と、前記リスク関数の共変量に対応する所定の因子の観測値と、を含む候補者情報を記憶する候補者情報記憶手段と、
前記臨床試験の実施期間情報を取得する実施期間情報取得手段と、
前記リスク関数記憶手段からリスク関数を読み出し、前記候補者情報記憶手段から候補者毎に候補者情報を読み出し、前記リスク関数の独立変数に、前記候補者情報の共変量に対応する所定の因子の観測値と前記実施期間情報取得手段が取得した実施期間情報とを代入し、前記リスク関数の従属変数である前記リスク値を前記候補者毎に求めるリスク値演算手段と、
前記リスク値演算手段が求めた前記候補者毎のリスク値を候補者の識別情報に関連付けて記憶するリスク値記憶手段と、
前記臨床試験の計画症例数Nを記憶する計画症例数記憶手段と、
前記計画症例数記憶手段から計画症例数Nを読み出し、前記候補者の中からN人を抽出するすべての組み合わせを求め、該組み合わせ毎に、抽出された候補者である抽出候補者の識別情報を取得する候補者抽出手段と、
前記リスク値記憶手段から、前記候補者抽出手段が取得した抽出候補者の識別情報に関連付けて記憶されているリスク値を読み出し、該読み出したリスク値に基づいて、前記組み合わせ毎に、前記臨床試験の実施にかかる費用の期待値である経費期待値を求める経費期待値演算手段と、
前記経費期待値演算手段が求めた経費期待値の最も小さい組み合わせにおける抽出候補者の識別情報を出力する識別情報出力手段と、を備え、
前記リスク関数導出手段は、
前記疫学データ取得手段が取得した疫学データに基づいて生存時間解析を行い、患者iの共変量ベクトルz i と時間tとの関数であるハザード関数h(z i ,t)を導出する手段と、
p(i,t)=1−h(z i ,t)の演算を行うことにより、前記リスク関数として関数p(i,t)を導出する手段と、を有し、
前記候補者情報記憶手段に記憶されている候補者情報は、候補者毎に、該候補者の臨床試験が実施される施設を識別するための施設識別情報を含み、
前記経費期待値演算手段は、
被験者一人の臨床試験の実施が中止された場合に発生する損害額Aを記憶する損害額記憶手段と、
前記施設識別情報により特定される施設毎に、該施設に臨床試験を依頼する場合に一律に発生する費用である固定費Bを記憶する固定費記憶手段と、
前記施設識別情報により特定される施設毎に、該施設に被験者一人の臨床試験の実施を依頼する場合に発生する費用である単位受託費Cを記憶する単位受託費記憶手段と、
前記候補者抽出手段が取得した抽出候補者iの識別情報に関連付けて記憶されている施設識別情報を前記候補者情報記憶手段から読み出し、該読み出した施設識別情報に基づいて、前記抽出候補者iの組み合わせで臨床試験が実施される場合に使用される施設jを特定する施設特定手段と、
前記施設特定手段が特定した施設j毎に、前記抽出候補者iの組み合わせで臨床試験が実施される場合の施設jでの実施人数である受託症例数Mjを計数する受託症例数計数手段と、
前記リスク値記憶手段から、前記抽出候補者iの識別情報に関連付けて記憶されているリスク値p(i)を読み出し、前記損害額記憶手段から損害額Aを読み出し、前記固定費記憶手段から、前記施設特定手段が特定した施設jの固定値B(j)を読み出し、前記単位受託費記憶手段から、前記施設特定手段が特定した施設jの単位受託費C(j)を読み出し、前記受託症例数計数手段から、前記施設特定手段が特定した施設jの受託症例数Mjを取得し、前記組み合わせ毎に、経費期待値Sを
ことを特徴とする被験者選定装置。
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