JP4572682B2 - 回転機械の軸受構造、回転機械、軸受構造の製造方法、並びに回転機械の製造方法 - Google Patents

回転機械の軸受構造、回転機械、軸受構造の製造方法、並びに回転機械の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、過給機などの高速回転機械で用いられる軸受構造に関し、特に、自励振動を含む不安定振動を抑える技術に関する。
過給機などの高速回転機械で用いられる軸受構造として、浮動ブッシュ型のすべり軸受(浮動ブッシュ軸受)を備えるものが知られている。この軸受構造は、回転軸とハウジングとの間にすべり軸受(浮動ブッシュ)が回転可能な状態で配設された構成からなり、軸と軸受との隙間及び軸受とハウジングとの隙間にはそれぞれオイル供給源から潤滑オイルが供給される。
なお、内燃機関のシリンダに供給される空気あるいは混合気を予め圧縮することを過給といい、その圧縮機を過給機(supercharger)という。また、そのうち機関の排ガスを利用したガスタービンに直結した過給機を排気タービン過給機、または略してターボ過給機(turbocharger)という。以下の説明において、特に必要な場合を除き、ターボ過給機を単に「過給機」と呼ぶ。
浮動ブッシュ軸受を備える軸受構造では、軸受の内方で油膜を介して軸が回転し、その軸の回転に連れて軸受が回転運動する。そして、軸受の内周面上及び外周面上に形成される油膜により制振効果が得られる。軸受の回転運動により軸と軸受との速度差が抑制されるから、潤滑オイルのせん断に伴うエネルギー損失が比較的小さくて済む。
浮動ブッシュ軸受の課題として、軸及び軸受系の振動モードとして不安定な振動が発生することがある。この不安定振動は、機械的なアンバランスに起因したモード特性(回転一次振動等)とは異なり、軸と軸受との隙間にある粘性流体の挙動や軸心の揺れ等に応じて生じると考えられるもので、オイルホワール(oil-whirl)、オイルホイップ(oil-whip)等と呼ばれる自励振動を含む(例えば、特許文献1参照)。
そして、こうした不安定振動は、高速運転時の騒音原因となることから、その抑制のために様々な技術が提案されている(例えば、特許文献2、3、4参照)。しかしながら、不安定振動を完全に抑えることは難しい。
特開2002−213450号公報(段落番号0043−0046、第10図) 特開2002−138846号公報 特開2002−213248号公報 特開2001−12460号公報 特開平11−336744号公報
本発明は、自励振動を含む不安定振動を抑えることが可能な軸受構造を提供することを目的とする。
本件発明者は、それぞれ浮動ブッシュを有するすべり軸受からなるタービン側軸受及びコンプレッサ側軸受に関して、各軸受と回転軸との隙間(内周クリアランス)及び各軸受とハウジングとの隙間(外周クリアランス)を適切に設定することにより、不安定振動を抑えることができることを解明した。
すなわち、本発明に係る軸受構造は、タービンインペラとコンプレッサインペラとを連結する回転軸に配設された、水平配置型の回転機械の軸受構造であって、それぞれ浮動ブッシュ型のすべり軸受からなるタービン側軸受とコンプレッサ側軸受とを備え、前記タービン側軸受とコンプレッサ側軸受には、それぞれ潤滑オイルが供給され、前記タービン側軸受と前記回転軸との間のタービン側内周クリアランスが前記コンプレッサ側軸受と前記回転軸との間のコンプレッサ側内周クリアランスに比べて大きく設定されることを特徴とする。
この軸受構造によれば、不安定振動の抑制が可能となる。
ここで、前記タービン側内周クリアランスと前記コンプレッサ側内周クリアランスとの平均値に対する両者の差の割合が0.2以上であるのが好ましい。
すなわち、タービン側内周クリアランスをTI、コンプレッサ側内周クリアランスをCI、それらの平均値(内周クリアランス平均値)をAI、とするとき、(TI−CI)/AI≧0.2 を満たすのが好ましい。
なお、本発明の軸受構造は、タービン側軸受とコンプレッサ側軸受とが一体化された形態にも適用可能である。
本発明の回転機械は、タービンインペラと、コンプレッサインペラと、前記タービンインペラと前記コンプレッサインペラとを連結する回転軸と、前記回転軸を囲むハウジングと、前記回転軸を回転自在に支持する軸受装置とを備え、前記軸受装置が、上記記載の軸受構造を有することを特徴とする。
