JP4575910B2 - 軸受 - Google Patents
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Description
そして、等方性炭素黒鉛質基材としては、従来、原料として黒鉛が20〜50質量%含まれる炭素黒鉛質基材が開示されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
本実施形態は、これらの過酷な潤滑モードに対して対応可能な軸受材および軸受を提供するものである。
図1は、スクロール型冷媒圧縮機の断面模式図である。図2は、図1の一点鎖線で囲んだ箇所の部分拡大図である。
このスクロール型冷媒圧縮機SCでは、モータ7によってクランクシャフト5が回転すると、クランク5aの偏心回転により、旋回スクロール部材2は、自転することなく固定スクロール部材3に対して旋回運動を行う。その結果、吸入口3cより吸い込んだ冷媒ガスは、渦巻状のラップ3dと渦巻状のラップ2dとが噛み合うことで形成された圧縮室3eで圧縮される。圧縮された冷媒ガスは、突出口3dから固定スクロール部材3の上方に吐出される。そして、この圧縮された冷媒ガスは、固定スクロール部材3の上方から連通孔3gを介してフレーム4の下方に至って排出口3fからスクロール用密閉容器1の外側に排出される。
しかしながら、本実施形態の軸受2c,4aは、図2に示すように、旋回スクロール部材2の台板2aおよびフレーム4の所定の箇所に各々圧入されて固定されることによって、スクロール型冷媒圧縮機SCの信頼性および耐久性を向上させることができる。
もちろん、この際、軸受2c,4aは、台板2aおよびフレーム4の所定の箇所に各々焼嵌、冷し嵌、ネジ嵌、嵌合、接着剤等の手段で取り付けられてもよい。そして、圧入される際の圧環強さ(圧環荷重)については、18.6MPa(150N)以上が必要とされているので、軸受2c,4aの圧環強さは、これ以上の荷重に耐える強度に設定されている。なお、ここでいう圧環強さとは、JIS Z 2507に示される焼結軸受−圧環強さ試験方法で求められるものである。具体的には、図1に示すスクロール型冷媒圧縮機SC等に使用される軸受2c,4aでは、その大きさが、例えば、外径Φ19mm、内径Φ16mm、および高さ14.3mmであると、軸受2c,4aの圧環荷重は、150N以上となり、圧環強さは、18.6MPa以上となる。
圧縮された冷媒は、吐出口(図示せず)より吐出されて高温高圧のガス状冷媒となり、吐出管11を介して冷凍サイクルを構成する熱交換器側(凝縮器、蒸発器)に吐出される。熱交換された前記冷媒は、吸入口13aよりローリングピストン13内に吸入され、再びローリングピストン13で圧縮される。
図4に示すように、軸受15は、前記クランクシャフト12の軸受であって、フレーム14に対して圧入,焼嵌,冷し嵌,ネジ嵌,嵌合,結合,接着剤等の手段で取り付けられている。
以上のようなスクロール型冷媒圧縮機SC(図1参照)、およびロータリ型冷媒圧縮機RC(図3参照)に使用される軸受2c,4a(図2参照)および軸受15(図4参照)〔以下、単に「軸受」という場合がある〕は、後記するこの軸受の製造方法で説明するように、異方性の炭素黒鉛質基材に後記する所定の金属を含ませたものである。
ここで「混合物中に析出物が析出しない」とは、フロック点試験で析出物が目視で検出されない状態を意味する。なお、このフロック点試験は、ASTMまたはJIS K 2211に準拠して行われ、例えば、冷媒90質量%,冷凍機油10質量%の中に試験片を入れて、規定の条件で加熱抽出し、加熱処理後に−40℃まで冷却し、析出物質の有無を評価する試験である。
このような組み合わせを実現する冷媒としては、ハロゲン化炭化水素系冷媒、炭化水素系冷媒、および自然系冷媒から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。つまり、これらの冷媒は、それぞれ単独で、または適宜に組み合わせて使用することができる。
前記ハロゲン化炭化水素系冷媒としては、例えば、フッ化炭化水素系冷媒、フッ化臭化炭化水素系冷媒、フッ化ヨウ化炭化水素系冷媒等が挙げられる。
