JP4614062B2 - 空気中のアンモニア処理方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明の空気中のアンモニア処理方法及び装置は、特に肥料工場、養鶏場や養豚場等の畜産業施設、コンポスト施設、下水処理場、し尿処理場、生ゴミ処理施設、生ゴミ処理装置等のアンモニア発生源から発生するアンモニアの処理方法及び装置に関する。
従来、畜産業施設等のアンモニア発生源から空気中に気散されるアンモニアの処理は、スクラバー装置によるアンモニアのスクラバー水(例えば水道水を使用)への溶解、活性炭による吸着、薬液による分解等により処理されていた。スクラバー装置によりアンモニアをスクラバー水へ溶解する装置としては例えば図4の装置がある。
図4に示すように、アンモニアを含む空気が脱臭塔1の下から導入される一方、脱臭塔1の上部からスクラバー水が散水され、脱臭塔1内で空気とスクラバー水とを接触させることで、アンモニアをスクラバー水に溶解する。また、貯留槽2に貯留されたスクラバー水はスクラバーポンプ3で脱臭塔1上部に循環される。従来、スクラバー装置で空気中のアンモニアを処理する場合は、使用水量の削減のために、酸性の水(pH2程度)を循環し、アンモニア濃度を3000〜5000mg/Lまで濃縮し、この高濃度にアンモニアが濃縮されたスクラバー廃水を処理していた。また、酸性のスクラバー水を使用することで、気液の接触時間を短縮でき、これによりスクラバー装置のコンパクト化を図っていた。pHが中性なスクラバー水を使用することも行われているが、アンモニアのスクラバー水への溶解性が低下してアンモニアの濃縮が十分にできなかったり、長い接触時間を必要とし、装置が大型化するという問題があった。
また、空気中のアンモニアを溶解したスクラバー水を微生物の分解能力を利用して生物処理することも行われている。生物処理を利用した空気中のアンモニア処理装置としては、例えば特許文献1に開示される硝化脱窒装置がある。この装置は、アンモニアを含む被処理ガスを、硝化部に導入すると共に硝化部の上から散水することにより散水液中にアンモニアを溶解し、硝化部内の硝化細菌で全てのアンモニアを亜硝酸を経て硝酸まで酸化する。硝化部を通った散水液は液溜め部に溜められて、再び硝化部の頂部に循環されて散水される。また、液溜め部の液は、脱窒細菌が充填された脱窒部に送られて、有機物(水素供与体)を供給しながら硝酸を窒素ガスに変換すると共に、脱窒部で処理された処理水は液溜め部に戻される。即ち、特許文献1は、スクラバー機構を備えると共に硝化細菌が充填された硝化部と、脱窒細菌が充填された脱窒部とで、アンモニアを溶解した散水液をいわゆる硝化・脱窒法による生物学的処理を行うことで、空気中のアンモニアを処理する装置である。
特開2001−232391号公報
しかしながら、空気中のアンモニアをスクラバー機構によりスクラバー水(特許文献1の散水液)に溶解した場合、スクラバー水には殆ど有機物がないため、特許文献1のように硝化・脱窒法によってスクラバー水に溶解させたアンモニアを処理すると、以下の欠点がある。
(1) 脱窒部において有機物(水素供与体)として多量のメタノールを必要とし、ランニングコストが大きくなる。ちなみに、硝酸性窒素の2〜3倍量のメタノール使用量が必要になる。
(2) 多量のメタノールを使用すると、SS成分や硫化水素が発生し易くなる。この為、脱窒部からの処理水を液溜め部に戻して硝化部に散水すると、SS成分により散水管が目詰まりし易くなる。また、発生した硫化水素ガスは、人体に毒性を有するガスであり、安全のため、硫化水素濃度計の設置や、この硫化水素を除去する設備を設置する必要がある。
(3) 多量のメタノールを使用すると、余剰汚泥の発生量も多くなり、この余剰汚泥を嫌気処理して減容化する際にアンモニアが発生する。従って、アンモニアの処理装置でアンモニア発生源を生成することになり、アンモニア処理のクローズドシステムを構成するときに余剰汚泥の発生が問題になる。
