JP4595091B2 - キャビテーション発生量の測定方法及びキャビテーション発生量の測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体中に発生するキャビテーションの発生分布状態を観測するための方法及びその装置に関し、更に詳しくは、液体中に応力発光粒子を混入させ、その発光強度を測定することでキャビテーションの発生量を測定するキャビテーション発生量の測定方法、及びその測定装置に関する。
流体中のキャビテーションの挙動を調べることは、そのキャビテーションによる環境のダメージ(壊食等)を防止する上で極めて重要である。
そのため、近年では、キャビテーション挙動を観察する方法や装置が種々開発されている。
キャビテーション、詳しくはキャビテーション気泡の挙動を調べる方法として、例えばカメラ等により直接観察する方法や光散乱法により測定する方法(例えば、特許文献1参照)、或いは静電容量を測定することによりキャビテーションを調べる方法(例えば、特許文献2参照)等が提示されている。
上記の2つ方法が気泡の総数や分布を測定するには有用であるが、そのうちの光散乱法により測定する方法の場合、ストロボやレザー光源等の余分な部分が必要である。
また静電容量を測定することにより調べる方法の場合は、静電容量を測定するための電極を流体内に設けなければならない上、実際の流路とは異なったものとなる。
従って、いずれの方法にしても、装置としては複雑なものとなる欠点がある。
さらに、気泡の分布、総数を知るだけでなく、気泡が破裂して放出する衝撃波の強度(衝撃圧)を知ることが重要である。
しかし、これらのことは上記の2つ方法では測定することができない。
キャビテーションの衝撃波の強度や衝撃圧を計測するために、圧電センサなどの手法は有用であるが(例えば、特許文献3参照)、センサを導入する必要があり、実際の流路と異なる欠点や、液体中にあるセンサがキャビテーションにより損傷を受けやすい問題がある。
特開2003−057164号公報 特開平7−198710号公報 特開2002−267584号公報
本発明は、上記のような技術的背景のもとでなされたものである。
すなわち、本発明は、複雑な装置を使わずキャビテーションの発生分布状態を簡単に測定することができるキャビテーション発生量の測定方法、及びキャビテーション発生量の測定装置を提供することを目的とする。
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、流体中に発光粒子を混入させた状態においては、キャビテーション消滅時に発生する衝撃力(壊食力)により容易にその発光粒子が発光することを見出し、この知見により、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)、 液体中に発生するキャビテーションの発生分布状態を観測するためのキャビテーション発生量の測定方法であって、液体中に応力発光粒子を混入させ、該応力発光粒子から発生する光を受光してその強度を測定することでキャビテーションの発生量を測定するキャビテーション発生量の測定方法に存する。
すなわち、本発明は、(2)、 液体が容器内を流れる状態にある上記(1)に記載のキャビテーション発生量の測定方法に存する。
すなわち、本発明は、(3)、 液体が容器内に貯蔵された状態にある上記(1)に記載のキャビテーション発生量の測定方法存する。
すなわち、本発明は、(4)、応力発光粒子の径が10nm〜100μmである上記(1)に記載のキャビテーション発生量の測定方法に存する。
すなわち、本発明は、(5)、 応力発光粒子の母体材料が3 次元ネットワーク構造、スタフドトリジマイト構造、ウルツ構造、スピネル構造、長石構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物、テルル化物又は窒化物である上記(1)に記載のキャビテーション発生量の測定方法に存する。
すなわち、本発明は、(6)、応力発光粒子の母体材料が格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造である上記(1)に記載のキャビテーション発生量の測定方法に存する。
すなわち、本発明は、(7)、容器の一部を透明化してその透明化部分を介して発光強度を測定する上記(1)に記載のキャビテーション発生量の測定方法に存する。
すなわち、本発明は、(8)、 液体中に発生するキャビテーションの発生分布状態を測定するためのキャビテーション発生量の測定装置であって、応力発光粒子を混入した液体入りの容器と、該応力発光粒子から放射された光を受光する受光手段と、を備えたキャビテーション発生量の測定装置に存する。
すなわち、本発明は、(9)、 前記液体入りの容器は液体が流れることが可能な容器である上記(8)記載のキャビテーション発生量の測定装置に存する。
