JP4596584B2 - γ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体 - Google Patents
γ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4596584B2 JP4596584B2 JP35344999A JP35344999A JP4596584B2 JP 4596584 B2 JP4596584 B2 JP 4596584B2 JP 35344999 A JP35344999 A JP 35344999A JP 35344999 A JP35344999 A JP 35344999A JP 4596584 B2 JP4596584 B2 JP 4596584B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- derivative
- butyrolactone
- succinic acid
- butene oligomer
- reaction
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08F—MACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
- C08F8/00—Chemical modification by after-treatment
- C08F8/04—Reduction, e.g. hydrogenation
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Polymers & Plastics (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有用なマクロモノマーとしての末端γ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マクロモノマーとは、片末端に重合性官能基を有する高分子量(通常、分子量が数百〜1万程度)モノマーと見なし得る化合物のことを指し、1972年に米国のMilkovichらによって提唱されたのが最初である。(USP3786116(1976)あるいはACS Polym.Prepr.,21,40(1980)等に記載)
従来の連鎖移動法によるグラフト共重合では、幹ポリマーの存在下で枝となるモノマーが重合されるために、得られるグラフト共重合は枝の長さや分布が均一である。しかしながら、新しく提案されたマクロモノマー法は、予め分子量やその分布、立体規則性、疎水性、親水性等の物性を考慮しながら制御して製造するマクロモノマーを、重縮合・重付加反応によりグラフト高分子を生成させることができ、構造の制御されたグラフト高分子の分子設計法として優れている。
このマクロモノマー法を利用した新規材料の創出例については、『マクロモノマーの化学と工業』(山下 雄也 編著、アイピーシー発行(1989))の文献にも触れられているように、多種多様なマクロモノマーの提案がなされている。
【0003】
一方、ブテンオリゴマー誘導体をマクロモノマーとして利用する試みは行われてきたが、殆どが主鎖成分がイソブチレン骨格で構成され、かつ、そのα、ω−両末端に官能基を有する両末端ブテンオリゴマーである。それらの一例として、J.P.KennedyらがJournal of Polymer Science:Polymer Chemical Edition,Vol.20,p2809−2817(1982)の論文において、両末端にエポキシ官能基を有し、主鎖がイソブチレン骨格で両末端にエポキシ官能基を有するブテンオリゴマー誘導体の製造について開示している。
しかしながら、このような両末端官能基を有するブテンオリゴマー誘導体は、本質的に本発明の片末端官能基を有するブテンオリゴマー誘導体と分子構造が異なることは明白である。
【0004】
では、ブテンオリゴマー誘導体を開発するために基本樹脂となり得るブテンオリゴマーについては、従来は塩化アルミニウム等の触媒で、所謂、「低反応性ブテンオリゴマー」が製造されていたが、最近においては種々の触媒の使用によりその構造、とりわけオレフィンの結合形式を変えた末端ビニリデンオレフィン構造の含有量が多い、所謂、「高反応性ブテンオリゴマー」が製造されるようになってきた。
例えば、アメリカ特許第4,152,499号公報に代表されるように、高反応性ブテンオリゴマーの製造が開示されており、更には、無水マレイン酸と反応させて、コハク酸末端基を有するブテンオリゴマー誘導体(以下、コハク酸誘導体と略記する)を高収率で製造できることを開示している。
【0005】
また、この高反応性ブテンオリゴマーの化学反応性を利用する新規誘導体の開示には、上記コハク酸誘導体以外には、以下のように報告例がある。
例えば、日本特許第2,908,557号におけるカルボニル誘導体、特開平8−291,183号公報におけるシリル誘導体、日本特許第2,696,076号におけるオキソ誘導体およびそれを更に化学変換させたモノアミン誘導体等がある。
【0006】
