JP4586008B2 - 組電池及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数個の単電池の正負極間を接続金属板によって連結する組電池及びその製造方法に関する。
ハイブリッド自動車や電気自動車や携帯機器等に使用する組電池(電池モジュールとも称す)は、大電流の充放電が要求されるため、数十本の単電池を直列に接続する必要がある。接続抵抗(電気抵抗)が大きいと、電圧降下による通電ロスが増加し、発熱量も大きくなり、電池の特性劣化,寿命低下が生じる。このため、従来より組電池の接続抵抗を小さくする方法や電池極間を連結する方法が幾つか提案されている。
特許文献1に記載の円筒型電池及び組電池では、雌ねじ孔が穿設され又は雄ねじ部が立設された面部を有する導電性材料からなる集電端子が前記面部を支持する脚部を介してそれぞれ正極部と負極部とに接続固定することが提案されている。この場合、電池の正負極部に取付けた集電端子と電池同士を接続する接続体とをボルトで締結する構造であるため、部品数が多く,コスト高になる。集電端子の脚部に切込みと凸部を設けて、電池の正極部や負極部にスポット溶接(抵抗溶接)しているが、溶接箇所が8箇所もあり、溶接工数が増加するという問題がある。また、集電端子は、ニッケル製のような導電性材料が使用されており、スポット溶接(抵抗溶接)の施工が可能であるが、板厚を多少厚くしても、ニッケル材の電気抵抗が銅材の電気抵抗と比べて大きいため、接続抵抗の減少に限界がある。また、ニッケル材は銅材より高価である。電気抵抗の小さい銅材は、ジュール発熱方式の抵抗溶接が困難であるため、集電端子には使用することができず、また、抵抗溶接と方法が異なるアーク溶接(アークスポット溶接)は適用されていない。
特許文献2に記載の組電池では、2本の単電池の正極キャップ上に配置された電気絶縁性樹脂製のプレートは、組電池の外周より小さく、単電池間の谷状空間に多角形状の窪みを有する突起が突設されており、前記プレート表面に前記単電池間を機械的,電気的に接続する金属ブスバを配置することが提案されている。この場合、電気絶縁性樹脂製のプレート上にT字状,十字状の金属ブスバを配置し、単電池の正極端子,負極端子にスポット溶接(抵抗溶接)している。金属ブスバの材質は記載されていないが、特許文献1と同様に、ニッケル製のような導電性材料と考えられる。また、電気抵抗の小さい銅材は、ジュール発熱方式の抵抗溶接が困難であるため、集電金属ブスバには使用することができない。また、抵抗溶接と方法が異なるアーク溶接(アークスポット溶接)は適用されていない。
特許文献3では、縦列に並べられる単電池の対向する電極端子に、第1電極ユニットと第2電池ユニットの外側に突出した金属リード板を固定しており、前記金属リード板の表面を互いに接触させる状態で接続することが提案されている。この場合、上段の第1電池ユニットと下段の第2電池ユニットとを連結する金属リード板の突出部同士を半田付け又はスポット溶接(抵抗溶接)している。また、複数個の単電池の極間同士を接続するリード板もスポット溶接(抵抗溶接)している。組電池の構造は異なるが、特許文献1,2と同様に、抵抗溶接と方法が異なるアーク溶接(アークスポット溶接)は適用されていない。また、電気抵抗の小さい銅材は、ジュール発熱方式の抵抗溶接が困難であるため、金属リード板及びリード板には使用することができない。
また、特許文献4に記載の組電池では、接続部材の2種類の突起の内、一方の突起は一方の単電池の封口体上に溶接され、他方の突起は他方の単電池の外装缶底面に溶接されることが提案されている。この場合、2種類の突起を有する接続部材を介して上側の単電池と下側の単電池とを連結する構造であり、一方の突起を下側の単電池正極面に溶接(抵抗溶接)し、他方の突起を上側の単電池負極面を溶接(抵抗溶接)している。接続部材には溶接時に溶接電極を取付けるリード部が突出しているため、溶接終了後にリード部を切断する又は折り曲げる必要があり、余分な工数が増えるという問題がある。溶接トーチを挿入する空間がないため、抵抗溶接と異なるアーク溶接等の他の溶接法は適用することができない。