すなわち、本発明は、(10)、 前記液体入りの容器は液体を貯蔵しておくことが可能な容器である上記(8)に記載のキャビテーション発生量の測定装置に存する。
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(10)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
本発明によれば、液体中に応力発光粒子を混入させ、該応力発光粒子から発光される光を受光し、その強度を測定するようにしたので、簡単にキャビテーションの発生量を測定することができる。
受光手段は、容器の少なくとも一部を透明化した部分を通じて応力発光粒子により発光された光を受光する。
応力発光粒子自体から発光される光の強度を測定することを利用しているために、装置としては極めて簡単なものとなる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係るキャビテーションの発生量の測定装置を示している。
測定装置1によって、液体が容器内を流れる状態にある例、ここでは液体流通管2を流れる液体中に発生するキャビテーションの発生量の測定を行うものである。
ここで参考までにキャビテーションの発生原理について簡単に述べる。
例えば、絞り部を介して大径部と小径部とが連結された一本の管においては、上流側の大径部を流れる液体が口絞り部を経て下流側の小径部に流入すると、流路断面が減少するため液体の流速が増し、その結果、圧力が低下する。
この圧力が飽和蒸気圧以下まで低下すると、沸点が低くなり、沸騰と同様の気化現象が発生し、いわゆるキャビテーションが発生するのである。
キャビテーションが発生した液体が下流に流されて再び大径部に流入すると、流路断面積が増加し、液体の流速が低下して圧力が増加する。
そのため液体の圧力が回復し、キャビテーションは急激に縮小し消滅するのである。
このキャビテーションの縮小・消滅時に、数百気圧程の大きな圧力(すなわち衝撃力)が発生する。
本発明は、液体中に応力発光粒子を混入した場合に、その応力発光粒子がキャビテーションの衝撃力により発光することを原理としたものである。
さて、この本発明の測定装置1は、受光手段4、演算手段5とパーソナルコンピュータ6とモニタ7とを有する。
図1では、応力発光粒子から放射された光は、液体流通管2に形成した透明化部分である窓3を介して、受光手段4に入射する。
受光手段4は、集光レンズ41や撮像素子42を備えており、応力発光粒子から放射された光を集光レンズ41を介して撮像素子42で感知する。
撮像素子42では光電変換が行われ、電気信号が演算手段5に送信される。
演算手段5では、電気信号がA/D変換され、撮像素子42の画素毎の光強度が数値化され、JPEG形式やTIFF形式等でデータが記録媒体に格納される。
図に示す測定装置1では、演算手段5にパーソナルコンピュータ6が接続されており、このパーソナルコンピュータ6に接続されたモニタ7から測定結果が表示される。
具体的な表示形態としては、例えば、液体中に発生するキャビテーションの発生量(発生分布状態)が、発生位置をXY軸とし光強度をZ軸として立体的に表示される。
キャビテーションが発生しない状態の光強度のバックグラウンドデータを前もって測定しておけば、それを使ってキャビテーションの発生時の光強度を補正することによりキャビテーションの正確な発生量を測定することができる。
本発明は、流体中に光発光粒子を混入しておき、この流体と共に挙動する光発光粒子が発光する光を直接測定する原理であるために、流体自体の挙動を正確に把握することができる。
また、応力発光粒子自体から発生する発光強度を測定することから、その光を受光することができるように受光手段4を設置するだけで、キャビテーションの発生量を容易に測定することができる。
したがって、前述した従来のように、余分な装置、すなわちストロボやレザー光源、或いは静電容量を測定するための電極等が全く不必要となり、測定装置自体も極めてシンプルとなり、製造コスト的にも有利である。
本発明では、液体の挙動と同じ挙動を応力発光粒子にさせるために、その応力発光粒子は液体に極力分散できる粒子であることが好ましい。
応力発光粒子の分散性は、液体との比重の差が小さい程よい傾向があるために、応力発光粒子の周囲に透光性のコーティング層を設けて比重を軽くすることが好ましい。
例えば、液体が水(比重1)で応力発光粒子の比重が3.34の場合(応力発光粒子がα−SrAlの構造)は、応力発光粒子の周囲に水より比重の小さい透光性のコーティング層を設けて応力発光粒子の比重を小さくすることが好ましい。
ここで応力発光粒子とは、母体材料に発光中心を添加させたものである(例えば、特開2000−63824号公報参照)。
