JP4588846B2 - 金属リングと摩擦材の接着構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属リング、その内周面に接着する摩擦材の接着構造に係り、特に、金属リングと、その金属リングと線膨脹係数又は表面粗度が異なる摩擦材の接着構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
使用環境が厳しく、高強度・高耐久性を要求される自動車用の駆動系部品(例えば、トランスミッション部品等)においては、主として金属、特に鋳鉄材料が多用されているが、各部品毎に、要求される摺動性、摩擦性等の各種特性が異なるため、材料改質又は特性の異なる数種の材料を接合することによって、要求される各種特性を確保している。
【0003】
トランスミッション部品の一つであるシンクロナイザ・リングは、図3に示すように、金属製(鋳鉄製)のリング部31とコーン部32とを備えており、このコーン部32の内周面33が、トランスミッションのメインギヤ(図示せず)のコーン部外周面と摩擦係合することによって、回転速度の異なる二つのギヤ(図示せず)が同期する。
【0004】
ここで、シンクロナイザ・リング30のコーン部32の摩擦係合面(内周面33)は、トランスミッションのメインギヤの摩擦係合面(コーン部外周面)と摩擦係合されるため、十分な摩擦係数と耐摩耗性を有している必要がある。このため、通常、コーン部32の摩擦係合面に摩擦材(図示せず)を設けている。従来の摩擦材としては、コーン部の摩擦係合面に設けられるCu−Zn製ライナやMoの溶射被膜等が挙げられる。
【0005】
近年、コーン部32の摩擦係合面に金属製摩擦材を接合させたシンクロナイザ・リングの他に、金属では出せない特性を付与すべく、コーン部32の摩擦係合面に樹脂製(フェノール樹脂製)摩擦材を接合(接着)し、より高強度接着性、熱膨張吸収性、耐高温性、耐油性などの高性能な表面特性を確保したシンクロナイザ・リングが提案されている。しかし、シンクロナイザ・リングを含むトランスミッション部品は、トランスミッションオイル中に浸漬されていると共に、このトランスミッションオイルは、車両の走行中、最高約140℃にも達する。また、エンジン始動直後や、潤滑油が十分に回らないような時には、摩擦材が破損する等の問題が発生する。そこで、樹脂製摩擦材の代わりに、耐熱・耐摩耗性に優れた炭素繊維強化炭素複合材料(以下、C−Cコンポジットと示す)からなる摩擦材をコーン部32の摩擦係合面に接合(接着)することが検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の金属製摩擦材を接合したシンクロナイザ・リングにおいては、金属リングと金属製摩擦材(例えば、Cu−Zn材又はMo材等)の金属同士(同種材料間)の接合であるため、両材料の熱的特性差および表面粗度差が問題になることは殆どなかった。
【0007】
これに対して、C−Cコンポジット製の摩擦材を用いたシンクロナイザ・リングにおいては、金属リングと摩擦材の接着が異種材料間であるため、両材料の熱的特性差および表面粗度差に起因する不具合が生じることが有る。
【0008】
すなわち、金属リングとC−Cコンポジット製の摩擦材とでは、線膨張係数が大きく異なることから、両材料の接着部が高温に晒されると、接着界面に剪断応力が働く。その結果、接着部が剪断破壊され、両材料が剥離してしまうという現象を引き起こす。
【0009】
また、金属リングとC−Cコンポジット製摩擦材とでは、表面処理加工の加工精度が異なることから、両材料の表面粗度が異なっている。このため、ミクロ的には接着面間のクリアランスが不均一となることから、両材料の接着面において接着不良などの問題が生じるおそれがあり、両材料を強固に接着することは非常に困難である。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、金属リングと、その金属リングと線膨脹係数又は表面粗度が異なる摩擦材とを、剥離のおそれなく強固に接着することができる接着構造及びその接着方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る金属リングと摩擦材の接着構造は、金属リングの内周面と、その金属リングと線膨脹係数が異なる摩擦材との接着構造において、炭素短繊維等からなる不織布に熱硬化性の接着剤を含浸させた接着クッション層を加熱して予備硬化させて形成し、その予備硬化させた接着クッション層を上記金属リングの内周面と摩擦材の接着面間に介在させ上記金属リングと各摩擦材を押圧することで上記接着クッション層を圧着させて加熱硬化させると共に、上記接着クッション層は、その圧着されて加熱硬化された状態において、上記金属リングの内周面と摩擦材の接着面間のクリアランスを充填し、且つ、伸縮可能な層厚を有するものである。
【0012】
また、接着剤がフェノール樹脂系接着剤であってもよい。
【0013】