つまり、これまでに片末端にγ−ブチロラクトン官能基を有するブテンオリゴマー誘導体については開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、有用なマクロモノマーとしての末端にγ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1は、次の(1)から(3)の構造を有するブテンオリゴマー誘導体に関する。(以下、この誘導体をγ−ブチロラクトン誘導体と略記する)
(1)一方の末端基がtert−ブチル基であり、
(2)炭化水素主鎖の繰り返し構成単位の数の80モル%以上が下記式(1)で表され、
(3)他の一方の末端基が、下記式(2)または(3)で表されるγ−ブチロラクトン官能基を60モル%以上含有する。
【化3】
【化4】
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のγ−ブチロラクトン誘導体は、次の通り特定構造のブテンオリゴマーからコハク酸誘導体を経て、段階的に製造することができる。
【0010】
まず、コハク酸誘導体を製造するには、出発原料には次の特定構造の高反応性ブテンオリゴマーを用いる。
(1)一方の末端基がtert−ブチル基であり、
(2)炭化水素主鎖の80モル%以上が前記式(1)で表される繰り返し構成単位からなり、
(3)かつ、もう一方の末端基として、60モル%以上の式(4)で表される末端ビニリデンオリゴマー末端基を含有する。
【化5】
【0011】
上記特定構造の高反応性ブテンオリゴマーは、イソブチレン単独を重合する、またはイソブチレンと適宜にブテン−1、ブテン−2またはこれらの混合物などのオレフィンとカチオン重合することによって製造することができる。この製造法としては、前記アメリカ特許第4152499号公報記載の実施例のようにBF3触媒によるか、あるいは本発明者らが開発した特開平10−306128号公報による方法を参考にすることができる。
【0012】
次に、この高反応性ブテンオリゴマーからコハク酸誘導体を製造する方法としては、前記アメリカ特許第4,152,499号公報記載の方法に代表されるように、高反応性ブテンオリゴマーに対して、無触媒の加熱のみで無水マレイン酸を熱付加反応させることによって製造することができる。
【0013】
この無水マレイン酸の付加反応は、Ene反応機構で進行することがM.TessierらのEur.Polymer Journal:Vol.20,No.3,p269−280(1984)の論文において明らかにされており、さらには、その生成物の構造についても以下のように特定している。
前記式(4)のビニリデン末端基のオレフィンに対して無水マレイン酸がEne反応付加して、この末端基は下記式(5)あるいは式(6)で表わされる不飽和オレフィンを有するコハク酸末端基に変換される。
【化6】
つまり、生成してくるこの両者の違いは、オレフィンの置換様式の違いであり、式(5)はビニリデンタイプであり、式(6)は3置換タイプである。この式(5)と式(6)のコハク酸誘導体の生成比は、製造条件によって異なるが、一般的には式(5)の方が優勢して生成してくる。
なお、このようにして製造できる構造特定のコハク酸誘導体は、次の述べる本発明のγ−ブチロラクトン誘導体の製造原料となり得る。
【0014】
(γ−ブチロラクトン誘導体の製造)
以下に、本発明の前記式(2)あるいは式(3)で表わされるγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法について説明する。γ−ブチロラクトン誘導体の製造には幾通りの方法が考えられ、前記記載のコハク酸誘導体を水素化する方法や、あるいは、先に我々が見出したブタンジオール誘導体において、その末端ブタンジオール基の脱水反応させる方法などが挙げられる。
【0015】
ここでは、前者のコハク酸誘導体の水素化によるγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法ついて詳説する。つまり、本方法はコハク酸誘導体を適当な水素化触媒によって水素化することで、コハク酸末端基中に存在するオレフィンの接触還元とコハク酸末端基のどちらか一方のカルボニル基のメチレン基への水素化分解が同時に進行し、目的のγ−ブチロラクトン誘導体を得ることができる。
【0016】
この水素化分解による製造法として、化学工業の基幹商品であるγ−ブチロラクトンあるいは1,4−ブタンジオールの製造方法を参考にすることが可能であり、これまでにγ−ブチロラクトンの製造法としては、Uwe HerrmannらがInd.Eng.Chem.Res,Vol.36,p2885−2896(1997)の論文に代表されるように、無水マレイン酸原料からγ−ブチロラクトンおよび1,4−ブタンジオールを効率よく製造する方法を開示している。
【0017】
つまり、このHerrmannらの方法は、無水マレイン酸原料に対して適当な水素化触媒を共存させて水素化分解させることで、まず、無水マレイン酸分子中のオレフィンが接触還元されてコハク酸となり、次いでこのコハク酸中に存在するどちらか一方のカルボニル基をメチレン基に水素化分解させることでγ−ブチロラクトンを得ることができる。一連の反応は次に示す反応スキーム1の通りである。
【化7】
【0018】
そこで、本発明のγ−ブチロラクトン誘導体の具体的な製造方法においては、コハク酸誘導体を水素ガス共存下で水素化触媒を作用させることによって、前述の無水マレイン酸からγ−ブチロラクトンへの変換と同様に、各コハク酸誘導体の末端官能基に存在するオレフィンの接触還元とカルボニル基の水素化分解が同時に進行し、γ−ブチロラクトン誘導体を高収率でもって変換することが可能である。
