JP4601906B2 - 化合物、抗体、試薬キット、抗体の製造方法、および検体の検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は免疫学的アッセイに関し、さらに詳しくは、アンフェタミンの誘導体、特に「エクスタシー薬物」のための免疫学的アッセイに関する。
【0002】
【従来の技術】
「エクスタシー薬物」と一般に知られている不法合成麻薬類の使用および乱用は近年大きく増加した。メチレンジオキシ-フェニル縮合環系を持つことで特徴づけられるアンフェタミンの誘導体であるこれらの化合物としては:MDA(3,4-メチレンジオキシアンフェタミン);「エクスタシー(Ecstasy)」としても知られるMDMA(3,4-メチレンジオキシ-N-メチルアンフェタミン);「イブ(Eve)」としても知られるMDEA(3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン);BDB(3,4-メチレンジオキシフェニル-2-ブタンアミン);MBDB(3,4-メチレンジオキシフェニル-N-メチルブタンアミン);およびMDPA(3,4-メチレンジオキシ-N-プロピルアンフェタミン)が挙げられる。
【0003】
これまで、エクスタシー薬物の検出方法は、元々アンフェタミンおよび/またはメトアンフェタミンの検出用に開発された免疫学的アッセイが主に関係してきた。かかるアッセイによるエクスタシー薬物の検出は、エクスタシー薬物とアンフェタミンおよび/またはメトアンフェタミン抗体との間に偶然の一致で存在するかも知れない限られた交差反応性に依存する。そのようなアッセイにより得られた肯定的な結果はなお、どの特定の物質あるいはメチレンジオキシクラスの誘導体のメンバーがサンプル中に存在するかを示さない場合がある。
【0004】
一般に、アンフェタミンおよびメトアンフェタミン免疫学的アッセイはエクスタシー薬物に対し比較的鈍感で非特異的である。かかるアッセイはMDEA(「イブ」)誘導体に対して特に限られた認識を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、メチレンジオキシ(MD)クラスのエクスタシー薬物のメンバーを検出するために従来のアンフェタミンおよび/またはメトアンフェタミンの免疫学的アッセイを用いることに関する、これらおよび他の問題を改善することに向けられている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は本明細書の特許請求の範囲に記載の本発明により解決される。
【0007】
本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ明確にされるのであって、この「課題を解決するための手段」にある記述によっていささかも影響されるものでない。
【0008】
簡潔に述べると、本発明の特徴を具現する化合物は構造
【化4】
[ここで R1 は-J-M-Tであり;R2 は、水素、アルキル基、および保護基から構成される群から選択され;そしてR3 は置換されていてもよいアルキル基である。J は1〜15個の炭素原子および0〜6個のヘテロ原子を含む。M は、-O-、-CO-、-NR4-、-S-、-C(=NH)O-、-NH(CO)-、-NH(CO)NH-、-NH(CS)-、-NH(CS)NH-、-O(CO)NH-、-NH(C=NH-)-、およびマレイミドチオエーテルから構成される群から選択される(式中 R4 は水素およびアルキル基から構成される群から選択される)。
T は、水素、ヒドロキシル、脱離基、マクロ分子キャリヤー、および標識から構成される群から選択される。R2 が水素であり且つR3 がメチルである場合はR1 は、-CH2CN、-CH2C=CH2、-CHO、-CH2CH2OH、-CH2CH2OCH3、または-CH2CCHではない。]
を有する。
【0009】
本発明の特徴を具現する第1の抗体はエクスタシー薬物に特異的である。
【0010】
本発明の特徴を具現する第2の抗体は、構造
【化5】
[ここで R1 は-J-M-Tであり;R2 は、水素、アルキル基、および保護基から構成される群から選択され;そしてR3 は置換されていてもよいアルキル基である。J は1〜15個の炭素原子および0〜6個のヘテロ原子を含む。M は、-O-、-CO-、-NR4-、-S-、-C(=NH)O-、-NH(CO)-、-NH(CO)NH-、-NH(CS)-、-NH(CS)NH-、-O(CO)NH-、-NH(C=NH-)-、およびマレイミドチオエーテルから構成される群から選択される(式中 R4 は水素およびアルキル基から構成される群から選択される)。
T は、水素、ヒドロキシル、脱離基、マクロ分子キャリヤー、および標識から構成される群から選択される。]
を有する検体に特異的である。
【0011】
本発明の特徴を具現する試薬キットは上記したタイプの抗体を含む。
【0012】
本発明の特徴を具現する抗体の製造方法は、宿主に、構造
【化6】
[ここで R1 は-J-M-Tであり;R2 は、水素、アルキル基、および保護基から構成される群から選択され;そして R3 は置換されていてもよいアルキル基である。J は1〜15個の炭素原子および0〜6個のヘテロ原子を含む。M は、-O-、-CO-、-NR4-、-S-、-C(=NH)O-、-NH(CO)-、-NH(CO)NH-、-NH(CS)-、-NH(CS)NH-、-O(CO)NH-、-NH(C=NH-)-、およびマレイミドチオエーテルから構成される群から選択される(式中 R4 は水素およびアルキル基から構成される群から選択される)。
T はマクロ分子キャリヤーである。]
を含む免疫原を接種する段階を有する。
【0013】
本発明の特徴を具現する、サンプル中の検体を検出する方法は、サンプルをエクスタシー薬物に特異的である抗体と接触させる段階、抗体を検体と結合させる段階、および抗体および検体により生成された付加生成物を検出する段階、を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
MDクラスのアンフェタミン誘導体に特異的な抗体の製造に有用な化合物(例えば、ハプテン、中間体)および免疫原、MDクラスのアンフェタミン誘導体に特異的な抗体、MDクラスのアンフェタミン誘導体に特異的な抗体を含む試薬キット、MDクラスのアンフェタミン誘導体に特異的な抗体の製造方法、およびMDクラスのアンフェタミン誘導体のメンバー(即ち、エクスタシー薬物)を含む検体の検出方法、が発見された。以下に説明する。
【0015】
本発明の特許請求の範囲および発明の詳細な説明を通して、用語の定義は以下の通りとする:「免疫原」とは、生体に免疫反応を誘起させることができる物質を意味する。
【0016】
「コンジュゲート」とは、2つの部分が1つに結合することにより生成される物質を意味する。本発明の代表的なコンジュゲートとしては、小分子と大分子(例えばタンパク質)が1つに結合することにより生成されるコンジュゲートが挙げられる。「コンジュゲート」は「免疫原」を包含するものとする。
【0017】
「ハプテン」とは、典型的には分子量が低い免疫原の一部分を意味し、それ自身は抗体の産生を刺激しない。
【0018】
「活性ハプテン」とは、ハプテンをキャリヤー、免疫原、標識、トレーサー、あるいはその他の部分構造と結合するのに用いることができる、利用可能な反応部位(例えば、反応性部分構造を持つ結合基(linking group)の付加により)が備わっているハプテンを意味する。
【0019】
「結合基」(または「リンカー(linker)」)とは、ハプテンをマクロ分子キャリヤー、免疫原、標識、トレーサーまたはその他の部分構造と結合させるのに用いられる化学部分構造を意味する。結合基の使用は、その特定のハプテンおよびキャリヤーならびに所望の抗体の特異性に応じて、有利であるかまたは必要とされることもあるし、そうでないこともある。好適なリンカーとしては、直鎖、分枝鎖、飽和、または不飽和の炭素鎖が挙げられるが、これらにはその鎖内に1以上のヘテロ原子(即ち、炭素以外の原子、例えば、酸素、窒素、硫黄など)が組み込まれていてもよいし、あるいはその末端上でおよび/または末端で置換されていてもよい。
【0020】
「キャリヤー」および「マクロ分子キャリヤー」とは、ハプテンと結合して免疫原を生成することができる高分子量の物質を意味する。好適なマクロ分子キャリヤーとしては、異質として認識されそれによって宿主から免疫応答を誘起させるタンパク質、糖タンパク質、ポリマー、多糖類、ポリペプチド、および核酸、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
「ポリペプチド」とは、アミド結合を介する2つ以上のアミノ酸の結合により生成される化合物を意味する。代表的なポリペプチドとしては、α-アミノ酸のポリマーが挙げられるが、この場合各非末端アミノ酸残基のα-アミノ基が線状鎖中で隣接する残基のα-カルボキシル基に結合している。高分子量のポリペプチドは「タンパク質」とよばれる。
【0022】
「標識」とは、検体を検出するためにキャリヤー物質または分子に付けることができる識別用の目印を意味する。標識は、結合性または架橋性部分構造によりそのキャリヤー物質に直接または間接的につけることができる。好適な標識としては、酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼなど)、蛍光化合物(例えば、ローダミン、フルオレセインイソチオシアネートまたはFITC、他)、発光性化合物(例えば、ジオキセタン、ルシフェリンなど)、放射性同位元素(例えば、 125I)、タンパク質結合性パートナー(例えば、ビオチン)、ならびに同様なものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
「抗体」(略して「Ab」)とは、免疫原またはそれの一部分に結合することができる特定のタンパク質を意味する。抗体は、注射により宿主(例えば、動物またはヒト)に導入しておくこともできる免疫原に応答して産生される。一般名称「抗体」はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および抗体断片を包含する。
【0024】
「検体」とは、その存在または量が測定されるべき物質または物質の集団を意味する。本明細書で用いる場合、「検体」は、抗体に結合することができる化合物を意味する「抗原」を包含する。さらに、本明細書で用いる場合、「検体」とは、限定するものではないが、コンジュゲート、免疫原、薬物、薬物誘導体、ホルモン、タンパク質、ならびにこれらに類似のものを含めたあらゆる種類の化学物質を意味する。代表的なエクスタシー薬物検体としては、MDA、MDMA、MDEA、MDPA、BDB、MBDB、ならびにこれらに類似のものが挙げられる。
【0025】
「誘導体」とは、親化合物から1以上の化学反応により生成された化学化合物を意味する。
【0026】
「リガンド」とは、例えば競合免疫学的アッセイに用いることができるもののような、抗体に対する結合能に関し検体と同様にふるまう物質または物質の集団を意味する。代表的なリガンドとしては、薬物、薬物誘導体、これらの異性体、ホルモン、ポリピプチド、ヌクレオチド、およびこれらに類似のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
「検体を検出する」とは、通常は検体、そして特にはエクスタシー薬物を測定するための定量的、半定量的、または定性的な方法を意味する。例えば、単にサンプル中のエクスタシー薬物の存在の有無を検出する方法も、そのサンプル中の薬物の量または濃度に関するデータを提供する方法と同様に、本発明の範囲に入る。「検出する」、「測定する」、「識別する」、ならびにこれらに類似のものは、本明細書中では同意語として用いられ、すべて本発明の範囲に入る。
【0028】
