JP4587342B2 - 温度感応型流体式ファン・カップリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に自動車における機関冷却用のファン回転を機関周囲の温度変化に追従して制御せしめ、絶えず外部温度に応じた冷却送風量を自動的に調整して機関に供給する温度感応型流体式ファン・カップリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のファン・カップリング装置としては、例えば外面に冷却フィンが突設されたカバーとケースとからなる密封器匣の内部を、油の供給調整孔を有する仕切板により油溜り室と駆動ディスクを内装するトルク伝達室とに区劃し、回転時の油の集溜する駆動ディスクの外周壁部に対向する密封器匣の内周壁面の一部にダムと、これに連なってトルク伝達室側より油溜り室に通ずる循環排出路を形成すると共に、外部周囲の温度が設定値を超えると前記仕切板の供給調整孔を開放し、設定値以下では前記仕切板の供給調整孔を閉鎖する弁部材を、前記カバーの前面に設けた感温体の温度変化に伴う変形に連動するように内部に備え、駆動ディスクと前記ケースおよびカバーとの外方付近の対向壁面に設けたトルク伝達間隙部での油の有効接触面積を増減させて、回転軸体側から被駆動側の密封器匣側へのトルク伝達を制御するものがある。
【0003】
しかしながら、このようなファン・カップリング装置にあっては、冷却ファンを取付けてなる密封器匣が被駆動側(従動側)として構成され、トルク伝達間隙部での油の剪断によって発生する熱が密封器匣に伝わり、樹脂製などからなるファン側の鉄製回転軸体に熱による変形を及ぼし、また外部への不十分な放熱と相俟って油の粘性が低下し、したがって外部周囲の温度変化に追従した適正な制御機能に狂いを生ぜしめる問題を有していた。さらに冷却ファンを密封器匣に取付けるインサートが鉄製の場合は、強度は問題ないが熱伝導性が悪いため、トルク伝達間隙部での油の剪断によって発生する熱の放熱にはほとんど寄与することがなかった。
【0004】
このように従来のファン・カップリング装置は、トルク伝達間隙部での油の剪断によって発生する熱が効果的に放熱されないという欠点があり、また放熱作用を得るためには密封器匣の外側表面に放射状などからなる多数の放熱フィンを突設する必要があり、製品重量の増大を余儀なく、慣性モーメントを大となし、軸受部にかかる負荷の増大に関連して大型軸受の使用を余儀なくされ、むしろ製品全体の重量を増加する傾向にあり、かつ高価であった。また、密封器匣の外側表面に放射状などからなる多数の放熱フィンを突設した場合には、放熱ポテンシャルの高い密封器匣が従動側でたえずスリップして駆動側より回転数が低くなり、高い放熱効果が得られないという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の欠点を解消するためになされたものであって、密封器匣側を駆動側とし、かつディスクや回転部材、インサートを伝熱性の良好な材質で形成することにより、トルク伝達間隙部での油の剪断によって発生する熱を効果的に放熱することができ、さらに発熱による油の温度上昇を極力抑制し、油の粘性低下の憂いをなくし、したがって長時間にわたり外部周囲の温度変化に追従して、適正な制御機能を発揮することができる温度感応型流体式ファン・カップリング装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る温度感応型流体式ファン・カップリング装置は、外部周囲の温度変化に感応して駆動側と被駆動側(従動側)との間のトルク伝達間隙での油の有効接触面積を増減させて被駆動側への回転伝達を制御せしめる方式であって、ケースとカバーとからなる密封器匣を回転駆動する仕組みとなし、前記カバー側の軸芯開口部に、軸受を介して前面に感温体と外方に冷却ファンとを取付けてなる回転部材の軸芯基部が支承され、かつ密封器匣内部に位置する該回転部材の後端部に従動ディスクが固定されて該従動ディスクの外方付近と密封器匣側の対向する内周面とにトルク伝達間隙が保持され、さらに前記従動ディスクの背面側の凹溝部を仕切板により区劃して油溜り室と前記トルク伝達間隙に通ずるトルク伝達室とが形成され、該仕切板に油溜り室よりトルク伝達室側に連通する油の流出調整孔が設けられ、かつ油溜り室内部に、前記感温体の温度変化に伴う変形に連動して前記流出調整孔を開閉する弁部材を備え、さらに回転時の油の集溜する前記密封器匣の内周壁面に対向する従動ディスクの外周壁部の一部にダムを設け、かつ該ダムに近傍してその回転方向の前部に前記従動ディスクを貫通する循環流通路を有する温度感応型流体式ファン・カップリング装置において、前記従動ディスクおよび回転部材をAlまたはCuおよびAl基合金製またはCu基合金製とすることを特徴とするものである。
また、前記冷却ファンはAl又はCuおよびAl基合金製又はCu基合金製のインサートを介して回転部材に取着した構成とすることができる。
【0007】
