JP4572072B2 - 眼内レンズ - Google Patents

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Description

本発明は、後発白内障を抑制するための眼内レンズ、ならびに、後発白内障の抑制方法に関する。
白内障は、水晶体が混濁する疾病であり、混濁の程度、範囲、部位に応じて視力低下を引き起こし、最悪の場合には失明の原因ともなる。
近年、白内障の治療方法として、混濁した水晶体を摘出して、人工水晶体(眼内レンズ)を挿入する方法が提案され、一般的に行われるようになってきている。
眼内レンズ挿入方法としては、様々な方法が提案されているが、中でも、前嚢の一部を切開して水晶体皮質および核を吸引除去し、その切開部から眼内レンズを挿入する方法が、最も確実性の高い方法として推奨されている。
しかし、この方法は、残存した水晶体上皮細胞が水晶体後嚢部に移動、増殖したことで生じた後嚢部の濁りが眼内レンズにも広がることで、後発白内障(後嚢混濁とも呼ばれる)が発症する危険性がある。
このような眼内レンズ使用時の後発白内障の治療方法としては、現在、Nd:YAGレーザーを照射する方法が用いられている。しかし、この方法は、Nd:YAGレーザーが高価であること、また、眼底検査、光凝固や硝子体手術の妨げとなる等の欠点を有する(非特許文献1)。
一方、薬剤による後発白内障の治療/予防方法も提案されている。例えば、特開平9−291040号公報(特許文献1)には、細胞接着阻害活性を有する徐放製剤を、後発白内障の治療予防薬として使用することが提案されている。
また、眼内レンズのエッジ形状をシャープにすることで、後発白内障を抑制する方法も提案されている(非特許文献1)。
特許文献1および非特許文献1に記載の方法は、いずれも後発白内障の抑制に一定の効果を示すものではある。しかし、特許文献1に記載の方法は、薬剤を適用するという更なる工程を要し、非特許文献1に記載の方法は、レンズエッジ部分の加工を行う必要があり、両方法とも、簡便さの点では問題があった。そのため、簡便な方法で、後発白内障を効果的に抑制できる方法が求められていた。
特開平9−291040号公報 西起史、西佳代、阪西弘太郎、山田義治、「眼内レンズの後発白内障抑制効果」、第15回ヨーロッパ眼内レンズ学会抄録、1997年
そこで、本発明は、眼内レンズ使用時の後発白内障を抑制することができる眼内レンズおよび後発白内障の抑制方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、特定の構造を有する共重合体からなるコーティングを眼内レンズの光学部に設けることにより、眼内レンズ使用時の後発白内障を顕著に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の上記目的は、
式(I):
〔式中、aは0.03〜0.70、bは0.3〜0.97、nは2以上の整数、RはH、OR’(R’は水素、脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基)、−Si(OR”)3(R”はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、もしくはトリメチルシリル基)、または
(R'''は、メチル基、フェニル基もしくはトリメチルシロキシ基を示し、mは、1〜100の間のいずれかの整数である)を示し、Aは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Bは直鎖状または分枝したアルキルスペーサー基を示す〕
で示される繰り返し単位を有し、かつ分子量は5000以上である、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなるコーティングを光学部の少なくとも一部に有する眼内レン
よって達成される。
前記式(I)におけるnは2〜5の間のいずれかの整数であることが好ましく、aとbとの比は、a:b=1:9〜6:4の範囲であることが好ましい。
また、前記式(I)中のAがCH3であり、BがCH2であり、nは4であり、RはHであることが特に好ましい。
本発明によれば、眼内レンズ使用時の後発白内障を効果的に抑制することができる。
[眼内レンズ]
本発明の眼内レンズは、式(I):
〔式中、aは0.03〜0.70、bは0.3〜0.97、nは2以上の整数、RはH、OR’(R’は水素、脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基)、−Si(OR”)3(R”はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、もしくはトリメチルシリル基)、または
(R'''は、メチル基、フェニル基もしくはトリメチルシロキシ基を示し、mは、1〜100の間のいずれかの整数である)を示し、Aは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Bは直鎖状または分枝したアルキルスペーサー基を示す〕
で示される繰り返し単位を有し、かつ分子量は5000以上である、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」ともいう)と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなるコーティングを、光学部の少なくとも一部に有する。なお、前記共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル成分は、すべて同一種であることもでき、二種以上の(メタ)アクリル酸エステル成分が含まれることもできる。
