JP4593892B2 - 樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある。)及びポリアミドからなる樹脂組成物及びその製造方法に関する。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)は酸素遮蔽性、耐油性、非帯電性、機械強度等に優れた有用な高分子材料であり、フィルム、シート、容器など各種包装材料として広く用いられている。EVOHペレットを各種の成形品に成形する方法は様々であるが、押出成形又は射出成形のように、溶融成形されることが多い。しかしながら、通常EVOH樹脂の成形加工時には、溶融温度を200℃以上としなければならないので、添加剤を含まないEVOHは溶融成形時に劣化しやすく、製品にフィッシュアイやブツが生じて品質を低下させる原因となることがあった。また、他の樹脂と積層使用する際の層間接着性を改善するためにも、添加剤を添加する必要があった。
国際公開第99/05213号パンフレット(米国特許第6174949号)には、必須成分としてのホウ素化合物と、任意成分としての酢酸と、必須成分としての、酢酸塩及びリン酸化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含有し、EVOH100重量部に対する各成分の含有量が、ホウ素化合物はホウ素換算で0.001〜1重量部、酢酸は0〜0.05重量部、酢酸塩は金属換算で0.001〜0.05重量部、リン酸化合物はリン酸根換算で0.0005〜0.05重量部であるEVOH樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物は、ロングラン性、外観、層間接着性が改善されたEVOH樹脂組成物であるとされている。ここで、酢酸塩の配合目的は、ロングラン性や層間接着性を改善することであると記載されている。
特開2001−164059号公報(欧州特許出願公開第1090953号)には、EVOH樹脂組成物であって、該樹脂組成物を加熱溶融した際に、そのMFRが特定の挙動を示すことを特徴とし、分子量75未満のカルボン酸を50〜500ppm、アルカリ金属塩を金属元素換算で50〜500ppm、アルカリ土類金属塩を金属元素換算で10〜120ppm、リン酸化合物をリン酸根換算で10〜200ppm、ホウ素化合物をホウ素元素換算で50〜2000ppm含む樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物は、外観性、溶融成形時のロングラン性に優れ、回収時の着色が少なく、かつ積層体としたときに層間接着性に優れたEVOH樹脂組成物であるとされている。ここで、アルカリ金属塩は層間接着性を改善するために、ホウ素化合物はロングラン性を改善するためにそれぞれ添加される。
上記添加剤を含有するEVOHペレットを製造する方法としては、EVOH含水ペレットを、上記添加剤を含有する水溶液と接触させる方法が、代表的な方法として記載されている。その方法によれば、溶液濃度を調節することによりEVOHペレットに含有される微量成分の量を制御しやすく、水溶液に接触させた後に乾燥させて安定した品質のペレットを得ることができる。
このように、層間接着性を改善するためにEVOH樹脂にアルカリ金属塩を添加することが行われており、代表的には酢酸塩として添加されている。また、多くの場合、塩を形成していない酢酸も同時に添加される。ところが、このように酢酸根を含有するEVOH樹脂組成物は、酢酸臭を発することがあった。EVOH樹脂組成物の主要な用途の一つは食品包装容器であり、市場ではより臭気の発生が少ないEVOH樹脂組成物が求められていた。また、さらに溶融安定性が改善され、ロングラン性に優れたEVOH樹脂組成物が望まれているところである。
一方、EVOH含水ペレットを、酢酸や酢酸塩を含有する水溶液と接触させて、EVOH樹脂組成物ペレットを製造する場合には、接触させた後の含水ペレットを乾燥させる際に酢酸が大気中に放出されることが多く、周辺環境及び作業環境に悪影響を及ぼす可能性があった。
EVOHとポリアミドとからなる樹脂組成物は、EVOHの柔軟性を改善するためや、ポリアミドのガスバリア性を改善するために広く使用されている。このような樹脂組成物を製造する場合、従来、上述のような方法で添加剤を含有させたEVOH樹脂組成物とポリアミドとを溶融混練していた。そのため、前述のような従来のEVOH樹脂組成物が有していた問題点が残ったままであった。
末端アミノ基量を調整したポリアミド樹脂とEVOHとの樹脂組成物としては、これまでにも種々の方法が提案されており、例えばモノアミン化合物によって末端カルボキシル基が変性されているポリアミド系樹脂とEVOHからなる組成物を用いることによって、溶融成形性を改良する技術(例えば、特許文献3参照。)や、末端調整剤を使用して末端アミノ基量が末端カルボキシル基量よりも小さくなるように調整した、カプロアミドを主成分とするポリアミド共重合体とEVOHからなる組成物を用いることによって、耐熱水性や延伸性等を改良する技術(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。
さらに、酸無水物やカルボン酸、カルボン酸エステルによって末端アミノ基を30μ当量/グラム以下に変性したポリアミド樹脂をEVOHとブレンドすることによって、溶融成形時における熱安定性を改善する技術(例えば、特許文献5および6参照。)や、ジアミン化合物とカルボン酸により変性されたポリアミドをEVOHとブレンドすることによって、フィルムや多層包装体とした際のレトルト殺菌時、殺菌後の形状保持性を改善する技術(例えば、特許文献7参照。)等も提案されている。
国際公開第99/05213号パンフレット 特開2001−164059号公報 特公平5−1819号公報 特開平4−178447号公報 特開平5−140386号公報 特開平4−114060号公報 特開平8−259756号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、臭気の発生が少なく食品包装用途等に適した、EVOHとポリアミドからなる樹脂組成物を提供することを目的とするものであり、より好適には溶融安定性が改善され、ロングラン性にも優れた、EVOHとポリアミドからなる樹脂組成物を提供することを目的とするものである。また、周辺環境に酢酸等のカルボン酸を排出することのない、環境に配慮した、EVOHとポリアミドからなる樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、アルカリ金属塩(A)をアルカリ金属換算で0.1〜20μmol/g含有し、95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)を0〜2μmol/g含有し、かつ95℃の0.05規定水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C2)を0〜40μmol/g含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)1〜99重量%と、ポリアミド樹脂(G)1〜99重量%とからなる樹脂組成物を提供することによって解決される。
また、上記課題はアルカリ金属塩(A)をアルカリ金属換算で0.1〜20μmol/g含有し、95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)を0〜2μmol/g含有し、かつケン化度が99.7〜100モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)1〜99重量%と、ポリアミド樹脂(G)1〜99重量%とからなる樹脂組成物を提供することによっても解決される。
これらの樹脂組成物において、アルカリ金属塩(A)がカリウム塩であることが好適である。エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)がホウ素化合物(B)をホウ素元素換算で1〜200μmol/g含有することも好適である。エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)のリン元素含有量(t)がリン元素換算で0.05〜5μmol/gであることも好適である。また、ポリアミド樹脂(G)の末端アミノ基量が15μeq/g以下であることも好適である。さらに、上記樹脂組成物を成形してなる成形品が本発明の好適な実施態様である。
また上記課題は、アルカリ金属塩(A)0.05〜40mmol/L、又はホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩及び水素化ホウ素類からなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物(B)0.1〜50mmol/Lを含有し、かつ0.5mmol/L以上の炭酸ガスを含有する水溶液にエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を接触させた後、ポリアミド樹脂(G)と溶融混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法を提供することによっても解決される。
本発明の樹脂組成物は、臭気の発生が少なく食品包装用途等に適したものであり、溶融安定性やロングラン性にも優れている。また、本発明の樹脂組成物の製造方法は、周辺環境に酢酸等のカルボン酸を排出することのない、環境に配慮したものである。
まず、本発明で使用するEVOH樹脂組成物(F)の製造方法について説明する。好適な製造方法は、アルカリ金属塩(A)及びホウ素化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有し、かつ炭酸ガスを含有する水溶液にエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を接触させる製造方法である。
従来から、アルカリ金属塩(A)及びホウ素化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をEVOH樹脂に含有させるために、これらの添加剤を含有する水溶液にEVOHを接触させる方法が行われていた。本発明で使用するEVOH樹脂組成物(F)では、上記添加剤に加えてさらに炭酸ガスを含有する水溶液に接触させることを特徴とするものである。
EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)からなる樹脂組成物層を含む多層構造体における層間接着性を改善するためには、EVOH樹脂組成物(F)がアルカリ金属塩(A)を含有することが望ましく、そのためアルカリ金属塩(A)、特にアルカリ金属の酢酸塩を含有する水溶液にEVOH樹脂が浸漬されることが多かった。このとき、浸漬する液がアルカリ性のままでは、溶融成形時の安定性が低下することが多く、それを解消するために酸、特に酢酸に代表されるカルボン酸を別途含有させることが多かった。
ところが、カルボン酸やカルボン酸塩に由来するカルボン酸根の含有量が多い場合には、EVOH樹脂組成物がカルボン酸臭を発生することが多く、食品包装用途に使用する場合などに問題となる場合があった。また、添加剤を含む水溶液に接触させた後で乾燥する際に、カルボン酸が周辺環境に放出されてしまうという問題も生じていた。したがって、アルカリ金属塩(A)を含み、かつカルボン酸根の含有量を最小限にしながらも、添加剤を含む水溶液をアルカリ性にしないようにする方法が望まれていた。本発明で使用するEVOH樹脂組成物(F)は、酢酸を使用する代わりに、アルカリ金属塩(A)を含む水溶液に炭酸ガスを含有させることによって、この課題を解決できるものである。
また、EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)からなる樹脂組成物を溶融成形した際のロングラン性を改善するためには、EVOH樹脂にホウ素化合物(B)を添加することが望ましく、そのためホウ素化合物(B)を含有する水溶液にEVOH樹脂が浸漬されることが多かった。しかしながら、用途によっては、ホウ素化合物(B)を含有させてもなおロングラン性が不十分である場合もあり、更なる改善が望まれているところである。
本発明で使用するEVOH樹脂組成物(F)は、ホウ素化合物(B)を含む水溶液に炭酸ガスを含有させることによって、上記更なる改善が可能になるものである。すなわち、炭酸ガスを含有させた水溶液を用いて、前記カルボン酸根の含有量を少なくし、さらにホウ素化合物(B)を添加することで、ロングラン性に優れたEVOH樹脂組成物(F)を得ることができる。そして、当該EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)からなる、ロングラン性に優れた樹脂組成物を得ることが可能になるものである。
本発明で用いられるEVOHとしては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましく、中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるものが特に好ましい。ガスバリア性と溶融成形性に優れた成形物を得るという観点からは、エチレン含有量は好適には5〜60モル%である。エチレン含有量が5モル%未満の場合には、溶融成形性が悪くなる虞があり、エチレン含有量が60モル%を超えるとガスバリア性が不十分となる虞がある。エチレン含有量の下限値は、より好適には15モル%以上、さらに好適には20モル%以上である。一方、エチレン含有量の上限値は、より好適には55モル%以下、さらに好適には50モル%以下である。
また、酢酸ビニル成分のケン化度は好ましくは80〜100モル%である。ガスバリア性に優れた成形物を得るという観点からは、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、特に好ましくは99モル%以上である。ケン化度が80モル%未満では、バリア性、ロングラン性、耐湿性が悪くなる虞がある。特に溶融安定性に優れたロングラン性の良好なEVOH組成物を製造する場合には、EVOHのケン化度が99.7モル%以上であることが好ましく、99.8モル%以上であることがより好ましく、99.9モル%以上であることがさらに好ましく、99.95モル%以上であることが特に好ましい。
また、エチレンと酢酸ビニルを共重合する際に、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も併用することもできる。また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
以下にEVOHの製造方法を具体的に説明する。エチレンと酢酸ビニルの重合は溶液重合に限るものではなく、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであっても良く、また連続式、回分式のいずれであってもよく、溶液重合の場合の重合条件は次の通りである。
溶媒;アルコール類が好ましいが、その他エチレン、酢酸ビニル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶解し得る有機溶剤(ジメチルスルホキシドなど)を用いることができる。アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等を用いることができ、特にメチルアルコールが好ましい。
触媒;2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メチル−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤及びイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤等を用いることができる。