この回転機械によれば、本発明の軸受構造によって自励振動を含む不安定振動が抑制されるから、高速運転時の騒音が低減される。
本発明の軸受構造の製造方法は、浮動ブッシュ型のすべり軸受を有する、水平配置型の軸受構造の製造方法であって、前記軸受構造は、回転軸を支持するそれぞれ浮動ブッシュ型のタービン側軸受とコンプレッサ側軸受とを備えており、前記タービン側軸受とコンプレッサ側軸受には、それぞれ潤滑オイルが供給され、前記タービン側軸受と前記回転軸との間のタービン側内周クリアランスを前記コンプレッサ側軸受と前記回転軸との間のコンプレッサ側内周クリアランスに比べて大きく設定することを特徴とする。
この軸受構造の製造方法によれば、高速運転時の不安定振動が抑制された低騒音の軸受構造が製造される。
本発明の回転機械の製造方法は、浮動ブッシュ型のすべり軸受を有する、水平配置型の軸受構造を備える回転機械の製造方法であって、前記軸受構造は、回転軸を支持するそれぞれ浮動ブッシュ型のタービン側軸受とコンプレッサ側軸受とを備えており、前記タービン側軸受とコンプレッサ側軸受には、それぞれ潤滑オイルが供給され、前記タービン側軸受と前記回転軸との間のタービン側内周クリアランスを前記コンプレッサ側軸受と前記回転軸との間のコンプレッサ側内周クリアランスに比べて大きく設定することを特徴とする。
ここで、前記タービン側内周クリアランスと前記コンプレッサ側内周クリアランスとの平均値に対する両者の差の割合が0.2以上であるのが好ましい。
この回転機械の製造方法によれば、高速運転時の不安定振動が抑制された低騒音の回転機械が製造される。
本発明の回転機械の軸受構造によれば、自励振動を含む不安定振動を抑制することができる。
本発明の回転機械によれば、不安定振動の抑制によって高速運転時の騒音を低減することができる。
本発明の軸受構造の製造方法によれば、不安定振動が抑制された低騒音の軸受構造を製造することができる。
本発明の回転機械の製造方法によれば、不安定振動が抑制された低騒音の回転機械を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の軸受構造が適用された回転機械としての過給機(ターボチャージャ)の全体構成を示す断面図である。
図1において、過給機10は、タービンインペラ11と、コンプレッサインペラ12と、タービンインペラ11とコンプレッサインペラ12とを連結する回転軸としてのシャフト13と、これらを囲むハウジング14と、ハウジング14内でシャフト13を回転自在に支持する軸受装置15とを備えて構成されている。
タービンインペラ11とシャフト13とは溶接等により一体化され、コンプレッサインペラ12とシャフト13とはナット等を介して結合されている。また、ハウジング14は、タービンハウジング14a、ベアリングハウジング14b、シールプレート14c、及びコンプレッサハウジング14d等が順に連結された構成からなる。
内燃機関の排ガスによりタービンインペラ11が回転すると、その回転力がシャフト13を介してコンプレッサインペラ12に伝達される。そして、コンプレッサインペラ12の回転に伴って圧縮された空気(又は混合気)が内燃機関に供給される。シャフト13の回転数は、例えば数万〜数10万rpmである。
軸受装置15は、フルフロート式の浮動ブッシュ軸受構造を有する。すなわち、軸受装置15は、軸方向に離間配置される2つの浮動ブッシュ軸受(フローティングメタル)21,22を有し、シャフト13と軸受21,22との隙間及び軸受21,22とハウジング(ベアリングハウジング14b)との隙間にはそれぞれ油路23等を介して潤滑オイルが供給される。なお、シャフト13のスラスト方向の荷重は、スラストベアリング25、及びカラー26等により支持される。
軸受装置15では、軸受21,22の内周面上及び外周面上に油膜が形成・保持されるとともに、軸受21,22の内方で油膜を介してシャフト13が回転する。さらにそのシャフト13の回転に連れてベアリングハウジング14bの内方で油膜を介して軸受21,22が回転運動する。軸受21,22の回転数は、例えばシャフト13の回転数の数十%程度である。そして、軸受21,22の内周面上及び外周面上に形成される油膜により制振効果が得られる。軸受21,22の回転運動によりシャフト13と軸受21,22との速度差が抑制されるので、潤滑オイルのせん断に伴うエネルギー損失は比較的小さい。
