〔第1の実施形態〕
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、本実施形態に係る画像表示装置(表示装置)1は、前回から今回への階調遷移を強調することによって、画素の応答速度を向上させているにも拘わらず、当該階調遷移強調と、前々回から前回への階調遷移における画素の応答不足との相乗効果によって、今回の画素の階調が今回の映像データの示す階調と大きく異なり、白光りや黒沈みが発生するという現象を、比較的小さな回路規模で防止可能な画像表示装置1である。
当該画像表示装置1のパネル11は、図2に示すように、マトリクス状に配された画素PIX(1,1) 〜PIX(n,m) を有する画素アレイ2と、画素アレイ2のデータ信号線SL1〜SLnを駆動するデータ信号線駆動回路3と、画素アレイ2の走査信号線GL1〜GLmを駆動する走査信号線駆動回路4とを備えている。また、画像表示装置1には、両駆動回路3・4へ制御信号を供給する制御回路12と、入力される映像信号に基づいて、上記階調遷移を強調するように、上記制御回路12へ与える映像信号を変調する変調駆動処理部21とが設けられている。なお、これらの回路は、電源回路13からの電力供給によって動作している。
以下では、変調駆動処理部21の詳細構成について説明する前に、画像表示装置1全体の概略構成および動作を説明する。また、説明の便宜上、例えば、i番目のデータ信号線SLiのように、位置を特定する必要がある場合にのみ、位置を示す数字または英字を付して参照し、位置を特定する必要がない場合や総称する場合には、位置を示す文字を省略して参照する。
上記画素アレイ2は、複数(この場合は、n本)のデータ信号線SL1〜SLnと、各データ信号線SL1〜SLnに、それぞれ交差する複数(この場合は、m本)の走査信号線GL1〜GLmとを備えており、1からnまでの任意の整数をi、および1からmまでの任意の整数をjとすると、データ信号線SLiおよび走査信号線GLjの組み合わせ毎に、画素PIX(i,j) が設けられている。
本実施形態の場合、各画素PIX(i,j) は、隣接する2本のデータ信号線SL(i-1) ・SLiと、隣接する2本の走査信号線GL(j-1) ・GLjとで囲まれた部分に配されている。
一例として、画像表示装置1が液晶表示装置の場合について説明すると、上記画素PIX(i,j) は、例えば、図3に示すように、スイッチング素子として、ゲートが走査信号線GLjへ、ドレインがデータ信号線SLiに接続された電界効果トランジスタSW(i,j) と、当該電界効果トランジスタSW(i,j) のソースに、一方電極が接続された画素容量Cp(i,j) とを備えている。また、画素容量Cp(i,j) の他端は、全画素PIX…に共通の共通電極線に接続されている。上記画素容量Cp(i,j) は、液晶容量CL(i,j) と、必要に応じて付加される補助容量Cs(i,j) とから構成されている。
上記画素PIX(i,j) において、走査信号線GLjが選択されると、電界効果トランジスタSW(i,j) が導通し、データ信号線SLiに印加された電圧が画素容量Cp(i,j) へ印加される。一方、当該走査信号線GLjの選択期間が終了して、電界効果トランジスタSW(i,j) が遮断されている間、画素容量Cp(i,j) は、遮断時の電圧を保持し続ける。ここで、液晶の透過率あるいは反射率は、液晶容量CL(i,j) に印加される電圧によって変化する。したがって、走査信号線GLjを選択し、当該画素PIX(i,j) への映像データDに応じた電圧をデータ信号線SLiへ印加すれば、当該画素PIX(i,j) の表示状態を、映像データDに合わせて変化させることができる。
本実施形態に係る上記液晶表示装置は、液晶セルとして、垂直配向モードの液晶セル、すなわち、電圧無印加時には、液晶分子が基板に対して略垂直に配向し、画素PIX(i,x) の液晶容量CL(i,j) への印加電圧に応じて、液晶分子が垂直配向状態から傾斜する液晶セルを採用しており、当該液晶セルをノーマリブラックモード(電圧無印加時には、黒表示となるモード)で使用している。
上記構成において、図2に示す走査信号線駆動回路4は、各走査信号線GL1〜GLmへ、例えば、電圧信号など、選択期間か否かを示す信号を出力している。また、走査信号線駆動回路4は、選択期間を示す信号を出力する走査信号線GLjを、例えば、制御回路12から与えられるクロック信号GCKやスタートパルス信号GSPなどのタイミング信号に基づいて変更している。これにより、各走査信号線GL1〜GLmは、予め定められたタイミングで、順次選択される。
さらに、データ信号線駆動回路3は、映像信号DATとして、時分割で入力される各画素PIX…への映像データD…を、所定のタイミングでサンプリングすることで、それぞれ抽出する。さらに、データ信号線駆動回路3は、走査信号線駆動回路4が選択中の走査信号線GLjに対応する各画素PIX(1,j) 〜PIX(n,j) へ、各データ信号線SL1〜SLnを介して、それぞれへの映像データD…に応じた出力信号を出力する。
なお、データ信号線駆動回路3は、制御回路12から入力される、クロック信号SCKおよびスタートパルス信号SSPなどのタイミング信号に基づいて、上記サンプリングタイミングや出力信号の出力タイミングを決定している。
一方、各画素PIX(1,j) 〜PIX(n,j) は、自らに対応する走査信号線GLjが選択されている間に、自らに対応するデータ信号線SL1〜SLnに与えられた出力信号に応じて、発光する際の輝度や透過率などを調整して、自らの明るさを決定する。
ここで、走査信号線駆動回路4は、走査信号線GL1〜GLmを順次選択している。したがって、画素アレイ2の全画素PIX(1,1) 〜PIX(n,m) を、それぞれへの映像データDが示す明るさ(階調)に設定でき、画素アレイ2へ表示される画像を更新できる。
なお、映像データDは、画素PIX(i,j) の階調レベルを特定できれば、階調レベル自体であってもよいし、階調レベルを算出するためのパラメータであってもよいが、以下では、一例として、映像データが画素PIX(i,j) の階調レベル自体である場合について説明する。
また、上記画像表示装置1において、映像信号源S0から変調駆動処理部21へ与えられる映像信号DATは、フレーム単位(画面全体単位)で伝送されていてもよいし、1フレームを複数のフィールドに分割すると共に、当該フィールド単位で伝送されていてもよいが、以下では、一例として、フィールド単位で伝送される場合について説明する。
すなわち、本実施形態において、映像信号源S0から変調駆動処理部21へ与えられる映像信号DATは、1フレームを複数のフィールド(例えば、2フィールド)に分割すると共に、当該フィールド単位で伝送されている。
より詳細には、映像信号源S0は、映像信号線VLを介して、画像表示装置1の変調駆動処理部21に映像信号DATを伝送する際、あるフィールド用の映像データを全て伝送した後に、次のフィールド用の映像データを伝送するなどして、各フィールド用の映像データを時分割伝送している。
また、上記フィールドは、複数の水平ラインから構成されており、上記映像信号線VLでは、例えば、あるフィールドにおいて、ある水平ライン用の映像データ全てが伝送された後に、次に伝送する水平ライン用の映像データを伝送するなどして、各水平ライン用の映像データが時分割伝送されている。
なお、本実施形態では、2フィールドから1フレームを構成しており、偶数フィールドでは、1フレームを構成する各水平ラインのうち、偶数行目の水平ラインの映像データが伝送される。また、奇数フィールドでは、奇数行目の水平ラインの映像データが伝送される。さらに、上記映像信号源S0は、1水平ライン分の映像データを伝送する際も上記映像信号線VLを時分割駆動しており、予め定められた順番で、各映像データが順次伝送される。
ここで、図1に示すように、本実施形態に係る変調駆動処理部21は、1フレーム分の映像データを次のフレームまで記憶するフレームメモリ(記憶手段)31と、入力端子T1に入力された現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) をフレームメモリ31へ書き込むと共に、フレームメモリ31から前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) を読み出し、前フレーム映像信号DAT0として出力するメモリ制御回路32と、現フレームから前フレームへの階調遷移を強調するように、現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) を補正し、補正後の映像データD2(i,j,k) を補正映像信号DAT2として出力する変調処理部(第1補正手段)33とを備えている。なお、本実施形態では、説明の便宜上、フレームメモリ31から出力される映像データのうち、前フレームFR(k-1) の映像データをD0(i,j,k-1) で示し、前々フレームFR(k-2) の映像データ(後述)をD00(i,j,k-2) として参照する。また、両映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) に基づいて、後述の前フレーム階調補正回路34が生成した映像映像データをD0a(i,j,k-1) で参照する。
さらに、本実施形態では、上記フレームメモリ31は、前フレームの映像データも、次のフレームまで記憶しており、制御回路32は、フレームメモリ31から、前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) を読み出し、前々フレーム映像信号DAT00として出力している。
また、本実施形態に係る変調駆動処理部21には、各画素PIX(i,j) について、画素PIX(i,j) が上記映像データD00(i,j,k-2) から映像データD0(i,j,k-1) への階調遷移によって到達した階調を予測すると共に、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) を当該予測値D0a(i,j,k-1) へ補正して出力する前フレーム階調補正回路(第2補正手段)34が設けられており、上記変調処理部33は、補正後の前フレーム映像信号DAT0aと上記現フレーム映像信号DATとに基づいて、各画素PIX(i,j) の前フレームから現フレームへの階調遷移を強調するように、現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) を補正する。
ここで、画素PIX(i,j) の応答速度が非常に遅いと、前フレームFR(k-1) において、前々フレームから前フレームへの階調遷移を強調しているにも拘わらず、画素PIX(i,j) が前フレームFR(k-1) の映像データD(i,j,k-1) の示す階調に到達できないことがある。この場合、現フレームFR(k) において、前々回から前回へ十分に階調遷移できたと見なして階調遷移を強調すると、適切に階調遷移を強調できず、白光りや黒沈みが発生する虞れがある。
例えば、図4中、実線で示すように、前々回から今回への階調遷移がディケイ→ライズの場合、図中、破線で示すように、前々回から前回への階調遷移が十分ではなく、前フレームFR(k-1) の開始時点における輝度レベルが十分に低下していないにも拘わらず、現フレームFR(k) において、十分に階調遷移した場合(図中、一点鎖線)と同様に画素を駆動すると、階調遷移を強調し過ぎて、白光りが発生してしまう。
また、図5中、実線で示すように、前々回から今回への階調遷移がライズ→ディケイの場合、図中、破線で示すように、前々回から前回への階調遷移が十分ではなく、前フレームFR(k-1) の開始時点における輝度レベルが十分に上昇していないにも拘わらず、現フレームFR(k) において、十分に階調遷移した場合(図中、一点鎖線)と同様に画素を駆動すると、階調遷移を強調し過ぎて、黒沈みが発生してしまう。
上記白光りや黒沈みが発生すると、これらの階調は、前回の階調から今回の階調までの範囲から外れた階調なので、ユーザの目につきやすく、画像表示装置の表示品質を大幅に低下させる。特に、白光りが発生した場合は、発生期間が一瞬であっても、ユーザの目につきやすいため、特に表示品質を低下させてしまう。
これに対して、本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34は、補正前の上記両映像データD00(i,j,k-2) およびD00(i,j,k-1) に基づいて、前々フレームから前フレームへの階調遷移によって画素PIX(i,j) が到達した階調を予測し、前フレームFR(k-1) の映像データD(i,j,k-1) を予測値D0a(i,j,k-1) に変更する。この結果、白光りおよび黒沈みの発生を防止でき、画像表示装置1の表示品質を向上できる。
また、フレームメモリ31は、補正前の映像データD(i,j,k) を記憶しているので、図11に示す表示装置101とは異なり、補正時に誤差が発生しても、当該誤差が時間の経過と共に蓄積されることはない。したがって、白光りおよび黒沈みの発生を防止できる程度に、予測演算の精度を低下させたとしても、上記画像表示装置101と異なり、各画素PIXの階調制御が発散したり、振動したりすることがない。この結果、上記画像表示装置101よりも小さな回路規模で、白光りおよび黒沈みの発生を防止可能な画像表示装置1を実現できる。
より詳細には、本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34は、図1に示すように、前回の階調と今回の階調との組み合わせ、それぞれについて、当該組み合わせの映像データが変調処理部33に入力された場合に、画素PIX(i,j) が次の映像データによって駆動される時点で到達している階調(到達階調)を記録したLUT(Look Up Table )41を備えている。さらに、本実施形態では、LUT41に必要な記憶容量を削減するために、上記LUT41が記憶している到達階調は、全ての階調同士の組み合わせの到達階調ではなく、予め定められた組み合わせに制限されており、前フレーム階調補正回路34には、LUT41に記憶された各組み合わせに対応する到達階調を補間して、上記両映像データD00(i,j,k-2) および映像データD0(i,j,k-1) の組み合わせに対応する到達階調を算出し、予測値D0a(i,j,k-1) として当該算出結果を出力する演算回路42が設けられている。