【0019】
製造条件としては、まず、水素ガスの水素圧は常圧〜20MPa、好ましくは10MPa以下、反応温度は0〜300℃の範囲で、好ましくは240℃以下に設定する。つまり、300℃以上の反応温度にすると、コハク酸誘導体あるいはγ−ブチロラクトン誘導体を構成する、式(1)で表わされるイソブテン骨格の熱分解が生じるためによろしくない。また、反応時間は特に限定されないが通常は1〜3時間程度である。
【0020】
使用される水素化触媒は、均一系、不均一系触媒のどちらでもよく、触媒の種類も特に限定はされないが、本発明のような水素化反応には、反応終了後の生成物の精製を考慮すると不均一系触媒が好まれて使用される。
触媒の種類においても、特に限定がなく、Pd,Pt,Ru等の貴金属系やCu−Cr系触媒等を使用することができ、これらの金属触媒類は、アルミナ、シリカ、活性炭等の不活性担体に担持されたものでも構わない。これらの触媒は少量でも触媒的作用をするためその使用量は少なく、たとえば用いるコハク酸誘導体に対して0.01〜50モル%の量で十分である。
【0021】
この反応に使用できる反応溶媒は、原料のコハク酸誘導体が可溶で反応に活性な溶媒、例えば、ヘキサン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒などを用いることができる。さらに好ましくは、反応基質自体を溶媒として無溶媒下で還元反応を行わせる。
【0022】
但し、高分子量のコハク酸誘導体を原料に使用する場合には、反応中の界面での触媒との接触効率が液粘度に左右されることと、還元されて生成するγ−ブチロラクトン誘導体も原料と同様の粘度を有するために、反応原料自体を前記記載の溶媒等で希釈することが好ましい。
【0023】
この水素化反応後は、触媒残さをろ過等の常法手段で除去する。また、反応溶媒を使用した場合においては、触媒を除去させた反応溶液を濃縮、乾燥等の適宜の分離・回収手段によって、目的物であるγ−ブチロラクトン誘導体を得ることができる。
【0024】
以上のようにして得られた生成物においては、原料のコハク酸誘導体中のオレフィンの飽和化と、コハク酸末端基のどちらか一方のカルボニル基がメチレン基に還元された、前記式(2)あるいは(3)で表わされるγ−ブチロラクトン誘導体に変換される。なお、このようにして製造されるγ−ブチロラクトン誘導体は、常温常圧下で安定に存在する物質である。従って、製造されたγ−ブチロラクトン誘導体をさらに高純度で得るためには、常法の分離手段、たとえばシリカゲルクロマトグラフィーを分離手段として容易に単離・回収することが可能である。なお、これらのγ−ブチロラクトン誘導体は、いずれの場合も既往の文献に記載の無い新規な化合物群である。
【0025】
また、これらのγ−ブチロラクトン誘導体は、主鎖成分に柔軟性のある長いブテンオリゴマーを持ち、かつ、末端置換基に種々の化学反応が可能なヒドロキシ酸であるγ−ブチロラクトン官能基を有するために、様々な用途で有用なマクロモノマーとなり得る可能性を有している。以下にその応用例を紹介する。
【0026】
まずは、エポキシ樹脂材料(配合物)に対する反応型可とう性付与剤としての使用が考えられる。エポキシ樹脂材料(配合物)は、エポキシ樹脂と硬化剤とで基本的に構成されているが、その応用目的に応じて、これに様々な添加剤が加えられる。その添加剤としては、改質成分として可塑剤、液状ゴム、充填剤等が挙げられ、流動調整成分として希釈剤、チキソトロピー化剤等が挙げられる。さらに、必要に応じて、顔料、溶剤、消泡剤、レベリング剤および粘着付与剤等が加えられる。その添加剤の改質成分として可塑剤の種類において、エポキシ硬化樹脂に対して可塑化による可とう性を付与するために、可とう性側鎖を持つモノエポキサイド化合物等が提案されている。
【0027】
しかし、本発明のγ−ブチロラクトン誘導体をエポキシ樹脂に使用した場合には、前述のモノエポキサイド化合物等の使用時の挙動と異なることが予想される。つまり、その官能基がカルボキシル基と水酸基で構成される化学反応性に富むヒドロキシ酸官能基であるため、エポキシ樹脂の硬化時に、エポキシ樹脂の構成官能基であるエポキシ基や硬化剤の構成官能基であるアミン基等と反応することで、樹脂マトリックス上に化学結合で取り込まれ、その結果、誘導体中のブテンオリゴマー成分によって所望の可とう性を付与させる可能性を有している。
【0028】
また、これらのγ−ブチロラクトン誘導体は重縮合可能なマクロモノマーとなる可能性がある。一般的に、γ−ブチロラクトン官能基は5員環ラクトンの熱力学的安定性から重合能が乏しいことが、F.Korteらの報文(Polym.Lett..,Vol4,p685(1966))からも公知であった。しかし、H.Fukuzakiらの報文(Macromol.Chem.,Vol190,p1553(1989))に代表されるように、近年重合触媒の開発によりγ−ブチロラクトンを開環重重合させることが可能となり、γ−ブチロラクトンから生分解性を有するポリエステルの合成研究がなされてきている。つまり、本発明のγ−ブチロラクトン誘導体も末端官能基がγ−ブチロラクトンであるため、このようなポリエステル合成の際のマクロモノマーとしての利用が可能となる。
