本発明は非調質高強度ボルトの製造方法に係り、特にリラクセーション特性に優れる非調質の高強度ボルトの製造方法に関する。
一般的な高強度ボルト用鋼には、中炭素合金鋼、例えばSCM435、SCM440、SCr440等が使用され、焼き入れ焼戻し(調質)によって必要な強度を確保しており、これらから製造されたボルトは調質ボルトと呼ばれる。しかしながら、自動車や各種産業機械用として使用される一般の高強度ボルトでは、引張強度が約1200MPaを超えるといわゆる遅れ破壊の感受性が高まることが知られている。
遅れ破壊は、非腐食性環境で起こるものと、腐食性環境で起こるものとがあるが、その発生要因が複雑に絡み合っているといわれ、一概にその原因を特定するのは困難である。遅れ破壊を左右する要因としては、焼戻し温度、組織、材料硬さ、結晶粒度、各種合金元素等の関与が一応認められているが、遅れ破壊を防止するための有効な手段が確立されている訳でなく、試行錯誤的に種々の方法が提案されているのが現状である。
また、特に高温で使用されるボルトでは、使用中に締付力の低下を招くいわゆるリラクセーション現象(応力緩和)が顕著となる。例えば、150℃で引張のままで放置すると、30%もの荷重低下が生じることがある。このように、高強度ボルトの使用環境では、遅れ破壊とリラクセーション現象とが課題として知られている。
特許文献1には、パテンティング処理(パーライト化処理)により、パーライト組織を80%以上とする鋼材を強伸線加工し、冷間圧延によりボルト形状に成形したものをブルーイング処理(歪み時効処理)して、遅れ破壊特性とリラクセーション特性が改善されることが開示されている。
特許文献2には、リラクセーション現象の原因として、鋼製ボルトにはその製造プロセスにおいて引き抜き等の塑性加工を経ているため、その結晶格子内に多数の転位が導入されることを指摘する。すなわち、ボルトの締め付け等の引張応力下では、これらの転位の移動が起って伸びが生じ、その伸びに起因して応力緩和が生じると述べている。そして、特許文献1の鋼製ボルトのブルーイング処理に触れ、この処理方法では、いまだリラクセーション特性の改善が十分でないとしている。そして、ボルト保持具にボルトをネジこみ、弾性限界を超える軸線方向の引っ張り応力を負荷し、その被負荷領域を200℃から300℃の間の熱処理を行うことでリラクセーション特性が改善されることが開示されている。
特開2001−348618号公報
特開2004−116624号公報
特許文献2の実施の形態による方法では、ボルト保持具にボルトをネジこんで弾性限界を超える軸線方向の引っ張り応力を負荷しその状態で200℃から300℃の間の熱処理を行うことになる。すなわち、各ボルトをそれぞれボルト保持具に取り付けた状態で熱処理装置に投入するので、熱処理装置が大掛かりとなり、またその生産性がよくない。しかし、特許文献1に開示される単なるブルーイング熱処理のみではいまだリラクセーション特性の改善が十分でないことが特許文献2に述べられている。このように、従来技術において、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善について課題が残されている。
本発明の目的は、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善をより容易に行うことを可能とする非調質高強度ボルトの製造方法を提供することである。
本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法は、リラクセーション特性の改善を行う実験の中で見出した事実に基づいて、それを製造方法としたものである。その実験は、軸方向荷重を与えて塑性歪を与えたまま熱処理すること以外の方法、より具体的には、塑性歪を与えた後その荷重を除荷することを含んで、リラクセーション特性の改善が図れないか等の目的のために行われたものである。その結果、いくつかの条件の下で、塑性歪を与えた後その荷重を除荷することを含んでも、高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善を図ることができることを見出した。以下は、これらの実験結果を非調質高強度ボルトの製造方法としたものである。
本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法は、非調質ボルトを成形後、任意の引張治具を用いてそのボルトの引張強度の80%以上100%未満に相当する軸方向荷重を負荷して塑性歪を与える荷重負荷工程と、ボルトを治具から除荷し取り外す除荷工程と、取り外したボルトを、熱処理する温度と時間との関係において、200℃で5分、及び200℃で60分、及び250℃で1分、及び250℃で10分、及び300℃で0.5分、及び300℃で5分、及び400℃で0.5分、及び400℃で1分の各処理条件で囲まれる処理条件範囲でブルーイング処理を行う処理工程と、を含むことを特徴とする。
この構成により、引張治具を用いてボルトに荷重負荷工程の後、除荷し、取り外したボルトを、所定の処理条件範囲の下で熱処理するので、荷重負荷のまま熱処理しなくても済み、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善をより容易に行うことができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法は、非調質ボルトを成形後、任意の引張治具を用いてそのボルトの引張強度の90%以上100%未満に相当する軸方向荷重を負荷して塑性歪を与える荷重負荷工程と、ボルトを引張治具から除荷し取り外す除荷工程と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、荷重負荷が所定の範囲で強いものであれば、引張治具を用いてボルトに荷重負荷工程の後、除荷するのみでよく、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善を、さらにより容易に行うことができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法は、非調質ボルトを成形後、処理温度範囲を200℃以上250℃以下、処理時間範囲を15分以上30分以下のブルーイング処理を行う処理工程と、ブルーイング処理後のボルトを、任意の引張治具を用いてそのボルトの引張強度の90%以上100%未満に相当する軸方向荷重を負荷して塑性歪を与える荷重負荷工程と、ボルトを引張治具から除荷し取り外す除荷工程と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、荷重負荷が所定の範囲で強いものであれば、熱処理を事前に行い、その後引張治具を用いてボルトに荷重負荷し、除荷することでよく、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善を、より容易に行うことができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法において、高強度ボルトは、軸径より大きい径の頭部を有する頭部付ボルトであり、引張治具は、その頭部付ボルトの実効長さL1より短い長さの雌ネジ部を有するナットと、頭部付ボルトのネジ部を通す貫通穴を有しながら頭部を上方に押し上げるための天井部を備える下部治具と、頭部付ボルトのネジ部を通す貫通穴を有しながらそのネジ部に嵌合したナットを下部に押し下げるための底部を有する上部治具とを含み、荷重負荷工程は、塑性歪を与える頭部付ボルトの頭部を下部治具の天井部で止めながら頭部付ボルトのネジ部を下部治具の貫通穴と上部治具の貫通穴に通し、上部治具の底部から突き出た頭部付ボルトのネジ部にナットを嵌合し、それによって、上部治具の底部から突き出たネジ部の長さをL3として、(L1−L3)の長さの裸ネジ部を頭部付ボルトの根元側に残して、頭部付ボルトを引張治具に取付ける取付工程と、引張治具における上部治具を下部方向に、下部治具を上部方向にそれぞれ引っ張ることで、引張治具に取付けられた頭部付ボルトを軸線方向に任意の軸方向荷重の下で引っ張る引張工程と、を有することが好ましい。