JP4574237B2 - 電解めっき装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被めっき物にめっき処理を施す電解めっき装置に関する。
袋状ワーク、例えば、袋ナットの表面に電解めっき等の処理を施すことが行われている。袋状のワークの外面、内面に、酸電解(焼入後のスケール取り)や電解めっき等の処理を施す場合は、いわば魚の骨を逆さ吊りしたような浸漬保持具を用いる場合が多い。その浸漬保持具のそれぞれの枝部に、1個ずつ袋ナットをその開口から取り付けることにより、多数の袋ナットをそれぞれが斜め上を向く状態(開口部が斜め下を向く状態)でツリー状に保持し、その保持具を多数の袋ナットとともに酸電解槽(硫酸液等を主体とする)やめっき槽等に浸漬して脱スケール処理やめっき処理等を行っている(特許文献1)。
図20は、袋ナットを保持してめっき槽等に浸漬するための従来の浸漬保持具を概念的に示す。(a)は、浸漬保持具201の正面図である。浸漬保持具201は、本体フレーム部から斜め上を向く形状に支持竿部202が形成されている。この支持竿部202に袋ナット1の開口部を差し込む形態で、浸漬保持具201に袋ナット1を保持させる。図20(b)は、浸漬保持具201をめっき槽215に浸漬させたところを示す。図は、浸漬保持具201の側面を示している。このように浸漬保持具201に袋状ナット1を保持させた状態で、めっき槽215等に浸漬して、外面および内面の表面処理を行っている。このとき、めっき槽215に電極211を設置し、正の電圧を印加し、浸漬保持具201には、負の電荷を印加することによって、袋ナット1の表面処理を行う。
特開2001−335994号公報
しかしながら、浸漬保持具201を多数の袋ナット1とともに例えばめっき槽215等の液槽に浸漬していく過程で、袋ナット1の閉ざされた空間(閉鎖空間)にはめっき液等の液が入り込むが、閉鎖空間内に閉じ込められる空気により液はその閉鎖空間に充満することはできず、袋ナットの内面には液と接触できない部分が残る。また電流のほとんどが袋ナット1の外面に流れて内面に流れにくい実状もある。つまりこのような方法によると、袋ナットの内面全体をめっき液等により処理することが難しい。
さらに図20の浸漬保持具201のように多段に支持竿部202を形成した場合、上段に保持された袋ナットと、下段に保持された袋ナットに形成されるめっき層の厚さが大幅に異なってしまう。これは、多段のため電流の流れ方が一様とはならないためで、下段の袋ナットに厚いめっき層が形成される。すなわち製品間にめっき厚のばらつきを生じることとなる。
そこで本発明の課題は、液槽に浸漬することにより、被めっき物に表面処理を施す場合に、良好なめっき被膜、特に均一的なめっき厚を有するめっき被膜を形成する電解めっき装置を提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記課題を解決するための本発明の電解めっき装置は、
被めっき物を処理するためのめっき液を貯留する液槽と、
前記液槽内に設置され、被めっき物に負の電圧を印加する負電圧印加部と、
前記液槽内で対向して両側に配置され、正の電圧が印加される正電極部と、
前記被めっき物は複数であり、その複数の被めっき物を直線的に配列するようにした被めっき物列を、前記正電極部の対向間に浸漬されるようにするとともに、この被めっき物列と前記両側の正電極部との間で、複数が直線的に配列され、被めっき物列と平行となした補助電極部列が配列され、
一方の前記正電極部から、前記補助電極部列と、前記被めっき物列とが、交互に並び、第n被めっき物列の次に第n+1補助電極部列(nは、正の整数)、さらに他方の前記正電極部と並んだ状態で、前記被めっき物を液槽内のめっき液に浸漬してめっき処理を行うことを特徴とする
液槽内に貯留されためっき液に被めっき物を浸漬して、負電圧印加部と正電極部と複数の補助電極部とによって被めっき物に電解めっき処理を施すことができる。負電圧印加部と正電極部に加え、複数の補助電極部を有し、特に被めっき物を取り囲む位置に補助電極部が設置されていることから、良好なめっき被膜を形成することができる。