さらに、金属リングが鋳鉄、上記摩擦材が炭素繊維強化炭素複合材で構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る金属リングと摩擦材の接着構造は、金属リングの内周面と、その金属リングと線膨脹係数が異なる摩擦材との接着構造において、炭素短繊維等からなる不織布に熱硬化性の接着剤を含浸させた接着クッション層を加熱して予備硬化させて形成し、上記金属リングの内周面及び上記摩擦材の接着面に、フェノール樹脂系接着剤からなる接着層を形成し、その接着層を形成した上記金属リング及び上記摩擦材間に、上記予備硬化させた接着クッション層を介在させ、上記金属リングと各摩擦材を押圧すると共に接着クッション層を圧着させて加熱硬化させたものである
【0015】
さらに、上記金属リングが変速装置のシンクロナイザ・リングであってもよい。
【0016】
また、上記摩擦材が、上記金属リングの内周面の周方向に亘って設けられた多数の炭素繊維強化炭素複合シート片で構成されていてもよい。
【0017】
以上の接着構造によれば、金属リング内周面と摩擦材の接着面間に設けた接着クッション層が、両材料の線膨脹係数の違いに起因する伸び率の相違を緩衝、又は両材料の表面粗度の違いに起因する接着面間の不均一なクリアランスを吸収するため、両材料の線膨脹係数又は表面粗度が異なっていても、両材料を剥離のおそれなく強固に接着することができる。
【0018】
また、シンクロナイザ・リングの摩擦材を、耐熱性及び耐摩耗性に優れたC−Cコンポジットで形成することで、シンクロナイザ・リングの耐久性・信頼性がより向上する。また、金属リングと摩擦材(C−Cコンポジット)とは、線膨脹係数及び表面粗度が異なっているものの、金属リングと摩擦材との間に介在させた接着クッション層が、両材料の線膨脹係数の違いに起因する伸び率の相違を緩衝し、両材料の表面粗度の違いに起因する接着面間の不均一なクリアランスを吸収する。このため、金属リングから摩擦材が剥離するおそれがないと共に、金属リングと摩擦材とを強固に接着することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0020】
一般に、異種材料間の接着(即ち、金属リングと、その金属リング材と線膨脹係数又は表面粗度が大きく異なる摩擦材との接着)を行う場合、ゴム状弾性を有する接着剤を用いたり、接着層の層厚を厚くすることにより、前述した接着界面における剪断応力を緩和し、線膨張係数の違いに起因する材料の剥離を防ぐことができる。
【0021】
しかしながら、例えば、シンクロナイザ・リングの摩擦係合面等のように、大きな応力が負荷される部位においては、接着部が十分な接着強度を有していることも重要となってくる。このため、ゴム状弾性を有する接着剤による接着では十分な接着強度を得ることができず(一般的に、ゴム状弾性を有する接着剤の接着強度は低い)、接着部が剪断破壊される又は接着層自体が壊れるおそれがある。また、低ゴム状弾性タイプの硬い接着剤を用いて接着層を厚く形成した場合においても、接着剤自体が脆いことから、結果として両材料の剥離を招くおそれがある。
【0022】
このため、異種材料間の接着部を有するシンクロナイザ・リングの摩擦係合面において、十分な接着強度を確保するには、低ゴム状弾性タイプの硬い接着剤を用いると共に接着層を薄く形成する必要があるが、前述した異種材料間の接着条件と矛盾してしまう。
【0023】
また、シンクロナイザ・リングの摩擦係合面に、金属リングと線膨脹係数又は表面粗度が大きく異なる摩擦材(例えば、C−Cコンポジット製摩擦材)を接着するための接着剤には、高強度接着性、熱膨張吸収性、クリアランス吸収性、耐高温性、耐油性等の特性が要求される。現在、高強度接着性及び耐高温性が要求される条件下で使用されている接着剤として、耐熱性、耐油性に優れるフェノール樹脂系接着剤があり、このフェノール樹脂系接着剤を、シンクロナイザ・リングの摩擦係合面における金属材とC−Cコンポジット製摩擦材との接着に適用することが検討されている。フェノール樹脂系接着剤は加熱硬化時にガス(気泡)が発生するが、このガスを接着層から放出させないと、ガスによる接着層の破壊が生じ、接着強度の低下を招く。このため、通常、加熱硬化の際に5〜15kgf/cm2程度で加圧し、ガス抜きが行われる。
【0024】
ここで、両材料の接着面間には、前述したように、表面粗度の違いに起因する不均一なクリアランスが存在していることから、両材料の接着に用いる接着剤には、この不均一なクリアランスを充填(吸収)する役割も期待される。しかし、フェノール樹脂系接着剤において、クリアランス吸収のために加熱硬化の際の圧力を減じると、接着強度が十分に発現しなくなることから、クリアランス吸収と高接着強度の両方の達成は困難である。よって、シンクロナイザ・リングの摩擦係合面に、フェノール樹脂系接着剤をそのまま適用することは困難であった。
【0025】
本発明者らは、金属リングと摩擦材の接着のための接着剤として耐熱性及び耐油性に優れるフェノール樹脂系接着剤を用いると共に、接着層の層厚はできるだけ薄くし、また、その接着層に、金属リングと摩擦材の線膨脹係数の違いに起因する伸び率の相違を緩衝、又は両材料の表面粗度の違いに起因する接着面間の不均一なクリアランスを吸収する緩衝・吸収機能を持たせるべく、鋭意研究を行った。