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法において、高強度ボルトは、軸の少なくとも両端部にネジ部を有するスタッドボルトであり、引張治具は、成形後のスタッドボルトのネジ部の実効長さL1より短く、そのスタッドボルトが実使用において相手先に嵌合する使用嵌合長さL2よりも長い任意の長さL3を有する雌ネジ部を含み、荷重負荷工程は、塑性歪を与えるスタッドボルトのネジ部を引張治具の長さL3の雌ネジ部で嵌合させ、それによって、(L1−L3)の長さの裸ネジ部をスタッドボルトに残して、引張治具にスタッドボルトを取り付ける取付工程と、引張治具に取り付けられたスタッドボルトを軸線方向に任意の軸方向荷重の下で引っ張る引張工程と、を有することが好ましい。
上記構成により、引張治具を用いて、ネジ部の実効長さL1のうち嵌合していないネジ部分に、塑性歪を与えることができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法は、非調質ボルトを成形後、任意の回転締付治具を用いてそのボルトの材料の弾性領域を示す指標であるスナグトルクで締め付け、さらに、90度以上270度以下の角度の増し締めを行う荷重負荷工程と、ボルトを回転締付治具から除荷し取り外す除荷工程と、取り外したボルトを、熱処理する温度と時間との関係において、200℃で5分、及び200℃で60分、及び250℃で1分、及び250℃で10分、及び300℃で0.5分、及び300℃で5分、及び400℃で0.5分、及び400℃で1分の各処理条件で囲まれる処理条件範囲でブルーイング処理を行う処理工程と、を含むことを特徴とする。
この構成により、回転締付治具を用いてボルトに荷重負荷工程の後、除荷し、取り外したボルトを、所定の処理条件範囲の下で熱処理するので、荷重負荷のまま熱処理しなくても済み、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善をより容易に行うことができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法は、非調質ボルトを成形後、任意の回転締付治具を用いてそのボルトの材料の弾性領域を示す指標であるスナグトルクで締め付け、さらに、180度以上270度以下の角度の増し締めを行う荷重負荷工程と、ボルトを回転締付治具から除荷し取り外す除荷工程と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、荷重負荷が所定の範囲で強いものであれば、回転締付治具を用いてボルトに荷重負荷工程の後、除荷するのみでよく、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善を、さらにより容易に行うことができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法は、非調質ボルトを成形後、処理温度範囲を200℃以上250℃以下、処理時間範囲を15分以上30分以下のブルーイング処理を行う処理工程と、ブルーイング処理後の非調質ボルトを、任意の回転締付治具を用いてそのボルトの材料の弾性領域を示す指標であるスナグトルクで締め付け、さらに、90度以上270度以下の角度の増し締めを行う荷重負荷工程と、ボルトを回転締付治具から除荷し取り外す除荷工程と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、荷重負荷が所定の範囲で強いものであれば、熱処理を事前に行い、その後回転締付治具を用いてボルトに荷重負荷し、除荷することでよく、非調質高強度ボルトにおけるリラクセーション特性の改善を、より容易に行うことができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法において、高強度ボルトは、軸径より大きい径の頭部を有する頭部付ボルトであり、回転締付治具は、頭部付ボルトのネジ部の実効長さL1より短く、そのボルトが実使用において相手先に嵌合する使用嵌合長さL2よりも長い任意の長さL3の雌ネジ部を一部に有する貫通穴を含み、頭部付ボルトを貫通穴に挿入し雌ネジ部にねじ込んでL3の長さで嵌合させたときその頭部が貫通穴の端部で止まる形状を備え、荷重負荷工程は、頭部付ボルトを、その頭部が回転締付治具の端部で止まるまでねじ込み、それによって、(L1−L3)の長さの裸ネジ部を頭部付ボルトに残して、頭部付ボルトを回転締付治具に取り付ける取付工程と、頭部付ボルトを、頭部が回転締付治具の端部で止まっている状態でさらにその頭部付ボルトの材料の弾性領域を示す指標であるスナグトルクで締め付ける締付工程と、頭部付ボルトを、スナグトルクの締め付け状態からさらに任意の角度で増し締めする増し締め工程と、を有することが好ましい。
上記構成により、回転締付治具を用いて頭部付ボルトを増し締めすることで、ネジ部の実効長さL1のうち嵌合していないネジ部分に、塑性歪を与えることができる。
また、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法において、高強度ボルトは、軸の少なくとも両端部にネジ部を有するスタッドボルトであり、回転締付治具は、スタッドボルトのネジ部の実効長さL1より短く、そのスタッドボルトが実使用において相手先に嵌合する使用嵌合長さL2よりも長い任意の長さL3の雌ネジ部を一部に有する穴を含み、スタッドボルトを穴に挿入し雌ネジ部にねじ込んでその一方端のネジ部をL3の長さで嵌合させたときスタッドボルトの他方端が穴の端部よりL2以上突き出る形状を備え、荷重負荷工程は、スタッドボルトを、回転締付治具の穴に挿入し雌ネジ部にねじ込み、その一方端のネジ部をL3の長さで嵌合させ、それによって、(L1−L3)の長さの裸ネジ部をスタッドボルトに残して、穴の端部から突き出るスタッドボルトの他方端に締付ナットを取り付ける取付工程と、締付ナットを穴の端部で止まるまで回転させた後、スタッドボルトをそのボルトの材料の弾性領域を示す指標であるスナグトルクで締め付ける締付工程と、締付ナットを、スナグトルクの締め付け状態からさらに任意の角度で増し締めする増し締め工程と、を有することが好ましい。
上記構成により、回転締付治具を用いてスタッドボルトを増し締めすることで、ネジ部の実効長さL1のうち嵌合していないネジ部分に、塑性歪を与えることができる。