【0029】
以上のように、本発明のγ−ブチロラクトン誘導体は、エポキシ樹脂等に対しての反応型可塑剤として、あるいは重縮合反応に対しては新規ポリマー合成のためのマクロモノマーとして利用することが可能であって、高反応性ブテンオリゴマー単独あるいはγ−ブチロラクトン単独からは発揮できない物性を有する機能性材料を創出することを可能とする。
【0030】
そこで、以上の本発明の誘導体のこのような利用にあたって、この効果を十分発揮させるためには、出発原料として用いるブテンオリゴマーの一定した分子量および前記式(1)の繰り返し構造、即ちブテンオリゴマーの分子骨格の規則性が肝要となってくる。
【0031】
まず、ブテンオリゴマー中の分子量は、質量分析(MS)測定あるいはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって決定する。さらに、本発明のブテンオリゴマー誘導体が高分子量の場合にはGPC測定によるが、その分散度(Mw/Mn)の測定値が1.0〜2.5の範囲にあり、このように分子量分布が狭いことにより、一定した物性を有するマクロモノマーとして利用することが可能である。
【0032】
次に、ブテンオリゴマーの分子骨格についてであるが、本発明者らの先の出願(特開平10−306128号公報)に述べた方法に準拠して決定した。つまり、具体的な分子骨格の決定には核磁気共鳴(NMR)測定における、炭素−水素間の連結および炭素−炭素間の連結を調べるHSQC法やINADEQUATE法の測定結果に基づいている。
【0033】
HSQC法では、横軸に1H−NMRを、縦軸に13C−NMRをとり、1H−NMRのピークと13C−NMRのピークが交差している点がその対応する炭素と水素が連結していることになり、これにより分子中の炭素−水素間の連結を知ることができる。また、INADEQUATE法では、横軸に13C−NMRをとり、そのピークから縦軸に炭素の存在位置を測定する。その炭素の存在位置から同位置の横方向にシフトさせると、そのとき同位置にある炭素のピークが連結した炭素となる。同様にその炭素から順序よく配列させていくと、1分子中の炭素−炭素間の連結、すなわち炭素骨格を知ることができる。
【0034】
このようなHSQC法およびINADEQUATE法の測定から、本発明のブテンオリゴマー誘導体を構成している下式(1)に示すイソブチレン骨格を特定することができる。この特定された繰り返し構造が、全体の繰り返し成長連鎖中に80%以上から構成されていることが判った。なお、通常末端基の一方はtert−ブチル基である。
【化8】
【0035】
上記のように、本発明により得られるブテンオリゴマー誘導体分子は、式(1)に示す繰り返し構造単位の数nは0以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは16以上であり、上限値は200である。また、イソブチレン骨格の繰り返し構造単位が全体の繰り返し成長連鎖中の80%以上で構成されている、完全な直線状態を有する分子構造で形成されているために、上述のような本誘導体の用途利用を考えた場合に特定の物性を発揮させることが可能である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0037】
(参考製造例)
<高反応性ブテンオリゴマーの製造>
本発明者らが開示した特開平10−306128号公報の製造方法によって、下記表1に示すようにMn=112(平均繰り返し数n=0)、Mn=560(平均繰り返し数n=9)およびMn=2300(平均繰り返し数n=40)のブテンオリゴマーをそれぞれ製造した。それらの化学組成については、下記表1の通りであった。
【0038】
*1:例1はMS測定値であり、例2、3はGPC測定によるポリスチレン換算値を示す。
*2:13C−NMR測定によるオレフィン帰属ピークの積分定量値(詳細は特開平10−306128号公報を参照)を示す。
【0039】
<コハク酸誘導体の製造>
次に、アメリカ特許第4,152,499号公報の実施例記載の方法を参考にして、上記のように製造された3種のブテンオリゴマー(参考製造例1、2及び3)と無水マレイン酸とを無触媒下で反応させてコハク酸誘導体を合成した。
反応終了後には、未反応として存在するブテンオリゴマー、無水マレイン酸および副生成物を一旦、蒸留およびシリカクロマトグラフ処理によって除去することで、下記式(5)あるいは式(6)で表わされる不飽和オレフィンを有するコハク酸誘導体を得ることができた。コハク酸誘導体の性状は、下記表2に示す通りであった。
【0040】
【化9】
【0041】
*3:例1はMS測定値であり、例2、3はGPC測定によるポリスチレン換算値を示す。
*4:13C−NMR測定により、上式(5)および(6)の構造中のオレフィンに帰属されるピークに対して、それらのピーク積分定量値の比率を示す。
【0042】
<高反応性ブテンオリゴマーとコハク酸誘導体の構造決定>
上記のように製造された高反応性ブテンオリゴマー(化学構造式(A))とコハク酸誘導体(化学構造式(B)および(C))の其々の化学構造を特定するために、以下の化学分析を実施した。