「試薬キット」とは、アッセイを行うのに用いられる材料のアセンブリーを意味する。試薬は、その交差反応性および安定性に応じて同一の容器または別々の容器に、また液体または凍結乾燥形態で、パックされた組み合わせとして提供され得る。キットに提供されている試薬の量および割合は、特定の用途に対し至適な結果を与えるように選択できる。本発明の特徴を具現する試薬キットはエクスタシー薬物に特異的な抗体を含んでいる。キットはさらに検体のリガンド、ならびに検量および対照材料を含みうる。本試薬は液体形態のままでもよいしあるいは凍結乾燥してもよい。
【0029】
「検量および対照材料」とは、測定すべき検体の既知量を含有する標準または参照材料を意味する。検体を含んでいると疑われるサンプルおよびそれに対応する検量材料は同じような条件下でアッセイが行なわれる。検体の濃度は、未知の試料に対して得られた結果を標準の試料に対して得られた結果と比較することにより算出される。これは一般には、図8に示されているような検量線を作成することにより行なわれる。
【0030】
「アルキル基」とは、直鎖、分枝、環式、非環式、飽和または不飽和の炭素鎖を意味する。代表的なアルキル基としては、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルキン、アリール、およびこれらに類似のもの、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
「置換されていてもよい」とは、アルキル基への1以上の置換基の任意的な付加を意味する。
【0032】
「脱離基」とは、基質の化学部分構造であって、それと反応させる試薬で置換できるものを意味する。好適な脱離基としては、ハロゲン化物、メシラート、トシラート、アルコキシ、第四級アンモニウム塩、およびこれらに類似のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。現状で好ましい実施形態で用いるのに好ましい脱離基は活性エステル(例えば、トリフルオロエトキシエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、p-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、イミダゾリルエステル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリルエステル)により提供され、この場合カルボニル炭素に付いている、エステルの酸素含有部分が反応で置換される。
【0033】
「保護基」とは、反応性原子または中心につけられてその通常の反応性を変える部分構造を意味する。好適な保護基としては、専門書 Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition by Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts(John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999)(この文献の全内容は参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、またもし本出願と一致しない開示または定義がある場合は、本明細書にある開示または定義が優先するものとする。アミンの窒素に対する種々の保護基が当技術分野で知られているが(例えば、上記を参照されたし)、その中でもトリフルオロアセチルが、現時点で好ましいとされる窒素保護基である。
【0034】
本発明の特徴を具現する化合物は、エクスタシー薬物に特異的な抗体の製造において中間体、ハプテン、または免疫原として有用である。本発明の特徴を具現する化合物の第1のシリーズは構造 I:
【化7】
[ここで R1 は-J-M-Tであり;R2 は、水素、アルキル基、および保護基から構成される群から選択され;そしてR3 は置換されていてもよいアルキル基である。J は1〜15個の炭素原子および0〜6個のヘテロ原子を含む。M は、-O-、-CO-、-NR4-、-S-、-C(=NH)O-、-NH(CO)-、-NH(CO)NH-、-NH(CS)-、-NH(CS)NH-、-O(CO)NH-、-NH(C=NH-)-、およびマレイミドチオエーテルから構成される群から選択される(式中 R4 は水素およびアルキル基から構成される群から選択される)。T は、水素、ヒドロキシル、脱離基、マクロ分子キャリヤー、および標識から構成される群から選択される。R2 が水素であり且つR3 がメチルである場合は R1 は、-CH2CN、-CH2C=CH2、-CHO、-CH2CH2OH、-CH2CH2OCH3、または-CH2CCHではない。]
を有する。
【0035】
マクロ分子キャリヤーは、タンパク質、ポリペプチド、および多糖類から構成される群から選択するのが好ましい。好ましいタンパク質としては、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、BSA(ウシ血清アルブミン)、および BTG(ウシサイログロブリン)が挙げられる。アルキル基は、直鎖または分枝鎖であって、1〜15個の炭素原子、さらには1〜11個の炭素原子、なおさらには1〜9個の炭素原子を有しているのが好ましい。
【0036】
この第1のシリーズの好ましい実施形態では、J が-(CH2)k-を含み、k が1、2、3、4、5、または6、さらには k が 3 であるのが好ましい。さらに M が-CO-であるのが好ましい。R2 が水素、メチル、エチル、n-プロピル、またはn-ブチルであるのが好ましく、さらにはR2 が水素であるのが好ましい。R3 が水素、メチル、エチル、n-プロピル、またはn-ブチルであるのが好ましく、さらにはR3 がメチルであるのが好ましい。T は、N-オキシスクシンイミド、ヘモシアニン、グロブリン、およびアルブミンから構成される群から選択するのが好ましく、さらにはT は、KLH、BSA、およびBTGから構成されるタンパク質の群から選択するのが好ましい。
【0037】
図1は、この第1のシリーズの好ましい実施形態の化合物および免疫原を合成するための代表的なスキームを示す。この代表的な合成スキームにおいて、出発原料、試薬、個々の合成変換反応、および反応条件は全く説明のためのものであって、限定のためのものではないことを理解すべきである。図示されているものとは全く別の出発原料に基づく合成を含めて、別の合成製法を、本特許請求の範囲の思想と範囲から逸脱することなく開発することができる。
【0038】
図1に示されているように、合成はエクスタシー薬物メチレンジオキシアンフェタミン(MDA)2から始める。2の第一級アミノ基と4-ブロモ-酪酸エチルエステルを反応させてアルキル化生成物4を得る。得られた4の第二級アミノ基を適当なアミノ保護基を用いて保護する。図1に示されているように、4のアミノ基はトリフルオロ無水酢酸(TFAA)でトリフルオロアセチル化して保護されたトリフルオロアセチル化誘導体6を得る。6のエチルエステル部分構造の加水分解によりカルボン酸誘導体8を得、これをN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)との反応でエステル化して活性エステル誘導体10を得る。活性エステル誘導体10をマクロ分子キャリヤー部分構造[ T ](例えば、KLH、BTG、BSA)と反応させて、脱保護して、そして透析して免疫原12を得る。
【0039】
図1の化合物6、8、10、および12では、上記の好ましい部分構造 -(CH2)3- および -CO- はそれぞれ J および M に対応するが、この合成に示されている特定の化合物は純粋に説明のためであって、図1に描かれている合成方法を改変して実質的に異なる化学構造を有する化合物を製造できることを強調しておきたい。例えば、図1に示されているアルキル化剤 4-ブロモ-酪酸エチルエステルは、脱離基(例えば、臭素)を末端官能基(例えば、そのエチルエステル)から分け隔てるもっと多くのあるいは少ない連続メチレン単位をもつ試薬と置き換えできる。同様にこれらの末端間を分け隔てる炭素鎖は、ヘテロ原子、置換、不飽和、またはこれらと同様なものを含むことができる。さらに、このアルキル化工程をとおして導入された官能基(即ち、4-ブロモ-酪酸エチルエステルのエチルエステル部分構造)は、例えばアルコール類、保護アルコール類、カルボン酸類、保護カルボン酸類、アミン類(例えば、第一級、第二級、または第三級)、保護アミン類、チオール類、保護チオール類、チオエーテル類、アミド類、チオアミド類、イミド類、チオイミド類、ニトリル類、イミン類、ヒドラゾン類、マレイミドチオエーテル類、およびこれらに類似のものを含めて、またこれらに限定されるものではないが、様々な代替の部分構造によって、あるいは、当技術分野で十分確立されているように、1以上の合成変換反応によりその部分構造に変換することができるこれら部分構造の官能基前駆体で置き換えることができる。
【0040】
図1に描かれている合成方法は、MDA2に含まれるアミノ基のアルキル化をとおして -J-M-T 部分構造を導入するが、既に窒素を含んでいるメチレンジオキシ-フェニル環系を反応させていくこの方法は純粋に説明のためであり、そして数多くの別の方法をこれに代えて用いることができることを強調しておきたい。例えば、MDA2のアミノ基の代わりに脱離基を含むメチレンジオキシ-フェニル環系をアミノ含有求核試薬と、あるいはアミノ基の前駆体(例えば、アジド、シアニドなど)を含んでいる求核試薬と反応させることができる。事実、アミノ基の代わりに脱離基を含んでいるMDA2の類似体を、4-ブロモ-酪酸エチルエステルのアミノ類似体と、即ち NH2-(CH2)3-CO2Et-と、反応させると、これもまた、異なるルートで化合物6を生成すると考えられる。例えば、限定するものではないが、Comprehensive Organic Transformations, 2nd Edition by Richard C. Larock(Wiley-VCH, New York, 1999)および March’s Advanced Organic Chemistry, 5th Edition by Michael B. Smith and Jerry March(John Wiley & Sons, Inc., 2001)、およびこれらの中で引用されている文献、のような論文に記載されているものを含めて、当技術分野で知られている全ての化学変換反応の方法は、本好ましい実施形態で用いることができると考えられる。
【0041】
図1に示されている代表的な合成反応を変更するのに有用となると思われる変換反応としては、決して限定するものではないが、Fischer エステル化反応、その他の活性エステルの調製(例えば、カルボニルジイミダゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミド、2-クロロピリジニウム、3-クロロイソオキサゾリウム、2,2’-ジピリジルジスルフィド、2-ピリジルチオクロロホルマート、およびこれらに類似のものを用いて)、酸化反応(例えば、アルコール類、アミン類、チオール類、チオエーテル類の、あるいはバイヤー-ビリガー酸化(Baeyer-Villiger oxidation)など)、還元反応(例えば、ニトロ基の還元、カルボニル基の環元、水素化など)、アミノ基の保護(例えば、カルバメートアミド類、N-アルキルアミン類、N-アリールアミン類、イミン類、エナミン類、N-ヘテロ原子誘導体、およびこれらに類似のもの)および対応する脱保護、縮合反応(例えば、アルドール、クライゼン(Claisen)、クネベナーゲル(Knoevenagel)など)、1,4-付加反応(例えば、マイケル(Michael)反応、コーリイ-ホワイトサイド-ハウス有機銅酸化物結合(Corey-Whitesides-House organocuprate coupling)など)、1,2-付加反応(例えば、グリニャール(Grignard)反応、カルボニル還元など)、二トリルの還元、アルコールの脱保護、カルボン酸の脱保護、ケトンの脱保護、アルデヒドの脱保護、アジドの還元、イミンの還元、ならびにこれらに類似のもの、が挙げられる。