温度;20〜90℃、好ましくは40℃〜70℃。
時間(連続式の場合は平均滞留時間);2〜15時間、好ましくは3〜11時間。
重合率;仕込みビニルエステルに対して10〜90%、好ましくは30〜80%。
重合後の溶液中の樹脂分;5〜85%、好ましくは20〜70%。
共重合体中のエチレン含有率;好ましくは5〜60モル%、さらに好適には15〜55モル%、最適には20〜50モル%。
なお、エチレンと酢酸ビニル以外にこれらと共重合し得る単量体、例えば、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン等のα−オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、あるいはモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を少量共存させることも可能である。
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応酢酸ビニルを追い出す。エチレンを蒸発除去したエチレン−酢酸ビニル共重合体溶液から未反応の酢酸ビニルを追い出す方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から該共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応酢酸ビニルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液を取り出す方法などが採用される。
未反応酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、該共重合体中の酢酸ビニル成分をケン化する。ケン化方法は連続式、回分式いずれも可能である。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどが用いられる。また、ケン化に用いる溶媒としては、メタノールが好ましい。例えば、ケン化条件は次の通りである。
該共重合体溶液濃度;10〜50%。
反応温度;30〜150℃。
触媒使用量;0.005〜0.6当量(酢酸ビニル成分当り)。
時間(連続式の場合、平均滞留時間);10分〜6時間。
一般に、連続式でケン化する場合には、ケン化により生成する酢酸メチルをより効率的に除去できるので、回分式の場合に比べて少ない触媒量で高いケン化度の樹脂が得られる。また、連続式の場合にはケン化により生成するEVOHの析出を防ぐため、より高い温度でケン化する必要がある。したがって、連続式では下記の範囲の反応温度及び触媒量とすることが好ましい。
反応温度;70〜150℃。
触媒使用量;0.005〜0.1当量(酢酸ビニル成分当り)。
ケン化反応後のケン化度は目的により異なるが好ましくは酢酸ビニル成分の80モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。ケン化度は条件によって任意に調整できる。
前述のように、特に溶融安定性に優れたロングラン性の良好なEVOH組成物を製造する場合には、EVOHのケン化度が99.7モル%以上であることが好ましく、99.8モル%以上であることがより好ましく、99.9モル%以上であることがさらに好ましく、99.95モル%以上であることが特に好ましいが、このようなEVOHを得るためにはケン化条件をさらに以下のように調整することが好ましい。
ケン化度99.9モル%以上の高いケン化度のEVOHを得る方法としては、連続式が好ましい。連続式で高いケン化度を得る方法としては、例えば、ケン化反応塔の複数箇所から触媒を添加する方法、触媒使用量を多くする方法、ケン化反応塔の下部から吹き込むメタノールの量を多くする方法などが挙げられる。また、回分式でケン化度99.9モル%以上の高いケン化度のEVOHを得る方法としては、例えば、触媒を複数回に分けて添加する方法、触媒使用量を多くする方法、ケン化反応槽にメタノール蒸気あるいは窒素ガスを吹き込む量を多くする方法などが挙げられる。
得られたケン化後のEVOHのアルコール溶液から、EVOHペレットを製造する方法は特に限定されない。好適には、EVOHのアルコール溶液を、凝固浴中にストランド状に析出させた後、該ストランドを切断することにより含水ペレットが得られる。析出に際しては、アルコール溶液を濃縮することによってケン化時よりもEVOH濃度を上昇させておいても良いし、メタノールの一部又は全部を水で置換して、EVOHの水/アルコールの混合溶液又はEVOHの含水組成物としておいても良い。これを水中、あるいはアルコールを少量含むアルコール水溶液中に押出してストランド状に析出させてから切断することで含水ペレットが得られる。また、ストランド状に析出させずに、流動状態のままで切断し、水中で凝固させてペレットを製造することもできる。
以上のようにして得られる含水ペレットは多孔質であり、ケン化触媒残渣を水洗除去しやすく、その後の添加剤の添加や、乾燥操作も容易である。このような含水ペレットの含水率は10〜80重量%であることが、上記操作上の利点が大きく好適である。含水率はより好適には20重量%以上であり、さらに好適には30重量%以上である。また、より好適には70重量%以下であり、さらに好適には60重量%以下である。
こうして得られた含水ペレットは、通常ケン化触媒残渣であるアルカリ金属塩、例えば酢酸ナトリウムを含んでおり、そのために着色などの問題が生じるため、洗浄して除去することが好ましい。通常、洗浄前の含水ペレットのアルカリ金属塩含有量はアルカリ金属換算で100〜10000μmol/g(EVOH重量当り)程度である。洗浄方法は特に限定されないが、水で洗浄する方法が好適である。このとき洗浄液として使用する水は、アルカリ金属イオンを効率的に除去するために、酢酸などの酸の水溶液であってもよい。また、水による洗浄と酸による洗浄を併用して、効率的にケン化触媒残渣の含有量を減少させることも好ましい。
洗浄後の含水ペレットのアルカリ金属含有量をアルカリ金属換算で0〜50μmol/g(EVOH重量当り)まで減少させることが好適である。アルカリ金属含有量の上限は、より好ましくは40μmol/gであり、さらに好ましくは30μmol/gであり、特に好ましくは20μmol/gである。ケン化触媒残渣は、通常、酢酸のアルカリ金属塩の形で含まれているから、洗浄後の含水ペレットのアルカリ金属含有量を十分に低減させておくことによって、カルボン酸根の含有量を低減したEVOH組成物が得られやすくなる。
含水ペレットを洗浄する方法は特に限定されるものではなく、回分式処理容器又は連続式処理容器のいずれも使用可能である。中でも、塔式容器内で連続的にペレットを供給して処理する方法が、生産性の観点から好適である。
本発明で使用するEVOH樹脂組成物(F)においては、アルカリ金属塩(A)及びホウ素化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有し、かつ炭酸ガスを含有する水溶液にEVOH樹脂を接触させるEVOH樹脂組成物(F)の製造方法が好適に採用される。このとき、EVOH樹脂を接触させる前記水溶液は、アルカリ金属塩(A)及びホウ素化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有し、かつ炭酸ガスを含有する水溶液である。
前記水溶液の含有する炭酸ガスの量は特に限定されるものではなく、適宜調整されるものであるが、空気中に存在する炭酸ガスが自然に溶解するような程度の量よりも多い量を溶解させる必要がある。水溶液中の炭酸ガスの濃度(遊離の二酸化炭素と炭酸の合計)は好適には、0.5mmol/L以上で、より好適には2mmol/L以上、さらに好ましくは10mmol/L以上の範囲である。また炭酸ガスの溶解度を上げるために、1.5〜10気圧程度の加圧条件下で処理を行っても良い。
連続式処理容器、特に塔式容器を使用して、連続的にペレットを供給して処理する方法を採用する場合、水溶液中の炭酸ガス濃度が高すぎる時には、EVOHペレットの周囲に気泡が発生し、樹脂の沈降性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、このような連続式処理工程が適用される場合には、水溶液中の炭酸ガス濃度が飽和炭酸ガス濃度よりも低い方が好ましい場合がある。この場合の炭酸ガス濃度は、飽和炭酸ガス濃度未満の値に設定され、好適には飽和炭酸ガス濃度の0.95倍以下、より好適には飽和炭酸ガス濃度の0.9倍以下に設定される。この濃度は、処理液の温度や圧力にも影響して決定される。一方、回分式処理容器を使用する場合には、通常上記沈降性の問題は生じないが、必要に応じて炭酸ガス濃度の上限値を連続式処理容器と同様に設定することができる。
前記水溶液がアルカリ金属塩(A)を含有することが、層間接着性及びロングラン性を確保する点から好ましい。アルカリ金属塩(A)の含有量の好適な範囲は含水ペレットの含水率の影響を受けるが、一般に0.05〜40mmol/Lであることが好ましい。前記水溶液のアルカリ金属塩(A)の含有量のより好適な下限は0.1mmol/Lである。また、より好適な上限は20mmol/Lである。後述するように、EVOH樹脂組成物(F)中のアルカリ金属塩(A)の好適な含有量はEVOHのエチレン含有量に依存して変化するので、それに対応させて水溶液中のアルカリ金属塩(A)の含有量を調整することが好ましい。
アルカリ金属塩(A)のカチオン種は特に限定されない。リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩から選択されるが、ナトリウム塩及びカリウム塩が好適であり、カリウム塩が特に好適である。カリウム塩を使用することで、層間接着性及びロングラン性がともに優れた、EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド(G)からなる樹脂組成物が得られる。
アルカリ金属塩(A)のアニオン種も特に限定されない。炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、水酸化物、カルボン酸塩等として添加することができ、中でも、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩及び水酸化物として添加することが好ましい。また、下記に示すように、ホウ酸塩として添加することも好ましい。ただし、カルボン酸根の含有量を少なくするという本発明の趣旨から、カルボン酸塩ではないほうが良い。
また、前記水溶液がホウ素化合物(B)を含有することが、溶融成形時のダイリップ部の目やに発生を抑制できる点から好ましい。当該水溶液中のホウ素化合物(B)の濃度がホウ素元素換算で0.1〜50mmol/Lであることが、適当な量のホウ素化合物(B)を乾燥樹脂組成物ペレット中に含有させることができて好適である。ホウ素化合物(B)の濃度の下限値は、より好適には0.5mmol/L以上であり、さらに好適には1mmol/L以上である。またその上限値は、より好適には40mmol/L以下であり、さらに好適には30mmol/L以下である。50mmol/Lを超えると、EVOH樹脂組成物(F)がゲル化しやすく、成形品の外観が悪化する虞がある。
前記水溶液の調製に用いられるホウ素化合物(B)としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。
また、本発明の趣旨から、前記水溶液は、カルボン酸又はその塩(C)を含有しないことが望ましい。ただし、このことはEVOH樹脂中に残存しているカルボン酸又はその塩(C)が前記水溶液中に溶け出して、その結果含まれるようになることを排除するものではない。また、本発明の効果を阻害しない範囲でカルボン酸又はその塩(C)を含有することを排除するものでもない。
溶融成形時のロングラン性、耐着色性、特に高温成形時の耐着色性、及び層間接着性のバランスを取るためには、前記水溶液がリン酸化合物(D)を含有することが好ましい。適当な量のリン酸化合物(D)を含有することで、得られるEVOH樹脂組成物(F)を溶融成形した際の成形物の着色及びゲル・ブツの発生を抑制することが可能である。リン酸化合物(D)を添加する場合の、水溶液中のリン酸化合物(D)の濃度の上限値は、リン酸根換算で好適には10mmol/Lであり、より好適には5mmol/Lであり、さらに好適には3.5mmol/Lであり、最適には2.5mmol/Lである。一方、リン酸化合物(D)を添加する場合の、水溶液中のリン酸化合物(D)の濃度の下限値は、リン酸根換算で好適には0.01mmol/Lであり、より好適には0.03mmol/Lであり、さらに好適には、0.05mmol/Lであり、最適には、0.1mmol/Lである。
当該水溶液の調製に用いられるリン酸化合物(D)としては、無機リン酸化合物が好適に使用され、リン酸、亜リン酸などの各種の酸やその塩などが例示される。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン酸化合物(D)を添加することが好ましい。
前記水溶液は、アルカリ土類金属塩(E)を含有していても良いが、アルカリ土類金属塩は難溶性の炭酸塩を形成しやすいため、大量に添加するのは適当ではない。用途によっては、適当な量を添加することで、得られるEVOH樹脂組成物(F)を溶融成形した際のロングラン性を改善することが可能な場合がある。アルカリ土類金属塩(E)の添加は任意であるが、添加する場合の当該水溶液中のアルカリ土類金属塩(E)の濃度はアルカリ土類金属換算で0〜10mmol/Lの範囲であり、アルカリ土類金属塩(E)を乾燥樹脂組成物ペレット中に含有させることができて好適である。またその上限値は、より好適には5mmol/L以下であり、さらに好適には3mmol/L以下である。
アルカリ土類金属塩(E)のカチオン種は特に限定されない。マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩などが挙げられるが、マグネシウム塩とカルシウム塩が好適である。アルカリ土類金属塩(E)のアニオン種も特に限定されない。炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、水酸化物、カルボン酸塩等として添加することができ、中でも、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩及び水酸化物として添加することが好ましい。通常上記のアルカリ土類金属塩は水に難溶性のものが多いが、炭酸の存在により溶解度が大きくなる。ただし、カルボン酸根の含有量を少なくするという本発明の趣旨から、カルボン酸塩ではないほうが良い。
前記添加剤及び炭酸ガスを含有する水溶液のpHは、3.5〜6.5であることが好適である。一定量以上の炭酸ガスを含有することで、このような酸性の水溶液にすることができる。pHの値はより好適には3.8以上であり、さらに好適には4以上である。またpHの値はより好適には6.3以下であり、さらに好適には6.0以下であり、最適には5.8以下である。
前記添加剤及び炭酸ガスを含有する水溶液の調製方法は特に限定されない。予め炭酸ガスを溶解させた水溶液の中に、アルカリ金属塩(A)及びホウ素化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を添加しても良い。逆に、アルカリ金属塩(A)及びホウ素化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を予め溶解させた水溶液の中に炭酸ガスを溶解させても良い。また、それぞれの水溶液を予め作成しておいて、それを混合しても構わない。