(4) 特許文献1の硝化・脱窒法において安定した処理を行うには、硝化部及び脱窒部の負荷を0.2〜0.3kg−N/m3 /日程度の範囲で運転しなくてはならず、負荷を大きくしてアンモニアを高速処理することができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、従来の空気中のアンモニア処理における欠点を解消し、空気中のアンモニアを低ランニングコストで効率良く処理することができると共に、アンモニアの水への溶解性を高めて除去効率を高くできるので、アンモニアを発生させる地域の環境改善にも寄与する空気中のアンモニア処理方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、空気中に含まれるアンモニアの処理方法において、前記空気中のアンモニアと散水管からのスクラバー水とを接触させるスクラバー装置によって前記アンモニアをスクラバー水に溶解させるスクラバー工程と、前記スクラバー水に溶解したアンモニアを嫌気性アンモニア酸化法により生物学的に処理する生物処理工程と、前記スクラバー装置に水道水をスクラバー水として供給するスクラバー水供給工程と、前記生物処理工程の処理水の一部を前記スクラバー装置にスクラバー水として戻す処理水戻し工程と、を備えたことを特徴とする。
ここで、嫌気性アンモニア酸化法による生物処理工程とは、少なくともアンモニアをアンモニア酸化細菌により亜硝酸に酸化する亜硝酸型の硝化槽と、アンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する嫌気性アンモニア酸化槽とを主たる構成とした工程である。
そして、嫌気性アンモニア酸化槽では、アンモニアを水素供与体とし、亜硝酸を水素受容体として、嫌気性アンモニア酸化細菌によりアンモニアと亜硝酸とを以下の反応式により同時脱窒する。嫌気性アンモニア酸化法を記載した文献としては、例えばStrous M et al.(1998)Appl.Microbio Biotechnol.Vol.50,P589-596 がある。
(化1)
1.0 NH4 +1.32NO 2 +0.066HCO 3 +0.13H+ →1.02N 2 +0.26NO 3 +0.066CH2 O 0.5 N 0.15+2.03H2 O
この嫌気性アンモニア酸化法によれば、アンモニアを水素供与体とするため、脱窒で使用するメタノール等の使用量を硝化・脱窒法に比べて大幅に少なくできることや汚泥の発生量を削減できる。
本発明によれば、スクラバー装置で空気中のアンモニアをスクラバー水に溶解させ、スクラバー水に溶解したアンモニアを嫌気性アンモニア酸化法による生物処理で処理するようにしたので、アンモニア溶解水を硝化・脱窒法(特許文献1)で処理する場合に比べて、メタノールの使用量を大幅に低減することができる。
このメタノール使用量の大幅な低減によって、ランニングコストを低減できるだけでなく、SS成分や硫化水素の発生を抑制できるので、スクラバー装置での散水管の目詰まりや、発生した硫化水素の分圧により本来溶解したいアンモニアがスクラバー水に溶解しずらくなることもない。また、嫌気性アンモニア酸化法で生物処理することにより、硝化・脱窒法に比べて負荷を大きくすることができるので、スクラバー水に溶解したアンモニアの高速処理が可能となる。
また、請求項1においては、スクラバー装置に水道水をスクラバー水として供給するスクラバー水供給工程と、前記生物処理工程の処理水の一部を前記スクラバー装置にスクラバー水として戻す処理水戻し工程と、を備えたことを特徴とする。
生物処理工程で処理された処理水は、アンモニアをはじめ窒素成分を殆ど含んでいないので、処理水をスクラバー装置のスクラバー水として利用すれば、例えば水道水等のスクラバー水を節約することができる。この場合、上述したように、嫌気性アンモニア酸化法はSS成分や硫化水素が発生しにくいので、硝化・脱窒法のように、スクラバー装置の散水管が目詰まりしたり、発生する硫化水素により本来溶解したいアンモニアがスクラバー水に溶解しずらくなることもない。
請求項は請求項において、前記生物処理工程で処理するスクラバー水のアンモニア濃度が350mg/L以下であることを特徴とする。
スクラバー装置は廃液を少なくするためにスクラバー水を循環し、アンモニアをスクラバー水に多量に溶解させるため、スクラバー水中のアンモニア濃度が高くなることに起因して、生物処理工程での亜硝酸濃度も高くなる。しかし、嫌気性アンモニア酸化細菌は、亜硝酸を基質とする反面、亜硝酸性窒素(NO2 - N)濃度が約200mg/Lを超えると、活性が低下する。また、上記式から分かるように、アンモニアと亜硝酸とが1:1.32の割合で反応する。
従って、生物処理工程で処理するスクラバー水のアンモニア濃度を350mg/L以下にすれば、嫌気性アンモニア酸化槽でのNO2 - N濃度が200mg/Lを超えることがなく、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を高く維持することができる。生物処理工程で処理するスクラバー水のアンモニア濃度を350mg/L以下にするには、例えば請求項2で述べた処理水のスクラバー装置への戻し量を多くすることで対応できる。また、嫌気性アンモニア酸化槽で処理された処理水を嫌気性アンモニア酸化槽の入口に戻して嫌気性アンモニア酸化槽に流入する流入水の亜硝酸濃度を希釈するようにしてもよい。
