複数のコンピュータを接続してLANを構成することにより、ファイルやデータなどの情報の共有化、プリンタなどの周辺機器の共有化を図ったり、電子メールやデータ・コンテンツの転送などの情報の交換を行なったりすることができる。
従来、光ファイバーや同軸ケーブル、あるいはツイストペア・ケーブルを用いて、有線でLAN接続することが一般的であったが、この場合、回線敷設工事が必要であり、手軽にネットワークを構築することが難しいとともに、ケーブルの引き回しが煩雑になる。また、LAN構築後も、機器の移動範囲がケーブル長によって制限されるため、不便である。
そこで、有線方式によるLAN配線からユーザを解放するシステムとして、無線LANが注目されている。無線LANによれば、オフィスなどの作業空間において、有線ケーブルの大半を省略することができるので、パーソナル・コンピュータ(PC)などの通信端末を比較的容易に移動させることができる。
近年では、無線LANシステムの高速化、低価格化に伴い、その需要が著しく増加してきている。特に最近では、人の身の回りに存在する複数の電子機器間で小規模な無線ネットワークを構築して情報通信を行なうために、パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)の導入の検討が行なわれている。例えば、2.4GHz帯や、5GHz帯など、監督官庁の免許が不要な周波数帯域を利用して、異なった無線通信システムが規定されている。
無線ネットワークに関する標準的な規格の1つにIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11(例えば、非特許文献1を参照のこと)や、HiperLAN/2(例えば、非特許文献2又は非特許文献3を参照のこと)やIEEE802.15.3、Bluetooth通信などを挙げることができる。IEEE802.11規格については、無線通信方式や使用する周波数帯域の違いなどにより、IEEE802.11a規格、IEEE802.11b規格…などの各種無線通信方式が存在する。
無線技術を用いてローカル・エリア・ネットワークを構成するために、エリア内に「アクセス・ポイント」又は「コーディネータ」と呼ばれる制御局となる装置を1台設けて、この制御局の統括的な制御下でネットワークを形成する方法が一般的に用いられている。
アクセス・ポイントを配置した無線ネットワークでは、ある通信装置から情報伝送を行なう場合に、まずその情報伝送に必要な帯域をアクセス・ポイントに予約して、他の通信装置における情報伝送と衝突が生じないように伝送路の利用を行なうという、帯域予約に基づくアクセス制御方法が広く採用されている。すなわち、アクセス・ポイントを配置することによって、無線ネットワーク内の通信装置が互いに同期をとるという同期的な無線通信を行なう。
ところが、アクセス・ポイントが存在する無線通信システムで、送信側と受信側の通信装置間で非同期通信を行なう場合には、必ずアクセス・ポイントを介した無線通信が必要になるため、伝送路の利用効率が半減してしまうという問題がある。
これに対し、無線ネットワークを構成する他の方法として、端末同士が直接非同期的に無線通信を行なう「アドホック(Ad−hoc)通信」が考案されている。とりわけ近隣に位置する比較的少数のクライアントで構成される小規模無線ネットワークにおいては、特定のアクセス・ポイントを利用せずに、任意の端末同士が直接非同期の無線通信を行なうことができるアドホック通信が適当であると思料される。
アドホック型無線通信システムには中央制御局が存在しないので、例えば家庭用電気機器からなるホーム・ネットワークを構成するのに適している。アドホック・ネットワークでは、1台が故障又は電源オフになってもルーティングを自動的に変更するのでネットワークが破綻しにくい、移動局間でパケットを複数回ホップさせることにより高速データレートを保ったままで比較的遠くまでデータを伝送することができる、といった特徴がある。アドホック・システムにはいろいろな開発事例が知られている(例えば、非特許文献4を参照のこと)。
例えば、IEEE802.11系の無線LANシステムでは、制御局を配さなくとも自律分散的にピア・ツウ・ピア(Peer to Peer)で動作するアドホック・モードが用意されている。
ここで、同一チャネル上に複数のユーザがアクセスする際、競合を回避する必要がある。競合を回避する代表的な通信手順として、CSMA(CarrierSense Multiple Access with Collision Avoidance:搬送波感知多重アクセス)が知られている。CSMAとは、キャリア検出に基づいて多重アクセスを行なう接続方式のことである。無線通信では自ら情報送信した信号を受信することが困難であることから、CSMA/CD(Collision Detection)ではなくCSMA/CA(Collision Avoidance)方式により、他の通信装置の情報送信がないことを確認してから、自らの情報送信を開始することによって、衝突を回避する。
CSMA/CAに基づく通信方式について、図11を参照しながら説明する。図示の例では、通信環境下に4台の通信局#0〜#3が存在するものとする。
送信データを持つ各通信局は、最後にパケットを検出してから所定のフレーム間隔DIFS(DCF(Distributed CoordinationFunction)Inter Frame Space)だけメディア状態を監視し、この間にメディアがクリアすなわち送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行ない、さらにこの間にも送信信号が存在しない場合に、送信権利が与えられる。
図示の例では、フレーム間隔DIFSだけメディア状態を監視した後、他の周辺局より短いランダム・バックオフを設定した通信局#0が送信権利を獲得し、通信局#1に対するデータ送信を開始することができる。
このデータ送信に際し、送信元の通信局#0は、MACフレームのヘッダ(MACヘッダ)のDurationフィールドにおいて、NAV(NetworkAllocation Vector)の用途の情報が格納されており、データ通信のトランザクションが終了するまでの時間が記されている。
このデータ・フレームの送信先である通信局#1は、MACヘッダに記載されているDurationの期間だけ、自局宛のデータの受信動作を行なう。そして、データ受信が完了すると、データ送信元の通信局#0宛てにACKパケットを返す。
また、このデータ・フレームを受信したデータ送信先以外の通信局#2並びに#3は、MACヘッダのDurationフィールドの記載を解読し、当該トランザクションが終了するまでメディアを監視することなくメディアが占有されている状態であると認識し、送信をストップさせる。この作業のことを、周辺局が「NAVを立てる」などと呼ぶ。NAVは、Durationフィールドで示された期間にわたり有効となる。例えば、受信先の通信局#1がACKパケットを返すまでの期間がDurationとして指定される。
このようにして、CSMA/CA方式によれば、競合を回避しながら単一の通信局が送信権利を獲得するとともに、データ通信動作の期間中は周辺局がデータ送信動作を停止することにより衝突を回避することができる。
ここで、アドホック環境の無線LANネットワークにおいては、隠れ端末問題が生じることが知られている。隠れ端末とは、ある特定の通信局間で通信を行なう場合、通信相手となる一方の通信局からは聞くことができるが他方の通信局からは聞くことができない通信局のことであり、隠れ端末同士ではネゴシエーションを行なうことができないため、上述したCSMA/CA方式のみでは送信動作が衝突する可能性がある。
隠れ端末問題を解決する方法論として、RTS/CTS手順によるCSMA/CAが知られている。IEEE802.11においてもこの方法論が採用されている。
RTS/CTS方式では、データ送信元の通信局が送信要求パケットRTS(Request To Send)を送信し、データ送信先の通信局から確認通知パケットCTS(Clear To Send)を受信したことに応答してデータ送信を開始する。そして、隠れ端末はRTS又はCTSのうち少なくとも一方を受信すると、RTS/CTS手続に基づくデータ伝送が行なわれると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定することにより、衝突を回避することができる。送信局にとっての隠れ端末は、CTSを受信して送信停止期間を設定し、データ・パケットとの衝突を回避し、受信局にとっての隠れ端末は、RTSを受信して送信期間を停止し、ACKとの衝突を回避する。
図12には、RTS/CTS手順の動作例を示している。但し、無線通信環境下には、通信環境下に4台の通信局#0〜#3が存在するものとする。そして、通信局#2は隣接する通信局#0と通信可能であり、通信局#0は隣接する通信局#1、#2と通信可能であり、通信局#1は隣接する通信局#0、#3と通信可能であり、通信局#3は隣接する通信局#1と通信可能な状態にある。ところが、通信局#2は通信局#1にとって隠れ端末となり、通信局#3は通信局#0にとって隠れ端末となっている。
送信データを持つ各通信局は、最後にパケットを検出してから所定のフレーム間隔DIFS(DCF Inter Frame Space)だけメディア状態を監視し、この間にメディアがクリアすなわち送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行ない、さらにこの間にも送信信号が存在しない場合に、送信権利が与えられる。
図示の例では、フレーム間隔DIFSだけメディア状態を監視した後、他の周辺局より短いランダム・バックオフを設定した通信局#0が送信権利を獲得し、通信局#1に対するデータ送信を開始することができる。
すなわち、データを送信する通信局#0から通信局#1に送信要求パケット(RTS)が送信される。これに対し、受信先となる通信局#1は、より短いフレーム間隔SIFS(Short IFS)を以って、通信局#0に確認通知(CTS)を返送する。そして、通信局#0は、CTSパケットを受信したことに応答し、フレーム間隔SIFSを以ってデータ・パケットの送信を開始する。また、通信局#1は、データ・パケットの受信が完了すると、フレーム間隔SIFSを以ってACKパケットを返す。SIFSはDIFSよりも短いことから、通信局#1は、CMSA/CA手順に従いDIFS+ランダム・バックオフだけ待機して送信権を得る他局よりも先にCTSパケットを送信することができる。
このとき、通信局#0及び通信局#1の双方から隠れ端末となり得る位置にある通信局#2並びに通信局#3では、RTS又はCTSの受信により伝送路の利用を検出してこの通信が終了するまで送信を行なわない制御を行なう。