【0042】
本発明の特徴を具現する化合物の第2のシリーズは構造 II:
【化8】
[ここで:R1 は 2〜6 個の炭素原子を含むアルキル基であり;R2 は、水素、アルキル基、および保護基から構成される群から選択され;R3 は、置換されていてもよいアルキル基であり;そして Z は -L-X-Q である。L は 1〜15 個の炭素原子および 0〜6 個のヘテロ原子を含む。X は、-O-、-CO-、-NR4-、-S-、-C(=NH)O-、-NH(CO)-、-NH(CO)NH-、-NH(CS)-、-NH(CS)NH-、-O(CO)NH-、-NH(C=NH)-、およびマレイミドチオエーテルから構成される群から選択される(式中 R4 は、水素およびアルキル基から構成される群から選択される)。Q は、水素、ヒドロキシル、脱離基、マクロ分子キャリヤー、および標識から構成される群から選択される。]
を有する。
【0043】
マクロ分子キャリヤーは、タンパク質、ポリペプチド、および多糖類から構成される群から選択するのが好ましい。好適なタンパク質としては、 KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、BSA(ウシ血清アルブミン)、および BTG(ウシサイログロブリン)が挙げられる。前記アルキル基は、直鎖または分枝鎖であり、1〜15 個の炭素原子、より好ましくは 1〜11 個の炭素原子、さらに好ましくは 1〜9 個の炭素原子を有するのが好ましい。
【0044】
この第2のシリーズの好ましい実施形態では、L を構成する炭素原子および任意のヘテロ原子は制限されるものではなく、直鎖、分枝、環式、および非環式系を含み得る。L は、-(CH2)j-(式中 j は、1、2、3、4、5、または 6 であるのが、さらに好ましくは j は 3 であるのが好ましい)を含んでなるのが好ましい。さらに、X は -CO- であるのが好ましい。R1 は、エチル、n-プロピル、または n-ブチルであるのが好ましく、また R1 がエチルであるのがもっと好ましい。R2 は、水素または保護基であるのが好ましく、そして R2 が、トリフルオロアセチル基のような保護基であるのがもっと好ましい。R3 は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、または n-ブチルであるのが好ましく、そして R3 はメチルであるのがもっと好ましい。Q は、ヒドロキシ、N-オキシスクシンイミド、ヘモシアニン、グロブリン、およびアルブミンから構成される群から選択するのが好ましく、そして Q は KLH、BSA、および BTG から構成されるタンパク質の群から選択するのがもっと好ましい。
【0045】
図2は、この第2のシリーズの好ましい実施形態の化合物および免疫原を合成するための代表的なスキームを示す。この代表的な合成スキームにおいて、出発原料、試薬、個々の合成変換反応、および反応条件は全く説明のためのものであって、限定のためのものではないことを理解すべきである。図示されているものとは全く別の出発原料に基づく合成を含めて、別の合成製法を、本特許請求の範囲の思想と範囲から逸脱することなく開発することができる。
【0046】
図2に示されているように、合成は 1-メチル-2-フェニル-エチルアミン14で始まる。14のアミノ基を臭化エチルでアルキル化して N-エチルアミン誘導体16を得る。16のアミノ基を適当なアミノ保護基を用いて保護する。図2に示されているように、16のアミノ基をトリフルオロ無水酢酸(TFAA)でトリフルオロアセチル化する。トリフルオロアセチル化誘導体18をフリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)型反応で無水コハク酸と反応させてカルボン酸誘導体20を得る。カルボン酸誘導体20のベンジルカルボニル基の還元により還元生成物22を得、これを N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)との反応によりエステル化して活性エステル誘導体24を得る。活性エステル誘導体24をマクロ分子キャリヤー部分構造[ Q ](例えば、KLH、BSA、BTG)と反応させ、窒素を塩基性条件下で脱保護し、そして透析して免疫原26を得る。あるいは、図3に示すように、活性エステル誘導体24を、例えば 4-アミノメチル安息香酸との反応によりさらに反応させて安息香酸誘導体32を得る。安息香酸誘導体32、および32から N-ヒドロキシスクシンイミドとの反応により得られる活性エステル誘導体34は、本発明の各種コンジュゲート、標識、およびこれらに類似のものの合成に有用な中間体である。図3に示されている合成方法(即ち、アミノ安息香酸の導入)は、図1に示されているタイプのメチレンジオキシ化合物にも容易に用いることができる(例えば、活性エステル誘導体10を 4-アミノメチル-安息香酸と反応させることにより)。
【0047】
図2の化合物22、24、および26では、上記の好ましい部分構造 -(CH2)3- および -CO- はそれぞれL およびX に対応するが、この合成に示されている特定の化合物は純粋に説明のためであって、図2に描かれている合成方法を改変して実質的に異なる化学構造を有する化合物を製造できることを強調しておきたい。例えば、図2に示されている無水コハク酸は、もっと多くのあるいはもっと少ない環炭素原子および/または環へテロ原子(これら自身、置換されていてもよいし、不飽和を含むことができる)を有する環式無水物、あるいはそれに類似のもので置き換えできる。さらに、フリーデル-クラフツアシル化剤としては環式無水物を用いる必要もない。非環式試薬(例えば、ハロゲン化アシル、カルボン酸、ケテンなど)を用いることもできる。さらに、図2に示されているフェニル環の構造を反応させていくのに、フリーデル-クラフツアシル化反応を用いる必要もない。限定するものではないが、フリーデル-クラフツアルキル化、ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、イプソ置換、およびこれらに類似のものを含めて、多数の代替の求電子的芳香族置換を用いることもできる。同様に、フリーデル-クラフツアシル化工程を通して導入された官能基(即ち、化合物20および22に示されている末端カルボン酸部分構造)は、例えば、限定するものではないが、アルコール類、保護アルコール類、保護カルボン酸類、アミン類(例えば、第一級、第二級、または第三級)、保護アミン類、チオール類、保護チオール類、チオエーテル類、アミド類、チオアミド類、イミド類、チオイミド類、ニトリル類、イミン類、ヒドラゾン類、マレイミドチオエーテル類、およびこれらに類似のものを含めて様々な代替の部分構造で置き換えることができる、またはそれらに変換することができる、あるいは、当技術分野で十分確立されているように、1以上の合成変換反応によりその部分構造に変換することができるこれら部分構造の官能基前駆体で置き換えることができる。
【0048】
図2に描かれている合成方法は、トリフルオロアセチル化誘導体18のフェニル環のアシル化を通して -L-X-Q 部分構造を導入するものであるが、求電子的置換により既に存在しているフェニル環をさらに反応させていくこの方法は純粋に説明のためであって、これに代えていろいろな代替の方法を用いることができると考えられることを強調しておきたい。例えば、アミノ含有側鎖に対しパラの位置でハロゲン(例えば、Cl、Br、I)で置換されたフェニル環は、当技術分野で周知の方法を用いて、有機金属試薬(例えば、グリニャール、有機リチウム、有機スタナン、有機ボラン、有機銅酸化物(organocuprate)、またはこれらに類似のもの)に変換し、そのあと求電子的試薬と反応させて炭素−炭素結合を形成さすことができる。あるいは、アミノ含有側鎖に対しパラの位置で適当な脱離基(例えば、Cl、Br、I、アルコキシなど)で置換されたフェニル環は、当技術分野で周知の方法を用いて、求核芳香族置換反応をさせることができる。さらには、フェニル環の置換パターンは、完全飽和のまたは部分不飽和のシクロヘキサン環系(またはその前駆体)上に生成させることも考えられ、そしてこれは、例えば、限定するものではないが水素化触媒(例えば、Pt、Pd、Niなど)、S および Se、キニーネ、ならびにこれらに類似のものなどの、当技術分野で周知の試薬を用いて芳香族化される。
【0049】
図1に示されている合成スキームに関連して上記したように、当技術分野で知られている全ての化学変換反応の方法は本好ましい実施形態で用いることができると考えられる。図2に示されている代表的な合成の変更に有用になると思われる変換反応としては、決して限定するものではないが、図1の合成スキームに関連して上記で明らかにされたもの、ならびにウォルフ-キシュナー(Wolff-Kishner)還元、クレメンゼン(Clemmensen)還元、ヒドラゾンの還元(例えば、LiAlH4、NaBH4、NaBH3CN、またはこれらに類似のもの)、およびこれらに類似のものが挙げられる。
【0050】
本発明の特徴を具現する第1の抗体はエクスタシー薬物に対して特異的である。エクスタシー薬物は、MDA、MDMA、MDEA、MDPA、BDB、MBDB、ならびにこれらの組み合わせから構成される群から選択するのが好ましい。
【0051】
本発明の特徴を具現する第2の抗体は MDEA に対し特異的である。
【0052】
本発明の特徴を具現する第3の抗体は、上記で示されまた説明された構造 I または II を含んでなる検体(即ち、免疫原、コンジュゲート、またはその他の化学物質)に対し特異的である。
【0053】
上述の好ましい実施形態の第1のシリーズの免疫原、即ち、メチレンジオキシ-フェニル縮合環系(例えば、図1)を含んでなる化合物のシリーズは、例えば、限定するものではないが、MDA、MDMA、MDEA、MDPA、BDB、MBDB、ならびにこれらを組み合わせたものなどのエクスタシー薬物に対して特異的な抗体を製造するのに有用である。図4に示されている表1は、エクスタシー薬物、特に融合番号3からの、そして特に Ab 2.1.1(これは、図1の免疫原12に応答して産生された抗体であり、この場合 T は KLH である)に対して特異的ないくつかの抗体の交差反応データを示している。当技術分野で十分確立されているタイプの古典的免疫化プロトコルを用いてこのデータを得た。表1において、略記号 dAM は d-アンフェタミンを表わし、略記号 dMA は d-メトアンフェタミンを表わし、略記号 IAM は I-アンフェタミンを表わし、略記号 IMA は I-メトアンフェタミンを表わし、略記号 Ses はセサミンを表わし、略記号 Phen はフェンテルミンを表わし、略記号 Tyr はチラミンを表わし、略記号 Pseu はプソイドエフェドリンを表わし、略記号 Eph はエフェドリンを表わし、略記号 PPA はフェニルプロパノールアミンを表わし、略記号 nEpn はノルフェドリンを表わし、略記号 Adrはアドレナリンを表わし、略記号 Ran はラニチジン(Glaxo Wellcome より商品名 ZANTAC で発売されており、Warner-Lambert Consumer Healthcare, Morris
Plains, NJ から販売されている)を表わす。
【0054】
図5の競合阻害プロットに示されているように、免疫原12(例えば、 T が KLH であるもの)によって誘導された抗体はエクスタシー薬物に対し良好な応答と特異性を示している。さらに、図6の競合阻害プロットに示されているように、これらの抗体は関連薬物には殆どあるいは全く交差反応性を示さない。図6において、略記号 dAMP は d-アンフェタミンを表わし、略記号 IAMP は I-アンフェタミンを表わし、略記号 Smin はセサミンを表わすが、略記号 IMA、dMA、および Phen は上記の表1で記載したのと同じ意味を有する。
