次に、本発明を具体化した実施形態について説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタは、本体フレーム1に内包されて被記録媒体である用紙Pにインクを吐出させて記録する記録機構部2と、記録機構部2における記録ヘッドユニット3のメンテナンス処理を行うメンテナンスユニット4と、本体フレーム1内に固定して配置される記録ヘッドユニット3に供給するインクを貯留するインクタンク5a〜5d等から構成されている。
フルカラー記録のための複数のインクタンク5(個別の色、即ち、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー用のインクタンクに対しては符号5a〜5dを付する、図1参照)は、インクの消耗に応じて交換することができる。
記録機構部2において、本体フレーム1内に平行状に設けられた左右長手の後ガイド軸6と、前ガイド軸7とにキャリッジ9が摺動自在に載置され、該キャリッジ9に記録ヘッドユニット3が一体的に取付けられている。
本体フレーム1の右後側に配置されたキャリッジ駆動モータ10と、無端帯であるタイミングベルト11とによりキャリッジ9は前後ガイド軸6、7に沿って左右方向に往復移動可能に構成されている。他方、図示しないが、公知の用紙搬送機構により、用紙Pは記録ヘッドユニット3の下面側でキャリッジ9の移動方向と直交する方向に水平状(図1の矢印A方向)に搬送される。
搬送される用紙Pの幅より外側には、その一端側(実施形態では図1の左端部)に、インク受け部12が設けられており、他端側には、メンテナンスユニット4が配置されている。これにより、記録動作中に定期的に記録ヘッドユニット3はインク受け部12が設けられたフラッシング位置にてノズルの目詰まり防止のためのインク吐出を行い、インク受け部12にてインクを受ける。他端側のヘッド待機位置では、メンテナンスユニット4が配置されてノズル面のクリーニングを行い、また、色毎にインクを選択的に吸引するための回復処理及び後述するダンパー装置13内の気泡(空気)を除去する除去処理を行う。
図1に示すように、記録ヘッドユニット3の下面のノズル面より下方位置に、個別の色毎のインクタンク5をそれぞれ前方から挿入して装着できるように構成されている。図1において、左側から順に、ブラックインク(BK)用のインクタンク5a,シアンインク(C)用のインクタンク5b、マゼンタインク(M)用のインクタンク5c、イエローインク(Y)用のインクタンク5dは、水平且つ並列状に配置される。
各インクタンク装着部の後側には、各色のインクタンク5の挿入方向(後側壁面)に対向するようにインク供給用中空針(図示せず)を水平状に突設している。各色のインクに対応する中空針の基端部は、対応する可撓性を有するインク供給チューブ14a〜14dを介して記録ヘッドユニット3に接続されている。この場合、ブラック用とシアン用のインク供給チューブ14a,14bの中途部同士、マゼンタ用及びイエロー用のインク供給チューブ14c,14dの中途部同士を上下に重ねて結束している。
次に、キャリッジ9に搭載された記録ヘッドユニット3の第1実施形態を、図2〜図10を参照しながら説明する。本実施形態ではフルカラー記録のために記録ヘッドユニット3は、図2及び図3に示すように、箱状に形成されたヘッドホルダ20と、そのヘッドホルダ20の底板20aの下面側に固定されたインクジェット式の記録ヘッド21と、底板20aの上側に固定されたダンパー装置13及び排気弁手段26とを備える。
記録ヘッド21の下面には、図2(記録ヘッド21を下面からみた図)において左側からブラックインク(BK)用のノズル22aの列と、シアンインク(C)用のノズル22bの列と、イエローインク(Y)用のノズル22cの列と、マゼンタインク(M)用のノズル22dの列とが、キャリッジ9の移動方向(主走査方向)と直交する方向に長く形成されている。そして、用紙Pの上面に対向するように各ノズル22が下向きにて露出している。
記録ヘッド21は、特開2002−67312号公報、特開2001−219560号公報などで公知のものと同様に、上面の一側に各インク色(例えば4色)毎のインク供給口を有し、その供給口から延びる各インク供給チャンネルを介してそれぞれ多数の圧力室にインクが分配され、各圧力室に対応する圧電素子などのアクチュエータ23の駆動によりノズル22からインクを吐出させるものである。アクチュエータ23の上面には、そのアクチュエータ23に電圧を印加するフレキシブルフラットケーブル24が固定されている。各インク供給口には各インクタンク5からダンパー装置13を介してインクが供給される。