本発明の請求項4は、前記目的を達成するために、空気中に含まれるアンモニアの処理装置において、前記空気中のアンモニアと散水管からのスクラバー水とを接触させて前記アンモニアをスクラバー水に溶解させるスクラバー装置と、前記スクラバー水に溶解したアンモニアを嫌気性アンモニア酸化法により生物学的に処理する生物処理装置と、前記スクラバー装置に水道水をスクラバー水として供給するスクラバー水供給ラインと、前記生物処理装置の処理水の一部を前記スクラバー装置にスクラバー水として戻す処理水戻しラインと、を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項4は、本発明を装置として構成したものであり、亜硝酸型の硝化槽と嫌気性アンモニア酸化槽とで嫌気性アンモニア酸化法が行われると共に、処理水をスクラバー水として利用することで、水道水の使用量を節約できるだけでなく、嫌気性アンモニア酸化槽でのNO2 - N濃度が200mg/Lを超えないようにできる。
本発明の請求項5は請求項4において、前記生物処理装置の処理水を2つに分流する分流器と、前記分流した2つの処理水のうち、一方の処理水を前記処理水戻しラインに流すと共に、残りの処理水を廃液として系外に排出するラインと、前記排出するラインに設けられ、前記廃液に含まれる硝酸を脱窒する脱窒槽と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の請求項6は請求項4又は5において、前記生物処理装置は、前記アンモニアが溶解したスクラバー水を2つに分配する分配器と、前記分配された一方のスクラバー水中のアンモニアの略全てを亜硝酸に酸化する亜硝酸型の硝化槽と、前記分配された他方のスクラバー水をバイパスさせて前記亜硝酸型の硝化槽で処理された亜硝酸含有水に合流させるバイパスラインと、前記合流した合流水を嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する嫌気性アンモニア酸化槽と、で構成されることを特徴とする。
請求項は、嫌気性アンモニア酸化法におけるアンモニアと亜硝酸の比である1:1.32を好適に得るための装置構成の一例を示したものである。
以上説明したように本発明の空気中のアンモニア処理方法及び装置によれば、従来の空気中のアンモニア処理における欠点を解消し、空気中のアンモニアを低ランニングコストで効率良く処理することができると共に、アンモニアの水への溶解性を高めてアンモニアの除去効率を大きくできるので、アンモニアを発生させる地域の環境改善にも寄与することができる。
以下添付図面に従って本発明に係る空気中のアンモニア処理方法及び装置における好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明の空気中のアンモニア処理装置の第1の実施の形態である。
図1に示すように、空気中のアンモニア処理装置10は、主として、空気中のアンモニアとスクラバー水とを接触させてアンモニアをスクラバー水に溶解させるスクラバー装置12と、スクラバー水に溶解したアンモニアを嫌気性アンモニア酸化法により生物学的に処理する生物処理装置14とで構成される。
スクラバー装置12は、主として、脱臭塔16と貯留槽18とで構成され、貯留槽18から脱臭塔16の上部までスクラバーポンプ20を備えた循環配管22が配設されると共に、循環配管22の途中に水道水等のスクラバー水を供給する水供給配管24が接続される。これにより、脱臭塔16の上部から脱臭塔16内にスクラバー水が散水される。一方、脱臭塔16の底部には、アンモニアを含む空気を脱臭塔16内に導入するための空気導入管26が接続されると共に、脱臭塔16の頂部には脱臭塔16で処理後の空気を放出する放出管28が接続される。これにより、脱臭塔16の底部から脱臭塔16内を上昇するアンモニア含有空気と、脱臭塔16の上部から散水されるスクラバー水とが接触し、アンモニアが水に溶解したスクラバー水が生成されると共に、脱臭後の空気は放出管28から大気に放出される。
貯留槽18にはスクラバー水が貯留されると共に、薬液添加管30からpH調整剤が添加され、スクラバー水のpHが6.0〜7.5に調整される。pH調整剤としては、リン酸、炭酸水素ナトリウム等を好適に使用することができる。
