JP4575559B2 - ケトン感応素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケトンに対して選択的に感応し、呼気中のアセトン量の測定に好適に用いることができるケトン感応素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アセトンは体内で脂肪酸生成の過程で生成されるケトン体の一成分である。ここでいうケトン体とは、3−ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸及びアセトンの総称である。
【0003】
糖尿病患者の呼気中にアセトンが多く含まれることは、かなり古くから知られていた。この呼気中のアセトンは、1型糖尿病患者のコントロール状態が良好に行われていないときや、糖尿病、高血圧、肥満等に対する食事療法が効果的に行われているときに増加するため、これらの状態管理の指標となるものである。また、摂食障害がみられる幼児においても、呼気中のアセトンが増大するものである。そのため、呼気によるアセトン量の検査を行うことができれば、尿検査や血液検査の場合とはことなり、時、場所を選ばず、誰にでも、寝ている人にさえ、苦痛を伴わずに行うことができるため、呼気による検査によりアセトン量の測定を可能とする方法が求められていた。
【0004】
そこで、従来から呼気内のアセトン量を測定する装置として、例えば特開平6−47047号公報、特開平6−58919号公報、特開平9−54040号公報、特開平9−138225公報、特開平10−142153号公報等に記載のものが提供されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの装置は、呼気中の微量のアセトンを検出するために、ガスクロマトグラフィーやラマン分光法を用いて呼気中のアセトンを検出するものであり、ガスマス(ガスクロ−マススペクトルメーター)やラマン分光装置等の高価な分析機器が必要であった。そのため医療や健康管理の分野では呼気中のアセトン量測定は未だ広く利用されていないものであった。
【0006】
一方、微量のガスを検出することは半導体ガスセンサが得意とするところであるが、半導体ガスセンサの欠点として、種々のガスに同時に感応してしまうという問題、すなわちガス選択性が悪いという問題がある。呼気中にはアセトンの他にも、炭化水素、一酸化炭素、水素,アルコール、アルデヒド等の、100種を超えるガスが混在しているものであり、従来の半導体ガスセンサでは、これらの多種類のガスから目的のアセトンガスを定量的に検出することは、これまでは不可能であった。
【0007】
特に、従来の半導体ガスセンサの場合では、アルデヒド、アルコール、ケトンは多少の差はあるものの、類似の感度を示すものであり、これは、アルデヒド、アルコール、ケトンの官能基が類似しているために、主として官能基との反応によってガスを検知する半導体ガスセンサにとって、識別が難しいためである。
【0008】
そのため、ケトンだけに選択的に高い感度を持つ半導体ガスセンサはこれまで存在せず、従来は生体内のケトン体の測定を血液や尿の検査によって行わざるを得なかったが、血液検査は苦痛を伴い、感染症のおそれも常に存在するものであり、また尿検査は精神的苦痛を伴うものであった。またこれらの検査は時、場所を選ばずに行うことができなかった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、ケトンに対する感度が高いと共に他の成分に対する感度が低く、ケトンを高感度に選択的に検知することができ、ケトンセンサに適用することによって簡便な装置構成にて呼気中のアセトン量の測定を行うことができるケトン感応素子を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るケトン感応素子6は、酸化タングステンに白金を添加して得られる金属酸化物半導体から成ることを特徴とするものである。
【0011】
また白金の添加量を、酸化タングステンに対して0.01〜3質量%として成ることを特徴とするものである。
【0012】
また請求項の発明は、請求項において、シリカ系バインダーを添加して成ることを特徴とするものである。
【0013】
また請求項の発明は、請求項1又は2において、パラジウム又は金を添加して成ることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明に係るケトン感応素子6は、酸化タングステン(WO3)を主成分とし、添加物として白金を含有させて得られる金属酸化物半導体にて形成されるものであり、これによりケトンを高感度で選択的に検知するという特性が付与されたものである。白金の含有量は、酸化タングステンに対して0.01〜3質量%とすることが好ましく、この場合、ケトン以外の妨害ガスの感度に対してケトンの感度が著しく向上し、ケトンの選択的検知を更に確実に行うことができる。
