以下、本発明の第1実施形態を図1乃至図10を参照して説明する。図1は、本実施形態の手術機器保持装置12の全体の概略構成を示す。本実施形態の手術機器保持装置12は、手術機器14を移動可能に保持するアーム部16を有する。このアーム部16の基端部には、床等に設置されるベース部18が配設されている。このベース部18の底面には、手術機器保持装置12を床等上で移動するためのキャスターが配設されている。一方、ベース部18の上面には、筒状の支柱20が立設されている。この支柱20にはブザー部22が配設されている。
支柱20の上端部には、円筒状の第1のアーム24aの一端部が接続されている。この第1のアーム24aの他端部には、ロッド状の第2のアーム24bの一端部が接続されている。第2のアーム24bは第1のアーム24aに対して回動可能である。また、第1のアーム24aと第2のアーム24bとの接続部には、第1のアーム24aに対して第2のアーム24bを固定する固定手段としての第1の流体ブレーキ26aが配設されている。この第1の流体ブレーキ26aは、圧縮流体を供給されて作動され、第1のアーム24aに対して第2のアーム24bを固定するようになっている。さらに、第2のアーム24b、筒状の第3のアーム24c、ロッド状の第4のアーム24d、筒状の第5のアーム24eが順に同様に接続されている。そして、夫々の接続部に第2乃至第4の流体ブレーキ26b,26c,26dが配設されている。
これら第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dには、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dに圧縮流体を供給するための第1の流体チューブ28aの分岐端部が夫々接続されている。一方、第1の流体チューブ28aの延出端部は、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dへの流体の供給を制御する流体制御ユニット30に接続されている。この流体制御ユニット30から第2の流体チューブ28bが延出されている。この第2の流体チューブ28bの延出端部は、圧縮空気、圧縮窒素等を供給する流体圧力源32に接続されている。この流体圧力源32は、手術室等に通常配置されているものである。
一方、第5のアーム24eの他端部には、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dを操作するための操作部34が配設されている。この操作部34は、第5のアーム24eの他端部に一端部が接続されている柱状部36を有する。この柱状部36には第1乃至第4のスイッチ38a,38b,38c,38d(図2参照)が配設されている。また、柱状部36の他端部には、手術機器14を保持するための保持部40が配設されている。
ここで、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dが停止されている場合には、第1乃至第5のアーム24a,…,24eが互いに固体されて保持部40が固定され、保持部40に保持されている手術機器14が固定されるようになっている。この状態がアーム部16のロック状態である。一方、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dが作動されている場合には、第1乃至第5のアーム24a,…,24eが互いに可動となって保持部40が移動可能となり、保持部40に保持されている手術機器14が移動可能となる。この状態がアーム部16のフリー状態である。
本実施形態では、保持部40に内視鏡14が保持されている。代わって、手術機器14として把持鉗子等の他の手術機器を用いてもよい。保持部40には、内視鏡14の観察像を撮像可能な撮像部42が配設されている。この撮像部42は、カメラコントロールユニット46(以下、CCU46と称する)に接続されている。このCCU46は、内視鏡14の観察画像を表示するモニタ48に接続されている。
ここで、撮像部42には指標50が配設されており、この指標50はデジタイザ52によって検出可能である。このデジタイザ52は、ワークステーション54(以下、WS54と称する)に接続されている。WS54はデジタイザ52から入力される検出信号に基づいて内視鏡14の先端部の位置を算出し、予め記録されている術前画像に基づいて内視鏡14の先端部が術部内にあるか否か識別するようになっている。即ち、指標50、デジタイザ52及びWS54によって、手術機器14が術部内にあるか術部外にあるか識別する内外位置識別手段が形成されている。また、WS54は流体制御ユニット30に接続されており、識別結果を流体制御ユニット30に出力するようになっている。
図2を参照し、操作部34の第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dの配置を説明する。本実施形態では、第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dはこの順に柱状部36の中心軸Lの周方向にほぼ90°づつずらして配置されている。ここで、第1のスイッチ38aと第3のスイッチ38cとによって第1の組が構成されている。本実施形態では、第3のスイッチ38cは、中心軸Lに対して第1のスイッチ38aに対称な位置に配置されている。しかしながら、第3のスイッチ38cは、対称な位置に限定されず、中心軸Lに対して第1のスイッチ38aに対向する位置に配置されていればよい。ここで、中心軸Lを含み一方のスイッチ38を通る平面に直交し、中心軸Lを含む平面を基準面Aと称する。この基準面Aに対して、一方のスイッチ38が配置されている側とは別の側に他方のスイッチ38が配置されている場合に、他方のスイッチ38は中心軸Lに対して一方のスイッチ38に対向する位置にあると定義する。
また、第2のスイッチ38bと第4のスイッチ38dとによって第2の組が構成されている。本実施形態では、第4のスイッチ38dは、中心軸Lに対して第2のスイッチ38bに対称な位置に配置されている。しかしながら、第4のスイッチ38dは、中心軸Lに対して第2のスイッチ38bに対向する位置に配置されていればよい。また、本実施形態では、第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dは、第1の組の基準面Aと第2の組の基準面A’とが互いに直交するように配置されている。しかしながら、基準面Aと基準面A’とのなす角は任意に選択し得る。
図3を参照して、支柱20に配設されているブザー部22の構成を詳細に説明する。図3(A)に示されるように、筒状の支柱20の内面には、上下に配置されている第1及び第2の固定支持部56a,56bが突設されている。これら第1及び第2の固定支持部56a,56bの延出端部は、接続板58によって接続されている。この接続板58の、第1及び第2の固定支持部56a,56bと接続されている側の面には、ブザー60が配設されている。支柱20部の外壁の、ブザー60に対面する部分には、開口部62が形成されている。