次に、図3〜図10に基づいて、ダンパー装置13及び排気弁手段26の構成について詳述する。ダンパー装置13は、インク色毎に独立した複数のダンパー室27を、主仕切り壁35を挟んで、かつ主仕切り壁と交差する副仕切り壁35a、30によって区画して備えている。実施形態では、主仕切り壁35の下にブラックインク(BK)用のダンパー室27aの一部が配置され、主仕切り壁35の上にシアンインク(C)用のダンパー室27b、イエローインク(Y)用のダンパー室27c及びマゼンタインク(M)用のダンパー室27dが副仕切り壁35a、30によって区画されて配置され、全体として上下に2層状に構成されている。
具体的には、ダンパー装置13における本体ケース25は、矩形筒状の側壁を外周として有し、上下面を開放した箱状の下ケース32と、その下ケース32の上面を覆って固定された上ケース31とから構成される。上ケース31及び下ケース32は共に合成樹脂材料にて射出成形されたものであり、超音波溶着等にて液密的に結合されている。
下ケース32には、その下面にその下面の面積の大部分を開放した開口部が設けられ、その開口部及び上方の開放面からそれぞれ平行に間隔を置いた位置に主仕切り壁35が形成されている。そして、その開口部はダンパー用の可撓性膜(合成樹脂製で空気及び液体非透過性のフィルム)36で封止されている。すなわち、下ケース32の下面側となる壁面の一部に可撓性膜36が設けられ、前記主仕切り壁35の下面が、請求項に記載した、可撓性膜36と間隔をおいて対向する上面側の内部壁面となっている。具体的には、開口部の外周を画定する外周壁37の下端面に、可撓性膜36の外周縁を接着もしくは超音波溶着等により接合する。その可撓性膜36と主仕切り壁35との間にブラックインク(BK)用のダンパー室の第1室27a−1が形成されている。可撓性膜36とヘッドホルダ20の底板20aとの間には、可撓性膜36の変形のための間隙が確保されて、ダンパー装置13がヘッドホルダ20に固着されている。
主仕切り壁35の上面には、その主仕切り壁35と交差して一体的に立ち上がった副仕切り壁35aが形成され、下ケース32内の主仕切り壁35よりも上方の部分が、後述する上ケース31と共同して複数のダンパー室として形成されている。実施形態では、2個の副仕切り壁35aが相互に間隔を置いて配置され、下ケース32の側壁と共同してシアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の3個のダンパー室27b〜27d(詳細にはそのダンパー室の第2室39b〜39d)が形成されている。各副仕切り壁35aは、図6に示すように下ケース32内を全長にわたって延びて形成され、主仕切り壁35の上面から外れた位置においてダンパー室27b〜27d(詳細には第2室39b〜39d)を各インク色毎のインク流出口41b〜41dに連通させている。
さらに追加の副仕切り壁35bが、インク流出口41b〜41d近傍の主仕切り壁35の上面から外れた位置へ延びて形成され、その副仕切り壁35bと下ケース32の側壁との間に、ブラックインク(BK)用のダンパー室の第2室39aが形成されている。その第2室39aの下端は、インク流出口41aに連通している(図3、図6参照)。
ブラックインク(BK)用のダンパー室の第1室27a−1は、第2室39aに、副仕切り壁35bに沿って形成した円筒部内を上下方向に貫通する絞り部としての通路42を介して連通している(図6、図9(b)参照)。通路42は、第1室27a−1よりも断面積を小さく形成され、その第1室27a−1内よりも流路抵抗が大きく設定されている。
上ケース31は、上面に複数の凹部を備えた扁平形状に形成されている。上ケース31には、ブラックインク(BK)用のダンパー室の第1室27a−1とほぼ対応する上方位置に、2個の副仕切り壁30で仕切られたシアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の3個のダンパー室27b〜27dの第1室27b−1〜27d−1が、上方に開放して形成されている(図4参照)。副仕切り壁30は、下ケース32の副仕切り壁35aの延長面上に位置し、第1室27b−1〜27d−1の底壁29には、絞り部としての多数個の通路孔44が上下に貫通形成され、各第1室27b−1〜27d−1は、その下の室(下ケース32に副仕切り壁35aによって区画された室)すなわち第2室39b〜39dとそれぞれ個別に連通している。