上記のように、本発明に係る非調質高強度ボルトの製造方法によれば、リラクセーション特性の改善をより容易に行うことが可能となる。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態に付き詳細に説明する。以下では6通りのリラクセーション特性が改善される非調質高強度ボルトの製造方法について説明するが、それらに共通する点は、荷重負荷のまま熱処理しなくても済む製造方法によってリラクセーション特性が改善されるところにある。これら6通りの製造方法は、荷重負荷の方法が引張治具を用いるものと回転締付治具を用いるものとでそれぞれ3通りずつになる。すなわち、荷重負荷の治具の差異を除けば、3通りの異なる処理の製造方法に分けることができる。
3通りの製造方法の処理の違いは、荷重負荷の程度、すなわち成形後のボルトに与える塑性歪の大きさによって生じるものである。すなわち、第1の製造方法は、荷重負荷−除荷−熱処理の手順で行われる。第2、第3の製造方法は、第1の製造方法よりも荷重負荷の程度を強くするもので、第2の製造方法は荷重負荷−除荷のみで済ますものである。第3の方法は、熱処理を事前に行い、その後はやはり荷重負荷−除荷のみで済ますものである。以下にこれら6通りの製造方法につき、詳細に説明する。
図1は、非調質高強度ボルトの製造方法の処理手順を示すフローチャートである。高強度ボルトの製造方法は、成形されたボルト、すなわちすでにボルトの外形に成形されたものに所定の処理を行うことでリラクセーション特性を改善するもので、その点で、ボルトの外形を備えるものを製造することを前提として、その外形でリラクセーション特性の優れたボルトを製造する方法である。
ボルト成形の工程(S10)は、素材からボルトの外形を有するものを作り出すまでの工程である。その内容は、ピアノ線材の素材を準備する工程、その素材をパテンティング処理、すなわち任意に定めるパーライト占有率となるようにパーライト化処理を行う工程、パーライト化処理したものを任意に定める減面率、すなわち線材の断面積の減少率の下で引き抜きする加工工程を含む。この工程の後で、引張強度が1500MPaから1700MPaとなるように、素材材質、パテンティング処理、引き抜き加工処理の条件等を定めるのが好ましい。引き抜き加工工程の後、任意の転造条件の下で、スタッドボルトは転造のみ、頭部付ボルトはさらに頭部成形を行う。
ピアノ線材の素材としては、JISで規定されるSWRS82Bを用いることができる。もちろんその他の材料からなる素材線材、例えば冷間圧造用炭素鋼線材SWRCH等を用いることにしてもよい。線材直径は、引き抜き加工工程の減面率とボルトサイズを考慮し、8mmから9.5mmとすることができる。
パテンティング処理としては、950℃に加熱してオーステナイト化し、その後525℃の鉛浴で恒温変態処理を行い、パーライト組織を有する線材とすることができる。もちろん素材に合わせて、これらの処理温度条件を変更してもよい。
引き抜き加工工程は、パテンティング処理のあと、周知の酸洗処理、ボンデ処理等を経て、引き抜き装置により任意の減面率で加工する。減面率としては上記引張強度を確保するために50%程度となる。減面後の線径は、5.35mm又は6.35mmとし、これにより転造後のボルトを、有効径5.35mmのM6又は有効径6.35mmのM7のスタッドボルト及び六角頭部付ボルトとする。ここでスタッドボルトとは、軸径よりも大きな頭部のないボルトのことである。また有効径5.35mmのM6ボルトとは、ネジ部のない軸の直径と、ネジ部の実効直径とが同じ5.35mmのボルトのことである。実効直径は、ネジ部の山径と谷径の中間の直径である。なお、有効径に対応して用いられるものは、称呼径で、この場合はネジ部のない軸の直径と、ネジ部の山径(呼び径)とが同じである。有効径形状と称呼径形状とでは、ボルト圧造工程におけるネジ成形の歪や、後述の軸方向荷重負荷の塑性歪の様子が異なることがあり、それにより、非調質高強度ボルトの製造方法の条件等が異なることがある。
このようにして、ボルト成形がなされると、次に引張治具で塑性歪を与える荷重負荷工程(S12)となる。荷重負荷工程は、ボルトをその弾性限界を超えて引っ張り、ネジ部に任意の塑性歪を与える工程である。その塑性歪は、そのボルトが実際の装置等に取り付けられたときに相手のネジ部と嵌合するいわゆる嵌合部でない部分に与えられることが好ましい。この塑性歪は、ボルト成形までの工程で導入される可動転位の増殖によるリラクセーション(応力緩和)の現象を抑制するために導入されるものである。したがってこの塑性歪は、ボルト締結の際にボルトが延ばされる部分、すなわち嵌合部でないネジ部を設け、そこに与えられることが好ましい。
その様子について図2を用いて説明する。図2(a)はいわゆるスタッドボルト10を示す図で、軸部の両端にネジ部12が実効長L1でそれぞれ切られている。ここでL2と示したのは、このスタッドボルト10が、実使用において相手側の雌ネジと嵌合する長さ、いわゆる使用嵌合部14の長さである。したがって、ネジ部12の内で使用嵌合部14以外の部分、つまり実使用において相手側の雌ネジと嵌合せず裸のままの使用時裸ネジ部15において塑性歪が生じることが好ましい。
図2(b)はいわゆる六角ボルト20を示し、ここでは頭部21の下の首部を残して軸部の先端側にネジ部22が実効長L1で切られている。ここでL2と示したのは、この六角ボルト20が、実使用において相手側の雌ネジと嵌合する使用嵌合部24の使用嵌合長さである。したがって、ネジ部22の内で使用嵌合部24以外の使用時裸ネジ部25において塑性歪が生じることが好ましい。
図3は、ボルトの使用嵌合部以外の裸ネジ部に塑性歪を与えるための引張治具の構造及び作用を説明する図である。図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図3(a)は、スタッドボルト10に塑性歪を与えるためのスタッドボルト用引張治具30を示す。このスタッドボルト用引張治具30は、一方側に開口を有する雌ネジ部18が切り込まれた部材で、いわゆる袋ナットの一種である。この雌ネジ部18の実効長さはL3で示される。L3の長さは、スタッドボルト10の実効長さL1より短く、使用嵌合長さL2より長く設定される。このようなスタッドボルト用引張治具30を1つのスタッドボルト10に対し2つ用意し、それぞれの雌ネジ部18一杯にスタッドボルト10の両端のネジ部12を嵌合させる。その状態で、この場合の裸ネジ部16の長さは、L4=L1−L3となる。この長さL4は、図2で説明した裸ネジ部15の長さL1−L2より短い。
このような構成のスタッドボルト用引張治具30をスタッドボルト10の両端に取り付けた状態で、各スタッドボルト用引張治具30を図示されていない引張装置に掛け、図3(a)において示される上方側のスタッドボルト用引張治具30を図中に示す+X方向に、下方側のスタッドボルト用引張治具30を−X方向にそれぞれ引っ張る。これにより、スタッドボルト10に軸方向荷重が負荷され、負荷荷重がスタッドボルト10の材料の弾性限界を超える大きさのときは、その荷重を除荷した後で、両スタッドボルト用引張治具30の間の部分に塑性歪が生じる。ここで、ネジ部12において塑性歪の生じるのは裸ネジ部16のところになる。
図3(b)は、六角ボルト20に塑性歪を与えるための六角ボルト用引張治具40を示す。この六角ボルト用引張治具40は、六角ボルト20と嵌合できるナット42と、上部治具44と、下部治具46とから構成される。ここでナット42は、その高さ、すなわち雌ネジの長さは、六角ボルト20のネジ部22の長さL1より短いものを用いる。