前記式(I)で示される繰り返し単位を有する共重合体は、下記式(II)で示されるMPCと下記式(III)で示される(メタ)アクリル酸エステルとを、溶媒中で開始剤の存在下、反応させることで製造することができる。
〔式(III)中、nは2以上の整数、RはH、OR’(R’は水素、脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基)、−Si(OR”)3(R”はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、もしくはトリメチルシリル基)、または
(R'''は、メチル基、フェニル基もしくはトリメチルシロキシ基を示し、mは、1〜100の間のいずれかの整数である)を示し、Aは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Bは直鎖状または分枝したアルキルスペーサー基を示す。〕
前記MPCは、例えば、2−ブロモエチルホスホリルジクロリドと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させ、2−メタクリロイルオキシエチル2’−ブロモエチルリン酸(以下、「MBP」ともいう)を得て、このMBPをトリメチルアミンのメタノール溶液中で反応させて得ることができる。
式(III)中、Rは、H、OR’(R’は水素、脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基)、−Si(OR”)3(R”はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、もしくはトリメチルシリル基)、または
(R'''は、メチル基、フェニル基もしくはトリメチルシロキシ基を示し、mは、1〜100の間のいずれかの整数である)を示す。脂肪族炭化水素基の具体例としては、アルキル基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基、パルミトイル基、ステアリル基を挙げることができる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチル基、アントラニル基を挙げることができ、それらの芳香環上の水素のうち、1つまたはそれ以上が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ハロゲン基等で置換されていてもよい。
式(III)中、Rが、−Si(OR”)3(R”はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、もしくはトリメチルシリル基)である場合、R”は、メチル基であることが好ましい。
また、式(III)中、Rが、
(R'''は、メチル基、フェニル基もしくはトリメチルシロキシ基を示し、mは、1〜100の間のいずれかの整数である)である場合、R'''は、メチル基、トリメチルシロキシ基であることが好ましい。
式(III)中、Aは水素または炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を挙げることができる。
式(III)中、Bは直鎖状または分枝したアルキルスペーサー基である。直鎖または分枝したアルキルスペーサー基は、例えば、炭素数1〜5のものであることができる。分枝したアルキルスペーサー基としては、例えば、主鎖に1〜4個の範囲の炭素原子を有し、側鎖にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれか1つ以上を有するものを挙げることができる。
また、式(III)中、nは2以上の整数であり、眼内レンズのコーティング材として、極性溶媒に溶解して使用する際の溶解性を考慮すると、好ましくは2〜5である。特に、AがCH3であり、BがCH2であり、nが4であり、RがHである場合に、優れた後発白内障抑制効果を得ることができる。
式(III)で示される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、トリス(トリメチルシロキシ)−γ−メタクリロキシプロピルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチルを用いることが好ましく、中でも、(メタ)アクリル酸ブチルを用いることが、優れた後発白内障抑制効果を得るために特に好ましい。なお、前記共重合体の重合において、これらの(メタ)アクリル酸エステルのうち、1種のみを用いれば、含まれる(メタ)アクリル酸エステル成分がすべて同一種である共重合体を得ることができる。一方、前記共重合体の重合において、これらの(メタ)アクリル酸エステルを2種以上用いることも可能であり、2種以上を用いた場合には、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル成分を含む共重合体を得ることができる。
共重合体中のMPC成分(a)と(メタ)アクリル酸エステル成分(b)との比(a:b)は、3:97〜7:3の範囲であることができ、好ましくは1:9〜6:4の範囲である。MPC成分と(メタ)アクリル酸エステル成分との比が上記範囲内であれば、優れた後発白内障抑制効果を得ることができる。中でも、上記比が3:7であれば、特に優れた後発白内障抑制効果を得ることができる。共重合体中のMPC成分と(メタ)アクリルエステル成分の割合は、重合時のMPCおよび(メタ)アクリル酸エステルの仕込み量を調整することによって制御することができる。