具体的には、通信局#2では、RTSパケットに基づいて通信局#1が送信元となるデータ送信が開始されたことを検出し、RTSパケットのMACヘッダに記載されているDurationフィールドを解読し、以後引き続くデータ・パケットの送信が完了するまでの間(ACKが終了するまでの期間)は、伝送路が既に利用されていることを認識し、NAVを立てることができる。
また、通信局#3では、CTSパケットに基づいて通信局#1が受信先となるデータ送信が開始されたことを検出し、CTSパケットのMACヘッダに記載されているDurationフィールドを解読し、以後引き続くデータ・パケットの送信が完了するまでの間(ACKが終了するまでの期間)は、伝送路が既に利用されていることを認識し、NAVを立てることができる。
このように、隠れ端末はRTS又はCTSのうち少なくとも一方を受信すると、RTS/CTS手続に基づくデータ伝送が行なわれると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定するので、衝突を回避することができる。
ところで、2.4GHz帯を使った無線LAN仕様であるIEEE 802.11bの上位規格として、より高速な通信レートをサポートするIEEE802.11gの標準化が進められている。IEEE802.11gに従う通信局(以下、単に「高度通信局」とも呼ぶ)は、IEEE 802.11bに従って動作することが可能であるとともに、従来のIEEE802.11bの通信局(以下、単に「従来局」とも呼ぶ)が受信することができない高速なレートでもデータ・パケットを送信することができる。
ここで、異なる通信システムの共存、すなわち同じ帯域を使用するIEEE802.11gとIEEE802.11bとの共存の問題がある。すなわち、従来局は高速なレートで送信されるデータ・パケットを受信できないことから、MACヘッダに記載されているDurationをデコードできず、NAVを適切に立てることができないことから、衝突を回避できなくなる。
例えば、図11に示した例で言えば、通信相手となる通信局#0と通信局#1がIEEE802.11gに準拠し高速レートでデータ・パケットを交換できる一方、その周辺の通信局#2と通信局#3がIEEE802.11gに準拠しない従来局であった場合、データ・パケットを受信できない結果として、MACヘッダに記載されているDurationをデコードできない。このため、Durationの期間内においても通信動作を開始し、衝突を発生する可能性がある(図13を参照のこと)。
IEEE802.11gとIEEE802.11bとの共存の問題は、上位規格であるIEEE802.11gにおいて上位互換を保証することによって解決することが好ましいと本発明者らは思料する。
例えば、IEEE802.11gでは、データ・パケットを送信する以前に、従来局が受信可能な伝送レートでRTS/CTSパケットの交換を行なうようにする方法が考えられる(図14を参照のこと)。この場合、周辺の従来局は、RTS/CTSパケットのMACヘッダに記載されているDurationフィールドを解読し、以後引き続くデータ・パケットの送信が完了するまでの間(ACKが終了するまでの期間)は、伝送路が既に利用されていることを認識し、適切な期間だけNAVを立てることができる。すなわち、従来局は、高速なレートで送信されるデータ・パケットを聞くことはできないが、衝突を回避する上では問題でなくなる。
データ・パケットを送信する以前に、このような手順で帯域を確保する手順のことを、一般に、Virtual Carrier Senseと言う。
しかしながら、このような帯域確保の手順では、隠れ端末問題が生じている場合だけでなく、隠れ端末の問題がない場合であっても、必ずRTS/CTS手順を経なければデータ・パケットの送信を行なうことができなくなる。すなわち、伝送レートが速くなればなるほど、RTS/CTSのオーバーヘッドの問題が大きくなり、その分だけ通信効率が低下する。
International Standard ISO/IEC 8802−11:1999(E) ANSI/IEEE Std 802.11,1999 Edition, Part11:Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and PHYsical Layer(PHY)Specifications
ETSI Standard ETSI TS 101 761−1 V1.3.1 Broadband Radio Access Networks(BRAN);HIPERLAN Type 2; Data Link Control(DLC) Layer; Part1: Basic Data Transport Functions
ETSI TS 101 761−2 V1.3.1 Broadband Radio Access Networks(BRAN); HIPERLANType 2; Data Link Control(DLC) Layer; Part2: Radio Link Control(RLC) sublayer
C.K.Tho著"Ad Hoc Mobile Wireless Network"(Prentice Hall PTR社刊)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
本発明において想定している通信の伝搬路は無線であり、複数の通信局間でネットワークを構築する。本発明で想定している通信は蓄積交換型のトラヒックであり、パケット単位で情報が転送される。また、以下の説明では、各通信局は単一のチャネルを想定しているが、複数の周波数チャネルすなわちマルチチャネルからなる伝送媒体を用いた場合に拡張することも可能である。
本発明に係る無線ネットワークでは、各通信局は、CSMA(Carrier Sense Multiple Access:キャリア検出多重接続)に基づくアクセス手順に従い直接(ランダム)に情報を伝送し、自律分散型の無線ネットワークを構築することができる。また、本発明に係る無線ネットワークでは、緩やかな時分割多重アクセス構造を持った伝送(MAC)フレームによりチャネル・リソースを効果的に利用した伝送制御が行なわれる。この場合、各通信局は、帯域を予約する、あるいは優先利用期間を設定するなど時間同期をベースにしたアクセス方式を行なうことができる。
本発明の一実施形態では、例えば、従来のIEEE802.11bに従う従来局と、同じ帯域を使用する高速版の規格に相当するIEEE802.11gに準拠する高度通信局が混在して動作する通信環境を想定している。すなわち、ある限られた変調方式で変調されたパケットのみを送受信できる従来局と、従来局が受信できる変調方式に加え、さらに高度な方式でも受信可能な高度通信局という2種類の通信端末が存在する。
このように同じ帯域を使用するIEEE802.11gとIEEE802.11bが混在する通信システムでは、共存の問題がある。何故ならば、従来局は高速なレートで送信されるデータ・パケットを受信できないことから、MACヘッダに記載されているDurationをデコードしNAVを適切に立てることができず、衝突を回避できなくなるからである。本発明では、上位規格であるIEEE802.11gが、従来規格であるIEEE802.11bに対しいわゆる上位互換を保証することによって、この共存の問題を解決するようにしているが、この点については後に詳解する。
また、IEEE802.11gに従う高度通信局のみが動作する通信システムにおいても、共存の問題がある。例えば、IEEE802.11gでは幅広い範囲で伝送レートが規定されているが、すべての伝送レートが義務化されている訳ではなく、通信局間でサポートする最大転送レートは区々である。また、通信可能チャネルとして複数の周波数チャネルが用意された通信環境下で、必要に応じて2以上の周波数チャネルをバンドルして(すなわち信号の帯域幅を変化させて)広帯域伝送を適宜行なうような通信方式を規定した場合、各国で無線システムに割り当てられている帯域制限の相違などにより、周波数チャネルをバンドルした広帯域伝送をサポートできない高度通信局が存在し得る。本発明では、高度通信局は、通信モードの相違によりパケット全体をデコードできない場合であっても、適当な送信待機期間を設けることによってパケットの衝突を回避するようにしているが、この点については後に詳解する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線ネットワークにおいて通信局として動作する無線通信装置の機能構成を模式的に示している。図示の無線通信装置100は、同じ無線システム内では効果的にチャネル・アクセスを行なうことにより、衝突を回避しながらネットワークを形成することができる。この無線通信装置100は、第1の通信方式としてのIEEE802.11a/bに準拠する従来局、あるいは第2の通信方式としてのIEEE802.11gに準拠する高度通信局のいずれかである。
図示の通り、無線通信装置100は、インターフェース101と、データ・バッファ102と、中央制御部103と、パケット生成部104と、無線送信部106と、タイミング制御部107と、アンテナ109と、無線受信部110と、パケット解析部112と、情報記憶部113とで構成される。
インターフェース101は、この無線通信装置100に接続される外部機器(例えば、パーソナル・コンピュータ(図示しない)など)との間で各種情報の交換を行なう。
データ・バッファ102は、インターフェース101経由で接続される機器から送られてきたデータや、無線伝送路経由で受信したデータをインターフェース101経由で送出する前に一時的に格納しておくために使用される。
中央制御部103は、無線通信装置100における一連の情報送信並びに受信処理の管理と伝送路のアクセス制御を一元的に行なう。基本的には、CSMAに基づき、伝送路の状態を監視しながらランダム時間にわたりバックオフのタイマーを動作させ、この間に送信信号が存在しない場合に送信権を獲得するというアクセス競合を行なう。
本実施形態では、アクセス競合に優先送信のメカニズムを採り入れて、柔軟なQoSを実現している(図2を参照のこと)。例えば、他局のパケット送信後やトラフィックの優先度が低いときには、通常動作モードとなり、フレーム間隔IFSをより長いDIFSに設定するとともにランダム・バックオフを設定する。これに対し、他局からのRTSに引き続いてCTSを送信する場合や、CTSに引き続いてデータ・パケットを送信する場合やACKを送信する場合には、フレーム間隔IFSを短いSIFSに設定し、通常の送信動作を行なう他局に優先して送信可能となる。
