JP4576505B2 - 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置 - Google Patents

血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4576505B2
JP4576505B2 JP2004303945A JP2004303945A JP4576505B2 JP 4576505 B2 JP4576505 B2 JP 4576505B2 JP 2004303945 A JP2004303945 A JP 2004303945A JP 2004303945 A JP2004303945 A JP 2004303945A JP 4576505 B2 JP4576505 B2 JP 4576505B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
concentration
value
specific component
measuring
blood sample
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2004303945A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005148058A (ja
Inventor
幸司 杉山
毅 高木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Arkray Inc
Original Assignee
Arkray Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Arkray Inc filed Critical Arkray Inc
Priority to JP2004303945A priority Critical patent/JP4576505B2/ja
Publication of JP2005148058A publication Critical patent/JP2005148058A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4576505B2 publication Critical patent/JP4576505B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Description

本発明は、血球を含む血液試料中の特定成分(たとえばグルコース)の濃度を測定する技術に関する。
血液試料中の特定成分、たとえばグルコースの濃度を測定する方法としては、電極法と呼ばれる方法がある。この方法は、血液試料中のグルコース濃度に相関した情報を、血液試料に接触させた電極に出力させ、この出力に基づいてグルコース濃度を演算する方法である。電極法は、平衡点法(エンドポイント法)および微分法(レート法)に大別することができる。平衡点法は、電極からの出力の経時的変化が一定値に漸近するときの平衡値に基づいてグルコース濃度を演算する方法である。一方、微分法は、出力をn回微分(nは正の整数)したときの極大値に基づいてグルコース濃度を演算する方法である。
一般的な電極法においては、血液試料として血球を含んだ全血を用いる場合には、血球の影響を受けて測定値が低値化することが知られている。そのため、血液中のグルコース濃度を測定する場合には、全血を遠心分離して血球を除去した血漿(または血清)が血液試料として用いられている。この方法では、血液試料を調製するために遠心分離が必要となって操作が煩雑化するとともに、試料の調製も含めた測定操作の全体に要する時間が長くなるといった問題がある。このような問題を解決しようとするものとして、平衡点法における演算結果と微分法における演算結果とを関連付ける方法が考えられている(たとえば特許文献1−3参照)。
特許文献1に開示された方法は、全血を希釈したものを血液試料として使用する場合において、血球の存在により見かけの希釈率が真の希釈率と異なっていることに着眼したものである。この方法では、微分法においてグルコース濃度を演算する場合には、極大値に対応する出力を得るまでの間に、血球内から血球外に拡散されるグルコースの量は無視できるほど小さいとの前提に立っている。これに対して、特許文献2および特許文献3に開示された方法は、微分法においてグルコース濃度を演算する場合に、極大値に対応する出力を得るまでの間に、血球外に拡散されるグルコースの総量を考慮したものである。血球外に拡散されたグルコースの総量は、ヘマトクリット(赤血球の割合)に関連付けられている。
上述したいずれの方法においても、測定精度を低下させる原因をヘマトクリットのみに求めている。その結果、従来の方法においては、血液中のグルコース濃度が比較的に低い場合(たとえば400mg/dL以下)には、血漿(または血清)を用いてグルコース濃度を測定した場合との相関性が高い。その反面、血液中のグルコース濃度が比較的に高い場合(たとえば500mg/dL以上)には、血漿(または血清)を用いてグルコース濃度を測定した場合との相関性が低く、依然として測定値が低値化する傾向にある。そのため、上述した方法では、高濃度域における測定精度、ひいては測定レンジに関して改善の余地があった。
