JP4599388B2 - 電子部品およびその製法 - Google Patents
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Description
電子部品10は、コンタクト11と、このコンタクト11を一体にモールド成型して保持した絶縁材料より成る端子保持部材12とから成り、コンタクト11は、配線基板2に形成される貫通孔21の内周部に形成された貫通孔メッキ層21Aに鑞付けされる端子部111と他の電子部品に電気接触する接触部112より成る。3は配線基板2の下面に形成された配線(図示せず)の鑞接パッド22に予め付与されている半田の如き溶接鑞剤を示す。
この鑞付けに際して、加熱溶融した溶接鑞剤3は、端子部111の表面の高い濡れ性を持ったメッキ層を濡らしながら吸い上げられ(以下これを「這い上がり」と称する)、端子部111と貫通孔メッキ層21Aの間の接合領域における溶接鑞剤3の量が減少する。加熱の回数が複数回にも及ぶと、溶接鑞剤は不足するに到り、端子部111と貫通孔メッキ層21Aの間の電気機械的接続が不完全になる。
即ち、コンタクト11の端子部111の高濡れ性領域を形成している錫メッキ層表面、或いは金メッキ層表面の一部の領域であって、溶融鑞剤が這い上がって到達する部分を帯状に強制酸化して表面層物質の酸化された被膜領域113を形成してこの領域を加熱溶融した溶接鑞剤3に濡れない低濡れ性領域にして、加熱溶融した溶接鑞剤3が越えることができない領域としている。
コンタクトの端子部の溶接鑞剤が不足する問題を解消する他の手法として、図3a〜3cに示した如く、コンタクト11の全面にニッケルメッキ層11Aを下地層として形成した後に、接触部112と端子部111との間に所定の間隔(0.3mm)を空けて、接触部112には厚く(0.4(m)金メッキ112Aを施し、端子部111には鑞付け用として薄く(0.05(m)金メッキ111Aを施し、両者の間に残されたニッケルメッキ層の露出部11Bを陽極酸化により酸化ニッケル層113’として溶融した鑞剤の這い上がり阻止領域として形成する従来例がある(特許文献2参照)。
ところが、図3a〜3bの従来例において、この酸化ニッケル層113’の幅を0. 2mm未満の狭い幅に形成することは困難である。
液体を用いて加工(メッキや塗布加工)することはその位置・範囲の精度が低く、特にメッキ領域の形成位置の精度は、液面を調整したりテープ或いは治具を用いてマスキングすることが必要であり1mm以下の公差で安定した加工を行うことは困難である。
更に、形成された酸化物被膜は、その処理が行なわれているか否かを、目視により確認することができない。陽極酸化による酸化ニッケル層の加工を接触部12の金メッキ層、端子部111の鑞付け用金メッキ層の形成に先だって実施する場合も同様の問題を生ずる。
図4aを参照するに、これは配線基板2の表面に鑞接パッド22を形成し、鑞接パッド22上に溶接鑞剤3を載置し、この溶接鑞剤3を溶融加熱してコンタクト11の端子部111を鑞接パッド22に鑞接する従来例である。
図4aに示した従来例の場合は、溶接鑞剤3が加熱溶融されると、図4bに示される如く溶融した溶接鑞剤3が、端子部111の表面111Aを濡らしながら吸い上げられ、図4cに示される如く接触部112の表面112Aにも到達してその表面を濡らし、それだけ端子部111と鑞接パッド22の間の接合領域における溶接鑞剤3の量が不足する。なお図においてBは両表面111Aと112Aの境界線である。
図3に示された従来例では、メッキ領域の形成位置の精度が低く、安定した加工を行うことは困難であり、微細なコンタクトの場合に量産性に乏しくなる。また形成された酸化物被膜を目視により確認することはできない。
図4に示された従来例では、溶接鑞剤3の量が不足する。
このように、図1〜4に示された従来例において、溶接鑞剤3の這い上がり問題が解消されていないことを説明した。
本願発明の一つの観点として、コンタクト11の素材に端子部と接触部とを形成しかつ溶接鑞剤3に対する低濡れ性表面を持たせ、その表面上に溶接鑞剤3に対する高濡れ性物質で構成した仕上げメッキ層を形成し、溶融した鑞剤が這い上がってくる端子部111の高濡れ性仕上げメッキ層の一部を選択的に取り除いて素材の低濡れ性表面の露出部114を形成し、この露出部を溶融した鑞剤の這い上がりを阻止する阻止部として働かせるように構成した改良したコンタクト11を得て、この改良したコンタクト11を用いて基板に鑞接して電子部品10を構成する。