【0055】
表2は、T が KLH である図1の免疫原12に応答して産生された抗体 MDMA-2.1.1 に対する交差反応性データを示している。標準であるメトアンフェタミンの結合に50%の低下をもたらす薬物の濃度(ED 50)を決定し、その ED50 でそれぞれのその他の薬物の ED50 を割り、そしてその結果を 100 で乗ずることにより、表2に示されている交差反応性のパーセントを計算することができる。このデータを得るのに用いた抗体は、当技術分野で十分確立されているタイプの古典的免疫法プロトコルにより製造した。
【0056】
表2:各種薬物に対する MDMA-2.1.1 の交差反応性
薬物 交差反応性 %
d-MDMA 100
MDEA 204
MDA 60.6
MBDB 26.1
BDB 20.5
MDPA 365
d-AMP 0
d-MAMP 0.65
I-AMP 0
I-MAMP 0
セサミン 0
フェンテルミン 0
チラミン 0
プソイドエフェドリン 0
エフェドリン 0
フェニルプロパノールアミン 0
ノルピネフリン 0
アドレナリン 0
ラニチジン(ZANTAC) 0
【0057】
上記した第2のシリーズの好ましい実施形態の免疫原、即ち、縮合メチレンジオキシ-フェニル環系のない化合物のシリーズは、限定するものではないが、MDA、MDMA、MDEA、MDPA、BDB、MBDB、ならびにこれらを組み合わせたものなどのエクスタシー薬物に特異的な抗体を製造するのに有用である。この第2のシリーズの N-エチル置換免疫原(即ち、構造 II の R1 がエチルである)に応答して産生される抗体は、従来のアンフェタミンおよびメトアンフェタミンの免疫学的アッセイでは通常十分に検出できなかったエクスタシー薬物 MDEA(「イブ」)に対し特に高い認識を示す。このようにして産生された抗体は、既存のアンフェタミンまたはメトアンフェタミンアッセイにおいて検出を向上させるための追加抗体として、あるいは MD クラスの薬物の免疫学的アッセイにおける MDEA に対する別の抗体として用いることができる。
【0058】
表3は、Q が KLH である図2の免疫原26に応答して産生させられた抗体 NEAMP-1.3 に対する交差反応性データを示している。上述した手順により、表3に示されている交差反応パーセントは算出できる。このデータを得るのに用いた抗体は古典的免疫プロトコルを用いて製造することができる。
【0059】
表3:各種薬物に対する NEAMP-1.3 の交差反応性
薬物 交差反応パーセント
d-メトアンフェタミン 100
I-メトアンフェタミン 検出せず
d-アンフェタミン 32.5
I-アンフェタミン 33.5
MDMA 114
MDEA 507
MBDB 20
フェンジメトラジン 0.6
プソイドエフェドリン 2.0
I-エフェドリン 6.7
ラニチジン(ZANTAC) 0.2
【0060】
N-エチル置換免疫原26(例えば、Q が KLH である場合)により誘導された抗体は、図7の競合阻害プロットにより示されているように、一般にエクスタシー薬物に対して、そして特に MDEA に対して良好な応答および特異性を示す。図7では、略記号 dMeth は d-メトアンフェタミンを表わし、そして略記号 Imeth
は I-メトアンフェタミンを表わす。
【0061】
本発明の特徴を具現する試薬キットは、本発明の特徴を具現する抗体を含んでなる。代表的な試薬キットは、エクスタシー薬物に特異的な抗体および、エクスタシー薬物のリガンドを含む複合体または標識部分構造に結合されたそれの誘導体を含んでなり得、また、エクスタシー薬物または関連標準の既知量を含む1以上の検量物質も任意に含んでなり得る。
【0062】
本発明の特徴を具現する抗体は、その利用方法の説明書と一緒に、キット、容器、パック、またはディスペンサーの中に入れておくことができる。抗体をキットに入れて提供する場合、免疫学的アッセイの異なる成分は別々の容器にパックし、使用する前に混ぜるとよい。このように各成分を別々にパックすると、活性成分の機能を実質的に減少させることなく長期の貯蔵を可能にし得る。さらに、試薬を不活性環境下(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、またはこれらに類似のものの正圧下)にパックすることもでき、これは空気および/または水分に敏感な試薬に対しては特に好ましい。
【0063】
本発明の特徴を具現するキットに含まれる試薬は、その異なる成分の各活性が実質的に維持され、同時に各成分がそれ自身容器の材質により実質的に吸収または変質されないならば、あらゆる種類の容器に入れて提供することができる。好適な容器としては、限定するものではないが、アンプル、ボトル、試験管、バイアル、フラスコ、シリンジ、封筒(例えば、ホイルで裏張りされた)、およびこれらに類似のものが挙げられる。容器は、限定するものではないが、ガラス、有機ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンなど)、セラミックス、金属(例えば、アルミニウム)、金属合金(例えば、鋼)、コルク、およびこれらに類似のものなどの適切な材料から構成される。加えて、容器には、セプタムにより提供され得るもののような、1個以上の滅菌アクセスポート(例えば、ニードルを介してのアクセス用に)がついていてもよい。セプタム用の好ましい材料としては、ゴムおよび、DuPont(Wilmington, DE)により商品名TEFLONで販売されているタイプのポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
さらに、容器は、取り除くことで各成分の混合を起こさすことができるパーティションまたはメンブレーンにより仕切られている2以上のコンパートメントを有し得る。
【0064】
本発明の特徴を具現する試薬キットには説明用資料をつけてもよい。説明書は印刷(例えば、紙面上に)されていてもよいし、また/あるいは電子的に読み取り可能な媒体(例えば、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ジップディスク、ビデオテープ、オーディオテープなど)に入れて提供されてもよい。あるいは、ユーザーをインターネットウェブサイトに、また/あるいは電子メールを通じて案内することで、説明書を提供してもよい。
【0065】
先述したように、本発明の特徴を具現する試薬キットは、測定すべき検体の既知量を含んでいる検量用または対照用材料を含んでいてもよい。検体の濃度は、サンプルに対して得られた結果を、標準に対して得られた結果と比べることにより算出することができる。検量曲線を作成し、これを用いることで結果の一式を相関させることができ、そしてサンプル中の検体の濃度を決定することができる。図8は、改変ロッシュオンラインフォーマート(modified Roche ONLINE formats)および試薬および Ab MDMA 2.1.1(即ち、T が KLH である免疫原12から誘導された抗体)を用いた場合のヒタチアナライザー(HITACHI Analyzer)における曲線を示す。
【0066】
本発明の特徴を具現する検体検出方法は、サンプルを本発明の特徴を具現する抗体と接触させる段階、抗体を検体に結合させる段階、および抗体と検体とにより生成された付加生成物を検出する段階を有してなる。
【0067】
検体を含有しているのではないかと疑われるサンプルを、本好ましい実施形態の方法により分析することができる。望ましいならサンプルを予備加熱することができるし、またアッセイに干渉しないいかなる都合のよい媒体中においても調製することができる。サンプルは、例えば宿主からの体液のような水性媒体からなるのが好ましい。代表的な体液としては、限定するものではないが、尿、全血、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、およびこれらに類似のもの、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。体液は、血漿、血清、または尿からなるのが好ましい。
【0068】
抗体が固相に結合されているアッセイおよび抗体が液体媒体中にあるアッセイを含めて、抗体を用いるあらゆる種類の免疫学的アッセイを本好ましい実施形態において用いることが考えられることは理解すべきである。本発明の特徴を具現する抗体を用いて、検体を検出するのに用いることができる免疫学的アッセイの方法としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:サンプル中の標識検体と検体が抗体に対して競合する競合(試薬限定的)アッセイ;抗体が標識化されている単一部位免疫定量アッセイ(single-site immunometric assay);捕捉抗体(capture antibody)(即ち、固相に付着している抗体)が抗原の最初のエピトープに結合し、そして検出抗体(detecting antibody)(即ち、標識抗体)がこの抗原−捕捉抗体複合体に結合する二部位免疫定量(試薬過剰)アッセイ(two-site immunometric assay);およびこれらに類似のもの。
【0069】
各種の免疫学的アッセイを行う方法は当技術分野では十分確立されており、例えばThe Immunnoassay Handbook, 2nd Edition edited by David Wild(Nature Publishing Group, 2000)(これの全内容を参照により本明細書に組み入れるものとする)などの多数の論文および刊行物に述べられている。但し、本出願と一致しない開示あるいは定義がある場合は、本明細書中の開示あるいは定義が優先するものとする。
【0070】
本発明の特徴を具現する抗体の製造方法は、宿主に、本発明の特徴を具現する免疫原を接種する段階を有してなる。好適な宿主としては、限定するものではないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ロバ、ウマ、サル、チンパンジー、オランウータン、ゴリラ、ヒト、ならびに成熟免疫応答を見せることができる種が挙げられる。用いる免疫化方法は当技術分野で十分確立されており、例えば上記で引用した The Immunoassay Handbook, 2nd Edition などの多数の論文および刊行物、ならびにそれらの中で引用されている文献に述べられている。
【0071】
本発明の特徴を具現する免疫原は、アジュバント(免疫強化剤)と組み合わせて宿主被験体(例えば、動物またはヒト)に投与される。好適なアジュバントとしては、限定するものではないが、フロイントアジュバント(Freund adjuvant)、粉末水酸化アルミニウム(ミョウバン)、ボルデテラ属百日咳菌と一緒にした水酸化アルミニウム、およびモノホスホリルリピド A 合成-トレハロースジコリノミコレート(MPL-TDM)が挙げられる。
【0072】
ポリクローナル抗体は、アジュバントと一緒に任意追加的に投与され得る免疫原の1以上の注射により、哺乳動物宿主中で生じさせることができる。典型的には、免疫原(または免疫原とアジュバントとの組み合わせ)が哺乳動物宿主に1回または複数回の皮下または腹腔内注射により注入される。この免疫プログラムは少なくとも1週間に亘って、そしてより好ましくは2週間以上に亘って行うのが好ましい。このようにして産生されたポリクローナル抗体は単離され、当技術分野で周知の方法を用いて精製される。
【0073】