【0026】
本発明に係る金属リングと摩擦材の接着構造の断面模式図を図1に示す。ここで、図1(b)は、図1(a)の要部Aの拡大図である
本発明に係る金属リング内周面と摩擦材の接着構造は、図1に示すように、炭素短繊維(又はガラス短繊維)3からなる不織布4にフェノール樹脂系接着剤(又はアクリル樹脂系接着剤)5を含浸させた接着クッション層6を、金属リング1と摩擦材2との接着面1a,2a間に介在させると共に圧着させて加熱硬化(又は硬化)させたものである。
【0027】
また、金属リング1及び摩擦材2の各接着面1a,2aに、フェノール樹脂系接着剤(又はアクリル樹脂系接着剤)からなる接着層(図示せず)を予め形成して接着クッション層6を介在させてもよい。
【0028】
ここで、金属リング1としては特に限定するものではなく、例えば、Fe合金、Al又はAl合金、Ti又はTi合金などが挙げられるが、特に鋳鉄が好ましい。
【0029】
摩擦材2としては、金属リング1と線膨脹係数が異なる材料であれば、金属材又は非金属材のどちらであってもよいが、耐熱性及び耐摩耗性に優れたC−Cコンポジットが特に好ましい。
【0030】
摩擦材2としてC−Cコンポジットを用いる場合、C−Cコンポジットを構成する炭素繊維(炭素長繊維)としては、繊維長は特に指定しないが、繊維径Dが0.002〜0.010mm、好ましくは0.005〜0.007mmのものが挙げられる。また、C−Cコンポジットにおける炭素繊維の配向性は、所望の摩擦係数に応じて適宜設定されるものであって、特に限定するものではなく、この配向性を調節することによってC−Cコンポジットの摩擦係数を任意に調節することが可能となる。
【0031】
炭素短繊維(又はガラス短繊維)3としては、不織布を形成可能な繊維であれば特に限定するものではないが、クリアランス吸収性を考慮すると、繊維長Lが10〜20mm、好ましくは14〜16mm、繊維径Dが0.5〜1.0μm、好ましくは0.6〜0.8μmのものが挙げられる。
【0032】
不織布4の布厚は、あまり薄いとフェノール樹脂系接着剤(又はアクリル樹脂系接着剤)5の含浸が不可能であり、逆に、あまり厚いと接着クッション層6の層厚が厚くなるため、1.5〜2.5mmが好ましく、2mm前後が特に好ましい。また、不織布4の密度は、あまり低いとフェノール樹脂系接着剤5の含浸が不可能であり、逆に、あまり高いとフェノール樹脂系接着剤5が含浸しにくくなるため、目付量2.5〜3.5mg/cm2が好ましい。
【0033】
不織布4に含浸させる接着剤5としてはフェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリエステル樹脂系、又はアクリル樹脂系などの接着剤であっても良いが、高温での接着強度が要求される場合はフェノール樹脂系接着剤の方が好ましい。
【0034】
次に、本発明に係る金属リングと摩擦材の接着方法を図1を用いて説明する。
【0035】
図1(b)に示す炭素短繊維3の不織布4にフェノール樹脂系接着剤5を含浸させ、予め接着クッション材(図示せず)を形成しておく。この接着クッション材を、60〜100℃×10〜60min、好ましくは70〜90℃×20〜40minの温度条件で加熱して予備硬化を行い、フェノール樹脂系接着剤5中の溶剤を揮発させる。
【0036】
この予備硬化後の接着クッション材を、金属リング1と、その金属リング1と線膨脹係数又は表面粗度が大きく異なる摩擦材2の接着面1a,2a間に介在させる。この介在に先立って、金属リング1及び摩擦材2の各接着面1a,2aにもフェノール樹脂系接着剤を予め塗布しておくと共に、予備硬化を行っておくとよい。両材料1,2の各接着面1a,2aに塗布するフェノール樹脂系接着剤としては、接着クッション材に含浸させるフェノール樹脂系接着剤5よりも粘度の高いものが好ましい。
【0037】
その後、金属リング1と摩擦材2を、約0.5〜1.5MPa(5〜15kgf/cm2)の圧力で押圧し、接着クッション材を圧縮しながらフェノール樹脂系接着剤5を130〜230℃×30〜90min、好ましくは160〜200℃×40〜80minの温度条件で加熱硬化させる。これによって、図1(a)に示すように、金属リング1と摩擦材2とが、接着クッション層6を介して接着される。
【0038】
ここで、接着クッション層6をミクロ的に見ると、図1(b)に示す炭素短繊維3a,3b,3cで囲まれた領域Bは非常に微小であり、この微小領域Bが、硬い接着剤であるフェノール樹脂系接着剤5で充填されていると共に、接着クッション層6の水平方向及び層厚方向にランダムに配置されている。別の見方をすれば、微小領域Bは、硬い接着剤による微小な接着領域と見なすことができることから、接着クッション層6における炭素短繊維3群はフェノール樹脂系接着剤5で互いに強固に接着(固着)され、結果的に、両材料1,2が強固に接着される。一方、接着クッション層6をマクロ的に見ると、フェノール樹脂系接着剤5の接着層が炭素短繊維3群で繊維補強されていることから、接着クッション層6は、全方向に対して僅かながら動き(伸縮)に余裕があり、硬く、かつ、“しなやか”な(靱性の高い)層となる。