特公平7-37991号公報 特開平9-33533号公報 特公平9-318634号公報
本発明は、遠心分離などの煩雑な操作を行うことなく、血球を含んだ血液試料中の特定成分(たとえばグルコース)の濃度を、高濃度域(たとえばグルコースの場合で500mg/dL程度)において精度良く測定できるようにし、測定レンジを広く確保できるようにすることを課題としている。
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、本発明者らは、血球内から血球外への特定成分(たとえばグルコース)の拡散は、血球膜の媒介輸送(促進拡散)であるという知見を得、本発明をするに至った。ここで、促進拡散における拡散速度は、血球膜の拡散能力に依存する。そのため、血球外への特定成分(たとえばグルコース)の拡散速度は、血球内外の特定成分の濃度差に比例する単純拡散ではなく、限界値を有している。すなわち、血球内外での特定成分の濃度差が一定値以上の場合には、特定成分の濃度差の大小に拘らず、血球内の特定成分(たとえばグルコース)を血球外(血漿中)に拡散させることのできる速度が一定となる。したがって、血球外に拡散される特定成分(たとえばグルコース)の総量は、血球量(ヘマトクリット)のみに関連付けるだけでは不十分であり、血球膜における特定成分(たとえばグルコース)の輸送能力を考慮して求める必要がある。このような必要性は、拡散速度が限界値またはそれに近い値となる特定成分が高濃度な場合において、より高いものとなる。
そこで、本発明では、血球を含む血液試料中の特定成分の濃度を測定するにあたり、上記特定成分が血球内から血球外に拡散する拡散速度を考慮して、上記特定成分の濃度を演算する、血液試料における特定成分の濃度測定方法であって、上記拡散速度(V)は、下記数式1に示すミカエリスメンテンの式に関連付けたものであり、検知媒体を介して当該検知媒体と上記特定成分との間の電子授受量に相関した出力値を得る一方で、この出力値の経時的変化が一定値に漸近するときの平衡値に基づいて上記特定成分の濃度(C EP )を演算する第1ステップと、上記出力値が上記平衡値に達するまでの間において、上記出力値の経時的変化を示す曲線のn回微分値(nは正の整数)における極大値に基づいて上記特定成分の濃度(C DI )を演算する第2ステップと、上記数式1において、ΔSを最終的な上記特定成分の濃度の演算値(C GL )から平衡値に基づいて上記特定成分の濃度(C EP )を差分したものとして上記特定成分の濃度を演算する第3ステップと、を含んでおり、上記第3ステップにおいては、最終的な特定成分の濃度演算値(C GL )と上記平衡値に基づいて演算した特定成分の濃度(C EP )との差分値(C GL −C EP )を、上記平衡値に基づいて演算した特定成分の濃度(C EP )と上記極大値に基づいて演算した特定成分の濃度(C DI )との差分値(C EP −C DI )に関連付けた下記数式2に基づいて、最終的な特定成分の濃度演算値(C GL )を得ることを特徴とする、血液試料における特定成分の濃度測定方法が提供される。上記第1ステップは、平衡点法に相当し、上記第2ステップは、微分法に相当する。第2ステップにおける微分回数は、好ましくは1回または2回とされる。
Figure 0004576505
Figure 0004576505
本発明の濃度測定方法では、たとえば特定成分と検知媒体との間の電子授受量に基づいて特定成分の濃度が演算される。検知媒体には、たとえば電極法においては電極自体または電極を含むグルコースセンサなどのバイオセンサが該当し、比色法においては色素などの発色剤が該当する。ここで、電極法においては、たとえば検知媒体からの出力は、検知媒体に対して刺激(たとえば電気的物理量(電圧など))を与えたときの応答(たとえば電気的物理量(電流値など))として取得することができる。一方、比色法においては、検知媒体(発色剤)に対して光を照射したときの反射光または透過光の光量として検知媒体(発色剤)からの出力を得ることができる。
本発明の濃度測定方法は、典型的には特定成分としてのグルコースの濃度を測定するような場合に適用することができ、その他にカリウムイオンあるいはLDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ)などの血球内に存在する成分の濃度を測定する場合にも適用することもできる。
本発明においてはさらに、血球を含む血液試料中の特定成分の濃度を測定するための装置であって、上記特定成分の濃度を反映した応答値を測定するための測定手段と、上記応答値が一定値に漸近するときの平衡値を把握し、この平衡値に基づいて第1濃度(CEP)を演算する演算手段と、を備えた濃度測定装置において、上記演算手段は、上記応答値の経時的変化の曲線をn回微分(nは正の整数)してn回微分時の極大値を把握し、この極大値に基づいて第2濃度(CDI)を演算し、かつ下記数式3にしたがって最終的な特定成分の濃度(CGL)を演算するように構成されていることを特徴とする、濃度測定装置が提供される。