モノクローナル抗体は、十分確立されているケーラーとミルシュタイン(Koehler and Milstein)のハイブリドーマ法(例えば、Nature, 1975, 256, pp. 495-497)により製造することができる。ハイブリドーマ法は典型的には以下の段階を有する:(1)宿主または宿主からのリンパ球を免疫化する段階;(2)モノクローナル抗体を分泌する(または分泌する能力を有する)リンパ球を回収する段階;(3)このリンパ球を不朽化された(immortalized)細胞に融合する段階;および(4)所望のモノクローナル抗体を分泌する細胞を選択する段階。
【0074】
宿主を免疫化して免疫原に対し特異的な抗体を産生するまたは産生する能力を有するリンパ球を誘導することもできる。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化することができる。もしヒト細胞が求められているのであれば、他の哺乳動物源からの脾臓細胞またはリンパ球が好ましいけれども、末梢血リンパ球(PBL)を用いることができる。
【0075】
リンパ球を不朽化細胞株と融合させてハイブリドーマ細胞を形成させることができるが、この工程は融合助剤(例えば、ポリエチレングリコール)を用いることにより促進することができる。具体例として、形質転換により不朽化された変異齧歯動物、ウシ、またはヒトの骨髄腫細胞を用いることができる。融合されていない不朽化細胞(unfused immortalized cells)とは対照的に、ハイブリドーマ細胞の実質的に純粋な個体群が好ましい。従って、例えば、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT または HPRT)を欠く変異骨髄腫細胞を用いて、融合のあと、融合していない不朽化細胞の増殖または生存を阻害する適当な培地中で、これらの細胞を増殖することができる。このような例においては、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンをその培地に加えることで(HAT 培地)、HGPRT-欠陥細胞の増殖を妨げる一方で、ハイブリドーマを増殖させることができる。
【0076】
不朽化細胞は、効率的に融合し、HATのような培地中における淘汰により雑多の個体群から単離することができ、そして融合のあと安定且つ高レベルの抗体の発現を維持するものが好ましい。好ましい不朽化細胞株としては、American Type Culture Collection(Manassas, VA)から入手可能な骨髄腫細胞株が挙げられる。
【0077】
ハイブリドーマ細胞は典型的には細胞外に抗体を分泌するので、その培養培地を、MD クラスのアンフェタミン誘導体に特異的なモノクローナル抗体の存在に関してアッセイすることができる。免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ[例えば、ラジオイミュノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA:enzyme-linked immunoabsorbent assay)]を用いることでモノクローナル抗体の結合特異性を測定することができる。
【0078】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞は限界希釈法で単一クローンとして単離し、そして継代培養することができる。好適な培養培地としては、限定するものではないが、Dulbecco 社の Modified Eagle’s Medium、RPMI-1640、およびポリペプチド不含有もしくはポリペプチド低減型または無血清培地[例えば、 Biowhittaker(Walkersville, MD)から入手可能な Ultra DOMA PF または HL-1)が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を腹水としてインビボで増殖させることもできる。
【0079】
モノクローナル抗体は在来の Ig 精製法、例えば、限定するものではないが、ポリペプチド A-セファローズ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー;ゲル電気浸透;透析;硫酸アンモニウム沈降;およびアフィニティークロマトグラフィーなどにより、培養培地または腹水液から単離および/または精製することができる。
【0080】
また、例えば米国特許第 4,166,452 号に記載されているもののような遺伝子組換え法によりモノクローナル抗体を製造することもできる。在来の方法を用いて(例えば、ネズミ重および軽鎖抗体遺伝子に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、好ましくは、エクスタシー薬物に特異的な抗体を分泌するモノクローナル抗体ハイブリドーマ細胞株から単離された DNA を調べることで、モノクローナル抗体をコードする DNA を単離し、配列決定することができる。この単離された DNA 断片を、発現ベクターにサブクローニングしその後宿主細胞(例えば、さもなければ Ig ポリペプチドを産生しないサル COS-7 細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞)の中にトランスフェクトしてモノクローナル抗体を発現させることができる。米国特許第 4,816,567号に記載されているように、相同ネズミ配列に代えてヒト重および軽鎖定常領域のコード配列を使用することにより、あるいは Ig をコードする配列を、非-Ig ポリペプチドのコード配列の全部または一部と融合させることにより、単離された DNA 断片を改変することができる。このような非-Ig ポリペプチドは、抗体の定常領域に代えて使用することができ、あるいは1つの抗原結合性部位の可変領域に代えて使用して、キメラ2価抗体をつくることができる。
【0081】
【実施例】
以下の、本発明の特徴を具現する免疫原の代表的な調製方法およびエクスタシー薬物に対するハイブリドーマの製造方法は、説明のためだけに提供するものであって、特許請求の範囲またはそれと均等なものの限定を意図するものではない。
【0082】
実施例共通事項
特に断らない限り、試薬は Aldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI, USA)から入手した。また特に断らない限り、溶剤は、J T Baker または Fisher Scientific から入手し、ACS または HPLC グレードまたはそれ以上であった。塩化メチレン(CH2Cl2)は、水素化カルシウムを用いた蒸留により脱水させた。テトラヒドロフラン(THF)は、ナトリウムおよびベンゾフェノンを用いた蒸留により脱水させた。脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を、密封 SURESEAL ボトルの形で Aldrich Chemical Co. から入手した。カラムクロマトグラフィーは、E.M. Science のフラッシュグレード(flash-grade)のシリカゲル(カタログ番号 9385-9;Silica gel 60;230-400 mesh ASTM)を用いて行った。薄層クロマトグラフィーは、E.M. Science から入手したシリカゲルプレート(カタログ番号 5715-7;厚み 0.025 cm)を用いて行った。「KPi」は、リン酸カルシウム緩衝液を意味する。混合溶媒は、容量パーセントとして容量で表わされる(例えば、10% MeOH-CHCl3 または CHCl3中 10% MeOH とは、メタノールを 10容量% 含有するクロロホルムである)。
【0083】
代表的合成方法
MDA 誘導体4の合成
a)塩化メチレン(CH2Cl2)中メチレンジオキシアンフェタミン臭化水素酸塩の懸濁液/溶液 700 mg を、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)飽和水溶液(略して sat. aq.)と一緒にして十分振盪した。得られた層を分離し、水性層を追加の CH2Cl2 で、抽出される有機物質が無視できる程度となるまで繰り返し抽出した。合わせた有機層を減圧下で乾燥するまで蒸発させ(ロータリーエバポレータ−;略して rotovap)、その後さらに高真空下でしばらく乾燥させて、メチレンジオキシアンフェタミンの遊離塩基 408 mg を油状物として得た。
【0084】
b)脱水ジメチルホルムアミド(DMF)5 mL 中遊離塩基2 400 mg の溶液に、4-ブロモブチル酸エチルエステル(Fluka Chemical Co.)387 μL(1.2 モル当量)を加え、反応をアルゴン下、室温(略して RT)で、一晩(略して O.N.)撹拌した。反応混合物を CH2Cl2 20mL で希釈し、NaHCO3 飽和水溶液 25 mL と一緒に撹拌し、各層を分離し、水性層を CH2Cl2 50 mL 、次いで酢酸エチル(EtOAc)50 mL で抽出し、有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウム(Na2SO4)上で脱水させ、減圧下(rotovap)で蒸発させ、そして残渣を高真空(マニホールド)下で乾燥させて生成物4 520 mg( 1H-NMR により約 90% の純度であることが示された)を得た。この物質をこれ以上精製することなく次の工程で用いた。
【0085】
水性クェンチ後の同様な反応の抽出から得られる物質から、1H-NMR により、生成物4が少量の二置換生成物と一緒に HBr 塩として存在していることが示された。シリカゲルクロマトグラフィー精製[第1カラム:クロロホルム(CHCl3)中 20% メタノール(MeOH)を溶離液として;第2カラム:EtOAc-MeOH-アセトン-水(6:1:1:1)を溶離液として]により純粋な生成物4を得た。マススペク:M-H、292。
【0086】
6の合成
アルゴン下で且つ〜0℃(アイスバス)に冷却された、脱水 CH2Cl2 中粗生成物4 500 mg およびトリエチルアミン 950 μL(4 モル当量)の溶液に、トリフルオロ無水酢酸(TFAA)289 μL(1.2モル当量)を加えた。反応を、一晩撹拌しながら RT まで昇温させた。反応を CH2Cl2 で容量 50 mL に希釈し、水(2×50 mL)、sat. aq. NaHCO3(2×50 mL)、sat. aq.塩化ナトリウム(NaCl)(1×50 mL)で洗浄し、Na2SO4 上で脱水させ、蒸発させ(rotovap)、そして高真空下で乾燥させて粗生成物〜730 mg を得た。この物質を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン中 30% EtOAc で溶出して生成物6 449 mg を薄青色の液体として得た。マススペク(M+H):実測値、389.1449;計算値、389.1450。
【0087】
8の合成
THF 2 mL および 3 規定(3N)過塩素酸 2 mL 中6 445 mg の溶液を、アルゴン下 50 ℃(オイルバス)で、4.5 時間撹拌した。反応物を水 75 mL 中に流し込み、この混合物を EtOAc(2×50 mL)で抽出を行い、この有機抽出物を水で洗浄し、脱水(Na2SO4)させ、そして蒸発(rotovap)させて粗生成物 416 mg を得た。この物質をシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ、CH2Cl2中 5% MeOHで溶出させ、生成物を含有する分画を合わせ、蒸発(rotovap)させ、そして高真空下で乾燥させて生成物8 320 mg を崩壊性泡状物として得た。低分解能質量分析(Low Resolution Mass spec):(M+H):実測値、362.1。高分解能質量分析:(M+Na):実測値、384.1024;計算値、384.1035。
【0088】
10の合成