【0039】
通常、フェノール樹脂系接着剤5の接着層は硬く、非常に脆いことから、フェノール樹脂系接着剤5のみで形成した層厚の厚い接着層を、シンクロナイザ・リングの摩擦係合面等のように大きな応力が負荷される部位に適用することは困難であった。これに対して、接着クッション層6は、炭素短繊維3群を含んでいる分、層厚が厚くなっているものの、前述のように硬く、かつ、靱性の高い層であることから、大きな応力が負荷されても壊れるおそれがない。また、層厚が厚いことにより、両材料1,2の線膨張係数の違いに起因する剪断応力を、接着クッション層6全体に分散することができ、異材接合時に懸念される剥離現象を防止することが可能となる。
【0040】
また、両材料1,2の接着面1a,2aを、接着クッション材を介在させて接着する際に、十分な圧力で圧着しながら加熱硬化させているため、十分な接着強度を得ることができる。
【0041】
さらに、接着クッション材は、面圧を加えることにより所定の範囲内で面形状の変形が自在であることから、前述のように十分な圧力で圧着を行っても、接着クッション材が、両材料1,2の接着面1a,2a間の不均一なクリアランスを充填(吸収)するように変形し、かつ、炭素短繊維3自身の圧縮剛性により接着クッション材が所定の範囲を超えて圧縮変形することはない。このため、両材料1,2の接着面1a,2a間に、両材料1,2の表面粗度の違いに起因する不均一なクリアランスが存在しても、金属リング1と接着クッション層6との間及び摩擦材2と接着クッション層6との間に接着不良などの問題が生じるおそれはない。
【0042】
また更に、金属リング1と摩擦材2の組合わせとしては、両者とも表面の粗い金属材からなる金属リング1と摩擦材2、表面の粗い金属材からなる金属リング1とC−Cコンポジットからなる摩擦材2であってもよく、この場合、金属リング1又は摩擦材2の表面処理が不要となることから、製造工程が簡易となると共に製造コストの削減を図ることができる。
【0043】
以上のことから、かかる金属リングと摩擦材の接着構造及びその接着方法によれば、金属リングと摩擦材とを、損壊・剥離のおそれなく強固に接着することができる。
【0044】
尚、本実施の形態においては、フェノール樹脂系接着剤を用いた場合について説明を行ったが、アクリル樹脂系接着剤を用いても略同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0045】
次に、本発明の他の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0046】
本発明に係るシンクロナイザ・リングの好適一実施の形態の斜視図を図2に示す。
【0047】
図2に示すように、本発明に係るシンクロナイザ・リング20は、金属製(鋳鉄製)のリング部21とコーン部22とを備えたリング本体(金属リング)29の、コーン部22の内周面に、図1に示したフェノール樹脂系接着剤5を含浸させた炭素短繊維(又はガラス短繊維)3の不織布4からなる接着クッション層6を介して、炭素繊維強化炭素複合シート(以下、C−Cシートと示す)材からなる摩擦材24を貼り付け、その摩擦材24をコーン部22側に押圧させて接着クッション層6を圧縮させながら加熱硬化させたものである。
【0048】
摩擦材24は、コーン部22の内周面の周方向に亘って設けられた多数のC−Cシート片25で構成されており、各C−Cシート片25は、隣接するC−Cシート片25と所定の間隔を有して設けられている。また、摩擦材24は、必要に応じて軸方向(図2中では上下方向)に多段に設けても良い(図2中では2段)。ここで、各C−Cシート片25の非貼付面(摩擦係合面)には、コーン部22の内周面の周方向に沿って油切り溝(図示せず)が形成されている。
【0049】
次に、本発明に係るシンクロナイザ・リング20の製造方法を図2を用いて説明する。
【0050】
先ず、既知の方法等を用いて製作したC−Cコンポジットのブロック体から、ダイヤモンドカッタ等を用いて多数のC−Cシート片25を切出す。また、図1(b)に示す炭素短繊維3の不織布4にフェノール樹脂系接着剤5を含浸させ、接着クッション材(図示せず)を形成する。
【0051】
次に、各C−Cシート片25の貼付面およびリング本体29のコーン部22の内周面23に、粘度が比較的高いフェノール樹脂系接着剤を塗布した後、接着クッション材、各C−Cシート片25、及びリング本体29をそれぞれ炉内に入れて所定の温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤の予備硬化を行い、フェノール樹脂系接着剤中の溶剤を揮発させる。
【0052】
予備硬化後、接着クッション材を、C−Cシート片25と同一形状に切断する。その後、コーン部22の内周面23の周方向に亘って、接着クッション材を介して各C−Cシート片25を貼付ける。
【0053】