本発明においては、冷却フィンを取付けてなる密封器匣を駆動側として構成しているので、密封器匣の外側表面に放射状などからなる多数の放熱フィンを突設しても、密封器匣が高速回転するので多量の熱を放散することとなる。
【0008】
また、本発明において、従動ディスク、回転部材、インサートをAlまたはCuおよびAl基合金製またはCu基合金製としたのは、Al、Cu、アルミニウム合金材や銅合金材は熱伝導度が0.45cal/℃・cm・sec以上、好ましくは0.50cal/℃・cm・sec以上と熱伝導性が良好であり、かつシリコンオイルのようなトルク伝達油の熱を空気中に効果的に放熱でき、さらに放熱作用が大きいため冷却フィンの高さを低くしたり枚数を減らして小型化できるからである。なお前記従動ディスク、回転部材、インサートの熱伝導度は、各部材自体の強度を損なわない限り高い方が好ましいが、現行の技術では最大0.56cal/℃・cm・sec程度が上限である。したがって、従動側の回転部材の回転速度が低下しても当該回転部材は熱伝導性の良好な材料であるため高い放熱効果が得られる上、従動側の回転部材からの熱を熱伝導性の良好なファンインサートがさらに放熱するので、トルク伝達間隙部での油の剪断によって発生する熱による油の劣化、軸受にかかる熱負荷の軽減がはかられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る温度感応型流体式ファン・カップリング装置の一実施例を示す縦断面図であり、1はケース2−1とカバー2−2とからなる密封器匣2を具備する回転駆動体であって、アルミ合金材などからなり、該密封器匣2はケース2−1と一体に形成してもよいし、または別体として設けてもよく、また外面には冷却フィン2−3が突設されている。3はカバー2−2側の軸芯開口部4に軸受5を介してその軸芯基部を支承せしめた回転部材であって、前面にバイメタルなどからなる感温体6と、外方にインサート8を介して冷却ファン7を取付けて被駆動側(従動側)を構成するものである。9は密封器匣2内部に位置する回転部材3の後端部に固定された従動ディスクであって、その外方付近、すなわち外方の少なくとも一側面または外周端面と密封器匣2側の対向する内周面とトルク伝達間隙10を保持してなるものである。11は従動ディスク9の背面側の中央部の周りのほぼ円形状の凹溝部12を区劃して油溜り室13とトルク伝達室14とを形成する仕切板であって、該仕切板11には油溜り室13よりトルク伝達室14側に連通する油の流出調整孔15が設けてある。16は油溜り室13内に内装した弁部材であって、前記感温体6が外部周囲の温度変化により変形し、これに追従して可動する前記回転部材3の軸芯部を貫設してなる連杆17に連動して仕切板11側の流出調整孔15を開閉するものである。18は回転時の油の集溜する前記密封器匣2の内周壁面の一部に、対向する従動ディスク9の外周壁部に突出して設けたダムであり、該ダム18に近傍してその回転方向の前部に前記従動ディスク9を貫通する循環流通路19を設けてトルク伝達間隙10より油溜り室13側へ油を循環させる。前記回転部材3および従動ディスク9と、インサート8はAlまたはCuおよびAl基合金製またはCu基合金製である。
なお、感温体6としては、長方形からなる平板状(図1参照)に形成して前後方向への彎曲変形に追従して、前記弁部材16を流出調整孔15部に対して前後へ進退して開閉するものとするか、あるいは渦巻状に形成して流出調整孔部に対して弁部材16を左右へ滑動して開閉するもののいずれにも採用できる。
【0010】
上記構成の温度感応型流体式ファン・カップリング装置の場合は、密封器匣2を回転駆動側に構成せしめて該密封器匣側の前面壁部の軸芯開口部4に軸受5を介して冷却ファン7を取付けた被駆動側としての回転部材3を支承し、かつ従動ディスク9を従動側に位置して設けた構成により、密封器匣2側での高速回転の状態によって、密封器匣自体での冷却効果を著しく促進することとなり、さらに回転部材3、従動ディスク9およびインサート8が熱伝導性の良好なAlまたはCuおよびAl基合金製またはCu基合金製であるため高い放熱効果が得られ、密封器匣内部に充填されたトルク伝達用油の粘性低下の憂いをなくし、長時間にわたり外部周囲の温度変化に追従して、適正な制御機能を発揮することができるとともに、軸受5にかかる熱負荷の軽減がはかられる。
【0011】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明による温度感応型流体式ファン・カップリング装置は、回転駆動する密封器匣に冷却フィン2−3を設けた被駆動側により軸受5を介して回転部材3を支承し、該回転部材3と、密封器匣2内部に位置する該回転部材3の後端部に固定された従動ディスクおよびファン取着用インサートを熱伝導性の良好なAlまたはCuおよびAl基合金製またはCu基合金製としたことにより、密封器匣の外側表面に放射状などからなる多数の放熱フィンを突設しても、密封器匣が高速回転するので多量の熱を放散することとなり、また従動側の回転部材の回転速度が低下しても当該回転部材は熱伝導性の良好な材料であるため高い放熱効果が得られる上、従動側の回転部材からの熱を熱伝導性の良好なファンインサートがさらに放熱するので、トルク伝達間隙部での油の剪断によって発生する熱による油の劣化、軸受にかかる熱負荷の軽減がはかられ、長時間にわたり外部周囲の温度変化に追従して、適正な制御機能を発揮することができるという、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る温度感応型流体式ファン・カップリング装置の一実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 回転駆動体