特許文献5に記載の密閉型電池とその製造法及び密閉型電池用蓋板では、電池容器の開口部を密閉する蓋板の裏面は注入穴近傍が外周部より薄肉に形成され、該薄肉に形成された部分と封止栓との溶融によって前記注入穴が封止されていることが提案されている。この場合、蓋板の薄肉部分と封止栓とをアーク溶接して穴封止(溶融接合)しているが、角型電池の穴を封止溶接する技術であり、複数個の単電池の極間同士を接続溶接するものではない。また、角型電池の蓋板及び封止栓の材質はアルミニウムであり、銅やニッケルではない。材質や形状が異なると、溶接可能な適正条件が全く異なるため、アルミニウムの溶接条件をそのまま適用することができない。
また、特許文献6に記載の渦巻電極を備えた電池の製造法では、渦巻電極体の上下各電極突出端に略円盤状の金属無地板よりなる集電体を配置し、アークスポット溶接により集電体とこれと直角に交差接触する電極突出端とを溶接した後、電池ケース内に包み込むことが提案されている。この場合、円盤状の集電体と下側にある渦巻電極体の突出端とをアークスポット溶接しているが、丸型電池の電極部分を溶接する技術であり、複数個の単電池の極間同士を接続溶接するものではない。また、集電体及び渦巻電極体の材質はニッケルメッキ付の鋼板であり、銅やニッケルではない。特許文献5と同様に、材質や形状が異なると、溶接可能な適正条件が全く異なるため、鋼板の溶接条件をそのまま適用することができないという問題がある。
特開平8−287898号公報 特開2004−164981号公報 特開2000−133227号公報 特開2001−266843号公報 特開2004−259584号公報 特開昭61−8539号公報
本発明の目的は、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部を得ると共に、電池極間の接続抵抗を小さく、電池充放電時の通電ロスが減少でき、電池寿命向上に有効な組電池及びその製造方法を提供することである。
本発明は、複数個の単電池を収納ケースに一列又は複数列に収納し、複数個の前記単電池の極間を板厚が0.4mm以上1.5mm以下の銅製の接続金属板によって連結する組電池において、前記単電池の正極部又は負極部は、表裏面に厚み1μm以上10μm以下のニッケルメッキが施された板厚が0.4mm以上1.5mm以下の鋼又は低炭素鋼であり、前記接続金属板は、単電池の正極部と前記単電池に隣接する他の単電池の負極部との両面に前記接続金属板を配置し、前記接続金属板の片方と前記正極部との重ね継手、前記接続金属板の他方と前記負極部との重ね継手がアークスポット溶接によって各々溶接されており、前記接続金属板の表面から単電池の正極部又は負極部への溶け込み深さが、0.1mm以上かつ前記板厚の4/5以下であることを特徴とする。
前記接続金属板は銅製のままか或いは銅製の表裏面にニッケルメッキされているとよい。
また、各接続金属板の表面には、前記単電池の正極部に接続する箇所と他の単電池の負極部に接続する箇所とに分けて前記アークスポット溶接が1点ずつ又は2点ずつ施工されているとすることもできる。特に、前記溶接金属部は、各接続金属板の表面から各単電池の正極部の肉厚途中及び負極部の肉厚途中まで形成されているとよい。
また、前記接続金属板は、前記アークスポット溶接の位置より前記接続金属板の中心側に2つ以上の曲がり部を前記正極部又は前記負極部又は前記正極部及び前記負極部の両方から上位方向に形成しているとよい。
また、本発明は、複数個の単電池を収納ケースに一列又は複数列に収納し、複数個の前記単電池の極間を板厚が0.4mm以上1.5mm以下の銅製の接続金属板によって溶接接続する組電池の製造方法において、前記単電池の正極部及び負極部は、表裏面に厚み1μm以上10μm以下のニッケルメッキが施された板厚が0.4mm以上1.5mm以下の鋼又は低炭素鋼であり、前記接続金属板を、単電池の正極部と隣接する他の単電池の負極部との両面に配置し、前記接続金属板の一方と前記正極部との重ね継手、及び、前記接続金属板の他方と前記負極部との重ね継手を、前記正極部及び前記負極部の肉厚裏側まで溶かさない溶け込みとなる溶接条件又はこれに相当する入熱条件を用い、非消耗性のタングステン電極を用いるアークスポット溶接によって、前記接続金属板の表面から単電池の正極部又は負極部への溶け込み深さが、0.1mm以上かつ前記板厚の4/5以下であるように溶融接合することを特徴とする。