図2は、軸受装置15の主要部を模式的に示す図である。図2において、図1と同一の構成要素について同一の符号を付している。
ここで、シャフト13とタービン側軸受21との隙間(タービン側内周クリアランス)をTI、シャフト13とコンプレッサ側軸受22との隙間(コンプレッサ側内周クリアランス)をCI、タービン側軸受21とベアリングハウジング14bとの隙間(タービン側外周クリアランス)をTO、コンプレッサ側軸受22とベアリングハウジング14bとの隙間(コンプレッサ側外周クリアランス)をCO、とする。
また、タービン側内周クリアランス(TI)とコンプレッサ側内周クリアランス(CI)との平均値(内周クリアランス平均値)をAI、とする。
軸受装置15では、下記の式(1)及び式(2)の条件が設定されている。
TI>CI …(1)
(TI−CI)/AI≧0.2 …(2)
この軸受装置15では、タービン側内周クリアランス(TI)がコンプレッサ側内周クリアランス(CI)に比べて大きく設定され、より好ましくはタービン側内周クリアランス(TI)とコンプレッサ側内周クリアランス(CI)との平均値(AI)に対する両者の差の割合が0.2以上であることにより、自励振動を含む不安定振動が抑制される。その結果、上記条件設定された軸受装置15を備える過給機10(図1参照)によれば、高速運転時の騒音が低減される。
この軸受装置15において、上記の内周クリアランスの設定(TI>CI)に加え、外周クリアランスの設定を行うことができる。この場合、タービン側外周クリアランス(TO)とコンプレッサ側外周クリアランス(CO)とがほぼ同じである(TO=CO)か、タービン側外周クリアランス(TO)に比べてコンプレッサ側外周クリアランス(CO)が大きく設定されている(TO<CO)ことにより、上記の不安定振動抑制に効果がある。この振動抑制について、「TI>CI、TO=CO」が最も効果的であり、「TI>CI、TO<CO」が次に高い効果を有することが確認されている。
次に、上記の軸受装置15を備える過給機10について振動試験を行った結果について図3を参照して説明する。なお、以下の説明において図2に示した符号を適宜用いる。
振動試験は、内周クリアランス差(TI−CI)が異なる複数の条件について行い、スペクトル解析等により不安定振動成分をそれぞれ抽出して比較した。
図3は、内周クリアランス差と不安定振動パワー比との関係を示すグラフ図である。
横軸は、タービン側内周クリアランス(TI)とコンプレッサ側内周クリアランス(CI)との平均値に対する両者の差の割合((TI−CI)/AI)を示し、縦軸は、クリアランス差がゼロの場合の振動パワー(推定値)に対する各クリアランス差での振動パワーの比を示す。
ここで、強制振動のマスダンパー系では、パワーは強制力の2乗に比例する。強制振動のマスダンパー系は、次式(3)の一般的な強制力が働く振動方程式で表すことができる。
m(dx/dt)+c・(dx/dt)+k・x=F(t) …(3)
Fは強制力で加速度に比例する。すなわち、パワーは加速度の2乗に比例する。
図3に示すグラフでは、振動のパワーは加速度の2乗に比例するとして、振動試験から得られた加速度に関するデータを2乗で処理した値を縦軸に使用した。
図3から明らかなように、内周クリアランス差(TI−CI)の割合が大きくなるに従って、すなわち、コンプレッサ側内周クリアランス(CI)に比べてタービン側内周クリアランス(TI)が大きくなるに従って、不安定振動パワー比が小さくなることが確認された。内周クリアランス差の割合が0.2以上であると、クリアランス差がゼロの状態に比べて、不安振動パワーを1/2以下にすることができることが分かった。
上述した軸受構造を製造するには、内径が異なる浮動ブッシュを用意する必要がある。すなわち、タービン側浮動ブッシュには、その内径がコンプレッサ側浮動ブッシュの内径よりも大きいものを使用する必要がある。このような浮動ブッシュを用意するためには、それぞれに適した浮動ブッシュを製作する方法と、平均値の浮動ブッシュを製作し、その製作公差の大きいものの集合と小さいものの集合とに分類して、選択する方法とがある。さらに、製作された浮動ブッシュを内径の大きさで4分類(例えば、A,B,C,D)し、AとCの組み合せやBとDの組み合せのように一つ置きに組み合わせて選択する方法もある。
