JP4614804B2 - 腐食箇所推定方法 - Google Patents
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Description
よって、腐食電流が大きく配管の腐食速度が大きいと推定した場合には、その配管の大部分を土壌から掘り起こした状態で、目視等により配管の腐食箇所を認識し、補修や改修を施す必要があった。
交流電位差形成手段を用いて設定交流電位差を前記長手金属体と前記導電性部材との間に形成する交流電位差形成工程と、
前記第1媒質の表面において前記設定交流電位差と同周波数の磁界の分布を、磁界分布測定手段を用いて測定する磁界分布測定工程とを実行し、
前記磁界分布測定工程で検出した磁界分布に基づいて、前記長尺金属体の腐食箇所を推定する点にある。
従って、本方法にあっては、従来推定できなかった長尺金属体の腐食箇所を、長尺金属体が第1媒質中に配置された状態で、推定することができる。
このように、長尺金属体における上記直流の腐食電流及び上記交流電流は共に、長尺金属体と第1媒質との間の接地抵抗を反映したものである。従って、長尺金属体の第1媒質と接触する部位と導電性部材との間に存在する直流電位差(マクロセル)によって長尺金属体に直流の腐食電流が流れる範囲は、上記直流電位差と同じ大きさの交流電位差を長尺金属体の第1媒質と接触する部位と導電性部材との間に形成したときに長尺金属体に交流電流が流れる範囲と略同じものとなる。従って、マクロセルが形成されている場合に長尺金属体から第1媒質に直流の腐食電流が流れる箇所、即ち腐食箇所は、上記交流電流と同じ周波数の磁界が比較的大きく分布している範囲又はその末端として推定することができる。
前記長尺金属体と前記導電性部材との導通状態を判定する導通状態判定工程を含む点にある。
〔腐食箇所の推定対象〕
以下の実施形態では、長尺金属体として、少なくとも土壌1中では導電性配管2(エルボ2a、配管2b、配管2c)を例示する。図1には、導電性配管2(エルボ2a、配管2b、配管2c)が、コンクリート3と鉄筋4とで構成された地上の建物内から地下の土壌1中に渡って配設された状態を示している。
この系にあっては、導電性配管2が長尺金属体に相当し、鉄筋4が導電性部材に相当し、土壌1が本発明の「第1媒質」に相当し、コンクリート3が本発明の「第2媒質」に相当し、更にコンクリート3内の鉄筋4が導電性部材に相当する。
導電性配管2は、領域Aにおいて建物のコンクリート3内に設けられている鉄筋4と電気的に導通することがある。この場合、鉄筋4の電位は約−200mV(飽和硫酸銅電極基準。以下の電位も同じ基準とする)である。また、例えば導電性配管2の土壌1に埋設される配管2bの外表面が土壌1と接触することによって、その配管2bには、土壌1の環境に応じて約−500mV〜約−700mVの電位が生じる。その結果、配管2bの土壌1と接触する部分と、建物のコンクリート3内の鉄筋4との間には、約300mV〜約500mVの直流電位差を有するマクロセル(電池)が形成され、配管2bには図1中に一点鎖線で示すような直流の腐食電流が流れることになる。そして、その腐食電流は、鉄筋4から導電性配管2の配管2bを経て土壌1に流れ出し、コンクリート3を介して鉄筋4に流れ込むことで、腐食が進行する。本願は、配管2bにおいて、この直流の腐食電流が流れる範囲を腐食箇所として精密に推定しようとするものである。
本発明に係る腐食推定方法を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、配管2bにおける腐食箇所を推定するときの腐食箇所推定システムの構成である。図2は、本願において腐食箇所推定を行う場合に、その前段階で必要となる直流電位差を測定する測定システムの構成である。図3は、本願で問題となるマクロセル腐食が起こっている可能性を確認するため、腐食箇所推定を行う前に予備的に実行する、導電性配管2の配管2bと鉄筋4との導通状態を判定する確認システムの構成である。
図1に示す腐食箇所推定システムの構成では、交流電位差形成手段12が、配管2bの土壌1と接触する部分と鉄筋4との間に存在する直流電位差に相当する設定交流電位差を、導電性配管2と鉄筋4との間に形成し(交流電位差形成工程)、磁界分布測定手段11が、土壌1の表面において上記交流電位差形成手段12によって形成された設定交流電位差と同周波数の磁界の分布を測定し(磁界分布測定工程)、情報処理装置10が、磁界分布測定手段11において測定される磁界の分布に基づいて配管2bにおける腐食箇所を推定する。
即ち、この磁界測定装置11aは、配管2bに交流電流が流れているとき、その交流電流によって誘起される磁界を測定して、その測定値を情報処理装置10側に送信する。そして、情報処理装置10は、上記情報処理装置10で測定された磁界を、別途入力された又は磁界測定装置11aで検出された磁界測定装置11aの位置と共に記憶することで、上記磁界の分布が測定される。