生物処理装置14は、主として、貯留槽18に貯留されるスクラバー水を2つに分配する分配器40と、分配された一方のスクラバー水中のアンモニアの略全てを亜硝酸に酸化する亜硝酸型の硝化槽32と、分配された他方のスクラバー水をバイパスさせて亜硝酸型の硝化槽32での亜硝酸含有水に合流させるバイパス配管44と、合流した合流水を嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する嫌気性アンモニア酸化槽34とで構成される。即ち、貯留槽18に貯留されたスクラバー水は、原水ポンプ36(必ずしも必要としない)により原水配管38を介して分配器40に送水され、分配器40で所定の分配比で2つに分配される。分配された一方のスクラバー水は、第1の送水配管42を介して亜硝酸型の硝化槽32に送水され、分配された他方のスクラバー水はバイパス配管44を介して嫌気性アンモニア酸化槽34に送水される。
亜硝酸型の硝化槽内32には、アンモニアを亜硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌が保持されると共に、槽底部にはブロア46から供給されるエアを曝気する曝気管48が設けられる。これにより、亜硝酸型の硝化槽32に分配されたスクラバー水中のアンモニアの略全量が、アンモニア酸化細菌により亜硝酸に酸化される。そして、亜硝酸型の硝化槽32で処理された亜硝酸含有水は、第2の送水配管50を介して嫌気性アンモニア酸化槽34に送水される途中でバイパス配管44を流れるスクラバー水(アンモニア含有水)と合流し、合流水が嫌気性アンモニア酸化槽34に流入する。嫌気性アンモニア酸化槽34内には、嫌気性アンモニア酸化細菌が保持され、以下の反応式により、アンモニアを水素供与体として、アンモニアと亜硝酸とが同時脱窒される。
(化2)
1.0 NH4 +1.32NO 2 +0.066HCO 3 +0.13H+ →1.02N 2 +0.26NO 3 +0.066CH2 O 0.5 N 0.15+2.03H2 O
亜硝酸型の硝化槽32内にアンモニア酸化細菌を保持する方法としては、担体や固定床を好適に使用することができる。担体の材料としては、ポリビニルアルコールやアルギン酸、ポリエチレングリコール系のゲルや、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチク担体等が挙げられるが、特に限定するものではない。また、アンモニア酸化細菌を担体内部に包括固定化する方法や担体表面に付着固定化する方法があるが、どちらの方法を使用してもよい。例えばアンモニア酸化細菌を包括固定化した担体を製造するには、アンモニア酸化細菌や亜硝酸酸化細菌等を含む複合微生物汚泥を包括固定化した担体を加熱処理して、複合微生物汚泥中の亜硝酸酸化細菌を失活する方法がある。この場合の加熱処理温度は、50〜90°Cの範囲が好ましく、60〜80°Cの範囲がより好ましい。担体の形状については、球形や円筒形、多孔質、立方体、スポンジ状、ハニカム状等の整形を行ったものを使用することが好ましい。尚、固定床については後記する嫌気性アンモニア酸化細菌を嫌気性アンモニア酸化槽34内に保持する方法において詳説するので、ここでは省略する。
また、嫌気性アンモニア酸化法は、上記の反応式から分かるように、アンモニアと亜硝酸とが1:1.32の比率で反応するとされている。従って、亜硝酸型の硝化槽32における硝化率を100%と仮定すると、分配器40では、スクラバー水中のアンモニアの約57%を亜硝酸型の硝化槽32に送り、残りの43%のアンモニアをバイパス配管44へ送るように分配することで、嫌気性アンモニア酸化槽34に流入する合流水中のアンモニアと亜硝酸との比率を1:1.32に調整することが可能となる。尚、本実施の形態では、分配器40を使用したが、貯留槽18からスクラバー水の全量を亜硝酸型の硝化槽32に流入させて、亜硝酸型の硝化率を制御することで上記比率を得るようにしてもよい。
また、嫌気性アンモニア酸化槽34には、嫌気性アンモニア酸化槽34で処理された処理水を嫌気性アンモニア酸化槽34の入口に戻して合流水を希釈する希釈ポンプ52を備えた希釈配管53が設けられる。この希釈配管53で合流水を希釈することにより、合流水の中の亜硝酸濃度が200mg/Lを超えないようにする。これは、亜硝酸濃度が200mg/Lを超えると嫌気性アンモニア酸化反応において亜硝酸阻害を生じるからである。