このような冷媒の中でも好ましいものは、R410A、R404A、R407C、R134a、等のフッ化炭化水素(HFC)系冷媒、CF3I等のフッ化ヨウ化炭化水素系冷媒、R600a、R290等の炭化水素系冷媒、R744、R717等の自然系冷媒等が挙げられる。特に、フッ化ヨウ化炭化水素系冷媒は、環境負荷が小さい点で好ましい。
そして、このような組み合わせを実現する冷凍機油としては、例えば、鉱油、ポリオールエステル(POE)油、ポリアルキレングリコール(PAG)油、ポリビニルエーテル(PVE)油、ポリアルファオレフィン(PAO)油、およびハードアルキルベンゼン(HAB)油から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。つまり、これらの冷凍機油は、それぞれ単独で、または適宜に組み合わせて使用することができる。
この製造方法では、図5に示すように、まず、骨材となる無機充填剤、黒鉛(人造黒鉛,天然黒鉛等)、およびコークス(石炭,石油等)と、バインダとなる結合剤(石炭や石油から得られるコールタールピッチ等)とが、例えば、骨材7質量部に対してバインダ3質量部の割合で混合される(Step1)。なお、この混合に際しては、図示しないが無機充填剤を均一に分散させるためのカップリング剤(シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等)が添加されることが望ましい。
このカップリング剤は、固体物質(コークス、黒鉛、無機充填剤)の表面をコーティングすることで結合剤(石油ピッチ等)の中に固体物質を均一に分散させることができる。このように固体物質が均一に分散されると、後記する混捏機のトルクは抵抗が小さくなり、作業性は一段と改善される。
このために、本実施形態では、前記したように、骨材に無機充填剤を配合している。
そして、Step4では、粒度分級した粒(原料ペレット)の大小が適当となるように混合される。このことによって、流動性および型充填性に合う原料ペレット(以下、単に「原料」という場合がある)が得られる。
ちなみに、本実施形態での製造方法では、原料が、例えば外径Φ20.5mm、内径Φ11.5mm、および高さ25mmの円筒形状となるように、粉末成形機を使用して一個ごとに金型成形される。この成形には、上下方向からの一軸プレス法が採用される。この一軸プレス法には、例えば、上下パンチを有するエジェクション方式成形法、ウイズドローウォール式成形法等が用いられる。
また、炭素黒鉛質基材の揮発分は、1質量%以下となる。
ちなみに、固定炭素は、JIS R 7212、またはJIS K 2425に準拠して測定することができる。灰分は、JIS R 7223、JIS M 8812、JIS M 8511、またはJIS K 2425に準拠して測定することができる。炭素黒鉛質基材の揮発分は、JIS R 7212、JIS M 8812、またはJIS M 8511に準拠して測定することができる。
前記した灰分は、黒鉛およびコークス等に含まれている無機物質と、機能向上のために配合した無機充填剤の灰分とで主に構成されている。
このような結合剤の焼成後における結合剤の未分解物は、冷媒圧縮機の使用環境で軟化し、そして冷凍機油および冷媒に溶出することによって、軸受の強度を低下させるとともに、溶出したものが析出したことによる冷媒配管の詰まり等の障害を起こす。
この製造方法では、800〜2000℃まで昇温されることで、原料としての前記無機充填剤と炭素とが反応して炭素黒鉛質基材の特性を阻害する物質を生成しないようにすることができる。ちなみに、炭素黒鉛質基材の特性を間接的に評価する方法としては、例えば、フロック点試験を行う方法や、シールドチューブテストによる低温析出試験を行う方法が挙げられる。
Ra=I1/I2・・・(1)
(ただし、前記式(1)中、I1は、前記軸受の軸との摺動面における黒鉛結晶の(004)面と(110)面のX線回折による積分強度比((110)面の積分強度/(004)面の積分強度)を表し、I2は、前記摺動面に直交する面における黒鉛結晶の(004)面と(110)面のX線回折による積分強度比((110)面の積分強度/(004)面の積分強度)を表す)
なお、異方比1.2以上の根拠については後記する。