ブザー60と開口部62との間には、音量調節板64が配置されている。この音量調節板64は、支柱20の内面において開口部62の上方及び下方で支柱20の周方向に延設されている第1及び第2のレール66a,66bに摺動自在に支持されている。即ち、音量調節板64は、第1及び第2のレール66a,66bに沿って支柱20の周方向に摺動自在となっている。図3(B)に示されるように、開口部62には複数の開口68が形成されている。この開口68はブザー60の音を外部に伝えるためのものである。上述した音量調節板64の摺動により、音量調節板64によって覆われる開口68の数を調節して音量を調節することが可能となっている。
以下、図4を参照し、手術機器保持装置12の制御系の概略構成について説明する。図4に示されるように、上述したWS54、第1乃至第4のスイッチ38a,…,38d、及び、ブザー60は、流体制御ユニット30の制御回路70に電気的に接続されている。この制御回路70は、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dへの圧縮流体の供給を実行/停止する電磁弁72に電気的に接続されている。また、制御回路70は、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dへの圧縮流体の供給速さを制御するための絞りユニット74に電気的に接続されている。
制御回路70は、第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dの内、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cの両方、あるいは、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dの両方がON/OFFにされた場合に、電磁弁72に作動信号/停止信号を出力するようになっている。そして、制御回路70は、電磁弁72に作動信号を出力する際には、WS54から入力された識別信号に基づいて、内視鏡14(図1参照)が術部外にある場合には高速回転信号、術部内にある場合には低速回転信号を絞りユニット74のモータ88に出力するようになっている。また、制御回路70は、電磁弁72に停止信号を出力する際には、逆回転信号をモータ88に出力するようになっている。さらに、制御回路70は、第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dの内、いずれか1つのスイッチ38が所定時間以上ONにされている場合には、ブザー60に発音信号を出力するようになっている。
以下、手術機器保持装置12をロック状態とフリー状態との間で移行させる構成を説明する。図4に示されるように、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dは、第1の流体チューブ28aを介して流体制御ユニット30の作動流路76aの一端部に接続されている。この作動流路76aの他端部は、作動ポート78aを介して電磁弁72に接続されている。一方、流体圧力源32は、第2の流体チューブ28bを介して流体制御ユニット30の入力流路76bの一端部に接続されている。入力流路76bの他端部は、入力ポート78bを介して電磁弁72に接続されている。なお、入力流路76bには絞りユニット74が配設されている。さらに、電磁弁72には排気流路76cの一端部が排気ポート78cを介して接続されている。この排気流路76cの他端部は大気開放されている。
図5を参照して、電磁弁72の構成を詳細に説明する。この電磁弁72は、両端が閉じられた筒形状のハウジング80を有する。このハウジング80の一端側には、排気ポート78c、作動ポート78a、入力ポート78bが一端部から順にハウジング80の軸方向に並設されている。一方、ハウジング80の他端側の内部には、ソレノイド82が配設されている。このソレノイド82は、コイル83と、このコイル83によってハウジング80の軸方向に移動される軸部85とによって形成されている。この軸部85の一端側には弁体84が連設されており、この弁体84はハウジング80の軸方向に摺動自在にハウジング80に嵌入されている。一方、軸部85の他端側とハウジング80の他端壁との間には付勢弾性部材86、例えばばねが配設されている。この付勢弾性部材86によって、弁体84がハウジング80の他端側へと付勢されている。
この付勢により、通常、弁体84は入力ポート78bを閉じる位置に配置されており、排気ポート78cと作動ポート78aとが連通されている。即ち、排気流路76c、作動流路76a、第1の流体チューブ28aを介して、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26d(図4参照)は大気開放されている。一方、ソレノイド82は制御回路70に接続されており、制御回路70から作動信号を入力された場合には、弁体84を図4中で破線により示されるようにハウジング80内で一端側へと移動させるようになっている。この配置では、弁体84は排気ポート78cを閉じる位置に配置されており、入力ポート78bと作動ポート78aとが連通されている。即ち、流体圧力源32から、第2の流体チューブ28b、入力流路76b、作動流路76a、及び、第1の流体チューブ28aを介して、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26d(図4参照)に圧縮流体を供給可能となっている。なお、ソレノイド82は制御回路70から停止信号を入力された場合には停止し、この結果、弁体84は付勢弾性部材86によって元の位置に戻されるようになっている。
ここで、第2の流体チューブ28b、入力流路76b、作動流路76a、及び、第1の流体チューブ28aによって、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26d(図4参照)に流体を供給するための供給管路が形成されている。
図6を参照して、絞りユニット74の構成を詳細に説明する。この絞りユニット74は、図6(A)及び図6(B)に示されるように、入力流路76b内に配設されているモータ88を有する。このモータ88から回転シャフト90が突出している。この回転シャフト90の先端部は、板状のシャッター92の一面の一側方に接続されている。このシャッター92の他面は、入力流路76bの内部に配設されている隔壁94に当接されている。この隔壁94には流体を流すための連通孔96が形成されている。この連通孔96はシャッター92の他面の他側方によって、ほぼ完全に塞がれている。
ここで、モータ88は制御回路70に電気的に接続されている。そして、制御回路70からモータ88に高速回転信号が入力された場合には、回転シャフト90が所定角度だけ高速回転されてシャッター92が高速で回動され(図6(C)矢印C参照)、連通孔96が閉状態から開状態へと素早く移行されるようになっている。また、制御回路70からモータ88に低速回転信号が入力された場合には、回転シャフト90が所定角度だけ低速回転されてシャッター92が低速で回動され(図6(C)矢印C参照)、連通孔96が閉状態から開状態へとゆっくり移行されるようになっている。このように、絞りユニット74は開く速さが変化可能となっている。一方、制御回路70からモータ88に逆回転信号が入力された場合には、回転シャフト90が元の状態に戻るようになっている。