嫌気性アンモニア酸化槽34内には嫌気性アンモニア酸化細菌が保持されるが、保持する方法は、亜硝酸型の硝化槽32におけるアンモニア酸化細菌の保持方法と同様に担体や固定床を好適に使用することができる。担体を利用した方法は上記に示したので省略し、ここでは固定床について説明する。固定床を用いる場合の材料としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチック素材や、活性炭ファイバー等を用いることができるが、特にこれらに限定するものではない。固定床の形状としては、繊維状、菊花状に整形したものや、ハニカム状に整形したものがあるが特に限定しない。嫌気性アンモニア酸化槽34内に充填する固定床のみかけ容積としては、30〜80%の範囲が良く、好ましくは40〜80%の範囲である。また、空隙率としては、80%以上のものを好適に使用することができる。担体や固定床以外にも、微生物の自己造粒を利用したグラニュールも、本発明に利用できる。
嫌気性アンモニア酸化槽34で処理された処理水は、第3の送水配管55を介して脱窒細菌により硝酸を窒素ガスに変換する脱窒槽54に送水される。嫌気性アンモニア酸化法では、上記式から分かるように、少量ではあるが硝酸(NO3 )を生成する。従って、完全に窒素成分を除去するには、脱窒槽54でメタノールを添加して硝酸を脱窒することが好ましい。この脱窒槽54においても、上記したと同様に、微生物を脱窒槽54内に保持する担体や固定床、あるいはグラニュールを使用することができる。尚、処理水に残留する硝酸は、有機系廃棄物と混合することで、容易に処理することができることから、脱窒槽54は必ずしも必要はなく、省略することも可能である。
脱窒槽54で処理された処理水は、第4の送水配管56を介して処理水槽58に送水されて貯留される。そして、処理水槽58に貯留された処理水の一部は処理水ポンプ60により処理水戻し配管62を介してスクラバー装置12の循環配管22内に供給されると共に、残りの処理水は排出管64により廃液として系外に排出される。処理水ポンプ60で処理水の一部をスクラバー装置12に戻すことにより、貯留槽18のスクラバー水をスクラバーポンプ20で循環させる場合に比べ、脱臭塔16上部から散水するスクラバー水のアンモニア濃度を低くすることができる。これにより、脱臭塔16に導入された空気中のアンモニアをスクラバー水に溶解される溶解度を向上させることができるので、脱臭塔16から放出される空気中のアンモニア濃度を低減できる。また、貯留槽18に貯留されるスクラバー水のアンモニア濃度も低くなるので、嫌気性アンモニア酸化槽34での亜硝酸濃度を低く抑えることができる。従って、処理水ポンプ60で処理水の一部をスクラバー装置12に戻すことにより、嫌気性アンモニア酸化槽34に流入する合流水の亜硝酸濃度が200mg/L以下を維持できるようであれば、嫌気性アンモニア酸化槽34の上記した希釈配管53の希釈ポンプ52を運転しなくてもよい。
このように、本発明の空気中のアンモニア処理装置10によれば、スクラバー装置12で空気中のアンモニアをスクラバー水に溶解させたスクラバー水を嫌気性アンモニア酸化法による生物処理装置14で処理するようにした。これにより、有機物が殆ど含有されないスクラバー水であっても、硝化・脱窒法で処理した場合に比べてメタノール使用量を大幅に削減することができる。このメタノール使用量の大幅な削減により、SS成分や硫化水素の発生も大幅に低減するので、脱臭塔16の散水管(図示せず)が目詰まりしたり、異常な硫化水素の発生が生じたりすることもなかった。これにより、スクラバー装置12でのアンモニア溶解効率を向上でき、スクラバー装置12から大気中に放出されるアンモニアを極力低減できるので、地域の環境改善にも寄与することができる。また、アンモニアを発生させるアンモニア発生源が養鶏場や養豚場等の畜産業施設の場合には、動物の飼育環境や作業する作業員の作業環境も改善することができる。
また、メタノール使用量の大幅な削減により、硝化・脱窒法で処理した場合に比べて余剰汚泥の発生も大幅に低減する。これにより、空気中のアンモニア処理によりアンモニア発生源である余剰汚泥の発生を抑制できるので、アンモニア処理のクローズドシステムを構築することができる。更には、嫌気性アンモニア酸化法は、負荷を8.9kg−N/m3 /日程度まで高くすることが可能であるとの報告があり、硝化・脱窒法で処理した場合に比べて2倍以上の高速処理でアンモニアを処理することができる。
図2は、本発明の空気中のアンモニア処理装置10' の第2の実施の形態であり、貯留槽18と脱窒槽54とを返送配管66で接続することで、貯留槽18を第1の実施の形態で示した処理水槽58として兼用し、貯留槽18内の液の一部を廃液として系外に排出する場合である。これにより、処理水槽58を省略することができるので、それだけアンモニア処理装置10' をコンパクト化することができる。また、第1の実施の形態と同様に、脱窒槽54で処理された処理水の一部をスクラバー装置12に戻すための処理水ポンプ60及び処理水戻し配管62を設け、処理水の送水先を切換器(図示せず)により返送配管66と処理水戻し配管62とに切り換えるようにしてもよい。