上部治具44は、下部治具46と協働して、六角ボルト20にはめ込まれたナット42を図3(b)に示す−X方向に押し下げる機能を有する部材である。上部治具44は、底部と底部から上方に延びる複数の立壁部を有し、底部には六角ボルト20のネジ部22が通ることができるが頭部21の外形よりも小さな穴径である貫通穴が設けられる。
下部治具46は上部治具44と協働して、六角ボルト20の頭部21を図3(b)に示す+X方向に押し上げる機能を有する部材である。下部治具46は円筒状の形状を有し、その天井部に六角ボルト20のネジ部22が通ることができる貫通穴と、上部治具44の先ほどの壁部が移動自在に通れる穴とが設けられる。ここで、下部治具46の円筒状の内径は、上部治具44の底部の外形よりも大きく設定される。
そして、図3(b)に示すように、下部治具46の円筒状の穴の下の方から、上部治具44の壁部を上に向けて、下部治具46の天井部の壁部通し穴にその壁部を通すと、上部治具44の底部の貫通穴と、下部治具46の天井部の貫通穴とがほぼ同軸に配置されるようにそれぞれの配置が設定され、組み合わせられる。ここで、上部治具44の上方から六角ボルト20のネジ部22を持ってきて、下部治具46の天井部の貫通穴にも通しながら、上部治具44の底部の貫通穴に差し込む。そして、その貫通穴から突き出たネジ部22にナット42をはめる。ナット42のはめ方は、ネジ部22の根元一杯まではめずに、長さL1のうち、根元側に裸ネジ部26を残すようにする。図3(b)に示すようにナット42をネジ部22の先端からL3の長さのところまではめあわせて上部治具44の底部で止めると、ネジ部22の根元側の裸ネジ部26の長さL4は、L1−L3となる。
この状態で、上部治具44と、下部治具46をそれぞれ図示されていない引張装置に掛け、図3(b)において示される上部治具44を図中に示す−X方向に、下部治具46を+X方向にそれぞれ引っ張る。これにより、六角ボルト20の頭部21は+X方向に押し上げられ、ナット42は−X方向に押し下げられるので、六角ボルト20に軸方向荷重が負荷され、負荷荷重が六角ボルト20の材料の弾性限界を超える大きさのときは、その荷重を除荷した後で、頭部21とナット42の間の部分に塑性歪が生じる。ここで、ネジ部22において塑性歪の生じるのは裸ネジ部26のところになる。
このように、スタッドボルト10の場合も、六角ボルト20の場合も、裸ネジ部を残しながら引張治具にボルトを取り付け、引張治具に取り付けられたボルトを軸線方向に任意の軸方向荷重の下で引っ張ることで、裸ネジ部に塑性歪を与えることができる。
この引張治具として、図3(a)では袋ナット状のものを説明したが、単なるナットでもよく、あるいは雌ネジが切られている板材等、引張装置に取り付けやすい形状の部材であってもよい。また、図3(b)では1組の上部治具、下部治具を含む構成のものを説明したが、六角ボルトの頭部と、六角ボルトにはめ込まれたナットとを用いて六角ボルトを引っ張るものであればよく、例えば頭部を支える部材、ナットを支える部材の組み合わせでもよく、ナットを支える部材は雌ネジが切られた部材であってもよい。
塑性歪を与えるための軸方向荷重は、そのボルトの弾性限界を超え、引張強度未満の範囲で与えることができるが、ここでは、引張強度の80%以上に相当する荷重を与える。その理由は後述する詳細な実験の結果による。
再び図1に戻り、塑性歪を与える所定の荷重負荷の後、これを除荷する(S14)。 具体的には、引張装置の負荷荷重をゼロに戻し、図3(a),(b)で説明した引張治具から、スタッドボルト、六角ボルトを取り外す。この除荷により、スタッドボルト、六角ボルトに、塑性歪が導入される。
次に、取り外したボルトについてブルーイング処理を行う(S16)。ブルーイング処理はいわゆる歪時効処理とも呼ばれる熱処理工程である。ここでは、熱処理する温度と時間との関係において、200℃で5分、及び200℃で60分、及び250℃で1分、及び250℃で10分、及び300℃で0.5分、及び300℃で5分、及び400℃で0.5分、及び400℃で1分の各処理条件で囲まれる処理条件範囲で熱処理を行う。この処理条件範囲の決定の理由は、以下に詳述する実験の結果による。熱処理は、複数のボルトをまとめ一括処理が行われる。
ここで、S12において負荷される荷重の大きさと、S16において行われる熱処理条件範囲を決めるために行った実験について説明する。ここではS12でボルト成形されたボルトを多数準備し、負荷荷重の大きさを引張強度の75%、80%、95%に相当する大きさにまで変化させ、また、熱処理の温度を200℃、250℃、300℃、400℃と変え、熱処理の時間を0.5分、1分、5分、30分、60分と変化させた。このようにして処理した各ボルトについて、それぞれ引張試験を行い、引張強度、伸びが0.2%残留するときの応力である0.2%耐力、0.2%耐力を降伏強度として降伏比=(降伏強度/引張強度)=(0.2%耐力/引張強度)をそれぞれ求めた。
その結果を図4に示す。ここでは、試験のグループとして、7つのグループに分けて示してある。試験1は、ボルト成形のまま、すなわちS10の工程のみのボルトの引張試験である。試験2は、ボルト成形後に250℃30分のブルーイング処理を行ったものについての引っ張り試験である。この条件は従来技術である特許文献1の方法の条件に対応する。
試験3から試験6は、図1の処理手順を行ったボルトについて引張試験を行ったもので、ここでは、「σBに対する負荷応力比(%)」が、S12で説明した引張強度に相当する荷重の大きさに対する軸方向負荷荷重の大きさを示す。したがってσBは引張強度を示す。以下では、(軸方向負荷荷重/引張強度に相当する荷重)のことを、特に断らない限り、負荷応力比として説明する。試験3は、ブルーイング処理の温度を200℃とし、ブルーイング処理の時間と、負荷応力比とをパラメータとして処理したボルトの引張試験である。同様に、試験4はブルーイング処理の温度を250℃とし、試験5はブルーイング処理の温度を300℃とし、試験6はブルーイング処理の温度を400℃とし、それぞれブルーイング処理の時間と、負荷応力比とをパラメータとして処理したボルトの引張試験である。
試験7は、比較試験で、ここでは従来から調質ボルトとして知られるボルト転造成形後に焼入れ焼戻しを行ったものについての引張試験である。調質ボルトとしてはSCM440の材料で、880℃焼入れ、540℃焼戻しを行ったものを用いた。この結果によれば、調質ボルトは、引張強度は試験2のボルトより低いが、降伏比が0.90以上あることが分かる。
図5は、試験2に関連して、ボルト成形後にブルーイング処理を行う従来技術についてさらに詳細に実験を行った結果を示す図である。ここでは、ブルーイング処理の時間を30分に固定し、横軸にブルーイング処理の温度をとり、縦軸に各処理後における各ボルトの引張試験の結果である引張強度と降伏比を取ってある。これらの結果からわかるように、ボルト成形とブルーイング処理のみの従来技術では、降伏比が0.8よりやや上程度に留まり、また処理温度が高くなるにつれ引張強度が低下する。