以上のような炭素黒鉛質基材は、曲げ強さが50MPa以上であり、圧縮強さが180MPa以上であるものが望ましく、その細孔の顕微鏡で求めた面積空隙率が、平均で15%以下であることが望ましい。
このとき、充填前の炭素黒鉛質基材の形状は、前記したように、軸受の形状と略同じ形状を呈しているので、この仕上げ加工に際しては、素材ロスが少ない。そして、このような仕上げ加工を経て冷媒圧縮機の軸受が得られる。
次に、O−Step9の軸受加工1、O−Step10の軸受加工2、およびO−Step11の軸受加工3を経て軸受が完成する。なお、軸受加工1では、バー材がNC旋盤等の加工装置で円柱形状に加工される。また、軸受加工2では、円柱形状となったバー材が円筒形状に加工される。また、軸受加工3では、円筒形状となったバー材が仕上げ装置で仕上加工されて目的の軸受となる。
ここで、図8(a)に示す、符号16は、Al、Si等を含む無機充填剤を示し、符号17は開空孔を示し、符号18は閉空孔を示し、符号19は炭素黒鉛を示す。ちなみに、無機充填剤16は、軸受の硬度と耐摩耗性を上げるために配合する場合と、黒鉛等の原料の中に不純物として含まれる場合とがある。
本実施形態の軸受では、前記したように、これらの無機充填剤を総称して灰分(酸化物換算で0.5〜10質量%)と称する。
ここで図9(a)は、粉末成形の金型における上部パンチのみで原料を圧縮成形した際の成形圧力分布と、それによる密度分布(焼成後の空隙率)を示す分布図である。
上部パンチのみで原料を圧縮成形すると、原料の粒子が金型の壁面のすべり抵抗を受けて十分な圧力伝達を示さない。その結果、図9(a)に示すように、底部コーナ部は、圧力作用の小さい低密度で多孔質な部分となっている。低密度で多孔質な部分は、後記する機械的強度や耐摩擦摩耗特性を悪くすることになる。
上部パンチと下部パンチの双方にて原料を圧縮成形すると、上部パンチのみで圧縮成形した際に生じた低密度で多孔質の部分、つまり脆弱部が解消されて、図9(b)に示すように、健全な空隙率分布となっている。つまり、後記する軸受の機械的強度や耐摩擦摩耗特性の品質が大幅に改善されることとなる。特に軸受のような上部と下部はパンチの圧力効果が得られるので、圧縮機構部の組立圧入に係る強度や圧縮機の軸荷重の集中荷重が求められるような部品には、空隙率や機械的強度の分布が有効に作用するものである。この部分に後記する金属が高圧で充填される。
炭素黒鉛質基材の結晶化度は、X線回折によって結晶質の黒鉛ピークと非結晶質のコークス等のピークとの比で予め既知の原料により標準サンプルを作成することによって比較して求めることが可能である。これにより、軸受の特性に必要となる黒鉛の量と特性を規定することが可能となる。これにより、軸受特性に必要となる黒鉛の量と特性を規定することが可能となる。
また、ラマン分光分析による炭素黒鉛質基材のマトリックスの面積比は、二種類のピーク波形の大きさによって非晶質のコークス質と結晶質の黒鉛質を識別することができる。この面積比は、既知の標準サンプルによって黒鉛の面積率を推測したものである。以上のことにより、本実施形態に用いる軸受の炭素黒鉛質基材中の黒鉛が特定される。これは、面積率に換算すると45〜68%に相当するものである。
図11は、黒鉛結晶化度と摩耗量との関係を示す図である。図12は、平均面積空隙率と摩耗量との関係を示す図である。図13は、異方比と摩耗量との関係を示す図である。
図11に示すように、黒鉛結晶化度が15%未満(例えば、黒鉛組織の面積率で45%)の場合には、硬度が高く相手軸材(焼入れ後の硬度:HV450以上)の材料に損傷を与えて望ましくない。一方、結晶化度が50%(例えば、黒鉛組織の面積率で58%)を超えると軟らかく摩耗量が基準値を超えることとなる。
以上のような運転条件(試験条件)において、図23の従来例6は、使用実績のある軸受材料である。この摩耗量は、27μm/2h(13.5μm/h)であった。軸受の摩耗量は、ロータリ型冷媒圧縮機のシリンダとピストンとの隙間におけるシール性(耐洩れ性)や、スクロール型冷媒圧縮機の軸と軸受のシール性、つまり圧縮室のシール性に関係している。