図7を参照して、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dの構成を詳細に説明する。以下、第1の流体ブレーキ26aについて説明する。第2乃至第4の流体ブレーキ26b,26c,26dの構成は第1の流体ブレーキ26aの構成と同様であるため説明を省略する。
第2のアーム24bの端部にはほぼ球状のボールエンド98が配設されている。このボールエンド98は第1のアーム24aの内部に一端部から嵌入されている。ボールエンド98の、第2のアーム24b側の半球部分は、第1のアーム24aの一端部に形成されている球座100に支持されている。即ち、ボールエンド98は、自身の中心点に対して回転可能に支持されている。
筒状の第1のアーム24aの内部には、隔壁に貫通孔を形成することにより構成されているシャフト受け部102が配設されている。このシャフト受け部102には、押圧部材104の中央部をなすシャフト部104bが軸方向に摺動自在に挿通されている。このシャフト部104bのボールエンド98側の端部には押圧部104aが配設されている。この押圧部104aとシャフト受け部102の隔壁との間には圧縮弾性部材106、例えばばねが圧縮配設されている。即ち、押圧部104a(従って押圧部材104全体)はボールエンド98側へと付勢されている。この付勢によって、押圧部104aはボールエンド98の第1のアーム24a側の端部に押圧されており、ボールエンド98は球座100に対して固定されている。即ち、第1のアーム24aに対して第2のアーム24bが固定されている。
一方、シャフト部104bの押圧部104aの反対側の端部には、ピストン部104cが配設されている。このピストン部104cは第1のアーム24aの内腔に嵌合されている。シャフト部104bとシャフト受け部102の内周面との間には第1のO−リング108が配設され、ピストン部104cと第1のアーム24aの内周面との間には第2のO−リング110が配設されている。即ち、シャフト受け部102、第1のアーム24aの内周面及びピストン部104cによって、気密空間111が形成されている。ピストン部104cには、気密空間111へと圧縮流体を供給するための流入ポート112が貫通されている。この流入ポート112には、上記第1の流体チューブ28aの分岐端部の1つが接続されている。
流入ポート112から気密空間111へと圧縮流体が供給されることにより、ピストン部104c(従って押圧部材104全体)がボールエンド98から離間する方向に移動され、押圧部104aのボールエンド98に対する押圧が解除され、球座100に対するボールエンド98の固定が解除されるようになっている。この結果、第1のアーム24aに対する第2のアーム24bの固定が解除されるようになっている。このような構成のため、気密空間111への圧縮流体の供給速さが速い程、素早く固定が解除されるようになっている。なお、気密空間111が大気開放された場合には、圧縮弾性部材106によってピストン部104c(従って押圧部材104全体)が元の状態に戻り、第1のアーム24aに対して第2のアーム24bが固定されるようになっている。
このように、本実施形態では、指標50、デジタイザ52及びWS54によって、手術機器14が術部内にあるか術部外にあるか識別する内外位置識別手段が形成されている。即ち、アーム部16の状態を識別する識別手段として、内外位置識別手段が用いられている。また、第2の流体チューブ28b、入力流路76b、作動流路76a、及び、第1の流体チューブ28aによって、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dに流体を供給するための供給管路が形成されている。この供給管路に設けられている絞りユニット74は、開く速さが変化可能となっており、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dへの圧縮流体の供給速さを変化させることが可能である。ここで、制御回路は、内外位置識別手段の識別結果に基づいて絞りユニット74の開く速さを制御している。即ち、供給管路、絞りユニット74及び制御回路によって、内外位置識別手段の識別結果に基づいて、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dへの圧縮流体の供給速さを制御する供給制御手段が形成されている。また、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dは、圧縮流体の供給速さに応じた速さで第1乃至第5のアーム24a,…,24e間の固定を解除するようになっている。即ち、本実施形態では、識別手段による識別結果に基づいて、アーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間を変化させる制御手段として、供給制御手段が用いられている。
次に、上記構成の本実施形態の手術機器保持装置12の作用について説明する。本実施形態の手術機器保持装置12を使用する際には、保持部40によって内視鏡14を保持する。そして、内視鏡14を移動する際には操作部34を操作する。図8に示されるように、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cの両方、あるいは、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dの両方がONにされた場合には、以下に述べるようにアーム部16がロック状態からフリー状態に移行される。即ち、操作者は第1の組と第2の組との内、手術機器保持装置12の状態に応じて操作しやすい方の組を操作することが可能である。以下、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cがONにされたとして説明する。
第1及び第3のスイッチ38a,38cがONにされると、制御回路70は作動信号を電磁弁72のソレノイド82に出力する。作動信号を入力されたソレノイド82は弁体84をハウジング80内で移動させ、弁体84は排気ポート78cを塞いで入力ポート78bと作動ポート78aとを連通させる。この結果、入力流路76b、作動流路76a、第1の流体チューブ28a、気密空間111が連通される。
この際、デジタイザ52は保持部40の指標50を検出し、WS54に検出信号を出力している。そして、WS54は、デジタイザ52から入力された検出信号に基づいて、内視鏡14の先端部が術部外にあるか術部内にあるか識別し、識別信号を制御回路70に出力している。制御回路70は、内視鏡14が図9で矢印Dにより示される術部外にある場合には、電磁弁72への作動信号と同時に絞りユニット74のモータ88へと高速回転信号を出力する。高速回転信号を入力されたモータ88は、シャッター92を高速回動させて、連通孔96を閉状態から開状態へと素早く移行させる。この結果、流体圧力源32から、第2の流体チューブ28b、入力流路76b、作動流路76a及び第1の流体チューブ28aを介して、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dの気密空間111へと素早く圧縮流体が供給される。気密空間111に圧縮流体が素早く供給されると、押圧部材104がボールエンド98から離間する方向に素早く移動され、球座100に対するボールエンド98の固定が素早く解除される。即ち、第1乃至第5のアーム24a,…,24e間の固定が素早く解除される。この結果、アーム部16はロック状態からフリー状態へと素早く移行される。