アルゴン下にある脱水 CH2Cl2 20 mL 中8 310 mg の溶液を、N-ヒドロキシスクシンイミド 296 mg(3 モル当量)で、続いて 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ヒドロクロリド(EDC.HCl)(Sigma Chemical Co.) 329 mg(2 モル当量)で処理し、そのあと RT で O.N. 撹拌した。反応物を水(1×20 mL)、sat. aq. NaHCO3(2×20 mL)、sat. aq. NaCl(1×20 mL)で洗浄し、脱水(Na2SO4)させ、そして蒸発(rotovap)させた。残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン中 30% EtOAc で溶出を行い、生成物分画を合わせ、そして蒸発(rotovap)を行った。残渣を脱水 CH2Cl2 中に再溶解させ且つ再蒸発(×6)させ、次いで高真空下で乾燥させて NHS エステル誘導体10 280 mg を白色〜無色崩壊性泡状物として得た。High Res Mass Spec:(M+H):実測値、459.1381;計算値、459.1379。
【0089】
MDMA 免疫原12( T = KLH ;12a)の合成
アイス−ウォーターバス中で冷却されている pH 7.5 の 50 mM KPi 13 mL 中キーホールリンペットヘモシアニン(KLH) 220 mg の撹拌溶液に、ジメチルスルホキシド(DMSO) 4.33 mL を滴下で加えて、25% DMSO-KPi 中の KLH 溶液を得た。1.58 mL(タンパク質〜20 mg に相当)を、対照として使用するために採取した。残りのものに、DMSO 合計 1.5 mL 中に溶解された10 26 mg(KLH 中のリシン当たり〜0.6当量)の溶液を加え、〜31% DMSO-KPi 中の10と KLH との反応を起こさせた。アイスバスを取り外し、反応物(ストッパー付きフラスコ)を一晩撹拌した。乳白灰色の反応物を透析チュービング(カットオフ MW 15,000;SpectraPor 7)に移し、30% DMSO-KPi/RT(3×1.1 L)、15% DMSO-KPi/RT、そのあと KPi(1×2.2 L/RT -> 〜4 ℃;5×2.2 L/〜4 ℃)に対して透析を順次行った(全ての KPi は pH 7.5 の 50 mM KPi であった)。対照用 KLH もまた透析チュービング(カットオフ MW 15,000;SpectraPor 7)に移し、別個に 30% DMSO-KPi に対して透析を行い、そのあと 15% DMSO - KPi に下げる時に免疫原と共に同じ透析容器中に入れた。不透析液(retentate)1 mL をリシン改変の程度を決定するために取り出した。残りのものを、50 mM K2CO3(4×2.2 L/RT/2 日)に対して、そのあと KPi(4×2.2 L/〜4 ℃)に対して透析を行った。アミンの脱保護を、pH 13 の緩衝液(KOH で pH 13 に塩基性化された50 mM K2CO3 )に対して RT で〜7 日間再透析を行い、そのあと pH 7.5 の KPi 50 mM(3 回交換)中に逆透析を行うことにより完了して MDMA 免疫原 12(T = KLH;12a)をほとんど無色の透明な溶液として得た。クーマシーブルー(Coomassie Blue)タンパク質アッセイ(改変ブラッドフォードアッセイ(modified Bradford assay))(Biorad Laboratories(Hercules, CA, USA))によりタンパク質 1.9 mg/mL を得た。脱保護されていない免疫原(上記参照)に関するトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイ(クーマシーブルーアッセイによるタンパク質濃度測定のあと)により、KLH 上の利用可能なリシンの 38% が改変されていたという結果を得た。
【0090】
MDMA コンジュゲート12( T = BSA ;12b)の合成
アイスウォーターバス中で冷却されている pH 7.5 の 50 mM KPi 11 mL 中ウシ血清アルブミン(BSA)(Pentex Fraction V;Miles Inc., Kankakee, IL, USA)0.55 g の撹拌溶液に DMSO 4.0 mL を滴下で加えた。必要な場合対照として用いるために、得られた〜27% DMSO-KPi 中の BSA 溶液から1.36 mL(BSA 〜0.05 g を含有している)を抜き出した。残った溶液に、合計 0.6 mL の DMSO に溶解されている10 8.2 mg(〜2.4 モル当量)を加え、30% DMSO-KPi 中の10と BSA の混合物を得た。アイスウォーターバスを取り外し、反応物をストッパー付きのフラスコ中で一晩撹拌した。この透明な反応物を透析チュービング(カットオフ MW 15,000;SpectraPor 7)に移し、そして 30% DMSO-KPi/RT(1.1 L)、15% DMSO-KPi/RT(1.1 L)、KPi/RT(1×1.1)、次いで 50 mM K2CO3(4×1.1 L/RT/2 日)に対してそのあと KPi(4×2.2 L/〜4 ℃)(全ての KPi は pH 7.5 で 50 mM であった)に対して順次透析を行った。対照用 KLH もまた透析チュービング(カットオフ MW 15,000;SpectraPor 7)に移し、そして別個に 30% DMSO-KPi に対して透析を行い、そのあと 15% DMSO-KPi に下げるときに免疫原と共に同じ透析容器に入れ、そして平行して進めた。ここにおける不透析液(retentate)の一部の分析を行ったところ、タンパク質濃度が 18.9 mg/mL(クーマシーブルータンパク質アッセイ)であり、ハプテンによる置換が〜1.6(対照 BSA に対する、Difference UV)であった。アミンの脱保護を、pH 13 の緩衝液(KOH で pH 13 に塩基性化された50 mM K2CO3)に対して RT で〜4日間再透析を行い、そのあと pH 7.5 の 50 mM KPi(4 回交換)中に逆透析を行うことで完了し、MDMAコンジュゲート12(T = BSA;12b)を無色透明な溶液として得た。タンパク質濃度を UV(コンジュゲートのOD280 は、親 BSA の OD280[= 1 mg/mL で 0.6]と略同じとした)により測定したところ、約 1.9 mg/mL のタンパク質であった。
【0091】
N- エチルアンフェタミン16の合成
d-アンフェタミンサルフェート(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, USA)5.0 g を、CH2Cl2 100 mL および 1N NaOH 30 mL で処理し、そして15分間激しく撹拌した。各層を分離し、水性部分を CH2Cl2 25 mL で抽出を行った。有機部分を合わせ、無水 Na2SO4 上で脱水させ、そして減圧下で濃縮してd-アンフェタミン不含有塩基14 3.66g を透明な油状物として得た。これを無水 DMF 30 mL 中に溶解し、臭化エチル 2.9 g で処理し、そして室温で3日間撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮して 6.6 g を得、次の工程の原料とした。この生成物は、カラムクロマトグラフィーでは精製するのが困難であるいくらかの出発原料およびジエチル化された副生成物を含んでいる。
【0092】
18の合成
無水 CH2Cl2 75 mL 中粗 N-エチルアンフェタミン 6.6 g の溶液をトリエチルアミン 10 mL で処理した。この混合物をアイスバスで冷却し、無水トリフルオロ酢酸 4.3 mL で処理し、そしてアルゴン下室温で一晩撹拌を加えた。この混合物を減圧下で濃縮した。その残渣を EtOAc 75 mL に溶解し、そして飽和 NaHCO3 3×25 mL、H2O 25 mL、飽和ブライン 25 mL で洗浄を行い、無水Na2SO4 上で脱水を行い、そして減圧下で濃縮を行った。この残渣を、溶離液として 30% EtOAc-ヘキサンを用いてシリカゲル 300 g 上のクロマトグラフィーにかけ、透明な油状物 4.0 g を得た(これは、前の工程からのジエチル化された副生成物をなおいくらか含んでいた)。これを、溶離液として 5% EtOAc-ヘキサンを用いてシリカゲル 250 g 上のクロマトグラフィーにかけ、18 2.6 g を透明な油状物として得た。
【0093】
20の合成
アルゴン下の無水 CH2Cl2 50 mL 中18 2.0 g の溶液を、無水コハク酸 1.2 g で処理した。この混合物をアイスバスで冷やし、そのあと AlCl3 4.0 g を少しずつ加えることで処理した。反応物を 0 0C で2 時間撹拌し、そのあと室温にて一晩撹拌した。この混合物を、3N HCl 18 mL を最初はゆっくり加え、そのあと 30 分間激しく撹拌することで処理した。各層を分け、有機層を H2O 25 mL および飽和ブライン 25 mL で洗浄し、Na2SO4 上で脱水し、そして減圧下で濃縮してアンバー色の油状物とした。これを、溶離液として 3% MeOH-CH2Cl2 を用いてシリカゲル 150 g 上のクロマトグラフィーにかけることにより20 2.6 g をアンバー色の油状物として得た。
【0094】
22の合成
500 mL のパー(Parr)ボトルに 10% Pd/C 115 mgを入れ、続いて酢酸 30 mL 中20 600 mg の溶液を入れ、そして 50 PSI で 17 時間水素化を行った。Celite Corporationから商品名 CELITE で販売されている濾過材(Aldrich Chemical Company, Inc.(Milwaukee, WI)から入手可能)を通すことで触媒を濾過分離し、濾液を減圧下で濃縮した。残留酢酸は、トルエン 25 mL を用いて 5 回蒸発を行うことにより追い出した。このトルエンを CH2Cl2 を用いた 5 回の蒸発により追い出して22 576 mg をアンバー色の油状物として得た。
【0095】
24の合成
アルゴン下の無水 CH2Cl2 25 mL 中22 576 mg の溶液を、N-ヒドロキシスクシンイミド 260 mgで処理し、続いて 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド HCl 435 mg で処理し、そして室温で一晩撹拌を加えた。この混合物を 0.1N HCl 25 mL、H2O 25 mL、飽和 NaHCO3 2×25 mL、飽和ブライン25 mLで洗浄し、Na2SO4 上で脱水し、そして減圧下で濃縮して24 735 mg をアンバー色の油状物として得た。
【0096】
32の合成
H2O 5 mL 中 4-(アミノメチル)安息香酸 108 mg と蒸留 THF 10 mL との混合物を、蒸留 THF 10 mL 中24 315 mg の溶液で、続いて 1N NaOH 1.2 mL で処理し、そして室温にて1時間撹拌を加えた。反応物の pH は9であった。THF を減圧下で除去し、水性残渣を H2O 5 mL で希釈し、そして 6N HCl を用いて pH 6 に酸性化した。これを、EtOAc 2×15 mL で抽出を行った。この EtOAc 抽出物を合わせて、無水 Na2SO4 上で脱水し、そして真空下で濃縮して32 290 mg を白色無定形固体として得た。
【0097】
34の合成
アルゴン下の無水 CH2Cl2 10 mL 中32 270 mg の溶液を、N-ヒドロキシスクシンイミド 85 mg で、続いて 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド HCl 140 mg で処理し、そして室温で一晩撹拌を加えた。この混合物を CH2Cl2 10 mL で希釈し、0.1N HCl 10 mL、飽和ブライン 10 mL、飽和 NaHCO3 2×10 mL、飽和ブライン 10 mL で洗浄し、Na2SO4 上で脱水し、そして減圧下で濃縮して白色無定形固体とした。これを、溶離液として EtOAc を用いてシリカゲル 80 g 上のクロマトグラフィーを行い34 190 mg を白色無定形固体として得た。
【0098】
N- エチルアンフェタミン免疫原26( Q = KLH 26a)の合成
pH 7.5 の 50 mM KPi 10 mL 中精製 KLH 342 mg の溶液をアイスバスで冷やし、DMSO 4 mL を滴下で加えることで処理した。1.7 mL を採りだし、これを参照として用いた。これにより KLH 300 mg が溶液に残った。このあとこれを DMSO 1.0 mL 中24 50 mg の溶液を滴下で加えることで処理した。この反応物を室温で一晩撹拌した。この反応物と前記参照サンプルを別々の 10,000 MW カットオフ透析チュービング(SpectraPor 7)の中に入れ、室温にあるpH 7.5 の 33% DMSO-50 mM KPi 1 リットル中で、3 回交換(3 changes)、少なくともそれぞれ 3 時間、最後の1つは一晩の透析を行った。このあとこれを、20% DMSO 1 リットル、10% DMSO 1 リットル、100% KPi 1 リットル中の降下勾配を用いて、室温 pH 7.5 でそれぞれ少なくとも 3 時間透析を行った。バッグをこのあと 50 mM K2CO3(pH 11.4)1 リットル中に入れ、40 ℃で 4 日間(2 日目に1度交換を行った)透析を行った。これをこのあと 50 mM KPi 1 リットル中、4 ℃ pH 7.5 で、各回それぞれ少なくとも 6 時間の 6 回交換で透析した。クーマシーブルータンパク質アッセイにより、タンパク質濃度 8.16 mg/mL の結果を得る。
保護サンプルに関するトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイにより、利用可能なリシンの 41.4% が改変されていたという結果を得る。
【0099】
N- エチルアンフェタミンコンジュゲート26( Q = BSA ;26b)の合成
pH 7.5 の 50 mM KPi 8 mL 中ウシ血清アルブミン(BSA)(Cohn Fraction V 改質粉末(modified powder);Intergen Company, Purchase, NY, USA) 500 mL の溶液をアイスバスで冷やし、 DMSO 11 mL をゆっくり滴下で加えることで処理した。これをこのあと DMSO 1 mL 中24 6.7 mg の溶液を滴下で加えることにより処理し、そして室温で一晩撹拌した。この混合物を 10,000 MW カットオフ透析チュービング(SpectraPor 7)の中に入れ、室温で pH 7.5 の 60% DMSO-50 mM KPi 1 リットル中で、各回それぞれ少なくとも 3 時間の 3 回交換で且つ最後の1回は1晩、透析を行った。これをそのあと、室温で pH 7.5 にある 40% DMSO 1 リットル、20% DMSO 1 リットル、10% DMSO 1 リットルおよび 100% 50mM KPi 1 リットル中の降下勾配を用いて、それぞれ少なくとも 3 時間透析した。これを次に 50 mM K2CO3 1 リットル(KOH で pH 13 に調整されている)中で 4 日間、緩衝液の交換 4 回で透析した。これをこのあと 4 ℃で pH 7.5 にある 50 mM KPi 1 リットル中で、各回それぞれ少なくとも 6 時間の 6回交換で透析した。クーマシーブルータンパク質アッセイによりタンパク質濃度 12.2 mg/mL の結果を得た。
【0100】
MDMA 免疫原を用いた、エクスタシー薬物に対するハイブリドーマの開発
免疫化
18〜24週齡の BALB/c 雌のマウスを12(T = KLH;12a)で免疫化した。免疫原はフロイントのアジュバント(Freund’s Adjuvant)中に乳化し、腹腔内(IP)注射により投与した。注射は21日以上の間隔で行い、典型的には、生理食塩水が 50% 、アジュバント乳濁液が 50% で構成される 100 μL 中に当該コンジュゲート 50 μgを含む。完全フロイントアジュバント(Complete Freund’s Adjuvant)を1次免疫に用い、不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund’s Adjuvant)をそのあと用いた。融合の 4 日前に、同じ乳濁液中のブースター免疫 50 μg を IP 投与した。
【0101】
融合:
融合を行うその日にマウスを頚椎脱臼により絶命させ、血液サンプルを採取した。脾臓および膝窩、鼠径、鎖骨下ならびに深鎖骨下リンパ節を回収、貯留した。これらを2枚の滅菌スライドグラスの間ですり潰しリンパ球をリリースさせた。得られたリンパ球の半分は F0 骨髄腫細胞株と融合させるのに使い、残りの半分は P3 骨髄腫細胞と融合させた(両骨髄腫細胞とも ATCC から入手)。
【0102】
融合は、骨髄腫細胞の添加(リンパ球の数の 1/5)、遠心沈殿法による洗浄、無血清加温アイスコブ変法ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Media)中への再懸濁、および再遠心分離により行った。得られたペレットが入っている遠心分離管を軽く叩いて細胞を解し、そのあと加温した PEG/DMSO 溶液(Sigma Chemical Co.)1 mL を穏やかにかき混ぜながらゆっくりと加えた。これらの細胞を加温条件下に 1.5 分間保持し、そしてこのあと予備加温された無血清 IMDM を以下:1 mL/min、2 mL/min、4 mL/min、10 mL/min、の速度で加え、そして遠心分離管を 50 mL まで満たし、密封し、そして 15 分間インキュベートした。この細胞懸濁液を遠心分離し、上澄みを静かに別の容器に移し、10% ウシ胎仔血清を含んでいる IMDM を加えた。これらの細胞をもう一度遠心分離にかけ、そして完全クローニング培地中に再懸濁させた。これは、IMDM、10% FCS、10% Condimed H1(Roche Molecular Systems, Pleasanton, CA, USA)、4 mM グルタミン、50 μM 2-メルカプトエタノール、40 μM エタノールアミン、および pen/strep 抗生物質から構成される。細胞を密度 4x105 リンパ球/mL で懸濁させ、100 μL/ウェルを滅菌 96-ウェル無菌ミクロ培養プレート中に分注し、5% 二酸化炭素中 37 ℃で 24 時間インキュベートした。次の日、HMT 選択培地(Sigma Chemical Co.から入手のクローニング培地 + 1:25 HMT サプリメント)100 μL を加えた。インキュベーションの 6 日目の日、低真空源に連結された滅菌 8 分岐マニホールドを用いてそれぞれのウェルから培地約 150 μL を採取した。HT 培地 150 μLをそのあと加えた。これはクローニング培地(Cloning Medium) + 1:50 HT サプリメントからなる(Sigma Chemicals)。プレートをインキュベーターに戻し、増殖の兆候について毎日検査した。増殖が十分であると判断されたとき、ウェルを ELISA により抗体産生に関しスクリーニングした。
【0103】
ELISA スクリーニング:
ミクロプレートを濃度 1 mg/mL でメチレンジオキシメトアンフェタミン-BSA コンジュゲート12(T = BSA;12b)100 μL でコーティングし、別のプレートを濃度 1 mg/mL でメトアンフェタミン-BSA(MAMP-BSA)28
【化9】
100 μL、または濃度 1 mg/mL でアンフェタミン-BSA(AMP-BSA)30
【化10】
100 μL でコーティングした。全ての希釈は pH 9.5 の 0.1 M 炭酸塩緩衝液中に行った。
【0104】
プレートをカバーしたまま 37 ℃(加湿されている)で 1 時間インキュベートした。そのあとプレートを空にし、Tris 緩衝液、1% ゼラチン水解物、2% スクロース、および 0.17% Tween-20(全ての試薬は Sigma Chemical Co. から入手)からなるポストコーティング溶液(post-coat solution)で満たした。プレートをさらに 1 時間 37 ℃(加湿されている)でカバーしたままインキュベートし、そのあと 0.1% Tween 20 を含有するリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered Saline)で洗浄した。そのあとプレートを pH 7.2〜7.4 にある 0.15M Tris中 2% スクロース溶液で一時的に満たし、次いで空にし、そして室温で空気乾燥させた。乾いたあと、プレートをいくつかの乾燥剤ピロー(pillows)が入っているジップロックバッグ(zip-lock bag)の中にパックし、密封し、そして使用の時まで 4 ℃ で保存した。
【0105】
一次融合スクリーニング
融合プレートからの増殖中のクローンの一次スクリーニングには、MDMA-BSA(12;T = BSA, 12b)でコーティングされたプレートのみを使用した。PBS 50 マイクロリットルを各ウェルに加えたあと、融合プレート上のウェルからの培地のサンプル 50 μL を加え、PBS 中に 1:10 に希釈した。プレートを 37 ℃ で 1 時間カバーしたままインキュベートし、そのあと PBS-Tween(0.1%)で洗浄した。次いでウェルを、PBS-Tween 中に希釈されたヤギ抗マウス IgG-HRP コンジュゲート(Zymed Labs)100 μLで満たし、プレートを 1 時間再度インキュベートした。プレートをこのあと再度洗浄し、K-Blue 基質(Neogen Corp)100 μL を加えた。これを 5〜15 分間成長させ、反応を 1 N HCl 100 μL を加えることにより停止させた。色を 450 nm のミクロプレート読み取り機により読み取り、コンピューターによりデータ収集して分析した。MDMA-BSA(12;T = BSA, 12b)に結合している抗体の存在を示したウェルを選択しその次の処理を行う。細胞に限界希釈サブクローニングを行い、増殖が出現した時点で、二次スクリーニングにより検定を行った。
【0106】
二次スクリーニング
MDMA-BSA コンジュゲート(12;T = BSA, 12b)でコーティングされた4枚のプレートに、1枚のプレートのウェルに 50 μL のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、2枚目のプレートに遊離 MDMAの溶液(800 ng/mL) 50 μL 、3枚目のプレートに MDEAの溶液(800 ng/mL) 50 μL 、4枚目のプレートにプソイドエフェドリンの溶液(8 μg/mL) 50 μL を加えて準備した。全ての薬物は PBS 中に溶解した。MAMP-BSA(28)および AMP-BSA(30)でコーティングされたプレートのウェルに PBS 50μL を加える。
【0107】
増殖段階にあるサブクローンが検定可能と判断された時点で、ウェルから上澄み 25 μL を採取し、96-ウェルフレキシブルプレートに移した。それぞれのウェルに培養液を加えて培養サンプルの 1:10 の希釈とした。この希釈サンプルの 50 μL を上記のコーティングされたプレートのそれぞれに移した。以降の処理は1次スクリーニングの場合と全く同じであった。選択の基準は、MDMA-BSA(メチレンジオキシメトアンフェタミン-BSA)コンジュゲート(12;T = BSA, 12b)との結合、および遊離の MDMA および/または MDEAによる阻害の徴候、およびプソイドエフェドリンによる阻害がほとんどないしは全くないことであった。AMP-BSA(30)および MAMP-BSA コンジュゲート(28)との結合は参考のためだけであった。