そこで、今般は、より過酷な運転条件に対応し、より高効率、高信頼度を目指すべく、20μm/2h(10μm/h)を目標値とする。これが、シリンダ内の容積効率や圧縮室の容積効率を長期に亘って継続的に維持するために必要であるという目標値である。つまり、前記のような摩耗試験が想定している、短時間の過渡的な過酷な運転条件に対して、軸受の摩耗量が20μm/2h(10μm/h)以下、すなわち試験荷重9.8MPaにおいて、10μm/h以下であることを目標値とする。
したがって、摩耗量が10μm/hに対応する異方比は、図13に示すように、1.2が必要となる。
図13に示すように、異方比が上昇すると、摩耗量が減ることになる。従来周知の等方性炭素黒鉛質基材は異方比1.0である。図13から判るように、異方比1.5の試験品は摩耗量5.4μm/hに対し、従来の異方比1.0のものは13.6μm/hとなり約1/2.5倍の摩耗量となる。また、異方比1.8のものは摩耗量2.95μm/hとなることにより、約1/4.6倍の摩耗量となることが判った。前記のとおり、異方比を1.2以上とすることが好ましい。
次に、炭素黒鉛試験材のX線回折による黒鉛結晶の配向を示す異方比の測定を行った。その結果を表2に示す。なお、この測定は、リガク社製X線回折装置(RINT2500HL)を使用して行った。この測定は、CuX線源を使用してX線出力50kV(250mA)の条件で行った。X線回折装置における光学系としてはモノクロメータ付き集中ビームが使用され、スリットDSは0.5deg、スリットRSは0.3mm、スリットSSは0.5degに設定された。ここで参照する、図14は、プレス成形される時にできる黒鉛結晶の(110)面を最大限に活用した試験片の斜視図である。
表2に示すように、従来例1の等方性炭素黒鉛質基材からなるブロック形状のものは、異方比が1.025に対し、実施例1の円柱状成形体のものは1.791であることが判った。
次に、本実施形態の軸受に使用される炭素黒鉛質基材からなる円柱体基材より採取された試験片について摩擦摩耗特性、および機械的特性が、従来の等方性炭素黒鉛質基材と対比された。
空気調和機、冷蔵庫および給湯機などに使用する代表的な冷媒と冷凍機油(粘度グレード)の組合せにおいて、シールドチューブテスト(150℃ 40日)が実施された。そして、外観、溶出物の低温析出性(−40℃)、冷凍機油の劣化による全酸価の上昇、および炭素黒鉛質基材の曲げ強さの変化が検討された。その結果を表4に示す。
また、焼成した炭素黒鉛質基材は、空孔が存在するため、摩擦摩耗特性と機械的強度特性が過酷な運転状態となると低下する課題があった。これは、潤滑油が前記空孔より浸透して油圧分布が低下するためと考えられる。
炭素黒鉛は貴なる物質で、卑なる金属との間では冷凍サイクルおよび冷媒圧縮機のように微量の水分が存在する場合には、電気化学作用によって腐蝕や冷媒の分解が加速されることが考えられる。充填金属の選定は、各種充填候補金属を水分100ppm含む冷凍機油(エステル系)中に浸漬し、250℃、1時間保持した場合の冷凍機油の化学的変化を検討して行った。その結果を表5に示す。
また、油中溶質金属はPb(鉛)が36ppm、Snハンダが16ppm、その他の金属は何れも0.1ppm以下(検出限度外)であり、短時間の試験では0.1ppm以下の金属間での有意差を見付けることは出来なかった。
Cu(銅)−Sn(スズ)系の合金は、図17(a)および(b)に示す金属状態図と機械的特性との関係になり、α固溶体はSn(スズ)が約12%の範囲となる。この時の引張強さσBは約1.8倍となり、硬さが約1.6倍となり空孔を充填することによる改善効果が得られる。一方、Cu(銅)のα固溶体は先に述べた溶出Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、Si(ケイ素)等の卑金属がCu(銅)の組織の中に固溶しているため、このものの腐蝕電位は、図18に示すように、見掛け上は純銅と同じレベルの電極電位となる。すなわち、α固溶体は機械的強度が大幅に改善すると共に純銅並みの耐蝕性を有することが可能であり、特に冷媒圧縮機や冷凍装置において炭素黒鉛質基材の電極電位とCu(銅)のα固溶体の電位差を小さくすることが可能となり、腐蝕を伴う信頼性を大幅に改善することができる。さらに、図17(b)に示すように、Cu(銅)のα固溶体が含むことが可能なP(リン)の割合は、0.05〜7.5質量%となる。