一方、制御回路70は、内視鏡14が図9で矢印Eにより示される術部内にある場合には、電磁弁72への作動信号と同時にモータ88へと低速回転信号を出力する。この結果、シャッター92が低速回動され、連通孔96が閉状態から開状態へとゆっくり移行される。そして、流体圧力源32から気密空間111へとゆっくり圧縮流体が供給され、第1乃至第5のアーム24a,…,24e間の固定がゆっくり解除される。この結果、アーム部16はロック状態からフリー状態へとゆっくり移行される。
アーム部16がフリー状態に移行されたら、保持部40を操作して内視鏡14を所望の位置に移動させる。そして、第1及び第3のスイッチ38a,38cをOFFにする。第1及び第3のスイッチ38a,38cがOFFにされた場合には、制御信号は電磁弁72のソレノイド82に停止信号を出力し、ソレノイド82は作動を停止する。この結果、弁体84は付勢弾性部材86によって移動され、入力ポート78bが塞がれて作動ポート78aと排気ポート78cとが連通される。即ち、排気流路76c、作動流路76a、第1の流体チューブ28a、気密空間111が連通され、気密空間111が大気開放される。この結果、付勢弾性部材86の付勢によって、押圧部材104がボールエンド98に接近する方向に移動されてボールエンド98を押圧し、球座100に対してボールエンド98を固定する。即ち、第1乃至第5のアーム24a,…,24eが互いに固定され、アーム部16はフリー状態からロック状態へと移行される。このようにして、内視鏡14がその位置で固定される。
ところで、手術機器保持装置12を使用する際には、手術用顕微鏡等の他の医療用機器が併用される場合が想定される。このような場合には、機器が互いに干渉して第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dの内いずれか1つがONとされてしまう場合がある。第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dの内いずれか1つのスイッチ38が所定時間以上ONにされている場合には、制御回路70はブザー60に発音信号を出力する。この結果、ブザー60が発音されて操作者に注意を促す。
なお、ブザー60の音量は以下のように調節可能である。即ち、図3(B)中矢印Bで示されるように音量調節板64を第1及び第2のレール66a,66bに沿って移動させ、音量調節板64によって覆われる開口部62の開口68の数を調節する。覆われる開口部62の数が多いほど、ブザー60の音量は小さくなる。この音量の調節は、手術機器保持装置12を床等に設置した際に行っておく。例えば、開口部62が他の機器によって塞がれている場合や開口部62がベッド下に配置されている場合等には、操作者や助手にブザー60が聞こえにくくなるため、ブザー60の音量を大きめに調節しておく。
従って、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。絞りユニット74のモータ88が高速回転された場合には、第1乃至第4の流体ブレーキ26a,…,26dへと圧縮流体が素早く供給され、第1乃至第5のアーム24a,…,24e間の固定が素早く解除されて、アーム部16がロック状態からフリー状態へと素早く移行されている。一方、モータ88が低速回転された場合には、アーム部16がロック状態からフリー状態へとゆっくり移行されている。そして、指標50、デジタイザ52及びWS54によってアーム部16の状態を識別し、制御回路70は識別結果に基づいてモータ88の回転速度を制御している。即ち、アーム部16の状態に応じて、アーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間を制御することが可能となっている。従って、状況に応じた適切な操作が可能となっている。
具体的には、指標50、デジタイザ52及びWS54によって手術機器14の位置を識別しており、手術機器14の位置に応じた適切な操作が可能となっている。特に、指標50、デジタイザ52及びWS54によって手術機器14が術部外にあるか術部内にあるか判断し、術部外にある場合にはアーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間を短くし、術部内にある場合にはアーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間を長くしている。このため、術部外においては迅速な操作が可能となっており、術部内においては慎重な操作が可能となっている。
また、操作部34の柱状部36には、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cが柱状部36の中心軸に対して対向する位置に配置されており、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dも同様に配置されている。そして、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cの両方、あるいは、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dの両方を操作した場合に、アーム部16がロック状態とフリー状態との間で移行されるようになっている。このため、アーム部16の配置に応じて、第1の組と第2の組との内操作しやすい組を操作することが可能となっており、状況に応じた適切な操作が可能となっている。
そして、ブザー60と開口部62との間に配置されている音量調節板64を第1及び第2のレール66a,66bに沿って摺動させることにより、ブザー60の音量を調節することが可能となっている。このため、ブザー60が聞こえにくい場合には、ブザー60の音量を大きくすることにより、確実にブザー60の音を認知することが可能となっている。
図10乃至図13は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施形態では、指標50、デジタイザ52及びWS54(図1参照)は用いられていない。
図10に示されるように、本実施形態の操作部34には第1乃至第6のスイッチ38a,38b,38c,38d,38e,38fが配置されている。これら第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fは、この順に柱状部36の中心軸Lに対して周方向に60°づつずらして配置されている。ここで、第1のスイッチ38aと第3のスイッチ38cとによって第1の組が構成されている。また、第1のスイッチ38aと第4のスイッチ38dとによって第2の組が、第1のスイッチ38aと第5のスイッチ38eとによって第3の組が構成されている。ここで、第3乃至第5のスイッチ38c,…,38eは、第1のスイッチ38aに対して対向する位置にあり、かつ、互いに中心軸Lの周方向に並設されていればよく、上記配置に限定されるものではない。