Figure 0004576505
測定手段は、たとえば特定成分と検知媒体との間の電子授受量として測定するように構成される。測定手段は、検知媒体に対して刺激(たとえば電位差)を与えたときの応答(電流値)を測定するように構成される。より具体的には、測定手段は、たとえば酸化還元酵素が固定化されたセンサ部と、電流値を測定するための電流値測定部と、を有するものとされる。
測定手段は、検知媒体として発色剤を使用し、光学的手法により応答を測定するように構成することもできる。
本発明の濃度測定装置は、典型的には特定成分としてのグルコースの濃度を測定するように構成され、カリウムイオンあるいはLDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ)などの濃度を測定するように構成することもできる。
なお、本発明においては、特段の制限がない限りは、血液試料という場合には、少なくとも全血、全血の希釈液、全血を遠心分離したときの上澄み、この上澄みの希釈液を含んでいる。
図1に示したグルコース濃度測定装置1は、全血を用いてグルコース濃度を測定するものであり、測定ユニット2において血球を含む血液試料(全血の希釈液)中のグルコース濃度に応じた情報を得るように構成されている。測定ユニット2は、反応槽20、センサ部21、電源22および電流値測定部23を有している。
反応槽20は、全血と緩衝液を混合して血液試料を調製する場を提供するとともに、センサ部21に対して血液試料に含まれるグルコースを接触させる場を提供するためのものである。グルコース濃度測定装置1においては、反応槽20に対しては、全血および緩衝液が自動的に供給され、反応槽20からは測定終了後の血液試料(廃液)が排出されるように構成されている。グルコース濃度測定装置1においては、反応槽20に対しては先に緩衝液が供給され、その後に全血が供給される。反応槽20に対する全血の供給は、サンプラー(図示略)のノズル30を介して行われる。全血の供給量は、たとえば4〜20μLに設定される。反応槽20に対する緩衝液の供給はポンプ31の動力を利用して行われ、反応槽20からの廃液の排出はポンプ32の動力を利用して行われる。反応槽20に対して緩衝液を供給し得る状態と供給し得ない状態とはバルブ33の開閉によって選択され、反応槽20から廃液を排出し得る状態と排出し得ない状態とはバルブ34の開閉によって選択される。
反応槽20には、攪拌子35が収容されている。この攪拌子35は、反応槽20に緩衝液と全血とを供給したときに、それらを攪拌・混合するためのものであり、スターラ36によって回転させられるものである。
センサ部21は、血液試料におけるグルコースとの電子授受量に応じた電気的物理量を出力するものであり、繰り返しの使用が可能なように構成されている。このセンサ部21は、図面上には表れていないが、たとえば酵素固定化層および電極を有している。酵素固定化層は、たとえばグルコースオキシダーゼ(GOD)またはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含んだものとして構成される。一方、電極の構成は、酵素固定化層に含まれる酵素の種類に応じて選択される。たとえば、酵素としてGODを用いる場合には、電極として過酸化水素電極が使用される。
電源22は、センサ部21の電極に対して電圧を印加するためのものである。電源22としては、たとえば直流電源が使用され、電極に対する印加電圧は、たとえば100〜500mVに設定される。
電流値測定部23は、センサ部21の電極とグルコースとの間の電子授受量を電流値として測定するためのものである。ここで、酵素としてGODが使用され、電極として過酸化水素電極が使用される場合を考えると、センサ部21の酵素固定化層においては、GODの作用によってグルコースがグルコン酸と過酸化水素に分解される。過酸化水素は、センサ部21の電極に対する電圧の印加によって還元され、陽極に電子を供与して酸素と水素イオンに分解される。このとき、陽極に供与された電子によって陽極と陰極との間に電流が流れ、そのときの電流が電流値測定部23において測定される。電流値測定部23では、反応槽20に全血が供給された時点を0とすれば、図3に示したようなタイムコースとして電流が測定される。
図2に示したように、グルコース濃度測定装置1は、制御部4および演算部5をさらに備えている。
制御部4は、各部の動作を制御するためのものである。より具体的には、制御部4は、ノズル30の移動および全血の吸引・吐出動作、ポンプ31,32の動作、バルブ33,34の開閉動作、スターラ36(攪拌子35(図1参照)の回転あるいは非回転)を制御する。この制御部4はさらに、測定ユニット2の動作をも制御する。より具体的には、制御部4は、図1に示した電源22を制御してセンサ部21の電極に電圧が印加される状態と印加されない状態とを選択し、電流値測定部23を制御して、電流値を測定するタイミングを制御する。電流値測定部23は、たとえば50〜200μsecの間隔で繰り返し電流値を測定するように制御部4によって測定動作が制御される。