図19は、Cu(銅)のα固溶体を形成する合金を真空高圧充填装置内で溶融し、炭素黒鉛質基材の空孔を高圧充填する一例を示す模写図である。図20(a)は、ブロック状の等方性炭素黒鉛質基材より切り出した断面が矩形状バー材を示す模式図、図20(b)は円柱または円筒状の異方性炭素黒鉛質基材を示す模式図である。図22(a)は、異方性炭素黒鉛質基材の金属充填前の顕微鏡組織図、図22(b)は、異方性炭素黒鉛質基材の金属充填後の顕微鏡組織図である。
図19に示すように、真空高圧充填装置23は、真空容器24内に金属溶融炉25と、吊カゴ26と、昇降機27を有するものである。そして、吊カゴ26内に被充填炭素黒鉛質基材をセットした後に真空高圧充填装置23内が真空引きされてガスが排出される。次いで、金属溶融炉25内のCu(銅)のα固溶体で銅合金が加熱溶融される。そして、この加熱溶融した銅合金の浴中に昇降機27を使って吊カゴ26内に被充填炭素黒鉛質基材が浸漬される。
その後、吊カゴ26を上昇させて銅合金の固相線以下の温度まで冷却させて金属の凝固が完了する。その後、高圧のガスを大気放出させて真空高圧充填装置23内が常圧化される。この状態で、金属充填炭素黒鉛質基材は、真空高圧充填装置23内から取り出される。
実施例6は、青銅(BC3)を充填したものであって、面積充填率が6.49%、面積空隙率が1.31%となった。そして、面積空隙充填率は83%となる。
実施例7は、リン青銅(PBC3:Pの含有量0.05〜0.5質量%)を充填したものであって、面積充填率が4.82%、面積空隙率が2.98%となった。そして、面積空隙充填率は62%となる。
実施例8は、リン銅(BCuP2:Pの含有量6.8〜7.5質量%)を充填したものであって、面積充填率が6.10%、面積空隙率が1.54%となった。そして、面積空隙充填率は80%となる。
実施例9は、青銅(BC3)を充填したものであって、面積充填率が6.13%、面積空隙率が1.70%となった。そして、面積空隙充填率は78%となる。
実施例10は、リン青銅(PBC3)を充填したものであって、面積充填率が7.40%、面積空隙率が0.98%となった。そして、面積空隙充填率は88%となる。
実施例11は、リン銅(BCuP2)を充填したものであって、面積充填率が6.52%、面積空隙率が1.63%となった。そして、面積空隙充填率は80%となる。
図22は、摩擦摩耗試験片の配置を示す図である。図23は、気体冷媒としてのR410Aを使用した摩擦摩耗試験を行い、この試験で測定された摩耗量を従来例と本実施形態とで比較した図である。図24は、気体冷媒としてのR410Aを使用した摩擦摩耗試験を行い、この試験で測定された平均摩擦係数を従来例と本実施形態とで比較した図である。図25は、気体冷媒としてのCO2を使用した摩擦摩耗試験を行い、この試験で測定された摩耗量を従来例と本実施形態とで比較した図である。
前記固定片29および可動片30の評価試験の試験条件を表9に示す。
図27(b)は、異方性炭素黒鉛質基材の耐荷重性を示しており、図27(b)に示すように、この摩耗試験では、試験荷重75MPaで試験片自体が破断した。この図27(b)の摩耗試験では、等方性炭素黒鉛質基材と同様な特性を示している。
図29は、図28(a)の試験完了時の摩耗量の代表例を示すものであり、図29に示すように、従来例9は固定片の摩耗量が80μm/2hであり、可動片の摩耗量が1.5μm/2hであり、従来例10は固定片の摩耗量が352μm/2hであり、可動片の摩耗量が3.2μm/2hである。
また、実施例37は固定片の摩耗量が5μm/2hで可動片の摩耗量が1.2μm/2hであり、実施例38は固定片の摩耗量が13μm/2hで可動片の摩耗量が2.5μm/2hとなった。
以上をまとめると、炭素黒鉛質基材の円柱若しくは円筒等の成形体のB面にP(リン)を含むCu(銅)のα固溶体が原料粒子の隙間の部分に充填し、この部分は機械的強度が高く、例えば青銅(BC)がHV117、リン青銅(PBC)がHV128、リン銅(BCuP)がHV105であり、これらが硬く脆い炭素黒鉛質基材(HV146〜211)を包み込む形となって炭素黒鉛質基材を補強しているものと思われる。