同様に、各スイッチ38について、あるスイッチ38と、そのスイッチ38に対向し互いに並設されている3つのスイッチ38とによって3つの組が構成されている。図11に例示されるように、各組のスイッチ38の両方をONにすることにより、アーム部16がロック状態からフリー状態に移行されるようになっている。
図12に示されるように、本実施形態では、互いに対向する第1及び第2のブザー部22a,22bが支柱20内に配設されている。これら第1及び第2のブザー部22a,22bは、夫々、第1及び第2のブザー60a,60bを有するが、音量調節板64(図3参照)は用いられていない。
図13を参照して、本実施形態の手術機器保持装置12の制御系の概略構成を説明する。本実施形態の制御回路70は、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38f、並びに、第1及び第2のブザー60a,60bが電気的に接続されているスイッチ検出部114を有する。このスイッチ検出部114は、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fのいずれか1つが所定時間以上ONにされている場合には、第1及び第2のブザー60a,60bの両方に発音信号を出力するようになっている。
また、スイッチ検出部114は、アーム制御部116、入力時間識別手段としてのタイミング検出部118に夫々接続され、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fからの入力をアーム制御部116、タイミング検出部118に出力するようになっている。アーム制御部116は、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fの内、いずれかの組の2つのスイッチ38の両方がONにされた場合に、電磁弁72に作動信号を出力するようになっている。そして、これらスイッチ38がOFFにされた場合には、電磁弁72に停止信号を出力するようになっている。一方、タイミング検出部118は、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fの内、いずれかの組の2つのスイッチ38の一方がONにされた時刻と他方がONにされた時刻との間の時間を検出するようになっている。この時間を入力時間と称する。タイミング検出部118は、入力時間が所定の時間よりも短い場合には絞りユニット74に高速回転信号を出力し、長い場合には絞りユニット74に低速回転信号を出力するようになっている。
即ち、本実施形態では、アーム部16の状態を識別する識別手段として、入力状態を識別する入力状態識別手段、具体的には入力時間を識別するタイミング検出部118が用いられている。
次に、上記構成の本実施形態の手術機器保持装置12の作用について説明する。本実施形態の手術機器保持装置12によって内視鏡14を移動する際には、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fから構成される組のいずれかの組の2つのスイッチ38の両方をONにする。ここで、操作者は操作しやすい組を選択することが可能である。さらに、例えば、第1のスイッチ38aを選択した場合には、第3乃至第5のスイッチ38c,38d,38eの内から任意のスイッチ38を選択することが可能である。即ち、1つのスイッチ38を選択した場合には、そのスイッチ38と対向する3つのスイッチ38の内の操作しやすい1つのスイッチ38を選択することが可能である。2つのスイッチ38がONにされた場合には、アーム制御部116から電磁弁72へと作動信号が出力される。
2つのスイッチ38がONにされる際に、入力時間が所定時間より短ければタイミング検出部118は絞りユニット74に高速回転信号を出力する。一方、入力時間が所定時間より長ければタイミング検出部118は絞りユニット74に低速回転信号を出力する。ここで、内視鏡14を迅速に操作する必要がある場合、例えば内視鏡14が術部外にある場合には、操作者は自身で何ら意識することなく2つのスイッチ38を迅速に操作することになる。この結果、入力時間は短くなり、絞りユニット74に高速回転信号が出力されるため、アーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間は短くなる。即ち、内視鏡14の移動が迅速に行える。一方、内視鏡14を慎重に操作する必要がある場合、例えば内視鏡14が術部内にある場合には、操作者は自身で何ら意識することなく2つのスイッチ38をゆっくり操作することになる。この結果、入力時間は長くなり、アーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間は長くなる。即ち、内視鏡14の移動が慎重に行える。このように、操作者は、自身で何ら意識することなく、所望の操作を実現することとなる。もちろん、操作者は意識的に入力時間を変化させることも可能である。
第1実施形態と同様に、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fの内いずれか1つのスイッチ38が所定時間以上ONにされている場合には、第1及び第2のブザー60a,60bが発音されて操作者に注意を促す。なお、第1及び第2のブザー部22a,22bは支柱20の互いに対向する位置にあるので、一方のブザー部22が機器等によって塞がれても、充分なブザー60の音量を確保することが可能である。
従って、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。タイミング検出部118は、操作部34への入力状態を識別し、識別結果に基づいてモータ88の回転速度を制御している。即ち、操作部34への入力状態に応じて、アーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間を制御することが可能となっている。このため、入力状態に応じた適切な操作が可能となっている。特に、入力時間が所定の時間よりも短い場合にはアーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間を短くし、長い場合にはアーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間を長くしている。このため、入力時間を意識的に変化させることにより、迅速な操作と慎重な操作とを選択することが可能となっている。