一方、図2に示した演算部5は、電流値測定部23(図1参照)における測定結果に基づいて、全血中のグルコース濃度を演算するためのものである。この演算部5は、演算に必要なプログラムを記憶したものであり、その動作は制御部4によって制御される。本実施の形態においては、演算部5は、下記数式4として示した演算式に基づいて全血中のグルコース濃度(CGL)の演算を行うように構成されている。
Figure 0004576505
数式4において、CEPは平衡点法において演算したグルコース濃度、CDIは微分法において演算したグルコース濃度、Kmはミカエリス定数(CGLがVmax /2になるときの(CEP−CDI)の値)、Vmaxはグルコースが血球の内部から外部に拡散することができる最大膜透過速度、aおよびbは定数である。
数式4は、平衡点法および微分法を組み合わせた演算式であるとともに、血球外へのグルコースの拡散速度を考慮したものである。ここで、平衡点法および微分法について簡単に説明し、併せて数式4を算出する根拠について説明しておく。
図1に示した電流値測定部23においては、図3に示したようなタイムコースの電流が観測されるのは上述した通りである。より具体的には、電流値(I)は、図1に示した反応槽20において検体を供給した時点から上昇し、一定時間の経過後に平衡値(EP)に漸近する。平衡値(EP)の大きさは、検体中のグルコース濃度に相関している。したがって、平衡値(EP)とグルコース濃度との関係を示す検量線を予め調べておくことで、平衡値(EP)に基づいてグルコース濃度を演算することができる。これが平衡点法である。一方、微分法は、電流のタイムコースをn回微分したときの極大値に基づいてグルコース濃度を演算する方法である。たとえば、図3に電流値の一次微分値(dI/dt)のタイムコースを示したが、このタイムコースの極大値(DI)は、電流値(I)の変化速度の最大値、すなわち反応初速度の最大値に対応している。この最大値はグルコース濃度に相関しているため、一次微分法では一次微分値(dI/dt)の極大値(DI)に基づいてグルコース濃度を演算することができる。
ところで、平衡点法および微分法には、全血における血球の割合、すなわちヘマトクリット(Hct)の影響を受けるといった問題がある。すなわち、図4に示したように、全血における血球の割合が大きくなるほど(Hctが大きくなるほど)、平衡点法によって演算したグルコース濃度(CEP)および(一次)微分法によって演算したグルコース濃度(CDI)が血漿中のグルコース濃度(真のグルコース濃度)(CGL)からの乖離が大きくなる。この傾向は、平衡点法に比べて、微分法のほうが顕著に現れる。
平衡点法および微分法においてHctの影響を受ける理由としては、たとえば全血を希釈したときに見かけの希釈率と真の希釈率とが異なっており、Hctが大きいほど希釈率の相違が大きくなる点が挙げられる。この理由によれば、Hctが大きいほど演算値が真の値からの乖離が大きくなることについては説明がつく。しかしながら、平衡点法に比べて、微分法のほうがHctの影響を受けやすい点については十分に説明がつかない。
そこで、平衡点法と微分法との相違を考えてみると、これらの方法において大きく相違している点として、演算に用いる電流値をサンプリングするタイミングが挙げられる。すなわち、図3から分かるように、平衡点法においては電流値(I)が平衡値(EP)に達するときの演算用の電流値(EP)がサンプリングされ、微分法においては電流値(I)が上昇しているタイミングにおいて演算用の電流値(一次微分値(dI/dt))がサンプリングされる。
このようなサンプリングタイミングの相違は、血球内から血球外に拡散されるグルコース量の相違として現れる。電流値として測定されるのは、血球外に存在するグルコースからセンサ部21に供与された電子であり、血球外に存在するグルコースの量は、もともと血球外に存在していたグルコースと血球内から血球外に拡散したグルコースとの総和となる。したがって、電流値を測定するタイミングが異なれば、血球内から血球外に拡散したグルコースが測定される電流値に与える影響の程度も異なったものとなる。
この点からすれば、電流値のサンプリングタイミングの相違に基づく平衡点法と微分法との演算値の差(CEP-CDI)は、拡散速度の関数として表すことができる。ここで、下記数式5として示したように、演算値の差(CEP-CDI)が拡散速度(V)の一次関数として示されると仮定してみる。この仮定については、図4に鎖線で示したように、演算値の差(CEP-CDI)がHctに対して比例している点からその妥当性が伺える。
Figure 0004576505
なお、数式5においてaおよびbは定数であり、これらの定数は、1つには、グルコース濃度測定装置1の製造時に生じる製品間でのバラツキ、たとえばセンサ部21の感度のバラツキや測定ユニット2の回路系(たとえば電流値測定部23)のバラツキを補正する役割を有している。定数aおよびbは、トライアルアンドエラーにより求めることができ、たとえば0.5≦a≦2.0、-10≦b≦10の範囲に設定される。一方、血球外へのグルコースの拡散について検討してみると、血球外へのグルコースの拡散速度は血球内外のグルコースの濃度差に比例するものではなく、最大速度に限界があることが知られている。一般に、血球外へのグルコースの拡散速度は、ミカエリスメンテンの式に相関することが知られている。そこで、上記数式5に対して下記数式6で示すミカエリスメンテンの式を代入して整理すると、上記数式4が得られる。ただし、数式5に対して数式6を代入するに当たっては、出ΔS=CGL-CEPとした。
