JP4557643B2 - シリンダ錠装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シリンダ錠装置に関するものである。
プラグ内のタンブラピンを解錠キーにより所定角度移動中心線周りに回転させ、回転姿勢により施解錠状態を決定するシリンダ錠としては、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、タンブラピンの先端はV字状に切り落とされて長手方向中心線周りに回転自在に保持され、解錠キーには、タンブラピンの先端が嵌合可能なスリットが長手方向軸線に対する交差角を変化させて配列される。
解錠キーをプラグ内に挿入すると、タンブラピンの先端は解錠キーのスリットに嵌合するようにして所定角まで水平回転し、この状態が設定角度に一致する場合には、シリンダケースとの回転境界を閉塞しているサイド棒(サイドバー)がプラグ内に退避可能になり、プラグへの回転操作が可能になる。
特公平7-30641号公報
しかし、上述した従来例において、オリジナルキーの切り込み角をトレースするだけで解錠キーの複製が可能になるとういう欠点がある。
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、解錠キーの複製が困難なシリンダ錠装置の提供を目的とする。
本発明によれば上記目的は、
プラグ1内にタンブラピン2を移動自在に収容してなり、タンブラピン2の移動方向中心線周りの回転姿勢により施解錠状態が決定されるシリンダ錠10と、
プラグ1内に挿入され、コード判定位置においてタンブラピン2の回転姿勢を決定する解錠コード形成凹部3を備えた解錠キー4とを有し、
前記タンブラピン2の先端部には、先端に行くに従って漸次縮径し、回転中心が移動方向中心線から偏心した回転体の母線に一致する傾斜辺を有するドライブ部5が形成され、
コード判定位置において、傾斜辺を解錠コード形成凹部3の側壁面に形成され、ドライブ部5の傾斜辺と母線がほぼ一致する回転体曲率面に圧接させてタンブラピン2の回転姿勢が決定され、
かつ、前記解錠キー4は、プラグ1内に一直線状に配置されたタンブラピン2の複数からなる一のタンブラ列内の各タンブラピン2に対する解錠コード形成凹部3のドライブ部5への対応周壁が、プラグ1への挿入方向に沿って平行な複数列のいずれかに回転中心を有する回転体曲率面により形成されるシリンダ錠装置を提供することにより達成される。
シリンダ錠10は、タンブラピン2が長手方向に移動自在、かつ、移動方向中心線11周りに回転自在に収容されるプラグ1をシリンダケース8内に挿入して形成され、タンブラピン2の移動方向中心線11周りの回転姿勢により、プラグ1がシリンダケース8内で回転可能な解錠状態と、回転不能な施錠状態が決定される。
なお、本発明は、タンブラピン2の移動方向中心線11に沿う移動量による施解錠状態の決定を排斥するものではなく、タンブラピン2の回転姿勢によってのみキー違いを達成する以外に、タンブラピン2の回転姿勢とタンブラピン2の移動量の双方をキー違いの発生要素とする場合も含まれる。
タンブラピン2の回転姿勢による施解錠状態の決定方法としては、種々の周知の構造が採用可能であり、例えば、上述した特許文献1、あるいは図11に示すように、プラグ1とシリンダケース8との回転境界を閉塞しているサイドバー12の退出経路をタンブラピン2の回転により提供することによって達成可能である。さらに、施解錠状態の決定は、図4に示すように、タンブラピン2が所定の回転姿勢の時にのみプラグ1の回転境界が開放されるように構成することよっても実現可能である。
図8に示すように、解錠キー4がプラグ1内の所定位置まで挿入されて解錠コード形成凹部3がコード判定位置に達すると、プラグ1内のタンブラピン2のドライブ部5が解錠コード形成凹部3の周壁に当接する。ドライブ部5は、先端に行くに従って漸次縮径し、回転中心(Ct)が移動方向中心線11から偏心した回転体の母線に一致する傾斜辺を有するとともに、解錠コード形成凹部3の周壁は母線がほぼ一致する回転体曲率面により形成され、さらに、タンブラピン2の移動方向中心線11、すなわち水平回転中心と回転体の回転中心とは一致しないために、傾斜辺が圧接されると、タンブラピン2に水平回転トルク(T)が発生し、所定位置まで水平回転する。
タンブラピン2が所定の回転角度まで変化する際に、傾斜辺は、接触開始点から順次接触位置を変更しながら解錠コード形成凹部3の周壁を移動して最終接触位置に達する。この結果、解錠コード形成凹部3を複製する場合には、接触開始点はタンブラピン2の初期回転位置により決定されるために不定で、最終接触点は設定コードにより決定されるために未知であるために、周壁の全てを複製することが必要となり、複製作業が困難になる。
以上のように、本発明は、回転体の母線に発生する回転方向の分力をタンブラピン2の回転に利用するもので、解錠コード形成凹部3の曲率面に圧接する接触線分(傾斜辺)が設定されれば足りる。この結果、傾斜辺は、例えば多面体の稜線であってもよいが、回転体の錐面として構成した場合には、解錠コード形成凹部3の周壁に面当たりするために、動作が円滑になる。また、傾斜辺は、円弧等の曲線であってもよい。