前記水溶液にEVOH樹脂を接触させる方法は特に限定されるものではないが、EVOH樹脂を前記水溶液に浸漬する方法が望ましい。前記水溶液にEVOH樹脂を浸漬する際のEVOH樹脂の形状は、粉末、粒状、球状、円柱形ペレット状等の任意の形状であってよいが、例えば前述のようにして得られた含水EVOHペレットを前記水溶液に接触させることが好適である。含水状態にあるペレットを水溶液に浸漬することで、アルカリ金属塩(A)又はホウ素化合物(B)をEVOH樹脂ペレット中に効率良くかつ均一に含有させることができる。水溶液に浸漬する前の含水ペレットの含水率は、10〜80重量%であることが好適である。含水率はより好適には20重量%以上であり、さらに好適には30重量%以上である。また、より好適には75重量%以下であり、さらに好適には70重量%以下である。
EVOH樹脂に接触させる前記水溶液の温度は特に限定されるものではないが、10〜90℃であることが好ましい。10℃未満では、アルカリ金属塩(A)又はホウ素化合物(B)をEVOH樹脂ペレット中に均一に含有させるのに時間がかかる虞があり、90℃を超えると、炭酸ガスの飽和溶解度が低下し、十分な量の炭酸ガスを前記溶液中に含有させることが困難な場合があるとともに、ペレット同士が融着する虞もある。前記水溶液の温度は、より好適には20℃以上であり、さらに好適には30℃以上である。また、より好適には85℃以下であり、さらに好適には80℃以下である。70℃以上の高い温度で接触させる場合は炭酸の溶解度が少なくなるので、1.5〜10気圧程度の加圧下で接触させることが好適である。
EVOH樹脂を前記水溶液に接触させる時間は、EVOH樹脂の形態によってその好適範囲が異なるが、1〜10mm程度のペレットの場合には1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましい。
EVOH樹脂を前記水溶液に接触させる方法は特に限定されない。EVOH樹脂を予め水に接触させておいて、炭酸ガスや添加剤を後から水中に溶解させることもできるが、予めこれらを溶解させて調整した水溶液をEVOH樹脂と接触させる方法が、添加剤を均一に含有する安定した品質のEVOH樹脂組成物(F)が得られて好ましい。
EVOH樹脂を前記水溶液に接触させる方式は、バッチ方式、連続方式のいずれによる方式も採用可能である。連続方式においては、例えば塔型の容器の中でEVOH樹脂を徐々に下方に移動させながら、連続的に供給される水溶液と接触させる方法などが、好適なものとして挙げられる。
また、複数の水溶液を調製して、複数回に分けて接触させても構わない。例えば、最初にアルカリ金属塩(A)又はホウ素化合物(B)のみを含有する水溶液と接触させておいてから、続いてアルカリ金属塩(A)又はホウ素化合物(B)に加えて炭酸ガスも含有する水溶液と接触させるような方法も採用できる。
さらにまた、アルカリ金属塩(A)又はホウ素化合物(B)に加えて炭酸ガスを含有する水溶液にEVOH樹脂を浸漬して接触させてから、押出機に投入し、押出機中で、アルカリ金属塩(A)、ホウ素化合物(B)、リン酸化合物(D)あるいはアルカリ土類金属塩(E)を含有する水溶液と接触させて溶融混練するような方法を採用することも可能である。
EVOH樹脂、好適にはEVOH樹脂ペレットは、前記水溶液に接触させた後、必要に応じて脱液してから乾燥工程に供される。乾燥方法は特に限定されず、熱風乾燥機などを使用することができるし、ベント付きの押出機中で溶融混練しながら乾燥させても構わない。乾燥機は流動式乾燥機であっても静置式乾燥機であっても良く、これらを組み合わせて使用してもよい。この中でも、初めに流動乾燥法で乾燥し、引き続いて静置乾燥法で乾燥する方法が好適である。乾燥温度は特に限定されないが、通常70〜120℃程度の温度が採用され、乾燥が進むにつれて温度を上昇させることもできる。乾燥後の含水率は通常1重量%以下であり、好適には0.5重量%以下である。こうして得られた乾燥ペレットが、ポリアミド樹脂(G)と溶融混練される。
以上説明したEVOH樹脂組成物(F)の製造方法においては、カルボン酸根をほとんど含有しない樹脂組成物が得られるから、この乾燥工程において、カルボン酸が揮発することがなく、周辺にカルボン酸を放出することのない、周辺環境に配慮した製造方法を提供できる。
本発明で好適に使用されるEVOH樹脂組成物(F)は、アルカリ金属塩(A)をアルカリ金属換算で0.1〜20μmol/g含有し、95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)を0〜2μmol/g含有し、かつ95℃の0.05規定水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C2)を0〜40μmol/g含有する、EVOH樹脂組成物(F)である。
当該EVOH樹脂組成物(F)は、臭気を発生しにくく、しかも溶融成形時のロングラン性に優れるEVOH樹脂組成物(F)である。当該EVOH樹脂組成物(F)は、好適には上述の製造方法によって製造されるものであるが、その方法で製造されるものに限定されるものではない。
本EVOH樹脂組成物(F)は、アルカリ金属塩(A)をアルカリ金属換算で0.1〜20μmol/g含有する。アルカリ金属塩(A)を含有することで、EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)からなる樹脂組成物の、層間接着性、溶融時の耐着色性及びロングラン性が改善される。含有量が0.1μmol/g未満では層間接着性、溶融時の耐着色性及びロングラン性ともに不十分であり、20μmol/gを超えると溶融時の耐着色性が不良となる。0.1〜0.3μmol/Lの範囲では溶融時の耐着色性及びロングラン性は比較的良好であるが、他の樹脂との多層構成で使用する場合、通常の酸無水物変性の接着性樹脂では接着強度は不十分である。アルカリ金属塩(A)の含有量の下限はより好適には0.3μmol/g以上であり、より好適には0.5μmol/g以上である。アルカリ金属塩(A)の含有量の上限は好適には15μmol/g以下であり、より好適には10μmol/g以下であり、特に好適には8μmol/g以下である。
このとき、アルカリ金属塩(A)の含有量と、EVOHのエチレン含有量とが下記式(1)を満足することが好ましい。
0.95×exp(0.039×ET)−2≦a≦0.95×exp(0.039×ET)+2 (1)
ここで、
aは、アルカリ金属換算でのアルカリ金属塩(A)の含有量(μmol/g)、
ETは、エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量(モル%)
である。
アルカリ金属塩(A)の含有量が、上記(1)式において規定する範囲よりも多い場合には、EVOH樹脂組成物(F)の色相が悪化するおそれがある。一方、上記(1)式において規定する範囲よりも少ない場合には、ロングラン性及び接着性が悪化するおそれがある。下記式(1’)を満足することがより好ましく、下記式(1”)を満足することがさらに好ましい。
0.95×exp(0.039×ET)−1.5≦a≦0.95×exp(0.039×ET)+1.5 (1')
0.95×exp(0.039×ET)−1≦a≦0.95×exp(0.039×ET)+1 (1")
本発明で使用するEVOH樹脂組成物(F)は、95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)を0〜2μmol/g含有する。95℃の水で10時間浸漬処理することで、EVOH樹脂組成物(F)中に含まれているカルボン酸とカルボン酸塩の大部分が抽出されると想定されるので、カルボン酸根(C1)は、これらの合計含有量にほぼ対応する数値が示されているものである。すなわち、EVOH樹脂組成物(F)はカルボン酸及びカルボン酸塩の含有量が極めて少ない樹脂組成物である。カルボン酸根(C1)の含有量は好適には1.5μmol/g以下であり、より好適には1μmol/g以下であり、さらに好適には0.5μmol/g以下である。
また本発明で使用するEVOH樹脂組成物(F)は、95℃の0.05規定水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C2)を0〜40μmol/g含有する。95℃の0.05規定水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理することにより、EVOH樹脂組成物(F)中に含まれているカルボン酸とカルボン酸塩の大部分が抽出されるのみならず、EVOH樹脂中に残存する未ケン化のカルボン酸エステル基の大部分においてケン化反応が進行し、加水分解生成物であるカルボン酸根が遊離、抽出されるものである。すなわち、EVOH樹脂組成物(F)はカルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル基の合計含有量の少ない樹脂組成物である。カルボン酸根(C2)の含有量は好適には20μmol/g以下であり、より好適には10μmol/g以下であり、さらに好適には5μmol/g以下であり、最適には2μmol/g以下である。
EVOH樹脂組成物(F)を溶融混練する際には、通常200℃以上の温度になることから、その温度においては多くの化学反応が進行し得る。EVOH樹脂に含有されるカルボン酸エステル基は、水と反応して加水分解されてカルボン酸を遊離したり、カルボン酸やカルボン酸塩とエステル交換反応を行ったりすることが考えられる。また、カルボン酸やカルボン酸塩がEVOHの水酸基と反応してカルボン酸エステル基を生成したり、カルボン酸エステル基とエステル交換反応を行ったりすることが考えられる。つまり、溶融成形、特に長時間の溶融成形においては、このような加熱溶融時における溶融樹脂内での化学反応を無視することができない。
当該EVOH樹脂組成物(F)は、この点に着目したものであり、相互に変換し得るカルボン酸、カルボン酸塩及びカルボン酸エステルの含有量の合計量をもって、樹脂の溶融安定性改善と臭気発生防止を図ろうとするものである。当初から遊離した形である95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)の量を極めて少なくし、加熱溶融条件下で遊離し得るものも含めた量である95℃の0.05規定水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C2)の量を一定値以下にすることで、極めてロングラン性に優れた樹脂組成物となるのである。
本発明で好適に使用される別のEVOH樹脂組成物(F)は、アルカリ金属塩(A)をアルカリ金属換算で0.1〜20μmol/g含有し、95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)を0〜2μmol/g含有し、かつケン化度が99.7〜100モル%であるEVOH樹脂組成物(F)である。
これは、前述のEVOH樹脂組成物(F)と類似する樹脂組成物であるが、95℃の0.05規定水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C2)の代わりに、未ケン化のカルボン酸エステル基の量をケン化度の値で表現したものである。EVOHのケン化度が99.7モル%以上であることにより、溶融成形時のロングラン性に優れるものである。ケン化度は、99.8モル%以上であることがより好ましく、99.9モル%以上であることがさらに好ましく、99.95モル%以上であることが特に好ましい。
本発明で使用される上記EVOH樹脂組成物(F)が、さらにホウ素化合物(B)を含有することが、溶融成形時のダイリップ部の目やに発生を抑制できる点から好ましい。ホウ素化合物(B)を配合する効果と、その種類については、EVOH樹脂組成物(F)の製造方法の説明のところで述べたとおりである。ホウ素化合物(B)の含有量は、ホウ素元素換算値で1〜200μmol/gであることが好適である。2μmol/g以上であることがより好適であり、3μmol/g以上であることがさらに好適である。また150μmol/g以下であることがより好適であり、100μmol/g以下であることがさらに好適である。
また、これらEVOH樹脂組成物(F)がリン酸化合物(D)を含有することが、溶融成形時のロングラン性、耐着色性、特に高温成形時の耐着色性、及び層間接着性のバランスを取る上で好ましい。リン酸化合物(D)を配合する効果とその種類についてはEVOH樹脂組成物(F)の製造方法の説明のところで述べたとおりである。リン酸化合物(D)の含有量の上限は、リン酸根換算で好適には5μmol/gであり、より好適には4μmol/gであり、さらに好適には3μmol/gであり、最適には1.5μmol/gである。リン酸根が多すぎる場合には、ロングラン性が低下するおそれがある。一方、リン酸化合物(D)の含有量の下限は、リン酸根換算で好適には0.05μmol/gであり、より好適には0.1μmol/gであり、さらに好適には0.15μmol/gであり、最適には0.2μmol/gである。
このとき、当該EVOH樹脂組成物(F)中のアルカリ金属換算でのアルカリ金属塩(A)の含有量(a:μmol/g)と、リン酸根換算でのリン酸化合物(D)の含有量(d:μmol/g)との比(a/d)が、2.4〜50であることが好ましい。こうすることによって色相及びロングラン性が良好な樹脂組成物を得ることができる。比(a/d)が2.4未満の場合には、ロングラン性が低下するおそれがある。一方、比(a/d)が50を超える場合には、色相が悪化するおそれがあり、ロングラン性に悪影響を及ぼす場合もある。比(a/d)は、より好適には40以下であり、さらに好適には30以下である。
これらEVOH樹脂組成物(F)がアルカリ土類金属塩(E)を含有していても良い。アルカリ土類金属塩(E)を配合する効果とその種類についてはEVOH樹脂組成物(F)の製造方法の説明のところで述べたとおりである。アルカリ土類金属塩(E)の含有量は、アルカリ土類金属換算で0〜10μmol/gであることが好適である。5μmol/g以下であることがより好適であり、3μmol/g以下であることがさらに好適である。特に、溶融成形時の着色の抑制を重視する場合には、アルカリ土類金属塩(E)の含有量は2μmol/g以下であることがより好適であり、1μmol/g以下であることがさらに好適であり、実質的に含有しないことが好ましい。
本発明で使用されるEVOH樹脂組成物(F)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下で測定;但し、融点が190℃付近あるいは190℃を越えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、メルトフローレートを縦軸(対数)としてプロットし、190℃に外挿した値)は好適には0.1〜200g/10min.である。MFRの下限はより好適には0.2g/10min.以上であり、さらに好適には0.5g/10min.以上であり、最適には1g/10min.以上である。また、MFRの上限はより好適に50g/10min.以下であり、さらに好適には30g/10min.以下であり、最適には15g/10min.以下である。該メルトフローレートが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となってポリアミド樹脂(G)との溶融混練が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には、EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)からなる樹脂組成物を成形してなる成形物の機械強度が不足して好ましくない。
EVOH樹脂組成物(F)がリン酸化合物(D)を含有するものである場合、それを溶融成形した場合に得られる成形品が、リン酸根換算でのリン酸化合物(D)の含有量(d:μmol/g)と、リン元素含有量(t:μmol/g)との比(d/t)が0.4以下であり、かつクロロホルムで抽出可能な有機リン化合物を実質的に含有しないことが好ましい。