パケット生成部104は、自局から周辺局宛てに送信されるパケット信号を生成する。ここで言うパケットには、データ・パケットの他、受信先の通信局の送信要求パケットRTSや、RTSに対する確認応答パケットCTS、ACKパケットなどが挙げられる。例えばデータ・パケットは、データ・バッファ102に蓄積されている送信データを所定長だけ切り出し、これをペイロードとしてパケットが生成される。
通信プロトコルのMAC層では、ペイロードにMACヘッダを付加してMACフレームを構成し、さらにPHY層ではPHYヘッダが付加され、最終的な送信パケット構造となる。本実施形態では、PHYヘッダが第1の解読部を構成し、MACフレーム部分が第2の解読部を構成する。パケット信号の構成については後述する。
無線送信部106及び無線受信部110は、通信プロトコルにおけるRF層及びPHY層に相当する。
無線送信部106は、所定の変調方式及び伝送レートにてパケット信号の無線送信処理を行なう。具体的には、送信信号を所定の変調方式で変調する変調器や、デジタル送信信号をアナログ信号に変換するD/A変換器、アナログ送信信号を周波数変換してアップコンバートするアップコンバータ、アップコンバートされた送信信号の電力を増幅するパワーアンプ(PA)など(いずれも図示しない)を含み、所定の伝送レートにて無線送信処理を行なう。
また、無線受信部110は、他局からのパケット信号の無線受信処理を行なう。具体的には、アンテナ109を介して他局から受信した無線信号を電圧増幅する低雑音アンプ(LNA)や、電圧増幅された受信信号を周波数変換によりダウンコンバートするダウンコンバータ、自動利得制御器(AGC)、アナログ受信信号をデジタル変換するA/D変換器、同期獲得のための同期処理、チャネル推定、OFDMなどの復調方式により復調処理する復調器など(いずれも図示しない)で構成される。
無線通信装置100が第1の通信方式としてのIEEE802.11a/bに準拠する場合には、無線送信部106及び無線受信部110は、当該無線LAN規格に従った変調方式及び伝送レートによりパケットの送受信を行なう。また、無線通信装置100が第2の通信方式としてのIEEE802.11gに従う場合には、IEEE802.11a/bに従った変調方式及び伝送レートによりパケットの送受信が可能である以外に、IEEE802.11g独自の(すなわち、IEEE802.11a/bでは受信できない)伝送レートによりパケットの送受信を行なうことができる。後者の場合、PHYヘッダで構成されるパケットの第1の解読部はIEEE802.11a/bで受信可能な伝送レートで送受信されるが、MACフレームで構成される第2の解読部はIEEE802.11gに従う伝送レートで送受信される。
アンテナ109は、他の無線通信装置宛てに信号を所定の周波数チャネル上で無線送信し、あるいは他の無線通信装置から送られる信号を収集する。本実施形態では、単一のアンテナを備え、送受信をともに並行しては行なえないものとする。
タイミング制御部107は、無線信号を送信並びに受信するためのタイミングの制御を行なう。例えば、自己のパケット送信タイミングやRTS/CTS方式に則った各パケット(RTS、CTS、データ、ACKなど)の送信タイミング(フレーム間隔IFSやバックオフの設定)、他局宛てのパケット受信時におけるNAVの設定などのタイミング制御を行なう。
パケット解析部112は、他局から受信できたパケット信号を解析する。本実施形態では、パケットは第1の解読部と第2の解読部で構成される。パケットの解読方法の詳細については後述に譲る。
情報記憶部113は、中央制御部103において実行される一連のアクセス制御動作などの実行手順命令や、受信パケットの解析結果から得られる情報などを蓄えておく。
既に述べたように、本実施形態における無線ネットワークでは、ある限られた変調方式で変調されたパケットのみを送受信できる従来局と、従来局が受信できる変調方式に加え、さらに高度な方式でも受信可能な高度通信局の2種類が存在する。同じ帯域を使用するIEEE802.11gとIEEE802.11bが混在する通信システムでは、共存の問題がある。また、高度通信局のみが存在する通信システムにおいても、通信局毎にサポートする通信モードの相違による共存の問題がある。本実施形態では、高度通信局が従来局に対しいわゆる上位互換を提供することによって解決するようにしている。また、本実施形態では、通信モードの相違によりパケット全体をデコードできない場合であっても、適当な送信待機期間を設けることによってパケットの衝突を回避するようにしている。これら共存問題の解決方法については後に詳解する。
図3には、本実施形態における無線ネットワークにおいて、通信局として動作する無線通信装置100が送受信するパケットの構成を模式的に示している。
通信プロトコルのMAC層では、ペイロード(IPパケットに相当)にMACヘッダを付加してMACフレームを構成し、さらにPHY層ではMACフレームにPHYヘッダが付加され、最終的な送信パケット構造となる。PHYヘッダが第1の解読部を構成し、MACフレーム部分が第2の解読部を構成する。図3に示すように、パケットは、PHYヘッダとしてのPLCP(PhysicalLayer Convergence Protocol)プリアンブル部及びSIGNAL部と、MACフレームで構成される。MACフレームは、MACヘッダとデータ部で構成される。
PHYヘッダは第1の解読部に相当し、MACフレームは第2の解読部に相当する。
パケットの送信局がIEEE802.11a/bに従う従来局の場合、PHYヘッダ及びMACフレームのいずれも、第1の通信方式により送信する。
また、パケットの送信局がIEEE802.11gに従う高度通信局の場合、従来局宛てにパケットの送信を行なうときには、パケット全体を第1の通信方式により送信する。これに対し、高度通信局宛てにパケットの送信を行なうときには、第1の解読部のみすべての通信局が受信可能な第1の通信方式により送信するが、データ部を含む第2の解読部をより伝送レートの高い第2の通信方式により送信することができる。
図示のパケットの送信側では、まず、パケットの先頭として、PLCPプリアンブル部を送信し、次いでSIGNAL部と、MACフレームを送信する。
PLCPプリアンブル部は、信号検知(Signal Detect)、伝搬路推定(Channel Estimation)などの要素を含む。したがって、周辺局は、PLCPプリアンブル部を受信することによって、通信局からの信号の存在を知り、送信チャネルの推定などを行なう。
PLCPプリアンブル部の検出により信号が送信されていることを知った通信局は、次に到来するSIGNAL部の受信を開始する。このSIGNAL部はすべての通信局にとって既知となる第1の通信方式で送られるため、従来局及び高度通信局の双方の局が受信可能となる。
このSIGNAL部には、以降のMACフレームにおける伝送レート(Rate)、MACフレームなどパケットの残りのデータ長(Length)、パリティ(Parity)、予備領域(Reserve)などを含んでいる。
MACフレームは、SIGNAL部のRateで指定された伝送レートに従って変調されている。MACフレームは、MACヘッダと、ペイロードに相当するデータ部で構成される。MACヘッダには、当該パケットの受信局のアドレス(Rx Address)と、受信局以外の局がNAVを立てるべき期間を指定するDurationなどが記述されている。
MACヘッダ部を正常に受信及び解読することができた通信局は、自局のアドレスと受信アドレスを比較し、一致する場合には、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報に従い、パケットの残りの部分を、パケット長÷伝送レートの期間だけ指定レートにより受信する。また、自己のアドレスと受信アドレスが一致しない場合には、MACヘッダに記載されているDurationの期間だけ、NAVを立てて自局の送信を差し控える。このような手順で帯域を確保する手順のことを、一般に、Virtual Carrier Senseと言う。
ここで、パケットの送信局がIEEE802.11bに従う高度通信局が高度通信局宛にパケットの送信を行なうときには、第1の解読部のみすべての通信局が受信可能な第1の通信方式により送信するが、データ部を含む第2の解読部をより伝送レートの高い第2の通信方式により送信する。このため、従来局は第2の解読部を受信できなくなるので、MACヘッダに記載されているDurationをデコードできず、NAVを立てるべき期間が判らない、という問題がある。
従来は、帯域確保のためにMACヘッダ中のDurationの記述を利用していた。しかしながら、IEEE802.11gとIEEE802.11a/bとの共存を実現するためには、このDurationの記述を用いず、他の情報により従来局がNAVを立てるべき期間を認識するための仕組みが必要である。
そこで、本実施形態では、第2の通信方式としてのIEEE802.11gによりパケットを送信する場合であっても、必ずすべての通信局が受信可能となる第1の解読部を設け、この第1の解読部によりNAVに相当する期間を指定する仕組みを用意する。
図3に示すように、第1の解読部はパケットのPHYヘッダで構成される。そして、すべての通信局が受信可能なSIGNAL部において、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を利用することによって、擬似的にDurationに相当する時間を記述する。すなわち、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいDurationと等しくなるように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装(spoof)する。
この結果、従来局は、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、Duration相当の時間だけ受信を行なう。実際のパケットはこのパケット長÷レート分に渡って送信されることはないが、従来局は、Duratioin相当の期間だけ送信を開始することがなく、結果的に通信を停止してほしい期間だけ送信を差し控え、受信を継続することになる。
なお、この場合、従来局が偽装されたパケット長÷レート分に渡って受信した後は、必ずCRCエラーが生じることになる。IEEE802.11ではData部でCRCエラーが生じた場合、通常のフレーム間隔DIFSより長いEIFSの時間、受信を控えるというルールがある。そこで、従来局に対して常に不公平にならないように、真に受信を継続させたい期間から“EIFS−DIFS”を差し引いた時間をパケット長÷レート分で偽装するのが望ましい。