この作業手順は、例えば、
1.長尺金属体とで導電性部材との導通状態の判定(導通状態判定工程)、
2.直流電位差の測定(設定交流電位差決定工程)、
3.腐食箇所推定システムを使用した腐食箇所推定(交流電位差形成工程・磁界分布測定工程)の順に進める。
以下、この順に説明する。
この判定工程では、図3に示す確認システムで導通の確認を行う。
図3に示す確認システムの抵抗測定手段18は、導電性配管2に電気的に接続される接点19と土壌1に挿入された対極20との間に交流電圧を印加する交流電源18aと、導電性配管2に流れる電流を測定する電流計18bと、土壌1に挿入された基準電極21と上記接点19との間に存在する電位差を測定する電圧計18cとを備える。更に、接点19より鉄筋4側の位置で内部を流れる電流を測定する電流測定手段16を備える。そして、情報処理装置110は、抵抗測定手段18によって測定される導電性配管2と基準電極21との間に存在する電位差とその電位差によって流れる電流とに基づいて、導電性配管2と鉄筋4との導通を判定する。この判定手法は、この確認システムに備えられる電流測定手段16あるいは抵抗測定手段18の測定値に従ったものとできる。
この例の場合、電流測定手段16を用いて測定される、接点19から鉄筋4との導通部位Aに至る導電性配管2に流れている電流に基づいて、導電性配管2と鉄筋4との導通を判定する。図3に示すように、電流測定手段16は、配管2cの周囲に配置されたクランプ部16b及び電流計16aを備えたクランプ式の交流電流計である。その判定は、例えば具体的には、上記接点19と上記対極20との間に交流電圧が印加されている状態で、抵抗測定手段18に設けられている電圧計18cに基づいて図3にXで示す回路を流れる抵抗を求める。そして、電流計16aの測定結果に基づいて導出された回路Xの抵抗が小さい(例えば10Ω未満)とき、導電性配管2と鉄筋4とは導通していると判定できる。高い場合は、導通していないと判定できる。
この測定方法は、導電性配管2と土壌1との絶縁状態の有無に関らず適用できる。
導電性配管2の土壌1中の部分に絶縁継手などが含まれていて、導電性配管2と土壌1との接地抵抗が大きい状態が確保されていると確認できる場合は、抵抗測定手段18に備えられる電流計18b、電圧計18cの結果に基づいて、図3に示す回路Yを流れる電流は充分に小さいと考えられるため、回路Xにおける抵抗から導電性配管2と鉄筋4との導通状態を判定できる。即ち、抵抗測定手段18によって導出された回路Xの抵抗が小さければ(例えば100Ω未満であれば)、導電性配管2と鉄筋4とは導通していると判定し、他方で、回路Xの抵抗が大きければ(例えば100Ω以上であれば)、導電性配管2と鉄筋4とは導通していないと判定する。
このようにして、導電性配管2と鉄筋4とが導通しているか否かによってマクロセル腐食が問題となる状況にあるか否かの判定を行える。そして、導通があると判定して場合のみ、以下の作業に移る。
図1に示す腐食推定システムに設けられる交流電位差形成手段12により配管2に形成する交流電位差としては、本願の推定方法を使用する場合には、図2に示す測定システムにより測定された直流電位差を用いる。
図2に示す測定システムでは、情報処理装置100が、電圧計13により、導電性配管2と電気的に接続された接点14と、土壌1に挿入された電極15(配管と同一の金属材料で構成し、配管2bの腐食部に相当する)との間に存在する直流電位差を測定する。
以上の工程を経て、本願に係る腐食箇所推定システムが、上記手法により測定された直流電位差を使用する。即ち、図1に示す腐食箇所推定システムにおいて、情報処理装置10が、測定された直流電位差を設定交流電位差として設定する。この場合、交流電位差形成手段12に備えられる電圧計12aの計測結果に基づいて交流電源12bの出力を調整することで、電圧計13によって測定される直流電位差に相当する交流電位差を付与することが可能となる。
そして、この所定の交流電位差が形成されている状態において磁界分布測定手段11は、磁界を位置に関連付けて測定し、情報処理装置10がこの磁界の分布に基づいて腐食箇所を推定する。
(1)
上記実施形態において、上記交流電位差形成工程及び上記磁界分布測定工程を含む一連の腐食箇所推定方法と、上記設定交流電位差決定工程と、上記導通状態判定工程との実行順序について特に述べていないが、上記導通状態判定工程、上記設定交流電位差決定工程、上記腐食箇所推定方法の記載順で実行することが好ましい。また、上記導通状態判定工程と上記設定交流電位差決定工程との実行順序は逆であってもよい。