なお、内視鏡14を迅速に操作する必要がある場合には、操作者は自身で何ら意識することなく2つのスイッチ38を迅速に操作することとなる。この結果、入力時間は短くなって、アーム部16の移行時間は短くなり、内視鏡14の移動が迅速に行えるようになっている。一方、内視鏡14を慎重に操作する必要がある場合には、操作者は自身で何ら意識することなく2つのスイッチ38をゆっくり操作することとなる。この結果、入力時間は長くなり、アーム部16の移行時間は長くなり、内視鏡14の移動が慎重に行える。このように、操作者は、入力時間を意識的に変化させなくても、自動的に所望の操作を実現することが可能となっている。
また、第1乃至第6のスイッチ38a,…,38fによって、第1実施形態よりもはるかに多い組が構成されている。このため、第1実施形態よりも選択し得る操作位置が増大されており、状況に応じて一層適切な操作を行うことが可能となっている。また、例えば、第1のスイッチ38aと、中心軸Lに対して第1のスイッチ38aに対向し互いに周方向に並設されている第3及び第5のスイッチ38c,38d,38eとによって、第1乃至第3の組が構成されている。このため、第1のスイッチ38aを選択した際には、第3乃至第5のスイッチ38c,38d,38eのいずれかを選択すればよく、操作位置をさらに微細に選択することが可能となっている。
そして、支柱20において、第1及び第2のブザー部22a,22bが互いに対向する位置に配設されている。このため、一方のブザー部22が塞がれてしまった場合等であっても、確実にブザー60の音を認知することが可能となっている。
図14乃至図16は、本発明の第3実施形態を示す。第1実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。図14に示されるように、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dは、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cと形状が異なっている。本実施形態では、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dは、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cよりも大きくなっている。代わって、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cを角型、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dを丸型というようにしてもよい。
図15(A)に示されるように、内視鏡14は、保持部40に形成されている保持孔120に装着されるようになっている。即ち、内視鏡14の基端部の外周面には雄ねじが形成され、保持孔120を規定する内周面には雌ねじが形成され、互いに螺合するようになっている。また、内視鏡14が保持部40に装着されていない場合には、保持孔120を介して撮像部42によってマクロ観察を行うことが可能となっている。
さらに、図15(B)に示されるように、保持孔120を規定する内周面には押圧ピン122が突設されている。この押圧ピン122は支持弾性部材124、例えばばねの一端部によって突没自在に支持されている。支持弾性部材124の他端部には内視鏡検出スイッチ126が配設されており、この内視鏡検出スイッチ126は押圧ピン122が押下された場合にONにされるようになっている。
図16に示されるように、本実施形態のブザー部22では、音量調節板64は用いられていない。また、第1及び第2の固定支持部56a,56b(図3(A)参照)に代わって第1及び第2の可動支持部128a,128bが用いられている。これら第1及び第2の可動支持部128a,128bは、夫々、支柱20の内面において開口部62の上方及び下方で支柱20の周方向に延設されている第1及び第2の支持レール130a,130bに摺動自在に支持されている。即ち、ブザー部22は、支柱20の周方向に摺動自在となっている。摺動されるブザー60に対面するように、支柱20の周方向に貫通溝130が延設されている。この貫通溝130はブザー60の音を外部に伝えるためのものである。また、接続板58にはブザー部22を摺動操作するための操作棒132がブザー60と並んで突設されており、この操作棒132の延出端部は貫通溝130を介して支柱20から突出されている。
図17に示されるように、内視鏡検出スイッチ126は制御回路70に接続されている。制御回路70は、電磁弁72に作動信号を出力するのと同時に、内視鏡検出スイッチ126がOFFにされている場合には、絞りユニット74に高速回転信号を出力するようになっている。一方、制御回路70は、内視鏡検出スイッチ126がONにされている場合には、絞りユニット74に低速回転信号を出力するようになっている。
即ち、本実施形態では、押圧ピン122、支持弾性部材124及び内視鏡検出スイッチ126によって、アーム部16が手術機器14を保持しているか否かを識別する機器識別手段が形成されている。そして、アーム部16の状態を識別する識別手段として、機器識別手段が用いられている。
次に、上記構成の本実施形態の手術機器保持装置12の作用について説明する。本実施形態の手術機器保持装置12によって保持部40を移動する際には、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cの両方、あるいは、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dの両方をONにする。この際、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cと第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dとは形状が異なるため、操作しようとしているスイッチ38がいずれの組に属するか視覚又は触覚により判断できる。以下、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cの両方がONにされるとして説明する。
手術機器保持装置12の撮像部42によって術部のマクロ観察を行う際には、保持部40から内視鏡14を取り外す。この結果、内視鏡検出スイッチ126がOFFにされる。この状態で、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cをONにすると、制御回路70から絞りユニット74へと高速回転信号が出力される。この結果、アーム部16がロック状態からフリー状態へと素早く移行される。この後、保持部40を操作して観察に適した位置に撮像部42を移動させる。
一方、内視鏡14によって術部内を観察する場合には、保持部40に内視鏡14を装着する。この結果、内視鏡検出スイッチ126がONにされる。この状態で、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cをONにすると、制御回路70から絞りユニット74へと低速回転信号が出力される。この結果、アーム部16がロック状態からフリー状態へとゆっくり移行される。この後、保持部40を操作して観察に適した位置に内視鏡14を移動させる。