図6は、試験2の従来技術のボルト、試験7の調質ボルトについてのリラクセーション試験の結果を示す図である。ここでリラクセーション試験は、各ボルトに、その引張試験の0.2%耐力に相当する軸方向荷重を負荷し、かつ引張試験のクロスヘッド変位を一定にする条件で保持し、各保持時間における荷重の変化を、初期荷重からの荷重低下率を求めることで行った。図6では、リラクセーション試験の試験温度が常温である常温リラクセーション試験、および試験温度が150℃である高温保持リラクセーション試験について、横軸に保持時間、縦軸に荷重低下率をとってある。このように、従来技術のボルト成形+ブルーイング処理のボルトは、調質ボルトに比し、リラクセーション特性が劣ることがわかる。
このように、ボルト成形後に従来技術のブルーイング処理のみを行うものは、上記のように降伏比が低く、リラクセーション試験における荷重低下率が大きい。この理由は次のように考えることができる。すなわち、リラクセーションとは転位の移動によるいわゆるクリープ現象によって内部応力が低下する現象であり、降伏比と関連がある。リラクセーションが大きいことは、ボルトを対象物に締結後の軸方向荷重の低下、いわゆる軸力低下が大きいことを意味し、ボルトの実使用時にゆるみが発生し、疲労破壊の原因となる恐れがある。一方、調質ボルトは焼入れ焼戻しの調質熱処理によって可動転位が合金化合物によってピン止めされているため、一般に非調質ボルトより降伏比が高い。非調質ボルトの場合、調質熱処理に相当するのがブルーイング処理である。
しかしながら、試験2のボルト成形は、図1のS10の工程に関連して説明したように、パテンティング処理後の減面率を約50%として一般的な非調質ボルトにおける減面率の約30%等に比較して高い。したがって一般的な非調質ボルトよりも高い転位密度を有している。これがその後のボルト転造によって可動転位が著しく増殖されるため、ブルーイング処理のみでは転位のピン止め効果が弱いと考えられ、これが、試験2において降伏比が低くなる理由の1つと推定される。したがって、リラクセーション特性を改善する1つの指標として、調質ボルト並みの降伏比を考えることができる。
図7から図14は、図4の試験3から試験6の結果をグラフ化したもので、それぞれ負荷応力比をパラメータとし、横軸には対数軸でブルーイング時間を取り、縦軸に降伏比または引張強度を取って示したものである。たとえば図7、図8は、試験3に対応する各処理条件下のボルトについての降伏比、引張応力を示す。同様に、図9、図10は、試験4に対応する各処理条件下のボルトについて、図11、図12は、試験5に対応する各処理条件下のボルトについて、図13、図14は、試験6に対応する各処理条件下のボルトについての降伏比、引張応力を示す。これらの結果から、引張強度が1500Mpa以上の目標については全部のボルトが満たすが、降伏比については、調質ボルト並みの0.9以上が条件次第で得られることがわかる。なお、降伏比が0.9以上のものについては、図4において降伏比のデータの欄で影を付けて示してある。
ここで、調質ボルト並み又はそれ以上の降伏比、すなわち降伏比0.90以上を有するボルト、すなわち図1の工程を経たボルトを選び、そのリラクセーション試験を行い、図6の結果と比較した。その結果を図15、図16に示す。図15は常温リラクセーション試験の結果、図16は高温リラクセーション試験の結果を示す。リラクセーション試験の内容、及び図15、図16の縦軸、横軸の意味は、図6で説明したものと同じである。図中に、0.95σB等と示されているのは、降伏比が0.95であるボルト、すなわち図1の工程を経たボルトであることを示す。これらの図から、調質ボルト並み又はそれ以上の降伏比、すなわち降伏比0.90以上を有するボルトは、従来技術の「ボルト成形+ブルーイング」の処理のものに比較し、リラクセーション特性が改善し、調質ボルト並み、あるいはそれ以上に改善されていることがわかる。
そこで、図7,9,11,13を参照し、各処理温度において、降伏比が0.9以上となる処理時間を求めた。それをまとめたものが図17である。図17は、横軸にブルーイング処理温度を取り、縦軸を対数軸としてブルーイング処理時間を取り、図7,9,11,13において、降伏比が0.9以上となる各点を示し、それらによって囲まれる領域を斜線で示したものである。この斜線領域が、降伏比0.9以上を得るための処理条件範囲と考えられる。この処理条件範囲は、200℃で5分、及び200℃で60分、及び250℃で1分、及び250℃で10分、及び300℃で0.5分、及び300℃で5分、及び400℃で0.5分、及び400℃で1分の各処理条件を結んで囲まれる領域である。
このようにして、図1における非調質高強度ボルトの製造方法の手順において、S12の負荷応力比を80%以上100%未満とし、S16のブルーイング条件を図17で説明した処理条件範囲とすることで、引張強度が1500MPa以上、降伏比が0.9以上で、リラクセーション特性が改善された非調質高強度ボルトを得ることができる。
図18は、非調質高強度ボルトの製造方法について別の処理手順を示すフローチャートである。この製造方法は、図1で説明した方法と比べ、引張治具で塑性歪を与える荷重負荷の工程(S20)が異なり、さらに、ブルーイング処理が省略できるところが異なる。
図18において、ボルト成形(S10)の工程は、図1のボルト成形工程で説明した内容と全く同じである。したがって、ピアノ線材の素材を準備し、これをパテンティング処理し、所定の減面率で引き抜き加工し、引張強度を1500MPaから1700MPaとなるようにし、転造と頭部成形によりボルトの外形となす。
成形されたボルトは、負荷応力比を図1の製造方法より高い条件として、軸方向の荷重が負荷される。荷重負荷には、図3に関連して説明した引張治具を用いる。その後除荷される(S14)。この除荷工程も図1の除荷工程で説明した内容と全く同じである。これで、図18における非調質高強度ボルトの製造方法は終了する。ここでは熱処理によるブルーイング処理が省略されているが、見方を変えれば、常温下で歪時効処理が行われているともいえる。
そこで、荷重負荷工程(S20)においては、負荷応力比と、その負荷荷重を保持する保持時間、すなわち除荷までの時間をパラメータとして、ボルトに各種の処理を行い、その後引張試験を行った。その評価指標としては、上記のように、調質ボルトと同程度以上の降伏比が0.90以上となることを用いる。
図19は、試験8として、ボルト成形後に各種の負荷応力比と、その荷重保持時間をパラメータとし、その処理を行った各ボルトについての引張試験の結果を示す図である。ここでは参考のため、図4で説明した試験1、試験2、試験7のデータが転記されている。図20、図21は、試験8の結果をグラフ化したもので、それぞれ負荷応力比をパラメータとし、横軸には対数軸で荷重保持時間を取り、縦軸に降伏比または引張強度を取って示したものである。
これらの結果から、引張強度が1500Mpa以上の目標については全部のボルトが満たすが、降伏比については、調質ボルト並みの0.9以上が条件次第で得られることがわかる。その条件は、荷重負荷時間には依存せず、負荷応力比を90%以上とすることであることがわかる。なお、降伏比が0.9以上のものについては、図19において降伏比のデータの欄で影を付けて示してある。
このようにして、図18における非調質高強度ボルトの製造方法の手順において、S20の負荷応力比を90%以上100%未満とすることで、引張強度が1500MPa以上、降伏比が0.9以上で、リラクセーション特性が改善された非調質高強度ボルトを得ることができる。