【0016】
また、このケトン感応素子6には、バインダーとして、有機シリカやコロイダルシリカ等のシリカ系バインダーや、アルミナゾル等のアルミナバインダーを添加すると、素子強度を向上することができる。また特にシリカ系バインダーを用いると、ケトン感応素子6によるケトンの検知感度を更に向上させることができる。これらのバインダーの添加量は特に限定されるものではなく、ケトン感応素子6に充分な強度を付与するために必要とされる適宜の量が用いられる。
【0017】
更に、このケトン感応素子6に、パラジウム(Pd)又は金(Au)を含有させると、ケトンの濃度が変化した場合のケトン感応素子6の電気抵抗値の変化速度が向上し、ケトンの検知時におけるケトン感応素子6の応答性を向上することができる。特に、ケトンの濃度が高い濃度から低い濃度へと変化した場合における応答性を著しく向上することができるものである。パラジウムや金の含有量は特に限定されないが、パラジウムを用いる場合は酸化タングステンに対して0.01〜1.5質量%の範囲で用いることが好ましく、また金を用いる場合は酸化タングステンに対して0.01〜1.5質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0018】
以下に、ケトン感応素子6の製造方法を例示する。
【0019】
メタタングステン酸アンモニウムや無水タングステン酸のようなタングステン化合物を、例えば空気中で500°で1時間加熱して焼成した後、粉砕して、粉体状の酸化タングステンを得る。
【0020】
この粉体状の酸化タングステンに、塩化白金酸水溶液などのかたちで、白金を添加する。そして、この混合物を、例えば空気中で700℃で1時間加熱して焼成する。この焼成により得られた生成物には、必要に応じて、強度改善や電気抵抗値のコントロールのためにα−アルミナを混合しても良い。
【0021】
ここで、金やパラジウム等の添加物を加える場合は、この生成物に金やパラジウム等を加えた後、更に例えば空気中で500℃で1時間加熱して焼成する。
【0022】
この生成物を、テルピオネール等を加えてペースト状とし、センサ基体に塗布又は印刷した後、例えば空気中で500℃で1時間焼成する。
【0023】
このセンサ基体の表面に形成された成形体に、必要に応じてシリカ系やアルミナ系のバインダーを塗布した後、例えば空気中で700℃で1時間焼成し、ケトン感応素子6を形成する。
【0024】
また、ケトン感応素子6の他の製造方法を例示すると、まず、メタタングステン酸アンモニウムや無水タングステン酸のようなタングステン化合物を、例えば空気中で500°で1時間加熱して焼成した後、粉砕して、粉体状の酸化タングステンを得る。
【0025】
ここで、金やパラジウム等の添加物を加える場合は、この生成物に金やパラジウム等を加えた後、更に例えば空気中で500℃で1時間加熱して焼成する。
【0026】
この粉体状の酸化タングステンに、必要に応じて、強度改善や電気抵抗値のコントロールのためにα−アルミナを混合し、テルピオネール等を加えてペースト状とし、センサ基体に塗布又は印刷した後、例えば空気中で500℃で1時間焼成する。
【0027】
このセンサ基体の表面に形成された成形体に、必要に応じてシリカ系やアルミナ系のバインダーを塗布した後、例えば空気中で700℃で1時間焼成する。
【0028】
この焼成後の成形体に塩化白金酸水溶液を塗布するなどして白金を添加し、更に空気中で700℃で1時間焼成して、ケトン感応素子6を形成する。
【0029】
このようにして得られるケトン感応素子6を用い、このケトン感応素子6に電気抵抗測定用の一対の電極を設けることにより、ケトンセンサを構成することができる。
【0030】
図1,2に示すケトンセンサでは、ヒータ25及び芯線20をセンサ基体として、このヒータ25及び芯線20を覆うように楕円球体状にケトン感応素子6が形成されている。このケトンセンサは、有底筒状のセンサ筐体40の底部を兼ねる樹脂製のベース30と、ベース30を貫通してセンサ筐体40内外に突出する3本の端子101,102,103と、端子101,102,103にリード線201,202,203を接続固定して支持されたセンシング部Aと、センサ筐体40の天上面に設けられたガス導入用のステンレス製の金網41とを備えている。ここに、ヒータ25は上述のリード線201,202,203間に設けられ、芯線20は上述のリード線202により形成されている。また、リード線202とリード線201,203のいずれか一方とで電気抵抗測定用の電極を構成し、リード線201とリード線203とがヒータ加熱用の電極を構成している。尚、ケトン感応素子6の外径寸法は、長手方向の直径をほぼ0.5mmとし、短手方向の径をほぼ0.3mmとしてある。
【0031】