より具体的には、補助電極部は、一方の正電極部から、補助電極部列と、被めっき物列とが、交互に並び、第n被めっき物列の次に第n+1補助電極部列(nは、正の整数)、さらに他方の正電極部と並ぶように設置される。このように補助電極部列と、被めっき物列とが交互に並ぶことから、安定して被めっき物に電流を流すことができ、良好なめっき被膜を形成することができる。
また本発明の電解めっき装置は、
個別の被めっき対象物であるワークを2列以上の直線的で互いに平行な列をなすように所定間隔で保持する保持具が、そこに保持された複数列のワークとともにめっき液槽に浸漬されて、複数のワーク列がめっき液槽の液面とほぼ平行になることを前提として、
複数のワーク列における各列の両側に、複数の補助電極部が所定間隔で並んだ補助電極部列がワーク列と平行になるように配置され、各補助電極部列はワーク列の列間ピッチの1/2ピッチ地点に位置するように、補助電極部列の列間ピッチとワーク列の列間ピッチが等しくなるようにされるとともに、ワーク列内おけるワーク間ピッチと補助電極部列内における補助電極部の電極間ピッチとが等しくなるようにされ、かつ補助電極部列の各電極間ピッチとワーク列のワーク間ピッチとが半ピッチずれて、ワーク列のワーク間ピッチの1/2ピッチ地点に補助電極部列の各補助電極部がそれぞれ千鳥状に位置するようにされ、1個のワークに着目したとき、その1個のワークを中心にして矩形の対角線上の4隅に当たる該中心から互いに等距離にある4位置に補助電極部が位置するように、補助電極部が保持具のめっき液槽への浸漬移動に干渉しない位置においてめっき液槽に配列されている。
上記のように補助電極部列とワーク列がほぼ平行に、各補助電極部列はワーク列の列間ピッチの1/2ピッチ地点に位置するように、かつ補助電極部列の各電極間ピッチとワーク列のワーク間ピッチとが半ピッチずれて配置されることから、各ワークに対して、対称位置に補助電極部が形成されていることになる。このような配列をとることから、各ワークに対し、均一的に電流を流すことができ、よって、各ワークのめっき厚を均一的に形成することができる。
そしてこの電解めっき装置で処理される被めっき物は、例えば、袋状空間を有する袋状ワークである。より具体的には、例えば、ハブナットである。
以上のような、補助電極部、ワーク、正電極部の配列を採用することにより、複数の各ワーク間にめっき厚のばらつきが生じることを防ぐことができるのみならず、一つのワーク内における膜厚の不均一を抑えることができる。つまりワーク全体を均一的なめっき膜厚とすることができる。また上記のごとく、各ワークに対して対称位置に配列される補助電極部は、めっき液槽内に設置される場合に限られない。ワークを保持するための保持具に同様の配列で補助電極を設置してもよい。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。図1は袋状ワークの一例として袋ナットを示すものである。袋ナット1は、めねじ部4を有する本体2と、本体2におねじ部材の螺入側とは反対側の開口を塞ぐキャップ部3とを備え、めねじ部4とその奥部の空所(ボルト等のおねじ部材の先端部が進入する部分)とにより袋状の空間(閉鎖空間)5が形成される。本体2の外面には、側方にせり出したフランジ7を有する。このような袋ナットの一例として、ハブナットが挙げられる。このような袋ナット1が、鍛造加工さらに転造もしくは切削等によるねじ加工、キャップ部3の溶接及び必要に応じて熱処理の後、洗浄や防錆、めっき等のために所定の液槽に浸漬される。
その際、図2に示すようなワーク保持部材である浸漬保持具21を用いる。この浸漬保持具21は、上面と下面とを貫通する貫通孔を有する基底部27、基底部27の上面側の貫通孔上から延びた吸引管(または吐出管ともなる)としての突起管25、基底部27から延びたガイド軸24、複数の突起管25とガイド軸24とが挿入される挿入孔(貫通孔)を有する摺動板26、ガイド軸24を支持する支持軸23a,23b、さらにその支持軸23a,23bと接続される支持板22を備える。この浸漬保持具21は、電流を流すことができるように、金属などの導体によって形成される。例えば、チタンを使用することができる。ただし、支持板22は、支持軸23aと支持軸24bとの絶縁をとるために不導体で形成される(支持軸23aと支持軸24bとの絶縁がとれれば、支持板22の全体が不導体である必要はない)。支持板22は、搬送ラインに連結され得る形状であれば、図のような形状に限られない。基底部27が、2列並列に形成されているが、必ずしも2列、または並列に形成される必要はない。また突起管が各基底部27上に3本形成されているが、突起管の数は、3本に限られない。基底部の数や突起管の数を増やすと、多くの袋状ワークを同時に処理することが可能となる。