その後、コーン部22の内周面23内に型ピン(図示せず)を嵌め合わせ、型ピンによって各C−Cシート片25をコーン部22の内周面23に所定の圧力で押し付ける。この状態でリング本体29を炉内に入れて所定の温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤を加熱硬化させる。この時、接着クッション材が、コーン部22の内周面23とC−Cシート片25の接着面間のクリアランスを充填(吸収)するように変形し、かつ、炭素短繊維3自身の圧縮剛性により接着クッション材が所定の範囲を超えて圧縮変形することはない。このため、コーン部22の内周面23とC−Cシート片25の接着面間の不均一なクリアランスを、接着クッション材で完全に充填することができる。
【0054】
コーン部22の内周面23に接着クッション材を介して各C−Cシート片25を接着することで、コーン部22の内周面23に摩擦材24を有したシンクロナイザ・リング20が得られる。
【0055】
本実施の形態に係るシンクロナイザ・リングによれば、シンクロナイザ・リング20の摩擦材24を、耐熱性及び耐摩耗性に優れたC−Cコンポジットで形成することで、長期使用後の高温油中においても安定して優れた耐摩耗性を発揮し、従来のシンクロナイザ・リングと比較して耐久性・信頼性に優れる。
【0056】
また、リング本体29と摩擦材24との間に接着クッション材を介在させ、この接着クッション材を所定の圧力で圧着すると共に、所定の温度条件で加熱硬化させることで、リング本体29と摩擦材24とを接着クッション層6を介して十分な接着強度で接着することができる。また、この接着クッション層6は、前述したように、炭素短繊維3群で繊維強化されたフェノール樹脂系接着剤5の接着層であり、硬く、かつ、靱性の高い層である。このため、この接着クッション層6に、摩擦係合による多大な応力が負荷されても、層が損壊するおそれはない。
【0057】
さらに、鋳鉄からなるリング本体29とC−Cコンポジットからなる摩擦材24とは、異種材料であり、線膨脹係数及び表面粗度が大きく異なっているものの、接着クッション材を介して接着することで、リング本体29と摩擦材24の線膨脹係数の違いに起因する伸び率の相違を緩衝し、リング本体29と摩擦材24の表面粗度の違いに起因する接着面間の不均一なクリアランスを吸収することができる。このため、リング本体29と摩擦材24との接着面に、線膨脹係数の違いに起因する剪断応力が負荷されてもリング本体29から摩擦材24が剥離するおそれがない。また、リング本体29と摩擦材24との接着面間の不均一なクリアランスは接着クッション材で完全に充填されるため、リング本体29と接着クッション層6との間及び摩擦材24と接着クッション層6との間において接着不良が生じるおそれはない。
【0058】
【実施例】
鋳鉄からなる金属リングとしての金属材とC−Cコンポジットからなる摩擦材との接着強度、および鋳鉄からなる金属材同士の接着強度を確認すべく、引張り試験機を用いて剪断強度を測定する。ここで、金属材と摩擦材とを接着したものについて剪断強度を測定する際、摩擦材を引張り試験機で引張ると、C−Cコンポジットが非常に脆い材料であることから摩擦材が損壊してしまい、金属材と摩擦材とを接着したものについては、引張り試験を行うことができない。よって、この場合、摩擦材を金属材で挟んで接着したものを引張り試験に供し、金属材同士を引張ることにした。
【0059】
<試験1>
幅25mm、厚さ0.8mm、長さ100mmの鋳鉄材(SPCC−SD(JIS規格))を2枚作製した後、各鋳鉄材の接着部表面に浸炭処理を施し、その後、ショットブラストにより接着部の表面調整を行い、表面粗度を50μRzとする。この鋳鉄材の内、片方の鋳鉄材の接着部を幅方向にV字状に折曲げ、図4に示すように、折曲がった第1部材41と、真直な第2部材42を作製する。ここで、第1部材41の谷側の面41aの最大深さは0.5mmとして不均一なクリアランスとした。
【0060】
また、繊維径Dが0.006mm(6μm)の炭素繊維を用いてC−Cコンポジットを形成し、このC−Cコンポジットをスライスして、縦25mm、横25mm、厚さ0.7mmの摩擦材43(図5,図6参照)を作製する。摩擦材については、表面研磨を行うことができないことから、表面粗度は可成りと粗くなっている(表面粗度は測定不可であり、ばらつきが大きい)。
【0061】
さらに、繊維長Lが15mm、繊維径Dが0.8μmの炭素短繊維を用いて、厚さ2mm、目付量3.0×10-3g/cm2の不織布を作製する。この不織布にフェノール樹脂系接着剤(ハマタイトA−344−B(横浜ゴム(株)製))を含浸させ、縦25mm、横25mm、厚さ2.0mmの接着クッション材44(図5参照)を作製する。
【0062】
(実施例1)
図5に示すように、第1部材41及び第2部材42の各接着部表面、および摩擦43材の両面に、フェノール樹脂系接着剤(ハマタイトY−3600(横浜ゴム(株)製))45を塗布した後、第1部材41、第2部材42、摩擦材43、および接着クッション材44を80℃×30minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45及び接着クッション材44に含浸させたフェノール樹脂系接着剤を予備硬化させる。