コンタクト11の表面に施される仕上げメッキは、たとえば金メッキ、錫或いはSnとAg、SnとCu、SnとCu及びAgとの錫合金メッキ、鉛或いはPbとSnとの鉛合金メッキ、Pd或いはPdとNiまたはPdとCoのPd合金が使用可能である。
この下地メッキ層の材質は、溶接鑞剤3に対して低い濡れ性を持った導電材料なので、仕上げメッキ層のみを除去して下地メッキ層を露出させて、この下地メッキ層の露出部によって上記溶融した鑞剤の這い上がり阻止部を形成することもできる。
また、低い濡れ性を持った導電材料で構成した素材の上に高濡れ性物質で構成した下地メッキ層を形成し、その上に仕上げメッキ層を形成した場合には、仕上げメッキ層および下地メッキ層の双方を取り除いて露出部114を得る。
なお、これまで素材は低濡れ性表面を有するものと言う説明において、下地メッキ層は別体として説明してきたが、下地メッキ層が素材と一体となったものを以って素材と考えることもできる。この考えによれば、下地メッキ層の表面が、素材の表面と定義できる。
図6(f)に斜視図で示したように、電子部品10は、コンタクト11とインシュレータハウジング12とからなる。
配線基板2の表面には鑞接パッド22が形成されている。周知の如く、この配線基板2には印刷配線(図示せず)が設けられ、鑞接パッド22と結合している。なお、図1の如く、印刷配線が基板の裏面(図において基板2の下側)に設けられ、貫通孔と貫通孔メッキ層とを介して基板表面の鑞接パッドに結合するように構成しても良い。
コンタクト11の素材を導体で構成する場合には、銅合金で構成する。
コンタクト11の表面に施される仕上げメッキは、金メッキ、錫或いは錫合金メッキ、鉛或いは鉛合金メッキの何れかで構成する。
そして、仕上げメッキに先だって、コンタクト11を構成する金属材料に対する仕上げメッキの密着を良好にするために、素材11Xの表面に形成する下地メッキ層11Aはニッケル合金メッキ層とする。
更に、低濡れ性物質の露出部114は、コンタクト11の端子部111の表面に形成された鑞接用仕上げメッキ層111Aの一部で接触部112に近い部分であって、従来鑞剤が這い上がってくる領域に帯状形状で、所定幅寸法に形成し、この露出部によって端子部の仕上げメッキ層が111A−1と111A−2とに2分される。
図5(a)を参照するに、これは配線基板2の表面に形成された鑞接パッド22に溶接鑞剤3が載置され、溶接鑞剤3表面に仕上げメッキを施されたコンタクト11の端子部111が係合せしめられた非加熱の状態を示す。
図5(b)は、溶融した溶接鑞剤3が端子部111の表面を濡らしながら這い上がり始めたところを示している。なお、端子部111と接触部112とは、この実施例においては、接触部112が外部とより良好に接触するように、接触部112の仕上げメッキ層112Aの材質及びメッキ層厚を端子部111の仕上げメッキ層111Aの材質及びメッキ層厚と異ならせ、したがって、端子部111仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aの間に、境界線Bがあるものとして示す。
図5(c)は溶融した溶接鑞剤3が端子部111の表面を濡らし、この発明による低濡れ性露出部114に到達してこれを越えることができないことを示し、溶融した溶接鑞剤3がこれ以上這い上がり移動することはない。
図6(e)は、図5(c)の5e−5e線における断面図である。ここで、従来例の如く低濡れ性露出部114が存在しない場合、図4(c)を参照するに、端子部111の全表面に到達した溶融溶接鑞剤3は更に接触部112表面を這い上がるので、端子部111と鑞接パッド22の間の接合領域における溶接鑞剤3の量が不足するが、本願発明に依れば低濡れ性露出部114を形成することによりこの更なる這い上がり移動は阻止される。
この実施例においては、コンタクト11の表面に形成される高濡れ性物質で構成された仕上げメッキ層のうち、端子部111の領域111Aの一部を帯状に選択的に取り除き、端子部111の下地メッキ層を露出させて低濡れ性露出部114を形成する。
図7(h)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より薄く形成し、下地メッキ層の露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域内に形成した場合を示す。(この図は図6(d)と同じ)