前記共重合体の分子量は5000以上であり、好ましくは5万〜200万、特に好ましくは20万〜80万の範囲である。分子量が上記範囲内であれば、前記共重合体を眼内レンズにコートする場合に、コーティング時の成膜性がよく、かつ高強度のコーティングを得ることができる上に、均一なコーティングが可能な粘度を有するコーティング液を容易に作製することができる。
前記共重合体を得るための反応は、公知の方法で行うことができる。
使用する溶媒は、モノマーを溶解できるものであればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルムおよびこれらの混合物等を用いることができる。
また、開始剤としては、通常のラジカル開始剤であればいずれも使用可能であり、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリル等の脂肪族アゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の有機過酸化物等を用いることができる。
本発明の眼内レンズは、後発白内障抑制という観点からは、後房レンズに適用することが好ましい。また、本発明の眼内レンズは、細胞付着、細胞癒着の低減効果も有するため、前房レンズ、虹彩支持レンズ等のすべてのタイプの眼内レンズに適用することもできる。
また、本発明の眼内レンズは、光学部と支持部が同一材料からなる眼内レンズであることもでき、異なる材料からなる眼内レンズであることもできる。例えば、本発明の眼内レンズは、光学部と支持部が、軟質アクリル、シリコン、ハイドロゲル等の一種の材料からなる眼内レンズの少なくとも光学部後面に前記コーティングを設けた眼内レンズであることもでき、光学部がハイドロゲルで支持部がポリメチルメタクリレート、光学部がポリメチルメタクリレートで支持部がポリプロピレンからなる眼内レンズの少なくとも光学部後面に前記コーティングを設けた眼内レンズであることもできる。
なお、本発明の眼内レンズは、光学部の少なくとも一部に前記コーティングを設けたものであり、光学部後面または前面に前記コーティングを設けたものであることができ、または、光学部全面に前記コーティングを設けたものであることもできる。ここで、「光学部後面」とは、眼内レンズ光学部の眼内側の面をいう。
また、本発明の眼内レンズは、光学部だけでなく、支持部に前記コーティングを設けたものであることもできる。支持部にもコーティングを設けることにより、眼内レンズ移植後にレンズを摘出する場合に、組織との癒着が少なくレンズを容易に摘出できるという効果を得ることができる。
前記共重合体からなるコーティングを設ける眼内レンズの光学部材料は、特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート、シリコン、ハイドロゲル、アクリル(メタクリレート/アクリレート共重合体)、ポリエチルメタクリレート等を挙げることができる。中でも、光学部がアクリル系ポリマーからなるものであると、前記共重合体との相溶性が高く、コーティングを良好に行うことができる。
なお、従来は、アクリル系ポリマーは粘着性が高いため、アクリル系ポリマーからなる眼内レンズは、後嚢とレンズとの間にすきまができにくく、後嚢とレンズとの間に細胞が侵入して活性化することにより生じる後発白内障を起こしにくいと考えられていた。一方、前記重合体は、粘着性が低いことが知られている(特開平3−39309号公報参照)。よって、上記のような従来の知見に基づけば、アクリル系ポリマー上に前記共重合体からなるコーティングを設けることは、粘着性を低下させるため、後発白内障を引き起こしやすくなると予想される。しかるに、アクリル系ポリマー上に前記共重合体からなるコーティングを設けた眼内レンズは、未被覆のアクリル系ポリマーからなる眼内レンズと比べて、後発白内障を顕著に抑制することができることが見出された。
支持部材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ハイドロゲル、アクリル(メタクリレート/アクリレート共重合体)、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド等が挙げられる。支持部と光学部との接合方法としては、例えば、IPN(相互貫入網目構造)等の化学的接合、溶着、アンカ等の物理的接合等が知られているが、本発明の眼内レンズを得るためには、いずれの方法も適用可能である。
本発明の眼内レンズは、硬質眼内レンズ(折りたたまれていない状態で眼内に挿入される)、軟質眼内レンズ(折りたたんだ状態または圧縮された状態で眼内に挿入される)のいずれであることもできる。特に、アクリル系ポリマーからなる軟質眼内レンズは、アクリル系ポリマーの粘着性が高いためにレンズ同士が張りつきやすく、折りたたんだ状態で眼内に挿入してからレンズが開くまでに長時間を要したり、場合によってはレンズが開かない等の問題があるが、前記共重合体からなるコーティングを設けることで表面粘着性が低下するため、操作性を向上することができるという利点もある。