前記接続金属板は、材質が銅製であり、各単電池の正極部と隣接する他の単電池の負極部との両面に前記接続金属板を各々配置し、前記接続金属板の片方と前記正極部との各重ね継手、前記接続金属板の他方と前記負極部との各重ね継手がアークスポット溶接によって各々溶接されていることにより、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部が得られ、電池極間の接続抵抗を小さく、電池充放電時の通電ロスが少ない組電池を得ることができる。特に、銅の電気抵抗はニッケル材や鋼材の電気抵抗と比べて格段に小さい(Cu:1.55<Ni:6.58<Fe:8.71(×10-6Ω・cm))ため、銅製の接続金属板を使用することで、前記接続抵抗が小さくでき、また、ニッケル材より低コストで製作することができる。また、銅製の接続金属板であっても、アークスポット溶接によって確実に溶融接合することができる。なお、ジュール発熱方式の抵抗溶接(スポット溶接)では、電気抵抗の小さな銅の溶接が困難であり、適用することができない。
また、前記接続金属板は、板厚が0.4mm以上1.5mm以下であり、銅又は裏表面をニッケルメッキされた銅を用いることにより、耐食性を保持することができる。なお、接続金属板の板厚が0.4mm より薄いと、素材そのものの強度が低く、溶接部の強度が低く振動に弱い構造になってしまい、反対に、板厚が1.5mm より厚くなると、接続金属板への熱放散の増加によってアークスポット溶接ができなくなるので好ましくない。
前記単電池の正極部又は負極部は、板厚が0.4mm以上1.5mm以下であり、材質が鋼製又は低炭素鋼であり、表裏面にニッケルメッキすることにより、異材継手のアークスポット溶接であっても、Niメッキを媒体にして融点の低いCuと融点の高いFeとが結び付き、割れのない良好な極薄いCu/Feの混合層が形成し、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部を得ることができる。また、鋼製又は低炭素鋼であっても、Niメッキによって耐食性を高めることができる。前記Niメッキの厚みは、1μm以上10μm以下であり、銅とNiメッキ付鋼との異材溶接が施工でき、割れのない良好な溶接部を得ることができる。
なお、前記単電池の正極部又は負極部の板厚が0.4mm より薄いと、素材そのものの強度が低く、溶接部の強度が低く振動に弱い構造になってしまい、反対に、板厚が1.5mm より厚くなると、深絞り成形加工が難しくなり、重量が増加するばかりでなく、アーク溶接も困難になるので好ましくない。また、Niメッキの厚みが0.1μm より薄いと、僅かなキズ等によって鋼面が露出し、耐食性が低下し易くなり、反対に、10μmより厚くなると、メッキ処理に時間がかかるばかりでなく、アーク溶接時に接合不足が生じ易くなるので好ましくない。
また、各接続金属板の表面には、前記単電池の正極部に接続する箇所と他の単電池の負極部に接続する箇所とに分けて前記アークスポット溶接が1点ずつ又は2点ずつ施工されていることにより、少ない溶接点数であっても、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部が得られ、電池正負極間を確実に締結することができる。同時に、溶接工数を削減することもできる。
特に、前記溶接金属部は、各接続金属板の表面から各単電池の正極部の肉厚途中及び負極部の肉厚途中まで形成されていることにより、重ね継手の裏側まで溶けのない溶接部が確実に得られ、電池正負極部の材質が鋼製又は低炭素鋼であっても、継手裏側のNiメッキの確保によって耐食性を保持することができる。
また、前記接続金属板は、前記アークスポット溶接の位置から離れた箇所に2つ以上の曲がり部を前記正極部又は前記負極部又は前記正極部及び前記負極部の両方から上位方向に形成していることにより、組電池の一体化による拘束や自動車搭載稼働による振動などで電池溶接部に加わる応力を抑制することができる。