【0063】
次に、第1部材41及び第2部材42の各接着部表面を対向させて重ねる際、各接着部表面間に、摩擦材43を接着クッション材44,44で挟んだものを介在させる。
【0064】
その後、第1部材41及び第2部材42を0.98MPa(10kgf/cm2)の圧力で圧着させると共に180℃×60minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45及び接着クッション材44に含浸させたフェノール樹脂系接着剤を加熱硬化させて試料1を作製する。
【0065】
(比較例1)
図6に示すように、第1部材41、第2部材42、及び摩擦材43の各接着部表面に、フェノール樹脂系接着剤(ハマタイトY−3600(横浜ゴム(株)製))45を塗布した後、第1部材41、第2部材42、及び摩擦材43を80℃×30minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45を予備硬化させる。
【0066】
次に、第1部材41及び第2部材42の各接着部表面を対向させて重ねる際、各接着部表面間に摩擦材43を介在させる。その後、第1部材41及び第2部材42を0.98MPa(10kgf/cm2)の圧力で圧着させると共に180℃×60minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45を加熱硬化させて試料2を作製する。
【0067】
<試験2>
試験1と同様にして、第1部材41及び第2部材42を作製する。また、試験1と同様にして作製した不織布に、アクリル樹脂系接着剤(ハードロックG55(電気化学(株)製))を含浸させ、縦25mm、横25mm、厚さ2.0mmの接着クッション材74(図7参照)を作製する。
【0068】
(実施例2)
図7に示すように、第1部材41及び第2部材42の各接着部表面を対向させて重ねる際、各接着部表面間に、接着クッション材74を介在させる。
【0069】
その後、第1部材41及び第2部材42をクリップで固定すると共に室温で24時間放置し、接着クッション材74に含浸させたアクリル樹脂系接着剤を硬化させて試料3を作製する。
【0070】
(比較例2)
図8に示すように、第1部材41及び第2部材42の各接着部表面に、アクリル樹脂系接着剤(ハードロックG55(電気化学(株)製))81を塗布した後、第1部材41及び第2部材42の各接着部表面を対向させて重ねる。その後、第1部材41及び第2部材42をクリップで固定すると共に室温で24時間放置し、アクリル樹脂系接着剤81を硬化させて試料4を作製する。
【0071】
ここで、見方を変えると、試料3,4は、金属材と、その金属材と線膨脹係数は同じであるが表面粗度が異なる摩擦材との接着構造と見ることができる。
【0072】
<試験3>
幅25mm、厚さ0.8mm、長さ100mmの鋳鉄材(SPCC−SD(JIS規格))を2枚作製した後、各鋳鉄材の接着部表面に浸炭処理を施し、その後、ショットブラストにより接着部の表面調整を行い、表面粗度を50μRzとする。この鋳鉄材の内、片方の鋳鉄材の接着部を幅方向にアーチ状に曲げ、図9に示すように、折曲がった第1部材91と、真直な第2部材92を作製する。ここで、第1部材91の凹側の面91aの最大深さは0.5mmである。
【0073】
その他は、試験1と同様にして摩擦材43(図10,図11参照)及び接着クッション材44(図10参照)を作製する。
【0074】
(実施例3)
図10に示すように、第1部材91及び第2部材92の各接着部表面、および摩擦43材の両面に、フェノール樹脂系接着剤(ハマタイトY−3600(横浜ゴム(株)製))45を塗布した後、第1部材91、第2部材92、摩擦材43、および接着クッション材44を80℃×30minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45及び接着クッション材44に含浸させたフェノール樹脂系接着剤を予備硬化させる。
【0075】
次に、第1部材91及び第2部材92の各接着部表面を対向させて重ねる際、各接着部表面間に、摩擦材43を接着クッション材44,44で挟んだものを介在させる。
【0076】
その後、第1部材91及び第2部材92を0.98MPa(10kgf/cm2)の圧力で圧着させると共に180℃×60minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45及び接着クッション材44に含浸させたフェノール樹脂系接着剤を加熱硬化させて試料5を作製する。
【0077】
(比較例3)
図11に示すように、第1部材91、第2部材92、及び摩擦材43の各接着部表面に、フェノール樹脂系接着剤(ハマタイトY−3600(横浜ゴム(株)製))45を塗布した後、第1部材91、第2部材92、及び摩擦材43を80℃×30minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45を予備硬化させる。