光学部表面上に前記コーティングを設ける方法は、特に限定されず、公知のコーティング方法を用いることができ、例えば、前記共重合体を適当な溶媒に溶解した溶液(以下、「コーティング溶液」ともいう)に、眼内レンズを浸漬する方法や、コーティング溶液を光学部上に滴下した後にスピンコーターによってコーティングする方法を用いることができる。中でも、本発明の眼内レンズを得るためには、前記共重合体含有溶液に眼内レンズ全体を浸漬した後、スピンコーターを用いてコーティングする方法を用いることが好ましい。特に、コーティング溶液へ浸漬した後にスピンコーターによりコーティングする操作を、2回以上行うことが、所望の厚さを有する均一なコーティングを設けることができるため、好ましい。また、この方法を採用することで、一体型眼内レンズ、多部品から構成されている眼内レンズを問わず、眼内レンズ光学部の前面、後面、支持部のすべてを一度に均一にコーティングすることができる。
なお、前面または後面の一方の面のみをコーティングする場合には、コーティング溶液を光学部のコーティングを設ける面上に滴下した後にスピンコーターによってコーティングする方法を用いることができる。
以上、光学部に支持部を取り付けた状態でのコーティング方法を説明したが、本発明の眼内レンズは、光学部をコーティングした後に支持部を取り付けることで作製することもできる。
本発明の眼内レンズは、光学部の少なくとも一部に前記コーティングを設けたものであり、後嚢部と接触する光学部後面をコートしておくことで、優れた後発白内障抑制効果を得ることができる。また、本発明の眼内レンズは、光学部前面にもコーティングを設けたものであることが好ましい。後発白内障の要因である上皮細胞は、当初眼内レンズ前面側に配置しているため、前面にもコーティングを設けることで、上皮細胞の活性化を防ぐことができる。また、前面にもコーティングを設けることで、前嚢捕獲、虹彩捕獲、虹彩癒着を起こしにくくなり、前嚢切開縁の混濁を低減することもできる。また、前述のように、支持部にコーティングを設けることもできる。
コーティング溶液の濃度は、所望の厚さの均一なコーティングを得られるように適宜設定することができ、例えば、0.05〜1質量%、好ましくは0.1〜0.3質量%の範囲とすることができる。なお、スピンコーターを用いる場合には、スピンコーターの回転数が早くなると、遠心力が強く働くため、コーティング厚は薄くなる。本発明の眼内レンズを得るためには、所望のコーティング厚や溶液濃度を考慮して、スピンコーターの回転数および時間を決定することが好ましい。コーティング溶液へ浸漬した後にスピンコーターによりコーティングする場合、スピンコーターの回転数は、例えば、2000〜8000rpmとすることができ、また、スピンコーターにかける時間は、例えば、5〜30秒とすることができる。
コーティング溶液に用いる溶媒は、本発明の共重合体を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールを用いることができる。中でも、揮発性、安全性の観点からは、エタノールを用いることが好ましい。
本発明の眼内レンズに設けるコーティングの厚さは、100Å以上であることが好ましい。コーティングの厚さが100Å以上であれば、レンズ面全体を均一にコーティングすることができる。コーティングの厚さは、好ましくは、120〜160Åの範囲である。コーティングの厚さは、以下の方法で測定することができる。
自動エリプソメータを用いてレンズ自体のコーティング厚を測定する方法では、透明な基材および曲率を有する基材上に成膜された膜の厚さを正確に測定することは困難である。そこで、本発明では、眼内レンズの代わりにシリコンウエハにコーティングを施し、所定条件におけるコーティング厚を測定した。具体的には、眼内レンズの代わりに10mm×10mmの大きさに裁断したシリコンウエハ上にコーティングを行い、該シリコンウエハを自動エリプソメータ上に載せ、波長632.8nmのHe−Neレーザを用いて、入射角70°でコーティング厚を測定した。シリコンウエハ上の9箇所を測定し、その平均値をコーティング厚とした。
また、コーティングが均一に設けられていることは、目視により判別することが可能である。
本発明の眼内レンズの製造時に、コーティング前処理を行うことで、眼内レンズ基材とコーティングとの結合を強くすることもできる。例えば、基材の種類により、UV照射、プラズマ処理、コロナ放電等を選択することで、基材とコーティングとの結合を強くすることもできる。また、より迅速に溶媒を除去するために、コーティング後に減圧乾燥を行うこともできる。
本発明の眼内レンズは、通常の眼内レンズと同様の方法で眼内へ挿入することができる。眼内へのレンズの挿入方法としては、例えば、前嚢の一部を切開して水晶体皮質および核を吸引除去し、その切開部から眼内レンズを挿入する方法を用いることができる。
[後発白内障の抑制方法]
本発明は、眼内レンズ使用時の後発白内障の抑制方法であって、前記眼内レンズの光学部の少なくとも一部に、式(I):
〔式中、aは0.03〜0.70、bは0.3〜0.97、nは2以上の整数、RはH、OR’(R’は水素、脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基)、−Si(OR”)3(R”はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、もしくはトリメチルシリル基)、または
(R'''は、メチル基、フェニル基もしくはトリメチルシロキシ基を示し、mは、1〜100の間のいずれかの整数である)を示し、Aは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Bは直鎖状または分枝したアルキルスペーサー基を示す〕