このように、高度通信局は、第1の解読部において、擬似的にDurationに相当する時間を記述するように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を利用することによって、従来局に対しいわゆる上位互換を提供している。この場合、IEEE802.11gに従う高度な通信方式により通信手順が行なわれる間、従来局は衝突を回避し、正常なネットワーク動作を実現することができる。
また、高度通信局が第1の通信方式では対応していない高速な伝送レートを使用する場合には、従来局が第1の解読部を正しく解読できるように、SIGNAL部の伝送レート(Rate)フィールドには第1の通信方式に対応する値を偽装しなければならない。この場合、偽装した伝送レート(Rate)値に合せてパケット長(Lenght)も偽装しなければならない。
上述したように、SIGNAL部において、パケット長÷レートの値が従来局に通信を停止してほしい期間と等しくなるような値に偽装する。ここで、通信を停止してほしい期間とは、要するに第2の通信方式により行なわれる通信トランザクションが終了するまでの期間のことである。具体的には、第2の通信方式により行なわれる通信手順においてACK送信が終了するまでの期間のことである。また、MACフレームにおいて第2の通信方式により複数の通信局と多重接続する通信手順によりパケット送信を行なうときには、通信を停止してほしい期間は、それぞれの相手局から時分割多重により行なわれるACK送信がすべて終了するまでの期間に相当する。なお、本出願人に既に譲渡されている特願2003−297919号明細書には、送信局が複数の受信局に当てたデータ・フレームを空間分割多重接続(SDMA)により送信するのに対し、各受信局からは時分割多重によりACKが返信される通信システムについて開示されている。また、ここで言うACKパケットの送信には、ACKパケット単独の場合に限定されず、例えばRTSパケットやCTSパケット、Dataパケットなど他の種類のパケットとACKパケットが多重されて送信される場合も含むものとする。
ここで、通信相手となる高度通信局は、偽装されたRate及びLengthに基づいて誤動作せず正確な受信動作を行なうために、第1の解読部に記載されているこれらの値が偽装されていることを検知する必要がある。すなわち、高度通信局における上位互換の仕組みを実現するには、第1の解読部内に記述しているパケット長及び伝送レートの情報が偽装されていることを、高度通信局同士では認識し合う必要がある。しかも、従来局には当該情報が偽装されていることが分からないように、高度通信局同士で認識し合い、第1の通信局は第1の解読部内に記載されている通りに動作してもらわなければならない。
図3に示した実施形態では、例えばSIGNAL部の予備領域(Reserve)に偽装の有無を示す1ビットのフラグを用意する。そして、高度通信局は、第1の解読部のフラグによりパケット長並びにレートの情報が偽装されていることを検知すると、対応する高度レート・モードへ移行し、残りのパケットすなわち高度解読部を受信し、実際のデータを解読することができる。この場合、パケットの送信先でない高度通信局は、受信したパケットのSIGNAL部から読み取ったパケット長並びにレートの情報を破棄する。
高速な伝送レートでパケット送受信を行なう第2の通信方式において単一の通信方式(通信モード)しか定義していない場合には、図3を参照しながら説明したように、1ビットの偽装フラグのみを用いて通信方式の移行を指定することができる。これに対し、第2の通信方式が複数の伝送モードを含む場合には、1ビットの偽装フラグのみでは伝送モードを指定することはできなくなる。
このように複数の伝送モードから1つを指定するための最も単純な方法は、パケット内に伝送モード指定用にフィールドを付加することである。図4には、図3に示したパケット構造の変形例を示している。図示の例では、第2の通信方式で送信されるパケットでは、SIGNAL部の後方にSIGNAL2部(HT(High Throughput) PHY部)がさらに付加されている。
図示の例では、SIGNAL2部は、実際の伝送レート(True Rate)及び実際のパケット長(True Length)を記述するフィールドと、モードのパラメータ値(Mode Parameter)を記述するフィールドを備えている。SIGNAL2部は、すべての高度通信局において受信可能となる一定の伝送レートで送信されるので、これを受信した高度通信局は実際の伝送レート(True Rate)及び実際のパケット長(True Length)に従って受信動作を行なう。また、従来局はSIGNAL2部を解読することはできず、SIGNAL部で記されるRate及びLengthに基づいて受信期間を設定する。
ここで、従来局にはSIGNAL部内の伝送レート及びパケット長が偽装されていることが分からないように、高度通信局同士で認識し合い、従来局はSIGNAL部内に記載されている通りに動作してもらわなければならない。このため、第2の通信方式解読部としてのSIGNAL2部(HT−SIGNAL部)を、すべての高度通信局は解読できるが従来局は解読できない通信方式により送信する。
例えば、すべての高度通信局が受信できるように、SIGNAL2部を6Mbps程度の低い伝送レートで送信するが、高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調処理を施すことにより、高度通信局のみが復調しSIGNAL部が偽装されていることを認識することができる。
このような場合、パケットを受信した高度通信局は、第1の通信方式及び第1の通信局は解読できない通信方式の双方でSIGNAL2部の解読を試み、後者で解読できたことにより、SIGNAL部が偽装されていることを認識することができる。そして、SIGNAL2部で得られた通信モードに従い第2の解読部の受信処理を行なうことができる。
SIGNAL2部は第2の解読部であるMACフレームより前に配置されているので、第1の解読部においてパケット長及び伝送レートの情報が偽装されている場合には、パケットを受信した高度通信局は、SIGNAL2部に記載されている実際のパケット長(TrueLength)及び伝送レート(TrueRate)に基づいて、それ以降の第2の解読部の受信動作を行なうことができる。
パケット送信を行なう高度通信局は、高度通信局同士でのみ既知となる変調方式で第2の通信方式解読部を変調することにより、すべての高度通信局は解読できるが従来局は解読できないようにすることができる。例えば、SIGNAL2部に対しBPSKなどの位相変調を施す場合において、信号点配置に対し第2の通信局で共有する位相差θを与えたり、信号点を既知の量Δdだけ並進移動させたりするなどしてもよい。一方、パケットを受信した高度通信局は、位相差−θ又は移動量−Δdなどの信号点配置に移相が施されていることを考慮して位相復調する。そして、SIGNAL2部を解読することができたことにより、第1の解読部が偽装されていることが分かる。
図15には、この場合の無線受信部110の内部構成例を示している。無線受信部110はRF部とPHY部で構成される。PHY部は、第1の復調部と、第2の復調部と、これら復調部のいずれかにより正しく復調された受信データを処理する受信処理部を備えている。
受信処理部は、第1の解読部から得られる変調方式(伝送レート)を第1の復調部に通知する。第1の復調部は、第1の解読部が偽装されていないと仮定し、第1の解読部と同じ信号点配置により、第1の解読部で記載されている通りの変調方式(伝送レート)で以降の信号を復調する。
第2の復調部は、第1の解読部にSIGNAL2部が続くと仮定し、90度だけ位相回転した信号点配置により、SIGNAL2部を既知の変調方式(伝送レート)で復調する。
SIGNAL2部は固定長であるので、その所定長だけ復調し、SIGNAL2部であることが判明したら、第1の解読部が偽装されていることが分かり、そうでなければ第1の解読部は偽装されていないことが判明する。後者の場合、第1の復調部により回転しない信号点配置で復調を継続する。これにより、第1の解読部の予備領域(Reserve)に偽装フラグを設けることなく、偽装されているかどうかを暗示することができる。
なお、コンステレーション上の信号点に位相差を設けてマッピングする変調方式に関しては、例えば特開平11−146025号公報に開示されている。
高度通信局は、上述の通り、第2の解読部(図16のDATA部を参照のこと)を解読することできるのが原則である。ところが、通信端末間の距離が大きい場合や、MIMO通信を行なっている場合などには、高速レートの第2の解読部をデコードすることができない場合が想定される。このような場合、一定の低速レートで変調されている、第1の解読部(図16ではSIGNAL部)及び第2の通信方式解読部(図16ではHT−SIGNAL部)を利用して、パケット送信端末が他の端末に対しどのくらい期間だけ送信を控えてほしいと指示しているかを推定することができる。
第1の解読部としてのSIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートは、上図のACKが受信完了するまでの期間である。また、第2の通信方式解読部としてのHT−SIGNAL部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateは、実際のパケットが送信完了するまでの期間に相当する。この2つのLength÷Rateの差分をとることにより(図16では、EIF−DIFSを付加している)、パケット送信端末が他の端末に対しどのくらい期間送信を控えてほしいかを示すNAV相当の値になる。
また、第2の通信方式において、2以上の周波数チャネルが使用可能な通信チャネルとして設けられている通信システムでは、隣接する2以上の周波数チャネルをバンドルする、若しくは信号の帯域幅を2周波数チャネル分だけ拡張させる広帯域伝送を考えることもできる。
図18には、信号の帯域幅を2周波数チャネル分だけ拡張させる広帯域伝送を行なう場合のパケット構成例を示している。図示の例では、2つのXMHz帯の通信チャネルが用意されている通信システムにおいて、MACフレーム部分を2XMHzの帯域幅に拡張して広帯域伝送を行なう。
このように信号の帯域幅を拡張させる場合、各XMHz帯において、パケットのヘッダ部、すなわちPLCPプリアンブル、SIGNAL部、SIGNAL2部をそれぞれ順次送信する。
図18に示すようなパケットが送信された場合、周辺の各通信局は自局が現在チューニングしている周波数チャネル上でPLCPプリアンブルを検出し、当該周波数チャネル上でSIGNAL部の受信を開始する。