また、本実施形態では、フレームメモリ31に必要な記憶容量を削減するために、制御回路32は、現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) のデータ深度を小さくした後で、フレームメモリ31に記憶し、次のフレームFR(k+1) において、前フレームFR(k) の映像データD0(i,j,k) として出力させる。また、制御回路32は、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) のデータ深度をさらに小さくした後で、フレームメモリ31に記憶し、次のフレームFR(k+1) において、前々フレームFR(k-1) の映像データD00(i,j,k-1) として出力させている。
一例として、本実施形態では、前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) のデータ深度、および、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) のデータ深度は、4ビットおよび6ビットに設定されている。この場合は、R、GおよびBのそれぞれを記憶したとしても、30ビットですむ。したがって、汎用のメモリ(データビットの幅が2n に設定されているメモリ)を使用した場合、前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) も記憶しているにも拘わらず、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) を記憶するときと同じ記憶容量のメモリを使用できる。
また、本実施形態では、図6に示すように、上記階調の組み合わせで表現される領域を8×8の計算エリアに分けており、LUT41は、図7に示すように、各計算エリアの4隅となる点(9×9の点)について、到達階調を記憶している。なお、図6および図7では、縦軸がスタート階調(前々フレームの階調)、横軸がエンド階調(前フレームの階調)を示しており、右方および下方になる程、階調が大きくなっている。さらに、図6および図7では、階調がそれぞれ256階調の場合を示しているので、32階調おきに到達階調が記憶されている。
ここで、図7は、画素PIX(i,j) として、垂直配向モードかつノーマリブラックモードの液晶素子を採用した場合の数値例を示している。この液晶素子は、ディケイの階調遷移に対する応答速度がライズの場合に比べて遅く、階調遷移を強調するように変調して駆動したとしても、前々回から前回へのディケイの階調遷移において、実際の階調遷移と、所望の階調遷移とに差が発生しやすい。したがって、到達すべき階調(E)よりも実際の到達値が大幅に大きくなっている領域α1は、到達すべき階調よりも到達値が大幅に小さくなっている領域α2と比較して広くなっている。なお、各領域α1・α2は、前フレーム階調補正回路34が補正せず、変調処理部33が前フレームFR(k-1) の映像データD(i,j,k-1) に基づいて現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) を補正するとユーザに視認される程度に、映像データD(i,j,k) と実際の階調とが相違する領域である。
さらに、演算回路42は、上記両映像データD00(i,j,k-2) および映像データD0(i,j,k-1) の組み合わせ(S,E)が入力されたとき、当該組み合わせが、上記計算エリアのいずれに属しているかを特定する。
さらに、演算回路42は、当該計算エリアの4隅の到達階調を、左上隅、右上隅、右下隅、左下隅の順に、それぞれ、A、B、C、Dとし、当該計算エリアの広さをY×X、左上隅の組み合わせ(S0,E0)と上記両組み合わせ(S,E)との差を(1,1)に正規化した値を(Δy,Δx)=((S−S0)/Y,(E−E0)/X)とするとき、演算回路42は、Δx>=Δyの場合、LUT41から、上記各到達階調A、BおよびCを読み出し、以下の式(1)に示すように、
D0a(i,j,k-1) =A+Δx・(B−A)+Δy・(C−B) …(1)
D0a(i,j,k-1) を算出する。
また、Δx<Δyの場合、演算回路42は、LUT41から上記各到達階調A、CおよびDを読み出し、以下の式(2)に示すように、
D0a(i,j,k-1) =C+Δx・(C−D)+(1−Δy) ・(D−A) …(2)
D0a(i,j,k-1) を算出する。
例えば、図6および図7の例では、(S,E)が(144,48)の場合、(128,32)、(128,64)、(160,64)および(160,32)で囲まれた計算エリアが特定され、補正後の前フレームFR(k-1) の映像データD0a(i,j,k-1) が60となる。したがって、前フレームFR(k-1) の映像データD(i,j,k) =48に基づいて、変調処理部33が現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) を補正する場合と異なり、補正後の映像データD0a(i,j,k-1) =60に基づいて、映像データD(i,j,k) を補正するので、白光りの発生を防止できる。
なお、上記では、LUT41が記憶している到達階調のデータ深度(ビット幅)が、映像データD(i,j,k) と同一の値(8ビット)の場合を例にして説明したが、LUT41の記憶容量削減が強く求められる場合には、上記LUT41に記憶する各到達階調のデータ深度(ビット幅)を、上記前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) のデータ深度、および、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) のデータ深度のうちの大きくない方と一致するように設定することが望まれる。
当該構成であっても、前々回および前回の映像データを用いた演算の有効数字と同じビット幅、すなわち、短い方のビット幅に設定されている。したがって、演算精度を落とさない範囲で、LUT41に必要な記憶容量を最も削減できる。
〔第2の実施形態〕
ところで、上記では、前フレーム階調補正回路34が前フレーム映像信号DAT0を常時補正する場合を例にして説明した。これに対して、本実施形態に係る変調駆動処理部21aでは、前フレーム階調補正回路34による予測値D0a(i,j,k-1) と前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) との差(絶対値)が予め定められた閾値以上の場合、前フレーム階調補正回路34aが予測値D0a(i,j,k-1) を出力し、それ以外の場合には、前フレーム階調補正回路34aが前フレーム映像信号DAT0を、そのまま出力している。
本実施形態では、各映像データD(i,j,k) の階調が8ビットの場合の一例として、上記閾値が4階調程度に設定されている。なお、予測精度を下げる要因としては、例えば量子化ノイズなど、種々の要因が存在するので、これらの影響に応じて、上記閾値は、4〜16程度に設定してもよい。
ここで、予測値と目的値(D0(i,j,k-1) )との差が小さい場合は、両者の差が大きい場合と比較して、前フレームFR(k-1) において、画素PIX(i,j) の階調は、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) が示す階調に十分近づいている。したがって、前フレーム階調補正回路34aが補正せず、変調処理部33が上記映像データD0(i,j,k-1) に基づいて、現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) を補正したとしても、白光りや黒沈みが発生する虞れが少なく、仮に発生したとしても、白光りや黒沈みの程度は小さい。また、予測値と目的値との差が小さい場合は、両者の差が大きい場合よりも、予測時の誤差の相対的な大きさが大きくなる。したがって、変調処理部33によって階調遷移が強調されると、予測時の誤差による階調の変化がユーザに視認されやすい。
これに対して、予測値と目的値(D0(i,j,k-1) )との差が大きい場合は、前フレーム映像信号DAT0を補正しないと白光りや黒沈みが発生しやすい。また、予測時の相対的な誤差が小さいため、前フレーム映像信号DAT0を補正しても、予測時の誤差に起因する階調の変化がユーザに視認されにくい。
本実施形態では、予測値と目的値(D0(i,j,k-1) )との差が閾値よりも小さい場合、すなわち、前フレーム映像信号DAT0を補正しなくても、白光りや黒沈みが発生しにくく、しかも、前フレーム映像信号DAT0を補正すると、予測時に誤差が発生した場合に表示品質を低下させやすい場合に、前フレーム階調補正回路34aは、前フレーム映像信号DAT0を補正せず、前フレーム映像信号DAT0を補正しないと、白光りや黒沈みが発生する場合にのみ、前フレーム映像信号DAT0を補正する。この結果、予測時の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を防止できる。
〔第3の実施形態〕
第2の実施形態では、予測値と目的値との差に基づいて、前フレーム階調補正回路34aが補正の要否を判定する構成について説明したが、本実施形態では、LUTに予め補正の要否を示す情報を書き込んでおき、前フレーム階調補正回路が当該情報を参照して、補正の要否を判定する構成について説明する。
すなわち、本実施形態に係るLUT41bでは、図8に示すように、各領域α1・α2、すなわち、前フレーム階調補正回路34が補正せず、変調処理部33が前フレームFR(k-1) の映像データD(i,j,k-1) に基づいて現フレームFR(k) の映像データD(i,j,k) を補正するとユーザに視認される程度に、映像データD(i,j,k) と実際の階調とが相違する領域では、図7と同様の値が記憶されているが、残余の領域α3には、目標値(E)自体が記憶されている。
一方、本実施形態に係る演算回路42bは、上記両映像データD00(i,j,k-2) および映像データD0(i,j,k-1) の組み合わせ(S,E)が入力され、当該組み合わせ(S,E)が、上記計算エリアのいずれに属しているかが特定されると、当該計算エリアの四隅の到達階調A〜Dのうち、予め定められた到達階調を読み出し、当該到達階調が計算エリアの境界の階調と一致しているか否かを判定して、到達階調として目標値が記録されているか否か、すなわち、上記領域α3か否かを判定する。さらに、領域α3に属していると判定したときに、演算回路42bは、前フレーム映像信号DAT0を補正せず、領域α1およびα2に属していると判断したときにのみ、演算回路42bは、前フレーム映像信号DAT0を補正する。
したがって、第2の実施形態と同様に、白光りや黒沈みが発生せず、予測時の誤差に起因する表示品質の低下が見込まれる場合には、前フレーム映像信号DAT0を補正せず、白光りや黒沈みが発生する場合にのみ、前フレーム映像信号DAT0を補正できる。
〔第4の実施形態〕
本実施形態では、温度に応じて、前フレーム階調補正回路による補正処理を変更する構成について説明する。なお、上記第1ないし第3の実施形態のいずれにも適用できるが、以下では、第3の実施形態に適用した場合について説明する。
すなわち、本実施形態に係る変調駆動処理部21cには、図9に示すように、第3の実施形態の構成に加えて、画素PIXの温度を検出する温度センサ35が設けられており、前フレーム階調補正回路34cは、ある前々フレームの映像データD00および前フレームの映像データD0の組み合わせが入力された場合に、映像データD0を補正すべきか否かと補正後の映像データD0aとを、温度センサ35が検出した温度によって変更する。
具体的には、本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34cには、予め定められた各温度範囲にそれぞれ対応する複数のLUT41cが設けられている。各LUT41cには、それぞれに対応する温度範囲における到達値がLUT41と同様に記憶されている。
一方、前フレーム階調補正回路34cの演算回路42cは、温度センサ35からの温度情報に応じて、各LUT41cの中から、補間演算時に参照するLUT41cを選択する。なお、当該演算回路42cおよび後述の演算回路42eが特許請求の範囲に記載の制御手段に対応する。
ここで、例えば、画素PIXとして液晶素子を採用した場合、液晶素子の応答速度が温度によって変化する。このように、応答速度が温度によって変化する画素PIXを採用した場合、前フレーム階調補正回路34cが補正しなかったときに、変調処理部33による現フレームの映像データDの補正によって、白光りや黒沈みが発生するか否かが変化する。
ところが、上記構成では、温度によって画素PIXの応答速度が変化して、白光りや黒沈みを防止するために必要な補正処理が変化したとしても、前フレーム階調補正回路34cが、現在の画素PIXの温度に応じて、前フレーム映像信号DAT0を補正できるので、温度に拘らず、白光りや黒沈みの発生を防止することができる。
さらに、本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34cは、温度が上昇して、予め定められた温度範囲になると、前フレーム映像信号DAT0の補正を停止する。したがって、温度が上昇して、画素PIX(i,j) が十分な速度で応答できるようになり、応答不足に起因する白光りや黒沈みが発生しなくなると、変調処理部33は、補正前の前フレーム映像信号DAT0と現フレームの映像信号DATとに基づいて、前フレームから現フレームへの階調遷移を強調するように、現フレームの映像信号DATを補正する。
この結果、以下の現象、すなわち、応答不足に起因する白光りや黒沈みが発生しない温度であるにも拘わらず、前フレーム階調補正回路34cによって階調遷移が抑制されるという現象が発生せず、画像表示装置1の応答速度低下を防止できる。
なお、上記では、LUT41cを切り換える場合を例にして説明したが、温度方向の変化に対しても、到達値は、単調に変化するので、演算回路42cが、現在の温度に最も近い2つのLUT41cから、それぞれの温度での到達値を読み出し、両到達値間を補間して、現在の温度での到達値を算出してもよい。当該構成では、LUT41cの数が少なくても、より高精度に白光りおよび黒沈みの発生を防止できる。
〔第5の実施形態〕