Figure 0004576505
本発明では、血球中に含まれるグルコースが血球外に拡散する拡散速度を考慮して、最終的なグルコース濃度が演算される。そのため、本発明では、血球内外でのグルコース濃度の差の大きさに拘らず、血球外へのグルコースの拡散量を適切に反映させた演算が可能となる。その結果、グルコース濃度が相対的に大きな血液試料であっても、精度良く濃度測定を行うことができ、ひいては測定レンジを大きく確保することが可能となる。この点については、後述する実施例においても明らかとなる。
本発明は、上述した実施の形態には限定されず、種々に変更可能である。すなわち、本発明の要旨は、特定成分(たとえばグルコース)の血球外への拡散速度を考慮する点にあり、演算式における拡散速度の考慮のしかたについては種々に変更可能である。たとえば、演算式は、平衡点法および微分法の演算値の差(CEP-CDI)を、拡散速度の2次以上の高次関数やその他の関数として表して求めてもよい。また、演算式は、血球外へのグルコースの拡散速度(V)をミカエリスメンテンの式とは異なる式に相関させて作成することもできる。さらには、拡散速度(V)をミカエリスメンテンの式に相関させる場合において、ΔSを(CGL-CEP)以外、たとえばΔS=k(CGL-CEP)(kは定数)、あるいはΔS=(CGL-CDI)として演算式を求めることもできる。
先に説明したグルコース濃度測定装置1においては、測定ユニット2のセンサ部21が電極法を利用して繰り替し使用可能なように構成されているが、血液試料中のグルコース濃度に相関させた出力を得るための構成は、先に説明した測定ユニット2の構成には限定されない。たとえば、本発明は使い捨てのグルコースセンサを使用してグルコース濃度を測定する場合、あるいは比色によりグルコース濃度を測定する場合にも適用することができる。
もちろん、本発明は、グルコース以外の血球中に含まれる特定成分、たとえばカリウムイオンあるいはLDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ)の濃度を測定する場合にも適用できる。
以下においては、数式4により演算したグルコース濃度が、比較的高濃度域においても、血漿中のグルコース濃度に良好に相関し、数式4を利用した演算手法によれば測定レンジを大きく確保できること実証する。
本実施例においては、グルコース濃度が異なる複数の全血について、数式4(本案演算式)、下記数式7(従来演算式)、および平衡点法にしたがってグルコース濃度を測定した。ただし、数式4においては、a=0.97、b=-4、Km=150.6、Vmax=224.7とし、数式7においては、a=0.68、b=5.07とした。
Figure 0004576505
一方、リファレンスとして、上記複数の全血について、遠心分離により得られる血漿のグルコース濃度を測定した。また、血漿のグルコース濃度については、アークレイ株式会社(日本国)製の「GA-1160」を用いて測定した。数式4(本案演算式)、上記数式7(従来演算式)、および平衡点法による演算に必要な平衡値(EP)および極大値(DI)については、「GA-1160」を用いて測定される電流値に基づいて把握した。
各々の測定手法における測定結果については、図5に示した。この図から分かるように、平衡点法により演算したグルコース濃度は、血漿グルコース濃度から大きく乖離している。数式7(従来演算式)に基づいて演算したグルコース濃度は、平衡点法に比べて、血漿グルコース濃度との相関性が良いものの、高濃度域(500mg/dL程度)において、グルコース濃度が大きくなるほど、血漿グルコース濃度から乖離している。これに対して、数式4(本案演算式)に基づいて演算したグルコース濃度は、高濃度域も含めて血漿グルコース濃度との相関性が高い。これらの結果から、数式4(本案演算式)に基づいてグルコース濃度を演算すれば、高濃度域での測定精度が向上し、測定レンジを大きく確保できることが分かる。
本発明に係るグルコース濃度測定装置の概略構成を示す模式図である。 図1に示したグルコース濃度測定装置のブロック図である。 図1および図2に示した測定ユニットにおいて測定される電流値の経時的変化および電流値の一次微分値の経時的変化を示すグラフである。 血漿グルコース濃度(CGL)、平衡点法により演算したグルコース濃度(CEP)および(一次)微分法により演算したグルコース濃度(CDI)と、ヘマトクリット(Hct)との関係を示すグラフである。 血漿グルコース濃度に対する、各種演算式によって演算したグルコース濃度との相関性を示すグラフである。
符号の説明
1 グルコース濃度測定装置(濃度測定装置)
21 センサ部(測定手段を構成するもの)
23 電流値測定部(測定手段を構成する測定部)
5 演算部(演算手段)
EP (測定電流の)平衡値
DI (測定電流の)極大値
CEP 平衡点法により演算したグルコース濃度
CDI 微分法により演算したグルコース濃度