2 密封器匣
2−1 ケース
2−2 カバー
2−3 フィン
3 回転部材
4 軸芯開口部
5 軸受
6 感温体
7 冷却ファン
8 インサート
9 従動ディスク
10 トルク伝達間隙
11 仕切板
12 円状凹溝部
13 油溜り室
14 トルク伝達室
15 流出調整孔
16 弁部材
17 連杆
18 ダム
19 循環流通路
Claims (1)
- 外部周囲の温度変化に感応して駆動側と被駆動側との間のトルク伝達間隙での油の有効接触面積を増減させて被駆動側への回転伝達を制御せしめる方式であって、ケースとカバーとからなる密封器匣を回転駆動する仕組みとなし、前記カバー側の軸芯開口部に、軸受を介して前面に感温体と外方に冷却ファンとを取付けてなる回転部材の軸芯基部が支承され、かつ密封器匣内部に位置する該回転部材の後端部に従動ディスクが固定されて該従動ディスクの外方付近と密封器匣側の対向する内周面とにトルク伝達間隙が保持され、さらに前記従動ディスクの背面側の凹溝部を仕切板により区劃して油溜り室と前記トルク伝達間隙に通ずるトルク伝達室とが形成され、該仕切板に油溜り室よりトルク伝達室側に連通する油の流出調整孔が設けられ、かつ油溜り室内部に、前記感温体の温度変化に伴う変形に連動して前記流出調整孔を開閉する弁部材を備え、さらに回転時の油の集溜する前記密封器匣の内周壁面に対向する従動ディスクの外周壁部の一部にダムを設け、かつ該ダムに近傍してその回転方向の前部に前記従動ディスクを貫通する循環流通路を有する温度感応型流体式ファン・カップリング装置において、前記従動ディスクおよび回転部材をAlまたはCuおよびAl基合金製又はCu基合金製とし、さらに前記冷却ファンをAlまたはCuおよびAl基合金製またはCu基合金製のインサートを介して回転部材に取着した構成となしたことを特徴とする温度感応型流体式ファン・カップリング装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31828699A JP4587342B2 (ja) | 1999-11-09 | 1999-11-09 | 温度感応型流体式ファン・カップリング装置 |
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JP2001140940A JP2001140940A (ja) | 2001-05-22 |
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JP31828699A Expired - Fee Related JP4587342B2 (ja) | 1999-11-09 | 1999-11-09 | 温度感応型流体式ファン・カップリング装置 |
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Citations (3)
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---|---|---|---|---|
JPS603332U (ja) * | 1983-06-21 | 1985-01-11 | 臼井国際産業株式会社 | 温度感応型流体カツプリング装置 |
JPS63195426A (ja) * | 1987-02-09 | 1988-08-12 | Usui Internatl Ind Co Ltd | 温度感応型流体式フアン・カツプリング装置 |
JPH08296669A (ja) * | 1995-04-27 | 1996-11-12 | Usui Internatl Ind Co Ltd | 流体式ファン・カップリング装置 |
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1999
- 1999-11-09 JP JP31828699A patent/JP4587342B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPS603332U (ja) * | 1983-06-21 | 1985-01-11 | 臼井国際産業株式会社 | 温度感応型流体カツプリング装置 |
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