ここで、リン酸化合物(D)の含有量(d)は、例えば、溶融成形品を水溶液中に浸漬し、抽出されるリン酸根の量から求められる値である。すわわち、リン酸又はその塩として溶融成形品中に含有されていて、水溶液によって抽出されることの可能なリン酸化合物(D)の量を示すものである。一方、リン元素含有量(t)は、例えば、溶融成形品を完全燃焼させた灰分を溶解させた水溶液中に含まれるリン元素の量を発光分析して得られる値である。すなわち、水溶液中の抽出操作によって抽出されるもののみならず、溶融成形品に含まれている全リン元素を定量するものである。したがって、比(d/t)が0.4以下であるということは、溶融成形品に含有される全リン元素のうちの半分以上が、抽出不能な形で含まれているということである。
従来、EVOHにリン酸化合物(D)を含有させた場合においては、EVOH樹脂組成物中に含まれるリン酸化合物(D)はほぼ全量が抽出可能であり、それを溶融成形した後においてもほとんどのリン酸化合物(D)を抽出することが可能であった。したがって、溶融成形後においても、比(d/t)は1に近い値を示していた。これに対し、本発明で使用されるEVOH樹脂組成物(F)は、水溶液に浸漬してリン酸化合物(D)を含有させて乾燥させただけであれば、そのほとんどは抽出可能であるにもかかわらず、溶融状態で加熱されることによって、抽出が不可能になるものである。また、融点以下の温度であっても、比較的高温の下で長時間加熱した場合には、比(d/t)が低下する傾向が認められる。したがって、溶融成形品のみならず、長時間に亘る加熱乾燥処理を施したペレットなどにおいても、比(d/t)の低下が認められる場合がある。
上記溶融成形品中に含まれるリン元素が、どのような化学構造で存在しているのかは必ずしも明らかではないが、リン酸化合物(D)がEVOHの水酸基と反応してリン酸エステルを形成していることが推定される。このようにEVOHの分子鎖に固定されることによって、抽出が不可能になっているものと推定される。今回、酢酸などのカルボン酸類を使用する代わりに炭酸ガスを含有する水溶液に浸漬するなど、従来にない製造方法を採用したことで、従来にない特徴が得られたのではないかと考えられる。ただし、比(d/t)が0.4以下である溶融成形品の製造方法は特に限定されるものではない。
こうして得られた比(d/t)が0.4以下である溶融成形品は、ロングラン性に優れている。EVOHの分子鎖に固定されていると推定されているリン元素が熱安定性に寄与していることも考えられる。比(d/t)は、好適には0.35以下であり、より好適には0.3以下であり、さらに好適には0.25以下であり、最適には0.2以下である。
このときのリン元素含有量(t)の好適な範囲は、前述のEVOH樹脂組成物(F)におけるリン酸化合物(D)の含有量の好適な範囲と同じである。リン元素含有量(t)は、溶融加熱の前後で実質的に変化しないからである。好適には5μmol/gであり、より好適には4μmol/gであり、さらに好適には3μmol/gであり、最適には1.5μmol/gである。一方、リン元素含有量(t)の下限は、好適には0.05μmol/gであり、より好適には0.1μmol/gであり、さらに好適には0.15μmol/gであり、最適には0.2μmol/gである。
なお、用途によっては、EVOH樹脂組成物(F)が酸化防止剤などの有機リン化合物を含有する場合がある。このような場合には、EVOHの分子鎖に固定されているわけでもないのに水に抽出不能なリン化合物を相当量含有して、上記比(d/t)が0.4以下となる場合があるが、必ずしもロングラン性に優れるわけではない。したがって、このような樹脂組成物と区別するために、上記溶融成形品はクロロホルムで抽出可能な有機リン化合物を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、例えば0.01μmol/g未満であることをいう。
また、前記溶融成形品におけるアルカリ金属塩(A)、ホウ素化合物(B)、カルボン酸根(C1、C2)、アルカリ土類金属塩(E)の種類や含有量については、前述のEVOH樹脂組成物の場合と同様である。また、使用されるEVOHの種類、アルカリ金属塩(A)の含有量とEVOHのエチレン含有量の関係などについても同様である。これらの値は、いずれも溶融成形の前後で実質的に変化するものではない。
本発明の樹脂組成物は、以上に説明したようなEVOH樹脂組成物(F)1〜99重量%と、ポリアミド樹脂(G)1〜99重量%とからなる樹脂組成物である。
EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)をブレンドすることによって、EVOH樹脂組成物(F)の耐屈曲疲労性や耐衝撃性を改善することができる。また、ポリアミド樹脂(G)のガスバリア性を改善することもできる。特に、EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)とからなる樹脂組成物層を有する多層構造体、特に多層フィルムからなるパウチにおいて耐熱水性(耐レトルト性)が改善される。
使用されるポリアミド樹脂(G)は特に限定されるものではないが、カプロアミドを主体とするポリアミド樹脂(G)であることが好ましい。具体的には、ポリアミド樹脂(G)を構成する単位の75モル%以上がカプロアミド単位であることが好ましい。このようなポリアミド樹脂(G)としては、ポリカプロアミド(PA6)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(PA6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(PA6/66)等を挙げることができる。
また、カプロアミド単位以外の構成単位としては、ブチロラクタム、ラウリルラクタム等の環状ラクタム;1,10−アミノデカン酸、1,12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサデカジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコセンジオン酸、ドコサンジオン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸等のジカルボン酸;エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン等のジアミン;から誘導される構造単位を例示することができる。
ポリアミド樹脂(G)の相対粘度[ηr]は、2.0〜7.0の範囲であることが好ましく、2.5〜5.0がより好ましい。相対粘度[ηr]が2.0未満の場合には、溶融成形時のストランド化およびフィルム化等が困難となるおそれがある。一方、相対粘度[ηr]が7.0を超える場合には、溶融粘度が高すぎてEVOH(A)との相溶性が低くなり、好適な溶融成形性を得ることができなくなるおそれがある。
ポリアミド樹脂(G)のMFRは、0.1〜100g/分(230℃、2160g)の範囲であることが好ましく、1〜50g/分がより好ましい。MFRが0.1g/10分以下の場合には、溶融粘度が高すぎてEVOHとの相溶性が低くなり、溶融成形性が低下するおそれがある。一方、MFRが100を越える場合には、溶融成形時のストランド化およびフィルム化等が困難になるおそれがある。
これらのポリアミド樹脂(G)の中でも、末端アミノ基量が、樹脂1gあたり百万分の15当量以下、すなわち15μeq/g以下であるポリアミド樹脂(G)が好適に使用される。このようなポリアミド樹脂(G)を使用することによって、本発明の樹脂組成物を成形して得られるフィルムの色相が改善され、フィッシュアイの発生が抑制される。ポリアミド樹脂(G)の末端アミノ基量は、10μeq/g以下であることがより好ましく、7μeq/g以下であることがさらに好ましく、4μeq/g以下であることが特に好ましい。末端アミノ基量が15μeq/gを越える場合、本発明の樹脂組成物が特長とする成形時のロングラン性が発現しなかったり、組成物の色調が低下したりするおそれがある。
このとき、ポリアミド樹脂(G)は、全末端の70モル%以上がイミド構造を含む単位で封鎖されていることが望ましい。この割合が70モル%未満の場合には、本発明の樹脂組成物の特長であるロングラン性が低下する傾向があり、外観に優れた成形物を得ることが困難となるおそれがある。前記割合はさらに好適には80モル%以上である。
上記イミド構造としては特に制限はないが、イミド構造の少なくとも一部が環状イミド構造であることが好ましい。このような環状イミドとしては、フタルイミド、スクシンイミド、グルタルイミド、3−メチルグルタルイミド、マレイミド、ジメチルマレイミド、トリメリットイミド、ピロメリットイミド等が挙げられる。これらの中でも、フタルイミドおよびスクシンイミドがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂組成物(F)1〜99重量%と、ポリアミド樹脂(G)1〜99重量%とからなるものである。EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)の配合比は目的に応じて調整される。EVOHの柔軟性や耐熱水性を改善し、かつ良好なバリア性を得る観点からは、EVOH樹脂組成物(F)の含有量が50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。このとき、ポリアミド樹脂(G)の含有量は50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。一方、柔軟性や耐熱水性を改善効果を明確にするためには、EVOH樹脂組成物(F)の含有量が95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。このとき、ポリアミド樹脂(G)の含有量は5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物には、本発明によって奏される効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、硼酸等の架橋剤、無機充填剤、無機乾燥剤等の各種添加剤、高吸水性樹脂等の各種樹脂を配合してもよい。
EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)、さらに場合によっては上記添加剤を溶融混練して本発明の樹脂組成物を得るための配合手段としては、特に制限はなく、公知の方法のいずれも採用することができる。これらの中でも、工程の簡便さおよびコストの観点から、単軸または二軸スクリュー押出機(同方向あるいは異方向)、インテンシブミキサー、連続式インテンシブミキサー等を使用する溶融混練法が好ましい。混練温度としては150〜280℃の範囲が好ましい。得られる樹脂組成物の酸化防止のために、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。混練時間は、長い方が良い結果を得られるが、樹脂組成物の酸化防止および生産効率の観点から、0.1〜20分が好ましい。
こうして得られた本発明の樹脂組成物は、溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形物に成形される。溶融成形法としては押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、射出成形、溶融紡糸等が可能である。溶融温度は該共重合体の融点等により異なるが150〜270℃程度が好ましい。このとき、本発明の樹脂組成物を一旦ペレット化してから成形に供してもよいし、EVOH樹脂組成物(F)とポリアミド樹脂(G)とをドライブレンドして、直接成形に供してもよい。これらの成形物は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸又は二軸延伸したり、熱成形したりして二次加工することも可能である。
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物のみの単層からなる成形物としても使用可能であるが、当該樹脂組成物からなる少なくとも1層を含む多層構造体とすることも好適である。多層構造体の構成は特に限定されないが、ポリオレフィンあるいはポリアミドからなる層と積層することが好ましい。より好適には、片面にポリオレフィン層が積層され、反対側の面にポリアミド層が積層されてなる多層構造体、特に多層フィルム又は多層シートである。このような構成にすることによって、ヒートシールによって内容物を密封することができるとともに、レトルト処理時に樹脂組成物が吸収した水分をポリアミド層を通じて放出することが可能である。
多層構造体を製造する方法は特に限定されない。例えば、本発明の樹脂組成物からなる成形物(フィルム、シート等)上に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材上に該樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、熱可塑性樹脂と本発明の樹脂組成物を共押出又は共射出する方法、更には本発明の樹脂組成物より得られた成形物と他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物からなる成形品、特に多層構造体は、ガスバリア性に優れていることに加え、従来のEVOHに見られなかった、卓越した耐熱水性を備えている点から、通常の食品包装への使用、特にヒートシールにより密封される容器、袋、パウチ、容器の蓋や、ボイル、レトルト殺菌食品の包装容器用素材として有用である。また、食品以外の包装、例えば、医薬品、農薬、化粧品、洗剤、有機薬品、オーディオ部品、文具等の非食品類の包装用素材にも望ましい。さらに本発明の樹脂製造物を原料とする層を備える多層包装体は、ボイル、レトルト殺菌用容器として有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。以下「%」、「部」とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。尚、水はすべてイオン交換水を使用した。
(1)アルカリ金属塩(A)の定量
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOH樹脂組成物(F)を、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z−8801準拠)でふるい分けした。上記のふるいを通過したEVOH樹脂組成物(F)の粉末10gと0.01規定の塩酸水溶液50mLを100mL共栓付き三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で10時間撹拌、加熱抽出した。得られた抽出液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。前記の希釈された抽出液を、(株)横河電機製イオンクロマトグラフィーIC7000を用いて定量分析し、Na及びKイオンの量を定量した。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液及び塩化カリウム水溶液、を用いて作成した検量線を用いた。こうして得られたNa及びKイオンの量から、乾燥EVOHペレットに含まれるアルカリ金属塩(A)の量を金属元素換算値で得た。
イオンクロマトグラフィー測定条件:
カラム :(株)横河電機製のICS−C25
溶離液 :5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液
測定温度 :40℃
溶離液流速 :1mL/min.
