JP4579344B1 - 野菜・果実類保存用包装シート、袋および容器ならびに野菜・果実類の保存方法 - Google Patents

野菜・果実類保存用包装シート、袋および容器ならびに野菜・果実類の保存方法 Download PDF

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Abstract

【課題】野菜・果実類の水分を保持するとともに、野菜・果実類の鮮度保持効果が高い野菜・果実類保存用包装シート、袋および容器ならびに野菜・果実類の保存方法を提供する。
【解決手段】樹脂製の基材シート11の表面に複数の透水孔12を設け、基材シート11の内面側にトレハロース13から成る保水剤を、0.2乃至0.6g/mの割合で塗布し、基材シート11の外面側にプロアントシアニジン14から成る抗菌剤を、0.2乃至30mg/mの割合で塗布して成る。この野菜・果実類保存用袋で野菜・果実類を包んで保存する。
【選択図】図1

Description

本発明は、野菜・果実類保存用包装シート、袋および容器ならびに野菜・果実類の保存方法に関する。
従来、野菜・果実類を保存する方法として、プロアントシアニジンとトレハロースとを通気性を有するシートに含有させて成る糖度向上材で、野菜・果実類を包む方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、微細孔を設けたポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムから成る包装袋に、野菜を入れる方法もある(例えば、特許文献2参照)。
特開2010−45986号公報 特開2004−290126号公報
特許文献1に記載の方法では、野菜・果実類の糖度を向上させることはできるが、シートが通気性を有しているため、野菜・果実類の水分が逃げてしまうという課題があった。また、特許文献2に記載の包装袋によれば、ある程度の野菜・果実類の鮮度保持効果は期待できるが、さらに鮮度保持効果の高いものが望まれている。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、野菜・果実類の水分を保持するとともに、野菜・果実類の鮮度保持効果が高い野菜・果実類保存用包装シート、袋および容器ならびに野菜・果実類の保存方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートは、複数の透水孔を有する基材シートの内面側に保水剤層を有し、外面側に抗菌剤層を有して成ることを、特徴とする。
本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートは、野菜・果実類を保存するために、内部に野菜・果実類を包んで使用される。本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートは、内部に野菜・果実類を包んだとき、内面側の保水剤層により、野菜から出る水を捕獲することができる。これにより、内部の湿潤状態を保つことができ、野菜・果実類の水分を保持することができる。また、保水剤層で保持しきれない水を、基材シートの複数の透水孔から外面側に排出することができる。さらに、基材シートの外面側に設けられた抗菌剤層により、外面側に排出された水が腐敗するのを防止することができる。これにより、内面側に包んだ野菜・果実類の腐敗を抑制することができ、野菜・果実類の鮮度保持効果が高い。
このように、本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートは、野菜・果実類の水分を保持するとともに、野菜・果実類の鮮度保持効果を高めることができる。このため、野菜・果実類を長期間保存することができ、野菜・果実類の保存性を高めることができる。本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートによれば、例えば、内部で野菜・果実類の新芽の伸長を促したり、野菜・果実類の葉や根が変色するのを抑制したりすることができる。
基材シートは、紙、布、不織布、樹脂フィルム、スポンジ、その他の透水性シートであっても、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、その他の非透水性シートであってもよい。複数の透水孔は、基材シートの全体に設けられていても、部分的に設けられていてもよい。透水孔の大きさは、直径2ナノメートル以上3ミリメートル以下が好ましい。透水孔の密度は、その大きさによるが、直径1ミリメートルの場合、1乃至25個/cmが好ましい。抗菌剤層は、抗酸化作用を有する抗酸化・抗菌剤層から成ることが好ましい。
本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートは、保水剤と溶剤とを所定の割合で混合し、保水剤層が基材シートの単位面積当たり所定の割合になるよう、基材シートの内面側に設けることが好ましい。また、抗菌剤と溶剤とを所定の割合で混合し、抗菌剤層が基材シートの単位面積当たり所定の割合になるよう、基材シートの外面側に設けることが好ましい。保水剤層および抗菌剤層を設ける方法としては、塗布、噴射その他、周知の方法を用いることができる。塗布の場合、刷毛塗りであっても印刷であってもよい。
本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートで、前記保水剤層は保水性糖質を含み、前記抗菌剤は抗菌性ポリフェノールを含むことが好ましい。保水性糖質および抗菌性ポリフェノールは、食品に安全に使用できる。保水性糖質は、グルコース、マルトース、ラクトース、フラクトースなどの還元糖であっても、砂糖(スクロース)、トレハロースなどの非還元糖であっても、さらには、ソルビトール、マンニット、ラクチトール、マルチトールなどの糖アルコールであってもよい。抗菌性ポリフェノールはカテキン、レステロール、アントシアニン、タンニン、ルチン、イソフラボンなどのフラボノイドであっても、フェノール酸、クロロゲン酸、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリンであってもよい。特に、前記保水性糖質はトレハロースおよびソルビトールの一方または両方を含み、前記抗菌性ポリフェノールはプロアントシアニジンおよびカテキンの一方または両方を含むことが好ましい。
トレハロースは、3種類の異性体、α,α体、α,β体およびβ,β体のいずれであってもよいが、α,α体が好適に使用される。トレハロースの調製方法、性状及び純度は問わない。プロアントシアニジンの原料は、ブドウの種子、黒大豆、その他、原料を問わないが、特にブドウ種子由来のプロアントシアニジンが好ましい。また、保水剤はソルビトールから成り、抗菌剤は茶カテキンから成っていてもよい。
本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートで、前記保水剤層は基材シートの内面側にトレハロースまたはソルビトールを0.2乃至0.6g/m付着させて成り、前記抗菌剤層は基材シートの外面側にプロアントシアニジンまたはカテキンを0.2乃至30mg/m付着させて成ることが好ましい。この場合、野菜・果実類の水分保持効果および鮮度保持効果を効果的に高めることができる。基材シートに塗布または噴射する場合、トレハロースまたはソルビトールの濃度は、10乃至100g/リットルが好ましく、プロアントシアニジンまたはカテキンの濃度は、0.01乃至5g/リットルが好ましい。トレハロース、ソルビトール、プロアントシアニジンまたはカテキンの溶剤を例示すれば、水、エチルアルコール、バインダーが挙げられる。保水剤層および抗菌剤層は、バインダーを含むことが好ましい。バインダーとしては、水溶性で、かつ、ポリプロピレン製シートなどのプラスチックシートに付着しやすいもの、例えば、アクリルエマルジョン、アクリル-スチレンエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、およびこれらの混合物等が特に好ましい。このようなバインダーには、基材シートの種類によるが、基材シートがポリプロピレン製シートの場合、塩素化ポリプロピレン系のトップコート用バインダー樹脂組成物を用いることができる。保水剤層および抗菌剤層には、着色剤、その他の添加剤を添加してもよい。
本発明に係る野菜・果実類保存用袋は、本発明に係る野菜・果実類保存用包装シートを袋状に形成して成り、前記基材シートは複数の透水孔を形成した非透水性シートから成り、前記保水剤層は袋内面にトレハロースまたはソルビトールを0.2乃至0.6g/m付着させて成り、前記抗菌剤層は袋外面にプロアントシアニジンまたはカテキンを0.2乃至30mg/m付着させて成ることを、特徴とする。この場合、野菜・果実類を袋の中に入れ、それらの水分保持効果および鮮度保持効果を高めることができる。非透水性シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂や塩化ビニル樹脂が好ましい。
本発明に係る野菜・果実類保存用容器は、段ボールで形成された箱から成り、前記段ボールは2枚のライナーの間に中芯を挟んで接着した構造を有し、前記中芯は請求項3記載の野菜・果実類保存用包装シートから成り、前記保水剤層を箱内面側に配置し、前記抗菌剤層を箱外面側に配置していることを、特徴とする。この場合、野菜・果実類を箱の中に入れ、それらの水分保持効果および鮮度保持効果を効果的に高めることができる。
本発明に係る野菜・果実類保存用容器で、前記保水剤は中芯の箱内面側に0.2乃至0.6g/mの割合で付着されており、前記抗菌剤は前記中芯の箱外面側に0.2乃至30mg/mの割合で付着されていることが好ましい。この場合、野菜・果実類の水分保持効果および鮮度保持効果を効果的に高めることができる。段ボールは、中芯が1枚のものでも、2枚以上のものでもよい。
本発明に係る野菜・果実類の保存方法は、本発明に係る野菜・果実類保存用包装シート、本発明に係る野菜・果実類保存用袋または本発明に係る野菜・果実類保存用容器で野菜・果実類を包むことを、特徴とする。
本発明に係る野菜・果実類の保存方法は、本発明に係る野菜・果実類保存用包装シート、本発明に係る野菜・果実類保存用袋または本発明に係る野菜・果実類保存用容器で野菜・果実類を包むため、野菜・果実類の水分を保持するとともに、野菜・果実類の鮮度を保持することができる。このため、野菜・果実類を長期間保存することができ、野菜・果実類の保存性を高めることができる。
本発明において、保存される野菜・果実類のうち、野菜の例としては、にんじん・長いも・大根・蕪・ジャガイモ・サツマイモ等の根菜、セリ・ほうれん草・白菜・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・小松菜などの葉菜、きゅうり・トマト・ナス・オクラ・いんげん・ピーマン等の果菜が挙げられる。果実の例としては、リンゴ、ナシ類、モモ、バナナ、トマト、スイカ、イチゴ、カキ、メロン、桜桃などが挙げられる。
本発明によれば、野菜・果実類の水分を保持するとともに、野菜・果実類の鮮度保持効果が高い野菜・果実類保存用包装シート、袋および容器ならびに野菜・果実類の保存方法を提供することができる。
本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋および野菜・果実類の保存方法の原理を示す断面図である。 保水剤層および抗菌剤層がない袋に入れた野菜の保存状態を示す(a)野菜を袋に入れた直後の断面図、(b)袋の内部の水が腐敗したときの断面図である。 本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋にセリを入れてから14日目の外観評価を示すグラフである。 本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋でプロアントシアニジンの量を変え、セリを袋に入れてから19日目の外観評価を示すグラフである。 本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋でプロアントシアニジンの量を変えたときの、セリの根の(a)色差の経日変化を示すグラフ、(b)17日目の色差の変化量を示すグラフ、(c)19日目の色差の変化量を示すグラフ、(d)21日目の色差の変化量を示すグラフである。 本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋でプロアントシアニジンの量を変えたときの、セリの葉の(a)色差の経日変化を示すグラフ、(b)19日目の色差の変化量を示すグラフである。 本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋でソルビトールおよび茶カテキンを使用したときの、セリを袋に入れてから20日目の(a)外観評価を示すグラフ、(b)色差の変化量を示すグラフである。 本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋でトレハロースの量を変えたときの、セリを袋に入れてから16日目の外観評価を示すグラフである。 本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用容器の部分拡大断面図である。
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋および野菜・果実類の保存方法の原理を示している。
本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋は、野菜・果実類保存用包装シートを袋状に形成して成っている。図1に示すように、野菜・果実類保存用包装シートは、基材シート11に複数の透水孔12を設け、基材シート11の内面側にトレハロース13の水溶液を塗布し、外面側にプロアントシアニジン14を塗布して成っている。
基材シート11は、ポリプロピレン製などの非透水性シートから成る。一例で、各透水孔12の直径は0.8ミリメートル、透水孔12の密度は5個/cmである。塗布するトレハロース13の溶液の濃度は20乃至100g/リットルであり、プロアントシアニジン14の溶液の濃度は0.1乃至5g/リットルである。溶剤には、いずれもバインダー、例えば、塩素化ポリプロピレン系のトップコート用バインダー樹脂組成物を使用できる。
基材シート11の内面側にはトレハロース13が0.2乃至0.6g/m付着した保水剤層が形成され、外面側にはプロアントシアニジンが0.2乃至30mg付着した抗菌剤層が形成される。基材シート11の内面側は野菜・果実類保存用袋の内側となり、基材シート11の外面側は野菜・果実類保存用袋の外側となる。
本発明の実施の形態の野菜・果実類の保存方法は、本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋の内部に野菜・果実類1を入れ、野菜・果実類1を包む方法から成る。野菜・果実類保存用袋の内部に野菜・果実類1を入れ、基材シート11で包んだとき、基材シート11の内面側に塗布された保水剤層のトレハロース13により、野菜・果実類1から出る水2を捕獲することができる。これにより、野菜・果実類保存用袋の内部の湿潤状態を保つことができ、野菜・果実類1の水分を保持することができる。また、保水剤層のトレハロース13で保持しきれない水2を、基材シート11の表面に設けられた複数の透水孔12から野菜・果実類保存用袋の外部に排出することができる。さらに、基材シート11の外面側に塗布された抗菌剤層のプロアントシアニジン14により、外部に排出された水2が腐敗するのを防止することができる。これにより、基材シート11の内部に入れた野菜・果実類1の腐敗を抑制することができ、野菜・果実類1の鮮度保持効果が高い。
これに対し、非透水性の袋体51に複数の透水孔52を設けただけの袋では、図2に示すように、袋体51の内部に野菜・果実類1を入れたとき、野菜・果実類1から出る水2は、一部は複数の透水孔52から袋体51の外部に排出されるが、大部分が袋体51の内面側に付着する。これにより、袋体51の内部の湿潤状態を保ち、野菜・果実類1の水分を保持することはできるが、袋体51の内面側に付着した水2が徐々に腐敗し、袋体51の内部の野菜・果実類1の鮮度も低下する。
このように、本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋は、野菜・果実類1の水分を保持するとともに、袋体51に複数の透水孔52を設けただけの場合に比べ、野菜・果実類1の鮮度保持効果を高めることができる。このため、野菜・果実類1を長期間保存することができ、野菜・果実類1の保存性を高めることができる。
なお、プロアントシアニジンには色が付いているが、プロアントシアニジンは野菜・果実類保存用袋の外面側に塗布されているので、袋内の野菜・果実類1に色移りすることはない。
[保存効果について]
本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋の保存効果を検証するために、セリを使用して保存試験を行った。本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋(以下、「内トレハ・外プロアント」)は、トレハロース5gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが0.2乃至0.6g/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、プロアントシアニジン250mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、プロアントシアニジンが10乃至30mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。なお、野菜・果実類保存用袋には、ポリプロピレン製の開口巾70mm、深さ500mm、34g/m(袋を開いて1枚にした時の1mあたりの重量)の袋を用いた。溶剤は、以下の全ての試験を含めて、塩素化ポリプロピレン系のトップコート用バインダー樹脂組成物(東洋インキ製造株式会社製、商品名「RT レジウサー」)を使用した。
また、比較用として、ポリプロピレン製の袋体の表面に複数の透水孔を設けただけの袋(以下、「無処理」)と、ポリプロピレン製の袋体の表面に複数の透水孔を設け、袋体の内面側にプロアントシアニジンを塗布し、外面側にトレハロースを塗布した袋(以下、「内プロアント・外トレハ」)とを使用した。内プロアント・外トレハの袋は、本発明の内トレハ・外プロアントの袋と、袋体の内側・外側を逆にしたもので、本発明の内トレハ・外プロアントの袋と同じ割合で、トレハロースおよびプロアントシアニジンを塗布している。なお、各袋体の表面の複数の透水孔は、以下の全ての試験を含めて、袋体の表面に2乃至3個/cmの密度となるよう針で孔(孔径約0.8mm)を開けて形成した。
無処理、内トレハ・外プロアント、内プロアント・外トレハの各袋の内部にセリを入れ、その各袋を段ボール箱に入れて、約4℃の冷蔵庫に保存した。保存後、各袋の内部のセリの状態を毎日、目視で観察した。
試験の結果、8日目には、無処理のセリは、当初に比べて全体的な緑の鮮やかさは失われているものの、茎や葉には痛みは認められなかった。内トレハ・外プロアントのセリは、新芽が何本か伸びていた。内プロアント・外トレハのセリは、内トレハ・外プロアントのものよりは少ないものの、新芽が数本伸びていた。
12日目には、無処理のセリは、一部の葉が黄色く変色していた。内トレハ・外プロアントおよび内プロアント・外トレハのセリは、新芽がさらに伸びていた。しかし、内プロアント・外トレハのセリは、袋に接していた葉が黒くなり、痛み始めていた。
14日目には、無処理のセリは、保存時に下になっている葉の変色が進んでいた。内トレハ・外プロアントのセリは、新芽がさらに伸びていたが、内側の葉に変色が始まっていた。内プロアント・外トレハのセリは、新芽の伸長が止まり、一部の葉が黒く変色していた。
14日目の各袋のセリの外観を、7段階で評価した。その評価結果を図3に示す。図3に示すように、内トレハ・外プロアントの袋に入れたセリの方が、無処理および内プロアント・外トレハの袋に入れたセリよりも、外観評価が高く、セリの新芽の伸長を促したり、セリの葉や根が変色するのを抑制したりする効果が高いことが確認された。このように、本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋は、野菜・果実類の水分を保持するとともに、野菜・果実類の鮮度保持効果を高めることができるといえる。
[プロアントシアニジンの量について]
本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋の、保存効果の高いプロアントシアニジンの量を調べるために、セリを使用して保存試験を行った。本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋に対応する袋として、「内トレハ・外プロアント」に比べて、プロアントシアニジンの量を1/10にした袋(以下、「内トレハ・外1/10プロアント」)と、プロアントシアニジンの量を1/50にした袋(以下、「内トレハ・外1/50プロアント」)とを使用した。また、比較用として、「無処理」の袋と、無処理の袋の内面側にトレハロースおよびプロアントシアニジンの両方を塗布した袋(以下、「内ポレハ」)と、無処理の袋の内面側にトレハロースを塗布し、外面側には何も塗布しない袋(以下、「内トレハロース」)とを使用した。
内トレハ・外1/10プロアントの袋は、トレハロース5gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが0.2乃至0.6g/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、プロアントシアニジン25mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、プロアントシアニジンが1乃至3mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。
内トレハ・外1/50プロアントの袋は、トレハロース5gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが0.2乃至0.6g/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、プロアントシアニジン5mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、プロアントシアニジンが0.2乃至0.6mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。
内ポレハの袋は、トレハロース5g、プロアントシアニジン250mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが0.1乃至0.4g/m、プロアントシアニジンが5乃至20mg/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。
内トレハロースの袋は、トレハロース5gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが0.2乃至0.6g/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。
無処理、内ポレハ、内トレハロース、内トレハ・外1/10プロアント、内トレハ・外1/50プロアントの各袋の内部にセリを入れ、その各袋を段ボール箱に入れて、約4℃の冷蔵庫に保存した。保存後、各袋の内部のセリの状態を毎日、目視で観察した。
試験の結果、3日目には、全ての袋のセリで、新芽が出始めた。
5日目には、無処理のセリは、根の先端部分が茶色く変色していた。内トレハロースおよび内トレハ・外1/50プロアントのセリは、さらに新芽が伸びており、状態が良かった。
7日目には、無処理、内ポレハ、内トレハ・外1/10プロアントおよび内トレハ・外1/50プロアントのセリは、新芽が順調に伸びていた。内トレハロースのセリは、新芽の先が下や横を向いており、新芽の勢いが失われていた。
10日目には、無処理のセリは、根の茶色の変色が拡がっており、2〜3枚の葉が黄色や茶色に変色し、枯れ始めていた。全ての袋のセリで、茎と新芽とを問わず、伸長していた。内トレハロースのセリは、茎の痛みが始まっていた。
14日目には、無処理のセリは、根と袋に付いていた水がどろどろになり、根も全体が茶色く変色し、葉も全体がしんなりとしてきた。内ポレハおよび内トレハロースのセリは、無処理のものよりも変色部分は少ないものの、根の下の方から変色が始まっており、葉も黄変が始まっていた。内トレハ・外1/10プロアントのセリは、根の1/3が変色していた。内トレハ・外1/10プロアントおよび内トレハ・外1/50プロアントのセリは、無処理のものに比べて茎の張りが残っていた。
17日目には、無処理、内ポレハおよび内トレハロースのセリは、葉全体がしんなりとし、茎にも張りがなくなっており、食味不可の状態であり、枯れているものもあった。無処理のセリは、根全体が土のような色に変色していた。内ポレハおよび内トレハロースのセリは、無処理のものと比べて、根の白い部分が残っていた。内トレハ・外1/10プロアントおよび内トレハ・外1/50プロアントのセリは、ほとんどの葉が青々とした緑を保ち、茎もしっかりしており、根の変色もほとんど見られなかった。特に、内トレハ・外1/50プロアントのセリは、状態が一番良かった。
19日目には、無処理のセリは、茎の下部分の広い範囲で茶色く変色しており、保存時に下になっている葉や茎も変色し、茎は軟らかくなっていた。内トレハロースのセリは、無処理のものと比べて変色の範囲が狭かったが、一部の茎が傷んで軟らかくなっていた。内ポレハのセリは、無処理や内トレハロースのものと比べて変色している部分が少なく、色も薄かった。内トレハ・外1/10プロアントおよび内トレハ・外1/50プロアントのセリは、無処理や内トレハロース、内ポレハのものと比べると、部分的な褐変で色も薄かった。特に、内トレハ・外1/50プロアントのセリは、本来の茎と根の白さが保たれており、状態が良かった。
24日目には、無処理のセリは、茎全体が変色し傷みにより軟らかくなっており、葉の半分が黄色に変色していた。内トレハロースのセリは、無処理のものと同程度の傷みが起きていた。内ポレハおよび内トレハ・外1/10プロアントのセリは、無処理のものよりは茎や葉の傷んでいる範囲は少ないものの、新芽の半数で傷みが起こっていた。内トレハ・外1/50プロアントのセリは、わずかの茎や葉に傷みが起きているものの、他のものと比べると葉の青さと茎の張りが残っており、新芽にも傷みは見られなかった。
内トレハロースのセリで、7日目以降に勢いがなくなり、その後根の変色が始まったことから、トレハロースだけでは、水の腐敗の抑制効果は低いことが確認された。また、内ポレハのセリよりも、内トレハ・外1/10プロアントおよび内トレハ・外1/50プロアントのセリの方が長持ちし、根の変色が抑えられたことから、トレハロースとプロアントシアニジンとを分けて塗布した方が、鮮度保持効果が高いことが確認された。
19日目の各袋のセリの外観を、7段階で評価した。その評価結果を図4に示す。また、デジタルカメラでセリを撮影して色差(デルタE)を測定し、その測定結果を図5および図6に示す。なお、図4乃至図6に示す外観評価および色差の変化量の統計学的有意差を、Dunnettの多重比較解析法にて有意水準5%で解析し、その解析結果を図中に示している。
色差の測定は、以下のようにして行った。まず、デジタルカメラにて、試験試料のセリと似た色の標準色(「TOCOL Color Book」を使用)と、試験試料とを一緒に撮影した。試験日による写真のばらつきが少なくなるように、同じ場所、同じ照明で撮影を行った。撮った写真は、市販のパソコンソフトのアドビシステムズ社製「Photoshop(登録商標)」のカラーピッカーを使用して、標準色と色の違いを求めたい部位とのL、a、bの値を調べた。Lは色の明るさを表し、aは数値が高くなるほど赤色に近づき、低くなるほど青色に近づくことを表し、bは数値が高くなるほど黄色に近づき、低くなるほど青色に近づくことを表している。色差の計算は、まず試験日ごとに、標準色L−試験試料の色L、標準色a−試験試料の色a、標準色b−試験試料の色bを計算し、標準色と試験試料の色との差(色のずれ)を求める。その後、L、a、bのそれぞれについて0日目の色のずれと試験日の色のずれとの差を求め、それらを二乗してから加算し、その値の平方根を求め、この値をデルタE(色差)とした。
図4乃至図6に示すように、トレハロースとプロアントシアニジンとを分けて塗布した内トレハ・外1/10プロアントおよび内トレハ・外1/50プロアントのセリが、他の袋に入れたセリよりも、外観評価が高く、根および葉の色差の変化量が小さいことが確認された。このことから、内トレハ・外1/10プロアントおよび内トレハ・外1/50プロアントの袋は、セリの新芽の伸長を促したり、セリの葉や根が変色するのを抑制したりする効果が高いといえる。特に、内トレハ・外1/50プロアントのセリが最も外観評価が高く、根および葉の色差の変化量が最も小さいことから、内トレハ・外1/50プロアントの野菜・果実類の鮮度保持効果が最も高いといえる。
[保存剤としてソルビトール、抗菌剤として茶カテキンを使用した場合]
本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋の袋体の内面側のトレハロースをソルビトールに変え、袋体の外面側のプロアントシアニジンを茶カテキンに変えた野菜・果実類保存用袋について、保存効果を検証するために、セリを使用して保存試験を行った。野菜・果実類保存用袋として、所定の割合でソルビトールと茶カテキンとを塗布した袋(以下、「ソルビトール1・茶カテキン」)と、ソルビトールの量を5倍にした袋(以下、「ソルビトール5・茶カテキン」)とを使用した。また、比較用として、「無処理」の袋を使用した。
ソルビトール1・茶カテキンの袋は、ソルビトール5gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、ソルビトールが0.2乃至0.6g/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、茶カテキン250mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、茶カテキンが10乃至30mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。
ソルビトール5・茶カテキンの袋は、ソルビトール25gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、ソルビトールが1乃至3g/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、茶カテキン250mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、茶カテキンが10乃至30mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。
無処理、ソルビトール1・茶カテキン、ソルビトール5・茶カテキンの各袋の内部にセリを入れ、その各袋を段ボール箱に入れて、約4℃の冷蔵庫に保存した。保存後、各袋の内部のセリの状態を毎日、目視で観察した。
20日目の各袋のセリの外観を、7段階で評価し、その評価結果を図7(a)に示す。また、20日目の各袋のセリの色差(デルタE)を測定し、その測定結果を図7(b)に示す。なお、図7に示す外観評価および色差の変化量の統計学的有意差をDunnettの多重比較解析法にて有意水準5%で解析し、その解析結果を図中に示している。図7に示すように、トレハロースおよびプロアントシアニジンの代わりにソルビトールおよび茶カテキンを使用しても、外観評価が高く、葉の色差の変化量が小さいことが確認された。このことから、ソルビトールおよび茶カテキンを使用しても、セリの新芽の伸長や葉の幅の増加を促したり、セリの葉や根が変色するのを抑制したりする効果が高く、野菜・果実類の鮮度保存効果が高いといえる。
[トレハロースの量について]
本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋の、保存効果の高いトレハロースの量を調べるために、セリを使用して保存試験を行った。本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋に対応する袋として、「内トレハ・外プロアント」に比べて、トレハロースの量を1/125にした袋(以下、「トレハ1/125・プロアント」)と、トレハロースの量を1/25にした袋(以下、「トレハ1/25・プロアント」)と、トレハロースの量を1/5にした袋(以下、「トレハ1/5・プロアント」)とを使用した。また、比較用として、無処理の袋の内面側にのり剤を塗布した袋(以下、「のり剤」)を使用した。のり剤には、塩素化ポリプロピレン系のトップコート用バインダー樹脂組成物(東洋インキ製造株式会社製、商品名「RT レジウサー」)を用いた。のり剤は内側全面に塗布し、塗布後に袋体の表面に2乃至3個/cmの密度となるよう針で孔(孔径約0.8mm)を開けた。のり剤の塗布量は乾燥重量として7.5g/mである。
トレハ1/125・プロアントの袋は、トレハロース0.04gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが1.6乃至4.8mg/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、プロアントシアニジン250mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、プロアントシアニジンが10乃至30mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。
トレハ1/25・プロアントの袋は、トレハロース0.2gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが8乃至24mg/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、プロアントシアニジン250mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、プロアントシアニジンが10乃至30mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。
トレハ1/5・プロアントの袋は、トレハロース1gに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、トレハロースが40乃至120mg/mの割合になるよう、袋体の内面側に刷毛で均一に塗布している。また、プロアントシアニジン250mgに対して溶剤50mlの割合で混合したものを、プロアントシアニジンが10乃至30mg/mの割合になるよう、袋体の外面側に刷毛で均一に塗布している。
のり剤、トレハ1/125・プロアント、トレハ1/25・プロアント、トレハ1/5・プロアントの各袋の内部にセリを入れ、その各袋を段ボール箱に入れて、約4℃の冷蔵庫に保存した。保存後、各袋の内部のセリの状態を毎日、目視で観察した。
16日目の各袋のセリの外観を、7段階で評価した。その評価結果を図8に示す。図8に示すように、「内トレハ・外プロアント」のものよりもトレハロースの量を減らしたトレハ1/125・プロアント、トレハ1/25・プロアント、トレハ1/5・プロアントの袋は、いずれも外観評価が低く、野菜・果実類の鮮度保持効果に劣ることが確認された。
図9は、本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用容器の部分拡大断面図である。野菜・果実類保存用容器は、段ボール61で形成された箱から成る。段ボール61は2枚のライナー62、63の間に中芯64を挟んで接着した構造を有している。ライナー62、63は、一般に用いられるライナー用の透水性の紙材から成っている。中芯64は、本発明の実施の形態の野菜・果実類保存用袋で用いた野菜・果実類保存用包装シートで、基材シートとしてポリプロピレン製の非透水性シートの代わりに、一般に用いられる中芯用紙材を用いて成っている。中芯64は、トレハロースの保水剤層65が箱内面側に配置され、プロアントシアニジンの抗菌剤層66が箱外面側に配置されている。野菜・果実類保存用容器の中に野菜・果実類を入れておくことにより、野菜・果実類の水分保持効果および鮮度保持効果を効果的に高めることができる。

Claims (6)

  1. 複数の透水孔を有する基材シートの内面側に保水剤層を有し、外面側に抗菌剤層を有して成ることを、特徴とする野菜・果実類保存用包装シート。
  2. 前記保水剤層は保水性糖質を含み、前記抗菌剤は抗菌性ポリフェノールを含むことを、特徴とする請求項1記載の野菜・果実類保存用包装シート。
  3. 前記保水性糖質はトレハロースおよびソルビトールの一方または両方を含み、前記抗菌性ポリフェノールはプロアントシアニジンおよびカテキンの一方または両方を含むことを、特徴とする請求項2記載の野菜・果実類保存用包装シート。
  4. 請求項3記載の野菜・果実類保存用包装シートを袋状に形成して成り、前記基材シートは複数の透水孔を形成した、前記保水剤層は袋内面にトレハロースまたはソルビトールを0.2乃至0.6g/m付着させて成り、前記抗菌剤層は袋外面にプロアントシアニジンまたはカテキンを0.2乃至30mg/m付着させて成ることを、特徴とする野菜・果実類保存用袋。
  5. 段ボールで形成された箱から成り、前記段ボールは2枚のライナーの間に中芯を挟んで接着した構造を有し、前記中芯は請求項3記載の野菜・果実類保存用包装シートから成り、前記保水剤層を箱内面側に配置し、前記抗菌剤層を箱外面側に配置していることを、特徴とする野菜・果実類保存用容器。
  6. 請求項1,2もしくは3記載の野菜・果実類保存用包装シート、請求項4記載の野菜・果実類保存用袋または請求項5記載の野菜・果実類保存用容器で野菜・果実類を包むことを、特徴とする野菜・果実類の保存方法。


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