Claims (12)

  1. 血球を含む血液試料中の特定成分の濃度を測定するにあたり、上記特定成分が血球内から血球外に拡散する拡散速度を考慮して、上記特定成分の濃度を演算する、血液試料における特定成分の濃度測定方法であって、
    上記拡散速度(V)は、下記数式1に示すミカエリスメンテンの式に関連付けたものであり、
    検知媒体を介して当該検知媒体と上記特定成分との間の電子授受量に相関した出力値を得る一方で、この出力値の経時的変化が一定値に漸近するときの平衡値に基づいて上記特定成分の濃度(C EP )を演算する第1ステップと、
    上記出力値が上記平衡値に達するまでの間において、上記出力値の経時的変化を示す曲線のn回微分値(nは正の整数)における極大値に基づいて上記特定成分の濃度(C DI )を演算する第2ステップと、
    上記数式1において、ΔSを最終的な上記特定成分の濃度の演算値(C GL )から平衡値に基づいて上記特定成分の濃度(C EP )を差分したものとして上記特定成分の濃度を演算する第3ステップと、
    を含んでおり、
    上記第3ステップにおいては、最終的な特定成分の濃度演算値(C GL )と上記平衡値に基づいて演算した特定成分の濃度(C EP )との差分値(C GL −C EP )を、上記平衡値に基づいて演算した特定成分の濃度(C EP )と上記極大値に基づいて演算した特定成分の濃度(C DI )との差分値(C EP −C DI )に関連付けた下記数式2に基づいて、最終的な特定成分の濃度演算値(C GL )を得ることを特徴とする、血液試料における特定成分の濃度測定方法。
    Figure 0004576505
    Figure 0004576505
  2. 上記第2ステップにおけるn回微分値として、微分回数が1回または2回のものを使用する、請求項1に記載の血液試料における特定成分の濃度測定方法。
  3. 上記検知媒体からの出力値は、上記検知媒体に対して刺激を与えたときに応答として取得する、請求項1または2に記載の血液試料における特定成分の濃度測定方法。
  4. 上記刺激を電位差として与える一方で、上記応答を電流値として得る、請求項3に記載の血液試料における特定成分の濃度測定方法。
  5. 上記血液試料は、全血を希釈したものである、請求項1ないし4のいずれかに記載の血液試料における特定成分の濃度測定方法。
  6. 上記特定成分は、グルコースである、請求項1ないし5のいずれかに記載の血液試料における特定成分の濃度測定方法。
  7. 血球を含む血液試料中の特定成分の濃度を測定するための装置であって、上記特定成分の濃度を反映した応答値を測定するための測定手段と、上記応答値が一定値に漸近するときの平衡値を把握し、この平衡値に基づいて第1濃度(C EP )を演算する演算手段と、を備
    えた濃度測定装置において、
    上記演算手段は、上記応答値の経時的変化の曲線をn回微分(nは正の整数)したときの極大値を把握し、この極大値に基づいて第2濃度(C DI )を演算し、かつ下記数式3にしたがって最終的な濃度(C GL )を演算するように構成されていることを特徴とする、濃度測定装置
    Figure 0004576505
  8. 上記測定手段は、上記応答値を上記特定成分と検知媒体との間の電子授受量として測定するように構成されている、請求項に記載の濃度測定装置
  9. 上記測定手段は、上記応答値を上記検知媒体に対して刺激を与えたときに測定するように構成されている、請求項8に記載の濃度測定装置
  10. 上記測定手段は、上記刺激を電位差として与える一方で、上記応答を電流値として測定するように構成されている、請求項に記載の濃度測定装置
  11. 上記測定手段は、酸化還元酵素が固定化されたセンサ部と、電流値を測定するための電流値測定部と、を有している、請求項10に記載の濃度測定装置
  12. 上記特定成分は、グルコースである、請求項7ないし11のいずれかに記載の濃度測定装置。
JP2004303945A 2003-10-20 2004-10-19 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置 Expired - Lifetime JP4576505B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004303945A JP4576505B2 (ja) 2003-10-20 2004-10-19 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003359061 2003-10-20
JP2004303945A JP4576505B2 (ja) 2003-10-20 2004-10-19 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005148058A JP2005148058A (ja) 2005-06-09
JP4576505B2 true JP4576505B2 (ja) 2010-11-10