サンプル打ち込み量:50μL
(2)95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)の定量
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOH樹脂組成物(F)を、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z−8801準拠)でふるい分けした。上記のふるいを通過したEVOH樹脂組成物(F)の粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で10時間撹拌、抽出した。得られた抽出液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。前記の希釈された抽出液を、(株)横河電機製イオンクロマトグラフィーIC7000を用いて定量分析し、カルボン酸(酢酸)イオンの量を定量し、カルボン酸根(C1)を得た。なお、定量に際しては酢酸水溶液を用いて作成した検量線を用いた。
イオンクロマトグラフィー測定条件:
カラム :(株)横河電機製 SCS5−252
溶離液 :0.1%リン酸水溶液
測定温度 :40℃
溶離液流速 :1mL/min.
サンプル打ち込み量:50μL
(3)95℃の0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C2)の定量
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOH樹脂組成物(F)を、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z−8801準拠)でふるい分けした。上記のふるいを通過したEVOH樹脂組成物(F)の粉末10gと0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で10時間撹拌しながら加熱抽出した。得られた抽出液2mLにイオン交換水7mLを加えて希釈し、さらに、0.1規定のリン酸水溶液を1mL加えて分析用試料液を調製した。前記の希釈された抽出液に含まれるカルボン酸イオンの量を、(株)横河電機製イオンクロマトグラフィーIC7000を用いて定量分析し、カルボン酸(酢酸)イオンの量を定量し、カルボン酸根(C2)を得た。なお、定量に際しては酢酸を0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液で希釈した溶液2mLに、イオン交換水7mLを加え、さらに0.1規定リン酸水溶液1mL加えて作製した検量線用試料液で作成した検量線を用いた。
イオンクロマトグラフィー測定条件:
カラム :(株)横河電機製 SCS5−252
溶離液 :0.1%リン酸水溶液
測定温度 :40℃
溶離液流速 :1mL/min.
サンプル打ち込み量:50μL
(4)ホウ素化合物(B)の定量
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレット50mgを酸素フラスコ燃焼法により完全燃焼させ、得られた燃焼灰分を1mol/L硝酸水溶液10mLに溶解させた。前記溶液を用いて、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置IRIS AP)によりホウ素化合物(B)の含有量をホウ素元素換算値で得た。
(5)リン酸化合物(D)の含有量(d)の定量
本実施例においては、溶融成形前のペレットのリン酸化合物(D)の含有量(d1)と、溶融成形後の単層フィルムのリン酸化合物(D)の含有量(d2)とを測定した。
溶融成形前のEVOH樹脂組成物(F)ペレットを測定する場合、まず乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOH樹脂組成物(F)を、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z−8801準拠)でふるい分けした。上記のふるいを通過したEVOH樹脂組成物(F)粉末10gと0.01規定の塩酸水溶液50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で4時間撹拌、抽出した。得られた抽出液を、(株)横河電機製イオンクロマトグラフィーIC7000を用いて定量分析し、リン酸イオンの量を定量しリン酸根量(d1:μmol/g)を得た。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液を用いて作成した検量線を用いた。
溶融成形後の単層フィルムを測定する場合には、前記EVOH樹脂組成物(F)粉末10gの代わりにフィルムを短冊状に切断したもの5gを使用した以外は、ペレット形態の試料と同様に測定し、リン酸イオンの量を定量しリン酸根量(d2:μmol/g)を得た。
イオンクロマトグラフィー測定条件:
カラム :(株)横河電機製 ICS−A23
溶離液 :2.5mM炭酸ナトリウムと1.0mM炭酸水素ナトリウムを含む水溶液
測定温度 :40℃
サンプル打ち込み量:50μL
(6)リン元素含有量(t)
溶融成形後の単層フィルム100mgを酸素フラスコ燃焼法により完全燃焼させ、得られた燃焼灰分を1mol/Lの硝酸水溶液10mLに溶解させた。該溶液を用いて、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置「IRIS AP」)によりリン元素含有量(t:μmol/g)を得た。
(7)クロロホルムで抽出可能な有機リン化合物の含有量
溶融成形後の単層フィルムを5mm角以下のサイズに破砕したもの100gを円筒濾紙の中に充填し、3000mlのクロロホルムをフラスコに投入して、ソックスレー型抽出装置を使用して還流条件下で48時間抽出した。抽出液から、ロータリーエバポレーターにてクロロホルムを除去して残渣を得た。得られた残渣を酸素フラスコ燃焼法により完全燃焼させ、得られた燃焼灰分を1mol/Lの硝酸水溶液10mLに溶解させた。該溶液を用いて、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置「IRIS AP」)によりリン元素含有量を得た。
(8)ケン化度の測定(NMR法)
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z−8801準拠)でふるい分けした。上記のふるいを通過したEVOH粉末5gを、100gのイオン交換水中に浸漬し、85℃で4時間撹拌した後、脱液して乾燥する操作を二回行った。得られた洗浄後の粉末EVOHを用いて、下記の測定条件でNMRの測定を行い、下記の解析方法でケン化度を求めた。
・測定条件
装置名 :日本電子製 超伝導核磁気共鳴装置Lambda 500
観測周波数 :500MHz
溶媒 :DMSO−d6
ポリマー濃度 :4重量%
測定温度 :40℃及び95℃
積算回数 :600回
パルス遅延時間:3.836秒
サンプル回転速度:10〜12Hz
パルス幅(90°パルス):6.75μsec
・解析方法
40℃での測定では、3.3ppm付近に水分子中の水素のピークが観測され、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素のピークのうちの、3.1〜3.7ppmの部分と重なった。一方、95℃での測定では、前記40℃で生じた重なりは解消するものの、4〜4.5ppm付近に存在するEVOHのビニルアルコール単位の水酸基の水素のピークが、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素のピークのうちの、3.7〜4ppmの部分と重なった。すなわち、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素(3.1〜4ppm)の定量については、水あるいは水酸基の水素のピークとの重複を避けるために、3.1〜3.7ppmの部分については、95℃の測定データを採用し、3.7〜4ppmの部分については40℃の測定データを採用し、これらの合計値として当該メチン水素の全量を定量した。なお、水あるいは水酸基の水素のピークは測定温度を上昇させることで高磁場側にシフトすることが知られている。
従って、以下のように40℃と95℃の両方の測定結果を用いて解析した。上記の40℃で測定したスペクトルより、3.7〜4ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)及び0.6〜1.8ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)を求める。一方、95℃で測定したスペクトルより、3.1〜3.7ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)、0.6〜1.8ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)及び1.9〜2.1ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)を求める。ここで、0.6〜1.8ppmのケミカルシフトのピークは、主にメチレン水素に由来するものであり、1.9〜2.1ppmのケミカルシフトのピークは、未ケン化の酢酸ビニル単位中のメチル水素に由来するものである。これらの積分値から下記の式によりケン化度を計算した。
Figure 0004593892
(9)固有粘度
試料とする乾燥EVOHペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85重量%)40mLに60℃にて4時間加熱溶解させ、温度30℃にて、オストワルド型粘度計にて測定し(t0=90秒)、下式により固有(極限)粘度[η]を求めた。
[η]=(2×(ηsp−lnηrel))1/2/C (L/g)
ηsp= t/ t0−1 (specific viscosity)
ηrel= t/ t0 (relative viscosity)
C :EVOH濃度(g/L)
・t0:ブランク(含水フェノール)が粘度計を通過する時間
・t:サンプルを溶解させた含水フェノール溶液が粘度計を通過する時間
(10)含水EVOHペレットの含水率の測定
METTLER社製HR73ハロゲン水分率分析装置を用いて、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件でEVOHペレットの含水率を測定した。
(11)炭酸ガス濃度の測定
東亜電波工業株式会社製、ポータブルイオン・pH計(IM−22P)に炭酸ガスセンサ(CE−2041)を接続し、溶液中の炭酸ガス濃度を測定した。
(12)単層製膜試験
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレットを(株)東洋精機製作所製20mm押出機D2020(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて単層製膜を以下の条件で行い、単層フィルムを得た。
押出温度:C1/C2/C3/Die=175/200/220/220℃
スクリュー回転数:40rpm
吐出量 :1.3kg/hr
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:3.1m/min.