また前記接続金属板は、材質が銅製であり、各単電池の正極部と隣接する他の単電池の負極部との両面に前記接続金属板を各々配置し、前記接続金属板の片方と前記正極部との各重ね継手をアークスポット溶接によって各々溶融接合し、前記接続金属板の他方と前記負極部との各重ね継手をアークスポット溶接によって各々溶融接合することにより、上述したように、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部が得られ、電池極間の接続抵抗が小さく、電池充放電時の通電ロスが少ない組電池を得ることができる。また、銅製の接続金属板の使用によって、ニッケル材より低コストで製作することができる。
前記アークスポット溶接は、非消耗性のタングステン電極を用いるアーク溶接であり、抵抗溶接が困難な銅材の溶接であっても、また、銅と鋼との異材重ね継手の溶接であっても、確実に溶融接合することができ、特に、Niメッキを媒体にして融点の低いCuと融点の高いFeとが結び付き、割れのない良好な極薄いCu/Feの混合層が形成し、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部を得ることができる。さらに、前記正極部の肉厚裏側、前記負極部の肉厚裏側まで溶かさない浅い溶け込みとなる溶接条件又はこれに該当する入熱条件を用い、前記接続金属板の表面から前記正極部の肉厚途中、前記負極部の肉厚途中まで各々溶融接合することにより、重ね継手の裏側まで溶けのない溶接部を確実に得ることができる。
本発明の組電池及びその製造方法によれば、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部が得られ、電池極間の接続抵抗が小さく、電池充放電時の通電ロスを減少できることにより、電池寿命を向上させることができる。
以下、本発明の組電池及びその製造方法について好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の組電池に係わる単電池の配列と電池正負極間の接続及び電流経路の一実施例を示す説明図である。また、図2は、図1に示した電池正極間の接続状態の一実施例を示す上面図であり、図3は、図2に示した電池正極間の接続状態を示す断面図である。
図1に示すように、一組40本の単電池2を電気絶縁性の収納ケース1に複数列に収納している。他の配列に変更しても良いし、また、単電池の本数が少ない場合には一列に配列することもできる。各単電池2は、円筒型のリチウム電池であり、電池正極部6と他の電池負極部7とが交互に隣接するように配置し、各接続金属板3によって直列に連結されており、組電池の稼働時には、電流経路12の方向に高電流が出力できるようにしている。
図2及び図3に示すように、接続金属板3は、材質が銅製であり、単電池2の正極部6と他の単電池2の負極部7(電池底面)との両面に接触するように前記接続金属板3を各々配置し、前記接続金属板3の片方と電池正極部6との重ね継手、前記接続金属板3の他方と電池負極部との重ね継手がアークスポット溶接によって各々溶接されている。各接続金属板3の表面には、アークスポット溶接の施工による溶接部5が電池正極部6側に2点ずつ、電池負極部7側に2点ずつ形成されている。この溶接部5を1点ずつ形成することもできる。
アークスポット溶接によって各々溶接されていることにより、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部5が得られ、電池極間の接続抵抗を小さく、電池充放電時の通電ロスが少ない組電池を得ることができる。特に、銅の電気抵抗はニッケル材や鋼材の電気抵抗と比べて格段に小さい(Cu:1.55<Ni:6.58<Fe:8.71(×10-6Ω・cm))ため、銅製の接続金属板3を使用することで、接続抵抗が格段に小さくでき、また、ニッケル材より低コストで製作することができる。また、銅製の接続金属板3であっても、アークスポット溶接によって確実に溶融接合することができる。なお、ジュール発熱方式の抵抗溶接(スポット溶接)は、電気抵抗の小さな銅の溶接が困難であり、適用することができない。