図3,4に示すケトンセンサでは、アルミナ基板1をセンサ基体として用い、このアルミナ基板1の一面にケトン感応素子6が形成されている。ここでアルミナ基板1の一面にはスルーホールにより他面の金電極4A′,4B′と接続された金電極4A、4Bを図3(a)に示すように設け、金電極4A、4B間に亘るようにケトン感応素子6が形成されている。またこのアルミナ基板1の他面側の各電極2A,2B,4A′,4B′はにはリードワイヤ5を夫々接続して、リードワイヤ5をベース30に貫通した端子10に接続してある。センシング部Aは、厚さ0.3mmで一辺の長さが2mmの正方形のアルミナ基板1の他面に図3(b)に示すように金電極4A′,4B′及びヒータ用の金電極2A,2Bを設け、金電極2A,2B間には酸化ルテニウムからなるヒータ25′を形成している。
【0032】
図5,6に示すケトンセンサでは、円筒状のセラミック管7の外周に印刷により形成された対向電極(図示せず)をセンサ基体として用い、この対向電極の外面にケトン感応素子6が形成されている。センシング部Aは、対向電極及びケトン感応素子6が設けられたセラミック管7の中にコイル状のヒータ25を配設したものであって、軸方向の長さが3.5mm、外径が1.2mmに形成してある。また、ケトン感応素子6に接続された4本のリードワイヤ5はベース30に貫通した6つの端子10のうちの4つに接続され、ヒータ25の両端はそれぞれ残りの端子10に接続されている。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0034】
(実施例1)
ケトンセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、ケトン感応素子6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0035】
まず、メタタングステン酸アンモニウムを空気中で500°で1時間加熱して焼成した後、粉砕して、粉体状の酸化タングステンを得た。この粉体状の酸化タングステンにテルピオネールを加えてペースト状とし、センサ基体に塗布した後、空気中500℃で1時間、更に空気中700℃で1時間焼成して成形体を得た。この成形体に、白金含有量が酸化タングステンに対して0.3質量%となるように塩化白金酸水溶液を添加した後、空気中700℃で1時間焼成してケトン感応素子6を形成した。
【0036】
(実施例2〜6、参考例7)
白金を酸化タングステンに対して0.01質量%、0.1質量%、0.6質量%、1質量%、3質量%、10質量%の各割合で含むようにした以外は実施例1と同様にして、各ケトン感応素子6を形成し、このケトン感応素子6を用いて、図1,2に示すようなケトンセンサを作製した。
【0037】
(実施例8)
ケトンセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、ケトン感応素子6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0038】
まず、メタタングステン酸アンモニウムを空気中で500°で1時間加熱して焼成した後、粉砕して、粉体状の酸化タングステンを得た。この粉体状の酸化タングステンに金を酸化タングステンに対して0.3質量%配合し、更に空気中で500℃で1時間加熱して焼成した。更にテルピオネールを加えてペースト状とし、センサ基体に塗布した後、空気中500℃で1時間、更に空気中700℃で1時間焼成して成形体を得た。
【0039】
この成形体に塩化白金酸水溶液を塗布して白金を添加し、更に空気中で700℃で1時間焼成して、白金を酸化タングステンに対して0.3質量%含むと共に金を酸化タングステンに対して0.3質量%含むケトン感応素子6を形成した。
【0040】
(実施例9)
金の代わりにパラジウムを用いた以外は、実施例8と同様にして、白金を酸化タングステンに対して0.3質量%含むと共にパラジウムを酸化タングステンに対して0.3質量%含むケトン感応素子6を形成し、このケトン感応素子6を用いて、図1,2に示すようなケトンセンサを作製した。
【0041】
(実施例10)
ケトンセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、ケトン感応素子6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0042】
まず、メタタングステン酸アンモニウムを空気中で500°で1時間加熱して焼成した後、粉砕して、粉体状の酸化タングステンを得た。この粉体状の酸化タングステンにテルピオネールを加えてペースト状とし、センサ基体に塗布した後、空気中で500℃で1時間焼成した。この成形体に、コロイダルシリカを塗布した後、空気中で700℃で1時間焼成した。
【0043】