母体材料としては、例えば、スタフドトリジマイト構造(Stuffed tridymite ), 3次元ネットワーク構造、長石構造、格子欠陥制御した結晶構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物を用いることができる。
また、発光中心としては、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luの希土類イオン、及び、Ti,Zr,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Nb,Mo,Ta,Wの遷移金属イオンが挙げられている。
母体材料として、例えばストロンチウム及びアルミニウム含有複合酸化物を用いる場合、xSrO・yAl・zMO(Mは二価金属、Mg,Ca,Ba,x,y,zは整数である)、xSrO・yAl・zSiO(x,y,zは整数である)を用いると良い。
中でも、SrMgAl1017:Eu、(SrBa1−x)Al:Eu(0<x<1)、BaAlSi:Eu等が望ましい。
応力発光粒子の粒子径については、液体中に全体に均一に分散できるものであればよく、特に限定はない。しかし、空間分解能を高くすることであれば、10nm〜100μmの範囲が好ましい。
〔第二実施形態〕
第一実施形態では液体流通管2に形成した透明の窓3を通して光を受光しているが、液体流通管2の全体を透明にして如何なる部分でもキャビテーションの発生量を測定できるようにすることも可能である。
図2は、液体が流れる液体流通管2の全体を透明にした例であり、受光手段4を移動させて適宜の位置のキャビテーションの発生量を計測することができる。
応力発光粒子が発光する光を直接測定する原理であるために、キャビテーションの発生する部分では必ず応力発光粒子が発光することとなり、キャビテーションの発生する位置に受光手段4を対応させればよい。
〔第三実施形態〕
第一実施形態及び第二実施形態では、液体が容器内を流れる状態にある例、すなわち液体流通管内を流れる状態の例であるが、液体が容器2A内に貯蔵された状態にある場合がこの第三実施形態である。
図3における測定装置は、流れのない液体中において、超音波の影響等の何らかの原因でキャビテーションが発生した場合にも、その発光する光を受光手段4で受光することにより、同様にキャビテーションの発生量を測定できるものである。
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、応力発光粒子を混入させる対象となる液体は、限定されものではなく、要するに応力発光粒子が分散できるものであれば採用可能である。
本発明では液体中に存在する応力発光粒子から発生する光を受光してその強度を測定しているために、結果的に、キャビテーションの総量、キャビテーションの空間分布、サイズ、キャビテーション発生した衝撃力の強さ、強さの分布、キャビテーション持続時間、時間的変化等が容易に得られる。
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明は、当然、これらの実施例によって限定されるものではない。
図4は、キャビテーション測定の実験に用いたキャビテーションの発生量の測定装置を示している。
図に示すように、測定装置1によって、水や油等の液体が貯蔵された液体入りの容器であるビーカー2Bに発生するキャビテーションの測定を行った。
なお、この実施例では、実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
この装置は、箱型の超音波発生セル8と、この超音波発生セル8のステンレス製の発生容器81の底部に載置され且つ液体を収容したビーカー2Bと、ビーカー2Bの真上に配置された受光手段4とを有している。
なお超音波発生セルとしては、SNT社製超音波洗浄器(US−1型、38kHz、80W)を用いた。
このビーカー2Bに液体(エタノール)を20g入れ、更にその中に応力発光粒子を0.1gを入れて攪拌して液体全体に均一に分散させた。
ここで使用した応力発光粒子の粒子径は、0.5μmで、材質としては、Sr0.90Eu0.01Alを用いた。
そして、超音波発生セル8の電源をオンにして超音波振動を発生させると、ビーカー2Aの液体に超音波振動が伝達され、液体内にキャビテーションが発生した。
このキャビテーションにより発生する光を受光手段4により受光し、演算手段5を介してコンピュータ処理を行った。
受光手段のゲート時間は、2msとした。
その結果を図5から図9に示す。
図5(a)及び図5(b)は、超音波振動を発生させた時点を測定開始時点とした場合の測定1コマ目の画像データ及びグラフ化処理データであり、液体中に発生するキャビテーションの発生量(発生分布状態)を現している。
なお、各グラフは、応力発光粒子から発生した光以外のバックグラウンドの光をも含んだもので示した。