第1実施形態と同様、第1乃至第4のスイッチ38a,…,38dの内いずれか1つのスイッチ38が所定時間以上ONにされている場合には、ブザー60が発音されて操作者に注意を促す。ここで、ブザー部22が他の機器によって塞がれる場合等には、ブザー部22を移動させて、操作者や助手にブザー60の音を聞こえやすくする。即ち、操作棒132の延出端部を操作して、図16(B)及び図16(C)に示されるように、ブザー部22を第1及び第2のレール66a,66bに沿って図中矢印Fで示される第1の位置と図中矢印Gで示される第2の位置との間で移動させる。
従って、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。手術用顕微鏡の撮像部42によってマクロ観察を行う場合には、保持部40によって内視鏡14を保持していない。この結果、内視鏡検出スイッチ126がOFFにされ、アーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間が短くなっている。このため、マクロ観察を行う際には、保持部40を迅速に移動させることが可能となっている。一方、内視鏡14によって術部内の観察を行う場合には、保持部40によって内視鏡14を保持している。この結果、内視鏡検出スイッチ126がONにされ、アーム部16のロック状態からフリー状態への移行時間が長くなっている。このため、術部内の観察を行う際には、内視鏡14を慎重に操作することが可能となっている。このように、マクロ観察の場合と術部内の観察の場合とで自動的に移行時間が変化されるため、状況に応じた適切な操作が可能となっている。
また、第2の組の第2及び第4のスイッチ38b,38dは、第1の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cよりも大きくなっている。このため、スイッチ38がいずれの組に属するか容易に判断することが可能となっている。また、操作状況により操作部34を視覚で観察することが難しい場合には、触覚によりスイッチ38がいずれの組に属するか判断することが可能となっている。従って、操作性が向上されている。
さらに、ブザー部22を操作して、支柱20の周方向に移動させることが可能となっている。即ち、ブザー60からの音が他の機器等によって遮られないように調節することが可能となっている。このため、音の指向性が高まり、確実にブザー60の音を認知することが可能となっている。
図18乃至図21は、本発明の第4実施形態を示す。第1実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。図18(A)に示されるように、本実施形態の柱状部36には第1乃至第3のスイッチ38a,38b,38cが配設されている。この第1のスイッチ38aは、柱状部36の中心軸Lに対して保持部40が配設されている側に配置されている。一方、第2及び第3のスイッチ38b,38cは中心軸Lに対して第1のスイッチ38aとは逆の側に配置されている。そして、第3のスイッチ38cは第2のスイッチ38bよりも保持部40側に配置されている。さらに、図18(B)に示されるように、第2のスイッチ38bは、中心軸Lに対して第1のスイッチ38aに対称な位置に配置されている。第3のスイッチ38cは中心軸Lの方向に第2のスイッチ38bと並設されている。
ここで、第1及び第2のスイッチ38a,38bにより第1の組が、第1及び第3のスイッチ38a,38cにより第2の組が構成されている。図19に示されるように、第1の組の第1及び第2のスイッチ38a,38bの両方、あるいは、第2の組の第1及び第3のスイッチ38a,38cの両方をONにすることにより、アーム部16がロック状態からフリー状態へと移行されるようになっている。
次に、上記構成の本実施形態の手術機器保持装置12の作用について説明する。手術機器保持装置12によって内視鏡14を移動する際には、図20に示されるように、操作者136、患者138及び内視鏡14は様々に配置される。例えば、図20(A)に示されるように患者138に対して操作者136と内視鏡14とが同じ側に位置する場合や、図20(B)に示されるように患者138に対して操作者136と内視鏡14とが対向して位置される場合がある。
図20(A)に示されるように患者138に対して操作者136と内視鏡14とが同じ側に位置している場合には、保持部40が配設されている側とは反対側から柱状部36を保持する。この場合、スイッチ38を操作する際には、図21(A)に示されるように、親指で第2のスイッチ38bを操作し他の指で第1のスイッチ38aを操作することとなる。一方、図20(B)に示されるように患者138に対して操作者136と内視鏡14とが対向して位置している場合には、保持部40が配設されている側から柱状部36を保持する。この場合、スイッチ38を操作する際には、図21(B)に示されるように、親指で第3のスイッチ38cを操作し他の指で第1のスイッチ38aを操作することとなる。
従って、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。第1のスイッチ38aは柱状部36の中心軸Lに対して保持部40が配設されている側に配置され、第2及び第3のスイッチ38cは中心軸Lに対して第1のスイッチ38aとは逆の側で中心軸Lの方向に並設されている。ここで、第2のスイッチ38bが設けられていない場合には、患者138に対して操作者136と内視鏡14とが同じ側に位置している際にスイッチ38を操作しにくい。また、第3のスイッチ38cが設けられていない場合には、患者138に対して操作者136と内視鏡14とが対向して位置している際にスイッチ38を操作しにくい。本実施形態では、患者138に対して操作者136と内視鏡14とが同じ側に位置するか対向して位置するかにかかわらず、スイッチ38を容易に操作することが可能となっている。このため、操作性が向上されている。
図22は、本発明の第5実施形態を示す。第4実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。図22に示されるように、柱状部36の先端部には、中心軸Lに対して保持部40が配置されている側へと傾斜する傾斜部134が形成されている。第3のスイッチ38cは傾斜部134に配設されている。本実施形態でも、患者に対して操作者と内視鏡14とが対向して位置している場合には、保持部40が配設されている側から柱状部36を保持する。この場合、親指で傾斜部134に配設されている第3のスイッチ38cを操作し他の指で第1のスイッチ38aを操作することとなる。このため、第4実施形態よりも親指が置きやすく、操作性が一層向上されている。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1−1)前記識別手段は、前記アーム部に保持されている前記手術機器の位置を識別する位置識別手段を有することを特徴とする請求項1の手術機器保持装置。
(付記項1−2)前記位置識別手段は、前記手術機器が術部内にあるか術部外にあるかを識別する内外位置識別手段を備え、前記制御手段は、前記手術機器が術部内にある場合には術部外にある場合よりも前記移行時間を長くすることを特徴とする付記項1−1の手術機器保持装置。