【0078】
次に、第1部材91及び第2部材92の各接着部表面を対向させて重ねる際、各接着部表面間に摩擦材43を介在させる。その後、第1部材91及び第2部材92を0.98MPa(10kgf/cm2)の圧力で圧着させると共に180℃×60minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45を加熱硬化させて試料6を作製する。
【0079】
<試験4>
試験3と同様にして、第1部材91及び第2部材92(図12,図13参照)、および接着クッション材44(図12参照)を作製する。
【0080】
(実施例4)
図12に示すように、第1部材91及び第2部材92の各接着部表面に、フェノール樹脂系接着剤(ハマタイトY−3600(横浜ゴム(株)製))45を塗布した後、第1部材91、第2部材92、および接着クッション材44を80℃×30minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45及び接着クッション材44に含浸させたフェノール樹脂系接着剤を予備硬化させる。
【0081】
次に、第1部材91及び第2部材92の各接着部表面を対向させて重ねる際、各接着部表面間に、接着クッション材44を介在させる。その後は実施例3と同様にして、フェノール樹脂系接着剤45及び接着クッション材44に含浸させたフェノール樹脂系接着剤を加熱硬化させて試料7を作製する。
【0082】
(比較例4)
図13に示すように、第1部材91及び第2部材92の各接着部表面に、フェノール樹脂系接着剤(ハマタイトY−3600(横浜ゴム(株)製))45を塗布した後、第1部材91、第2部材92を80℃×30minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45を予備硬化させる。
【0083】
次に、第1部材91及び第2部材92の各接着部表面を対向させて重ねた後、第1部材91及び第2部材92を0.98MPa(10kgf/cm2)の圧力で圧着させると共に180℃×60minの温度条件で加熱し、フェノール樹脂系接着剤45を加熱硬化させて試料8を作製する。
【0084】
ここで、見方を変えると、試料3,4は、金属材と、その金属材と線膨脹係数は同じであるが表面粗度が異なる摩擦材との接着構造と見ることができる。
【0085】
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた試料1〜8について、第1部材41,91及び第2部材42,92を、インストロン型引張り試験機を用いて、図4、図9に示す矢印方向に引張り、室温大気中における剪断強度を測定した。
【0086】
従来の金属リングと摩擦材の接着構造を有する比較例1,3の試料2,6では、第1部材41,91と摩擦材43との間および第2部材42,92と摩擦材43との間に介在するのが、フェノール樹脂系接着剤45の接着層である。この接着層は、硬く、脆い層であるため、引張りに伴って接着層が変形する際の許容範囲が狭い(小さい)。また、この接着層は接着強度を発現させるために加圧が必要であるが、接着の際に加圧を行うと、第1部材41,91と摩擦材43との間および第2部材42,92と摩擦材43との間の不均一なクリアランスを吸収できなくなってしまう。このため、第1部材41,91と摩擦材43との間および第2部材42,92と摩擦材43との間に接着不良が生じてしまう。これらの理由によって、試料2,6の剪断強度(接着強度)は5MPaと低い値となってしまう。
【0087】
これに対して、本発明の金属リングとしての金属材と摩擦材の接着構造を有する実施例1,3の試料1,5では、第1部材41,91と摩擦材43との間および第2部材42,92と摩擦材43との間に介在するのが、接着クッション層である。この接着クッション層は、硬く、かつ、靱性の高い層であるため、引張りに伴って接着クッション層が変形する際の許容範囲が広い(大きい)。また、フェノール樹脂系接着剤の接着強度を発現させるために加圧を行っても、この接着クッション層は、ある一定の範囲を超えて圧縮されることがないため、第1部材41,91と摩擦材43との間および第2部材42,92と摩擦材43との間の不均一なクリアランスを略完全に吸収することができる。このため、第1部材41,91と摩擦材43との間および第2部材42,92と摩擦材43との間に接着不良が生じるおそれはない。これらの理由によって、試料1,3の剪断強度(接着強度)は、試料2,6の3倍以上の17MPaと非常に高い値となる。
【0088】
また、実施例2,4の試料3,7および比較例2,4の試料4,8は、同種材料間の接着であるため、第1部材41,91と第2部材42,92との間に歪みが生じることはなく、接着後の第1部材41,91と第2部材42,92とは略一体のものと見なすことができる。
【0089】
このため、従来の金属リングと摩擦材の接着構造を有する比較例2,4の試料4,8では、試料2,6と比較すると、第1部材41,91と第2部材42,92との間に歪みがない分、剪断強度(接着強度)は若干高いが、試料2,6と同様の理由で、剪断強度(接着強度)が7MPaと依然として低い。