末端基構造の特定に対しては赤外分光(IR)、1次元及び2次元の核磁気共鳴(NMR)により、また、誘導体分子内のイソブテン骨格の規則性に対しては本文記載のNMRにおけるHSQC法およびINADEQUATE法により確認した。各種測定におけるスペクトルは以下の通りであるが、各スペクトルからの帰属ピークは各化学構造式中の構成炭素に附記してある記号と一致しており、より明確にするために、ブテンオリゴマー中の末端、開始基構造及びポリブテン主鎖構造にも大別した。
また、ここに示したスペクトル値は、高反応性ブテンオリゴマーを代表して参考製造例2、また、コハク酸誘導体を代表して参考製造例5についてである。
【化10】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
旋光度(Na−D(589.3nm))
(B)および(C):0.000deg
【0047】
(実施例1〜3)
<γ−ブチロラクトン誘導体の製造>
製造装置は、窒素および水素ガス導入口、サンプル採取口、圧力指示計、反応温度指示計、可変式の撹拌機、および還流器を備えた100mL内容積のオートクレーブを、恒温調節が可能な熱媒浴内に設置した。
まずは、オートクレーブ内に、所定量の前記実施例1〜3で製造したコハク酸誘導体(表3)をn−ヘキサンに溶解させ、仕込んだ。次いで、その溶液中に、所定量(表3)の10%Pd−Cの水素化触媒を予備還元させずにそのまま添加した。
その後、窒素置換を充分行った後に、オートクレーブ内に水素ガスを水素圧が5.0MPaになるようにして封入し、次いで、反応溶液温度が240℃に設定してから反応を3時間行った。反応終了後に反応液を取り出して、固体粉末の水素化触媒を減圧ろ過させ、ろ液部の反応有機層を蒸留によって濃縮させることで、γ−ブチロラクトン誘導体を表4に示す結果で得られた。
【0048】
*上記実施例1〜3ともに、水素圧5.0MPa、反応温度は240℃、反応時間は3時間とした。
*5:触媒量はコハク酸誘導体原料に対する重量部を示す。
【0049】
*6:仕込みコハク酸誘導体原料に対するモル収率を示す。
*7:例1はMS測定値であり、例2、3はGPC測定によるポリスチレン換算値を示す。
【0050】
<γ−ブチロラクトン誘導体の構造決定>
2種の構造異性体であるγ−ブチロラクトン誘導体(化学構造式(D)および(E))の其々の化学構造を特定するために、前記のコハク酸誘導体の構造決定の手法と同様にして実施した。
【0051】
【化11】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
旋光度(Na−D(589.3nm))
化学構造式(D)および(E):0.000deg
【0056】
上記データから、原料のコハク酸誘導体におけるIRおよびNMRでのコハク酸末端基の消失および新たなるγ−ブチロラクトン末端基の出現が確認された。また、NMRから式(1)のイソブチレン骨格がオリゴマー成長連鎖中の80%以上で構成されていることや、コハク酸末端基のどちらか一方が還元されたγ−ブチロラクトン末端基が確認できたことから、本発明の式(2)または式(3)で表されるγ−ブチロラクトン誘導体の化学構造を特定することができた。また、本実施例で合成されたγ−ブチロラクトン誘導体においては、式(2)の方が(3)に優先して生成してくることも判明した。
【0057】
さらに、γ−ブチロラクトン誘導体の化学構造から理解できるように、4、7位の炭素が不斉炭素源となり得るが、本実施例で製造された誘導体は旋光度測定から光学不活性であることが確認されたため、ラセミ混合物であることが確認できた。但し、NMRから判るように、式(2)または式(3)の其々のγ−ブチロラクトン誘導体には光学異性体が存在していることも確認されていることより、結果的に光学不活性であったのは、この両光学異性体の旋光度が相殺したことによると推察している。
【0058】
【発明の効果】
本発明によって、γ−ブチロラクトン官能基を有するブテンオリゴマー誘導体等を提供することが可能である。さらに、本発明のγ−ブチロラクトン誘導体は、エポキシ樹脂等に対しての反応型可塑剤として、あるいは重縮合反応に対しては新規ポリマー合成のためのマクロモノマーとして利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】下記構成の1H−NMRの測定結果である。
上段:γ−ブチロラクトン誘導体(実施例2)の測定チャート
中段:γ−ブチロラクトン誘導体(実施例1)の測定チャート
下段:高反応性ブテンオリゴマー(参考製造例2)の測定チャート
【図2】下記構成の13C−NMRの測定結果である。
上段:γ−ブチロラクトン誘導体(実施例2)の測定チャート
中段:γ−ブチロラクトン誘導体(実施例1)の測定チャート
下段:高反応性ブテンオリゴマー(参考製造例2)の測定チャート
【図3】下記構成のFT−IRの測定結果である。
上段:γ−ブチロラクトン誘導体(実施例2)の測定チャート
中段:γ−ブチロラクトン誘導体(実施例1)の測定チャート
下段:高反応性ブテンオリゴマー(参考製造例2)の測定チャート