本実施形態では、温度に応じて、フレームメモリ31に記憶する前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅および前フレームの映像データD0(i,j,k-1) のビット幅を変更する構成について説明する。なお、上記第1ないし第4の実施形態のいずれにも適用できるが、以下では、第4の実施形態に適用した場合について説明する。
すなわち、本実施形態に係る変調駆動処理部21dでは、図9に示すように、制御回路32dが温度センサ35の検出結果に応じて、フレームメモリ31に記憶する前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅および前フレームの映像データD0(i,j,k-1) のビット幅を変更し、より低い温度範囲になるに従って、前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅を拡大すると共に、ビット幅の増大分だけ、前フレームの映像データD0(i,j,k-1) のビット幅を縮小している。
ここで、フレームメモリ31の記憶容量を削減するために、フレームメモリ31に記憶されている上記両映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅の合計は、予め定められたビット幅(例えば、10ビット)に制限されており、各映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅は、最も的確に前フレームの映像データD0(i,j,k-1) を補正できるように設定されている。一方、画素PIX(i,j) の応答速度が遅くなるに従って、前々フレームから前フレームへの階調遷移によって、画素PIX(i,j) が到達する階調は、前々フレームの映像データの影響を受けやすくなるので、温度が変化すると、各映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅の最適な割り当ても変化してしまう。
本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34dは、温度によって画素PIXの応答速度が変化して、最適なビット割り当てが変化すると、現在の画素PIXの温度に応じて、両映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅の割り当てを変更し、より低い温度範囲になるに従って、前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅を拡大する。この結果、温度変化に拘らず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができ、映像データD0(i,j,k-1) をより高精度に補正できる。したがって、より的確に白光りや黒沈みの発生を防止できる。
例えば、前々および前フレームの映像データのビット幅の合計値が上述の数値例のように、10ビットとすると、通常の温度範囲では、前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅が3ビットに設定され、それよりも高い温度になると、2ビットに、それよりも低い温度になると、4ビットに変更される。
なお、演算回路42c(42〜42b)がLUT41c(41・41b)を参照して、補正後の映像データD0aを生成する構成であって、しかも、LUTの記憶容量削減が強く求められた結果、映像データD00のビット幅が最も小さいときに、上述の式(1)および(2)に記載のΔyを算出できない場合、演算回路42は、計算エリア4隅の到達値A〜Dのうち、より低い映像データD00(i,j,k-2) に対応する2隅(CおよびD)に基づいて、補正後の映像データD0a(i,j,k-1) を算出する方が望ましい。また、映像データD00のビット幅が不足して、計算エリアを特定できない場合は、映像データD00に対応する複数の計算エリアの各4隅の到達値A〜Dのうち、最も低い映像データD00(i,j,k-2) に対応する2隅に基づいて、補正後の映像データD0a(i,j,k-1) を算出する方が望ましい。
例えば、図7および図8に示すように、上記両映像データD00(i,j,k-2) および映像データD0(i,j,k-1) の組み合わせ(S,E)が8×8の計算エリアに分けられており、各計算エリアの4隅の到達値がLUT41cに記憶されている場合、映像データD00(i,j,k-2) のビット幅が3ビットにまで低下すると、計算エリアを特定できるが、Δyを算出できない(常に0になる)。この場合、演算回路42cは、4隅の到達値A〜Dのうち、CおよびDに基づいて、補正後の映像データD0a(i,j,k-1) を算出する。また、ビット幅が2ビットになると、計算エリア自体を特定できず、例えば、(S−E)=(128,48)は、(128,32)、(128,64)、(160,64)および(160,32)で囲まれた計算エリアと、(160,32)、(160,64)、(192,64)および(192,32)で囲まれた計算エリアとの双方に対応してしまう。この場合、演算回路42cは、これら4隅の到達値のうち、(192,64)および(192,32)に基づいて、補正後の映像データD0a(i,j,k-1) を算出する。
ここで、LUT41cに記憶された到達値では、より低い映像データD00に対応する到達値の方が、より低くなっている。また、補正後の映像データD0a(i,j,k-1) を大きくし過ぎて発生する白光りの方が、小さくし過ぎて発生する黒沈みよりも、ユーザの目につきやすい。
したがって、上記演算回路42cが、より低い映像データD00(i,j,k-2) に対応する2隅(CおよびD)に基づいて、補正後の映像データD0a(i,j,k-1) を算出することによって、より表示品位低下が目立ちにくい画像表示装置1を実現できる。
〔第6の実施形態〕
ところで、上記各実施形態では、LUT41(41b・41c)に到達値が記憶されている場合を例にして説明したが、これに限るものではない。上述したように、白光りの発生が最も表示品質を低下させやすいので、白光りの発生を確実に防止できるように、LUT41に到達値よりも大きな階調が記述されており、前フレーム階調補正回路34(34a〜34d)は、前フレーム映像信号DAT0の補正が必要な場合に、到達値よりも大きな階調に補正してもよい。
当該構成では、到達値を記述する場合よりも前フレームから現フレームへの階調遷移強調を抑えることができるので、白光りの発生を確実に防止できる。
さらに、前フレーム階調補正回路による補正処理を映像の種類に応じて変更してもよい。なお、上記第1ないし第5の実施形態のいずれにも適用できるが、以下では、第3の実施形態に適用した場合について説明する。
具体的には、本実施形態に係る変調駆動処理部21eには、図10に示すように、第3の実施形態の構成に加えて、映像の種類を判定する判定回路36が設けられており、前フレーム階調補正回路34eは、ある前々フレームの映像データD00および前フレームの映像データD0の組み合わせが入力された場合に、映像データD0を補正すべきか否かと補正後の映像データD0aとを、判定回路36による判定結果によって変更する。
具体的には、本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34eには、予め定められた各温度範囲にそれぞれ対応する複数のLUT41eが設けられている。各LUT41eには、それぞれに対応する種類の映像が入力された場合の到達値がLUT41と同様に記憶されている。一方、前フレーム階調補正回路34eの演算回路42eは、判定回路36からの温度情報に応じて、各LUT41eの中から、補間演算時に参照するLUT41eを選択する。
ここで、上述したように、前フレーム階調補正回路34eは、前フレーム映像信号DAT0の補正が必要な場合に、到達値よりも大きな階調に補正する場合、補正値を到達値よりも大きくし過ぎると、白光りの発生を確実に防止できる一方で、応答速度が低下してしまう。したがって、補正値と到達値との差は、応答速度低下が目立たない範囲で、白光りの発生を抑制できるように設定されている。ところが、両者の差の適切な値は、映像の種類によっても異なるため、両者の差が固定されている場合、多くの種類の映像が入力される場合には、全ての種類の映像で適切な値に設定することが難しい。
これに対して、本実施形態に係る変調駆動処理部21eでは、補正値と到達値との差が映像の種類に応じて変更される。したがって、例えば、動きのはやい映像と動きの遅い映像となど、いずれの種類の映像が入力される場合であっても、応答速度低下が目立たない範囲で、白光りの発生を抑制できる。
さらに、本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34eは、映像の種類が動きの遅い映像であることを示しており、前フレーム階調補正回路34eが前フレーム映像信号DAT0を補正しなくても、応答不足に起因する白光りや黒沈みが発生しないと見込まれる場合、前フレーム映像信号DAT0の補正を停止する。この結果、以下の現象、すなわち、動きが遅く、応答不足に起因する白光りや黒沈みが発生しないような映像を表示しているにも拘わらず、前フレーム階調補正回路34eによって階調遷移が抑制されるという現象が発生せず、画像表示装置1の応答速度低下を防止できる。
〔第7の実施形態〕
本実施形態では、映像の種類に応じて、フレームメモリ31に記憶する前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅および前フレームの映像データD0(i,j,k-1) のビット幅を変更する構成について説明する。なお、上記第1ないし第6の実施形態のいずれにも適用できるが、以下では、第4の実施形態に適用した場合について説明する。
すなわち、本実施形態に係る変調駆動処理部21fでは、図10に示すように、制御回路32fが判定回路36の検出結果に応じて、フレームメモリ31に記憶する前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅および前フレームの映像データD0(i,j,k-1) のビット幅を変更し、映像の種類がより動きの速い映像の場合は、前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅をより拡大すると共に、ビット幅の増大分だけ、前フレームの映像データD0(i,j,k-1) のビット幅を縮小している。
ここで、フレームメモリ31の記憶容量を削減するために、フレームメモリ31に記憶されている上記両映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅の合計は、予め定められたビット幅(例えば、10ビット)に制限されており、各映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅は、最も的確に前フレームの映像データD0(i,j,k-1) を補正できるように設定されている。一方、前々フレームから前フレームへの階調遷移によって、画素PIX(i,j) が到達する階調は、動きの速い映像が入力される場合の方が、前々フレームの映像データの影響を受けやすい。したがって、映像の種類が変化して、期待される動きの速さが変化すると、各映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅の最適な割り当ても変化してしまう。
本実施形態に係る前フレーム階調補正回路34fは、映像の種類が変化して、最適なビット割り当てが変化すると、現在の映像の種類に応じて、両映像データD00(i,j,k-2) およびD0(i,j,k-1) のビット幅の割り当てを変更し、映像の種類がより動きの速い映像の場合は、前々フレームの映像データD00(i,j,k-2) のビット幅を拡大する。この結果、映像の種類に拘らず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができ、映像データD0(i,j,k-1) をより高精度に補正できる。したがって、より的確に白光りや黒沈みの発生を防止できる。
なお、上記各実施形態では、垂直配向モードかつノーマリブラックモードの液晶セルを表示素子として用いた場合を例にして説明したが、これに限るものではない。応答速度が遅く、階調遷移を強調するように変調して駆動したとしても、前々回から前回への階調遷移において、実際の階調遷移と、所望の階調遷移とに差が発生する表示素子であれば、略同様の効果が得られる。
ただし、垂直配向モードかつノーマリブラックモードの液晶セルは、ディケイの階調遷移に対する応答速度がライズの場合に比べて遅く、階調遷移を強調するように変調して駆動したとしても、前々回から前回へのディケイの階調遷移において、実際の階調遷移と、所望の階調遷移とに差が発生しやすく、白光りが発生しやすい。したがって、上記実施形態の構成によって、白光りの発生を防止すると特に好適である。
また、上記各実施形態では、変調駆動処理部を構成する各部材がハードウェアのみで実現されている場合を例にして説明したが、これに限るものではない。各部材の全部または一部を、上述した機能を実現するためのプログラムと、そのプログラムを実行するハードウェア(コンピュータ)との組み合わせで実現してもよい。一例として、画像表示装置1に接続されたコンピュータが、画像表示装置1を駆動する際に使用されるデバイスドライバとして、変調駆動処理部(21〜21f)を、実現してもよい。また、画像表示装置1に内蔵あるいは外付けされる変換基板として、変調駆動処理部が実現され、ファームウェアなどのプログラムの書き換えによって、当該変調駆動処理部を実現する回路の動作を変更できる場合には、当該ソフトウェアを配布して、当該回路の動作を変更することによって、当該回路を、上記各実施形態の変調駆動処理部として動作させてもよい。
これらの場合は、上述した機能を実行可能なハードウェアが用意されていれば、当該ハードウェアに、上記プログラムを実行させるだけで、上記各実施形態に係る変調駆動処理部を実現できる。
