JP4596710B2 - インクリメンタルエンコーダを使用した位置検出器による位置のプリセット方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクリメンタルエンコーダを使用した位置検出器による位置のプリセット方法に関し、例えば同期制御方式が適用される複数の駆動系を持つ印刷機や搬送装置、加工機器等に使用する位置のプリセット方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2を参照して、同期制御方式が適用されるプロセスラインの一部について説明する。ここでは、わかり易くするために駆動系、つまり機械軸が2つの場合について示し、その一方をマスター系、他方をスレーブ系として説明するが、実際の同期制御方式では機械軸は2つ以上であり、マスター系とスレーブ系の関係も固定的に設定されるものではない。
【0003】
図2において、マスター系においては速度指令器100からの速度指令値がドライバ60に与えられ、ドライバ60は速度指令値に基づいてモータ61を回転させる。そして、モータ61の動力を動力伝達機構62を介して伝達することで第1のローラ63を回転駆動する。モータ61の回転量はエンコーダ65により検出され、パルス信号が速度フィードバック値として出力される。第1のローラ63には第2のローラ64が圧接され、第1のローラ63との間の被搬送物200を搬送する。第1のローラ63には原点マークが付され、これは原点マークセンサ66により検出される。位置検出カウンタ67はエンコーダ65からのパルスをカウントし続け、原点マークセンサ66からの信号でリセットされる。エンコーダ65には、インクリメンタル、またはアブソリュートエンコーダが使用される。インクリメンタルエンコーダの場合は、位置検出カウンタ67のカウント値は、モータ61の回転量、言い換えればマスター系の基準位置を示す信号として扱われる。一方、アブソリュートエンコーダの場合は、検出値がそのまま基準位置として扱われる。尚、この基準位置はマスター系の機械軸の基準位置と見なすことができ、機械軸の位相の基準とみなすことができる。
【0004】
一方、スレーブ系においてはモータ71の動力を動力伝達機構72を介して伝達することで第1のローラ73を回転駆動する。モータ71の回転量はエンコーダ75により検出され、パルス信号が速度フィードバック値として出力される。第1のローラ73には第2のローラ74が圧接され、第1のローラ73との間の被搬送物200を搬送する。第1のローラ73にも原点マークが付され、これは原点マークセンサ76により検出される。位置検出カウンタ77は、エンコーダ75がインクリメンタルエンコーダの場合はパルスをカウントし続け、原点マークセンサ76からの信号でリセットされる。エンコーダ75がインクリメンタルエンコーダである場合はまた、位置検出カウンタ77のカウント値は、モータ71の回転量、言い換えれば位置のフィードバックを示す信号として扱われる。一方、アブソリュートエンコーダの場合は、検出値がそのまま位置のフィードバックとして扱われる。このフィードバック位置はスレーブ系の機械軸の位置のフィードバックと見なすことができ、基準位置との差を位相のフィードバックと見なすことができる。
【0005】
マスター系の位置検出カウンタ67からの基準位置とスレーブ系の位置検出カウンタ77からのフィードバック位置とを演算器81でサミングすることで相対位置、すなわち位相が算出され、これを更に図示しない位相設定器からの設定信号が演算器81でサミングされて位相誤差が算出される。この算出結果は積分器82で積分され、この積分値は演算器83で速度指令値に補正量として加算されてスレーブ系のドライバ70に与えられる。
【0006】
このような構成は、例えばセクショナルドライブ型と呼ばれる印刷機や、加工機、搬送装置等の様々なプロセスラインに適用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図3は、図2におけるマスター系の構成を示す。ここでは、エンコーダ65は第1のローラ63に設けられている。いずれにしても、上記のようにエンコーダ65としてインクリメンタルエンコーダを使用する場合には、位置検出カウンタ67にはリングカウンタが使用される。リングカウンタは入力したパルスをカウントして原点検出でクリアされるが、電源投入時やシステムリセット時には、システム起動時の処理によってカウント値がクリアされる。
【0008】
従って、電源投入やシステムリセット後は、初回の原点が検出されるまでは位置(角度)が確定できないので、現在位置(角度)のプリセット動作ができず、システム起動後の初期作業として原点を検出する動作を必要としていた。これは、例えば第1のローラ63を原点が検出されるまで手で回すというような作業である。
【0009】
一方、上記のような手作業を無くすために、位置検出カウンタ67のカウント値をラッチメモリに保存するようなことが考えられる。しかし、カウント値をラッチメモリに保存したとしても、電源断時に第1のローラ63が動いてしまったら意味がなく実用性に乏しい。
【0010】
そこで、本発明の課題は、インクリメンタルエンコーダを使用した位置検出器において、電源投入やシステムリセット後のプリセットを容易かつ確実に行うことのできる位置のプリセット方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、回転体の回転量に応じたパルスを出力するインクリメンタルエンコーダからのパルスをリングカウンタでカウントして位置検出を行い、該リングカウンタは前記回転体に設定された原点が検出された時に出力される原点信号でクリアされる位置検出器において、電源投入やシステムリセット後、手動又は寸動運転により前記回転体をプリセットする位置まで回転させて、初回原点を検出する前、すなわち現在位置が確定する前でもプリセット信号を入力し、前記プリセット信号入力時の前記リングカウンタのカウント値Pdを仮登録し、続いて、前記回転体の運転を開始させることにより初回の原点信号が入力されることで前記リングカウンタが初回にクリアされた時にはその直前のカウント値Prを得て、あらかじめ知られている位相一周期分のカウント値Pmから前記カウント値Prを減算した値Peを初期誤差とし、前記カウント値Pdと前記初期誤差Peの和の値をプリセット値として使用するようにしたことを特徴とするインクリメンタルエンコーダを使用した位置検出器による位置のプリセット方法が提供される。