図3は、本発明の空気中のアンモニア処理装置10''の第3の実施の形態であり、嫌気性アンモニア酸化槽34で処理された処理水を、分流器68により貯留槽18へ分流する処理水と脱窒槽54へ分流する処理水に分流し、脱窒槽54に分流された処理水中に残存する硝酸をメタノールを添加して脱窒して系外に排出するものである。また、分流器68と貯留槽18との間の配管70には切換器72が設けられ、切換器72から脱臭塔16の頂部に配管74が延設され、分流器68で分流された処理水をスクラバー装置12のスクラバー水として送水することも可能な構成となっている。
これにより、系外に排出する処理水中の総窒素濃度を低減することができると共に、脱窒槽54を経ていない処理水をスクラバー装置12のスクラバー水として利用するので、散水管の目詰まりを一層防止できる。即ち、脱窒槽54でメタノールを添加することによりSS成分が生成され、散水管の目詰まりの要因になるが、第3の実施の形態のように、脱窒槽54を経ていない処理水をスクラバー水として利用すれば、処理水中にSS成分が生成されないからである。
[比較例1]スクラバー装置のみの場合
図4に示すスクラバー装置のみで空気中のアンモニアを処理した場合である。
(スクラバー装置の条件)
・脱臭塔に導入される空気のアンモニア(NH3 )濃度を平均143ppmとした。
・脱臭塔に導入する空気の流速を1m3 /分(1440m3 /日)とした。
・脱臭塔の容積を0.1m3 とし、導入された空気の滞留時間を6秒とした。
・貯留槽の容積を1000Lとした。
・スクラビングポンプの運転により脱臭塔上部から散水される水量を1L/分(1440L/日)とした。
・スクラバー水として水道水を供給量200L/日で供給した。
(試験結果)
脱臭塔に導入される前の空気中のアンモニア平均濃度143ppmを、スクラバー装置で処理することにより、平均で5ppmまで低減した。また、貯留槽のスクラバー水のアンモニア濃度は750mg/Lであった。従って、従来は、高濃度のスクラバー水(廃液)を200L/日も処理する必要が生じていた。
[実施例1]
スクラバー装置と嫌気性アンモニア酸化法による生物処理装置とを組合わせた本発明の第2の実施の形態で説明した図2のアンモニア処理装置10' を使用した。スクラバー装置12の条件は比較例と同様であり、生物処理装置14の条件は以下の通りである。
(生物処理装置の条件)
貯留槽18から生物処理装置14へのスクラバー水の流量は、スクラバー水中のアンモニア濃度を750mg/Lと仮定して、以下の条件を設定した。
・生物処理装置14への流量は、原水ポンプ36を用いて100m3 /日とした。
・分配器40によるスクラバー水の分配比は、亜硝酸型の硝化槽32へ60%、バイパス配管44へ40%となるように分配した。
・亜硝酸型の硝化槽32の負荷は1.0kg- N/m3 /日とした。
・亜硝酸型の硝化槽32内に保持するアンモニア酸化細菌は、アンモニア酸化細菌や亜硝酸酸化細菌等を含む複合微生物汚泥を包括固定化した担体を60°Cで1時間加熱した加熱担体を硝化槽32に充填率15容積%で充填した。
・嫌気性アンモニア酸化槽34の負荷は3.0kg- N/m3 /日とした。
・嫌気性アンモニア酸化槽34内に保持する嫌気性アンモニア酸化細菌は、嫌気性アンモニア酸化細菌を包括固定化した担体を、充填率30容積%で充填した。種汚泥は、不織布を固定床として脱窒速度2.5kg- N/m3 /日の活性を有するように運転した装置から採取した。そして、採取した種汚泥を汚泥濃度を1%で固定化した。使用したゲルは、ポリエチレングリコール系のプレポリマーを用い、ゲル濃度を10%とした。
・嫌気性アンモニア酸化槽34からの処理水を希釈ポンプ52で嫌気性アンモニア酸化槽34の入口に戻す循環量は、希釈ポンプ52による処理水の流速が原水ポンプ36によるスクラバー水の流速の4倍になるようにした。
・処理水量は原水ポンプ36の流速により決定され、100L/日であった。
・脱窒槽54には、空隙率85%の塩化ビニル製の固定床を、みかけ容積として60%で充填した。また、メタノールを200mg/Lとなるように添加した。
・貯留槽18からは廃液を100L/日で排出した(オーバーフロー排出)
・貯留槽18へは、リン酸を貯留槽18内のリン酸濃度が5mg/Lとなるように添加すると共に、炭酸水素ナトリウムを8g/L添加した。