通路孔44は、各第1室27b−1〜27d−1よりも断面積を小さく形成され、その各第1室27b−1〜27d−1よりも流路抵抗が大きく設定されている。
第1室27b−1〜27d−1の上方開放面は、1枚のダンパー用の可撓性膜(合成樹脂製で空気及び液体非透過性のフィルム)43で共通に封止されている。具体的には、各第1室の外周を画定する外周壁及び副仕切り壁30の上端面に、可撓性膜43を接着もしくは超音波溶着等により接合している。
各インク流出口41a〜41dは、図5に示すように下ケース32の下面に並んで位置し、可撓性膜36よりも下方に延長した位置で、下向きに開口している。一方、記録ヘッド21は、上面に各インク色毎のインク供給チャンネル(マニホールド)の端部と連通した複数のインク供給口(図示しない)を、各インク流出口41a〜41dと対向した位置に備えている。各インク流出口41a〜41dは、ヘッドホルダ20の底板20aに設けた開口を貫通し、記録ヘッド21の各インク供給口と、ゴムパッキン等のシール材を介して連通している。
インク流出口41a〜41dと反対側の下ケース32の側面からフランジ状に突出した部分32aには、図3及び図4に示すように各インク色毎のインク流入口47(実施形態では4個、ブラックインク(BK)用、シアンインク(C)用、イエローインク(Y)用及びマゼンタインク(M)用の各インク流入口をそれぞれ47a、47b、47c、47dで示す)が上向きに開口されている。
これらのインク流入口47に、各インク色毎のインク流路を有するジョイント部材45が、各インク流路の下端を対応させパッキン等のシール46を介して接続されている。ジョイント部材45の各インク流路上端には、各インク色のインク供給チューブ14a〜14dの先端が接続されている。
そして、ブラックインク(BK)用のインク流入口47aは、下ケース32の下面に下向き開放状に水平に形成された凹通路48を介して対応するダンパー室27aの第1室に接続されている。他のインク流入口47b〜47dは下ケース32の下面に下向き開放状に水平に形成された凹通路48及び下ケース32の一側壁内に沿って上下方向(主仕切り壁35のなす面とほぼ直交する方向)に延びるように形成された連通路49と、上ケース31に上下に貫通する連通路50とを介して対応するダンパー室27b〜27dの第1室に接続されている(図4、図5、図7(a)、図7(b)及び図8(b)参照)。その場合、連通路50の開口面が可撓性膜43の下面に近接した高さ位置にあるので、ダンパー室27b〜27d内に流入されたインクが連通路50の開口面と対峙して接近する可撓性膜43に直接的に衝突できるから、インク供給チューブ14b〜14d内のインクの動圧変動を効率的に吸収緩和(ダンピング)させることができるのである。
各インク流入口47a〜47dおよび凹通路48の開放下面は、可撓性膜36を延長した部分で封止されている。また、凹通路48、連通路49、及び連通路50は、断面積の小さい通路として形成されている。
ブラックインク(BK)用のダンパー室の第1室27a−1の天井面すなわち主仕切り壁35の下面には、図5及び図8(c)に示すように、凹通路48側の側壁(主仕切り壁35の下面にて、主仕切り壁35と直交する方向に設けられた側壁)に両端を接続した平面視U字形のリブ35cが、可撓性膜36に達しない位置まで垂下して突設されている。そして、インク流入口47aとリブ35cの間となるU字形のリブ35cに囲まれる内側部分には、インクが侵入しない空間が確保され、図9(a)に示すように、この空間が所定量の空気81をあらかじめ貯留する空気貯留部80となる。