【0012】
【作用】
本発明によるプリセット方法では、電源投入やシステムリセットによって位置検出用のリングカウンタがクリアされ、現在位置が確定していない状態でも、プリセット信号が入力されたらその時のカウント値Pdを仮登録する。その後、初回の原点が検出された時に、リングカウンタがクリアされる直前のカウント値Prをピックアップする。このカウント値Prを位相一周期分のパルス数、すなわちカウント値Pmから差し引いて初期誤差値Peとし、仮登録されたプリセット値Pdに初期誤差値Peを加算した値を正規のプリセット値として使用する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明によるプリセット方法を実施した場合について、図3で説明したようなリングカウンタによる位置検出カウンタにおける電源投入、またはシステムリセット後の位置検出のカウント値を示す。
【0014】
図3をも参照して説明すると、本発明によるプリセット方法は、図3に一点鎖線で示す、制御装置内の位置プリセット回路68に位置検出カウンタ67と原点信号を接続して実現される。
【0015】
本発明によるプリセット方法を実施する際には、第1のローラ63が手動、または寸動運転でプリセットする位置まで回される(図1の▲1▼)。プリセットする位置で第1のローラ63が止められる(図1の▲2▼)。続いて、プリセット信号が入力されてその時の位置検出カウンタ67のカウント値Pdが仮登録される(図1の▲3▼)。運転が開始されると(図1の▲4▼)1回目の原点が検出され、仮登録時の誤差を修正して正規のプリセット位置が登録される(図1の▲5▼)。つまり、制御装置内の位置プリセット回路68は、1回目の原点検出前の位置が確定していない状態でプリセット信号が入力されると、その時の位置検出カウンタ67のカウント値Pdを仮登録する。なお、プリセット信号はオペレータの操作により制御装置に入力される。その後の運転で、制御装置が1回目の原点を検出した時に、リング直前(位置検出カウンタ67がクリアされる直前)のカウント値Prを位相一周期分のカウント値Pmから差し引いた値Pe(=Pm−Pr)を初期誤差値Peとする。この初期誤差値Peをプリセット信号入力時に仮登録されたカウント値Pdに加算し、(Pd+Pe)を正式なプリセット値として制御に使用する。
【0016】
制御装置においては、位置検出カウンタ67のカウント値が常にカウント周期でスキャンされてレジスタに格納、更新されるようになっており、原点マークセンサ66からの原点信号到来によりリセットされる直前のカウント値がピックアップされる。また、位相一周期分のカウント値Pmは既知である。
【0017】
なお、同期制御システムでは、通常は1回目の原点が検出されるまでは位置や位相の修正が加わらないようにインターロックされているので、仮登録されたプリセット値Pdが制御に反映されて誤動作を招くことはない。
【0018】
初期誤差値Peは、位置検出カウンタ67におけるリング直前のカウント値をピックアップするので制御周期による誤差を持つが、1回目の原点検出は第1のローラ63の停止状態からの立ち上がりであるので速度が遅く、制御周期の影響は少ない。また、アプリケーションにもよるが、例えば印刷機等の同期制御システムでは停止状態(図1参照)で位相設定のプリセット信号入力を行うので、精度上の問題になることはない。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によればインクリメンタルエンコーダを使用した位置検出器において、電源投入やシステムリセット後のプリセットを容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプリセット方法を実施する際の位置検出カウンタの出力波形を示した図である。
【図2】本発明が適用される例として、同期制御方式のプロセスラインの一部を示した図である。
【図3】図2におけるマスター系の構成の一部を示した図である。
【符号の説明】
61、71 モータ
62、72 動力伝達機構
63、73 第1のローラ
64、74 第2のローラ
65、75 エンコーダ
66、76 原点マークセンサ
67、77 位置検出カウンタ
82 積分器
100 速度指令器

Claims (1)

  1. 回転体の回転量に応じたパルスを出力するインクリメンタルエンコーダからのパルスをリングカウンタでカウントして位置検出を行い、該リングカウンタは前記回転体に設定された原点が検出された時に出力される原点信号でクリアされる位置検出器において、
    電源投入やシステムリセット後、手動又は寸動運転により前記回転体をプリセットする位置まで回転させて、初回原点を検出する前、すなわち現在位置が確定する前でもプリセット信号を入力し、
    前記プリセット信号入力時の前記リングカウンタのカウント値Pdを仮登録し、
    続いて、前記回転体の運転を開始させることにより初回の原点信号が入力されることで前記リングカウンタが初回にクリアされた時にはその直前のカウント値Prを得て、あらかじめ知られている位相一周期分のカウント値Pmから前記カウント値Prを減算した値Peを初期誤差とし、
    前記カウント値Pdと前記初期誤差Peの和の値をプリセット値として使用するようにしたことを特徴とするインクリメンタルエンコーダを使用した位置検出器による位置のプリセット方法。
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