【0090】
これに対して、本発明の金属リングと摩擦材の接着構造を有する実施例2,4の試料3,7では、試料1,3と同様の理由で、剪断強度(接着強度)が試料4,8の3倍の21MPaと非常に高い値となる。
【0091】
即ち、本発明に係る金属リングと摩擦材の接着構造を有するものは、従来の金属材と摩擦材の接着構造を有するものと比較して、接着強度が大幅に向上することが確認できた。
【0092】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0093】
尚、本発明に係る金属リングと摩擦材の接着構造は、上述したようにシンクロナイザ・リングのみにその用途が限定されるものではなく、その他の多大な応力が負荷される摩擦部に適用することができることは言うまでもなく、例えば、シリンダライナ等が想定される。
【0094】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、金属リング内周面と、その金属リングと線膨脹係数又は表面粗度が大きく異なる摩擦材との接着面間に、炭素短繊維等からなる不織布にフェノール樹脂系接着剤又はアクリル樹脂系接着材を含浸させ、かつ予備硬化させた接着クッション層を、金属リング内周面と摩擦材との接着面間に介在させると共にその接着クッション層が、金属リングと摩擦材の間のクリアランスを充填(吸収)する層厚を有し、これを圧着させて硬化させたことで、金属材と摩擦材とを強固に接着することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る金属リングと摩擦材の接着構造の断面模式図である。
【図2】 本発明に係るシンクロナイザ・リングの好適一実施の形態を示す斜視図である。
【図3】 従来のシンクロナイザ・リングの一形態を示す斜視図である。
【図4】 試験1,2に用いた第一部材及び第二部材の斜視図である。
【図5】 実施例1における試料1の接着部断面図である。
【図6】 比較例1における試料2の接着部断面図である。
【図7】 実施例2における試料3の接着部断面図である。
【図8】 比較例2における試料4の接着部断面図である。
【図9】 試験3,4に用いた第一部材及び第二部材の斜視図である。
【図10】 実施例3における試料5の接着部断面図である。
【図11】 比較例3における試料6の接着部断面図である。
【図12】 実施例4における試料7の接着部断面図である。
【図13】 比較例4における試料8の接着部断面図である。
【符号の説明】
1 金属リング
2 摩擦材
3 炭素短繊維(又はガラス短繊維)
4 不織布
5 フェノール樹脂系接着剤(又はアクリル樹脂系接着剤)
6 接着クッション層
20 シンクロナイザ・リング
21 リング部(金属リング)
22 コーン部(金属リング)
23 コーン部の内周面(金属リングの内周面)
24 摩擦材
25 C−Cシート片(炭素繊維強化炭素複合シート片)
29 リング本体(金属リング)

Claims (6)

  1. 金属リングの内周面と、その金属リングと線膨脹係数が異なる摩擦材との接着構造において、炭素短繊維等からなる不織布に熱硬化性の接着剤を含浸させた接着クッション層を加熱して予備硬化させて形成し、その予備硬化させた接着クッション層を上記金属リングの内周面と摩擦材の接着面間に介在させ上記金属リングと各摩擦材を押圧することで上記接着クッション層を圧着させて加熱硬化させると共に、上記接着クッション層は、その圧着されて加熱硬化された状態において、上記金属リングの内周面と摩擦材の接着面間のクリアランスを充填し、且つ、伸縮可能な層厚を有することを特徴とする金属リングと摩擦材の接着構造。
  2. 上記接着剤がフェノール樹脂系接着剤である請求項1記載の金属リングと摩擦材の接着構造。
  3. 上記金属リングが鋳鉄、上記摩擦材が炭素繊維強化炭素複合材で構成された請求項1又は請求項2に記載の金属リングと摩擦材の接着構造。
  4. 金属リングの内周面と、その金属リングと線膨脹係数が異なる摩擦材との接着構造において、炭素短繊維等からなる不織布に熱硬化性の接着剤を含浸させた接着クッション層を加熱して予備硬化させて形成し、上記金属リングの内周面及び上記摩擦材の接着面に、フェノール樹脂系接着剤からなる接着層を形成し、その接着層を形成した上記金属リング及び上記摩擦材間に、上記予備硬化させた接着クッション層を介在させ、上記金属リングと各摩擦材を押圧すると共に接着クッション層を圧着させて加熱硬化させたことを特徴とする金属リングと摩擦材の接着構造。
  5. 上記金属リングが、変速装置のシンクロナイザ・リングである請求項1から請求項4いずれかに記載の金属リングと摩擦材の接着構造。
  6. 上記摩擦材が、上記金属リングの内周面の周方向に亘って設けられた多数の炭素繊維強化炭素複合シート片で構成される請求項5記載の金属リングと摩擦材の接着構造。
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