図22は、非調質高強度ボルトの製造方法についてさらに別の処理手順を示すフローチャートである。この製造方法は、図1で説明した方法と比べ、ブルーイング処理(S22)がボルト成形工程(S10)の次に配置され、これに伴い、引張治具で塑性歪を与える荷重負荷の工程(S24)の内容が異なるところが相違する。図22の製造方法は、図18で説明した製造方法、すなわち、負荷応力比を高くすることで、いわば常温歪時効のような効果により、除荷後の熱処理を省略できることに関連し、負荷応力比を高める場合に、前もってブルーイング処理を施すことによって、特性がより改善されるのではないかとの着想に基づくものである。
図22の製造方法の手順において、ボルト成形(S10)の工程は、図1のボルト成形工程で説明した内容と全く同じである。したがって、ピアノ線材の素材を準備し、これをパテンティング処理し、所定の減面率で引き抜き加工し、引張強度を1500MPaから1700MPaとなるようにし、転造と頭部成形によりボルトの外形となす。ボルト成形されると次にブルーイング処理がされる(S22)。そしてその後引張治具で塑性歪を与える荷重負荷の工程(S24)が行われ、除荷される(S14)。この除荷工程も図1の除荷工程で説明した内容と全く同じである。
ここで、ブルーイング処理工程(S22)の内容は、従来技術の方法において用いたものと同じ条件、すなわち250℃30分とした。そして、荷重負荷工程(S24)において、図18における荷重負荷工程(S20)と同様に、負荷応力比と、その負荷荷重を保持する時間、すなわち除荷までの時間をパラメータとして、ボルトに各種の処理を行い、その後引張試験を行った。その評価指標としては、上記のように、調質ボルトと同程度以上の降伏比が0.90以上となることを用いる。
図23は、試験9として、ボルト成形後に各種の負荷応力比と、その荷重保持時間をパラメータとし、その処理を行った各ボルトについての引張試験の結果を示す図である。ここでは参考のため、図4で説明した試験1、試験2、試験7のデータが転記されている。図24、図25は、試験9の結果をグラフ化したもので、それぞれ負荷応力比をパラメータとし、横軸には対数軸で荷重保持時間を取り、縦軸に降伏比または引張強度を取って示したものである。
これらの結果から、引張強度が1500Mpa以上の目標については、全部のボルトにわたって十分満たされ、例えば先ほどの図19における事前ブルーイング処理のないものに比べ、かなり改善されることがわかる。また、降伏比については、調質ボルト並みの0.9以上が条件次第で得られることがわかる。その条件は、荷重負荷時間には依存せず、負荷応力比を90%以上とすることであることがわかる。なお、降伏比が0.9以上のものについては、図19において降伏比のデータの欄で影を付けて示してある。また、事前ブルーイング処理の条件は、従来技術の250℃30分としたが、温度範囲は200℃以上250℃以下、時間範囲は15分以上30分以下であってもよい。
このようにして、図22における非調質高強度ボルトの製造方法の手順において、S22のブルーイング処理条件を200℃以上250℃以下で30分とし、S24の負荷応力比を90%以上100%未満とすることで、引張強度が1500MPa以上、降伏比が0.9以上で、リラクセーション特性が改善された非調質高強度ボルトを得ることができる。
図26は、非調質高強度ボルトの製造方法について、荷重負荷の方法、より具体的には荷重負荷のための治具を、引張治具でなく、回転締付治具を用いる場合の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、図1の製造方法と比較して、回転締付治具で塑性歪を与える荷重負荷工程(S30)が異なり、その他のボルト成形(S10)、除荷(S14)、ブルーイング処理(S16)の工程は、図1の対応する工程と全く同じである。
換言すれば、図26の製造方法は、図1における荷重負荷工程が、ボルトの両端を引張装置で引っ張って所定の塑性歪を与えているが、これをボルトの塑性域締め法によって、等価な大きさの軸方向の荷重負荷を行い、同じ所定の塑性歪を与えるようにするものである。したがって、回転締付治具によって塑性域締めされる程度は、それによる軸方向荷重負荷の大きさが、図1に関連して説明した負荷応力比と同じになるように決定される。そのようにすることで、他の処理工程を全く同じとして、図1で説明した非調質高強度ボルトと全く同じ特性の非調質高強度ボルトを得ることができる。
回転締付治具で塑性歪を与える荷重負荷工程(S30)は、引張治具で塑性歪を与える荷重負荷工程(S12)と同様に、ボルトをその弾性限界を超えるまで締め付け、ネジ部に任意の塑性歪を与える工程である。そして、S12に関連して説明したように、その塑性歪は、そのボルトが実際の装置等に取り付けられたときに相手のネジ部と嵌合するいわゆる嵌合部でない部分に与えられることが好ましく、また、この塑性歪は、ボルト締結の際にボルトが延びる部分、すなわち嵌合部でないネジ部を設け、そこに与えられることが好ましいことも同様である。つまり、図2(a),(b)に関連して説明したように、スタッドボルト10については、この塑性歪は、ネジ部12の内で使用嵌合部14以外の部分、つまり実使用において相手側の雌ネジと嵌合せず裸のままの使用時裸ネジ部15において塑性歪が生じることが好ましく、六角ボルト20についても、ネジ部22の内で使用嵌合部24以外の使用時裸ネジ部25において塑性歪が生じることが好ましい。
図27は、ボルトの使用嵌合部以外の裸ネジ部に塑性歪を与えるための回転締付治具の構造及び作用を説明する図である。ボルトについて、図3の引張治具と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図27(a)は、スタッドボルト10に塑性歪を与えるためのスタッドボルト用回転締付治具50を示す。このスタッドボルト用回転締付治具50は、スタッドボルト10の一方側のネジ部12がねじ込まれるねじ込み治具52と、スタッドボルト10の一方側のネジ部12にはめ込まれるナット54とから構成される。
ねじ込み治具52は、スタッドボルト10の全長より短い長さJの全高を有する筒状の部材で、スタッドボルト10が挿入できる中心穴を備え、その中心穴の底部には有効長L3の雌ネジ部18が切られている。L3は、スタッドボルト10のネジ部12の有効長L1よりも短く、スタッドボルト10の使用嵌合部14の長さL2よりも長く設定される。そして、ねじ込み治具52の軸方向長さJは、雌ネジ部18一杯にスタッドボルトの一方側のネジ部12がねじ込まれるときにスタッドボルト10の他方側のネジ部12が全部突き出ないような長さに設定される。また、そのときにスタッドボルト10の他方側のネジ部12が突き出た部分の長さよりも、ナット54の軸方向の高さが短くなるようにナット54が設定される。
このような構成のスタッドボルト用回転締付治具50を用い、スタッドボルト10の一方側のネジ部12を先にしてねじ込み治具52の中心穴に通し、その底部の雌ネジ部18にその先端のネジ部12を嵌合させる。そして、ねじ込み治具52から突き出たスタッドボルト10の他方側のネジ部12にナット54をはめ込み、ナット54がねじ込み治具52の上面で止まるまで回す。このときの寸法関係は図27(a)に示すように、ねじ込み治具52の上面であるナット54の止まり面と、雌ネジ部18との間に、2つの裸ネジ部16が現れる。2つの裸ネジ部16における軸方向の長さL4は同じであるのが好ましいが、異なっていてもよい。