上述した製造方法において、タービン側浮動ブッシュとコンプレッサ側浮動ブッシュとが似た形状であることから、各浮動ブッシュにマークを入れることにより両者の識別性を向上させることができる。そして、識別性の向上により組み合わせの誤りが防止される。この場合、例えば、タービン側浮動ブッシュとコンプレッサ側浮動ブッシュとで異なるマークを使用してもよく、上記した製作後の分類ごとに異なるマークを使用してもよい。あるいは、製作する複数の浮動ブッシュのそれぞれを個別に識別可能なマーク(識別コード)を使用してもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
本発明の軸受構造が適用された過給機(ターボチャージャ)の全体構成を示す断面図である。 軸受装置の主要部を模式的に示す図である。 軸受装置を備える過給機について振動試験を行った結果を示すグラフ図である。
符号の説明
10…過給機(回転機械)、11…タービンインペラ、12…コンプレッサインペラ、13…シャフト(回転軸)、14…ハウジング、14b…ベアリングハウジング、15…軸受装置、21…タービン側軸受(浮動ブッシュ軸受)、22…コンプレッサ側軸受(浮動ブッシュ軸受)、23…油路。

Claims (6)

  1. タービンインペラとコンプレッサインペラとを連結する回転軸に配設された、水平配置型の回転機械の軸受構造であって、
    それぞれ浮動ブッシュ型のすべり軸受からなるタービン側軸受とコンプレッサ側軸受とを備え、
    前記タービン側軸受とコンプレッサ側軸受には、それぞれ潤滑オイルが供給され、
    前記タービン側軸受と前記回転軸との間のタービン側内周クリアランスが前記コンプレッサ側軸受と前記回転軸との間のコンプレッサ側内周クリアランスに比べて大きく設定されることを特徴とする回転機械の軸受構造。
  2. 前記タービン側内周クリアランスと前記コンプレッサ側内周クリアランスとの平均値に対する両者の差の割合が0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の回転機械の軸受構造。
  3. タービンインペラと、
    コンプレッサインペラと、
    前記タービンインペラと前記コンプレッサインペラとを連結する回転軸と、
    前記回転軸を囲むハウジングと、
    前記回転軸を回転自在に支持する軸受装置とを備え、
    前記軸受装置が、請求項1または請求項2に記載の軸受構造を有することを特徴とする回転機械。
  4. 浮動ブッシュ型のすべり軸受を有する、水平配置型の軸受構造の製造方法であって、
    前記軸受構造は、回転軸を支持するそれぞれ浮動ブッシュ型のタービン側軸受とコンプレッサ側軸受とを備えており、
    前記タービン側軸受とコンプレッサ側軸受には、それぞれ潤滑オイルが供給され、
    前記タービン側軸受と前記回転軸との間のタービン側内周クリアランスを前記コンプレッサ側軸受と前記回転軸との間のコンプレッサ側内周クリアランスに比べて大きく設定することを特徴とする軸受構造の製造方法。
  5. 浮動ブッシュ型のすべり軸受を有する、水平配置型の軸受構造を備える回転機械の製造方法であって、
    前記軸受構造は、回転軸を支持するそれぞれ浮動ブッシュ型のタービン側軸受とコンプレッサ側軸受とを備えており、
    前記タービン側軸受とコンプレッサ側軸受には、それぞれ潤滑オイルが供給され、
    前記タービン側軸受と前記回転軸との間のタービン側内周クリアランスを前記コンプレッサ側軸受と前記回転軸との間のコンプレッサ側内周クリアランスに比べて大きく設定することを特徴とする回転機械の製造方法。
  6. 前記タービン側内周クリアランスと前記コンプレッサ側内周クリアランスとの平均値に対する両者の差の割合が0.2以上であることを特徴とする請求項5に記載の回転機械の製造方法。
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