(付記項1−3)前記識別手段は、前記操作部への入力状態を識別する入力識別手段を有することを特徴とする請求項1の手術機器保持装置。
(付記項1−4)前記入力識別手段は、前記操作部への入力時間を識別する入力時間識別手段を備え、前記制御手段は、前記入力時間が長い場合には短い場合よりも前記移行時間を長くすることを特徴とする付記項1−3の手術機器保持装置。
(付記項1−5)前記識別手段は、前記アーム部が前記手術機器を保持しているか否かを識別する機器識別手段を有し、前記制御手段は、前記アーム部が前記手術機器を保持している場合には保持していない場合よりも前記移行時間を長くすることを特徴とする請求項1の手術機器保持装置。
(付記項1−6)前記アーム部は、複数のアームと前記アームを互いに可動に接続している接続部とを有し、前記固定手段は、前記接続部に設けられている流体ブレーキを有し、前記流体ブレーキは、前記アームを互いに固定し流体を供給されて流体の供給速さに応じた速さで前記アーム間の固定を解除し、前記制御手段は、前記流体ブレーキへの流体の供給速さを制御する供給制御手段を有する、ことを特徴とする請求項1の手術機器保持装置。
(付記項1−7)前記供給制御手段は、前記流体ブレーキへ流体を供給する供給管路と、前記供給管路に設けられ開く速さが変化可能な絞りユニットとを備えることを特徴とする付記項1−6の手術機器保持装置。
(付記項1−8−1の背景技術)特許文献1の手術器具保持装置は、アーム部をロック状態とフリー状態との間で移行させるための操作部を有する。この操作部は、アーム部の先端部のアームにおいて、アームの中心軸に対称な位置に配置されている2つのスイッチにより形成されている。また、特許文献1の別の手術器具保持装置では、上記スイッチを保持部に回動可能に配設している。内視鏡を保持する手術器具保持装置について具体的に説明すると、内視鏡の中心軸に対して軸回り方向に回転可能な筒状の回転体を保持部に配設し、この回転体の外周部に内視鏡の中心軸に対して対称に2つのスイッチを配設している。この結果、術者は、回転体を回転操作することにより、保持部に対して所望の位置でスイッチを操作することが可能となっている。
(付記項1−8−1の課題)手術操作においては、手術機器保持装置は様々な状況におかれるが、各々の状況において要求される操作を適切に行うことが可能であることが好ましい。例えば、手術器具保持装置が様々な配置におかれるが、各々の配置において迅速かつ容易にスイッチを操作することが要求される。しかしながら、特許文献1の手術器具保持装置では、容易にスイッチを操作するためには術者自身が回転体を回転操作する必要があり、迅速な操作が妨げられる。このように、特許文献1の手術機器保持装置は状況に応じた適切な操作が可能とは言い難い。
(付記項1−8−1)手術機器を移動可能に保持するアーム部と、前記アーム部に設けられ、前記アーム部を固定あるいは固定解除して前記アーム部を前記手術機器を固定するロック状態と前記手術機器を移動させるフリー状態との間で移行させる固定手段と、前記アーム部に形成されている柱状部と、前記柱状部の外周部に配置され、前記固定手段を操作するための少なくとも3つのスイッチと、を具備し、前記少なくとも3つのスイッチは、前記柱状部の中心軸に対して対向する位置に配置されている2つのスイッチからなる組が少なくとも2組構成されているように配置されており、前記組の2つのスイッチの両方を操作することにより前記固定手段が前記アーム部をロック状態とフリー状態との間で移行させる、ことを特徴とする手術機器保持装置。
(付記項1−8−1の作用)少なくとも2組のスイッチの組の内、操作しやすいスイッチの組の2つのスイッチの両方を操作することにより、アーム部をロック状態とフリー状態との間で移行させて手術機器を所望の位置に移動して固定する。
(付記項1−8−2)前記少なくとも3つのスイッチは、少なくとも4つのスイッチであり、前記少なくとも4つのスイッチは、第1の前記組と、前記第1の組のスイッチとは別のスイッチからなる第2の組とを有することを特徴とする付記項1−8−1の手術機器保持装置。
(付記項1−9)前記第1の組のスイッチの形状は、前記第2の組のスイッチの形状と異なっていることを特徴とする付記項1−8−2の手術機器保持装置。
(付記項1−10)前記少なくとも3つのスイッチは、第1のスイッチと第2のスイッチとからなる第1の前記組と、前記第1のスイッチと第3のスイッチとからなる第2の前記組とを有することを特徴とする付記項1−8−1の手術機器保持装置。
(付記項1−11)前記第2のスイッチと前記第3のスイッチとは、前記中心軸の周方向に並設されていることを特徴とする付記項1−10の手術機器保持装置。
(付記項1−12)前記第2のスイッチと前記第3のスイッチとは、前記中心軸の軸方向に並設されていることを特徴とする付記項1−10の手術機器保持装置。
(付記項1−13)手術機器を移動可能に保持するアーム部と、前記アーム部に設けられ、前記アーム部を固定あるいは固定解除して前記アーム部を前記手術機器を固定するロック状態と前記手術機器を移動させるフリー状態との間で移行させる固定手段と、前記アーム部の状態を識別する識別手段と、前記識別手段による識別結果に基づいて、前記固定手段を制御して前記アーム部のロック状態からフリー状態への移行時間を変化させる制御手段と、前記アーム部に形成されている柱状部と、前記柱状部の外周部に配置され、前記固定手段を操作するための少なくとも3つのスイッチと、を具備し、前記少なくとも3つのスイッチは、前記柱状部の中心軸に対して対向する位置に配置されている2つのスイッチからなる組が少なくとも2組構成されているように配置されており、前記組の2つのスイッチの両方を操作することにより前記固定手段が前記アーム部をロック状態とフリー状態との間で移行させる、ことを特徴とする手術機器保持装置。
(付記項2−1)先端に内視鏡などの手術具を把持可能な多関節のアームを有するアーム保持部と、アーム保持部に設けられたアーム固定保持手段と、アーム固定保持手段に動力を供給するアーム動力供給手段と、アーム固定保持手段の操作を行う複数の操作入力部と、アーム制御手段に識別信号を伝達する観察識別手段と、操作入力部に基いてアーム固定保持手段を制御するアーム制御手段と、観察識別手段に基いて、アーム動力供給手段の動作状態を制御するアーム動力供給制御手段と、を有する手術機器保持装置。
(付記項2−2)付記項2−1の観察識別手段は、内視鏡の位置を検出可能な位置検出手段である。
(付記項2−3)付記項2−1の観察識別手段は、操作入力部の入力時間差を検出する操作入力検出手段である。
(付記項2−4)付記項2−1のアーム制御手段は、少なくとも一つの隣り合わないスイッチが操作されたことを検出し、動作する。
(付記項2−5)付記項2−1のアーム制御手段は、アーム保持部の中心を通る軸に対し、対向した少なくとも2つのスイッチを検出し、動作する。
(付記項2−6)付記項2−1のアーム動力供給制御手段は、動力供給の速度を変化させるものである。
14…手術機器、16…アーム部、26a,26b,26c,26d…固定手段、28a,28b,74,76a,76b…制御手段、36…柱状部、38…スイッチ、50,52,54(118)(122,124,126)…識別手段。