JP4579107B2 - 連続型磁束観察装置および方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、超電導体の表面に自発磁化の方向が膜面に垂直な縞状磁区構造を有する磁性薄膜を密着させ、磁界をかけた状態で偏光光を入射し、磁気光学効果により超電導体表面で観察される磁区模様の幅から磁束密度分布を求める超電導体の磁気的内部性状検出装置が記載されている。
非特許文献1には、幅10mmで20cmから20m程度の長尺の超電導線材を2つのリール間に張架して、その中間部を液体窒素槽にホール素子アレイセンサとともに沈めて冷却し、超電導線材をリール間で10mm/sで連続搬送して、超電導線材の表面を非接触走査し、ホール素子センサから磁界中の臨界電流分布を測定する装置が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、磁性薄膜を超電導体の表面に着脱して測定するので、非破壊的な検査を行うことができるものの、長尺の試料を効率的に測定できる構成を備えていない。また、観察されるのが磁区模様であるため、磁束密度分布に換算するのに磁区幅を算出する複雑な画像処理が必要となり、1回の測定に時間がかかるという点でも長尺の試料を効率よく連続的に測定することができないという問題がある。
また、垂直磁性膜を用いているため、測定分解能が磁区の大きさに依存するという問題もある。例えば、高温超電導体の線材などでは、分解能が10μm〜数mm程度になってしまう。ここで空間分解能は外部磁界の増加とともに低下してしまう。試料端よりも内側に位置する欠陥の観察には高い磁界が必要となるため数mm以下の欠陥は検出することができないという問題がある。
非特許文献1に記載の技術では、ホール素子アレイにより試料を走査するため、連続的な非破壊検査を行うことができるものの、測定分解能がホール素子アレイの大きさに依存し、数mmのオーダとなってしまう。
また非特許文献1の装置のホール素子アレイの部分をより分解能の高い磁気光学膜を利用した手段に置き換えることも考えられるが、非特許文献1の観察を行う場合、液体窒素槽内に設置するので、液体窒素を透過する光を観察することになるため、鮮明な画像を取得して高精度な観察を行うことが困難であるという問題がある。
この発明によれば、超電導体からなる試料が試料搬送手段により間欠的に試料冷却保持部上の観察位置に搬送されて停止される。その際、試料は、冷却機構の温度制御により試料冷却保持部を介して一定温度に冷却される。そして、磁気光学膜保持部により、膜の面内に磁化容易軸を有する面内磁化磁気光学膜、または磁化容易軸を有しない常磁性磁気光学膜を試料の表面に着脱する。いずれの磁気光学膜でも、磁気光学効果により磁界発生部で発生された磁界の垂直成分に応じて磁気光学膜に照射される直線偏光した光の偏光方向を回転するので、照明光学系により直線偏光光を入射することで磁束密度分布に対応した偏光分布が形成される。この偏光分布を偏光観察手段により観察する。観察終了後、磁気光学膜保持部を試料から離間させ、試料搬送手段により、隣接の未観察領域の試料を観察位置に移動して、上記動作を繰り返す。それにより一定磁界中の一定温度で、試料表面の磁束密度分布をその長手方向に沿って順次連続的に観察することができる。
面内磁化磁気光学膜または常磁性磁気光学膜は垂直方向の磁束密度に応じてファラデー回転角が変わるから、例えば垂直磁性膜の磁区の大きさを測る場合に比べて、分解能が高い磁束密度の観察を行うことができる。
また、冷却機構により試料を試料冷却保持部上で温度制御するので、観察する部分を効率的に温度制御することができ、試料全体を温度制御する場合に比べて短時間かつ安定的な温度制御を行うことができる。
ここで、偏光観察手段は、例えば偏光顕微鏡などを採用することができ、それにより、磁束密度分布に対応する偏光分布が、磁束密度に応じた輝度分布を有する濃淡画像として観察される。
また、試料冷却保持部の上流側と下流側とに、それぞれ配置された前置冷却部と後置冷却部とにより、試料を試料冷却保持部での一定温度より低温に冷却するので、試料を通じた外部からの伝熱の影響を遮断することができる。そのため、試料冷却保持部の温度を安定制御することができる。
また、試料冷却保持部での温度制御を、昇温手段を用いて行うことができるので、例えばヒータなどの簡素な機構を用いて迅速に制御することができる。
また、試料が、観察位置の上流側で、観察時の温度より冷却されるので、試料はあらかじめゼロ磁界中で冷却されるため前置冷却部から観察位置までの間の磁界により、磁束が侵入する影響を受けにくくなり、磁界中冷却の影響を排除することができる。
この発明によれば、前置冷却部、前記後置冷却部および前記試料冷却保持部が、冷却機構により伝導冷却されるので、寒剤を供給して、冷却する場合に比べて、長時間の観察が容易となる。
この発明によれば、試料の観察位置の中心が電磁マグネットの磁界の中心軸上で電磁マグネットの端部から離間して配置され、前置冷却部を電磁マグネットの径方向の端部から外部側に離間して配置される。そのため、前置冷却部から観察位置までの搬送路を電磁マグネットの径方向端部および上端部からそれぞれ離間する設定とすることができ、例えば試料冷却保持部を電磁マグネット内に配置し試料が電磁マグネットのコイル部を貫通する場合のようにコイル端部への近接部で磁界が大きくなる領域が観察前の領域に印加されてしまうことがない。その結果、試料に測定磁界よりも高い磁界が印加されることを防ぐことができる。
この発明によれば、撮像部により取得された輝度分布データが、データ変換部により磁束密度分布データに変換されるので、これら磁束密度分布データの画像処理により試料の欠陥などを高精度に解析することができる。
この発明によれば、磁束密度分布データから、高分解能の電流分布特性を算出することができる。
ここで、電流分布特性は、等電流分布、電流密度分布および臨界電流密度分布などの電流分布特性を挙げることができる。
この発明によれば、長尺の試料を、観察位置の上下流で、観察時の第2の温度より低温の第1、第3の温度とするので、試料を通じた外部からの伝熱の影響を遮断することができる。そのため、観察位置の試料を第2の温度に安定制御することができる。
また、第2の温度への温度制御が昇温制御となるので、例えばヒータなどの簡素な機構により迅速に制御することができる。
また、試料が、観察位置の上流側で、第2の温度より低い第1の温度に冷却されるので、そこから観察位置までの間の磁界により磁束侵入の影響を受けにくくなり、観察時のノイズを低減することができる。
ここで、第1の温度と第3の温度とは、異なっていてもよいが、冷温源を共通化するためには、同一温度であることが好ましい。
本発明の連続型磁束観察方法によれば、観察位置に搬送する試料を観察位置の温度より低温とするので、観察位置に到達する前に磁束侵入の影響を受けにくくなるため測定精度を向上することができるとともに、長尺の試料を介した外部からの伝熱の影響を低減することにより観察位置の試料の温度が安定制御しやすくなり、測定効率を向上することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置の概略構成について説明するための模式的な断面説明図である。図2は、本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置の主要部の構成について説明するための模式的な断面説明図である。図3(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置に用いる磁気光学膜保持部の概略構成について説明するための平面説明図およびそのA−A断面図である。図4は、本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置の制御手段の概略構成について説明するための機能ブロック図である。
線材供給部2と線材巻取り部4とは、磁束観察部3の両側に対向して設けられ、超電導線材7を磁束観察部3に挿通して図示左方向に間欠的に搬送するための試料搬送機構を構成している。
線材リール2bは、回転軸2cにより図示紙面垂直軸回りに回転可能に保持されている。
回転軸2cの図示奥行き方向には、超電導線材7への張力を適正に保つためのクラッチ2gを介して、超電導線材7を間欠駆動するための駆動モータ2dが接続されている。駆動モータ2dとしては、例えば、速度制御が容易なパルスモータなどを採用することができる。
またテンションロール2eの回転軸上には、ロータリーエンコーダ2fが設けられており、後述する制御手段6により超電導線材7の現在位置を検出できるようになっている。
線材リール4bは、回転軸4cにより図示紙面垂直軸回りに回転可能に保持されている。
回転軸4cの図示奥行き方向には、超電導線材7への張力を適正に保つためのクラッチ4gを介して、超電導線材7を間欠駆動するための駆動モータ4dが接続されている。クラッチ4g、駆動モータ4dとしては、クラッチ2g、駆動モータ2dと同様の構成を採用することができる。
筐体3aの上部には、MO膜ホルダ12の表面を観察するためのガラス製の観察窓27が設けられている。
筐体2a、3a、4aは、互いに連通する3室を形成しているが、装置稼働時には、これらの内部は不図示の真空ポンプにより真空引きされるようになっている。
線材冷却部11A、11Bは、超電導線材7の搬送速度に応じて十分な接触時間を確保することができるように、超電導線材7の搬送方向に沿って、適宜の接触面積に設定する。そして、安定接触させるために、鉛直方向の接触位置をテンションロール2e、4eよりやや上側に設け、超電導線材7の裏面側から当接して、斜め下方から搬送され、斜め下方に巻き取られる超電導線材7を線材冷却部11A、11B間で略水平方向に張架する。このため、線材冷却部11A、11Bの超電導線材7との接触部は、滑らかな湾曲面として形成される。
線材冷却部11A、11Bの材質は、熱伝導性と、超電導線材7に対する摺動特性が良好であれば、どのような金属でもよいが、本実施形態では銅の表面に金を蒸着した構成を採用している。
本実施形態では、最大100mTの磁界が印加できる構成とされる。これは、10mm幅の超電導線材7の内部まで磁束を侵入できる磁界の大きさである。
線材ガイド押え部18の材質は、表面に金が蒸着された銅を採用することができる。
線材押え部22A、22Bは、それぞれ昇降機構24により上下する昇降アーム23により上下動される。
昇降機構24は、例えば、後述する制御手段6により制御される不図示のモータと接続されたカムを採用することができる。
また、特に図示しないが、線材押え部22A、22B、昇降アーム23などは、適宜のサーマルアンカーなどにより、線材ガイド押え部18と同程度の温度に冷却されている。
温度T2は、断熱層14を介して隣接する線材ガイド押え部18の温度より高いため、温度T2に保つための昇温手段として、断熱層14との間に制御手段6により断続制御されるヒータ15が埋設されている。線材保持部13の内部には、制御手段6による温度制御に用いるための温調用温度計16が配置されている。
線材保持部13は、断熱層14を介すものの、より低温の線材ガイド押え部18に隣接するので中心位置から周辺部に向けて温度降下しやすくなっている。そのため、線材保持部13の大きさは、隣接する観察領域を線材保持部13上に保持することができるように、搬送方向には、観察領域幅の少なくとも3倍以上の長さを有することが好ましい。
線材保持部13の材質は、表面に金が蒸着された銅を採用することができる。
MO膜ホルダ12は、特に図示しないが、熱的にはサーマルアンカーにより線材保持部13と接続されることで、温度T2に近い温度とされており、超電導線材7、線材保持部13と当接したとき、迅速に温度T2に平衡するようになっている。
MO膜ホルダ12の材質は、表面に金が蒸着された銅を採用することができる。
昇降アーム20は、MO膜ホルダ12の上方では、図3(a)に示すように、上方からMO膜26を観察できる大きさの切欠きが設けられている。
そのため、MO膜26に偏光光を入射すると、MO膜26の磁性膜層の磁化に応じて、ファラデー効果により偏光方向が回転し、反射層で反射されて戻る際にさらに偏光方向が回転することにより、磁束密度分布に応じて偏光方向が大きく回転した反射光とされる。そのため、磁束密度分布が偏光分布として観察される。
磁性膜層を形成する材質としては、膜の面内に磁化容易軸を有する適宜の面内磁化磁性膜を採用することができるが、例えば、Bi置換磁性ガーネット膜を採用することができる。具体的な材質の例としては、例えば、「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス」(Japanese Journal of Applied Physics)、2005年、第44巻、第4A号、p.1734−1739、に開示されたものをすべて採用することができる。また、磁性膜層として、磁化容易軸を有しない常磁性膜を採用することもできる。例えば、EuS、EuSe、EuOなどのEuカルコゲナイドを採用することができる。
これら面内磁化磁性膜または常磁性膜の分解能は磁化の最小単位と同等なので、分解能が磁区の大きさで規制される垂直磁性膜に比べて格段に高い分解能を備える。
照明光学系50は、例えば、白色光源からなる光源50aを集光レンズ50bにより集光して偏光子50cを透過させることにより偏光顕微鏡5aに直線偏光した照明光50dを供給する手段であり、偏光顕微鏡5aの側方に設けられている。
偏光顕微鏡5aは、磁束観察部3の外部に配置されるので、観察領域の範囲を観察する視野を有し、少なくともMO膜26から観察窓27までの距離だけ離して配置できる焦点距離を備えるものであれば、どのような偏光顕微鏡でもよい。例えば、対物レンズ5c、撮像レンズ5fを備え、その間の光路上に、照明光50dを対物レンズ5cに入射させてMO膜26上に導くとともに、MO膜26からの反射光5gを透過させるビームスプリッタ5dと、反射光5gの偏光分布を磁束密度分布に対応した明暗に変換する偏光子5eとを備える構成を採用することができる。
CCD5bは、必要な分解能に応じて適宜の画素サイズのCCDを用いる。例えば、本実施形態では、観察領域が2000×2000ピクセルで、1ピクセル当たり12ビットとなるようなデータが取得できる。
CCD5bは、制御手段6と接続され、輝度分布データを制御手段6に送出する。
記憶部34に格納されたデータは、画像やグラフなどに加工された状態で、モニタ8に表示できるようになっている。
なお、搬送制御部36、冷却制御部37に対する設定値の入力などの操作は、制御手段6に接続される、例えば、キーボードなどの操作部9により行う。
図5は、本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置の観察位置近傍の試料の温度分布について説明するための模式的なグラフである。横軸は試料の長手方向の位置を示し、縦軸は試料の温度を示す。図6は、本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置の観察例を示す出力サンプルである。図7(a)は、本発明の実施形態に係る連続型磁束観察装置の試料の長手方向の連続的な観察例について説明するための出力サンプルである。図7(b)は、図7(a)に示すのと同一の測定試料をホール素子アレイ法で測定した比較例の出力サンプルである。
超電導線材7が正常な第2種超電導体であれば、臨界温度以下で磁界が排除されるので磁束は貫通することができない。その結果、超電導線材7の幅方向の端部で磁束密度分布が上昇し、印加される磁界の磁束密度の上昇とともに両端部から少しずつ磁束が侵入する。ただし、超電導線材7の内部に欠陥があると、その部分からの磁束の侵入が起こりやすくなり、等電流分布や臨界電流密度分布にも異常が現われる。
このような欠陥の評価では10μm程度の大きさの欠陥でも問題となるため、1μm以下の分解能で観察できることが好ましい。
一方、冷却制御部37により、初段冷凍部10a、2段目冷凍部10bの冷却温度がそれぞれ設定される。また、ヒータ15が作動される。
それにより、線材冷却部11A、11B、電磁マグネット19、線材ガイド押え部18などが温度T1、線材保持部13が温度T2に設定される。例えば、T1=20K、T2=40Kとする。
ヒータ15により加熱されなければ、線材冷却部11A、11Bの間の超電導線材7はやがて熱平衡に達して温度T1になる。
また搬送制御部36は、昇降機構24、21を駆動して、線材押え部22A、22B、MO膜ホルダ12をそれぞれ下降させ、それぞれ線材ガイド押え部18、線材保持部13との間で超電導線材7を挟持する。
図5は、このときの超電導線材7の温度分布を模式的に示している。図中の領域P1P2、P6P7は、それぞれ線材冷却部11A、11Bとの当接領域、領域P3P5は、観察領域を含む線材保持部13の中心部に対応する。点P4は、観察位置の中心を示す。
つまり、点P1、P7の外側では、それぞれ線材供給部2、線材巻取り部4の内部温度から温度T1まで急峻に降下し、領域P1P2、P6P7で温度T1となり、その中間で、領域P3P5で温度T2となる山形の昇温領域が形成されている。
超電導線材7の観察位置は、線材保持部13、線材ガイド押え部18を隔てて、電磁マグネット19の端部から電磁マグネット19の外部側に離間して配置されているので、電磁マグネット19のコイル部からの距離に依存する磁束密度は離間距離に応じて減衰されている。
例えば、電磁マグネット19を中空構造として、コイル部の内側の磁界を横切るように超電導線材7を搬送することを考えると、中空部の中央部で磁束密度が最低となり、径方向の外側に向かって磁束密度が増大することになる。この場合、超電導線材7は観察領域の外側で、強い磁界を受けて、それが残留し、観察位置に移動されたときに残留磁束密度が存在し、臨界電流特性を正しく検出することができなくなってしまう。
これに対して本実施形態の配置では、磁束密度はコイル部の中心軸上で最大となり、径方向の外側に向かって減衰する傾向を有する。そのため上方への離間距離を適宜に設定することで、観察領域内で磁束密度が最大となり、かつ磁束密度分布が径方向(水平方向)に平坦な磁束密度分布とすることができる。また、線材冷却部11Aも電磁マグネット19の径方向の端部から外部側に離間しているので、線材冷却部11Aから観察位置に向かう搬送路上でも、観察位置より強い磁界を通過することなく搬送される。
本実施形態では、線材冷却部11A、11Bや線材ガイド押え部18などにより磁界が及ぶ磁束観察部3内の広い範囲で、超電導線材7の温度がT2より低い温度T1とされているので、このような磁界中冷却の影響を排除することができるという利点がある。
その磁束によりMO膜26の磁化がキャントされ、直線偏光光が照射されると、ファラデー効果を受ける。すなわち磁束密度に対応する磁化方向の回転に応じて、偏光光の偏光方向が、ファラデー効果の非相反性を反映して、その2倍の角度だけ回転する。このため、偏光顕微鏡5aで観察すると、磁束密度の大きさに応じた輝度分布を有する画像が取得される。
この画像をCCD5bにより撮像し、輝度レベルに応じた輝度分布データをデータ処理部30に送出する。
このとき、隣接する観察領域の超電導線材7は、図5に示すように、温度T2よりわずかに降下した温度であり、最悪でも温度T1以上である。そのため、以下の工程では、MO膜ホルダ12を降下させてから温度平衡に達するまでの時間はきわめて短く、しかも各観察領域で略一定している。したがって間欠的な測定であっても、熱的な条件の乱れが少なくなるので、順次連続的に観察を続けることができる。
本実施形態では、観察領域の温度安定時間、すなわち測定時間間隔は、10s/cmを達成している。すなわち、測定領域の搬送方向幅Lが10mmのとき、温度平衡に要する時間は10sである。
データ変換部31に送出された、輝度分布データは、観察領域の大きさにトリミングされ、予め記憶された輝度と磁束密度との対応関係(キャリブレーションデータ)に基づいてデータ変換される。すなわちCCD5bにより読み取られた輝度データが1対1に磁束密度データに変換される。
このため、10mm×10mmの観察領域を、2000×2000ピクセル12ビットの画像として撮像することにより、0.5μm単位の分解能が得られる。
図6(a−1)、(b−1)は、磁束密度が、それぞれ、20mT、50mTにおける輝度分布データの出力サンプルである。また、図6(c−1)は、図6(b−1)の状態から磁界の印加を停止した場合の磁束の残留状態における輝度分布データの出力サンプルである。図中のWは、超電導線材7の幅寸法を示す。
図6(a−1)、(b−1)のいずれでも、中間部に高輝度の部分が見られるのが分かる。また、図6(c−1)によれば、残留状態にも同じ場所に高輝度の部分が現われている。
図6(a−2)、(b−2)、(c−2)は、それぞれ図6(a−1)、(b−1)、(c−1)のデータから算出した等電流分布である。上記の高輝度部は、電流分布としてもB部のように特異的な分布を示していることが分かる。
図7(a)は、測定された長尺の場合の出力サンプルの一例を、先頭部(図示左側)から100mm分だけ示している。測定条件は、T2=40K、磁束密度50mTである。
試料の先頭部分には明らかに磁束の侵入が大きい異常部が見られるが、図示左側では、磁束の侵入は端部から略一定の範囲に限られていることが容易に分かる。
一方、図7(b)は、同一試料を、ホール素子アレイ法により測定した比較例である。なお、この出力サンプルでは、図7(a)とは逆に、磁束が貫通する領域が低輝度で表示されている。測定条件は、T1=77K、磁束密度20mTである。
この場合、分解能が低いので、図7(a)で観察される細かい変化が平均化されてしまうことがよく分かる。
Claims (7)
- 超電導体からなる長尺の試料を観察位置に搬送し、前記試料の長手方向に沿って一定領域ごとに順次、磁束観察を行う連続型磁束観察装置であって、
前記観察位置に前記試料を間欠的に搬送する試料搬送手段と、
前記観察位置に搬送された前記試料を一定温度に調整し、保持する試料冷却保持部と、
前記観察位置の試料面に垂直方向に磁界を発生する磁界発生部と、
磁気光学効果により磁束密度分布を反射光の偏光分布に変換する、膜の面内に磁化容易軸を有する面内磁化磁気光学膜、または磁化容易軸を有しない常磁性磁気光学膜と、
該面内磁化磁気光学膜または常磁性磁気光学膜を、前記試料搬送手段による搬送動作に同期して前記試料の表面に着脱できるようにした磁気光学膜保持部と、
前記面内磁化磁気光学膜または常磁性磁気光学膜に直線偏光した光を照射する照明光学系と、
該照明光学系により前記面内磁化磁気光学膜または常磁性磁気光学膜に照射された前記光の反射光による偏光分布を観察する偏光観察手段と、
前記試料冷却保持部を温度制御することにより、前記試料を前記観察位置で前記一定温度に設定する冷却機構とを備え、
該冷却機構が、
前記試料冷却保持部に対する搬送方向の上流側と下流側とに、それぞれ前記試料を前記一定温度よりも低温に冷却する前置冷却部と後置冷却部とを備えることを特徴とする連続型磁束観察装置。 - 前記前置冷却部、前記後置冷却部および前記試料冷却保持部が、前記冷却機構により伝導冷却されることを特徴とする請求項1に記載の連続型磁束観察装置。
- 前記磁界発生部が、電磁マグネットからなり、
前記試料の観察位置の中心が、前記電磁マグネットの磁界の中心軸上で前記電磁マグネットの端部から離間して配置されるとともに、
前記前置冷却部が、前記電磁マグネットの径方向の端部から外部側に離間して配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の連続型磁束観察装置。 - 前記磁界発生部が、電磁マグネットからなり、
前記冷却機構は、前記電磁マグネットを伝導冷却することを特徴とする請求項1または2に記載の連続型磁束観察装置。 - 前記偏光観察手段が、
前記面内磁化磁気光学膜または前記常磁性磁気光学膜上の偏光分布を輝度分布として撮像する撮像部と、
該撮像部により取得された輝度分布データを磁束密度分布データに変換するデータ変換部とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の連続型磁束観察装置。 - 前記データ変換部により得られた磁束密度分布データから、電流分布特性を算出することを特徴とする請求項5に記載の連続型磁束観察装置。
- 超電導体からなる長尺の試料を観察位置に搬送し、前記試料の長手方向に沿って一定領域ごとに順次、磁束観察を行う連続型磁束観察方法であって、
前記試料を前記観察位置の上流側で第1の温度に冷却し、
前記観察位置に搬送された前記試料を、前記第1の温度より高温の第2の温度に昇温させた状態で、試料面の垂直方向に磁界を作用させ、
前記試料の表面の磁束密度分布を、磁気光学効果により反射光の偏光分布に変換する、膜の面内に磁化容易軸を有する面内磁化磁気光学膜、または磁化容易軸を有しない常磁性磁気光学膜により観察し、
前記試料を、前記観察位置の下流側で前記第2の温度より低温の第3の温度に冷却してからより下流に搬送することを特徴とする連続型磁束観察方法。
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