前記凹通路48は、その一端にインク流入口47aが開口され、その他端が前記側壁に開口形成されているため、インク流入口47aは、狭い通路である凹通路48を介してリブ35cのU字形の内側に連通しており、このブッラクインク用のダンパー室の第1室27aー1では、インク流入口47aに凹通路48を加えた箇所が、第1室27aー1へのインク流入口として機能する。そして、インク流入口47aと凹通路48とからなるインク流入口からダンパー室27aに流入したインクは、速やかに可撓性膜36と空気貯留部80の空気81とに衝突するように構成され、空気貯留部80に貯留される空気81と可撓性膜36との協働で、後述するインクの圧力変動を吸収するようにしている。
なお、空気貯留部80に貯留される空気81の所定量とは、空気81がインク流入口47aからのインクの圧力により、可撓性膜36に接するように変形可能な量であり、前記リブ35cの垂下長さによって規定される。そして、この空気貯留部80は、変形によりリブ35cの下端を超える大きさとなった空気81も貯留できるように設けられている。
また、上ケース31の上面には、インク流出口41a〜41d近傍の各第2室39a〜39dとそれぞれ対応する位置に、各ダンパー室の第3室55a〜55dが互いに独立して凹み形成されている。各第3室55a〜55dは、上ケース31に貫通形成された空気孔54により、対応する第2室39a〜39dとそれぞれ連通している。つまり、各インク色毎のダンパー室27a〜27dは、それぞれ第1室から第3室までの3個の室から構成されている。
さらに、上ケース31には、それぞれ第1室と第3室との間において各第2室39a〜39dの上部に連通する排気孔53が貫通形成されている。各排気孔53の上端は、上ケース31の上面に互いに独立して凹み形成された複数の排気通路51にそれぞれ接続され、各排気通路51は、本体ケースの長手方向(インク流入口47a〜47dとインク流出口41a〜41dを結ぶ方向)と直交する方向に延びその他端が後述する排気弁手段26に対する接続口52a、52b、52c、52dと接続されている(図4参照)。
各排気孔53は、上ケース31から各第2室39a〜39d内に垂下する筒状壁内に形成され、上ケース31から所定距離置いた位置で各第2室39a〜39d内に開口している。つまり、後述するように排気孔53から第2室39a〜39d内の気泡を排出した状態でも、第2室39a〜39dの上部に筒状壁の垂下高さだけの空気を確保するようにしている。
各ダンパー室の第3室55a〜55d及び排気通路51は、その開放上面を可撓性膜43を延長した部分で覆われ、その各室及び通路が画定されている。
ダンパー装置13は、主仕切り壁35及び可撓性膜36,43が、キャリッジ9の移動方向すなわち記録ヘッド21のノズルの開口面と平行に延在するように、キャリッジ9上に固定されている。
次に、排気弁手段26について説明すると、下ケース32の一側(図4及び図8(a)の右端)に一体的に設けられた収納部34には、4つのインク色毎に上下方向に長く且つ上下に開口する通路孔56が形成されている。各通路孔56は上半の大径部56aと下半の小径通路56bとからなる。大径の弁体57の下端には小径のバルブロッド58が一体的に形成されている。バルブロッド58に被嵌され、且つ弁体57の下端面側にシール用のオーリング等のパッキン59が配置されている。大径部56aにパッキン59及び弁体57が昇降可能に挿入され、バルブロッド58は小径通路56bに挿入されている。このバルブロッド58の下端は小径通路56bの下端開口部近傍まで延びている。大径部56a内に設けたコイルバネ等のばね手段60にて弁体57を常時下向きに押圧している。この状態で、パッキン59が通路孔56の大径部56aの底面に押圧されて、弁閉止となる(図8(a)参照)。
上ケース31の側縁は、収納部34の上端を覆う位置まで延長され、各排気通路51の他端が接続口52a、52b、52c、52dを介して各通路孔56の上端とそれぞれ個別に連通されている。
メンテナンスユニット4は、記録ヘッド21のノズル22の開口面を開閉可能に覆うキャップ部材71と、排気弁手段26の下端面すなわち各小径部56bの開口面を個別に開閉可能に覆う複数の小キャップ部材72とを備える。両キャップ部材71,72は、公知のメンテナンスユニットと同様の上下移動機構73により、キャリッジ9が待機位置(図1において右端位置)に移動したときに、ノズル22の開口面及び排気弁手段26の下端面に密着するように上昇し、他の位置ではそれらの面から離隔するように下降する。また、キャップ部材71は、公知のメンテナンスユニットと同様に吸引ポンプ74に接続され、吸引ポンプ74の駆動によりノズル22から増粘したインクや異物が吸引除去される。