この焼成後の成形体に塩化白金酸水溶液を白金量が酸化タングステンに対して0.3質量%となるように添加して、更に空気中で700℃で1時間焼成してケトン感応素子6を得た。
【0044】
(比較例1)
塩化白金酸水溶液の塗布による白金の添加を行わなかった以外は実施例1におけるケトン感応素子6と同様にしてセンサ用素子を形成し、このセンサ用素子を用いて図1,2に示すものと同様のセンサを作製した。
【0045】
(比較例2)
塩化白金酸水溶液の代わりに塩化金酸水溶液を用いることにより素子中にAuを酸化タングステンに対して0.3質量%含有するように添加した以外は実施例1におけるケトン感応素子6と同様にしてセンサ用素子を形成し、このセンサ用素子を用いて図1,2に示すものと同様のセンサを作製した。
【0046】
(比較例3)
塩化白金酸水溶液の代わりに塩化パラジウム水溶液を用いることにより素子中にPdを酸化タングステンに対して0.3質量%含有するように添加した以外は実施例1におけるケトン感応素子6と同様にしてセンサ用素子を形成し、このセンサ用素子を用いて図1,2に示すものと同様のセンサを作製した。
【0047】
(比較例4)
ケトン感応素子6の代わりに次に示すように形成されたセンサ用素子を用いて図1,2に示すものと同様のセンサを作製した。
【0048】
まず、塩化スズの水溶液をアンモニアで加水分解してスズゾルを得、このスズゾルを風乾後、空気中において500℃で1時間焼成して酸化スズを得た。この酸化スズに1000メッシュのα−アルミナを等量混合し、更にテルピオネールを加えてペースト状とし、センサ基体に塗布した後、空気中で580℃で3時間焼成して、酸化スズ製のセンサ用素子を形成した。
【0049】
(選択性評価)
実施例1のケトンセンサ及び比較例1〜4のセンサについて、素子温度300℃での種々のガスに対するガス感度を調査した。ここでガス感度は、特定のガスを含む雰囲気中におけるケトン感応素子6及びセンサ用素子の電気抵抗値(R)を、清浄空気中における電気抵抗値(Rair)にて除した値(R/Rair)と定義する。
【0050】
この結果を図7〜9に示す。図7は実施例1、図8(a)は比較例1、図8(b)は比較例2、図9(a)は比較例3、図9(b)は比較例4の結果をそれぞれ示し、図7〜9中において、▲1▼は雰囲気中のガス濃度を3ppmとした場合、▲2▼は雰囲気中におけるガス濃度を30ppmとした場合の結果を示す。
【0051】
これらの結果から明らかなように、実施例1ではアセトンガスに対するガス感度の変化が大きいが、他のガスに対してはガス感度が殆ど変化しないか、アセトンガスの場合と比較してごく僅かしか変化しないものであり、ケトンであるアセトンを選択的に検知できるものであった。
【0052】
それに対して、比較例1〜4では、各種のガス混入雰囲気中において、アセトンの場合とのガス感度の変化量の差が小さかったり、ガス感度の変化量がアセトンの場合よりも大きくなったりするものであり、アセトン以外のガスをも検知してしまうものであった。
【0053】
(温度変動時の選択性評価)
実施例1のケトンセンサ及び比較例1,4のセンサについて、素子温度を変化させた場合の、種々のガスに対する電気抵抗値Rs(kΩ)の変化を調査した。
ここで、素子温度の変更はヒータ25への印加電圧(VH)を変化させることにより行った。
【0054】
この結果を図10,11に示す。図10は実施例1、図11(a)は比較例1、図11(b)は比較例4におけるそれぞれの評価結果を示すものであり、図中にも示すように、×は清浄空気雰囲気中、●はアセトンを100ppm含む雰囲気中、▼は2−ペンタノンを100ppm含む雰囲気中、□はエタノールを100ppm含む雰囲気中、△は水素を100ppm含む雰囲気中、◇は一酸化炭素を100ppm含む雰囲気中、▽はメチルメルカプタンを3ppm含む雰囲気中、■はアンモニアを100ppm含む雰囲気中における、それぞれの評価結果を示すものである。また図中に素子温度が300℃及び400℃の場合でのヒータ25への印加電圧(VH)を示す。
【0055】
これらの結果から明らかなように、比較例1,4ではいずれの温度においても、ケトンであるアセトン又は2−ペンタノンを含む雰囲気中における電気抵抗値と、ケトン以外のガスを含む雰囲気中における電気抵抗値とでは、大きな差が生じることが無く、ケトン以外のガスをも検知してしまうものであった。
【0056】
それに対して、実施例1では広い温度領域において、ケトンであるアセトン又は2−ペンタノンを含む雰囲気中における電気抵抗値と、ケトン以外のガスを含む雰囲気中における電気抵抗値とでは、大きな差が生じるものであり、広い温度領域においてケトンを選択的に検知することができた。特に300〜400℃の温度領域において、ケトンを含む場合とケトンを含まない場合との電気抵抗値の差が著しく増大し、この領域において特に優れたケトンの検知感度を有することが確認された。