なお、上記各実施形態では、フレームメモリ31に記憶されている上記前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) および前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) のビット幅の合計を、予め定められたビット幅に制限するために、下位ビットを切り捨てて格納しているが、これに限るものではなく、要求される精度に応じて、種々の格納方法、および、それらの組み合わせを任意に適用できる。
以下では、いくつかの格納方法を例示するが、より後の方法ほど、メモリの使用効率は良くなる代わりに、そのために必要な処理が増加する。この結果、より後の方法ほど、必要な回路規模が増大し、回路の動作周波数の上昇などが必要となるため、実施がより困難となる。したがって、あくまでも、ディスプレイの使用目的と、必要な表示特性を確保するために要求される精度と、回路規模とのバランスが最適になるように、格納方法(複数の格納方法の組み合せを含む)を選択することが好ましい。
1. 切り捨て(Bit Cutting)
上記各実施形態にて例示した格納方法であり、必要な精度を超える下位ビットを切り捨てて、必要な上位ビットを記録する方法である。これにより、最も単純に記録領域を節約できる。例えば、元の映像データが8ビットで表現される場合(256階調の場合)、下位の5ビットを切り捨てることによって、0、32、64、96、128、160、192、224を、0から7の3bitで記録することができる。当該方法では、必要なビットを切り出すだけなので、この作業に要する回路規模を、ほとんど無視できる。
2. 目次(Indexing)
元の映像データが取り得る値の範囲を予め定められた小範囲に分割し、元の映像データがいずれの小範囲に属しているかを、各小範囲のそれぞれに割り当てられたインデックスを記憶することによって格納する方法である。例えば、0でない最上位ビットに着目して例えば、8ビットで表現される元の映像データが取り得る値の範囲を、0〜1階調、2〜3階調、4〜7、8〜15階調、16〜31階調、32〜63階調、64〜127階調および128階調以上に分割すると共に、それぞれを、0から7の数値でインデックス付けすれば、8ビットの映像データを、3bitで目次をつけることができる。一般に、低階調側ほど階調誤差がより顕著に観察されるので、このようなインデックスによって階調を記録することによって、より誤差の目立ちやすい領域を、より詳細に記録できる。なお、一般には、回路規模の増大を防止するため、上記各小領域は、元の映像データがいずれの小範囲に属しているかを、比較的簡単な規則によって判断できるように設定されているが、種々の条件付けと規則とを組み合わせることによって、各小領域をより適切に区分したり、小領域の区分を変更したりできる。したがって、効率を落とさない範囲で、適切な条件分けと規則とを組み合わせることが望ましい。
3. ハッシュ(Hashing)、符号化( Huffman Coding など)あるいは他の辞書方式
目次と類似しているが、記録しようとするデータ(映像データ;階調の情報)に明らかに偏りがあると期待される場合、出現確率のより大きい領域に、より低ビットの目次を割り当てることによって、より記憶領域を節約することができる。なお、格納、取り出し双方向の翻訳システムが必要であり、例えば、制御回路32は、格納時に、領域と目次との対応表を参照し、各領域に対応する目次を決定して、当該目次をフレームメモリ31へ格納すると共に、取り出し時にも、領域と目次との対応表を参照し、フレームメモリ31に格納された目次に対応する領域を示す映像データを出力するなどして、格納および取り出しの双方向に翻訳する。
4. 変換(Translation)
また、上記あるいは後述する各格納方法を、より効率的に実施するために、記録するデータを適切に変換してもよい。例えば、RGB階調信号を、輝度信号と色差信号とに変換してもよい。このように変換すれば、上述の1.や2.のように、比較的少ない回路規模で実現可能な格納方法を採用する場合であっても、階調情報の劣化の程度を抑制できる。また、他の変換方法として、RGB階調信号を、RGB平均値と、当該平均値からの差分値とに変換するなど、他の適切な方法を選択してもよい。
5. 圧縮(Compression)
回路規模の制限が比較的小さい場合、一般にいう圧縮を用いることができ、メモリ使用効率も相当に向上する。例えば、上述した適切なデータ変換、符号化の後、ランレングス(run length)などの手法で圧縮してもよい。なお、適切なデータ変換としては、上記で例示した変換方法の他にも、周波数変換(コサイン変換、フーリエ変換)、あるいは、前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) を変換する際に、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) を用いた差分値に変換するなどの変換方法を採用してもよい。また、画像処理において公知の方法として、例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)や、MPEG(Moving Picture Expert Group )で規定された変換(画像圧縮方法)などを適宜組み合わせてもよい。なお、要求される精度のデータをより少ないビット幅で格納するために、多くの場合、回路規模の増大が許容される範囲で、種々の格納方法が組み合わされる。
いずれの格納方法を採用する場合であっても、前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) のビット幅を制限して、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) を修正するのに必要なだけの精度のデータを、元のデータより少ないビット数で格納できれば、上記各実施形態と同様に、フレームメモリ31の記憶容量を削減できる。なお、フレームメモリ31の記憶容量を削減するためには、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) を修正するのに必要なだけの精度のデータを、なるべく少ないビット幅で記憶することが望ましい。
また、前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) のビット幅だけではなく、前フレームFR(k-1) の映像データD0(i,j,k-1) のビット幅も制限して記憶すれば、よりフレームメモリ31の記憶容量を削減できる。なお、この場合は、例えば、それぞれを別個に圧縮するなどして、両者を別々にビット幅を制限してもよいし、例えば、両者を組み合せたデータを圧縮するなどして、両者の組み合せに対して、ビット幅を制限してもよい。ただし、上述したように、多くの場合、メモリの使用効率をより向上させようとすると、回路規模の増大、回路の動作周波数の上昇などによって、実施がより困難となり、前々フレームFR(k-2) の映像データD00(i,j,k-2) のビット幅だけではなく、映像データD0(i,j,k-1) のビット幅も制限すると、さらに実施がより困難になる。したがって、あくまでも、ディスプレイの使用目的と必要な表示特性を確保するために要求される精度と回路規模とのバランスが最適になるように、ビット幅を制限する映像データおよび格納方法を選択することが好ましい。
本発明に係る表示装置の駆動方法は、上記課題を解決するために、前回の映像データを参照して、前回から今回への階調遷移を強調するように、今回の映像データを補正し、画素へ供給する第1補正工程を含む表示装置の駆動方法において、上記第1補正工程にて補正される前の今回の映像データを次回まで記憶する前回データ記憶工程と、前回の映像データを次回まで記憶する前々回データ記憶工程と、上記両データ記憶工程で記憶された前々回および前回の映像データの組み合わせが予め定められた組み合わせの場合、上記第1補正工程にて参照される前回の映像データを、前々回の映像データに近づくように、すなわち、前回の映像データを増加/減少のうち、前々回の映像データに近づく方向に、補正する第2補正工程とを含んでいることを特徴としている。
上記構成では、上記両データ記憶工程で記憶された前々回および前回の映像データの組み合わせが予め定められた組み合わせの場合、上記第1補正工程にて参照される前回の映像データは、前々回の映像データに近づくように補正される。したがって、前々回から前回への階調遷移が予め定められた階調遷移の場合、第1補正工程において、前回から今回への階調遷移を強調するように今回の映像データを補正する際、第2補正工程での補正がない場合よりも補正量を抑えることができる。
この結果、例えば、前々回から今回への階調遷移が、ディケイ→ライズの場合あるいはライズ→ディケイの場合のように、第1補正工程にて通常と同様の補正が行われると、以下の現象、すなわち、前々回から前回への階調遷移における画素の応答不足と、第1補正工程での階調遷移強調との相乗効果によって、今回の画素の階調が今回の映像データの示す階調と大きく異なり、白光りや黒沈みが発生するという現象が発生する場合であっても、第1補正工程での補正量を抑えることによって、当該現象の発生を抑制でき、表示装置の表示品質を向上できる。一方、上記両データ記憶工程が第1補正工程にて補正される前の映像データを記憶しているので、補正後の映像データを記憶する構成とは異なり、第1補正工程での補正に起因する誤差が重畳、累積されることがない。したがって、比較的回路規模が小さく、補正のための演算の精度が低い回路によって、上記各工程を実施したとしても、画素の階調制御が発散したり、振動したりすることがない。これらの結果、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
また、上記両データ記憶工程にて記憶される映像データは、今回の映像データと同じビット幅であってもよいが、回路規模の縮小が特に求められる場合には、上記構成に加えて、上記両データ記憶工程にて記憶される前々回および前回の映像データのビット幅の合計は、今回の映像データのビット幅の2倍よりも小さな設定値に設定され、上記前々回データ記憶工程にて記憶される前々回の映像データのビット幅は、上記前回データ記憶工程にて記憶される前回の映像データのビット幅以下に設定されていると共に、上記両データ記憶工程のうちの少なくとも一方は、上記前々回および前回の映像データのビット幅の合計値が上記設定値になるように、ビット幅を制限して記憶してもよい。当該構成では、各記憶工程にて記憶される映像データのビット幅が制限されているので、全てを記憶する場合よりも回路規模を縮小できる。
さらに、上記構成に加えて、映像の種類および温度の少なくとも一方に応じて、上記設定値のうち、前々回の映像データのビット幅が占める割合を変更してもよい。
ここで、上記設定値が今回の映像データのビット幅よりも小さな値に制限されている場合、上記設定値において、前々回の映像データのビット幅が占める割合を増大させ過ぎると、補正後の前回の映像データに対して、前々回の映像データの影響をより正確に反映できる一方で、前回の映像データの影響を正確に反映させることができなくなってしまう。したがって、設定値において、前々回の映像データのビット幅が占める割合は、両映像データの影響に応じた適切な値に設定することが望まれる。一方、動きの速い映像が入力される場合の方が、前々フレームの映像データの影響を受けやすいので、映像の種類が変化して、期待される動きの速さが変化すると、上記割合の適切な値が変化してしまう。同様に、温度が変化すると画素の応答速度が変化するので、上記割合の適切な値が変化する。
これに対して、上記構成では、映像の種類および温度の少なくとも一方に応じて、上記設定値のうち、前々回の映像データのビット幅が占める割合が変更されるので、映像の種類や温度に拘わらず、上記割合を適切な値に保ち続けることができる。この結果、表示装置の表示品質を高いレベルに維持し続けることができる。
さらに、上記構成に加えて、上記第1補正工程は、補正後の上記前回の映像データと補正前の上記前回の映像データとの差が予め定める閾値よりも小さい場合、補正前の前回の映像データを参照して、今回の映像データを補正してもよい。
当該構成では、補正後の上記前回の映像データと補正前の上記前回の映像データとの差が予め定める閾値よりも小さい場合、すなわち、前回の映像データを補正しなくても、白光りや黒沈みが発生しにくく、しかも、前回の映像データを補正すると、補正時に誤差が発生した場合に表示品質を低下させやすい場合、今回の映像データは、補正後の前回の映像データではなく、補正前の前回の映像データを参照して補正される。この結果、第2補正工程での補正の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を防止できる。
また、上記閾値と比較する代わりに、上記第2補正工程は、前々回の映像データと前回の映像データとの組み合わせが予め定められた組み合わせの場合にのみ、前回の映像データを補正してもよい。
当該構成では、白光りや黒沈みが発生する可能性が高いと予測された組み合わせの場合にのみ、前回の映像データを補正できるので、第2補正工程での補正の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を防止できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第2補正工程は、温度に応じて、上記補正する組み合わせと予め定められた組み合わせ、および、補正量の少なくとも一方を変更してもよい。
ここで、温度が変化すると、画素の応答速度が変化するので、白光りや黒沈みの発生が予測される組み合わせや、適切な補正量が変化する。ところが、上記構成では、温度に応じて、上記補正する組み合わせと予め定められた組み合わせ、および、補正量の少なくとも一方を変更するので、温度に拘わらず、白光りや黒沈みの発生を的確に防止でき、表示装置の表示品質を高いレベルに維持し続けることができる。
また、上記構成に加えて、映像の種類および温度の少なくとも一方が予め定める条件を満たしている場合、上記第2補正工程による補正を停止してもよい。ところで、第2補正工程において、前回の映像データを前々回の映像データに補正すると、前々回から今回への階調遷移が、ディケイ→ライズの場合またはライズ→ディケイの場合、第1補正工程において、前回から今回への階調遷移を強調する程度が弱められる。したがって、画素の温度が高い場合や、映像の種類が動きの遅い映像の場合のように、映像の種類および温度の少なくとも一方が予め定める条件を満たしており、前回の映像データを補正しなくても、白光りや黒沈みが発生しないと見込まれる場合であるにも拘わらず、前回の映像データを補正すると、応答速度が不所望に低下する虞れがある。