各小キャップ部材72は、そのキャップ部材よりも突出した突起部72aをそれぞれ有し、排気弁手段26の下端面に密着したとき、突起部72aにより、バブルロッド58をばね手段60の付勢力に抗して押し上げ、パッキン59を大径部56aの内底部から離し、弁開放状態にする。また、各小キャップ部材72は共通の流路を介して吸引ポンプ74に接続され、吸引ポンプ74の駆動により各ダンパー室の第2室39a〜39d内に蓄積した気泡が一括して吸引排出される。これは、インクタンク5からインク供給管14を通して供給されるインクを第2室39a〜39d内に一旦貯留することで、インク中から気泡を分離浮上させ、第2室39a〜39dの上部に蓄積した気泡を、上記のように、吸引ポンプ74により排出させるのである。
キャップ部材71と小キャップ部材72は、切替弁75により択一的に吸引ポンプ74に接続される。キャップ部材71と小キャップ部材72は、上下移動機構73により、同時にノズル22の開口面及び排気弁手段26の下端面に密着するが、好適には、まず小キャップ部材72をとおして第2室39a〜39dの上部に蓄積した気泡を排出し、その後、キャップ部材71をとおしてノズル22からインクを排出する。仮にキャップ部材71のみで第2室39a〜39dの気泡を排出しようとすると、多量のインクを排出しなければならないが、上記のようにすることで、少ないインク排出量で、気泡の排出及び記録ヘッドの回復処理を行うことができる。
また、ノズル22からのインク吸引のみ、または第2室39a〜39dの気泡の排出のみを、それぞれ単独に行うこともできる。
なお、上記のように吸引ポンプ74の吸引動作に代えて、インクタンク5側から、インクに正圧を加えて、ノズル22から増粘したインクや異物を吸引除去したり、第2室39a〜39d気泡を排出することもできる。あるいは、吸引動作とインクへの正圧印加を併用することもできる。
図11〜図18は本発明の第2実施形態を示す。この実施形態では、インクの色はブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色であり、前記実施形態と同様の各色毎のノズル22の列を有する2つの記録ヘッド21を主走査方向に並列状に配置し、ヘッドホルダ20に固定したものである。
そして、第2実施形態のダンパー装置63は、2つの記録ヘッド21に対して対応する色のインクを供給することになる。即ち、インク流入口47は各色毎に1個であるが、インク流出口41は2個ずつ形成されている。以下、第1実施形態と同じ部品、構成については同じ符号を付して説明する。
第2実施形態のダンパー装置63における本体ケース25は、上ケース31と、下ケース32とからなり、下ケース32の上端に上ケース31を超音波溶着等にて液密的に固定されている。
下ケース32には、前記実施形態とほぼ同様に、主仕切り壁35の下にブラックインク(BK)用のダンパー室の第1室27a−1が形成され、その第1室27a−1が下ケース32の下面の面積の大部分において下方に開放され、その開放面を覆って可撓性膜36が接合されている。また、下ケース32の下面には、第1室27a−1の開放面に隣接して複数のインク流出口41a〜41dが配置されている。この実施形態においてインク流出口は、中央の2個をブラックインク(BK)用のインク流出口41a、その両側の2個をイエローインク(Y)用のインク流出口41c、そして一方の端の2個をシアンインク(C)用のインク流出口41b、他方の端の2個をマゼンタインク(M)用のインク流出口41dとしている。
ブラックインク(BK)用のダンパー室の第2室39aは、平面視において中央の2個のインク流出口41aを囲むように形成された仕切り壁35bによって画定され、主仕切り壁35に貫通形成された絞り部としての通路42によって第1室27a−1と連通している。また、上ケース31の上面に、仕切り壁35bの延長面上に位置する壁30bによって囲まれて形成された第3室55aは、上ケース31に貫通形成された空気孔54によって第2室39aと連通している。
シアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の各ダンパー室27b〜27dは、前記実施形態とほぼ同様に、主仕切り壁35の上面に形成された副仕切り壁35a、及びそれの延長面上において上ケース31の上面に形成された副仕切り壁30によって画定されている。各ダンパー室27b〜27dは、上ケース31の底壁29の上側を第1室27b−1〜27d−1、下側を第2室39b〜39dとして形成されている。第2室39b〜39dは、下ケース32の長手方向全長にわたって延びインク流出口41b〜41dとそれぞれ連通している。この実施形態においては、イエローインク(Y)用の第2室39cが平面視でY字状に形成され、その第2室39cを挟んでシアンインク(C)用の第2室39b、マゼンタインク(M)用の第2室39dが形成されている。
上ケース31上面の各第1室27b−1〜27d−1は対応する第2室の上方に位置しているが、この実施形態においては、前記実施形態のシアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の第3室がない。各第1室の底壁29において、後述する連通路50に近い側には絞り部としての複数の通路孔44が、インク流出口41b〜41dに近い側にも通路孔44がそれぞれ貫通形成され、各第1室と第2室とを連通している。
複数の排気通路51は、上ケース31上面に凹み形成され、一端を各第2室39a〜39dに排気孔53を通して連通し、他端を前記実施形態と同じ構造の排気弁手段26に対する接続口52a、52b、52c、52dと接続している(図15(a)参照)。シアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の排気孔53は、前記実施形態と同様に、第2室39b〜39dの天井面よりも下方に開口し、その第2室の上部に空気を貯めるための空間を確保している。
各第1室27b−1〜27d−1、ブラックインク用の第3室55a及び排気通路51の上方開放面は、1枚の可撓性膜43によって覆われている。
下ケース32には、前記第1実施形態とほぼ同様にインク流入口47a〜47dが形成され、ブラックインク(BK)用のインク流入口47aは、凹通路48を介してブラックインク(BK)用のダンパー室27aに接続され、シアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の各インク流入口47b〜47dは、連通路49,50を介して対応するダンパー室27b〜27dにぞれぞれ接続されている。各インク流入口47a〜47dおよび凹通路48の開放下面は、可撓性膜36を延長して封止されている。
上記の第1実施形態及び第2実施形態において、記録動作に応じてキャリッジ9が主走査方向(左右方向)に往復移動するにつれて、各インク供給チューブ14も左右方向に移動すると、そのリターン時の慣性力により各インク供給チューブ14内のインクの圧力も大きく変動する。その圧力変動は、インク流入口47を介して各ダンパー室27に伝播する。そのとき、各ダンパー室27を封止している可撓性膜36、43が撓むことにより、各ダンパー室27内のインク圧力の変動を緩和できる。従って、各ダンパー室27における可撓性膜36、43が請求項にいう「インク流入口47から流入したインクによる動圧を吸収可能な動圧吸収部」となる。
各ダンパー室の第1室27a−1〜27d−1に伝播した圧力変動は、絞り部としての通路孔44や通路42の抵抗作用により、まず第1室27a−1〜27d−1で可撓性膜36,43を大きく撓ませる(第1実施形態のブラック用のダンパー室27a−1の動作については、後に詳述する)。さらにシアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の各第1室27b−1〜27d−1への各連通路49,50は、可撓性膜43と対峙して近接した位置で開口しているから、圧力変動は、可撓性膜43に直接的に衝突し、早期に吸収緩和される。
また、通常、第2室39a〜39dの上部、第3室55a〜55dには、空気層が確保されるから、この空気によるダンパー作用、さらに第3室55a〜55dを封止する可撓性膜43の変形によって、ダンパー室27a〜27d内で生じた圧力変動及び上記のように伝播した圧力変動も吸収緩和され、記録ヘッド21のノズル22での圧力が均一に維持され、記録品質が高められる。