で示される繰り返し単位を有し、かつ分子量は5000以上である、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなるコーティングを設けることを特徴とする、前記方法にも関する。本発明の後発白内障抑制方法において使用されるコーティング、光学部、眼内レンズのタイプ等の詳細は、先に述べた通りである。
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明する。

[実施例1]
家兎眼埋植試験(1)
眼内レンズの調製
MPCモノマーと(メタ)アクリル酸n−ブチルとの共重合体(MPC:(メタ)アクリル酸n−ブチル=3:7、分子量約600,000)を0.2質量%含有するエタノール溶液に、軟性アクリル眼内レンズ(HOYAヘルスケア株式会社製、AF−1(UV))を浸漬し、そのレンズを回転数5000rpmのスピンコーターに10秒かけ、更に同溶液に浸漬して同条件でスピンコーターにかけ、厚さ約140Åのコーティングを有する眼内レンズを得た。
家兎眼埋植操作
家兎眼に対して超音波乳化吸引術を施行して無水晶体眼とし、片眼に試験レンズを、他眼に対照レンズを挿入した。なお、前嚢切開はC.C.C法によって行い、眼内レンズは折り曲げて嚢内固定した。
結果
コーティング処理を施した眼内レンズおよび未被覆眼内レンズを、それぞれ家兎眼埋植1ヶ月経過後に水晶体嚢とともに摘出した。写真を図1に示す。未被覆レンズは後嚢混濁(後発白内障)により顕著に白濁しているのに対し、コーティング処理を施したレンズには、後嚢混濁がほとんど観察されなかった。この結果から、本発明の眼内レンズは、後発白内障を顕著に抑制する効果を有することがわかる。
[実施例2]
家兎眼埋植試験(2)
眼内レンズの調製
MPCモノマーと(メタ)アクリル酸n−ブチルとの共重合体(MPC:(メタ)アクリル酸n−ブチル=3:7、分子量500,000〜700,000)を0.3質量%含有するエタノール溶液に、軟性アクリル眼内レンズ(HOYAヘルスケア株式会社製、Acryfold)を浸漬した後に真空乾燥した。
家兎眼埋植操作
家兎眼に対して超音波乳化吸引術を施行して無水晶体眼とし、片眼に試験レンズを、他眼に対照レンズを挿入した。なお、前嚢切開はC.C.C法によって行い、眼内レンズは折り曲げて嚢内固定した。
結果
コーティング処理を施した眼内レンズおよび未被覆眼内レンズを、それぞれ家兎眼埋植1ヶ月経過後に水晶体嚢とともに摘出した。写真を図2に示す。未被覆レンズは後嚢混濁(後発白内障)により顕著に白濁しているのに対し、コーティング処理を施したレンズには、後嚢混濁がほとんど観察されなかった。この結果から、本発明の眼内レンズは、後発白内障を顕著に抑制する効果を有することがわかる。
また、眼内レンズ挿入一ヶ月後の前眼部所見を図3に示す。図3から明らかなように、本発明のコーティングを光学部に有する眼内レンズは、未被覆眼内レンズと比べて、後発白内障の発症が抑制されただけでなく、その他の合併症の発症頻度も顕著に低減された。
本発明の眼内レンズは、レンズ表面にコーティングを設けるという簡便な操作のみで、後発白内障を顕著に抑制することができ、後発白内障の抑制のために特に有効である。
実施例1における、本発明の眼内レンズと未被覆眼内レンズとの比較を示す写真である。 実施例2における、本発明の眼内レンズと未被覆眼内レンズとの比較を示す写真である。 実施例2における、本発明の眼内レンズを使用した場合と未被覆眼内レンズを使用した場合との術後1ヶ月後の前眼部所見の比較を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 式(I):
    〔式中、aは0.03〜0.70、bは0.3〜0.97、nは2以上の整数、RはH、OR’(R’は水素、脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基)、−Si(OR”)3(R”はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、もしくはトリメチルシリル基)、または
    (R'''は、メチル基、フェニル基もしくはトリメチルシロキシ基を示し、mは、1〜100の間のいずれかの整数である)を示し、Aは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Bは直鎖状または分枝したアルキルスペーサー基を示す〕
    で示される繰り返し単位を有し、かつ分子量は5000以上である、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなるコーティングを光学部の少なくとも一部に有する眼内レンズ。
  2. 前記眼内レンズは、後発白内障を抑制するためのものである、請求項1に記載の眼内レンズ。
  3. 式(I)中のnが2〜5の間のいずれかの整数である、請求項1または2に記載の眼内レンズ。
  4. 式(I)におけるaとbとの比は、a:b=1:9〜6:4の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
  5. 式(I)中のAがCH3であり、BがCH2であり、nが4であり、RがHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
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