図5(a)は、ビーカーの径断面方向の発光強度分布を示しており、図5(b)は、位置をXY軸とし発光強度をZ軸として立体グラフを示している。
同様に、図6(a)及び図6(b)は55コマ目(55ページ)〔撮影開始1.1秒後〕のものであり、図7(a)及び図7(b)は70コマ目(撮影開始1.4秒後)のものであり、図8(a)及び図8(b)は151コマ目〔撮影開始約3秒後〕のものである。
参考までに、図9は、コマ数で示した時間(横軸)と発光強度の平均値(縦軸)との関係をグラフに示したものである。
これらの図から分かるように、液体中に混入された応力発光粒子が発光することで、液体中のキャビテーションの発生状態が極めて明確に把握できることが分かる。
図1は、本発明の第一実施形態に係るキャビテーションの発生量の測定装置を示す説明図である。 図2は、本発明の第二実施形態に係るキャビテーションの発生量の測定装置を示す説明図である。 図3は、本発明の第二実施形態に係るキャビテーションの発生量の測定装置を示す説明図である。 図4は、本発明の実施例に係るキャビテーションの発生量の測定装置を示す説明図である。 図5(a)及び図5(b)は、超音波振動を発生させた時点を測定開始時点とした場合の測定1コマ目の画像データ及びグラフ化処理データであり、液体中に発生するキャビテーションの発生量を示す説明図である。 図6(a)及び図6(b)は、超音波振動を発生させた時点を測定開始時点とした場合の測定55コマ目の画像データ及びグラフ化処理データであり、液体中に発生するキャビテーションの発生量を示す説明図である。 図7(a)及び図7(b)は、超音波振動を発生させた時点を測定開始時点とした場合の測定70コマ目の画像データ及びグラフ化処理データであり、液体中に発生するキャビテーションの発生量を示す説明図である。 図8(a)及び図8(b)は、超音波振動を発生させた時から測定を開始させた場合の測定151コマ目の画像データ及びグラフ化処理データであり、液体中に発生するキャビテーションの発生量を示す説明図である。 図9は、コマ数で示した時間(横軸)と発光強度の平均値(縦軸)との関係をグラフに示したものである。
符号の説明
1 測定装置
2 容器(液体流通管)
2A 容器
2B ビーカー
3 窓
4 受光手段
41 集光レンズ
42 撮像素子
5 演算手段
6 パーソナルコンピュータ
7 モニタ
8 超音波発生セル
81 発生容器

Claims (10)

  1. 液体中に発生するキャビテーションの発生分布状態を観測するためのキャビテーション発生量の測定方法であって、
    液体中に応力発光粒子を混入させ、該応力発光粒子から発生する光を受光してその強度を測定することでキャビテーションの発生量を測定することを特徴とするキャビテーション発生量の測定方法。
  2. 液体が容器内を流れる状態にあることを特徴とする請求項1に記載のキャビテーション発生量の測定方法。
  3. 液体が容器内に貯蔵された状態にあることを特徴とする請求項1に記載のキャビテーション発生量の測定方法。
  4. 応力発光粒子の径が10nm〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載のキャビテーション発生量の測定方法。
  5. 応力発光粒子の母体材料が3 次元ネットワーク構造、スタフドトリジマイト構造、ウルツ構造、スピネル構造、長石構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物、テルル化物又は窒化物であることを特徴とする請求項1に記載のキャビテーション発生量の測定方法。
  6. 応力発光粒子の母体材料が格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造であることを特徴とする請求項1に記載のキャビテーション発生量の測定方法。
  7. 容器の一部を透明化してその透明化部分を介して発光強度を測定することを特徴とする請求項1に記載のキャビテーション発生量の測定方法。
  8. 液体中に発生するキャビテーションの発生分布状態を測定するためのキャビテーション発生量の測定装置であって、
    応力発光粒子を混入した液体入りの容器と、
    該応力発光粒子から放射された光を受光する受光手段と、
    を備えたことを特徴とするキャビテーション発生量の測定装置。
  9. 前記液体入りの容器は液体が流れることが可能な容器であることを特徴とする請求項8に記載のキャビテーション発生量の測定装置。
  10. 前記液体入りの容器は液体を貯蔵しておくことが可能な容器であることを特徴とする請求項8に記載のキャビテーション発生量の測定装置。

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