【0108】
選択されたクローンを直ちにサブクローニングし、そして可能となった時点で、二次スクリーニング手順により再検定した。安定サブクローンを増殖させ、凍結し、費やした培地を使って交差反応性アッセイにより特異性を測定した。サブクローンは、親クローンの名称の後にサフィックス「.」を加えることにより識別されており、また数字は選択の順番を表わす。
【0109】
表4はこのスクリーニング結果の一部を示す。
【0110】
【表1】
【0111】
交差反応性アッセイ
上澄みを順次希釈していき、上記のELISAスクリーニングで再検定した。最大 OD から約 50% の低下を与える希釈を選択して交差反応性試験に進めた。これは、先のアッセイを、選択された希釈にある抗体を用いてまた各種濃度の薬物の存在下で繰り返すことで行った。図5および図6に示されているチャートはこのような測定の結果を表わしている。
【0112】
N −エチルアンフェタミン免疫原を用いた、エクスタシー薬物に対するハイブリドーマの開発
免疫化
週齡 18〜24 のSJL 雌マウスを改変 RIMMS 法(modified RIMMS method)(Kilpatrick et al., Hybridoma, 1997, 16:4, pp. 381-389)により免疫化した。簡潔に述べると、免疫原26(Q = KLH, 26a)
【化11】
[ここで Q は KLH である]を不完全フロイントアジュバント中に乳化し、皮下注射により首の項部、および左右の脹脛(calf)と鼠径(groin)に分布する 6 部位に投与した。注射は 0、3、6 および 11 の日に行った。それぞれの投与した量は:全部で 50 μg、25 μg、12 μg、および 6 μg であった。
【0113】
融合
13 の日に全採血により2匹のマウスを絶命させた。膝窩、鼠径、鎖骨下および深鼠径のリンパ節を回収し、貯留した。これらのリンパ節を2枚のスライドグラスに挟んですり潰してリンパ球をリリースした。得られたリンパ球懸濁液の半分を使って F0 骨髄腫細胞株と融合させた。残りの半分を P3 骨髄腫細胞(両骨髄腫細胞は ATCC から入手した)と融合させた。
【0114】
融合は、骨髄腫細胞の添加(リンパ球数の1/5)、遠心分離による洗浄、無血清加温アイスコブ変法ダルベッコ培地中への再懸濁、および再遠心分離により行った。得られたペレットが入っている遠心分離管を軽く叩いて細胞を解し、そのあと加温した PEG/DMSO 溶液(Sigma Chemical Co.)1 mL を穏やかにかき混ぜながらゆっくりと加えた。細胞を加温条件下に 1.5 分間保持し、そしてこのあと予備加温された無血清 IMDM を以下:1 mL/min、2 mL/min、4 mL/min、および10 mL/min、の速度で加えた。そして遠心分離管を 50 mL まで満たし、密封し、そして 15 分間インキュベートした。この細胞懸濁液を遠心分離し、上澄みを静かに別の容器に移し、10% ウシ胎仔血清を含んでいる IMDM を加えた。細胞をもう一度遠心分離にかけ、そして完全クローニング培地中に再懸濁させた。これは、IMDM、10% FCS、10% Condimed H1(Roche Molecular Systems, Pleasanton, CA, USA)、4 mM グルタミン、50 μM 2-メルカプトエタノール、40 μM エタノールアミン、および pen/strep 抗生物質から構成される。細胞を密度 4×105 リンパ球/mL で懸濁させ、100 μL/ウェルを滅菌 96-ウェル無菌ミクロ培養プレート中に分注し、5% CO2 中 37 ℃で 24 時間インキュベートした。次の日、HMT 選択培地(Sigma Chemical から入手のクローニング培地 + 1:25 HMT サプリメント)100 μL を加えた。インキュベーションの 6 日目の日、低真空源に連結された滅菌 8 分岐マニホールドを用いてそれぞれのウェルから培地約 150 μL を採取した。HT 培地 150 μLをそのあと加えた。これは クローニング培地(Cloning Medium) + 1:50 HT サプリメントからなる(Sigma Chemicals)。プレートをインキュベーターに戻し、増殖の兆候について毎日検査した。増殖が十分であると判断されたとき、ウェルを ELISA により抗体産生に関しスクリーニングした。
【0115】
ELISA スクリーニング:
37 ℃(加湿されている)で 1 時間かけて、pH 9.5 の 0.1 M 炭酸塩緩衝液中濃度 1 μg/mL にあるメトアンフェタミン-BSA コンジュゲート28 100 μL でミクロプレートを、また同じく N-エチルアンフェタミン-BSA26(Q = BSA、26b)100 μL で別のプレートをコーティングした。その後プレートを空にし、そしてTris 緩衝液、1% ゼラチン水解物、2% スクロース、および 0.17% Tween-20(全ての試薬は Sigma Chemical Co. から入手)からなるポストコーティング溶液(post-coat solution)で満たした。プレートをさらに 1 時間 37 ℃(加湿されている)でインキュベートし、そのあと 0.1% Tween 20 を含有するリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered Saline)で洗浄した。そのあとプレートを pH 7.2〜7.4 にある 0.15 M Tris 中 2% スクロース溶液で一時的に満たし、次いで空にし、そして室温で空気乾燥させた。乾いたあと、プレートをいくつかの乾燥剤ピロー(pillows)が入っているジップロックバッグの中にパックし、密封し、そして使用の時まで 4 ℃ で保存した。
【0116】
増殖段階にあるクローンが検定可能と判断された時点で、ウェルから上澄み 25 μL を採取し、96-ウェルフレキシブルプレートに移した。それぞれのウェルに培地を加えて培養サンプルの 1:10 の希釈とした。この希釈サンプルの 100 μL を上記のコーティングされたプレートのそれぞれに移した。プレートを 37 ℃ で 1 時間カバーしたままインキュベートし、そのあと PBS-Tweenで洗浄した。次いでウェルを、PBS-Tween 中に希釈されたヤギ抗マウス IgG-HRP コンジュゲート(Zymed Labs)100 μLで満たし、プレートを 1 時間再インキュベートした。プレートをこのあと再度洗浄し、K-Blue 基質(Neogen Corp)100 μL を加えた。これを 5〜15 分間成長させ、反応を 1 N HCl 100 μL を加えることにより停止させた。色を 450 nm でミクロプレート読み取り機により読み取り、コンピューターによりデータ収集して分析した。選択の基準はメトアンフェタミン−BSA コンジュゲート28との結合であった。表5は、メト−BSA 28 および NEAMP−BSA 26(Q = BSA, 26b)でコーティングされたプレートのスクリーニングの一部に対する結合データを示している。
【0117】
【表2】
選択したクローンを直ちにサブクローニングし、そして可能となった時点で、再検定した。安定サブクローンを分裂させ、凍結させそして残った培地を使って交差反応性アッセイにより特異性を測定した。
【0118】
交差反応性アッセイ
上澄みを順次希釈していき、上記のELISAスクリーニングで再検定した。最大 OD から約 50% の低下を与える希釈を選択して次の交差反応性試験に進んだ。これは、先のアッセイを、選択された希釈にある抗体を用いてまた各種濃度の薬物の存在下で繰り返すことで行った。図7に示されているチャートはこのような測定の結果を表わし、表3(上記参照)は測定された交差反応性のパーセントを示す。
【0119】
ここまでの詳細な説明および実施例は説明と例示のために提供したものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。当業者には、本明細書中で例示された本発明の好ましい実施形態の多くの変形が明らかであり、そしてそれらは本特許請求の範囲およびそれに相当するものの中に入る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の特徴を具現する化合物および免疫原を合成するための第1の代表的なスキームを示す図である。
【図2】本発明の特徴を具現する化合物および免疫原を合成するための第2の代表的なスキームを示す図である。
【図3】本発明の特徴を具現する化合物を合成するための第3の代表的なスキームを示す図である。
【図4】本発明の特徴を具現する抗体の交差反応性データの表を示す図である。
【図5】 MD クラスの薬物のメンバーによる、本発明の特徴を具現する抗体の競合阻害のELISAプロットを示す図である。
【図6】関連薬物誘導体による、本発明の特徴を具現する抗体の競合阻害のELISAプロットを示す図である。
【図7】各種薬物による、本発明の特徴を具現する抗体の競合阻害のELISAプロットを示す図である。
【図8】本発明の特徴を具現するコンジュゲートおよび抗体を用いて得られた曲線のデータを示す図である。
Claims (23)
- Jが-(CH2)k-であり、kが1、2、3、4、5、または6である、請求項1に記載の化合物。
- Tが脱離基である、請求項1に記載の化合物。
- 脱離基がN-オキシスクシンイミドである、請求項3に記載の化合物。
- Tがヒドロキシルである、請求項1に記載の化合物。
- R3はメチルであり、Jは-(CH2)3-であり、Mが-CO-である、請求項6記載の化合物。
- 前記マクロ分子キャリヤーが、タンパク質、ポリペプチド、および多糖類から構成される群から選択される、請求項6に記載の化合物。
- 前記タンパク質が、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、およびウシサイログロブリンから構成される群から選択される、請求項8に記載の化合物。
- Tが、ヘモシアニン、グロブリン、およびアルブミンから構成される群から選択されるマクロ分子キャリヤーである、請求項6に記載の化合物。
- R3がメチルであり、Jは(CH2)3であり、TがN-オキシスクシンイミドである、請求項1に記載の化合物。
- 前記マクロ分子キャリヤーが、タンパク質、ポリペプチド、および多糖類から構成される群から選択される、請求項12に記載の抗体。
- Jが-(CH2)k-であり、kが1、2、3、4、5、または6である、請求項12に記載の抗体。
- kが3であり、Mが-CO-である、請求項12に記載の抗体。
- R2が水素であり、R3がメチルである、請求項15に記載の抗体。
- Tが、ヘモシアニン、グロブリン、およびアルブミンから構成される群から選択されるマクロ分子キャリヤーである、請求項16に記載の抗体。
- 請求項12に記載の抗体を含む試薬キット。
- 請求項17に記載の抗体を含む試薬キット。
- サンプル中の検体を検出する方法であって、
検体はメチレンジオキシアンフェタミン誘導体を含み:
サンプルを請求項12に記載の抗体および抗体が検体と結合すると検出し得る標識とを接触させる段階;
抗体を検体と結合させる段階;および
抗体および検体により生成された付加生成物を検出する段階、
を含む上記方法。 - Tは、アミノデキストランである請求項21記載の化合物。
- サンプル中の検体を検出する方法であって、
検体はメチレンジオキシアンフェタミン誘導体を含み:
サンプルを前記検体に特異的な請求項17に記載の抗体および抗体が検体と結合すると検出し得る標識とを接触させる段階;
抗体を検体と結合させる段階;および
抗体および検体により生成された付加生成物を検出する段階、
を含む上記方法。
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