接続金属板3は、板厚が0.4mm以上1.5mm以下であり、銅製のままか或いは銅製の表裏面にNiメッキが施されており、耐食性を保持することができる。なお、接続金属板3の板厚が0.4mm より薄いと、素材そのものの強度が低く、溶接部の強度が低く振動に弱い構造になってしまい、反対に、板厚が1.5mm より厚くなると、接続金属板3への熱放散の増加によってアークスポット溶接ができなくなるので好ましくない。また、前記接続金属板3には、溶接部5の位置から離れた箇所に2つ以上の曲がり部4を上位方向に形成している。この曲がり部4の形成により、組電池の一体化による拘束や自動車搭載稼働による振動などで溶接部5に加わる応力を抑制することができる。
一方、各単電池2は、正極部6及び負極部7を除く外周囲を薄い絶縁シートでシールされており、また、絶縁材のブロック枠8によって事前に区分けされ、アーク溶接が施工できるように正極部6及び負極部7を露出させている。単電池2の金属容器や負極部7及び正極部6は、板厚が0.4mm以上1.5mm以下であり、材質が鋼製又は低炭素鋼であり、表裏面にNiメッキが施されており、耐食性を高めている。Niメッキの厚みは、1μm以上10μm以下であり、銅とNiメッキ付鋼との異材溶接が施工でき、割れのない良好な溶接部を得ることができる。なお、前記単電池の正極部又は負極部の板厚が0.4mmより薄いと、素材そのものの強度が低く、溶接部の強度が低く振動に弱い構造になってしまい、反対に、板厚が1.5mmより厚くなると、深絞り成形加工が難しくなり、重量が増加するばかりでなく、アーク溶接も困難になるので好ましくない。また、Niメッキの厚みが0.1μmより薄いと、僅かなキズ等によって鋼面が露出し、耐食性が低下し易くなり、反対に、10μmより厚くなると、メッキ処理に時間がかかるばかりでなく、アーク溶接時に接合不足が生じ易くなるので好ましくない。図1〜図3に示した実施例の単電池2又は組電池は、リチウム電池であるが、ニッケル水素電池等の他の電池であってもよく、本発明の溶接方法を行うことにより、上述したように、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部5が得られ、電池極間の接続抵抗を小さく、電池充放電時の通電ロスが少ない組電池を得ることができる。
表1は、電池正負極間の接続抵抗を測定した結果の一実施例であり、Niメッキ付銅材の接続金属板をアーク溶接したものと、ニッケル材の接続金属板を抵抗溶接したものとを示している。接続抵抗の測定にはハイテスタを使用し、図2中に示したように、交流4端子法により単電池2の正負極間(AB点間)の抵抗値を測定した。表1に示すように、銅製の接続金属板を2点溶接(アーク溶接)した正負極間の接続抵抗(3個測定の平均値)は、0.27mΩ であり、Ni製の接続金属板を4点溶接(従来の抵抗溶接)した正負極間の接続抵抗(0.76mΩ)と比べて約1/3であり、また、1点溶接の場合でも0.39mΩと小さい結果になっている。2点溶接と1点溶接との接続抵抗が異なる理由としては、接合断面積の大きさの違いが考えられる。このように、銅製の接続金属板を使用することによって、電池正負極間の接続抵抗が小さくなり、図1に示した組電池における電池充放電時の通電ロスを大幅に軽減でき、電池寿命向上に寄与することができる。また、ニッケル材より低コストで製作することができる。
Figure 0004586008
図4は、電池極間の重ね継手部をアークスポット溶接する工程を示す断面図及び溶接電流と時間の関係を示す線図であり、(1)上側の接続金属板のアーク加熱、(2)接続金属板の溶融、(3)下側の電池正極部又は負極部との溶融接合、(4)時間経過の電流波形の様子をそれぞれ示している。この実施例で用いているアーク熱源は、非消耗性のタングステン電極9を用いるアーク10であり、所定の溶接条件(電流と溶接時間)を溶接電源に設定して出力させている。図示していないシールドガス(Arガス)流出の雰囲気内でアーク10を発生させ、図4(4)に示すように所定時間T(ms)の電流I(A)を出力させる。