【0057】
(ガス濃度特性評価)
実施例1のケトンセンサについて、素子温度350℃におけるガス感度(R/Rair)のガス濃度特性を調査した。
【0058】
この結果を図12に示す。ここで、図中にも示す通り、●はアセトンを含む雰囲気中、▲はエタノールを含む雰囲気中、▽はアセトアルデヒドを含む雰囲気中、■は水素を含む雰囲気中、◇は一酸化炭素を含む雰囲気中、□はエチレンを含む雰囲気中、▼はメチルメルカプタンを含む雰囲気中、△はアンモニアを含む雰囲気中における評価結果をそれぞれ示す。
【0059】
これらの結果から明らかなように、広い濃度領域において、アセトンを含む雰囲気中におけるガス感度と、アセトン以外のガスを含む雰囲気中におけるガス感度とでは、大きな差が生じるものであり、広い濃度領域においてケトンを選択的に検知することができた。
【0060】
また、アセトンにおけるガス感度の変化は、濃度変化に対してほぼ比例しており、アセトン濃度を高い精度で測定できることが確認できた。
【0061】
(ガスクロマトグラフィーによる呼気中アセトン濃度の定量値と、ケトンセンサ感度との相関)
実施例1のケトンセンサが人の呼気中のアセトンを定量的に検出できるかどうかを調べるために、11人の健康な被験者の呼気について、呼気に対するケトンセンサの感度と、ガスクロマトグラフィーで定量したアセトン量に相関があるかどうかを調べた。ケトンセンサの感度測定は、素子温度260℃として、人の呼気を4秒間吹きかけ、吹きかける前の空気中での電気抵抗値(RO)と呼気を吹きかけた後の最小の電気抵抗値(R)を測定し、ガス感度(R/RO)を算出することにより行った。また、同時にガスクロマトグラフィーによる呼気中のアセトンの定量を行った。この結果を図13に示す。
【0062】
ガスクロマトグラフィーによる定量値とケトンセンサの感度とは、相関係数0.95の高い相関性を示し、ケトンセンサを用いて呼気中のアセトンを選択的に高感度で検出可能であることが立証された。
【0063】
(白金添加量とガス感度の相関)
実施例1〜6、参考例7のケトンセンサ及び比較例1のセンサについて、素子温度300℃における種々のガスに対するガス感度(R/Rair)を測定して、白金添加量とガス感度の相関を調査した。ここでガス濃度は3ppmとした。
【0064】
この結果を表1及び図14に示す。ここで、図14では、図中にも示すように、○はアセトンガスを含む雰囲気中、+はエタノールを含む雰囲気中、△はアセトアルデヒドを含む雰囲気中、×は水素を含む雰囲気中、□は一酸化炭素を含む雰囲気中、◇はエチレンを含む雰囲気中、●はメチルメルカプタンを含む雰囲気中での、それぞれの結果を示す。
【0065】
【表1】
Figure 0004575559
【0066】
これらの結果から明らかなように、白金が添加されている実施例1〜6では、アセトンを含む雰囲気中におけるガス感度と、アセトン以外のガスを含む雰囲気中におけるガス感度とでは、大きな差が生じるものであり、アセトンの選択的な検知感度が高いものである。それに対して白金を含まない比較例1では、アセトンを含む雰囲気中におけるガス感度と、アセトン以外のガスを含む雰囲気中におけるガス感度とでは、差が小さくなっており、アセトンの選択的な検知感度が低いものであった。また参考例7ではアセトンに対する感度が小さくなる傾向が現れている。
【0067】
以上のことから、白金の含有量が0.01〜3質量%の範囲にあるときには、アセトン(ケトン)を特に選択的に高感度で検知できることが確認された。
【0068】
(Au,Pdの添加による応答性の改善)
実施例1,8,9のケトンセンサ及び比較例1のセンサを密閉容器内に配置すると共に素子温度を300℃とした。この状態で、まず密閉容器内を清浄空気雰囲気に保持した後、アセトンガスを注入してアセトンガスを1ppm含む雰囲気とし、この状態を保持した後、密閉容器内のガスを排気すると共に清浄空気を注入して再び清浄空気雰囲気とした。この間のケトン感応素子6の電気抵抗値又はセンサ用素子の電気抵抗値を測定した結果を図15に示す。ここで、図中にも示すように、○は白金、金、パラジウム等が混入していない比較例1、□は酸化タングステンに対して白金を0.3質量%、金を0.3質量%含む実施例8、△は酸化タングステンに対して白金を0.3質量%含む実施例1、×は酸化タングステンに対してパラジウムを0.3質量%含む実施例9の、それぞれの結果を示す。
【0069】
これらの結果から明らかなように、比較例1よりも実施例1,8,9の方が、アセトンガスの濃度が変化した場合における電気抵抗値の変化速度が大きくなり、特にアセトンガスの濃度が低下した場合の電気抵抗値の変化速度が大きくなるものであって、応答性が良好なものであった。
【0070】
また、金を添加した実施例8及びパラジウムを添加した実施例9では、これらを添加していない実施例1よりも、更に応答性が向上した。
【0071】