これに対して、上記構成では、映像の種類および温度の少なくとも一方が予め定める条件を満たしている場合、上記第2補正工程による補正を停止する。したがって、白光りや黒沈みが発生しないと見込まれる場合の応答速度低下を防止できる。なお、上記条件を満たしていない場合は、前回の映像データが補正されるので、何ら支障なく白光りや黒沈みの発生を防止できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第2補正工程では、前々回から前回への階調遷移が階調を低下させる階調遷移の場合、当該階調遷移により画素が到達したと予測される階調よりも大きな階調を示すように、前回の映像データを補正してもよい。
ここで、上記第2補正工程では、前々回から前回への階調遷移によって、当該階調遷移により画素が到達したと予測される階調となるように、前回の映像データを補正してもよいが、この場合は、到達階調を十分な精度で予測できないと、予測値と実際の階調とのズレによって、白光りや黒沈みが発生する虞れがある。
これに対して、上記構成では、前々回から前回への階調遷移が階調を低下させる階調遷移の場合、予測される到達階調よりも大きな階調を示すように、前回の映像データが補正されるので、予測値と実際の階調との間にズレが発生しても、白光りの発生を防止できる。このように、白光りと黒沈みとのうち、表示品質の低下を招きやすい白光りの発生を防止することによって、予測値と実際の階調との間にズレが発生しても、表示品質の低下を抑えることができる。
一方、本発明に係る表示装置は、上記課題を解決するために、前回の映像データを参照して、前回から今回への階調遷移を強調するように、今回の映像データを補正し、画素へ供給する第1補正手段を有する表示装置において、上記第1補正手段が補正する前の、今回の映像データと、前回の映像データとを次回まで記憶する記憶手段と、上記記憶手段が記憶した前々回および前回の映像データの組み合わせが予め定められた組み合わせの場合、上記第1補正手段が参照する前回の映像データを、前々回の映像データに近づくように補正する第2補正手段とを含んでいる。
当該構成の表示装置は、上述の表示装置の駆動方法によって画素を駆動できる。したがって、当該表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
また、上記構成に加えて、上記第2補正手段は、前々回および前回の映像データの各組み合わせに対応して、補正後の前回の映像データが記憶されたルックアップテーブルを備えており、上記ルックアップテーブルに記述された前回の映像データのビット幅は、上記前々回および前回の映像データのビット幅のうちの短い方に設定されていてもよい。
当該構成では、上記ルックアップテーブルに記述された前回の映像データのビット幅は、前々回および前回の映像データを用いた演算の有効数字と同じビット幅、すなわち、短い方のビット幅に設定されている。したがって、演算精度を落とさない範囲で、ルックアップテーブルに必要な記憶容量を最も削減できる。
また、上記構成に加えて、上記ルックアップテーブルが、前々回および前回の映像データの各組み合わせのうち、予め定められた組み合わせの、補正後の前回の映像データの階調を記憶しており、上記第2補正手段が、上記ルックアップテーブルに記憶された補正後の前回の映像データの階調を補間して、前々回および前回の映像データの組み合わせに対応する補正後の前回の映像データの階調を算出する制御手段を備えてもよい。
上記構成によれば、上記ルックアップテーブルに記憶される前々回および前回の映像データの組み合わせが、予め定められた組み合わせに制限される。したがって、上記ルックアップテーブルの記憶容量を削減することができる。
さらに、上記構成に加えて、上記第2補正手段が、前々回および前回の映像データの各組み合わせのうち、予め定められた組み合わせに対しては、補正後の前回の映像データあるいは補正後の前回の映像データの階調が記憶され、それ以外の組み合わせに対しては、前回の映像データ自体、あるいは、前回の映像データが到達すべき階調自体が記憶されたルックアップテーブルを備えていてもよい。
当該構成では、当該組み合わせが上記予め定められた組み合わせ以外の場合は、前回の映像データ自体または前回の映像データが到達すべき階調自体が記憶されているので、当該ルックアップテーブルを参照して、前回の映像データを補正することによって、上記組み合わせ以外の場合は、前回の映像データの補正を停止することができる。この結果、上記組み合わせか否かを判定するためのテーブルを別途設ける場合よりも、簡単な回路構成によって、第2補正工程での補正の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を防止できる。
また、上記構成に加えて、上記第2補正手段は、予め定められた温度範囲毎に設けられ、前々回および前回の映像データの各組み合わせに対応して、補正後の前回の映像データまたは前回の映像データの階調が記憶されたルックアップテーブルと、当該ルックアップテーブルの中から、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを選択する制御手段とを備え、当該制御手段は、温度に応じて、上記ルックアップテーブルを切り換えてもよい。
当該構成では、温度に応じて、ルックアップテーブルを切り換えるので、温度に拘わらず、白光りや黒沈みの発生を的確に防止でき、表示装置の表示品質を高いレベルに維持し続けることができる。また、各温度範囲毎にルックアップテーブルが設けられているので、温度による補正処理の変化が簡単な数式で記述できない場合であっても、簡単な回路によって補正処理を変更できる。
また、上記制御手段が、上記映像データの種類に応じて、上記選択するルックアップテーブルを切り換える構成としてもよい。
補正後の前回の映像データの階調の値と、前回の映像データが到達すべき階調の値とが異なる場合、両者の差の適切な値は、映像の種類によっても異なる。そこで、上記構成では、制御手段が、映像データの種類に応じて、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを切り換える。これにより、例えば、動きの早い映像と動きの遅い映像となど、いずれの種類の映像が入力される場合であっても、応答速度低下が目立たない範囲で、白光りの発生を抑制できる。
また、上記構成に加えて、上記記憶手段に記憶する前回および前々回の映像データのビット幅の合計が、予め定められたビット幅に制限されており、上記記憶手段に記憶する前回の映像データのビット幅と、前々回の映像データのビット幅とを、温度に応じて変更する構成としてもよい。
画素の応答速度は、温度に応じて変化する。例えば、画素の応答速度が遅くなるに従って、前々フレームから前フレームへの階調遷移によって、画素が到達する階調は、前々フレームの影響を受けやすくなる。このため、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の最適な割り当ても変化する。
これに対して、上記構成によれば、温度変化に拘わらず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができる。このため、前回の映像データをより高精度に補正でき、白光りや黒沈みの発生をより的確に防止できる。
また、上記制御手段が、上記記憶手段に記憶する映像データのビット幅を、上記映像データの種類に応じて変更する構成としてもよい。
前々フレームから前フレームへの階調遷移によって、画素が到達する階調は、動きの早い映像が入力される場合の方が、前々フレームの影響を受けやすい。したがって、映像の種類が変化して、期待される動きの早さが変化すると、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の最適な割り当ても変化する。
これに対して、上記構成によれば、映像の種類に応じて、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の割り当てを変更する。このため、映像の種類に拘わらず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができる。したがって、前回の映像データを、より高精度に補正でき、白光りや黒沈みの発生を、より的確に防止できる。
さらに、上記構成に加えて、今回の映像データは、3原色のそれぞれについて8ビット幅であり、上記記憶手段は、上記3原色のそれぞれについて、前々回の映像データのビット幅と前回の映像データのビット幅との合計が10ビットになるように、前々回および前回の映像データのうち、少なくとも前々回の映像データのビット幅を制限して記憶してもよい。
当該構成では、3原色の映像データのビット幅の合計が30(3×10)ビットなので、汎用のメモリ(データビットの幅が2n に設定されているメモリ)を使用する場合、前回の映像データ(3原色分)をそのまま記憶する場合と同じ記憶容量のメモリによって記憶手段を実現できる。
さらに、上記構成に加えて、上記画素は、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子であってもよい。ここで、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子を画素とする場合、ディケイの階調遷移に対する応答速度がライズの場合に比べて遅く、階調遷移を強調するように変調して駆動したとしても、前々回から前回へのディケイの階調遷移において、実際の階調遷移と、所望の階調遷移とに差が発生しやすい。したがって、ディケイ→ライズの階調遷移が発生すると、白光りが発生し、ユーザに視認されやすくなる。これに対して、上記構成では、第2補正手段によって、白光りの発生が抑制されている。したがって、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子を画素としているにも拘わらず、白光りの発生を防止でき、表示装置の表示品質を向上できる。
また、本発明に係るプログラムは、上記各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。したがって、当該プログラムがコンピューで実行されると、当該コンピュータは、表示装置を上記駆動方法で駆動できる。この結果、上記表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で表示装置の表示品位を向上できる。
また、これらのプログラムを、コンピュータデータ信号としてもよい。例えば、搬送波に埋め込まれて送信された上記コンピュータデータ信号を受信し、コンピュータに実行させることにより、表示装置を上記駆動方法で駆動できる。
また、これらのプログラムを、コンピュータによって読取可能な記録媒体に記録させておくことで、プログラムの保存、および、当該記録媒体あるいは当該記録媒体を含むコンピュータプログラム製品の流通を容易に行えるようになる。さらに、この記録媒体をコンピュータに読み込ませることで、表示装置を上記駆動方法で駆動できる。なお、上記コンピュータプログラム製品としては、例えば、当該記録媒体とマニュアルとを1パッケージにした製品、あるいは、当該記録媒体を含むコンピュータなどが挙げられる。
本発明に係る表示装置の駆動方法は、上記課題を解決するために、第1の時点に入力された第1の駆動信号(例えば、前フレームの映像データ)、および、上記第1の時点よりも前の時点に入力された以前の駆動信号(例えば、前々フレームの映像データ)に応じた値を決定する決定工程と、上記第1の時点から、当該第1の時点に続く第2の時点への階調遷移を強調するように、上記決定された値に基づいて、上記第2の時点に入力される第2の駆動信号(例えば、現フレームの映像データ)を変調して、画素へ供給するための、補正された第2の駆動信号を生成する変調工程とを含んでいることを特徴としている。
なお、上記以前、第1および第2の駆動信号から、1または複数のフレームの映像データが構成される場合は、上記変調工程は、上記補正された第2の映像信号を得るための上記補正された第1の駆動信号に基づいて、上記画素の、上記第1の駆動信号の示す前フレームから、上記第2の駆動信号によって示される現フレームへの階調遷移を強調するように、上記第2の駆動信号の示す映像データを補正する工程を含んでいてもよい。
上記構成では、変調工程において、第1の時点(前回)から第2の時点(今回)への階調遷移を強調するように第2の駆動信号を変調する際、上記決定工程にて決定された値に基づいて変調するので、前々回から前回への階調遷移が予め定められた階調遷移の場合に、決定工程での補正(変調)がない場合よりも補正量を抑えることができる。
この結果、例えば、前々回から今回への階調遷移が、ディケイ→ライズの場合あるいはライズ→ディケイの場合のように、変調工程にて通常と同様の補正が行われると、以下の現象、すなわち、前々回から前回への階調遷移における画素の応答不足と、変調工程での階調遷移強調との相乗効果によって、今回の画素の階調が第2の駆動信号の示す階調と大きく異なり、白光りや黒沈みが発生するという現象が発生する場合であっても、変調工程での補正量を抑えることによって、当該現象の発生を抑制でき、表示装置の表示品質を向上できる。
一方、上記決定工程では、以前および第1の駆動信号(補正前のデータ)に基づいて、上記決定された値が決定され、上記変調工程では、当該決定された値に基づいて、第2の駆動信号(補正前のデータ)を変調するので、補正前のデータ(駆動信号)を記憶すれば、上記各工程を実施できる。したがって、補正後の駆動信号を記憶する構成とは異なり、変調工程での補正に起因する誤差が重畳、累積されることがない。したがって、比較的回路規模が小さく、補正のための演算の精度が低い回路によって、上記各工程を実施したとしても、画素の階調制御が発散したり、振動したりすることがない。これらの結果、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