この状態で、スタッドボルト10はスタッドボルト用回転締付治具50に取り付けられたことになるが、その後、図示されていない回転装置を用い、塑性域締め法によってナット54をねじ込み治具52に対し図27(a)に示すθ回転により締め付けてスタッドボルト10に軸方向荷重を負荷する。塑性域締め法は、スナグトルクからさらに増し締めして、ボルトの材料の弾性限界を超える軸方向歪みを与える方法で、増し締めの大きさで、塑性歪を与える歪み量を任意に設定することができる。
図28は、塑性域締め法におけるスナグトルクと増し締め角度の関係を説明する図である。この図で横軸は回転角度、縦軸はボルトが受けるトルクの大きさを示す。このトルク−回転角度特性は、ボルトの応力−歪線図に対応する。ここでスナグトルクとは、材料の弾性領域を示す指標の1つで、トルク−回転角度特性における線形領域の最後のところを材料の降伏開始点Aと考え、そこからさらに10°回転させた状態をポイントBとし、ポイントBから90°回転を戻したときの状態をポイントCとすれば、ポイントCにおけるトルクがスナグトルクと呼ばれる。増し締めとは、このスナグトルクを基準にして確実に塑性域に入れる方法のことである。
再び図27に戻り、図27(b)は、六角ボルト20に塑性歪を与えるための六角ボルト用回転締付治具60を示す。この六角ボルト用回転締付治具60は、六角ボルト20のネジ部22がねじ込まれるもので、六角ボルト20の頭部21の下における有効長L1のネジ部22を含む軸部の長さとほぼ同じ長さの全高を有する筒状の部材で、六角ボルト20の軸部が挿入でき、その頭部21の外形より小さい内径の中心貫通穴を備え、その中心貫通穴の奥部には有効長L3の雌ネジ部18が切られている。L3は、六角ボルト20のネジ部12の有効長L1よりも短く、六角ボルト20の使用嵌合部14の長さL2よりも長く設定される。
このような構成の六角ボルト用回転締付治具60を用い、六角ボルト20の軸部を中心貫通穴に通し、その底部の雌ネジ部18にその先端のネジ部22を嵌合させる。そして、頭部21が六角ボルト用回転締付治具60の上面で止まるまで回す。このときの寸法関係は図27(b)に示すように、六角ボルト用回転締付治具60の上面である頭部21の止まり面と、雌ネジ部18との間に、裸ネジ部16が現れる。
この状態で、六角ボルト20は六角ボルト用回転締付治具60に取り付けられたことになる。したがって、図27(a)に関連して説明したように、その後、図示されていない回転装置を用い、塑性域締め法によって頭部21を六角ボルト用回転締付治具60に対し図27(b)に示すθ回転により締め付けてスタッドボルト10に軸方向荷重を負荷する。そして、スナグトルクからの増し締めの大きさで、負荷応力比を任意に設定することができる。
このように、スタッドボルト10の場合も、六角ボルト20の場合も、回転締付治具は、ボルトのネジ部の実効長さL1より短く、そのボルトが実使用において相手先に嵌合する使用嵌合長さL2よりも長い任意の長さL3の雌ネジでボルトのネジ部を嵌合させる形状を有し、塑性歪を与えるボルトのネジ部を回転締付治具のL3の長さの雌ネジに嵌合させて回転締付治具にボルトを取り付け、塑性域締め法によりスナグトルクから増し締めして、引張治具の場合と同様に裸ネジ部に塑性歪を与えることができる。この回転締付治具として、図27(a)ではナットを用いることを説明したが、雌ネジが切られている板材等、回転装置に取り付けやすい形状の部材であってもよい。
したがって、荷重負荷工程(S30)は、治具が異なるのみで、ボルトの軸方向に荷重を負荷し、塑性歪を与えようという点では図1の荷重負荷工程(S12)と同じである。そして、図1に関連して説明したように、この塑性域締め法による荷重負荷工程(S30)における荷重負荷の程度と、ブルーイング処理工程(S16)の処理条件との関係は、降伏比を0.9以上とすることを1つの指標として評価することで、リラクセーション特性を改善できる。
ここで、S30において負荷される荷重の大きさと、S16において行われる熱処理条件範囲を決めるために行った実験について説明する。ここではS12でボルト成形されたボルトを多数準備し、負荷荷重の大きさを、増し締め角度で90度、180度、270度で変化させ、また、熱処理の条件を200℃30分、300℃3分、400℃1分と変化させた。熱処理条件は、引張治具を用いる場合に求めた図17の処理条件範囲の中で代表的な点を選んだ。このようにして処理した各ボルトについて、それぞれ引張試験を行い、引張強度、0.2%耐力、降伏比をそれぞれ求めた。
その結果を図29に示す。また、図30は、図29の結果をグラフ化したもので、ブルーイング処理条件をパラメータとし、横軸には増し締め角度を取り、縦軸に降伏比を取って示したものである。なお、図29、図30には一部、後述する実施例5の結果も記されている。
これらの結果から、引張強度が1500Mpa以上の目標については全部のボルトが満たすが、降伏比については、調質ボルト並みの0.9以上も全ての条件で得られることがわかる。なお、降伏比が0.9以上のものについては、図29において降伏比のデータの欄で影を付けて示してある。このように、S20の増し締め角度を90度以上270度以下とすることで、図17で説明したブルーイング処理に処理条件範囲の代表的条件の下で、すべて引張強度が1500MPa以上、降伏比が0.9以上とできる。このことから、増し締め角度を90度以上270度以下が、引張治具の場合の負荷応力比80%以上に相当することが予想され、したがって、ブルーイング条件は、図17の処理条件範囲を用いることができると考えられる。
ここで、降伏比0.90以上を有する図26の工程を経たボルトを選び、そのリラクセーション試験を行った。その結果を図31、図32に示す。これらの図は、引張治具を用いた図15、図16に対応するものである。図31は常温リラクセーション試験の結果、図32は高温リラクセーション試験の結果を示す。リラクセーション試験の内容、及び図31、図32の縦軸、横軸の意味は、図15等で説明したものと同じで、従来技術及び調質ボルトのデータも比較のために示されている。図中に、0.93σB等と示されているのは、降伏比が0.93であるボルトであることも同様である。これらの図から、調質ボルト並み又はそれ以上の降伏比、すなわち降伏比0.90以上を有するボルトは、従来技術の「ボルト成形+ブルーイング」の処理のものに比較し、リラクセーション特性が改善し、調質ボルト並み、あるいはそれ以上に改善されていることがわかる。また、引張治具によるものと同様な結果であることが分かる。
従って図26における非調質高強度ボルトの製造方法の手順において、S30の増し締め角度を90度以上270度以下とし、S16のブルーイング条件を図17で説明した処理条件範囲とすることで、引張強度が1500MPa以上、降伏比が0.9以上で、リラクセーション特性が改善された非調質高強度ボルトを得ることができる。
図33は、非調質高強度ボルトの製造方法について回転締付治具を用いる別の処理手順を示すフローチャートである。この製造方法は、引張治具における図18で説明した方法に対応する。すなわち引張治具で塑性歪を与える荷重負荷工程(S20)の代わりに、荷重負荷工程(S32)は回転締付治具で塑性歪を与える。そして、図18の方法と同様にブルーイング処理が省略できる。