フィルム厚み :20μm
(12−a)耐着色性
上記方法で作製された単層フィルムを紙管に巻き取り、フィルム端面の着色度を肉眼で以下のように判定した。
判定 : 基準
A:着色なし
B:やや黄変
C:黄変
(12−b)72hr−ロングラン性
単層製膜開始から72時間後のフィルムをサンプリングし、フィルム中のゲル状ブツ(肉眼で確認できる約100μm以上のもの)を数えた。
ブツの個数を、1.0mあたりの個数に換算し、以下のように判定した。
判定 : 基準
A:20個未満
B:20個以上40個未満
C:40個以上60個未満
D:60個以上
(12−c)120hr−ロングラン性
単層製膜開始から120時間後のフィルムをサンプリングし、フィルム中のゲル状ブツ(肉眼で確認できる約100μm以上のもの)を数えた。
ブツの個数を、1.0mあたりの個数に換算し、以下のように判定した。
判定 : 基準
A:20個未満
B:20個以上40個未満
C:40個以上60個未満
D:60個以上
(13)高温着色性評価
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレット5gを加熱圧縮プレス装置にて250℃で2分間加熱溶融させて厚み2mmの円盤状サンプルを作製し、目視にて色相を以下のように評価した。
判定: 基準
A:ほとんど着色がない。
B:わずかに黄変している。
C:黄変している。
(14)臭気試験
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレット10gとイオン交換水10mLを100mLガラス製スクリュー管に投入し、蓋をして密閉した。その後、90℃のセーフベントドライヤー(乾燥機)に入れて15時間加熱抽出した後、30分室温に放置して前記スクリュー管を冷却した。冷却後、スクリュー管の蓋を開け、得られた抽出液の臭気を5人のモニターにより、以下のように評価した。
判定 : 基準
A:臭気が感じられない。
B:僅かな臭気を感じる。
C:臭気が感じられる。
(15)接着強度試験
乾燥EVOH樹脂組成物(F)のペレット、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE;三井化学製、ウルトゼックス2022L)及び接着性樹脂(Tie;SUMIKA.ATOCHEM Co.Ltd製、BondineTX8030)を用い、以下の方法で3種5層の多層フィルム(LLDPE/Tie/EVOH/Tie/LLDPE=50μ/10μ/10μ/10μ/50μ)を得た。
本試験に用いた押出機及びTダイ仕様は以下の通りである。
押出機:
EVOH用 20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(東洋精機製)
Tie用 25φ押出機 P25−18AC(大阪精機製)
LLDPE用 32φ押出機 GF−32−A(プラスチック工学研究所製)
EVOH押出温度:
C1/C2/C3/ダイ=175/210/220/220℃
Tie押出温度:
C1/C2/C3/ダイ=100/160/220/220℃
LLDPE押出温度:
C1/C2/C3/ダイ=150/200/210/220℃
Tダイ:300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所製)
(15−a)製膜直後の接着強度
得られた多層フィルムを多層製膜直後に、MD方向に150mm、TD方向に10mmに切り出した後、直ちにオートグラフ(島津製作所製、DCS−50M)によりT型剥離強度測定を行った。測定に際しては、多層フィルムの冷却ロール側のTieとEVOHとの層間接着強度を測定した。
(15−b)製膜から一週間経過後の接着強度
上記作製した、縦150mm、横10mmの多層フィルムからなるサンプルを23℃−50%RHの恒温恒湿室で1週間放置した。前記のサンプルを用いて、オートグラフ(島津製作所製、DCS−50M)により23℃−50%RHの恒温恒湿室でT型剥離強度測定を行った。測定に際しては、多層フィルムの冷却ロール側のTieとEVOHとの層間接着強度を測定した。
実施例1
[EVOH樹脂組成物(F)の製造]
エチレン含有量27モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液50kgとメタノール129kgを、容量470Lケン化反応器に仕込み、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら、内温を60℃とした。そこへ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)を添加し、ケン化反応を開始する。ケン化反応中は、反応効率を上げるために、反応系内に副生成物として発生する酢酸メチルを、反応系内のメタノールと一緒に反応系外に追い出すために、連続的に反応器内に窒素ガスを吹き込み続けた。追い出す速度は、酢酸メチルとメタノールの合計で約20kg/hrの速度であり、これを冷却コンデンサを用いて凝縮させて回収した。反応開始から2時間後に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)をさらに添加し、ケン化反応の追い込みを行った。反応開始から6時間後、6.8kgの酢酸と56Lの水を添加して前記反応液を中和し、反応を停止させた。
中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器株式会社製、H−130、回転数1200rpm)を用いて、前記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら脱液し、前記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cmであった(東亜電波工業製CM−30ETで測定)。
このようにして得られた粒状のEVOHを、乾燥機を用いて60℃、48時間乾燥した。乾燥した粒状のEVOH20kgを、43Lの水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=5/5)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、前記のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmのペレットを得た。
このようにして得られた含水ペレット2.4kg及びイオン交換水24Lを、高さ400mm、開径370mmのプラスチック製容器に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。次に、2.4kgの含水ペレットに対して24Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水ペレット2.4kgに対して24Lのイオン交換水を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を6回繰り返した。6回目の洗浄を行った後の洗浄液の伝導度を東亜電波工業製CM−30ETで測定した結果、前記洗浄液の伝導度は3μS/cmであった。得られたEVOHペレットの含水率は50重量%であった。
こうして得られた、洗浄後のEVOH(エチレン含有量27モル%、ケン化度99.98モル%以上(NMR法より算出)、固有粘度0.094L/g)の含水ペレット2.4kg及び濃度0.30g/Lのホウ酸水溶液5Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れ、25℃で10時間浸漬し、浸漬後脱液した。
次に、イオン交換水5Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れた。前記の容器中のイオン交換水中にシリコンチューブ(内径7mm、外径10mm)を投入し、0.5時間、1L/min.の速度でバブリングして炭酸ガスを吹き込んだ。なお、炭酸ガスの供給は、炭酸ガスボンベ(日本炭酸株式会社製 液化炭酸ガス30kg)及び流量計(KOFLOC製 Model RK−1600R)を用いて行った。前記の炭酸ガスが吹き込まれた水に、ホウ酸0.35g、炭酸水素カリウム0.65g、及びリン酸二水素カリウム0.85gを溶解させ、さらに1時間、1L/min.の速度で炭酸ガスの吹込みを続けた。前記処理液のホウ酸含有量は0.07g/L、炭酸水素カリウム含有量は0.13g/L、リン酸二水素カリウムの含有量は0.17g/Lであった。また、炭酸ガスを1時間吹き込んだ後の前記処理液のpHを、pHメーター(METTLER社製 MA235)を用いて測定したところ、前記処理液のpHは5.0であった。
次に、吹き込み速度1L/min.で炭酸ガスの吹き込みを続けながら、前記処理液に上記含水ペレット2.4kgを投入し、25℃で6時間、浸漬及び撹拌を行った。また、処理開始から処理終了までの間、1時間ごとに前記処理液のpHを測定したところ、いずれの測定時においても前記処理液のpHは5のままであり、変動しなかった。処理液中の炭酸ガス濃度を分析したところ、20mmol/Lであった。前記処理液に6時間浸漬して撹拌を行った後、得られたペレットを直ちに脱液し、80℃にて3時間、引き続き107℃にて24時間熱風乾燥を行い、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット(含水率0.2重量%)を得た。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のアルカリ金属塩(A)はカリウムであり、アルカリ金属塩(A)の含有量は金属元素換算で2.6μmol/gであり、リン酸化合物(D)の含有量(d1)はリン酸根換算で0.4μmol/gであった。得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のホウ素化合物(B)の含有量はホウ素元素換算値で160ppm(15μmol/g)であった。また、前記乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを95℃の純水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)の量は0ppm(0μmol/g)であり、95℃の0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸(酢酸)根(C2)の量は35ppm(0.6μmol/g)であった。また、前記乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットのMFRは4.0g/10min.(210℃、2160g荷重下)であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って単層フィルムを作製し、耐着色性及びロングラン性の試験を実施した。本実施例のEVOH樹脂組成物(F)の耐着色性はB判定、72時間ロングラン性はA判定、120時間のロングラン性の評価結果はB判定であった。また、単層フィルムのリン酸化合物(D)の含有量(d2)は、リン酸根換算で0.02μmol/gであり、リン元素含有量(t)は0.4μmol/gであった。また、クロロホルムで抽出可能な有機リン化合物の含有量は0.01μmol/g未満であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って高温着色性評価試験を行ったところ、評価はB判定であった。また、得られた乾燥EVOHペレットを用いて、上述の方法に従って臭気試験を行ったところ、5人のモニター全員が臭いを感じず、評価はA判定であった。
また、得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って接着強度試験を行ったところ、製膜直後の接着強度は800g/15mmであり、製膜から一週間経過後の接着強度は950g/15mmであり、いずれも良好な接着強度が得られた。
[ポリアミド樹脂(G)の製造]
30リットル耐圧反応器に、モノマーとしてε−カプロラクタム10kg、分子量調節剤として1,6−ヘキサンジアミン82g、および水1.0kgを仕込み、撹拌しながら260℃に加熱し、0.5MPaに昇圧した。その後、常圧まで放圧し、260℃で3時間重合した。重合が終了した時点で反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で洗浄し、乾燥してポリアミドを得た。この樹脂の相対粘度は2.7であり、末端アミノ基量は81μeq/g、末端カルボン酸量は16μeq/gであり、末端アミノ基の割合は84%であった。
こうして得られたポリアミド5kgに、末端封鎖剤として無水フタル酸80gをドライブレンドし、2軸押出機を用いて260℃で混合し反応させ、ストランド状に払い出し、切断して、ペレット状のポリアミド樹脂(G)を得た。この樹脂の相対粘度は2.6であり、末端アミノ基量、末端カルボン酸量および末端フタルイミド構造量は、それぞれ4μeq/g、20μeq/gおよび77μeq/gであり、末端イミド構造の割合は76%であった。
[本発明の樹脂組成物からなるフィルムの製造]
上記EVOH樹脂組成物(F)70重量部、及び上記ポリアミド樹脂(G)30重量部を、予めドライブレンドした後、ホッパー部分を窒素パージしつつ、直径40mm、L/D=24、圧縮比3.8のフルフライト型スクリューを有する押出機に仕込み、巾550mmのフラットダイを使用して製膜を実施した。製膜温度は、押出機を190〜240℃、ダイを225℃とした。厚さが15μmのフィルムを引取り機にて巻き取り、24時間の連続製膜運転を実施した。24時間経過後に得られたフィルムの膜面判定、熱水処理後の外観判定(以下に判定方法を記載)、製膜後のダイ付着性判定を行った。
本発明により得られた樹脂組成物からなるフィルムは、膜面が均一かつ平坦であり、フィッシュアイなどの異物も実用的に問題の無い範囲であった。熱水処理後も中間層と内外層との間の剥離部分は確認されず、良好な接着性を示した。また、製膜後に押出し機内のダイ部分に付着したEVOH量は、実用上問題無い範囲であった。
熱水処理後の外観判定
得られたフィルムを中間層、2軸延伸ナイロン6フィルム(ユニチカ株式会社製「エンブレム」、厚み15μm)を外層、無延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロ株式会社製「RXC−7」、厚み60μm)を内層とし、これにドライラミネート用接着剤(2液型、ウレタン系)として武田薬品工業株式会社製「タケネートA−385/A−50」を固形分として4g/m塗布し、80℃で溶剤を蒸発させた後にフィルム同士を貼り合せ、40℃で5日エージングを行って多層フィルムを得た。このフィルムより3辺をヒートシールした袋を作成し、水と市販食用サラダ油の混合物(体積比90/10)を入れた後、残りの一辺をヒートシールし密封した。次いで、レトルト装置(株式会社日阪製作所高温高圧調理殺菌試験機「RCS−40RTGN」)を使用して、100℃/30分の熱水処理を実施した。熱水処理後、20℃、65%RHの室内で1日間保存し、外観を判定した。
参考例1
エチレン含有量32モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液50kgとメタノール129kgを、容量470Lケン化反応器に仕込み、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら、内温を60℃とした。そこへ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)を添加し、ケン化反応を開始する。ケン化反応中は、反応効率を上げるために、反応系内に副生成物として発生する酢酸メチルを、反応系内のメタノールと一緒に反応系外に追い出すために、連続的に反応器内に窒素ガスを吹き込み続けた。追い出す速度は、酢酸メチルとメタノールの合計で約20kg/hrの速度であり、これを冷却コンデンサを用いて凝縮させて回収した。反応開始から2時間後に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)をさらに添加し、ケン化反応の追い込みを行った。反応開始から6時間後、6.8kgの酢酸と56Lの水を添加して前記反応液を中和し、反応を停止させた。
中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器株式会社製、H−130、回転数1200rpm)を用いて、前記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら脱液し、前記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cmであった(東亜電波工業製CM−30ETで測定)。
このようにして得られた粒状のEVOHを、乾燥機を用いて60℃、48時間乾燥した。乾燥した粒状のEVOH20kgを、43Lの水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=4/6)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、前記のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmのペレットを得た。