なお、上記決定された値は、常時、補正された第1の駆動信号であってもよいが、入力される駆動信号などの条件によって、補正の要否が変化する場合は、補正された第1の駆動信号と、補正されない第1の駆動信号との一方であってもよい。また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号に関連する前回の映像データを、上記以前の駆動信号に関連する前々回の映像データと共に格納する工程を含む場合は、上記決定工程では、当該格納された前々回および前回の映像データに基づいて、上記以前の駆動信号に応じた値を決定すればよい。さらに、当該構成に加えて、上記決定された値は、補正された第1の駆動信号および補正されない第1の駆動信号の一方であり、上記決定工程は、予め定められた前々回および前回の映像データの組み合わせに応じて、上記決定された値を生成してもよい。この場合は、さらに、当該構成に加えて、上記決定工程は、上記予め定められた組み合わせの場合は、上記補正された第1の駆動信号を得るために、上記第1の駆動信号によって示される上記前回の映像データを補正する工程と、前々回および前回の映像データの組み合わせが予め定められた組み合わせではない場合は、上記第1の駆動信号を補正せずに出力する工程とを含んでいてもよい。
一方、上記構成に加えて、上記以前、第1および第2の駆動信号から、1または複数のフレームの映像データが構成されており、上記決定工程は、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データを補正するために、上記以前の駆動信号によって示される前々回の映像データから、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データへの階調遷移によって画素が到達する階調レベルを予測する工程を含んでいてもよい。当該構成では、前回の映像データを予測した階調レベルへ補正して決定された値にすることができるので、白光りや黒沈みの発生を抑制でき、表示品質を向上できる。
さらに、上記構成に加えて、上記予め定められた組み合わせは、上記補正された第1の駆動信号に与えるべき補正量に対応しており、上記決定工程は、映像の種類および温度の少なくとも一方に基づいて、当該補正量を変更する調整工程を含んでいてもよい。
当該構成では、映像の種類および温度の少なくとも一方に基づいて、補正量を変更するので、上記決定された値を、映像の種類および温度に応じて変更でき、表示品質をさらに向上できる。
また、上記構成に加えて、上記映像の種類および温度の少なくとも一方が、予め定められた、しきいとなる条件を満たしている場合、上記調整工程の実施を停止させてもよい。
ここで、前々回から今回への階調遷移が、ディケイ→ライズの場合またはライズ→ディケイの場合に、上記決定工程において、変調工程における前回から今回への階調遷移を強調する程度が弱められるように、前回の映像データを前々回の映像データに補正すると、以下のようになる虞れがある。すなわち、画素の温度が高い場合や、映像の種類が動きの遅い映像の場合のように、映像の種類および温度の少なくとも一方が予め定める条件を満たしており、前回の映像データを補正しなくても、白光りや黒沈みが発生しないと見込まれる場合であるにも拘わらず、前回の映像データを補正すると、応答速度が不所望に低下する虞れがある。
これに対して、上記構成では、映像の種類および温度の少なくとも一方が予め定める条件を満たしている場合、上記決定工程による補正を停止する。したがって、白光りや黒沈みが発生しないと見込まれる場合の応答速度低下を防止できる。なお、上記条件を満たしていない場合は、前回の映像データが補正されるので、何ら支障なく白光りや黒沈みの発生を防止できる。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定工程は、前々回の階調レベルから前回への階調レベルへの階調遷移の際に、前々回および前回の映像データに基づいて決定された階調レベルが、前々回の階調レベルから落ちる場合、上記画素が上記階調遷移により到達すると予測された階調レベルよりも高い階調レベルを示すように、上記前回の映像データを補正する工程を含んでいてもよい。
ここで、上記第決定工程では、前々回から前回への階調遷移によって、当該階調遷移により画素が到達したと予測される階調となるように、前回の映像データを補正してもよいが、この場合は、到達階調を十分な精度で予測できないと、予測値と実際の階調とのズレによって、白光りや黒沈みが発生する虞れがある。
これに対して、上記構成では、前々回から前回への階調遷移が階調を低下させる階調遷移の場合、予測される到達階調よりも大きな階調を示すように、前回の映像データが補正されるので、予測値と実際の階調との間にズレが発生しても、白光りの発生を防止できる。このように、白光りと黒沈みとのうち、表示品質の低下を招きやすい白光りの発生を防止することによって、予測値と実際の階調との間にズレが発生しても、表示品質の低下を抑えることができる。
ところで、上記各工程の実施のために記憶される映像データは、今回の映像データと同じビット幅であってもよいが、回路規模の縮小が特に求められる場合には、上記構成に加えて、上記前々回の映像データおよび前回の映像データは、予め定められた組み合わせのビット幅を持っており、当該ビット幅は、上記第2の駆動信号のための今回の映像データのビット幅の2倍よりも小さく設定されており、上記前々回の映像データのビット幅は、前回の映像データのビット幅と同じか狭く設定されており、上記格納する工程では、上記前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅が上記予め定められた値になるように、上記前々回の映像データおよび前回の映像データを制限されたビット幅で記憶してもよい。当該構成では、両映像データを記憶する際のビット幅が両映像データをそのまま記憶する場合よりも制限されているので、全てを記憶する場合よりも回路規模を縮小できる。
一方、本発明に係るコンピュータプログラム製品は、上記課題を解決するために、コンピュータプログラム製品を処理するプロセッサに表示装置を駆動させるためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、上記コンピュータプログラムは、第1の時点に入力された第1の駆動信号、および、上記第1の時点よりも前の時点に入力された以前の駆動信号に応じた値を決定する決定工程と、上記第1の時点から、当該第1の時点に続く第2の時点への階調遷移を強調するように、上記決定された値に基づいて、上記第2の時点に入力される第2の駆動信号を変調して、画素へ供給するための、補正された第2の駆動信号を生成する変調工程とを、上記プロセッサに実行させるコンピュータプログラムであることを特徴としている。また、本発明に係るプログラムは、上記各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。さらに、本発明に係る記録媒体には、上記プログラムが記録されている。
当該プログラムがコンピュータまたはプロセッサにより実行されると、当該コンピュータまたはプロセッサは、上記各工程を実行する。したがって、上記表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
また、本発明に係る表示装置は、上記課題を解決するために、第1の時点に入力する第1の駆動信号、および、上記第1の時点よりも前の時点に入力する以前の駆動信号に応じた値を決定する決定手段と、上記第1の時点から、当該第1の時点に続く第2の時点への階調遷移を強調するために、上記決定手段からの決定結果に基づいて、上記第2の時点に入力される第2の駆動信号を変調して、画素へ供給するために補正された第2の駆動信号を生成する変調手段とを含んでいることを特徴としている。
当該表示装置の決定手段は、上述の決定工程を実行でき、上記表示装置の変調手段は、上述の変調工程を実施できる。したがって、上記表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
さらに、上記構成に加えて、上記決定された値は、補正された第1の駆動信号および補正されない第1の駆動信号の一方であってもよい。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号に関連する前回の映像データを、上記以前の駆動信号に関連する前々回の映像データと共に格納する記憶手段を含み、上記決定手段は、当該格納された前々回および前回の映像データに基づいて、上記以前の駆動信号に応じた値を決定してもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記以前、第1および第2の駆動信号から、1または複数のフレームの映像データが構成されており、上記決定手段は、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データを補正するために、上記以前の駆動信号によって示される前々回の映像データから、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データへの階調遷移によって画素が到達する階調レベルを予測してもよい。
また、上記構成に加えて、上記変調手段は、上記補正された第2の映像信号を得るための上記補正された第1の駆動信号に基づいて、上記画素の、上記第1の駆動信号の示す前フレームから、上記第2の駆動信号によって示される現フレームへの階調遷移を強調するように、上記第2の駆動信号の示す映像データを補正してもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記決定された値は、補正された第1の駆動信号および補正されない第1の駆動信号の一方であり、上記決定手段は、予め定められた前々回および前回の映像データの組み合わせに応じて、上記決定された値を生成してもよい。
また、上記構成に加えて、上記決定手段は、上記予め定められた組み合わせの場合は、上記補正された第1の駆動信号を得るために、上記第1の駆動信号によって示される上記前回の映像データを補正し、そうでない場合は、上記第1の駆動信号を補正せずに出力してもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記予め定められた組み合わせは、上記補正された第1の駆動信号に与えるべき補正量に対応しており、上記決定手段は、映像の種類および温度の少なくとも一方に基づいて、当該補正量を変更してもよい。
また、上記構成に加えて、上記決定手段は、上記映像の種類および温度の少なくとも一方が、予め定められた、しきいとなる条件を満たしている場合、上記補正量の変更をやめてもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記前々回の映像データおよび前回の映像データは、予め定められた組み合わせのビット幅を持っており、当該ビット幅は、上記第2の駆動信号のための今回の映像データのビット幅の2倍よりも小さく設定されており、上記前々回の映像データのビット幅は、前回の映像データのビット幅と同じか狭く設定されており、上記記憶手段には、上記前々回の映像データおよび前回の映像データが、それらのビット幅が、上記予め定められた値になるように制限されたビット幅で記憶されていてもよい。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、前々回および前回の映像データに基づいて決定された階調レベルが、前々回の階調レベルから前回への階調レベルへの階調遷移の際に、前々回の階調レベルから落ちる場合、上記画素が上記階調遷移により到達すると予測された階調レベルよりも高い階調レベルを示すように、上記前回の映像データを補正してもよい。
これらの各表示装置は、それぞれに対応する表示装置の駆動方法を実行できるので、上述した表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、前々回および前回の映像データの各組み合わせに対応して、補正後の前回の映像データの階調が記憶されたルックアップテーブルを備えており、上記ルックアップテーブルに記述された前回の映像データの階調のビット幅が、上記前々回および前回の映像データの階調のビット幅のうちの短い方に設定されていてもよい。
当該構成では、上記ルックアップテーブルに記述された前回の映像データのビット幅は、前々回および前回の映像データを用いた演算の有効数字と同じビット幅、すなわち、短い方のビット幅に設定されている。したがって、演算精度を落とさない範囲で、ルックアップテーブルに必要な記憶容量を最も削減できる。
また、上記構成に加えて、上記ルックアップテーブルは、前々回および前回の映像データの各組み合わせのうち、予め定められた組み合わせの、補正後の前回の映像データの階調を記憶しており、上記決定手段は、上記ルックアップテーブルに記憶された補正後の前回の映像データの階調を補間して、前々回および前回の映像データの組み合わせに対応する補正後の前回の映像データの階調を算出する制御手段を備えていてもよい。
当該構成によれば、制御手段が補間して補正後の前回の映像データの階調を算出するので、全ての組み合わせに対応する補正後の前回の映像データの階調をルックアップテーブルに記憶しておく構成よりも、ルックアップテーブルに記憶すべきデータ量を削減できる。したがって、全てを記憶する構成よりも簡単な回路構成によって、上記決定手段の補正の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を抑制できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、前々回および前回の映像データの各組み合わせのうち、予め定められた組み合わせに対しては補正後の前回の映像データの階調が記憶され、それ以外の組み合わせに対しては前回の映像データが到達すべき階調自体が記憶されたルックアップテーブルを備えていてもよい。
当該構成では、当該組み合わせが上記予め定められた組み合わせ以外の場合は、上記ルックアップテーブルには前回の映像データが到達すべき階調自体が記憶されている。このため、当該ルックアップテーブルを参照して、前回の映像データを補正することによって、上記予め定められた組み合わせ以外の場合は、前回の映像データの補正を停止することができる。この結果、上記組み合わせか否かを判定するためのテーブルを別途設ける場合よりも簡単な回路構成によって、上記決定手段の補正の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を抑制できる。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、予め定められた温度範囲毎に設けられ、前々回および前回の映像データの各組み合わせに対応して、補正後の前回の映像データの階調が記憶されたルックアップテーブルと、当該ルックアップテーブルの中から、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを選択する制御手段とを備え、当該制御手段は、温度に応じて、上記選択するルックアップテーブルを切り換えてもよい。
当該構成では、制御手段が、温度に応じて、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを切り換える。このため、温度に拘わらず、白光りや黒沈みの発生を的確に抑制でき、表示装置の表示品質を高いレベルに維持し続けることができる。また、温度範囲毎にルックアップテーブルが設けられているので、温度による補正処理の変化が簡単な数式で記述できない場合であっても、簡単な回路によって補正処理を変更できる。
さらに、上記構成に加えて、上記制御手段は、上記映像データの種類に応じて、上記選択するルックアップテーブルを切り換えてもよい。ここで、補正後の前回の映像データの階調の値と、前回の映像データが到達すべき階調の値とが異なる場合、両者の差の適切な値は、映像の種類によっても異なる。上記構成では、制御手段は、映像データの種類に応じて、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを切り換える。これにより、例えば、動きの早い映像と動きの遅い映像となど、いずれの種類の映像が入力される場合であっても、応答速度低下が目立たない範囲で、白光りの発生を抑制できる。
また、上記構成に加えて、上記記憶手段に記憶する前回および前々回の映像データのビット幅の合計が、予め定められたビット幅に制限されており、上記制御手段は、上記記憶手段に記憶する前回の映像データのビット幅と、前々回の映像データのビット幅とを、画素の温度に応じて変更してもよい。
ここで、画素が液晶素子の場合、画素の応答速度は、温度に応じて変化する。また、前々回から前回への階調遷移によって画素が到達する階調は、画素の応答速度が遅くなるに従って、前々回の映像データの影響を受けやすくなる。このため、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の最適な割り当ても変化する。
上記構成によれば、温度変化に拘わらず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができる。このため、前回の映像データをより高精度に補正でき、白光りや黒沈みの発生をより的確に抑制できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記記憶手段に記憶する前回および前々回の映像データのビット幅の合計が、予め定められたビット幅に制限されており、上記記憶手段に記憶する前回の映像データのビット幅と、前々回の映像データのビット幅とを、上記映像データの種類に応じて変更してもよい。
ここで、前々回から前回への階調遷移によって、画素が到達する階調は、動きの早い映像が入力される場合の方が、前々回の映像データの影響を受けやすい。したがって、映像の種類が変化して、期待される動きの早さが変化すると、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の最適な割り当ても変化する。
上記構成によれば、映像の種類に応じて、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の割り当てを変更する。このため、映像の種類に拘わらず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができる。したがって、前回の映像データを、より高精度に補正でき、白光りや黒沈みの発生を、より的確に抑制できる。
また、上記構成に加えて、上記第2の駆動信号に含まれる今回の映像データは、3原色のそれぞれについて8ビット幅であり、上記記憶手段は、上記3原色のそれぞれについて、前々回の映像データのビット幅と前回の映像データのビット幅との合計が10ビットになるように、前々回および前回の映像データのうち、少なくとも前々回の映像データのビット幅を制限して記憶してもよい。
当該構成では、3原色の映像データのビット幅の合計が30(3×10)ビットなので、汎用のメモリ(データビットの幅が2n に設定されているメモリ)を使用する場合、前回の映像データ(3原色分)をそのまま記憶する場合と同じ記憶容量のメモリによって記憶手段を実現できる。
さらに、上記構成に加えて、上記画素は、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子であってもよい。ここで、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子を画素とする場合、ディケイの階調遷移に対する応答速度がライズの場合に比べて遅く、階調遷移を強調するように変調して駆動したとしても、前々回から前回へのディケイの階調遷移において、実際の階調遷移と、所望の階調遷移とに差が発生しやすい。したがって、ディケイ→ライズの階調遷移が発生すると、白光りが発生し、ユーザに視認されやすくなる。これに対して、上記構成では、第2補正手段によって、白光りの発生が抑制されている。したがって、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子を画素としているにも拘わらず、白光りの発生を抑制でき、表示装置の表示品質を向上できる。
本発明の別の観点に係る表示装置の駆動方法は、上記課題を解決するために、第1の時点に入力された第1の駆動信号(例えば、前フレームの映像データ)、および、上記第1の時点よりも前の時点に入力された以前の駆動信号(例えば、前々フレームの映像データ)に応じた値を決定する決定工程と、上記第1の時点から、当該第1の時点に続く第2の時点への階調遷移を強調するように、上記決定された値に基づいて、上記第2の時点に入力される第2の駆動信号(例えば、現フレームの映像データ)を変調して、画素へ供給するための、補正された第2の駆動信号を生成する変調工程とを含んでいることを特徴としている。
なお、上記以前、第1および第2の駆動信号から、1または複数のフレームの映像データが構成される場合は、上記変調工程は、上記補正された第2の映像信号を得るための上記補正された第1の駆動信号に基づいて、上記画素の、上記第1の駆動信号の示す前フレームから、上記第2の駆動信号によって示される現フレームへの階調遷移を強調するように、上記第2の駆動信号の示す映像データを補正する工程を含んでいてもよい。
上記構成では、変調工程において、第1の時点(前回)から第2の時点(今回)への階調遷移を強調するように第2の駆動信号を変調する際、上記決定工程にて決定された値に基づいて変調するので、前々回から前回への階調遷移が予め定められた階調遷移の場合に、決定工程での補正(変調)がない場合よりも補正量を抑えることができる。
この結果、例えば、前々回から今回への階調遷移が、ディケイ→ライズの場合あるいはライズ→ディケイの場合のように、変調工程にて通常と同様の補正が行われると、以下の現象、すなわち、前々回から前回への階調遷移における画素の応答不足と、変調工程での階調遷移強調との相乗効果によって、今回の画素の階調が第2の駆動信号の示す階調と大きく異なり、白光りや黒沈みが発生するという現象が発生する場合であっても、変調工程での補正量を抑えることによって、当該現象の発生を抑制でき、表示装置の表示品質を向上できる。
一方、上記決定工程では、以前および第1の駆動信号(補正前のデータ)に基づいて、上記決定された値が決定され、上記変調工程では、当該決定された値に基づいて、第2の駆動信号(補正前のデータ)を変調するので、補正前のデータ(駆動信号)を記憶すれば、上記各工程を実施できる。したがって、補正後の駆動信号を記憶する構成とは異なり、変調工程での補正に起因する誤差が重畳、累積されることがない。したがって、比較的回路規模が小さく、補正のための演算の精度が低い回路によって、上記各工程を実施したとしても、画素の階調制御が発散したり、振動したりすることがない。これらの結果、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
なお、上記決定された値は、常時、補正された第1の駆動信号であってもよいが、入力される駆動信号などの条件によって、補正の要否が変化する場合は、補正された第1の駆動信号と、補正されない第1の駆動信号との一方であってもよい。また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号に関連する前回の映像データを、上記以前の駆動信号に関連する前々回の映像データと共に格納する工程を含む場合は、上記決定工程では、当該格納された前々回および前回の映像データに基づいて、上記以前の駆動信号に応じた値を決定すればよい。さらに、当該構成に加えて、上記決定された値は、補正された第1の駆動信号および補正されない第1の駆動信号の一方であり、上記決定工程は、予め定められた前々回および前回の映像データの組み合わせに応じて、上記決定された値を生成してもよい。この場合は、さらに、当該構成に加えて、上記決定工程は、上記予め定められた組み合わせの場合は、上記補正された第1の駆動信号を得るために、上記第1の駆動信号によって示される上記前回の映像データを補正する工程と、前々回および前回の映像データの組み合わせが予め定められた組み合わせではない場合は、上記第1の駆動信号を補正せずに出力する工程とを含んでいてもよい。
一方、上記構成に加えて、上記以前、第1および第2の駆動信号から、1または複数のフレームの映像データが構成されており、上記決定工程は、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データを補正するために、上記以前の駆動信号によって示される前々回の映像データから、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データへの階調遷移によって画素が到達する階調レベルを予測する工程を含んでいてもよい。当該構成では、前回の映像データを予測した階調レベルへ補正して決定された値にすることができるので、白光りや黒沈みの発生を抑制でき、表示品質を向上できる。
さらに、上記構成に加えて、上記予め定められた組み合わせは、上記補正された第1の駆動信号に与えるべき補正量に対応しており、上記決定工程は、映像の種類および温度の少なくとも一方に基づいて、当該補正量を変更する調整工程を含んでいてもよい。
当該構成では、映像の種類および温度の少なくとも一方に基づいて、補正量を変更するので、上記決定された値を、映像の種類および温度に応じて変更でき、表示品質をさらに向上できる。
また、上記構成に加えて、上記映像の種類および温度の少なくとも一方が、予め定められた、しきいとなる条件を満たしている場合、上記調整工程の実施を停止させてもよい。
ここで、前々回から今回への階調遷移が、ディケイ→ライズの場合またはライズ→ディケイの場合に、上記決定工程において、変調工程における前回から今回への階調遷移を強調する程度が弱められるように、前回の映像データを前々回の映像データに補正すると、以下のようになる虞れがある。すなわち、画素の温度が高い場合や、映像の種類が動きの遅い映像の場合のように、映像の種類および温度の少なくとも一方が予め定める条件を満たしており、前回の映像データを補正しなくても、白光りや黒沈みが発生しないと見込まれる場合であるにも拘わらず、前回の映像データを補正すると、応答速度が不所望に低下する虞れがある。
これに対して、上記構成では、映像の種類および温度の少なくとも一方が予め定める条件を満たしている場合、上記決定工程による補正を停止する。したがって、白光りや黒沈みが発生しないと見込まれる場合の応答速度低下を防止できる。なお、上記条件を満たしていない場合は、前回の映像データが補正されるので、何ら支障なく白光りや黒沈みの発生を防止できる。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定工程は、前々回の階調レベルから前回への階調レベルへの階調遷移の際に、前々回および前回の映像データに基づいて決定された階調レベルが、前々回の階調レベルから落ちる場合、上記画素が上記階調遷移により到達すると予測された階調レベルよりも高い階調レベルを示すように、上記前回の映像データを補正する工程を含んでいてもよい。
ここで、上記第決定工程では、前々回から前回への階調遷移によって、当該階調遷移により画素が到達したと予測される階調となるように、前回の映像データを補正してもよいが、この場合は、到達階調を十分な精度で予測できないと、予測値と実際の階調とのズレによって、白光りや黒沈みが発生する虞れがある。
これに対して、上記構成では、前々回から前回への階調遷移が階調を低下させる階調遷移の場合、予測される到達階調よりも大きな階調を示すように、前回の映像データが補正されるので、予測値と実際の階調との間にズレが発生しても、白光りの発生を防止できる。このように、白光りと黒沈みとのうち、表示品質の低下を招きやすい白光りの発生を防止することによって、予測値と実際の階調との間にズレが発生しても、表示品質の低下を抑えることができる。
ところで、上記各工程の実施のために記憶される映像データは、今回の映像データと同じビット幅であってもよいが、回路規模の縮小が特に求められる場合には、上記構成に加えて、上記前々回の映像データおよび前回の映像データは、予め定められた組み合わせのビット幅を持っており、当該ビット幅は、上記第2の駆動信号のための今回の映像データのビット幅の2倍よりも小さく設定されており、上記前々回の映像データのビット幅は、前回の映像データのビット幅と同じか狭く設定されており、上記格納する工程では、上記前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅が上記予め定められた値になるように、上記前々回の映像データおよび前回の映像データを制限されたビット幅で記憶してもよい。当該構成では、両映像データを記憶する際のビット幅が両映像データをそのまま記憶する場合よりも制限されているので、全てを記憶する場合よりも回路規模を縮小できる。