すべての通信局が受信可能なSIGNAL部では、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装(spoof)する。この結果、従来局は、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、Duration相当の時間だけ受信を行なう。実際のパケットはこのパケット長÷レート分に渡って送信されることはないが、従来局は、Duratioin相当の期間だけ送信を開始することがなく、結果的に通信を停止してほしい期間だけ送信を差し控え、受信を継続することになる。
また、高度通信局は、PLCPプリアンブルを検出した周波数チャネル上で、SIGNAL部に続いてSIGNAL2部の受信を行なう。SIGNAL2部は、実際の伝送レート(True Rate)及び実際のパケット長(True Length)を記述するフィールドと、モードのパラメータ値(Mode Parameter)を記述するフィールドを備えている。SIGNAL2部は、すべての高度通信局において受信可能となる一定の伝送レートで送信されるので、これを受信した高度通信局は、SIGNAL2部から得られた実際の伝送レート(True Rate)及び実際のパケット長(True Length)に従って、これ以降のMACフレーム(すなわちMACヘッダ及びデータ部)の受信動作を行なう。一方、従来局は、SIGNAL2部を解読できず(前述)、SIGNAL部に記されるRate及びLengthに基づいて受信期間を設定する。
但し、同じ標準規格内で規定されている通信モードをすべての高度通信局がサポートしているとは限らない。例えば、サポートする通信モードの相違により、パケットの受信側である高度通信局は、SIGNAL2部で指定されている伝送モード(True Rate)では以降のMACフレームの受信動作を行なうことができない場合がある。このようにMACフレームの受信ができない高度通信局は、SIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートと、SIGNAL2部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateとの差分をとることにより(図16ではEIF−DIFSを付加している)、Duration相当の値を得て、その期間だけNAVを立ててパケットの送信を控えるようにする。
また、高度通信局であっても、一方のXMHz帯では受信可能であるが、信号の帯域幅を2XMHzに拡張すると受信できない場合がある。このような問題は、例えば、無線LANに割り当てられる周波数帯域の国毎の相違のために起こり得る。このようにMACフレームの受信ができない高度通信局は、所定の時間だけパケット送信動作を控える。すなわち、SIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートと、SIGNAL2部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateとの差分をとることにより(図16ではEIF−DIFSを付加している)、Duration相当の値を得て、その期間だけNAVを立ててパケットの送信を控えるようにする。
上述したように、ある周波数チャネル上でSIGNAL部を受信した従来局、及びSIGNAL2部に記された帯域幅や通信モードに対応していない高度通信局は、その帯域において、SIGNAL部に記載されたDuration相当の期間、あるいはSIGNAL部とSIGNAL2部の記載に基づいて得られるDuration相当期間だけ、パケット送信動作を控える。図19には、チャネルAを受信中の通信局がチャネルAで送信されたSIGNAL部及びSIGNAL2部を受信し、所定時間だけ送信動作を控えている様子を示している。
高度通信局同士で伝送モードを通知し合うために、図4に示したような、伝送モードを指定するフィールド(SIGNAL2部若しくはHT−SIGNAL部)をパケットに追加する方法は、簡便ではあるが、伝送データの追加に伴うオーバーヘッドや通信効率の低下が問題となる。
ここで、前述したように、SIGNAL部のRATE及びLengthを擬似的に設定する場合、同じ時間を示すために、偽装されたパケット長とレートの組み合わせは複数存在する。例えば、1200ビットを6Mbpsで送信するのに要する時間と、2400ビットを12Mbpsで送信するには同等の時間を要するので、受信局にとってはRateとしてどちらを設定しても構わない。
但し、高度通信局が第1の通信方式では対応していない高速な伝送レートを使用する場合には、従来局が第1の解読部を正しく解読できるように、SIGNAL部の伝送レート(Rate)フィールドには第1の通信方式に対応する値を偽装しなければならない。この場合、偽装した伝送レート(Rate)値に合わせて、所望のDuration値が得られるように、パケット長(Lenght)値を調整して偽装しなければならない。
図3に示した例では、第1の解読部であるSIGNAL部に偽装フラグが設定されている場合には、高度通信局はSIGNAL部のRateの情報は偽装されているものとして破棄する。これに対し、図4に示す例では、SIGNAL2部に記載されているTrue Rateの情報を利用し、次に来る高度変調方式がどのモードで来るかを表すことができる。
図5には、IEEE802.11aにおけるRateフィールドの記述例を示している。図示のように、IEEE802.11aでは6Mbps、9Mbps、12Mbps、18Mbps、24Mbps、36Mbps、48Mbps、54Mbpsという8つの伝送レートが設定されるが、Rateフィールドでは4ビットを用いて伝送レートを表現している。偽装フラグが設定されているときには、このような規格上のRateフィールドの定義を、実際上の高速転送モードの指定に割り当てることができる。
図5に示した例では、Rateフィールドは4ビットであるが、LSBはすべて1に設定されているため、3ビットすなわち8通りのモードの指定が可能である。さらに、従来規格であるIEEE802.11bでは設定可能なパケット長(Length)の上限があることから、偽装のために上位レートを利用すると、Lengthフィールドが足りず、パケット長(Length)÷レート(Rate)では十分なDurationの値を確保できなくなる(すなわち、長い期間のNAVを偽装できない)という問題がある。このため、現実には、6Mbps、9Mbps、12Mbps、18Mbpsの4つを高速転送モードの指定に利用することにして、大きな値のDuration(=パケット長(Length)÷レート(Rate))がとれるようにする。上限を超えるLengthを設定してしまうと、その情報を誤りとして認識し、破棄してしまう従来局が存在する可能性があるので、この規定を設ける(IEEE802.11aではLength情報をビットで表し、IEEE802.11bではLength情報を時間で表す)。
なお、IEEE802.11nでは高速伝送としてMIMO(Multi−Input Multi−Output)通信を利用したシステムや通信利用帯域を拡大した方式が想定されるため、MIMO通信で利用するアンテナ本数と通信利用帯域の組み合わせにより複数の伝送モードが存在し得る。このような場合、上述したいずれかの方法により、高度通信局間で伝送モードを通知し合うようにすればよい。
ここで、MIMO通信とは、送信器側と受信器側の双方において複数のアンテナ素子を備え、空間分割多重すなわち複数の論理的に独立した伝送路を実現することにより、伝送容量の拡大を図り、通信速度向上を達成する技術である。空間分割多重を利用するので、周波数利用効率はよい。
続いて、本実施形態に係る無線ネットワークにおける、無線通信装置100の受信処理手順について説明する。
図6には、無線通信装置100が従来局として動作する場合の受信処理手順をフローチャートの形式で示している。このような処理手順は、実際には、中央制御部103が情報記憶部113に格納されている実行命令プログラムを実行するという形態で実現される。
PLCPプリアンブル部を受信すると(ステップS1)、次いでPHY層のSIGNAL部を受信する(ステップS2)。
そして、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を解読し(ステップS3)、パケット長÷伝送レートで決められるパケット送信待機期間を算出する。
次いで、SIGNAL部のRATEで指定される伝送レートにより、MACヘッダ部分を受信する(ステップS4)。ここで、MACヘッダにより受信先アドレスを解読可能である場合には(ステップS5)、受信先アドレスと自局アドレスを比較する(ステップS6)。そして、アドレスが一致する場合には、SIGNAL部のLengthで指定されるパケット長分だけ受信処理を行なう(ステップS7)。
また、受信先アドレスと自局アドレスが一致しない場合には(ステップS6)、パケット長÷伝送レートで決められるDurationの期間だけNAVを立て、送信を待機する(ステップS8)。
また、MACヘッダにより受信先アドレスを解読することができない場合には(ステップS5)、SIGNAL部のLengthで指定されるパケット長分だけ受信処理を行なう(ステップS7)。
また、図7には、無線通信装置100が高度通信局として動作する場合の受信処理手順をフローチャートの形式で示している。このような処理手順は、実際には、中央制御部103が情報記憶部113に格納されている実行命令プログラムを実行するという形態で実現される。
PLCPプリアンブル部を受信すると(ステップS11)、次いでPHY層のSIGNAL部を受信する(ステップS12)。
そして、例えばReserveフィールドの偽装フラグを参照し、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報が偽装されているかどうかを判定する(ステップS13)。
あるいは、ステップS13では、SIGNAL部に続いてSIGNAL2部が設けられているかどうかを判定することによって、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報が偽装されているかどうかを判定することもできる。この場合、SIGNAL部で記載されている通りの変調方式(伝送レート)で以降の信号を復調するのに並行して、高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式によりSIGNAL2部の復調を試みる(図15を参照のこと)。そして、後者で解読できたことにより、SIGNAL部が偽装されていることを認識することができる。