従来の多段の袋状ワーク保持部を有する浸漬保持具の場合、前処理やめっき処理を施す液槽が深く形成される必要があるのに対し、この浸漬保持具21は、突起管25が一面上に並ぶため、前処理やめっき処理を施す液槽の深さを浅くすることができる。水洗槽も浅くすることができるため、給水量や放水量が少なくなる。まためっき処理ラインを設置する建屋を従来よりも低くできる。さらに従来の多段の浸漬保持具の場合は、上段に保持された袋状ワークと、下段に保持された袋状ワークとのめっき厚に差が生じるが、この浸漬保持具21は、一段に形成されているため、袋状ワークのめっき厚に差が生じにくい。従来の多段の浸漬保持具では、めっき厚を25μmとするためにめっき処理を施すと、製品間に10μm程度のめっき厚のばらつきが生じていた。この浸漬保持具は、被めっき物が、一面上にならぶ一段構造であるため、製品間のめっき厚のばらつきを2〜3μm程度に抑えることができる。
図3に浸漬保持具21の拡大断面図を示す。基底部27には、複数の貫通孔28が形成され(図2の実施例の場合、一つの基底部27には、3箇所の貫通孔)、その貫通孔28上に突起管25が形成されている。突起管25の先端部35を除く部分の表面には、絶縁部12(例えば、樹脂モールド)が形成されている。突起管25の貫通孔34と、基底部27の貫通孔28は連なって形成されており、基底部貫通孔28の下部から突起管貫通孔34の上部へ、あるいは突起管貫通孔34の上部から基底部貫通孔28の下部へと、気体または液体が流動可能である。これら突起管34の先端部35に1つずつ袋ナット1が装着される。摺動板26には、ガイド軸24a、突起管25を挿入するための貫通孔33が形成されており、摺動板26は、ガイド軸24aにガイドされ、ガイド軸24aに沿って摺動可能である。また摺動板26の貫通孔33内に突起管25が位置する。ガイド軸24aと基底部27とは、絶縁部11(例えば、塩化ビニル)によって電気的に絶縁されている。
図4に浸漬保持具21の拡大斜視図を示す。真中の突起管25に袋ナット1が装着された例を示す。袋ナット1は、突起管25の先端部35に被せる状態で装着される。図は、他の突起管25に袋ナット1が装着されていないが、表面処理工程においては、通常、すべての突起管25の先端部に袋ナットを装着する。また図は、摺動板26が、上に移動した上昇位置にセットされているところを示す。摺動板26が、上昇位置にある状態では、後述するように内面めっきを施すことができる。この実施例の場合は、突起管が3本であるが、突起管の数は、3本に限られない。さらにガイド軸と複数の突起管が一直線上に並ぶ必要は、必ずしもない。
図5に電解めっきラインの例を示す。各処理工程を施すための液槽51ないし67が並んで設置され、その上方に浸漬保持具21を搬送するための搬送ライン72が設置されている。さらに搬送ライン72や各液槽の諸条件を制御するための制御盤71が設置されている。搬送ライン72は、浸漬保持具21を上下させるための昇降装置73と、浸漬保持具21を連結するための連結部74を備える(半光沢槽59上以外の浸漬保持具21、連結部74、昇降装置73は、省略されて描かれていない)。各液槽において順次処理が行われることにより、袋状ワークとしての袋ナット1に電解めっき(例えばニッケルクロムメッキ等)が施される。
まず、ロード/アンロード工程(ステーション)(図示されていない)で、浸漬保持具21の突起管25に、袋ナット1が、開口が下を向くようにして取り付けられる。そして、袋ナット1が突起管25に装着された浸漬保持具21は、搬送ライン72に連結され、その巡回搬送路に沿って搬送されつつ、それぞれの液槽に浸漬される。