(試験結果)
約3カ月の馴養期間の後、安定運転を1カ月行った結果、生物処理装置14で処理された処理水のアンモニア濃度は平均31mg/Lであり、全窒素濃度(TN)は平均48mg/Lであり、比較例に比べて大幅に低減された。
スクラバー装置12で使用する水道水量は、100L/日であり(残りは生物処理装置14の処理水をスクラバー装置12へ循環)、スクラバー水として使用する水道水量を従来の半分にすることができた。このときの貯留槽18におけるスクラバー水(廃液)の全窒素濃度(TN)は790mg/Lであった。従って、本発明の実施例1を実施することにより、廃液の水質は変わらないが、処理水量を半減できることが分かった。
[メタノール使用量の比較試験]
このスクラバー廃液を通常の硝化・脱窒処理した場合と、嫌気性アンモニア酸化法(本発明)で処理した場合のメタノール使用量とを比較した。
実験条件は次の通りであり、硝化工程には、包括固定化担体を用いた。包括固定化担体は、ポリエチレングリコール系のゲルで活性汚泥を固定化したものである。ゲル濃度は重量濃度で10%とし、活性汚泥含有量は2%とした。担体充填率は10%とし、硝化槽への容積負荷は0.8kg- N/m3 /日とした。脱窒槽へはプラスチック製の接触ろ材を見かけ充填率60%充填した装置を用いた。脱窒槽への容積負荷は0.3kg- N/m3 /日とした。メタノールの使用量は、流入する亜硝酸又は硝酸性窒素の和に対して3倍量添加した。
その結果、スクラバー廃水1L当たりの脱窒処理に使用したメタノール使用量は、従来の硝化・脱窒処理をした場合には、1900mg/Lであったが、本発明における嫌気性アンモニア酸化槽法では200mg/Lであった。従って、約1/10にメタノール使用量を削減することができた。また、メタノール使用量の差から、汚泥発生量も約90%減少することを確認した。
このように、嫌気性アンモニア酸化法による生物処理装置14を用いることで、メタノール使用量を大幅に削減したアンモニア処理を行うことができる。このメタノール使用量の大幅な低減によって、ランニングコストを低減できるだけでなく、SS成分や硫化水素の発生を抑制でき、スクラバー装置での散水管が目詰まりや、異常な硫化水素の発生も生じなかった。また、嫌気性アンモニア酸化法で生物処理することにより、硝化・脱窒法に比べて負荷を大きくすることができるので、スクラバー水の高速処理が可能となった。
[実施例2]
実施例2は、スクラバー装置と嫌気性アンモニア酸化法による生物処理装置とを組合わせた本発明の第3の実施の形態で説明した図3のアンモニア処理装置10''を使用して実施した場合であり、実施例1と相違する条件は以下の通りである。
・原水ポンプ36の流量を200L/日とした。
・分流器68により脱窒槽54と貯留槽18への分流比を1:1とした。尚、実施例2では切換器72を貯留槽18側に切り換えて実施した。
即ち、実施例2は、生物処理装置14への流量を実施例1の2倍とし、嫌気性アンモニア酸化槽34での処理水の半量を貯留槽18に送り、残りの半量を脱窒槽54に送ると共にメタノールを添加して処理水中に残存する硝酸を脱窒してから系外の排出するようにしたものである。
(試験結果)
実施例2の場合には、貯留槽18に送水される処理水は、脱窒槽54を経ていないので、処理水中にSS成分が殆ど生成されない。これにより、貯留槽18のスクラバー水を脱臭塔16の頂部に循環させても、脱臭塔16の散水管を目詰まりさせることがなかった。また、系外に排出する処理水の水質を測定した結果、全窒素濃度(TN)は60mg/Lであり、比較例に比べて大幅に低減された。
[実施例3]
実施例3は、スクラバー装置と嫌気性アンモニア酸化法による生物処理装置とを組合わせた本発明の第1の実施の形態で説明した図1のアンモニア処理装置10を使用して実施した場合であり、実施例1及び2と相違する条件は以下の通りである。
・処理水ポンプ60を500L/日で運転して、生物処理装置14で処理された後の処理水をスクラバー装置12のスクラバー水として循環した。即ち、実施例3は、実施例1や実施例2のように、生物処理装置14の処理水を貯留槽18へ送水、あるいは貯留槽18と脱窒槽54へ分配するのではなく、スクラバー装置12へ直接送水してスクラバー水として使用したものである。
(試験結果)