前記ストライベック曲線を求める本試験では、40℃、冷媒(R410A)、冷凍機油(エステル系)の混合実用雰囲気中(粘度η:26×10−3Pa・s)で試験荷重が1MPa、2MPa、3MPaにおけるストライベック曲線が求められた。図30(a)および(b)から明らかなように、1MPaの低い試験荷重の場合には、ηv/Pが等方性炭素黒鉛質基材より異方性炭素黒鉛質基材が優れていることが判る。これは、基材の平均空隙率が、等方性が10.86%、異方性が9.07%(図8参照)であることに由来するものと考えられる。
図31(a)は、従来の等方性炭素黒鉛質基材のストライベック曲線を示す図、図31(b)は、従来の等方性炭素黒鉛質基材+青銅(BC)の金属充填等方性炭素黒鉛質基材のストライベック曲線を示す図である。
前記ストライベック曲線を求める本試験は、前記した従来の等方性炭素黒鉛質基材、または従来の金属充填等方性炭素黒鉛質基材で形成された軸受と軸を、HFC冷媒と冷凍機油とを代表したR410Aの所定量とともに封入した場合を想定して行った。
図32(a)に示すように、この金属充填異方性炭素黒鉛質基材は、軸荷重が1MPaおよび2MPaにおいてηv/Pが0.9[(Pa・s・m/s)/(GPa)]で低摩擦領域を維持し、いわゆる流体潤滑状態となり軸および軸受の機械的損失を低減できるものである。したがって、初期なじみ性および潤滑油膜保持性が優れ、低粘度、低速回転(例えば1000rpm)、高荷重での使用に十分耐えられるものである。
なお、本実施形態にかかる軸受を使用する、例えば冷凍機には家庭および業務用空気調和機、冷蔵庫、除湿機、給湯機、洗濯乾燥機、ショーケース、冷凍ユニット、自動車用空気調和機等がある。
図24に示すように、R410A気体冷媒雰囲気中の境界潤滑条件に於いて、P(リン)含有量が多くなるほど摩擦係数を小さくすることができる。本実施形態においては、リン銅もしくはリンを0.05〜7.5質量%含ませた銅のα固溶体を充填する炭素黒鉛質基材を用いて軸受を成形するため、摩擦係数が小さく、摩擦損失の少ない軸受を提供できるという優れた効果を奏する。
2 旋回スクロール部材
2a 台板
2b ラップ
2c 軸受
2d 背面キー溝
3 固定スクロール部材
3a 台板
3b ラップ
3c 吸入口
3d 吐出口
4 フレーム
4a 軸受
5 クランクシャフト
5a クランク
6 オルダム継ぎ手
7 モータ
8 ロータリ用密閉容器
9 圧縮機部
10 モータ部
11 吐出管
12 クランクシャフト
13 ローリングピストン
13a 吸入口
14 フレーム
15 軸受
SC スクロール型冷媒圧縮機
RC ロータリ型冷媒圧縮機
Claims (4)
- 炭素黒鉛質骨材および結合材の混捏物を、使用する形状に近い形状に成形した成形物が焼成されて得られた炭素黒鉛質基材を使用した軸受であって、
前記炭素黒鉛質基材には、
灰分が0.5〜10質量%含まれるとともに、
顕微鏡観察により求めた面積空隙率が15%以下となるように中空の開空孔が形成され、
前記開空孔の半分以上に、銅のα固溶体が充填されていて、
前記銅のα固溶体は、リン銅もしくはリンを含み、リンの含有量が0.05〜7.5質量%であることを特徴とする軸受。 - 前記混捏物は、さらに無機充填材を含むことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
- 前記開空孔に前記銅のα固溶体が充填される前の状態における前記炭素黒鉛質基材にあっては、X線回折による黒鉛結晶化度が15〜50%であることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の軸受。
- 前記銅のα固溶体に、Cu3Pを分散析出させることによって、硬さがHV100以上に組織強化された合金が、前記炭素黒鉛質基材に、20〜70質量%含まれていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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