このようにして得られた含水ペレット2.4kg及びイオン交換水24Lを、高さ400mm、開径370mmのプラスチック製容器に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。次に、2.4kgの含水ペレットに対して24Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水ペレット2.4kgに対して24Lのイオン交換水を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を6回繰り返した。6回目の洗浄を行った後の洗浄液の伝導度を東亜電波工業製CM−30ETで測定した結果、前記洗浄液の伝導度は3μS/cmであった。得られたEVOHペレットの含水率は50重量%であった。
こうして得られた、洗浄後のEVOH(エチレン含有量32モル%、ケン化度99.98モル%以上(NMR法より算出)、固有粘度0.085L/g)の含水ペレット2.4kg及び濃度0.36g/Lのホウ酸水溶液5.1Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れ、25℃で10時間浸漬し、浸漬後脱液した。
次に、イオン交換水5.1Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れた。前記の容器中のイオン交換水中にシリコンチューブ(内径7mm、外径10mm)を投入し、0.5時間、1L/min.の速度でバブリングして炭酸ガスを吹き込んだ。なお、炭酸ガスの供給は、炭酸ガスボンベ(日本炭酸株式会社製 液化炭酸ガス30kg)及び流量計(KOFLOC製 Model RK−1600R)を用いて行った。前記の炭酸ガスが吹き込まれた水に、ホウ酸0.51g及び炭酸ナトリウム0.56gを溶解させ、さらに1時間、1L/min.の速度で炭酸ガスの吹込みを続けた。前記処理液のホウ酸含有量は0.10g/Lであり、炭酸ナトリウム含有量0.11g/Lであった。また、炭酸ガスを1時間吹き込んだ後の前記処理液のpHを、pHメーター(METTLER社製 MA235)を用いて測定したところ、前記処理液のpHは5.1であった。
次に、吹き込み速度1L/min.で炭酸ガスの吹き込みを続けながら、前記処理液に上記含水ペレット2.4kgを投入し、25℃で6時間、浸漬及び撹拌を行った。また、処理開始から処理終了までの間、1時間ごとに前記処理液のpHを測定したところ、いずれの測定時においても前記処理液のpHは5.1のままであり、変動しなかった。処理液中の炭酸ガス濃度を分析したところ、20mmol/Lであった。前記処理液に6時間浸漬して撹拌を行った後、得られたペレットを直ちに脱液し、80℃にて3時間、引き続き107℃にて24時間熱風乾燥を行い、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット(含水率0.2重量%)を得た。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のアルカリ金属塩(A)はナトリウムであり、アルカリ金属塩(A)の含有量は金属元素換算で3.13μmol/gであった。得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のホウ素化合物(B)の含有量はホウ素元素換算値で160ppm(15μmol/g)であった。また、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを95℃の純水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)の量は0ppm(0μmol/g)であり、95℃の0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸(酢酸)根(C2)の量は35ppm(0.6μmol/g)であった。また、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットのMFRは1.6g/10min.(190℃、2160g荷重下)であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って単層フィルムを作製し、耐着色性及びロングラン性の試験を実施した。本参考例のEVOH樹脂組成物(F)の耐着色性、72時間ロングラン性及び120時間のロングラン性の評価結果はいずれもA判定であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って高温着色性評価試験を行ったところ、評価はB判定であった。また、得られた乾燥EVOHペレットを用いて、上述の方法に従って臭気試験を行ったところ、5人のモニター全員が臭いを感じず、評価はA判定であった。
また、得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って接着強度試験を行ったところ、製膜直後の接着強度は550g/15mmであり、製膜から一週間経過後の接着強度は800g/15mmであり、いずれも良好な接着強度が得られた。
参考例2〜6
ホウ酸水溶液に浸漬した後の、含水EVOHペレットを浸漬する炭酸ガス含有処理液の組成を、表1にまとめて示すように変更することを除いては、参考例1と同様にして乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを作製し、参考例1と同様にして評価を行った。乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットの組成を表2に、評価結果を表3にそれぞれ示す。
参考例7
エチレン含有量32モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液50kgとメタノール129kgを、容量470Lケン化反応器に仕込み、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら、内温を60℃とした。そこへ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)を添加し、ケン化反応を開始する。ケン化反応中は、反応効率を上げるために、反応系内に副生成物として発生する酢酸メチルを、反応系内のメタノールと一緒に反応系外に追い出すために、連続的に反応器内に窒素ガスを吹き込み続けた。追い出す速度は、酢酸メチルとメタノールの合計で約20kg/hrの速度であり、これを冷却コンデンサを用いて凝縮させて回収した。反応開始から2時間後に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)をさらに添加し、ケン化反応の追い込みを行った。反応開始から6時間後、6.8kgの酢酸と56Lの水を添加して前記反応液を中和し、反応を停止させた。
中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器株式会社製、H−130、回転数1200rpm)を用いて、前記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら脱液し、前記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cmであった(東亜電波工業製CM−30ETで測定)。
このようにして得られた粒状のEVOHを、乾燥機を用いて60℃、48時間乾燥した。乾燥した粒状のEVOH20kgを、43Lの水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=4/6)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、前記のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmのペレットを得た。
このようにして得られた含水ペレット2.4kg及びイオン交換水24Lを、高さ400mm、開径370mmのプラスチック製容器に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。次に、2.4kgの含水ペレットに対して24Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水ペレット2.4kgに対して24Lのイオン交換水を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を6回繰り返した。6回目の洗浄を行った後の洗浄液の伝導度を東亜電波工業製CM−30ETで測定した結果、前記洗浄液の伝導度は3μS/cmであった。得られたEVOHペレットの含水率は50重量%であった。
こうして得られた、洗浄後のEVOH(エチレン含有量32モル%、ケン化度99.98モル%以上(NMR法より算出)、固有粘度0.085L/g)の含水ペレット2.4kg及び濃度0.36g/Lのホウ酸水溶液5.1Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れ、25℃で10時間浸漬し、浸漬後脱液した。
次に、イオン交換水24Lを高さ400mm開径370mmのプラスチック製の容器に入れた。前記の容器中のイオン交換水中にシリコンチューブ(内径7mm、外径10mm)を投入(前記シリコンチューブを5本使用)し、2時間、5L/min.の速度でバブリングして炭酸ガスを吹き込んだ。なお、炭酸ガスの供給は、炭酸ガスボンベ(日本炭酸株式会社製 液化炭酸ガス30kg)及び流量計(KOFLOC製 Model RK−1600R)を用いて行った。前記の炭酸ガスが吹き込まれた水に、ホウ酸1.68g及びリン酸1水素2カリウム6.48g、リン酸1.20gを溶解させ、さらに1時間、5L/min.の速度で炭酸ガスの吹込みを続けた。前記処理液のホウ酸含有量は0.07g/Lであり、リン酸1水素2カリウム含有量は0.27g/L、リン酸は0.05g/Lであった。また、炭酸ガスを1時間吹き込んだ後の前記処理液のpHを、pHメーター(METTLER社製 MA235)を用いて測定したところ、前記処理液のpHは4.9であった。
次に、吹き込み速度5L/min.で炭酸ガスの吹き込みを続けながら、前記処理液に上記含水ペレット2.4kgを投入し、25℃で6時間、浸漬及び撹拌を行った。また、処理開始から処理終了までの間、1時間ごとに前記処理液のpHを測定したところ、いずれの測定時においても前記処理液のpHは4.9のままであり、変動しなかった。前記処理液中の炭酸ガス濃度を分析した結果、20mmol/Lであった。前記処理液に6時間浸漬して撹拌を行った後、得られたペレットを直ちに脱液し、80℃にて3時間、引き続き107℃にて24時間熱風乾燥を行い、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット(含水率0.2重量%)を得た。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のアルカリ金属塩(A)はカリウムであり、アルカリ金属塩(A)の含有量は金属元素換算で3.40μmol/gであった。リン酸化合物(D)の含有量(d1)はリン酸根換算で、1.2μmol/gであった。得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のホウ素化合物(B)の含有量はホウ素元素換算値で143ppm(13μmol/g)であった。また、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを95℃の純水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)の量は0ppm(0μmol/g)であり、95℃の0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸(酢酸)根(C2)の量は36ppm(0.6μmol/g)であった。また、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットのMFRは1.6g/10min.(190℃、2160g荷重下)であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って単層フィルムを作製し、耐着色性及びロングラン性の試験を実施した。本参考例のEVOH樹脂組成物(F)の耐着色性、72時間ロングラン性及び120時間のロングラン性の評価結果はいずれもA判定であった。また、単層フィルムのリン酸化合物(D)の含有量(d2)は、リン酸根換算で0.10μmol/gであり、リン元素含有量(t)は1.2μmol/gであった。また、クロロホルムで抽出可能な有機リン化合物の含有量は0.01μmol/g未満であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って高温着色性評価試験を行ったところ、評価はA判定であった。また、得られた乾燥EVOHペレットを用いて、上述の方法に従って臭気試験を行ったところ、5人のモニター全員が臭いを感じず、評価はA判定であった。
また、得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って接着強度試験を行ったところ、製膜直後の接着強度は760g/15mmであり、製膜から一週間経過後の接着強度は900g/15mmであり、いずれも良好な接着強度が得られた。
参考例8
エチレン含有量44モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液50kgとメタノール129kgを、容量470Lケン化反応器に仕込み、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら、内温を60℃とした。そこへ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)を添加し、ケン化反応を開始する。ケン化反応中は、反応効率を上げるために、反応系内に副生成物として発生する酢酸メチルを、反応系内のメタノールと一緒に反応系外に追い出すために、連続的に反応器内に窒素ガスを吹き込み続けた。追い出す速度は、酢酸メチルとメタノールの合計で約20kg/hrの速度であり、これを冷却コンデンサを用いて凝縮させて回収した。反応開始から2時間後に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)をさらに添加し、ケン化反応の追い込みを行った。反応開始から6時間後、6.8kgの酢酸と45Lの水を添加して前記反応液を中和し、反応を停止させた。
中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器株式会社製、H−130、回転数1200rpm)を用いて、前記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら脱液し、前記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cmであった(東亜電波工業製CM−30ETで測定)。
このようにして得られた粒状のEVOHを、乾燥機を用いて60℃、48時間乾燥した。乾燥した粒状のEVOH20kgを、48Lの水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=2/8)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、前記のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmのペレットを得た。
このようにして得られた含水ペレット2.4kg及びイオン交換水24Lを、高さ400mm、開径370mmのプラスチック製容器に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。次に、2.4kgの含水ペレットに対して24Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水ペレット2.4kgに対して24Lのイオン交換水を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を6回繰り返した。6回目の洗浄を行った後の洗浄液の伝導度を東亜電波工業製CM−30ETで測定した結果、前記洗浄液の伝導度は3μS/cmであった。得られたEVOHペレットの含水率は50重量%であった。
こうして得られた、洗浄後のEVOH(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.98モル%以上(NMR法より算出)、固有粘度0.088L/g)の含水ペレット2.4kg及び濃度0.51g/Lのホウ酸水溶液5.1Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れ、25℃で10時間浸漬し、浸漬後脱液した。
次に、イオン交換水24Lを高さ400mm開径370mmのプラスチック製の容器に入れた。前記の容器中のイオン交換水中にシリコンチューブ(内径7mm、外径10mm)を投入(前記シリコンチューブを5本使用)し、2時間、5L/min.の速度でバブリングして炭酸ガスを吹き込んだ。なお、炭酸ガスの供給は、炭酸ガスボンベ(日本炭酸株式会社製 液化炭酸ガス30kg)及び流量計(KOFLOC製 Model RK−1600R)を用いて行った。前記の炭酸ガスが吹き込まれた水に、ホウ酸2.88g及び炭酸水素カリウム4.08g、リン酸二水素カリウム6.17gを溶解させ、さらに1時間、5L/min.の速度で炭酸ガスの吹込みを続けた。前記処理液のホウ酸含有量は0.12g/Lであり、炭酸水素カリウム含有量は0.17g/L、リン酸二水素カリウムは0.257g/Lであった。また、炭酸ガスを1時間吹き込んだ後の前記処理液のpHを、pHメーター(METTLER社製 MA235)を用いて測定したところ、前記処理液のpHは5.1であった。