各ダンパー室の第1室27a−1〜27d−1に流入したインクは、絞り部としての通路孔44や通路42の抵抗作用によりさらに減速されて、それぞれ対応する第2室39a〜39dに流入する。その第2室39a〜39d内で、インク中に含まれる気泡を浮上させ、気泡が少なくなったインクは、インク流出口41a〜41dから記録ヘッド21に供給される。
各ダンパー室の中でも、第1実施形態のブラックインク(Bk)用のダンパー室の第1室27a−1においては、特に空気貯留部80が設けられているから、平常状態では、図9(a)に示すように、天井面である主仕切り壁35とそれから垂下するリブ35cとで区画された空気貯留部80内では、浮力を有する空気(気泡の塊)81が、その上面を常に主仕切り壁35に広く接した状態で扁平状となる。それ故、空気(気泡の塊)81の下面と可撓性膜36の間に、インクの流れを妨げることのないインク流路が形成される。
ところが、インク流入口47aから流入したインクの圧力が急激に高くなると、空気貯留部80内に貯留されていた空気81が、図9(b)に示すようなインク流入口47aから離れる方向であってリブ35cの内側面に近い部位にて下向きに膨らみ、リブ35c方向に押された空気(気泡の塊)81の下端がリブ35cの下端よりも下方になるように弾性変形する。しかし、この空気(気泡の塊)81には浮力が作用し、また、垂下するリブ35cによりインク流出口41a方向への移動がせき止められているので、その結果、空気81が可撓性膜36に接するように変形させられて、インク流出口側へ向かうインクの流れが一旦遮断される。これにより、インク流入口47aからのインクが確実に空気81と可撓性膜36とに衝突し、空気81の圧縮と可撓性膜36の撓みとが協働することにより、インクの圧力変動が吸収緩和される。従って急激に高くなったインクの圧力が記録ヘッド21に作用することはなくなる。
次いで、インクの圧力が少し戻った状態、あるいは上記ほどにはインクの圧力が高くない状態では、空気81の変形が小さくなり、可撓性膜36とこれに接した空気81との間には、狭い間隙が形成され、この間隙は、図9(c)に示すように、インクがインク流出口41a(通路42)側に流れるための狭通路82となる。この狭通路82は、その狭さのためにインクが入り込むには抵抗が大きいので、インクの流れを制限し、記録ヘッド21へ達するインクの圧力を低下させることができる(図9(c)の矢印B参照)。
反対に、このインク流出口41a(通路42)側からインクの圧力がかった場合、あるいはインク流入口47aに接続したインク供給チューブ14a内の圧力が低下した場合には、図10(a)及び図10(b)の矢印Cに示すように、空気貯留部80の空気(気泡の塊)81は、インク流入口47a及び狭い凹通路48からなるインク流入口を塞ぐように凹通路48に入り込むが、インクと気泡との間で表面張力が作用し、気泡の塊は凹通路48の中途にて留まった状態となる。これにより、インク流出口41a側からインク流入口47aへのインクあるいは気泡の逆流を防ぎ、ダンパー室27aと記録ヘッド21でのインクの急激な圧力低下を可撓性膜36と空気81との協働により吸収緩和することができる。
前記両実施形態では、記録ヘッドユニット3のノズル面がほぼ水平で、記録ヘッド21のノズル22から下向きにインクを吐出する形態であり、そのため、記録ヘッド21の上方にダンパー装置13を、その主仕切り壁35及び可撓性膜36、43が略水平となるように配置し、下側の可撓性膜36と記録ヘッド21(具体的にはフレキシブルフラットケーブル24)の背面との間には、当該可撓性膜36が変位できる隙間空間が形成されているが、ノズル面を縦向きとした場合、主仕切り壁35及び可撓性膜36、43が縦向きに延びる方向にダンパー装置13を配置しても良い。
但し、第1実施形態のブラックインク用のダンパー室の第1室27a−1を有効に機能させるためには、可撓性膜36が略水平に配置し、この可撓性膜36の鉛直上方に空気貯留室80の空気81を貯留することが望ましい。
上記に説明したように、両実施形態では複数の色もしくは複数のインク供給チャンネルに対応する複数のダンパー室27の少なくとも1つのダンパー室を他の複数のダンパー室に対して主仕切り壁35を介して互いに逆向きに開口面を有するように、背中合わせ状に配置し、前記各開口面をそれぞれ可撓性膜36、43にて封止したことにより、複数のダンパー室をまとめることができると共に、ダンパー室27を背中合わせ状に配置することで、各ダンパー室27の開口面(開放部)の面積を比較的大きく形成することができる。従って、ダンパー装置13の全体をコンパクトにしながら、各ダンパー室27の開口面を封止する可撓性膜36、43がインクの変動圧により撓み得る面積領域も大きく設定できて、ダンパー作用を十分に行うことができる。特に、複数のダンパー室27を1つの本体ケース25にまとめることで、ダンパー装置13をコンパクトに形成できる。