巡回搬送路72は、例えばチェーン等の無限軌道が、モーター等の駆動装置により巡回させられるものである。巡回搬送路72の連結部74および昇降装置73は、巡回搬送路72に沿って巡回する。
ある浸漬保持具21は、巡回搬送路72に沿って間欠的に送られつつ、各液槽上において停止し、下降してその液槽に浸漬される。そして液槽から引き上げられ、次の液槽へ送られる。前進、停止、下降、上昇、前進により、各液槽を一巡して、その浸漬保持具21に装着されている袋ナットに電解めっきが施される。そしてこれらの工程終了後、ロード/アンロードステーションに戻り、袋ナット1ごと浸漬保持具21が連結部74から取り外され、代わりに、未処理の袋ナット1を多数保持する別の浸漬保持具21が連結部74に装着される。
次に各工程について説明する。電解めっきの工程に先立ち、脱脂等の前工程が施される。主要なものは、脱脂槽51における脱脂工程、陰極酸電解槽52における電解(スケール除去)工程、酸洗槽54における酸洗工程、陽極電解脱脂槽56における電解脱脂(活性化)工程、中和槽57における中和工程である。これらの間に、水洗槽53、55、58が配置されて、洗浄される。前工程が終了すると、続いてめっき工程が実施される。めっき工程は、半光沢槽59、トリNi槽60、光沢Ni61、ジュールNi槽62、クロム槽64によって行われる。また水洗槽63,65,66によって洗浄され、乾燥槽67にて乾燥されて、ロード/アンロードステーション(図示されていない)によって、処理の行われた袋ナットが取り外され、未処理の袋ナットが装着される。つまり浸漬保持具21は、間欠的に巡回移動して、各液槽51〜66等への浸漬を繰り返し、各種処理が施される。間欠移動の停止時に、各浸漬保持具21が一斉に下降することにより、脱脂、洗浄、めっき等の工程が並列的に実施される。
ここで、一つの浸漬保持具21に着目し、それに保持された複数の袋ナットに対する各工程を順に説明する。ロード/アンロードステーションで、浸漬保持具21を介して工程ライン(巡回搬送路)に供給された多数の袋ナットは、そのステーションから一定量前進して停止し、アルカリ脱脂工程で所定のアルカリ溶液(脱脂層51)に浸漬(下降)されてアルカリ脱脂が行われる。次に、ここから引き上げられ(上昇)、一定量前進してから、熱処理により袋ナットに生じているスケールを除去する(スケールとばし)陰極酸電解工程が電解槽52において実施される。続いて、ここから引き上げられ(上昇)、一定量前進してから水洗槽53に浸漬(下降)されて、水洗工程53が実施される。その水洗の後、袋ナットは(浸漬保持具21と共に)引き上げられ、また一定量前進して、今度は袋ナットが硫酸溶液等(酸洗槽54)に浸漬(下降)される。
それから、袋ナットは、水洗槽55で、上記と同様の水洗工程により上記硫酸溶液等が洗われた後、めっきの付きを良くするために、所定のアルカリ溶液(陽極電解脱脂槽56)に浸漬され、表面を活性化する陽極電解脱脂工程が施される。さらに、中和工程(中和槽57)、上記と同様の水洗工程(水洗槽58)を経て、めっき工程に至る。
めっき工程においては、半光沢槽59、トリNi槽60、光沢Ni槽61、ジュールNi槽62の各槽においてニッケルめっきが施される。めっき槽57に多数の袋ナットが浸漬保持具21に保持された状態で浸漬(下降)され、袋ナットにめっき層が形成される。半光沢槽59においては、後述するように、内面めっき、外面めっきが施される。続くトリNi槽60、光沢Ni槽61、ジュールNi槽62の各槽においては、外面めっきが施される。
このようなめっき工程により、内面に半光沢めっき、外面に光沢めっきを施すことができる。外面は、光沢仕上げにできるため装飾効果を確保できる。つまり内面と外面とを異なるめっき層として仕上げることができる。また内面全体にめっき処理を施すことができるため、内面においても防錆効果が得られるばかりではなく、内面は半光沢めっきで薄く仕上げることができるために、ねじの精度を確保しやすい。
このめっき工程が終われば、一定量前進してから、水洗槽63に浸漬されて水洗される。そしてさらにクロム槽64に浸漬され、クロムめっきが施される。続いて水洗工程の水洗槽65,66に至り、そこでめっき液が洗われる。