次に、吹き込み速度5L/min.で炭酸ガスの吹き込みを続けながら、前記処理液に上記含水ペレット2.4kgを投入し、25℃で6時間、浸漬及び撹拌を行った。また、処理開始から処理終了までの間、1時間ごとに前記処理液のpHを測定したところ、いずれの測定時においても前記処理液のpHは5.1のままであり、変動しなかった。前記処理液中の炭酸ガス濃度を分析した結果、20mmol/Lであった。前記処理液に6時間浸漬して撹拌を行った後、得られたペレットを直ちに脱液し、80℃にて3時間、引き続き107℃にて24時間熱風乾燥を行い、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット(含水率0.2重量%)を得た。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のアルカリ金属塩(A)はカリウムであり、アルカリ金属塩(A)の含有量は金属元素換算で5.4μmol/gであった。リン酸化合物(D)の含有量(d1)はリン酸根換算で、0.5μmol/gであった。得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のホウ素化合物(B)の含有量はホウ素元素換算値で242ppm(22μmol/g)であった。また、前記乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを95℃の純水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)の量は0ppm(0μmol/g)であり、95℃の0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸(酢酸)根(C2)の量は36ppm(0.6μmol/g)であった。また、乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットのMFRは1.6g/10min.(190℃、2160g荷重下)であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って単層フィルムを作製し、耐着色性及びロングラン性の試験を実施した。本参考例のEVOH樹脂組成物(F)の耐着色性、72時間ロングラン性及び120時間のロングラン性の評価結果はいずれもA判定であった。また、単層フィルムのリン酸化合物(D)の含有量(d2)は、リン酸根換算で0.03μmol/gであり、リン元素含有量(t)は0.5μmol/gであった。また、クロロホルムで抽出可能な有機リン化合物の含有量は0.01μmol/g未満であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って高温着色性評価試験を行ったところ、評価はA判定であった。また、得られた乾燥EVOHペレットを用いて、上述の方法に従って臭気試験を行ったところ、5人のモニター全員が臭いを感じず、評価はA判定であった。
また、得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って接着強度試験を行ったところ、製膜直後の接着強度は760g/15mmであり、製膜から一週間経過後の接着強度は880g/15mmであり、いずれも良好な接着強度が得られた。
参考例9
エチレン含有量47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液50kgとメタノール129kgを、容量470Lケン化反応器に仕込み、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら、内温を60℃とした。そこへ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)を添加し、ケン化反応を開始する。ケン化反応中は、反応効率を上げるために、反応系内に副生成物として発生する酢酸メチルを、反応系内のメタノールと一緒に反応系外に追い出すために、連続的に反応器内に窒素ガスを吹き込み続けた。追い出す速度は、酢酸メチルとメタノールの合計で約20kg/hrの速度であり、これを冷却コンデンサを用いて凝縮させて回収した。反応開始から2時間後に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液29L(濃度:80g/L)をさらに添加し、ケン化反応の追い込みを行った。反応開始から6時間後、6.8kgの酢酸と45Lの水を添加して前記反応液を中和し、反応を停止させた。
中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器株式会社製、H−130、回転数1200rpm)を用いて、前記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら脱液し、前記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cmであった(東亜電波工業製CM−30ETで測定)。
このようにして得られた粒状のEVOHを、乾燥機を用いて60℃、48時間乾燥した。乾燥した粒状のEVOH20kgを、43Lの水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=2/8)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、前記のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(重量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmのペレットを得た。
このようにして得られた含水ペレット2.4kg及びイオン交換水24Lを、高さ400mm、開径370mmのプラスチック製容器に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。次に、2.4kgの含水ペレットに対して24Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水ペレット2.4kgに対して24Lのイオン交換水を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄しては脱液する操作を6回繰り返した。6回目の洗浄を行った後の洗浄液の伝導度を東亜電波工業製CM−30ETで測定した結果、前記洗浄液の伝導度は3μS/cmであった。得られたEVOHペレットの含水率は50重量%であった。
こうして得られた、洗浄後のEVOH(エチレン含有量47モル%、ケン化度99.98モル%以上(NMR法より算出)、固有粘度0.082L/g)の含水ペレット2.4kg及び濃度0.21g/Lのホウ酸水溶液5Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れ、25℃で10時間浸漬し、浸漬後脱液した。
次に、イオン交換水5Lを高さ300mm開径280mmのプラスチック製の容器に入れた。前記の容器中のイオン交換水中にシリコンチューブ(内径7mm、外径10mm)を投入し、0.5時間、1L/min.の速度でバブリングして炭酸ガスを吹き込んだ。なお、炭酸ガスの供給は、炭酸ガスボンベ(日本炭酸株式会社製 液化炭酸ガス30kg)及び流量計(KOFLOC製 Model RK−1600R)を用いて行った。前記の炭酸ガスが吹き込まれた水に、ホウ酸0.20g、炭酸水素カリウム1.15g、及びリン酸二水素カリウム0.55gを溶解させ、さらに1時間、1L/min.の速度で炭酸ガスの吹込みを続けた。前記処理液のホウ酸含有量は0.04g/L、炭酸水素カリウム含有量は0.23g/L、リン酸二水素カリウムの含有量は0.11g/Lであった。また、炭酸ガスを1時間吹き込んだ後の前記処理液のpHを、pHメーター(METTLER社製 MA235)を用いて測定したところ、前記処理液のpHは5.2であった。
次に、吹き込み速度1L/min.で炭酸ガスの吹き込みを続けながら、前記処理液に上記含水ペレット2.4kgを投入し、25℃で6時間、浸漬及び撹拌を行った。また、処理開始から処理終了までの間、1時間ごとに前記処理液のpHを測定したところ、いずれの測定時においても前記処理液のpHは5.2のままであり、変動しなかった。処理液中の炭酸ガス濃度を分析したところ、20mmol/Lであった。前記処理液に6時間浸漬して撹拌を行った後、得られたペレットを直ちに脱液し、80℃にて3時間、引き続き107℃にて24時間熱風乾燥を行って乾燥して、EVOH樹脂組成物(F)ペレット(含水率0.2重量%)を得た。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のアルカリ金属塩(A)はカリウムであり、アルカリ金属塩(A)の含有量は金属元素換算で5.6μmol/gであり、リン酸化合物(D)の含有量(d1)はリン酸根換算で0.5μmol/gであった。得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレット中のホウ素化合物(B)の含有量はホウ素元素換算値で110ppm(10μmol/g)であった。また、前記乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを95℃の純水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)の量は0ppm(0μmol/g)であり、95℃の0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸(酢酸)根(C2)の量は35ppm(0.6μmol/g)であった。また、前記乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットのMFRは6.2g/10min.(190℃、2160g荷重下)であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って単層フィルムを作製し、耐着色性及びロングラン性の試験を実施した。本参考例のEVOH樹脂組成物(F)の耐着色性、72時間ロングラン性及び120時間のロングラン性の評価結果はいずれもA判定であった。また、単層フィルムのリン酸化合物(D)の含有量(d2)は、リン酸根換算で0.03μmol/gであり、リン元素含有量(t)は0.5μmol/gであった。また、クロロホルムで抽出可能な有機リン化合物の含有量は0.01μmol/g未満であった。
得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って高温着色性評価試験を行ったところ、評価はA判定であった。また、得られた乾燥EVOHペレットを用いて、上述の方法に従って臭気試験を行ったところ、5人のモニター全員が臭いを感じず、評価はA判定であった。
また、得られた乾燥EVOH樹脂組成物(F)ペレットを用いて、上述の方法に従って接着強度試験を行ったところ、製膜直後の接着強度は700g/15mmであり、製膜から一週間経過後の接着強度は880g/15mmであり、いずれも良好な接着強度が得られた。
参考例10
参考例1と同様にして得られた洗浄後の含水ペレット2.4kg及び濃度0.36g/Lのホウ酸水溶液5.1Lを高さ300mm、開径280mmのプラスチック製の容器に入れ、25℃で10時間浸漬し、浸漬後脱液した。
続いて、脱液後の含水ペレットを、酢酸を0.56g/L及び酢酸ナトリウム0.025g/Lを含有する水溶液5.1Lに、25℃で6時間浸漬して撹拌した。その後脱液し、80℃にて3時間、引き続き107℃にて24時間熱風乾燥を行い、乾燥EVOH樹脂組成物ペレット(含水率0.2重量%)を得た。得られた乾燥ペレットを用いて、参考例1と同様に各種の評価を行った。乾燥EVOH樹脂組成物の組成を表2に、評価結果を表3にそれぞれ示す。
参考例11
洗浄後の含水ペレットを浸漬する処理液の組成を、表1に示すように変更することを除いては参考例10と同様にして乾燥EVOH樹脂組成物ペレットを作製した。得られた乾燥ペレットを用いて、参考例1と同様に各種の評価を行った。乾燥EVOH樹脂組成物の組成を表2に、評価結果を表3にそれぞれ示す。
参考例12
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6モル%(NMR法より算出)、固有粘度0.085L/gの、ケン化触媒残渣を含む含水EVOHペレット(含水率50重量%)を参考例10と同様にして洗浄した。
含水ペレットとして上記作製した含水ペレットを用い、得られた含水ペレットを浸漬する液の組成を表1に示すように変更することを除いては参考例10と同様にして乾燥EVOH樹脂組成物ペレットを作製した。得られた乾燥ペレットを用いて、参考例1と同様に各種の評価を行った。乾燥EVOH樹脂組成物の組成を表2に、評価結果を表3にそれぞれ示す。
参考例13
洗浄後の含水ペレットを浸漬する処理液の組成を、表1に示すように変更することを除いては参考例10と同様にして乾燥EVOH樹脂組成物ペレットを作製した。得られた乾燥ペレットを用いて、参考例1と同様に各種の評価を行った。乾燥EVOH樹脂組成物の組成を表2に、評価結果を表3にそれぞれ示す。
Figure 0004593892
Figure 0004593892
Figure 0004593892
また、実施例1及び参考例7〜9で、エチレン含有量を27モル%から47モル%まで変化させたEVOHを使用したが、これまでの経験から、エチレン含有量が大きくなるほどアルカリ金属塩(A)の含有量が大きくなることが好ましいことがわかっている。今回の実施例1及び参考例7〜9でのアルカリ金属(A)の含有量は、そのような知見に基づいて、それぞれのエチレン含有量で最適と思われる量のアルカリ金属塩(A)を配合したものである。
図1は、実施例1及び参考例7〜9におけるエチレン含有量(ET)とアルカリ金属塩(A)含有量(a)の関係を示したグラフである。プロットされた4点のデータから指数近似法によって近似曲線を得たところ、「a=0.95×exp(0.039×ET)」との近似式が得られた。これの上下2μmol/gの幅の範囲のアルカリ金属塩(A)とすることが好適である。
実施例1及び参考例7〜9におけるエチレン含有量(ET)とアルカリ金属塩(A)含有量(a)の関係を示したグラフである。

Claims (8)

  1. アルカリ金属塩(A)をアルカリ金属換算で0.1〜20μmol/g含有し、95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)を0〜2μmol/g含有し、かつ95℃の0.05規定水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C2)を0〜40μmol/g含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)1〜99重量%と、ポリアミド樹脂(G)1〜99重量%とからなる樹脂組成物。
  2. アルカリ金属塩(A)をアルカリ金属換算で0.1〜20μmol/g含有し、95℃の水に10時間浸漬処理して抽出されるカルボン酸根(C1)を0〜2μmol/g含有し、かつケン化度が99.7〜100モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)1〜99重量%と、ポリアミド樹脂(G)1〜99重量%とからなる樹脂組成物。
  3. アルカリ金属塩(A)がカリウム塩である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)がホウ素化合物(B)をホウ素元素換算で1〜200μmol/g含有する請求項1〜3のいずれか記載の樹脂組成物。
  5. エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(F)のリン元素含有量(t)がリン元素換算で0.05〜5μmol/gである請求項1〜4のいずれか記載の樹脂組成物。
  6. ポリアミド樹脂(G)の末端アミノ基量が15μeq/g以下である請求項1〜5のいずれか記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
  8. アルカリ金属塩(A)0.05〜40mmol/L、又はホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩及び水素化ホウ素類からなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物(B)0.1〜50mmol/Lを含有し、かつ0.5mmol/L以上の炭酸ガスを含有する水溶液にエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を接触させた後、ポリアミド樹脂(G)と溶融混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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