図7(i)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より厚く形成し、下地メッキ層の露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域内に形成した場合を示す。
図7(k)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より薄く形成し、下地メッキ層の露出部114を接触部112の仕上げメッキ層112Aの領域内に形成した場合を示す。
この場合には素材の材質は低濡れ性の導体が望ましいが、例えばレーザー照射によるメッキ層の一部除去工程によって低濡れ性をもつに至るような物質を使用することも可能である。 また、下地メッキ層の材質は、その濡れ性に限定はない。
図8(m)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より薄く形成し、素材11Xの露出部114を端子部111の仕上げメッキ層111Aの領域とその下の下地層を共に一部除去して形成した場合を示す。
図8(o)は、端子部111の仕上げメッキ層111Aと接触部112の仕上げメッキ層112Aとが異種の材質または、同一材質であっても端子部111の仕上げメッキ層111Aの膜厚を接触部112の仕上げメッキ層112Aの膜厚より厚く形成し、素地11Xの露出部114を接触部112の仕上げメッキ層112Aの領域とその下の下地層を共に一部除去して形成した場合を示す。
なお、これら図7または図8において、下地メッキ層が存在しない場合には、仕上げメッキ層のみを削除することによって、素材11Xの露出部114を形成できることは容易に理解できるであろう。
またここで露出部114を形成する位置、及びその形状も、帯状に限るものではない。
例えば、図9(q)〜(s)に示す如く、端子部111の領域に形成することが望ましい。
同じように、この露出部114が、帯状に形成される場合であっても、端子部111を一周することが望ましいが、完全に連続して一周することなく、不連続であっても、その不連続部が、狭められた這い上がり領域を形成していれば、這い上がり阻止の効果がある。
この実施例は、図3に示した従来例のコンタクトを改良したものである。(図10(a))この実施例においても、他の図面に示したものと同一物は同一符号を付す。
この従来例が前述した如く、メッキ技術を用いて、ニッケルメッキ層の下地層11Aをコンタクト11の素材表面に形成した後、所定の間隔(0.3mm)を持った露出部11Bとして露出させるように、上記所定の間隔だけ空けて接触部112用の厚い(0.4(m)金メッキ部112Aと端子部111鑞付け用の薄い(0.05(m)金メッキ部111Aを形成し(図3(b))、その後上記ニッケルメッキ層の露出部を陽極酸化によって酸化ニッケル層113’を形成し(図3(c))、これを溶融鑞剤の這い上がり阻止領域として用いているのに対し、本願発明においては、図10(b)に示す如く、コンタクト素材11Xの表面に下地層11Aを形成した後、接触部112側には接触用の金メッキ部112Aと、端子部111側には鑞付け用の金メッキ部111Aを形成する。この時両者の間には従来例のように所定の間隔だけ空けることは要しない。
これにより、金メッキ部111Aが、2つの部分111A−1と111A−2に2分される。
このコンタクトを、図2の如く貫通孔21と、貫通孔メッキ層21Aと、溶接鑞剤3とを持った基板2に装着し、鑞剤3を溶融したとき、この鑞剤3は、2分された端子部側金メッキ部の一方111A−1を這い上がってくるが、図10(d)に示す如く低濡れ性露出部114によってそれ以上の這い上がりが阻止され、2分された端子部側金メッキ部の他方111A−2及び接触部側金メッキ部112Aには到達しない。
更に、除去形成した低濡れ性露出部の位置および範囲を目視で容易に確認することができるので、寸法管理も容易に実施することができ、量産性が向上する。
3 溶接鑞剤
10 電子部品
11 コンタクト
11A 下地ニッケルメッキ層
11B 下地ニッケルメッキ層の露出部
11X 素材
12 端子保持部材
21 貫通孔
21A 貫通孔メッキ層
22 鑞接パッド
111 端子部
111A、111A-1、111A-2 端子部メッキ層
112 接触部
112A、112A-1、112A-2 接触部メッキ層