浸漬保持具21の使用は、必ずしも上記のようなめっき工程に限られない。必要に応じて一部めっき工程を行わないこともできるし、あるいはさらに別の工程を行うこともできる。
図6を用いて、浸漬保持具21を使用した電解めっきラインにおける処理工程について説明する。浸漬保持具21に保持された袋ナット1は、前処理工程の液槽に順次浸漬されて表面を清浄化され、水洗槽58で洗浄された後、めっき工程の半光沢槽59へ移動する。半光沢槽59において、内面めっき、外面めっきを施される。(a)に示すように、半光沢めっき槽59上に移動した浸漬保持具21は、下降して、(b)に示すように、半光沢めっき槽59に浸漬される。半光沢めっき槽59には、ノズル86を有する流動補助具85が設置されている。流動補助具を図7に示す。流動補助具85は、上面にノズル86を複数有する。このノズル86には、貫通孔(図示されていない)が形成され、貫通孔は、流動補助具85の下面に連結されているパイプ87と接続されている。そして図6に示すように、流動補助具85の下面から、パイプ87によってポンプ75へと接続されている。
図6(b)に示すように、流動補助具85の上面に形成されたノズル86に浸漬保持具21の基底部27の貫通孔28(図3参照)が当接する。内面めっきを施す場合には、摺動板26は、上昇位置にセットされる。
図8を用いて、半光沢槽59内における内面めっきと外面めっきの浸漬保持具21の摺動板26の位置を説明する。図の左側において内面めっき、右側において外面めっきを施す。(a)に示すように袋ナット1を水洗槽58で洗浄した後、まず半光沢槽59の前部(図の左側)において、摺動板26を上げた位置にして、基底部27の貫通孔28が、流動補助具85のノズル86に当接された状態で、袋ナット1に内面めっきを施す。図に示すようにストッパー37を液槽に備え、これに摺動板26が載ることにより、摺動板26を上昇位置としてもよい。あるいは、浸漬保持具21にモータなどの駆動装置を備えて上下に移動させてもよい。これらは、支持部材相対位置変換装置である。(b)に突起管25の先端部分の拡大図を示す。摺動板26が上昇位置にある場合、図の左側に示すように、突起管25の先端部分は、袋ナット1の内面と非接触状態である。この状態で内面めっきを施すことができる。続いて、(a)の右側に示すように、半光沢槽59の後部(図の右側)において、摺動板26を下げた位置にして、袋ナット1に外面めっきを施す。(b)の右側に、突起管の先端部分の拡大図を示す。摺動板26が下降位置にある場合、図に示すように突起管25の先端部分は、袋ナット1の内面に接触した状態である。この状態で電圧を印加して、外面めっきを施すことができる。なお前部(図の左側)において摺動板26が下がる状態になり、後部(図の右側)において摺動板26が上がる状態となるようにし、外面めっき、内面めっきの順にめっき処理を行ってもよい。
めっき処理を施す場合の電圧印加は、半光沢槽59に図9に示すような通電装置となる電圧印加部を形成することによって行うことができる。(a)は、半光沢槽59の電極印加部を説明するための図である。半光沢槽59の前部(図の左側)において、内面めっき、後部(図の右側)において、外面めっきを施す。電圧印加部76,78は、負の電圧を印加することができる負電圧印加部であり、電圧印加部77は、正の電圧を印加することができる正電圧印加部である。そして、この電圧印加部76,77,78に浸漬保持具21が設置される。
図9(b)に示すように、内面めっきを施す場合には、電圧印加部76,77に、浸漬保持具21が設置される。そして電源線79aにより電圧印加部76から支持軸23aへ負の電圧が印加される。さらに電源線79bにより、電圧印加部77から支持軸23bへ、正の電圧が印加される。