図33において、ボルト成形工程(S10)及び除荷工程(S14)は今まで説明したものと同じである。荷重負荷工程(S32)は、図26の荷重負荷工程(S30)と荷重負荷の程度が異なるのみで、回転締付治具による増し締めにより塑性歪を与える歪み量を任意に設定する方法も同様である。
そこで、荷重負荷工程(S32)においては、増し締め角度をパラメータとして、ボルトに各種の処理を行い、その後引張試験を行った。その評価指標としては、上記のように、調質ボルトと同程度以上の降伏比が0.90以上となることを用いる。
その結果は、先ほどの図29及び図30に示されている。この結果から分かるように、引張強度が1500Mpa以上の目標については全部のボルトが満たすが、降伏比については、調質ボルト並みの0.9以上が条件次第で得られることがわかる。その条件は、増し締め角度が180度以上270度以下である。なお、降伏比が0.9以上のものについては、図29において降伏比のデータの欄で影を付けて示してある。
このようにして、図33における非調質高強度ボルトの製造方法の手順において、S32の増し締め角度を180度以上270度以下とすることで、引張強度が1500MPa以上、降伏比が0.9以上で、リラクセーション特性が改善された非調質高強度ボルトを得ることができる。
図34は、非調質高強度ボルトの製造方法について回転締付治具を用いるさらに別の処理手順を示すフローチャートである。この製造方法は、引張治具における図22で説明した方法に対応する。すなわち引張治具で塑性歪を与える荷重負荷工程(S24)の代わりに、荷重負荷工程(S34)は回転締付治具で塑性歪を与える。また、図22と同じ内容のブルーイング処理(S22)がボルト成形工程(S10)の次に配置される。
図34において、ボルト成形工程(S10)及び除荷工程(S14)は今まで説明したものと同じである。荷重負荷工程(S34)は、図26の荷重負荷工程(S30)と荷重負荷の程度が異なるのみで、回転締付治具による増し締めにより塑性歪を与える歪み量を任意に設定する方法も同様である。
ここで、ブルーイング処理工程(S22)の内容は、上記のように図22のブルーイング処理工程と同じ、すなわち従来技術の方法において用いた250℃30分とした。そして、荷重負荷工程(S34)において、増し締め角度をパラメータとして、ボルトに各種の処理を行い、その後引張試験を行った。その評価指標としては、上記のように、調質ボルトと同程度以上の降伏比が0.90以上となることを用いる。
その結果を図35に示す。また、図36に増し締め角度と降伏比の関係、図37に増し締め角度と引張強度の関係をそれぞれ示す。これらの結果から分かるように、引張強度が1500Mpa以上の目標については全部のボルトが満たし、降伏比についても調質ボルト並みの0.9以上が全ての条件で得られることがわかる。また、図22に関連して説明したように、事前ブルーイング処理の条件は、200℃30分であってもよい。
このようにして、図34における非調質高強度ボルトの製造方法の手順において、S22のブルーイング処理条件を200℃以上250℃以下で30分とし、S34の増し締め角度を90度以上270度以下とすることで、引張強度が1500MPa以上、降伏比が0.9以上で、リラクセーション特性が改善された非調質高強度ボルトを得ることができる。
実施例1における非調質高強度ボルトの製造方法の処理手順を示すフローチャートである。
本発明に係る実施の形態において、高強度ボルトに塑性歪を与える様子を説明する図である。
本発明に係る実施の形態において、引張治具の構造及び作用を説明する図である。
実施例1において、各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
ボルト成形後にブルーイング処理を行う従来技術についてブルーイング処理条件と引張試験の結果の関係を示す図である。
従来技術のボルト、調質ボルトについてのリラクセーション試験の結果を示す図である。
実施例1において、200℃ブルーイングのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1において、200℃ブルーイングのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1において、250℃ブルーイングのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1において、250℃ブルーイングのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1において、300℃ブルーイング各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1において、300℃ブルーイング各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1において、400℃ブルーイング各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1において、400℃ブルーイング各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
実施例1のボルトについての常温リラクセーション試験の結果を示す図である。
実施例1のボルトについての高温リラクセーション試験の結果を示す図である。
実施例1におけるブルーイング処理条件範囲を示す図である。
実施例2における非調質高強度ボルトの製造方法の処理手順を示すフローチャートである。
実施例2において、各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
図19の結果をグラフ化した図である。
図19の結果をグラフ化した図である。
実施例3における非調質高強度ボルトの製造方法の処理手順を示すフローチャートである。
実施例3において、各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
図23の結果をグラフ化した図である。
図23の結果をグラフ化した図である。
実施例4における非調質高強度ボルトの製造方法の処理手順を示すフローチャートである。
本発明に係る実施の形態において、回転締付治具の構造及び作用を説明する図である。
本発明に係る実施の形態において、塑性域締め法によるスナグトルクと増し締めの関係を説明する図である。
実施例4,5において、各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
図29の結果をグラフ化した図である。
実施例4のボルトについての常温リラクセーション試験の結果を示す図である。
実施例4のボルトについての高温リラクセーション試験の結果を示す図である。
実施例5における非調質高強度ボルトの製造方法の処理手順を示すフローチャートである。
実施例6における非調質高強度ボルトの製造方法の処理手順を示すフローチャートである。
実施例6において、各種パラメータのボルトについての引張試験の結果を示す図である。
図35の結果をグラフ化した図である。
図35の結果をグラフ化した図である。
符号の説明
10 スタッドボルト、12,22 ネジ部、14,24 使用嵌合部、15,16,25,26 裸ネジ部、18 雌ネジ部、20 六角ボルト、21 頭部、30,50 スタッドボルト用引張治具、40,60 六角ボルト用引張治具、42,54 ナット、44 上部治具、46 下部治具、52 ねじ込み治具。