(シリカバインダーによる増感効果)
実施例1,10のケトンセンサについて、素子温度300℃におけるアセトンとエタノールに対するガス感度(R/Rair)のガス濃度特性を調査した。
【0072】
この結果を図16に示す。ここで、図16では、図中にも示すように、●及び○はシリカ系バインダーを含む実施例10の結果であり、●はアセトンを含む雰囲気中、○はエタノールを含む雰囲気中のものである。また▲及び△はシリカ系バインダーを含まない実施例1の結果であり、▲はアセトンを含む雰囲気中、△はエタノールを含む雰囲気中のものである。
【0073】
これらの結果から明らかなように、シリカ系バインダーを含む実施例10では、アセトンガスを検知する場合のガス感度の変化量が増大し、検知感度が向上した。またこのとき実施例1と実施例10とでは、アセトンの場合とエタノールの場合とでの、ガス感度の差が殆ど変わらないものであり、実施例10においても実施例1と同様に、アセトンを選択的に検知できるものである。
【0074】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係るケトン感応素子は、酸化タングステンに白金を添加して得られる金属酸化物半導体から成るため、ケトンに対する感度が高く、ケトンを選択的に検知することができるものであり、このケトン感応素子を用いて信頼性の高いケトンセンサを構成することができる。特に呼気内のアセトンガス検出用として好適に用いることができるものである。
【0075】
また請求項2の発明は、請求項1において、白金の添加量を、酸化タングステンに対して0.01〜3質量%とするため、ケトン以外のガスの感度に対するケトンの感度が特に向上し、ケトンの選択的検知性を更に向上することができるものである。
【0076】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、シリカ系バインダーを添加するため、強度を向上すると共に、ケトンの感度を更に向上することができるものである。
【0077】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、パラジウム又は金を添加するため、ガス検知時の応答性を向上することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す、ガスセンサの要部概略構成図である。
【図2】同上の一部破断した正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の他例の要部を示し、(a)は一面側から視た斜視図、(b)は他面側から視た斜視図である。
【図4】同上の一部破断した斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態の更に他例の要部を示す、一部破断した斜視図である。
【図6】同上の一部破断した斜視図である。
【図7】実施例1における、雰囲気−ガス感度特性を示すグラフである。
【図8】(a)は比較例1、(b)は比較例2の、雰囲気−ガス感度特性を示すグラフである。
【図9】(a)は比較例3、(b)は比較例4の、雰囲気−ガス感度特性を示すグラフである。
【図10】実施例1の、各種の雰囲気における素子加熱用のヒータへの印加電圧−ガス感度特性を示すグラフである。
【図11】(a)は比較例1、(b)は比較例4の、各種の雰囲気における素子加熱用のヒータへの印加電圧−ガス感度特性を示すグラフである。
【図12】実施例1の、各種の雰囲気中における、ガス濃度−ガス感度特性を示すグラフである。
【図13】実施例1の、低濃度のアセトンを含む雰囲気中における、ガス濃度−ガス感度特性を示すグラフである。
【図14】 実施例1〜6、参考例7及び比較例1の、各種の雰囲気中における、白金添加量−ガス感度特性を示すグラフである。
【図15】実施例1、8,9及び比較例1の、アセトンガスに対する応答性を示すグラフである。
【図16】実施例1,10の、アセトンを含む雰囲気中及びエタノールを含む雰囲気中におけるガス濃度−ガス感度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
6 ケトン感応素子

Claims (3)

  1. 酸化タングステンに白金を添加して得られる金属酸化物半導体から成り、白金の添加量を、酸化タングステンに対して0.01〜3質量%として成ることを特徴とするケトン感応素子。
  2. シリカ系バインダーを添加して成ることを特徴とする請求項1に記載のケトン感応素子。
  3. パラジウム又は金を添加して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のケトン感応素子。
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