また、第1実施形態のダンパー室の第1室27a−1では、その内部に空気貯留部80を備えているが、この空気貯留部80は、可撓性膜36に対向する主仕切り壁の下面(請求項の内部壁面)から垂下するリブ35cにより区画されて、平常状態では空気81を扁平に貯留する(図9(a)参照)。従って、ダンパー室の第1室27a−1を可撓性膜36の面方向に沿って扁平な薄型に形成でき、空気を貯留する構造であってもダンパー装置13のコンパクト化を損なうことがない。
前記実施形態のように、4つのダンパー室27のうち3つのダンパー室27を、前記主仕切り壁35と直交(交差)する副仕切り壁35a、30にて区画して並設させることで、同じ向きに開口面を有する複数のダンパー室27を1枚の可撓性膜43にて封止できるから、封止作業が至極容易になると共に製造コストも低減できるという効果を奏する。
そして、複数のダンパー室27を有する本体ケース25に排気弁への排気通路51を形成し、さらに、本体ケース25に排気弁手段26も一体的に組み込めば、メンテナンス時に記録ヘッドユニット3内の気泡等を除去するための構成もキャリッジ9に搭載でき、記録ヘッドユニット3をコンパクトにできるという効果を奏する。特に、排気通路51を前記本体ケース25における副仕切り壁30にて区画して並設させ、且つダンパー室27b−1〜27d−1の開口面と同じ向きに開放するように凹み形成したものであれば、1枚の可撓性膜43を本体ケース25の表面に貼着することでダンパー室27と排気通路51とを同時に区画させて形成でき、製造コストを低減できる。
バッファタンクとしての機能を有する第2室39a〜39dに空気ダンパー室55a〜55dを連通させているから、記録ヘッドユニット3をコンパクトに形成でき、且つキャリッジ9の往復移動に伴い、第2室39a〜39dに貯留されているインクの揺動による圧力変動も抑止(緩和)できる。
また、ダンパー装置13は、本体ケース25における対向する2面を開放し、その2面と間隔を置いた主仕切り壁35によってそれぞれ独立した複数のダンパー室27を形成し、その開放した2面を可撓性膜36、43にて封止するものである。そして、本体ケース25には、インク供給管(チューブ)14から各ダンパー室27にインクを供給するためのインク流入口47と、各ダンパー室27から記録ヘッド21の各インク供給チャンネルにインクを供給するためのインク流出口41とをそれぞれ並べて備え、複数のインク流入口47及びインク流出口41のうち所定のものは、主仕切り壁35のなす面とほぼ直交する方向に延びる連通路49、50によって対応するダンパー室27と接続しているものである。
従って、複数のダンパー室27が主仕切り壁35及び副仕切り壁35a、30にて区切られているにも拘らず、インク流出口41及びインク流入口47を本体ケースの一方の面に並べて形成できるので、インク供給管(チューブ)14への接続及び記録ヘッド21のインク供給口(図示せず)への接続が容易にできる。
そして、記録ヘッド21は、前記各インク供給チャンネルと接続した複数のインク供給口を、その記録ヘッド21の背面側の一側に並べて有し、本体ケース25の下ケース32には、複数のインク流出口41が下向きにてインク供給口と対向する位置に並べて有し、複数のインク流出口41とインク流入口47とは、対向した状態で連通しているものである。従って、記録ヘッド21の背面に本体ケース25を重ねると、記録ヘッド21における複数のインク供給チャンネルに対応するインク供給口と複数のインク流出口41とが重なり、且つ記録ヘッド21の背面と交差する上側から臨ませるインク供給チューブ14をインク流入口47に接続する作業が容易にできる。
なお、前述した空気貯留部80の構造は、第1実施形態のダンパー室27aに設けた場合のみを図示して説明したが、第2実施形態のダンパー室27aにも同様に設けても良い。また、本発明は、種々の種類のインクジェットプリンタに適用できることはいうまでもない。