貯留槽18のアンモニア濃度を測定した結果、300mg/Lであり、実施例1における750mg/Lに比べて大幅に低減した。更に、脱臭塔16から排出される空気のアンモニア濃度は1ppmとなり、比較例の5ppmに比べて低減することができた。これは、窒素成分を殆ど含まない処理水をスクラバー水として利用することで、脱臭塔16から散水する水のアンモニア濃度が低くなるので、アンモニアの水への溶解効率が向上したためと考えられる。更に、貯留槽18のスクラバー水のアンモニア濃度が300mg/Lになったことで、嫌気性アンモニア酸化槽34に流入する合流水中の亜硝酸濃度を180mg/Lに抑えることができ、嫌気性アンモニア酸化槽34に設けられている希釈ポンプ52を運転しなくても処理が可能となった。
本発明の空気中のアンモニア処理装置の第1の実施の形態の構成図 本発明の空気中のアンモニア処理装置の第2の実施の形態の構成図 本発明の空気中のアンモニア処理装置の第3の実施の形態の構成図 従来の空気中のアンモニアを処理するスクラバー装置の構成図
符号の説明
10、10' 、10''…空気中のアンモニア処理装置、12…スクラバー装置、14…生物処理装置、16…脱臭塔、18…貯留槽、20…スクラバーポンプ、22…循環配管、24…水供給配管、26…空気導入管、28…放出管、30…薬液添加管、32…亜硝酸型の硝化槽、34…嫌気性アンモニア酸化槽、36…原水ポンプ、38…原水配管、40…分配器、42…第1の送水配管、44…バイパス配管、46…ブロア、48…曝気管、50…第2の送水配管、52…希釈ポンプ、53…希釈配管、54…脱窒槽、55…第3の送水配管、56…第4の送水配管、58…処理水槽、60…処理水ポンプ、62…処理水戻し配管、64…排出管、66…返送配管、68…分流器、70…配管、72…切換器、74…配管

Claims (6)

  1. 空気中に含まれるアンモニアの処理方法において、
    前記空気中のアンモニアと散水管からのスクラバー水とを接触させるスクラバー装置によって前記アンモニアをスクラバー水に溶解させるスクラバー工程と、
    前記スクラバー水に溶解したアンモニアを嫌気性アンモニア酸化法により生物学的に処理する生物処理工程と、
    前記スクラバー装置に水道水をスクラバー水として供給するスクラバー水供給工程と、
    前記生物処理工程の処理水の一部を前記スクラバー装置にスクラバー水として戻す処理水戻し工程と、を備えたことを特徴とする空気中のアンモニア処理方法。
  2. 前記生物処理工程で処理するスクラバー水のアンモニア濃度が350mg/L以下であることを特徴とする請求項1の空気中のアンモニア処理方法。
  3. 前記生物処理工程の処理水を2つに分流する分流工程と、
    前記分流した2つの処理水のうち、一方の処理水を前記処理水戻し工程に流すと共に、残りの処理水を廃液として系外に排出する工程と、
    前記排出する工程に設けられ、前記廃液に含まれる硝酸を脱窒する脱窒工程と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2の空気中のアンモニア処理方法。
  4. 空気中に含まれるアンモニアの処理装置において、
    前記空気中のアンモニアと散水管からのスクラバー水とを接触させて前記アンモニアをスクラバー水に溶解させるスクラバー装置と、
    前記スクラバー水に溶解したアンモニアを嫌気性アンモニア酸化法により生物学的に処理する生物処理装置と、
    前記スクラバー装置に水道水をスクラバー水として供給するスクラバー水供給ラインと、
    前記生物処理装置の処理水の一部を前記スクラバー装置にスクラバー水として戻す処理水戻しラインと、を備えたことを特徴とする空気中のアンモニア処理装置。
  5. 前記生物処理装置の処理水を2つに分流する分流器と、
    前記分流した2つの処理水のうち、一方の処理水を前記処理水戻しラインに流すと共に、残りの処理水を廃液として系外に排出するラインと、
    前記排出するラインに設けられ、前記廃液に含まれる硝酸を脱窒する脱窒槽と、を備えたことを特徴とする請求項4の空気中のアンモニア処理装置。
  6. 前記生物処理装置は、
    前記アンモニアが溶解したスクラバー水を2つに分配する分配器と、
    前記分配された一方のスクラバー水中のアンモニアの略全てを亜硝酸に酸化する亜硝酸型の硝化槽と、
    前記分配された他方のスクラバー水をバイパスさせて前記亜硝酸型の硝化槽で処理された亜硝酸含有水に合流させるバイパスラインと、
    前記合流した合流水を嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する嫌気性アンモニア酸化槽と、で構成されることを特徴とする請求項4又は5の空気中のアンモニア処理装置。
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