図10を用いて、内面めっきの処理を説明する。内面めっきを施す場合は、摺動板26を上昇位置にする。これにより、袋ナット1の袋状空間の頭部面6と突起管25の先端面29とは、接触せずに間隙を有する状態となる。この状態で、半光沢槽59に浸漬し、図9に示したように浸漬保持具21を電圧印加部76,77に設置して、一方の支持軸23aからガイド軸24aに負、他方の支持軸23bからガイド軸24bに、正の電圧を印加する。ガイド軸24aと基底部27とは、絶縁部11により電気的に絶縁されている。また摺動板26とガイド軸24bとは、絶縁部13により電気的に絶縁されている。これによりガイド軸24a、摺動板26から袋ナット1に外面に負の電圧が印加される。さらにガイド軸24b、基底部27から突起管25に正の電圧が印加される。袋ナット1が負、その袋状空間内に挿入された突起管25が正に印加されることから、袋状ナット1の内面にめっきが施される。なお外部アノードを設置して、このアノードに通電すれば、内面めっきと同時に外面めっきも施すことができる。
袋ナットを浸漬保持具21で保持した状態で、めっき液48中に単に浸漬した場合は、袋ナット1の袋状空間5に、空気等の気体が存在するために、内面が十分にめっきされない。そこで内面めっきを施す場合には、図11(a)に示すように、突起管25、流動補助具85につながる負圧吸引装置としてのポンプ75によって、袋状空間5内の気体や液体を吸引する。袋状空間5内の気体を吸引することにより、液槽内のめっき液48が袋状空間内に流入して、袋状空間内を充満することができる。すなわち吸引することによりめっき液を流動させつつ、電解めっきのための電圧を印加する。あるいは、流動させた後に電圧を印加させるようにしてもよい。従来は、袋状空間5に満たされた気体により、めっき液48が袋状空間の奧部まで侵入しないため、袋状空間の開口周辺しか、めっき処理を施すことができなかったが、このように吸引することにより袋状空間5をめっき液48で満たすことができ、また袋ナット1の内面に対向して正電極(突起管25)を配置し、袋ナットの内面に電流を十分流すことができることから、袋ナット1の内面全域をめっきすることができる。さらに吸引を続けると、めっき液48が流動して、良好なめっき処理が可能となる。あるいは(b)に示すように、加圧吐出装置として、例えばポンプを使用して、突起管25からめっき液48を袋ナットの袋状空間に噴出させて、めっき処理を行ってもよい。噴出させることにより、内面全体にめっき処理を施すことができる。この場合、内面に圧力がかかることになるため、図12(a)に示すように、袋ナットの頭部1を固定部材41で抑えて袋ナット1を強制的に固定するとよい。または、図12(b)に示すようにフランジ部7を固定部材42で抑えるようにしてもよい。なお図11においては、突起管が袋状空間内に挿入されているが、図13に示すように開口部近傍に端部が位置するようにして、同様に処理してもよい。この場合も袋状空間5内をめっき液48で充満させることができ、また袋ナット1の内面に電流を十分流すことができる。
次に外面めっきについて、図14を用いて説明する。外面めっきを施す場合には、摺動板26を下降位置にセットする。そして電圧印加部78(図9参照)によって、支持軸23b、ガイド軸24b、基底部27、突起管25に負の電圧が印加される。また電圧印加部78から、支持軸23a、ガイド軸24a、摺動板26、基底部27と負の電圧が印加される。摺動板26が下降位置にある場合には、袋ナット1の袋状空間の頭部面6は、突起管25の先端面29と接触している。このため突起管25から袋ナット1に負の電圧が印加される。また図15に示すように、半光沢槽59内にアノード91を設置する。このようにして袋ナット1側が負、アノード側が正の電圧となることによって、袋ナット1の外面にめっき処理を施すことができる。
さらに液槽内のアノード91以外に、補助陽極92を設置した例を図16に示す。図16は、液槽を上から眺めたところを示す。液槽内の両側に正電極部であるアノード91が対向して設置されている。そしてアノード間に複数の補助電極部である補助陽極92が設置されている。この補助陽極に囲まれた領域に、浸漬保持具21に保持された袋ナット1が、それぞれ設置されることになる。この配列は、一方のアノード91から、第1補助電極部列、第1被めっき物列、第2補助電極部列、第2被めっき物列、第3補助電極部列というように、補助電極部列と被めっき物列とが、交互に並び、第n被めっき物列の次に第n+1補助電極部列(nは、正の整数)、さらに他方のアノード91と並んでいる。