114 低濡れ性物質の露出された領域
113 酸化被膜
113’ 酸化ニッケル層
B 境界線
Claims (6)
- 鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品であって、
上記コンタクトは、
上記端子部および接触部が形成されたコンタクト素材と、
上記コンタクト素材の全表面上に形成され溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成された下地メッキ層と、
上記下地メッキ層の全表面上に形成され、溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層と、
溶接鑞剤の這い上がり阻止領域として働く低濡れ性領域とを具え、
上記高濡れ性仕上げメッキ層が、その一部にレーザー加工技術により選択的に除去された領域を持ち、上記低濡れ性下地メッキ層が、その一部に上記仕上げメッキ層の選択的に除去された領域を通じて露出した領域を持ち、上記下地メッキ層の露出した領域を上記溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする
ことを特徴とする。 - 請求項1に記載される電子部品であって、
上記下地メッキ層はニッケル合金メッキ層であることを特徴とする。 - 鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品であって、
上記コンタクトは、
上記端子部および接触部が形成され溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成されたコンタクト素材と、
上記コンタクト素材の全表面上に形成された下地メッキ層と、
上記下地メッキ層の全表面上に形成され、溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層と、
溶接鑞剤の這い上がり阻止領域として働く低濡れ性領域とを具え、
上記高濡れ性仕上げメッキ層とその下の上記下地メッキ層が、その一部にレーザー加工技術により選択的に除去された領域を持ち、上記低濡れ性コンタクト素材が、その一部に上記仕上げメッキ層と下地メッキ層の選択的に除去された領域を通じて露出した領域を持ち、上記コンタクト素材の露出した領域を上記溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする
ことを特徴とする。 - 鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品の製造方法であって、
コンタクト素材に端子部および接触部を形成し、
上記コンタクト素材の全表面上に、溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成された下地メッキ層を形成し、
上記下地メッキ層の全表面上に溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層を形成し、
上記端子部と接触部との中間部にある上記高濡れ性仕上げメッキ層の一部領域をレーザー加工技術により選択的に除去し、この除去領域を通じて上記低濡れ性下地メッキ層を露出させ、この露出された領域を溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする、
ことを特徴とする。 - 鑞接される端子部および接触部を持ったコンタクトを具える電子部品の製造方法であって、
溶接鑞剤に対する低濡れ性を持った物質で構成されたコンタクト素材に、端子部および接触部を形成し、
このコンタクト素材の全表面上に下地メッキ層を形成し、
この下地メッキ層の全表面上に溶接鑞剤に対する高濡れ性を持った物質で構成された仕上げメッキ層を形成し、
上記端子部と接触部との中間部にある上記高濡れ性仕上げメッキ層の一部領域と、その下の下地メッキ層の一部領域とを共にレーザー加工技術により選択的に除去し、この除去領域を通じて上記低濡れ性コンタクト素材を露出させ、この露出された領域を溶接鑞剤の這い上がり阻止領域とする、
ことを特徴とする。 - 請求項4に記載される方法であって、
上記下地メッキ層としてニッケル合金を用いることを特徴とする。
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