Claims (1)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35344999A JP4596584B2 (ja) | 1999-11-08 | 1999-11-08 | γ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35344999A JP4596584B2 (ja) | 1999-11-08 | 1999-11-08 | γ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001131226A JP2001131226A (ja) | 2001-05-15 |
JP4596584B2 true JP4596584B2 (ja) | 2010-12-08 |
Family
ID=18430932
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35344999A Expired - Fee Related JP4596584B2 (ja) | 1999-11-08 | 1999-11-08 | γ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4596584B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102005041788A1 (de) * | 2005-09-02 | 2007-03-08 | Basf Ag | Polyisobutenpolyol und Formmasse |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
GB8329082D0 (en) * | 1983-11-01 | 1983-12-07 | Bp Chem Int Ltd | Low molecular weight polymers of 1-olefins |
US4866140A (en) * | 1986-10-07 | 1989-09-12 | Exxon Chemical Patents Inc. | Lactone modified adducts or reactants and oleaginous compositions containing same |
US4866139A (en) * | 1986-10-07 | 1989-09-12 | Exxon Chemical Patents Inc. | Lactone modified, esterified dispersant additives useful in oleaginous compositions |
EP0587381A1 (en) * | 1992-09-09 | 1994-03-16 | BP Chemicals Limited | Novel derivatives of poly(iso)butene |
-
1999
- 1999-11-08 JP JP35344999A patent/JP4596584B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001131226A (ja) | 2001-05-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Bazan et al. | Synthesis of star block copolymers by controlled ring-opening metathesis polymerization | |
US8362171B2 (en) | Norbornene monomers with an epoxy group and polymer material thereof | |
EP2251360B1 (en) | Ring-opening metathesis polymerization of bridged bicyclic and polycyclic olefins containing two or more heteroatoms | |
US20220258146A1 (en) | Catalyst for ring expansion metathesis polymerization of cyclic monomers | |
JP3264442B1 (ja) | 新規な位置規則的コポリマー及びその製造方法 | |
CN101679546A (zh) | 烯烃和二烯共聚物的抗冲击改性和官能化 | |
Morontsev et al. | Epoxidation of Multiblock Copolymers of Norbornene and Cyclooctene | |
EP1164156B1 (en) | Method of polymerizing silalkylenesiloxane | |
JP4596584B2 (ja) | γ−ブチロラクトン官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体 | |
Kassekert et al. | Processable epoxy-telechelic polyalkenamers and polyolefins for photocurable elastomers | |
CN110643020A (zh) | 生产聚烯烃离聚物的方法以及由此产生的离聚物 | |