ここで、偽装フラグが設定されていない場合には、パケットは従来局が受信可能な伝送レートで送信されていることが認識される。そこで、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を解読し(ステップS14)、パケット長÷伝送レートで決められるパケット送信待機期間を算出する。
次いで、SIGNAL部のRATEで指定される伝送レートにより、MACヘッダ部分を受信する(ステップS15)。ここで、MACヘッダにより受信先アドレスを解読可能である場合には(ステップS16)、受信先アドレスと自局アドレスを比較する(ステップS17)。そして、アドレスが一致する場合には、SIGNAL部のLengthで指定されるパケット長分だけ受信処理を行なう(ステップS18)。
また、受信先アドレスと自局アドレスが一致しない場合には(ステップS17)、MACヘッダで指定されるDurationの期間だけNAVを立て、送信を待機する(ステップS19)。
また、MACヘッダにより受信先アドレスを解読することができない場合には(ステップS16)、SIGNAL部のLengthで指定されるパケット長分だけ受信処理を行なう(ステップS18)。
一方、SIGNAL部で偽装フラグが設定されていること、あるいはSIGNAL2部が設けられていることにより、パケットの第2の解読部が高度通信局のみが受信可能な伝送レートで送信されていると判断された場合には(ステップS13)、高速な伝送モードへ移行し(ステップS20)、MACヘッダ部分を受信する(ステップS15)。例えば、SIGNAL2部に記載されているTrueRate及びTrueLengthに従って受信処理する。
ここで、MACヘッダにより受信先アドレスを解読可能である場合には(ステップS16)、受信先アドレスと自局アドレスを比較する(ステップS17)。そして、アドレスが一致する場合には、SIGNAL部のLengthで指定されるパケット長分だけ受信処理を行なう(ステップS18)。
また、受信先アドレスと自局アドレスが一致しない場合には(ステップS17)、パケット長÷伝送レートで決められるDurationの期間だけNAVを立て、送信を待機する(ステップS19)。
また、図20には、無線通信装置100が高度通信局として動作する場合の受信処理手順についての他の例をフローチャートの形式で示している。このような処理手順は、実際には、中央制御部103が情報記憶部113に格納されている実行命令プログラムを実行するという形態で実現される。
PLCPプリアンブル部を受信すると(ステップS21)、次いでPHY層のSIGNAL部を受信する(ステップS22)。
そして、例えばReserveフィールドの偽装フラグを参照し、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報が偽装されているかどうかを判定する(ステップS23)。そして、偽装されている場合には、SIGNAL部が偽装されている場合には、SIGNAL2部が続くことを認識する。
あるいは、ステップS23では、SIGNAL部に続いてSIGNAL2部が設けられているかどうかを判定することによって、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報が偽装されているかどうかを判定することができる。この場合、SIGNAL部で記載されている通りの変調方式(伝送レート)で以降の信号を復調するのに並行して、高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式によりSIGNAL2部の復調を試みる(図15を参照のこと)。そして、後者で解読できたことにより、SIGNAL部が偽装されていること、並びにSIGNAL2部が続くことを認識することができる。
ステップS23において、偽装フラグが設定されていない、すなわちSIGNAL部が偽装されていないと判定された場合には、パケットは従来局が受信可能な伝送レートで送信されていることが認識される。そこで、SIGNAL部に記されている伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を解読し、パケット長÷伝送レートで決められるパケット送信待機期間を算出する。そして、SIGNAL部のRATEで指定される伝送レートにより、MACヘッダ部分を受信する(ステップS27)。
一方、ステップS23において、偽装フラグが設定されている、すなわちSIGNAL部が偽装されていると判定された場合には、SIGNAL部に続くSIGNAL2部の受信を行なう(ステップS24)。そして、SIGNAL2部に記載されている実際の送信モードに自局が対応しているかどうかを判別する(ステップS25)。
既に述べたように、高度通信局であっても、IEEE802.11gなど上位規格で規定するすべての伝送レートをサポートしているとは限らない。また、国毎の無線LANの周波数割り当ての相違などにより、高度通信局が信号の帯域幅の拡張に対応していないこともある。これらの場合、ステップS25における判定結果は否定的となり、ステップS31に進み、SIGNAL部内に記載されている偽装的なパケット長及び伝送レートから得られる時間(すなわち、パケット長(Length)÷伝送レート(Rate))とSIGNAL2部内に記載されているパケット及び伝送レートから得られる時間(すなわち、パケット長(Length)÷伝送レート(Rate))との差分をとり、所定の時間パケットの送信を控えるようにする。
これに対し、ステップS25における判定結果が肯定的、すなわち自局がSIGNAL2部に記載されている実際の送信モードに対応している場合には、SIGNAL2部で指定される送信モードにより、MACヘッダ部分を受信する(ステップS26)。
ステップS26又はS27においてMACヘッダ部を受信すると、MACヘッダに記載されている受信アドレスが解読可能かどうかを判別する(ステップS28)。MACヘッダにより受信先アドレスを解読可能である場合には(ステップS28)、さらに受信先アドレスと自局アドレスを比較する(ステップS29)。そして、アドレスが一致する(すなわち自局がパケット送信先である)場合には、SIGNAL2部のTrue Lengthで指定される実際のパケット長分だけ受信処理を行なう(ステップS30)。
また、MACヘッダにより受信先アドレスを解読可能でない場合や(ステップS28)、受信先アドレスと自局アドレスが一致しない(すなわち自局がパケット送信先でない)場合には(ステップS29)、ステップS31に進み、SIGNAL部内に記載されている偽装的なパケット長及び伝送レートから得られる時間(すなわち、パケット長(Length)÷伝送レート(Rate))とSIGNAL2部内に記載されているパケット及び伝送レートから得られる時間(すなわち、パケット長(Length)÷伝送レート(Rate))との差分をとり、所定の時間パケットの送信を控えるようにする。このようにして、高度通信局は、自局がパケット全体を受信できない場合であっても、パケットの衝突を回避することができる。
最後に、本実施形態に係る無線ネットワークにおける通信動作について説明する。この無線ネットワークでは、従来のIEEE802.11bに従う従来局と、同じ帯域を使用する高速版の規格に相当するIEEE802.11gに準拠する高度通信局が混在して動作する。
図8には、CSMA/CAに基づく通信動作例を示している。図示の例では、通信環境下に4台の通信局#0〜#3が存在し、このうち通信局#0と通信局#2が高度通信局であり、通信局#2と通信局#3が従来局(若しくは伝送モードが非対応の高度通信局)であるとする。
送信データを持つ各通信局は、最後にパケットを検出してから所定のフレーム間隔DIFSだけメディア状態を監視し、この間にメディアがクリアすなわち送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行ない、さらにこの間にも送信信号が存在しない場合に、送信権利が与えられる。図示の例では、他の周辺局より短いランダム・バックオフを設定した通信局#0が送信権利を獲得し、同じく高度通信局としての通信局#1に対するデータ送信を開始することができる。
このデータ送信に際し、送信元の通信局#0は、PHYヘッダに相当する第1の解読部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信するとともに、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
あるいは、送信元の通信局#0は、PHYヘッダ中のSIGNAL部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信し、続いて高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調したSIGNAL2部を送信した後、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
従来局としての通信局#2及び通信局#3は、通信局#0からのパケットのSIGNAL部を聞くことができ、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、ACKパケットの送信が終了するDuration相当の時間だけ受信を行なう。通信局#0からのデータ・パケットはこのパケット長÷レート分送信されることはないが、通信局#2及び通信局#3は受信を試みることにより、送信を開始することがなく、結果的に送信を差し控えることになる。また、この伝送レート及びパケット長はそのパケットが実際に送信されているものと異なるため、正常に解読できなく、通信局#2及び通信局#3は、このパケットを破棄する。
また、SIGNAL部の予備領域(Reserve)には、SIGNAL部の伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報が偽装されていることを示す偽装フラグが設定されている。この場合、Rate及びLengthの組合せにより、MACフレームの通信モードすなわち実際の伝送レート(True Rate)及び実際のパケット長(True Length)を表す。あるいは、SIGNAL2部を設けることによって、SIGNAL部の伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報が偽装されていることを示すとともに、MACフレームの実際の伝送レート(True Rate)及び実際のパケット長(True Length)を記載する。