上記実施形態及び上記別実施形態において、導通状態判定工程を実行する場合について説明したが、導電性配管2と鉄筋4とが導通していることが既知である場合には、図3に示した導通状態判定工程は実施しなくてもよい。
上記実施形態において、図2を参照して説明した設定交流電位差決定工程において、配管2bと土壌1とが接触する部位と鉄筋4との間に存在するマクロセルによる直流電位差を実際に測定する場合について説明したが、マクロセルによる直流電位差を実際に測定せず、推定によって決定してもよい。
例えば、腐食電流の測定対象としている導電性配管2と同様の環境下で埋設されている他の導電性配管において既に実際に測定された直流電位差を推定直流電位差として用いることや、導電性配管2が土壌中に埋設されている状態などに基づいて経験的に推定される推定直流電位差などによって、マクロセルによる直流電位差を推定してもよい。また、複数の上記推定直流電位差を平均化するなどの統計処理を行ってもよい。
上記実施の形態では、交流電位差形成工程において、配管2bと鉄筋4との間に形成する設定交流電位差を、配管2bの土壌1と接触する部位と鉄筋4との間に存在する直流電位差に相当するよう設定したが、別に、設定交流電位差を上記直流電位差に相当するように設定しなくても構わない。
例えば、配管2bを絶縁性の塗覆装で塗覆しており、配管2bを流れる腐食電流の略全てがその電位差に関係なく塗覆装の欠陥から土壌に流れる場合などにおいては、任意の設定交流電位差を配管2bと鉄筋4との間に形成すれば、配管2bにおいて腐食電流と同様に交流電流が流れるので、磁界分布測定工程においてその交流電流により形成される磁界の分布を測定すれば、ある一定以上の磁界が測定される部分と磁界が形成されない部分との境界部を上記塗覆装の欠陥として推定する形態で腐食箇所を推定することができる。
上記実施形態において、導電性配管2の配管2bが腐食する場合について説明したが、導電性配管2を構成する他の部分における腐食箇所についても本発明の腐食箇所推定方法を適用可能である。
上記実施形態において、導電性配管2と鉄筋4とが導通しているか否かの導通状態を判定するために、導電性配管2と土壌1又は鉄筋4との間の抵抗を調べる形態について説明したが、抵抗以外にもその相当量として、導電性配管2と鉄筋4との間の電位差、鉄筋4から導電性配管2に流れる電流などを調べることで、導電性配管2と鉄筋4とが導通しているか否かの導通状態を判定してもよい。
上記実施形態では、第1媒質として土壌1を例示し、第2媒質としてコンクリート4を例示したが、土壌若しくはコンクリート以外の他の媒質中に長尺金属体及び導電性部材が設けられている場合にも本発明を適用できる。また、上記実施形態では、第1媒質(土壌1)と第2媒質(コンクリート3)とが異なる材料である場合について説明したが、長尺金属体と導電性部材とにおいてマクロセルが形成される状態であれば、第1媒質と第2媒質とが同じ材料であってもよい。
2:導電性配管(長尺金属体)
3:コンクリート(第2媒質)
4:鉄筋(導電性部材)
11:磁界分布測定手段
12:交流電位差形成手段
Claims (5)
- 少なくとも一部が第1媒質中に配置される長尺金属体の腐食箇所を推定する腐食箇所推定方法であって、
前記長尺金属体が、前記第1媒質と同一又は異なる第2媒質中に配置される導電性部材に接触することによりマクロセルが形成された状態で、
交流電位差形成手段を用いて設定交流電位差を前記長手金属体と前記導電性部材との間に形成する交流電位差形成工程と、
前記第1媒質の表面において前記設定交流電位差と同周波数の磁界の分布を、磁界分布測定手段を用いて測定する磁界分布測定工程とを実行し、
前記磁界分布測定工程で検出した磁界分布に基づいて、前記長尺金属体の腐食箇所を推定する腐食箇所推定方法。 - 前記設定交流電位差を、前記長尺金属体の前記第1媒質と接触する部位と前記導電性部材との間に存在する直流電位差に相当するよう設定する請求項1に記載の腐食箇所推定方法。
- 前記長尺金属体の前記第1媒質と接触する部位と前記導電性部材との間に存在する直流電位差を測定し、測定された前記直流電位差を前記設定交流電位差として設定する設定交流電位差決定工程を含む請求項2に記載の腐食箇所推定方法。
- 前記長尺金属体の前記第1媒質と接触する部位と前記導電性部材との間に存在すると推定した推定直流電位差を、前記設定交流電位差として設定する設定交流電位差決定工程を含む請求項2に記載の腐食箇所推定方法。
- 前記磁界分布測定工程に先立って、
前記長尺金属体と前記導電性部材との導通状態を判定する導通状態判定工程を含む請求項1〜4の何れか一項に記載の腐食箇所推定方法。
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