Family

ID=34702995

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004303945A Expired - Lifetime JP4576505B2 (ja) 2003-10-20 2004-10-19 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4576505B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4660652B2 (ja) * 2004-10-28 2011-03-30 アークレイ株式会社 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置
JP5441409B2 (ja) 2006-09-22 2014-03-12 アークレイ株式会社 血液分析装置
JP2012027014A (ja) 2010-06-23 2012-02-09 Arkray Inc 分析用試料調製用希釈液
JP6116075B1 (ja) 2015-11-20 2017-04-19 日本航空電子工業株式会社 電気化学測定方法、電気化学測定装置及びトランスデューサ
JP6086412B1 (ja) * 2015-12-22 2017-03-01 日本航空電子工業株式会社 電気化学測定方法、電気化学測定装置及びトランスデューサ
JP6116080B1 (ja) * 2016-04-26 2017-04-19 日本航空電子工業株式会社 電気化学測定方法、電気化学測定装置及びトランスデューサ
JP6218199B1 (ja) * 2016-10-06 2017-10-25 日本航空電子工業株式会社 電気化学測定装置及びトランスデューサ

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000009679A (ja) * 1998-06-29 2000-01-14 Matsushita Electric Ind Co Ltd グルコースセンサおよびグルコースの定量法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3516069B2 (ja) * 1995-08-03 2004-04-05 アークレイ株式会社 グルコース濃度の測定方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000009679A (ja) * 1998-06-29 2000-01-14 Matsushita Electric Ind Co Ltd グルコースセンサおよびグルコースの定量法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005148058A (ja) 2005-06-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10908112B2 (en) Rapid-read gated amperometry devices
JP6522067B2 (ja) 充填時間を使用してバイオセンサーの精度を改善するためのシステム、装置及び方法
RU2509304C2 (ru) Биосенсорная система с корректировкой сигнала
TWI449905B (zh) 用於生物感測器之未足量偵測系統
RU2372588C2 (ru) Способ и устройство для реализации основанных на пороговой величине функций корректировки для биосенсоров
RU2566382C2 (ru) Система управления недостаточным заполнением для биосенсора
RU2647473C2 (ru) Системы и способы для улучшенной стабильности электрохимических сенсеров
EP2263521A1 (en) Methods for analyzing a sample in the presence of interferents
JP4660652B2 (ja) 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置
KR20120099452A (ko) 바이오센서용 언더필 인식 시스템
JP4576505B2 (ja) 血液試料における特定成分の濃度測定方法および濃度測定装置
EP2151682B1 (en) Substrate concentration measurement method and substrate concentration measurement apparatus
JP2010286423A (ja) 電位差測定方法
JP6557740B2 (ja) カルシウム阻害に関するcreaセンサの補正方法
JPH09318634A (ja) グルコース濃度の測定方法
JPH0587768A (ja) バイオセンサ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071005

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100428

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100706

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100722

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130903

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4576505

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250