通信相手となる通信局#1は、高度通信局であり、偽装フラグを基にSIGNAL部のパケット長並びにレートの情報が偽装されていることを検知する。あるいは、SIGNAL2部を解読できたことにより、SIGNAL部のパケット長並びにレートの情報が偽装されていることを検知する。そして、偽装を検知したことに応答して、SIGNAL部の受信結果を破棄する。そして、続く第2の解読部としてのMACフレームを、SIGNAL部又はSIGNAL2部で示された伝送レートにて受信し、MACヘッダに記載されているDurationの期間だけ、自局宛てのデータの受信動作を行なう。そして、データ受信が完了すると、データ送信元の通信局#0宛てにACKパケットを返す。
なお、通信局#2及び通信局#3が従来局ではなく伝送モードが非対応の高度通信局である場合には、受信パケットのSIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートと、SIGNAL2部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateとの差分をとることにより(図16ではEIF−DIFSを付加している)、Duration相当の値を得て、その期間だけNAVを立ててパケットの送信を控える。
このようにして、CSMA/CA方式によれば、競合を回避しながら単一の通信局が送信権利を獲得するとともに、データ通信動作の期間中は周辺局がデータ送信動作を停止することにより衝突を回避することができる。また、隠れ端末問題がなければ、図示の通りRTS/CTS手順を経なくても、周辺の従来局(並びに伝送モードが非対応の高度通信局)がNAVを立て、衝突を回避できることから、オーバーヘッドを低減することができる。
図9には、RTS/CTSに基づく通信動作例を示している。図示の例では、通信環境下に4台の通信局#0〜#3が存在し、このうち通信局#0と通信局#1が高度通信局であり、通信局#2と通信局#3が従来局(若しくは伝送モードが非対応の高度通信局)であるとする。
但し、通信局#2は隣接する通信局#0と通信可能であり、通信局#0は隣接する通信局#1、#2と通信可能であり、通信局#1は隣接する通信局#0、#3と通信可能であり、通信局#3は隣接する通信局#1と通信可能な状態にあるが、通信局#2は通信局#1にとって隠れ端末となり、通信局#3は通信局#0にとって隠れ端末となっている。
送信データを持つ各通信局は、最後にパケットを検出してから所定のフレーム間隔DIFSだけメディア状態を監視し、この間にメディアがクリアすなわち送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行ない、さらにこの間にも送信信号が存在しない場合に、送信権利が与えられる。図示の例では、フレーム間隔DIFSの後、他の周辺局より短いランダム・バックオフを設定した通信局#0が送信権利を獲得し、通信局#1に対するデータ送信を開始することができる。
すなわち、データを送信する通信局#0から通信局#1に送信要求パケット(RTS)が送信される。これに対し、受信先となる通信局#1は、より短いフレーム間隔SIFS(Short IFS)を以って、通信局#0に確認通知(CTS)を返送する。
ここで、通信局#0は、RTSパケットの送信に際し、PHYヘッダに相当する第1の解読部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信するとともに、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
あるいは、送信元の通信局#0は、PHYヘッダ中のSIGNAL部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信し、続いて高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調したSIGNAL2部を送信した後、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
従来局としての通信局#2は、通信局#0からのRTSパケットのSIGNAL部を聞くことができ、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、パケット長÷レート相当の時間だけ受信動作を行なう。通信局#0からのRTSパケットはこのパケット長÷レート分送信されることはないが、通信局#2はこの期間だけ受信を試みることにより、送信を開始することがなく、結果的にACKパケットの送信が終わるまでは送信を差し控えることになる。また、このレート及びパケット長はそのパケットが実際に送信されているものと異なるため、正常に解読できなく、通信局#2は、これ以後第2の通信方式で送信されるパケットを破棄する。
また、受信先の通信局#1は、CTSパケットの送信に際し、PHYヘッダに相当する第1の解読部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信するとともに、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
あるいは、受信先の通信局#1は、PHYヘッダ中のSIGNAL部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信し、続いて高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調したSIGNAL2部を送信した後、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
従来局としての通信局#3は、通信局#1からのCTSパケットのSIGNAL部を聞くことができ、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、ACKパケットの送信が終了するDuration相当の時間だけ受信を行なう。通信局#1からのCTSパケットはこのパケット長÷レート分送信されることはないが、通信局#3はこの期間だけ受信を試みることにより、送信を開始することがなく、結果的にACKパケットの送信が終わるまでは送信を差し控えることになる。また、このレート及びパケット長はそのパケットが実際に送信されているものと異なるため、正常に解読できなく、通信局#3は、これ以後第2の通信方式で送信されるパケットを破棄する。
そして、通信局#0は、CTSパケットを受信したことに応答し、フレーム間隔SIFSを以ってデータ・パケットの送信を開始する。
このデータ送信に際し、送信元の通信局#0は、PHYヘッダに相当する第1の解読部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信するとともに、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装するとともに、偽装されていることを示す偽装フラグが設定されている。
あるいは、送信元の通信局#0は、PHYヘッダ中のSIGNAL部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信し、続いて高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調したSIGNAL2部を送信した後、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
通信局#1は、偽装フラグを基にSIGNAL部のパケット長並びにレートの情報が偽装されていることを検知する。あるいは、SIGNAL2部を解読できたことにより、SIGNAL部のパケット長並びにレートの情報が偽装されていることを検知する。そして、偽装を検知したことに応答して、SIGNAL部の受信結果を破棄する。そして、続く第2の解読部としてのMACフレームをSIGNAL部又はSIGNAL2部で示された伝送レートにて受信し、MACヘッダに記載されているDurationの期間だけ、自局宛てのデータの受信動作を行なう。そして、通信局#1は、通信局#0からのデータ・パケットの受信が完了すると、フレーム間隔SIFSを以ってACKパケットを返す。
なお、通信局#2及び通信局#3が従来局ではなく伝送モードが非対応の高度通信局である場合には、RTSパケット又はCTSパケットのSIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートと、SIGNAL2部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateとの差分をとることにより(図16ではEIF−DIFSを付加している)、Duration相当の値を得て、その期間だけNAVを立ててパケットの送信を控える。
このように、隠れ端末となる周辺の従来局(又は伝送モードが非対応の高度通信局)はRTS又はCTSのうち少なくとも一方を受信すると、RTS/CTS手続に基づくデータ伝送が行なわれると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定するので、衝突を回避することができる。
但し、図9に示した例では、RTS/CTS手順の終了に至るまでの期間(すなわちACKまでの期間)をDurationとして指定した場合、RTS/CTS手順が途中で破綻したときであっても周辺局は最後まで待機しなければならず、通信リソースを浪費することになる。
そこで、Short NAVと呼ばれる仕組みも考えられる。Short NAVでは、RTS、CTS、データの各パケットは、次のパケットの終わりまでしかDurationとして確保しない。例えば、RTSパケットではCTSパケットの終わりまで、CTSパケットではデータ・パケットの終わりまで、テー他・パケットではACKパケットの終わりまでを、それぞれDurationとして確保する。したがって、RTS/CTS手順が途中で破綻したときであっても周辺局は最後まで待機する必要はなくなる。
図10には、Short NAVを利用したRTS/CTSに基づく通信動作例を示している。但し、同図に示す例では図9の場合と同様の通信環境を想定する。
送信データを持つ各通信局は、最後にパケットを検出してから所定のフレーム間隔DIFSだけメディア状態を監視し、この間にメディアがクリアすなわち送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行ない、さらにこの間にも送信信号が存在しない場合に、送信権利が与えられる。図示の例では、フレーム間隔DIFSの後、他の周辺局より短いランダム・バックオフを設定した通信局#0が送信権利を獲得し、通信局#1に対するデータ送信を開始することができる。