一方、本発明の別の観点に係るコンピュータプログラム製品は、上記課題を解決するために、コンピュータプログラム製品を処理するプロセッサに表示装置を駆動させるためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、上記コンピュータプログラムは、第1の時点に入力された第1の駆動信号、および、上記第1の時点よりも前の時点に入力された以前の駆動信号に応じた値を決定する決定工程と、上記第1の時点から、当該第1の時点に続く第2の時点への階調遷移を強調するように、上記決定された値に基づいて、上記第2の時点に入力される第2の駆動信号を変調して、画素へ供給するための、補正された第2の駆動信号を生成する変調工程とを、上記プロセッサに実行させるコンピュータプログラムであることを特徴としている。また、本発明に係るプログラムは、上記各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。さらに、本発明に係る記録媒体には、上記プログラムが記録されている。
当該プログラムがコンピュータまたはプロセッサにより実行されると、当該コンピュータまたはプロセッサは、上記各工程を実行する。したがって、上記表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
また、本発明の別の観点に係る表示装置は、上記課題を解決するために、第1の時点に入力する第1の駆動信号、および、上記第1の時点よりも前の時点に入力する以前の駆動信号に応じた値を決定する決定手段と、上記第1の時点から、当該第1の時点に続く第2の時点への階調遷移を強調するために、上記決定手段からの決定結果に基づいて、上記第2の時点に入力される第2の駆動信号を変調して、画素へ供給するために補正された第2の駆動信号を生成する変調手段とを含んでいることを特徴としている。
当該表示装置の決定手段は、上述の決定工程を実行でき、上記表示装置の変調手段は、上述の変調工程を実施できる。したがって、上記表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
さらに、上記構成に加えて、上記決定された値は、補正された第1の駆動信号および補正されない第1の駆動信号の一方であってもよい。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号に関連する前回の映像データを、上記以前の駆動信号に関連する前々回の映像データと共に格納する記憶手段を含み、上記決定手段は、当該格納された前々回および前回の映像データに基づいて、上記以前の駆動信号に応じた値を決定してもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記以前、第1および第2の駆動信号から、1または複数のフレームの映像データが構成されており、上記決定手段は、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データを補正するために、上記以前の駆動信号によって示される前々回の映像データから、上記第1の駆動信号によって示される前回の映像データへの階調遷移によって画素が到達する階調レベルを予測してもよい。
また、上記構成に加えて、上記変調手段は、上記補正された第2の映像信号を得るための上記補正された第1の駆動信号に基づいて、上記画素の、上記第1の駆動信号の示す前フレームから、上記第2の駆動信号によって示される現フレームへの階調遷移を強調するように、上記第2の駆動信号の示す映像データを補正してもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記決定された値は、補正された第1の駆動信号および補正されない第1の駆動信号の一方であり、上記決定手段は、予め定められた前々回および前回の映像データの組み合わせに応じて、上記決定された値を生成してもよい。
また、上記構成に加えて、上記決定手段は、上記予め定められた組み合わせの場合は、上記補正された第1の駆動信号を得るために、上記第1の駆動信号によって示される上記前回の映像データを補正し、そうでない場合は、上記第1の駆動信号を補正せずに出力してもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記予め定められた組み合わせは、上記補正された第1の駆動信号に与えるべき補正量に対応しており、上記決定手段は、映像の種類および温度の少なくとも一方に基づいて、当該補正量を変更してもよい。
また、上記構成に加えて、上記決定手段は、上記映像の種類および温度の少なくとも一方が、予め定められた、しきいとなる条件を満たしている場合、上記補正量の変更をやめてもよい。
さらに、上記構成に加えて、上記前々回の映像データおよび前回の映像データは、予め定められた組み合わせのビット幅を持っており、当該ビット幅は、上記第2の駆動信号のための今回の映像データのビット幅の2倍よりも小さく設定されており、上記前々回の映像データのビット幅は、前回の映像データのビット幅と同じか狭く設定されており、上記記憶手段には、上記前々回の映像データおよび前回の映像データが、それらのビット幅が、上記予め定められた値になるように制限されたビット幅で記憶されていてもよい。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、前々回および前回の映像データに基づいて決定された階調レベルが、前々回の階調レベルから前回への階調レベルへの階調遷移の際に、前々回の階調レベルから落ちる場合、上記画素が上記階調遷移により到達すると予測された階調レベルよりも高い階調レベルを示すように、上記前回の映像データを補正してもよい。
これらの各表示装置は、それぞれに対応する表示装置の駆動方法を実行できるので、上述した表示装置の駆動方法と同様に、比較的小さな回路規模で、表示品質のよい表示装置を実現できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、前々回および前回の映像データの各組み合わせに対応して、補正後の前回の映像データの階調が記憶されたルックアップテーブルを備えており、上記ルックアップテーブルに記述された前回の映像データの階調のビット幅が、上記前々回および前回の映像データの階調のビット幅のうちの短い方に設定されていてもよい。
当該構成では、上記ルックアップテーブルに記述された前回の映像データのビット幅は、前々回および前回の映像データを用いた演算の有効数字と同じビット幅、すなわち、短い方のビット幅に設定されている。したがって、演算精度を落とさない範囲で、ルックアップテーブルに必要な記憶容量を最も削減できる。
また、上記構成に加えて、上記ルックアップテーブルは、前々回および前回の映像データの各組み合わせのうち、予め定められた組み合わせの、補正後の前回の映像データの階調を記憶しており、上記決定手段は、上記ルックアップテーブルに記憶された補正後の前回の映像データの階調を補間して、前々回および前回の映像データの組み合わせに対応する補正後の前回の映像データの階調を算出する制御手段を備えていてもよい。
当該構成によれば、制御手段が補間して補正後の前回の映像データの階調を算出するので、全ての組み合わせに対応する補正後の前回の映像データの階調をルックアップテーブルに記憶しておく構成よりも、ルックアップテーブルに記憶すべきデータ量を削減できる。したがって、全てを記憶する構成よりも簡単な回路構成によって、上記決定手段の補正の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を抑制できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、前々回および前回の映像データの各組み合わせのうち、予め定められた組み合わせに対しては補正後の前回の映像データの階調が記憶され、それ以外の組み合わせに対しては前回の映像データが到達すべき階調自体が記憶されたルックアップテーブルを備えていてもよい。
当該構成では、当該組み合わせが上記予め定められた組み合わせ以外の場合は、上記ルックアップテーブルには前回の映像データが到達すべき階調自体が記憶されている。このため、当該ルックアップテーブルを参照して、前回の映像データを補正することによって、上記予め定められた組み合わせ以外の場合は、前回の映像データの補正を停止することができる。この結果、上記組み合わせか否かを判定するためのテーブルを別途設ける場合よりも簡単な回路構成によって、上記決定手段の補正の誤差に起因する表示品質の低下を抑制しながら、白光りや黒沈みの発生を抑制できる。
また、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記決定手段は、予め定められた温度範囲毎に設けられ、前々回および前回の映像データの各組み合わせに対応して、補正後の前回の映像データの階調が記憶されたルックアップテーブルと、当該ルックアップテーブルの中から、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを選択する制御手段とを備え、当該制御手段は、温度に応じて、上記選択するルックアップテーブルを切り換えてもよい。
当該構成では、制御手段が、温度に応じて、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを切り換える。このため、温度に拘わらず、白光りや黒沈みの発生を的確に抑制でき、表示装置の表示品質を高いレベルに維持し続けることができる。また、温度範囲毎にルックアップテーブルが設けられているので、温度による補正処理の変化が簡単な数式で記述できない場合であっても、簡単な回路によって補正処理を変更できる。
さらに、上記構成に加えて、上記制御手段は、上記映像データの種類に応じて、上記選択するルックアップテーブルを切り換えてもよい。ここで、補正後の前回の映像データの階調の値と、前回の映像データが到達すべき階調の値とが異なる場合、両者の差の適切な値は、映像の種類によっても異なる。上記構成では、制御手段は、映像データの種類に応じて、前回の映像データの補正に使用するルックアップテーブルを切り換える。これにより、例えば、動きの早い映像と動きの遅い映像となど、いずれの種類の映像が入力される場合であっても、応答速度低下が目立たない範囲で、白光りの発生を抑制できる。
また、上記構成に加えて、上記記憶手段に記憶する前回および前々回の映像データのビット幅の合計が、予め定められたビット幅に制限されており、上記制御手段は、上記記憶手段に記憶する前回の映像データのビット幅と、前々回の映像データのビット幅とを、画素の温度に応じて変更してもよい。
ここで、画素が液晶素子の場合、画素の応答速度は、温度に応じて変化する。また、前々回から前回への階調遷移によって画素が到達する階調は、画素の応答速度が遅くなるに従って、前々回の映像データの影響を受けやすくなる。このため、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の最適な割り当ても変化する。
上記構成によれば、温度変化に拘わらず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができる。このため、前回の映像データをより高精度に補正でき、白光りや黒沈みの発生をより的確に抑制できる。
さらに、上記構成に加えて、上記第1の駆動信号は、前回の映像データを含み、上記以前の駆動信号は、前々回の映像データを含んでいると共に、上記記憶手段に記憶する前回および前々回の映像データのビット幅の合計が、予め定められたビット幅に制限されており、上記記憶手段に記憶する前回の映像データのビット幅と、前々回の映像データのビット幅とを、上記映像データの種類に応じて変更してもよい。
ここで、前々回から前回への階調遷移によって、画素が到達する階調は、動きの早い映像が入力される場合の方が、前々回の映像データの影響を受けやすい。したがって、映像の種類が変化して、期待される動きの早さが変化すると、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の最適な割り当ても変化する。
上記構成によれば、映像の種類に応じて、上記記憶手段に記憶する前々回の映像データおよび前回の映像データのビット幅の割り当てを変更する。このため、映像の種類に拘わらず、それぞれのビット幅の割り当てを適切な状態に保つことができる。したがって、前回の映像データを、より高精度に補正でき、白光りや黒沈みの発生を、より的確に抑制できる。
また、上記構成に加えて、上記第2の駆動信号に含まれる今回の映像データは、3原色のそれぞれについて8ビット幅であり、上記記憶手段は、上記3原色のそれぞれについて、前々回の映像データのビット幅と前回の映像データのビット幅との合計が10ビットになるように、前々回および前回の映像データのうち、少なくとも前々回の映像データのビット幅を制限して記憶してもよい。
当該構成では、3原色の映像データのビット幅の合計が30(3×10)ビットなので、汎用のメモリ(データビットの幅が2
n
に設定されているメモリ)を使用する場合、前回の映像データ(3原色分)をそのまま記憶する場合と同じ記憶容量のメモリによって記憶手段を実現できる。
さらに、上記構成に加えて、上記画素は、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子であってもよい。ここで、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子を画素とする場合、ディケイの階調遷移に対する応答速度がライズの場合に比べて遅く、階調遷移を強調するように変調して駆動したとしても、前々回から前回へのディケイの階調遷移において、実際の階調遷移と、所望の階調遷移とに差が発生しやすい。したがって、ディケイ→ライズの階調遷移が発生すると、白光りが発生し、ユーザに視認されやすくなる。これに対して、上記構成では、第2補正手段によって、白光りの発生が抑制されている。したがって、ノーマリブラックモードかつ垂直配向モードの液晶素子を画素としているにも拘わらず、白光りの発生を抑制でき、表示装置の表示品質を向上できる。