そして各補助電極部列は、被めっき物列(ワーク列)の列間ピッチの1/2ピッチ地点に位置するように、かつ補助電極部列の各電極間ピッチと被めっき物列(ワーク列)のワーク間ピッチとが半ピッチずれて配置されている。つまり、各ワークに対して、対称位置に補助電極部が形成されていることになる。さらに一つの袋ナット1aに注目して、周りの補助電極部を見ると、矩形の四隅に補助電極部(補助陽極)92a,92b,92c,92dが配置されている。すなわち補助電極部92aと補助電極部92dとは、袋ナット1aに対して対象位置に配置され、同様に補助電極部92bと補助電極部92cとは、袋ナット1aに対して対象位置に配置されている。各補助電極部は、めっき液槽の、保持具のめっき液槽への浸漬移動に干渉しない位置に配列されている。
そしてアノード91、補助陽極92に正の電圧を印加し、前述のように電圧印加部78によって、支持軸23b、ガイド軸24b、基底部27、突起管25、袋ナット1に負の電圧が印加される。このようにして袋ナット1の外面にめっき処理を施すことができる。袋ナット1を取り囲むように補助陽極92が設置されていることから、電流が安定して、かつ均一に流れることができ、外面に、より一様な厚さのめっきを施すことができる。
図17に液槽の断面図を示す。図16に示したようにアノード91が液槽の一面と他面に設置され、そのアノード91間に補助陽極92が設置されている。そして、治具によって浸漬された袋ナット1と補助陽極92とが、交互に並ぶ配列となっている。これにより、袋ナットに均一に電圧を印加することができ、効率よく、ばらつきの少ないめっき厚を有するようにめっき処理を施すことができる。また、補助電極部(補助陽極)は、めっき槽内に設置されずに、浸漬保持具に設置されるようにしてもよい。
内面めっきの他の方法について図18を用いて説明する。(a)に示すように、浸漬保持具の摺動板126によって保持された袋ナット1は、めっき液48上に移動される。そして液面上で、突起管125から、めっき液を噴出する。めっき液を噴出することにより、袋ナット1の内面全域をめっき処理することができる。このとき、噴出圧によって袋ナットが動かないように、袋ナット1の頭部等を抑えて固定しておくとよい。内面めっき処理工程が終了すると、続いて(b)に示すように、めっき液内に、袋ナットを浸漬し、外面めっきを施す。
図19を用いて、処理液循環方法を説明する。図19は、めっき槽151、例えば、半光沢槽を示す。このめっき槽151には、流出管135、ポンプ75、流入管136が備えられている。袋ナット1を、浸漬保持具によって保持して、めっき槽151へ浸漬し、流出管135の先端部が、袋ナット1の袋状空間に挿入されるようにする。あるいは、前述の浸漬保持具21のように突起管が袋状空間に挿入され、流動補助具85を経て、流出管135へ連結される構造としてもよい。この状態で、袋ナット1に電圧を印加して、めっき処理を施す。この時、ポンプ75で袋ナット1の袋状空間内の気体または液体を吸引する。そして流出管135、ポンプ75と吸入された気体または液体は、流入管136によってめっき槽151内へ、流入される。これにより、めっき槽151内の処理液に流動が起こり、めっき効率を上げることができる。
なお袋状ワークとして図21に示すような袋ナット301に対し本発明を適用することができる。
以上の効果を確かめるために、めっき処理を行い、袋ナットのめっき層の厚さについて測定した。内面は、めっきによって十分に、全領域に渡り被覆されていることが確認された。
さらにアノードと補助陽極を使用して、ナットに外面めっきを施して、そのめっき厚を過電流式非破壊膜厚計を用いて測定を行った。測定箇所にばらつきが少なく、ほぼ同じ程度の膜厚を得ることができた。以上の試験から、両側のアノードと補助陽極を使用した場合には、外側のめっき膜厚のばらつきが小さく、一様にめっき処理が施されていることが確認された。
以上の内面めっきにおける袋状空間の気体または液体の吸引や噴出、このための浸漬保持具、補助陽極は、ニッケルめっきに限られない。さらに被めっき物は、袋状空間を有するワークであれば、袋ナットに限られない。内面めっきと外面めっきとを異なる工程において行うことで、内面と外面とを異なるめっき層に仕上げることができる。