図4(1)及び図2(2)に示すように、最初に上側の接続金属板3がアーク加熱して溶融し、次に、図4(3)に示すように、熱伝導及びアーク力によって上側の溶融部と下側の電池正極部6又は負極部7とが溶融接合11する。下板の裏側まで溶かさない短い時間の寸止め溶接であり、アーク消去直後に凝固し、裏溶けや割れのない品質良好な溶接部5を得ることができる。また、銅製の接続金属板3と鋼製の正極部6又は負極部7との異材重ね継手の溶接であっても、確実に溶融接合することができ、特に、Niメッキを媒体にして融点の低いCuと融点の高いFeとが結び付き(金属の融点:Cu:
1083<Ni:1455<Fe:1539℃)、割れのない良好な極薄いCu/Feの混合層が形成し、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部を得ることができる。鋼製の正極部6又は負極部7(下板側)の裏表面がNiメッキ処理されていれば、上板側の接続金属板3が銅製のまま(Niメッキなし)でも、或いはNiメッキありでも、アーク溶接による異材溶接が各々施工可能であり、割れのない品質良好な溶接部を得ることができる。
また、図4に示したアークスポット溶接では、電池正極部6の肉厚裏側,負極部7の肉厚裏側まで溶かさない浅い溶け込みとなる溶接条件又はこれに該当する入熱条件を用いており、上側の接続金属板3の表面から前記正極部6の肉厚途中、前記負極部7の肉厚途中まで溶融接合するように溶接している。下側の正極部6及び負極部7の溶け込み深さは、0.1mm 以上板厚の4/5以下であれば良い。下板裏側まで溶かさない寸止め溶接を行うことにより、裏溶けや割れのない品質良好な溶接部5を得ることができ、下板裏側のNiメッキが残存して耐食性を保持することができる。なお、前記溶け込み深さが0.1mm より少ないと、溶接不足が生じ易く、溶接部の強度が低くなり、反対に、溶け込み深さが板厚の4/5より大きくなると、裏溶けが生じ易くなるので好ましくない。
溶接箇所の接続金属板3は、平坦であるが、裏面に突起(凸部)を形成した接続金属板を用いてもよく、本発明の溶接方法を行うことにより、上述したように、良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部5が得られ、電池極間の接続抵抗を小さく、電池充放電時の通電ロスが少ない組電池を得ることができる。
図5は、電池溶接におけるアーク溶接の電流とアーク電圧,適正時間及び入熱量の関係を示す一実施例である。板厚0.8mm の接続金属板3(Niメッキ付銅)と板厚0.8mmの正極部6(Niメッキ付鋼)との異材溶接であり、裏溶けのない溶融接合11が可能な適正条件を示している。アークスポット溶接では、高い電流Iを使用すると短時間及び低入熱量で溶融接合し、低い電流Iを使用すると、アーク力及び熱伝導の低下により、溶融接合可能な適正時間T及び入熱量Qが増加している。アーク電圧Vaは電流Iの大きさに応じて上昇している。入熱量Q(J)は、電流I(A)とアーク電圧Va(V)及び時間T(ms)から算出(Q=I*Va*T/1000)することができる。
板厚が0.8mmより薄い0.5mmの正極部6又は負極部7を溶融接合する場合は、図5に示したアーク溶接の電流と時間の関係より短い適正時間を設定し、反対に、板厚を1mmに厚くする場合には、前記適正時間を長く設定するとよい。使用する板厚に適した溶接条件を用いて溶接施工することにより、裏溶けや割れのない品質良好な溶接部5を得ることができる。また、継手部に少しのギャップがあっても、容易に溶融接合することができる。
図6は、アークスポット溶接した2点溶接部の断面積と引張強度の関係を示す一実施例である。断面積Sは、溶接電流や時間を変えて変化させており、引張試験後の破断面から寸法測定して算出した値である。図6に示すように、2点溶接部の引張強度F(破断荷重)は、接合面積Sの大きさにほぼ比例増加している。接合面積Sが5mm2未満の場合は、接合面から破断し、引張強度Fが低く(650N未満)、5≦S≦8mm2の場合には、上板溶融部から破断し、高い引張強度(650≦F≦1200N)を得ることができる。接合面積Sが8mm2より大きくなると、引張強度がさらに増加するが、入熱過大になって裏溶けに至る。