US20220332878A1 (en) | Ethylene-rich diene block polymer having a random block and a polyethylene block | |
Chung et al. | Poly (exo-5-hydroxynorbornene): structural characterization and property evaluation of various cis-trans isomer compositions | |
JP4596583B2 (ja) | 重縮合・重付加反応が可能な末端1,4−ブタンジオール官能基を有する新規なブテンオリゴマー誘導体 | |
US7126037B2 (en) | Butene oligomer derivatives having terminal 1,4-butanediol functional groups | |
Morontsev et al. | Ruthenium–Carbene Complexes in the Synthesis of Polybutadiene and Its Cross-Metathesis with Polynorbornene | |
Wagener et al. | Well phase separated segmented copolymers via acyclic diene metathesis (ADMET) polymerization | |
JP3852700B2 (ja) | 末端にラジカル重合反応を誘導できるハロゲン基を有するノルボルネン系モノマーから誘導されたマクロモノマー、側鎖にラジカル重合反応を誘導できる基を有するノルボルネン重合体、そのマクロモノマーとアクリレート系モノマーまたはスチレン類モノマ−を用いてグラフト反応生成物であるノルボルネン重合体とそれらの調製方法 | |
Chung et al. | The use of platinum and rhodium catalysts for the preparation and cationic ring‐opening polymerization of silicon‐containing epoxides | |
Viswanathan et al. | Acyclic diene metathesis (ADMET) depolymerization of functionalized furan‐based polymers | |
Hillmyer | The preparation of functionalized polymers by ring-opening metathesis polymerization | |
Sundararajan et al. | Synthesis of triblock copolymers—(polyA‐poly butadiene‐polyA)—via metathesis polymerization | |
KR101187549B1 (ko) | 테트라시클로도데센 유도체 및 디사이클로펜타디엔의 혼합물로부터 개환중합된 개환중합 고분자의 수소화 방법 | |
Okada et al. | Chemical Synthesis of Polysaccharides III. A Synthetic Polysaccharide Having One Hydroxyl Group in Its Repeating Unit, 3, 4-Dideoxy-(1→ 6)-α-DL-threo-hexopyranan | |
JP2004339445A (ja) | 末端アミノ化ポリオレフィン及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20061020 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20061030 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20061218 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20061226 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20090612 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090623 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090824 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20090824 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20100914 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20100921 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131001 Year of fee payment: 3 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |