JP4616962B2 - シール装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、回転体と固定体との間をシールするシール装置に関し、特に、回転体との摺動による発熱によってシール部材の熱的負荷が増加するのを防止することができるシール装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回転体と固定体との間をシールするシール装置には種々のタイプのものがあり、例えば、図6に示すようなものが一般に知られている。
【0003】
すなわち、このシール装置35は、固定体29側に取り付けられるハウジング36と、ハウジング36に取り付けられるシールリングキット37とを具えたものであって、ハウジング36とシールリングキット37との協働によって固定体29と回転体28との間をシールするように構成したものである。
【0004】
シールリングキット37は、カーボン製のシール部材38であるシールリング38と、シールリング38を半径方向に付勢する金属製のエキステンションスプリング41と、シールリング38を軸方向に付勢する金属製のコンプレッションスプリング42と、シールリング38のハウジング36に対する相対的な回動を阻止する金属製のローテーションロックピン43と、コンプレッションスプリング42を保持するスプリングリテーナ44と、スプリングリテーナ44を保持するスナップリング45とを具えている。
【0005】
シールリング38は、円周方向に複数に分割された環状をなすものであって、内周面は回転体28である回転軸28の外周面と摺動してそれとの間をシールする1次シール部39に形成され、軸方向の一端面はハウジング36に接触してそれとの間をシールする2次シール部40に形成されるようになっている。
【0006】
そして、回転軸28の回転時に、エキステンションスプリング41の付勢力によってシールリング38の1次シール部39を回転軸28と摺動させることによって回転軸28との間がシールされ、コンプレッションスプリング42の付勢力によってシールリング38の2次シール部40をハウジング36に圧接することによってハウジング36との間がシールされ、これにより回転体28である回転軸28と固定体29との間がシールされるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構成のシール装置35にあっては、シールリング38と接触している金属製の部品は、シールリング38を摺動発熱させる要因となる回転軸28を除けば、端面でシールリング38を保持しているハウジング36、細い線径のエキステンションスプリング41、コンプレッションスプリング42、シールリング38の回動を抑える小径のローテーションロックピン43のみであり、それらのシールリング38に対する接触面積は非常に小さいので、シールリング38の熱を十分に伝達させることができず、シールリング38自身での放熱が主体となってしまう。この場合、カーボン製のシールリング38は、高温になると熱伝導率が低くなる傾向にあるため、回転軸28との摺動発熱によって高温になったときに、その熱が放出されにくくなって内部に熱がこもってしまい、熱的な負荷が増加し、摩耗が促進されたり、破損する等の問題が生じることになり、寿命が著しく低下してしまう。
【0008】
この発明は前記のような従来のもののもつ問題点を解決したものであって、シール部材が回転体との摺動によって発熱したときに、その熱を十分に放出させることができて、シール部材の熱的な負荷が増加することを阻止し、これにより、シール部材の摩耗が促進されたり、破損したりすることをなくし、寿命を大幅に高めることができるシール装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は前記のような目的を達成するため、回転体と固定体との間をシールするシール装置であって、前記固定体側に装着されるハウジングと、該ハウジングに装着されるとともに、内周部に形成され前記回転体と摺動してそれとの間をシールする1次シール部、軸方向の一端部に形成され前記ハウジングに接触してそれとの間をシールする2次シール部、及び、軸方向の他端部に形成される環状の溝を有し円周方向に複数に分割されたシール部材と、前記シール部材よりも熱膨張係数が大きい金属材又は非金属材から形成され、該シール部材の前記環状の溝に装着され外周面の全体が前記溝の外周側の面に接触する筒状の本体部、及び、前記本体部の一端に一体に形成され軸方向の一端面が前記シール部材の他端部に接触するようになっている環状のフランジ部を有する吸熱部材とを具え、前記シール部材が前記回転体との摺動によって発熱したときにその熱を前記吸熱部材側に伝達させて放熱させるとともに前記吸熱部材が膨張変形した時は当該吸熱部材と前記シール部材との熱膨張係数の差により、前記シール部材は径を大きくする方向に押し広げられて、前記シール部材の1次シール部と回転体との接触を一時的に回避させるように構成した手段を採用したものである。
【0010】
【作用】
この発明は前記のような手段を採用したことにより、シール部材の1次シール部が回転体と摺動することによりそれとの間がシールされ、シール部材の2次シール部がハウジングに接触することによりそれとの間がシールされることになる。そして、シール部材が回転体との摺動によって発熱したときに、その熱は吸熱部材側に伝達され、吸熱部材とシール部材との熱膨張の差により、シール部材の1次シール部が回転体から一時的に離間することになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示すこの発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、この発明によるシール装置の一実施の形態が示されていて、このシール装置1は、固定体29側に取り付けられる金属製のハウジング2と、ハウジング2に取り付けられるシールリングキット9とを具えている。
【0012】
ハウジング2は、円板状に形成されるものであって、中心部には軸線方向に貫通する孔3が設けられ、この孔3内を回転体28である回転軸28が挿通するようになっている。ハウジング2の軸方向の一端面の孔3の周縁部には所定の深さの段部4が環状に設けられ、この段部4内にシールリングキット9が装着されるようになっている。
【0013】
シールリングキット9は、カーボン製のシール部材10であるシールリング10と、シールリング10に装着される吸熱部材18であるスプリングプレート18と、シールリング10を半径方向に付勢する金属製のエキステンションスプリング17と、シールリング10を軸方向に付勢する金属製のコンプレッションスプリング22と、シールリング10及びスプリングプレート18の回動を阻止する金属製のローテーションロックピン26と、コンプレッションスプリング22を保持するスプリングリテーナ23と、スプリングリテーナ23を保持するスナップリング25とを具えている。
【0014】
シールリング10は、円周方向に複数に分割された環状をなすものであって、内周部は回転軸28の外周面と摺動してそれとの間をシールする1次シール部11に形成され、軸方向の一端部はハウジング2の段部4の底面と接触してそれとの間をシールする2次シール部12に形成されるようになっている。
【0015】
シールリング10の1次シール部11及び2次シール部12にはそれぞれ圧力バランス溝13が設けられ、この圧力バランス溝13によってシール装置1に半径方向、軸方向から作用する流体圧力のバランスをとることができるようになっている。
【0016】
シールリング10の外周面には環状の溝が設けられるとともに、この溝内には環状のエキステンションスプリング17が装着され、このエキステンションスプリング17の付勢力によってシールリング10は半径方向内方に付勢されて、1次シール部11が回転軸28の外周面に接触するようになっている。
【0017】
スプリングプレート18は、シールリング10よりも熱膨張係数が大きい金属材又は非金属材から形成されるものであって、シールリング10の軸方向の他端面に設けられている環状の溝14内に挿着される筒状の本体部19と、本体部19の一端に一体に形成される環状のフランジ部20とから構成されている。この場合、本体部19の外周面は全体がシールリング10の溝14の外周側の面に接触し、フランジ部20の軸方向の一端面は全体がシールリング10の軸方向の他端面に接触するようになっている。
【0018】
スプリングプレート18のフランジ部20の軸方向の他端面には円周方向に向かって所定の間隔ごとに所定の深さの孔21が設けられ、この孔21内にコンプレッションスプリング22の一端部が位置するようになっている。
【0019】
ハウジング2の段部4の開口部側の内周面には環状の溝5が設けられ、この溝5内に環状のスプリングリテーナ23がスナップリング25を介して保持されるようになっている。
【0020】
スプリングリテーナ23の軸方向の一端面のスプリングプレート18の孔21に対向する部分にはそれぞれ所定の深さの孔24が設けられ、この孔24内にコンプレッションスプリング22の他端部が位置するようになっている。
【0021】
そして、このようにスプリングプレート18とスプリングリテーナ23との間にコンプレッションスプリング22を装着することで、スプリングプレート18を介してシールリング10が軸方向に付勢され、シールリング10の2次シール部12がハウジング2の段部4の底面側に圧接されるものである。
【0022】
ハウジング2の段部4の底面側にはローテーションロックピン26が複数箇所に立設されるとともに、このローテーションロックピン26の先端部はシールリング10の一方の端面に設けられている溝15内に係合されるようになっている。したがって、このローテーションロックピン26によって回転軸28の回転時に、シールリング10、スプリングプレート18等がハウジング2に対して相対的に回動するのを阻止することができるものである。
【0023】
そして、回転軸28の回転時に、エキステンションスプリング17の付勢力によってシールリング10が半径方向に付勢されて、シールリング10の1次シール部11が回転軸28の外周面と摺動することによりそれとの間がシールされ、コンプレッションスプリング22の付勢力によってシールリング10が軸方向に付勢されて、シールリング10の2次シール部12がハウジング2の段部4の底面側に圧接されることによりそれとの間がシールされ、これにより回転体28である回転軸28と固定体29との間がシールされるものである。
【0024】
そして、シールリング10が回転軸28との摺動によって発熱したときには、その熱は金属製のエキステンションスプリング17、ローテーションロックピン26、ハウジング2に伝達されるとともに、金属材又は非金属材からなるスプリングプレート18に伝達され、さらにその外側に位置しているコンプレッションスプリング22にも伝達されることになる。
【0025】
この場合、エキステンションスプリング17、ローテーションロックピン26、ハウジング2、コンプレッションスプリング22のシールリング10に対する接触面積は非常に小さいが、スプリングプレート18のシールリング10に対する接触面積は大きくとってあり、しかもスプリングプレート18の熱膨張係数はシールリング10よりも大きいので、シールリング10の熱をスプリングプレート18側に十分に伝達させて放出させることができることになる。したがって、シールリング10の内部に熱がこもって熱的負荷が増加するようなことはなく、シールリング10の摩耗が促進されたり、破損したりするようなことはなくなる。
【0026】
さらに、スプリングプレート18の熱膨張係数がシールリング10よりも大きいことにより、スプリングプレート18の全体がシールリング10の熱を吸収して膨張変形したときに、スプリングプレート18の本体部19によってシールリング10は径を大きくする方向に押し広げられて、1次シール部11が回転軸28から離間することになる。したがって、シールリング10が回転軸28との摺動によって発熱しても、一定の温度以上に上昇することはないので、シールリング10の熱的な負荷が増加するのを阻止することができ、摩耗が促進されたり、破損したりするようなことはなくなる。
【0027】
図5にはこの発明によるシール装置の他の実施の形態が示されていて、このシール装置1は、ハウジング2の軸方向の他端部に環状のフランジ部6を一体に設けるとともに、ハウジング2とシールリング10との間にローテーションロックピン26の代わりに金属製のガータースプリング27を装着したものであって、その他の構成は前述した実施の形態に示すものと同様である。
【0028】
フランジ部6には軸線方向に貫通するボルト挿通用の孔7が複数箇所に設けられ、これらの孔7内に挿通したボルト31を固定体29側に設けたねじ孔30に螺合させて所定のトルクで締め付けることでハウジング2を固定体29側に固定することができるものである。
【0029】
ガータースプリング27は、板状をなすものであって、シールリング10の外周面に設けた環状の溝16内に嵌合されるとともに、先端部がハウジング2の段部4の底面側に設けた孔8に係合され、これにより、シールリング10、スプリングプレート18等がハウジング2に対して相対的に回動するのを阻止することができるものである。ガータースプリング27は、シールリング10を半径方向内方に付勢する機能も兼ね備えている。
【0030】
そして、上記のように構成したこの実施の形態によるシール装置1にあっても、前述した実施の形態に示すものと同様に、シールリング10が回転軸28との摺動によって発熱すると、その熱は金属製のエキステンションスプリング17、ガータースプリング27、ハウジング2に伝達されるとともに、金属材又は非金属材からなるスプリングプレート18及びその外側のコンプレッションスプリング22側に伝達されることになる。
【0031】
この場合、エキステンションスプリング17、ガータースプリング27、ハウジング2のシールリング10に対する接触面積は非常に小さいが、スプリングプレート18のシールリング10に対する接触面積は大きくとってあり、しかもスプリングプレート18の熱膨張係数はシールリング10よりも大きいので、シールリング10の熱をスプリングプレート18側に十分に伝達させて放出させることができることになる。したがって、シールリング10の内部に熱がこもって熱的負荷が増加するようなことはなく、摩耗が促進されたり、破損したりするようなことはなくなる。
【0032】
さらに、スプリングプレート18の熱膨張係数がシールリング10よりも大きいことにより、スプリングプレート18の全体がシールリング10の熱を吸収して膨張変形したときに、スプリングプレート18の本体部19によってシールリング10は径を大きくする方向に押し広げられて、1次シール部11が回転軸28から離間することになる。したがって、シールリング10が回転軸28との摺動によって発熱しても、一定の温度以上に上昇することはないので、シールリング10の熱的な負荷が増加するのが阻止されることになり、摩耗が促進されたり、破損したりするようなことはなくなる。
【0033】
【発明の効果】
この発明は前記のように構成したことにより、シール部材が回転体との摺動によって発熱したときに、その熱は吸熱部材側に伝達されて放出されることになる。この場合、吸熱部材とシール部材との熱膨張係数の差により、シール部材の1次シール部が回転体から一時的に離間させられることになるので、シール部材の温度が一定以上に上昇するようなことはなく、シール部材の内部に熱がこもって熱的負荷が増加するようなことはない。したがって、シール部材の摩耗が促進されたり、破損したりするようなことはなく、寿命を大幅に高めることができることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるシール装置の一実施の形態を示した概略断面図であって、シールリングの1次シール部が回転体側に接触している状態を示した説明図である。
【図2】シールリングの1次シール部が回転体から離間している状態を示した説明図である。
【図3】図1に示すもののシールリングと回転体との関係を示した説明図である。
【図4】図2に示すもののシールリングと回転体との関係を示した説明図である。
【図5】この発明によるシール装置の他の実施の形態を示した概略断面図であって、シールリングの1次シール部が回転体側に接触している状態を示した説明図である。
【図6】従来のシール装置の一例を示した概略断面図である。
【符号の説明】
1、35……シール装置
2、36……ハウジング
3、7、8、21、24……孔
4……段部
5、14、15、16……溝
6……フランジ部
9、37……シールリングキット
10、38……シール部材(シールリング)
11、39……1次シール部
12、40……2次シール部
13……圧力バランス溝
17、41……エキステンションスプリング
18……吸熱部材(スプリングプレート)
19……本体部
20……フランジ部
22、42……コンプレッションスプリング
23、44……スプリングリテーナ
25、45……スナップリング
26、43……ローテーションロックピン
27……ガータースプリング
28……回転体(回転軸)
29……固定体
30……ねじ孔
31……ボルト

Claims (1)

  1. 回転体と固定体との間をシールするシール装置であって、
    前記固定体側に装着されるハウジングと、
    該ハウジングに装着されるとともに、内周部に形成され前記回転体と摺動してそれとの間をシールする1次シール部、軸方向の一端部に形成され前記ハウジングに接触してそれとの間をシールする2次シール部、及び、軸方向の他端部に形成される環状の溝を有し円周方向に複数に分割されたシール部材と、
    前記シール部材よりも熱膨張係数が大きい金属材又は非金属材から形成され、該シール部材の前記環状の溝に装着され外周面の全体が前記溝の外周側の面に接触する筒状の本体部、及び、前記本体部の一端に一体に形成され軸方向の一端面が前記シール部材の他端部に接触するようになっている環状のフランジ部を有する吸熱部材とを具え、
    前記シール部材が前記回転体との摺動によって発熱したときにその熱を前記吸熱部材側に伝達させて放熱させるとともに前記吸熱部材が膨張変形した時は当該吸熱部材と前記シール部材との熱膨張係数の差により、前記シール部材は径を大きくする方向に押し広げられて、前記シール部材の前記1次シール部と前記回転体との接触を一時的に回避させるように構成した
    ことを特徴とするシール装置。
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