このように、本発明の組電池及びその製造方法によれば、電池極間の接続抵抗が小さく、電池充放電時の通電ロスを減少することができる。また、抵抗溶接が困難な銅材の溶接、銅と鋼材との異材重ね継手の溶接であっても、アーク溶接によって良好な溶接品質及び引張強度の高い溶接部を得ることができる。
本発明の組電池に係わる単電池の配列と電池正負極間の接続及び電流経路の一実施例を示す説明図である。 本発明の組電池及びその製造方法に係わる電池正負極間の接続状態の一実施例を示す上面図である。 図2に示した電池正負極間の接続状態を示す断面図である。 電池極間の重ね継手部をアークスポット溶接する工程を示す断面図及び溶接電流と時間の関係を示す線図である。 電池溶接におけるアーク溶接の電流とアーク電圧,適正時間及び入熱量の関係を示す一実施例である。 アークスポット溶接した2点溶接部の断面積と引張強度の関係を示す一実施例である。
符号の説明
1…収納ケース、2…単電池、3…接続金属板、4…曲がり部、5…溶接部、6…正極部、7…負極部、8…ブロック枠、9…タングステン電極、10…アーク、11…溶融接合。

Claims (6)

  1. 複数個の単電池を収納ケースに一列又は複数列に収納し、複数個の前記単電池の極間を板厚が0.4mm以上1.5mm以下の銅製の接続金属板によって連結する組電池において、
    前記単電池の正極部又は負極部は、表裏面に厚み1μm以上10μm以下のニッケルメッキが施された板厚が0.4mm以上1.5mm以下の鋼又は低炭素鋼であり、
    前記接続金属板は、単電池の正極部と前記単電池に隣接する他の単電池の負極部との両面に前記接続金属板を配置し、前記接続金属板の片方と前記正極部との重ね継手、前記接続金属板の他方と前記負極部との重ね継手がアークスポット溶接によって各々溶接されており、前記接続金属板の表面から単電池の正極部又は負極部への溶け込み深さが、0.1mm以上かつ前記板厚の4/5以下であることを特徴とする組電池。
  2. 前記接続金属板が、銅板又は表裏面をニッケルメッキされた銅板であることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
  3. 前記接続金属板の表面には、前記単電池の正極部に接続する箇所と他の単電池の負極部に接続する箇所とに分けて前記アークスポット溶接が1点ずつ又は2点ずつ施工されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
  4. 前記接続金属板は、前記アークスポット溶接の位置より前記接続金属板の中心側に2つ以上の曲がり部を有することを特徴とする請求項1に記載の組電池。
  5. 前記接続金属板と、前記正極部又は前記負極部との溶接部の接合面積が、5〜8mm2であることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
  6. 複数個の単電池を収納ケースに一列又は複数列に収納し、複数個の前記単電池の極間を板厚が0.4mm以上1.5mm以下の銅製の接続金属板によって溶接接続する組電池の製造方法において、
    前記単電池の正極部及び負極部は、表裏面に厚み1μm以上10μm以下のニッケルメッキが施された板厚が0.4mm以上1.5mm以下の鋼又は低炭素鋼であり、
    前記接続金属板を、単電池の正極部と隣接する他の単電池の負極部との両面に配置し、前記接続金属板の一方と前記正極部との重ね継手、及び、前記接続金属板の他方と前記負極部との重ね継手を、前記正極部及び前記負極部の肉厚裏側まで溶かさない溶け込みとなる溶接条件又はこれに相当する入熱条件を用い、非消耗性のタングステン電極を用いるアークスポット溶接によって、前記接続金属板の表面から単電池の正極部又は負極部への溶け込み深さが、0.1mm以上かつ前記板厚の4/5以下であるように溶融接合することを特徴とする組電池の製造方法。
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