浸漬保持具が利用される袋状ワークの一例としての袋ナット。 浸漬保持具の実施例。 浸漬保持具の拡大断面図。 浸漬保持具の拡大斜視図。 めっき処理ラインの実施例。 めっき処理ラインにおける浸漬保持具の動作を説明する図。 流動補助具を説明する図。 内面めっき、外面めっきにおける浸漬保持具の使用状態を説明する図。 液槽の電圧印加部について説明する図。 内面めっきにおける摺動板の位置と電圧印加について説明する図。 内面めっきを施すための気体・液体の吸引または吐出について説明する図。 袋ナットの固定について説明する図。 突起管が開口部近傍に位置する場合を示す図。 外面めっきにおける摺動板の位置と電圧印加について説明する図。 液槽内のアノードについて説明する図。 アノードと補助陽極について説明する図。 補助陽極を配置した液槽の断面図。 処理液の吐出によるめっき処理について説明する図。 処理液の循環について説明する図。 従来の浸漬保持具とめっき処理を説明する図。 袋状ワークの他の実施例としての袋ナットの図。
符号の説明
1 袋ナット
21 浸漬保持具
24 ガイド軸
25 突起管
26 摺動板
27 基底部
59 半光沢槽
72 搬送ライン
75 ポンプ
76,77,78 電圧印加部
91 アノード
92 補助陽極

Claims (2)

  1. 被めっき物を処理するためのめっき液を貯留する液槽と、
    前記液槽内に設置され、被めっき物に負の電圧を印加する負電圧印加部と、
    前記液槽内で対向して両側に配置され、正の電圧が印加される正電極部と、
    前記被めっき物は複数であり、その複数の被めっき物を直線的に配列するようにした被めっき物列を、前記正電極部の対向間に浸漬されるようにするとともに、この被めっき物列と前記両側の正電極部との間で、複数が直線的に配列され、被めっき物列と平行となした補助電極部列が配列され、
    一方の前記正電極部から、前記補助電極部列と、前記被めっき物列とが、交互に並び、第n被めっき物列の次に第n+1補助電極部列(nは、正の整数)、さらに他方の前記正電極部と並んだ状態で、前記被めっき物を前記液槽内のめっき液に浸漬してめっき処理を行うことを特徴とする電解めっき装置。
  2. 個別の被めっき対象物であるワークを2列以上の直線的で互いに平行な列をなすように所定間隔で保持する保持具が、そこに保持された複数列のワークとともにめっき液槽に浸漬されて、前記複数のワーク列が前記めっき液槽の液面とほぼ平行になることを前提として、
    前記複数のワーク列における各列の両側に、複数の補助電極が所定間隔で並んだ補助電極列がワーク列と平行になるように配置され、各補助電極列は前記ワーク列の列間ピッチの1/2ピッチ地点に位置するように、前記補助電極列の列間ピッチと前記ワーク列の列間ピッチが等しくなるようにされるとともに、前記ワーク列内おけるワーク間ピッチと前記補助電極列内における前記補助電極の電極間ピッチとが等しくなるようにされ、かつ前記補助電極列の各電極間ピッチと前記ワーク列のワーク間ピッチとが半ピッチずれて、前記ワーク列のワーク間ピッチの1/2ピッチ地点に前記補助電極列の各補助電極がそれぞれ千鳥状に位置するようにされ、1個の前記ワークに着目したとき、その1個の前記ワークを中心にして矩形の対角線上の4隅に当たる該中心から互いに等距離にある4位置に前記補助電極が位置するように、前記補助電極が前記保持具のめっき液槽への浸漬移動に干渉しない位置において前記めっき液槽に配列されていることを特徴とする電解めっき装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH06235093A (ja) * 1992-11-03 1994-08-23 Pechiney Rech Group Interet Economique Regie Par Ordonnance Du 23 Septembre 1967 金属、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金製の缶の表面処理方法、デバイス及び装置

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