すなわち、データを送信する通信局#0から通信局#1に送信要求パケット(RTS)が送信される。これに対し、受信先となる通信局#1は、より短いフレーム間隔SIFS(Short IFS)を以って、通信局#0に確認通知(CTS)を返送する。
ここで、通信局#0は、RTSパケットの送信に際し、PHYヘッダに相当する第1の解読部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信するとともに、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値がCTSパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
あるいは、送信元の通信局#0は、PHYヘッダ中のSIGNAL部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信し、続いて高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調したSIGNAL2部を送信した後、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいCTSパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
従来局としての通信局#2は、通信局#0からのRTSパケットのSIGNAL部を聞くことができ、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、パケット長÷レート相当の時間だけ受信動作を行なう。通信局#0からのRTSパケットはこのパケット長÷レート分送信されることはないが、通信局#2はこの期間だけ受信を試みることにより、送信を開始することがなく、結果的にCTSパケットの送信が終わるまでは送信を差し控えることになる。また、このレート及びパケット長はそのパケットが実際に送信されているものと異なるため、正常に解読できなく、通信局#2は、これ以後第2の通信方式で送信されるパケットを破棄する。
また、通信局#2が従来局ではなく伝送モードが非対応の高度通信局である場合には、RTSパケットのSIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートと、SIGNAL2部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateとの差分をとることにより(図16ではEIF−DIFSを付加している)、Duration相当の値を得て、その期間だけNAVを立ててパケットの送信を控える。
また、受信先の通信局#1は、CTSパケットの送信に際し、PHYヘッダに相当する第1の解読部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信するとともに、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値がデータ・パケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
あるいは、受信先の通信局#1は、PHYヘッダ中のSIGNAL部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信し、続いて高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調したSIGNAL2部を送信した後、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいデータ・パケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
従来局としての通信局#3は、通信局#1からのCTSパケットのSIGNAL部を聞くことができ、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、パケット長÷レート相当の時間だけ受信を行なう。通信局#1からのCTSパケットはこのパケット長÷レート分送信されることはないが、通信局#3はこの期間だけ受信を試みることにより、送信を開始することがなく、結果的にデータ・パケットの送信が終わるまでは送信を差し控えることになる。また、このレート及びパケット長はそのパケットが実際に送信されているものと異なるため、正常に解読できなく、通信局#3は、これ以後第2の通信方式で送信されるパケットを破棄する。
また、通信局#3が従来局ではなく伝送モードが非対応の高度通信局である場合には、CTSパケットのSIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートと、SIGNAL2部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateとの差分をとることにより(図16ではEIF−DIFSを付加している)、Duration相当の値を得て、その期間だけNAVを立ててパケットの送信を控える。
そして、通信局#0は、CTSパケットを受信したことに応答し、フレーム間隔SIFSを以ってデータ・パケットの送信を開始する。
このデータ送信に際し、送信元の通信局#0は、PHYヘッダに相当する第1の解読部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信するとともに、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値がACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装するとともに、偽装されていることを示す偽装フラグが設定されている。
あるいは、送信元の通信局#0は、PHYヘッダ中のSIGNAL部をすべての通信局が受信可能な第1の通信方式で送信し、続いて高度通信局同士では既知であるが第1の通信局には知られていない変調方式により変調したSIGNAL2部を送信した後、MACフレームに相当する第2の解読部を高度通信局のみが受信可能な第2の通信方式で送信する。そして、PHYヘッダのSIGNAL部において、パケット長÷レートの値が通信を停止してほしいACKパケットまでのDurationと等しくように、伝送レート(Rate)及びパケット長(Length)情報を偽装する。
従来局としての通信局#2は、通信局#0からのRTSパケットのSIGNAL部を聞くことができ、実際とは異なるパケット長と伝送レートを設定し、パケット長÷レート相当の時間だけ受信動作を行なう。通信局#0からのデータ・パケットはこのパケット長÷レート分送信されることはないが、通信局#2はこの期間だけ受信を試みることにより、送信を開始することがなく、結果的にACKパケットの送信が終わるまでは送信を差し控えることになる。また、このレート及びパケット長はそのパケットが実際に送信されているものと異なるため、正常に解読できなく、通信局#2は、これ以後第2の通信方式で送信されるパケットを破棄する。
また、通信局#2が従来局ではなく伝送モードが非対応の高度通信局である場合には、データ・パケットのSIGNAL部の記載に基づいて算出されるパケット長÷伝送レートと、SIGNAL2部に基づいて算出されるTrueLength÷True Rateとの差分をとることにより(図16ではEIF−DIFSを付加している)、Duration相当の値を得て、その期間だけNAVを立ててパケットの送信を控える。
通信局#1は、偽装フラグを基にSIGNAL部のパケット長並びにレートの情報が偽装されていることを検知すると、これらを破棄する。そして、続く第2の解読部としてのMACフレームを対応する伝送レートにて受信し、MACヘッダに記載されているDurationの期間だけ、自局宛のデータの受信動作を行なう。そして、通信局#1は、通信局#0からのデータ・パケットの受信が完了すると、フレーム間隔SIFSを以ってACKパケットを返す。
このように、隠れ端末となる周辺の従来局(又は伝送モードが非対応の高度通信局)はRTS又はCTSのうち少なくとも一方を受信すると、次のパケットの伝送が終了すると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定するので、衝突を回避することができる。
上述したように、本実施形態では、高度通信局は、PHYヘッダのSIGNAL部の記載を偽装し、高度な通信方式でトランザクションが終了するまで従来局に送信停止期間を設けることにより、互換性を得るようにしている。すなわち、高度な通信方式に対応しない従来局が次のパケットの伝送が終了すると予想される期間だけ送信を停止することで、衝突が回避される。
図8及び図9に示した例では、第2の通信方式により行なわれる通信手順において、ACK送信が終了するまでの期間だけ、従来局が送信動作を停止するようにSIGNAL部の記載を偽装する。また、MACフレームにおいて第2の通信方式により複数の通信局と多重接続する通信手順によりパケット送信を行なうときには、それぞれの相手局から時分割多重によりACK(応答パケット)の送信が行なわれるが、この場合にも上述の仕組みを適用することができる。また、ここで言うACKパケットの送信には、ACKパケット単独の場合に限定されず、例えばRTSパケットやCTSパケット、Dataパケットなど他の種類のパケットとACKパケットが多重されて送信される場合も含むものとする。
図17には、送信局からの1つの送信パケットに対し複数の受信局が時分割で応答パケットを返信する通信動作シーケンスを示している。
通信局#0が送信するパケット#0は、通信局#1及び通信局#2からそれぞれ返信を求めるものとする。このパケット#0には、それらの応答パケットが衝突しないように、それぞれいつ送信すればよいか通信局#1及び通信局#2に通知する情報が記載されている。
このとき、パケット#0のSIGNAL部のパケット長÷レートの値をすべての応答パケットの受信が完了する時間に設定する。これによって、通信局#1及び通信局#2からの応答パケットが受信できない距離にいる通信局#3がこの応答を妨害するのを防ぐことができる。SIGNAL部は最も低いレートで送信されるため、このような隠れ端末を除外するのに有効である。
なお、本出願人に既に譲渡されている特願2003−297919号明細書には、送信局が複数の受信局に当てたデータ・フレームを空間分割多重接続(SDMA)により送信するのに対し、各受信局からは時分割多重によりACKが返信される通信システムについて開示されている。