以上のように構成されるシリンダ錠装置には、
中央部にキー挿入部6を長手通しに備え、タンブラピン2をキー挿入部6への進退方向に移動自在、かつ、移動方向中心周りに回転自在に収容したプラグ1と、
プラグ1が回転自在に挿入され、プラグ1の初期回転位置において前記タンブラピン2にキー挿入部6突出側への付勢力を付与するドライブピン7を備えたシリンダケース8と、
タンブラピン2の回転位置によりプラグ1とシリンダケース8との回転境界面を開閉する施錠部9とを有するシリンダ錠10であって、
前記タンブラピン2のキー挿入部6側端部には、先端に行くに従って漸次縮経し、回転中心(Ct)が移動方向中心線11から所定間隔偏心した回転体曲率面を周壁とし、ほぼ同一の母線を有する回転体曲率面に圧接された際にタンブラピン2を回転させるドライブ部5が形成され、
前記施錠部9は、前記回転中心(Ct)が移動方向中心線11周りの所定方位に位置する回転位置をタンブラピン2がとるときにプラグ1とシリンダケース8との回転境界を開放し、
前記回転中心(Ct)の移動方向中心線11周りにおける所定方位を360°の範囲内で変更して鍵違いが設定されるシリンダ錠10が使用できる。
上述したように、施錠部9はサイドバー12を利用する等、種々の変形が可能であるが、
タンブラピン2とドライブピン7の双方の接触端面がプラグ1とシリンダケース8との円筒状回転境界面に一致する曲率面からなる双方の接触側端部を施錠部9とした場合には、サイドバー12等が不要となり、構造が簡単になる。
また、上記シリンダ錠装置には、
シリンダ錠10のプラグ1に挿入され、タンブラピン2の回転姿勢を解錠コード形成凹部3の周壁により制御する解錠キー4であって、
前記プラグ1は、中央部にキー挿入部6を長手通しに備え、タンブラピン2をキー挿入部6への進退方向に移動自在、かつ、移動方向中心周りに回転自在に収容し、
前記シリンダ錠10は、
プラグ1が回転自在に挿入され、プラグ1の初期回転位置において前記タンブラピン2にキー挿入部6突出側への付勢力を付与するドライブピン7を備えたシリンダケース8と、
タンブラピン2の回転位置によりプラグ1とシリンダケース8との回転境界を開閉する施錠部9とを有し、
前記タンブラピン2のキー挿入部6側端部には、先端に行くに従って漸次縮経し、回転中心(Ct)が移動方向中心線11から偏心した回転体曲率面を周壁とし、ほぼ同一の母線を有する回転体曲率面に圧接された際にタンブラピン2を回転させるドライブ部5が形成され、
プラグ1内に一直線状に配置されたタンブラピン2の複数からなる一のタンブラ列内の各タンブラピン2に対する解錠コード形成凹部3のドライブ部5への対応周壁が、プラ
グ1への挿入方向に沿って平行な複数列のいずれかに回転中心を有する回転体曲率面により形成される解錠キー4が使用できる。
この場合、回転体曲率面の回転中心は、中央部がタンブラ列の移動方向中心線11方向の投射線に一致する3列から所定順序で選択された一上に配置されるように構成すると、コード管理、および解錠キー4の製造管理が容易になる。
本発明によれば、解錠キーの複製を困難にすることができる。
図1、2に、扉体(D)に固定されて扉体(D)内の錠本体を操作するために使用されるシリンダ錠10を示す。シリンダ錠10は、シリンダケース8内にプラグ1を回転自在に挿入して形成され、シリンダケース8の前端部には、筒状カバー13が装着される。筒状カバー13は、回転操作により扉体(D)表面側に移動させることが可能であり、図2に示す状態でシリンダ錠10を扉体(D)に固定した後、筒状カバーを締め付けて、図1に示すように、扉体(D)に開設された取付孔14を覆い隠すことができる。また、プラグ1の前端には、キャップ部材1aが装着される。
図2、4に示すように、プラグ1の中心部には、プラグ1の長手通しにキー挿入部6が開設され、キー挿入部6内に一端が開口し、他端がプラグ1外周に開口するタンブラ挿入孔15の複数が形成される。タンブラ挿入孔15は、断面円形の孔として形成され、キー挿入部6近傍で、タンブラ挿入孔15の中心軸線(後述するように、この中心軸線はタンブラピン2の移動方向中心線に合致するために、以後、移動方向中心線11として説明する。)に対して対称位置に2個のタンブラ回転規制用の突起15aが突設される。
図4示すように、上記各タンブラ挿入孔15の移動方向中心線11は、キー挿入部6の幅中心面に直交して配置され、プラグ1の回転中心に平行な複数の面(タンブラ列面)のいずれかに属するように配列される。同一タンブラ列面(St)内のキー挿入部6間には均等な間隔(Pt)が設定される。
この実施の形態において、プラグ1にはキー挿入部6の幅中心面に対して一側に2面、他側に1面の計3面のタンブラ列面(St1〜3)が設定される。3面のうち、他側の1面(St1)はプラグ1の回転中心(Cp)を含み、一側の2面(St2、St3)は上記他側のタンブラ列面(St1)に対して対称位置に配置される。この結果、一側の2面(St2、St3)は、プラグ1の回転中心(Cp)からオフセット量(Δ)だけずれる。
上記他側の1面(St1)はマスターキーシステム構成用に使用され、当該タンブラ列面(St1)には、後述する補助ドライブピン7’との間で補助施錠部9’を構成する両端がほぼ截頭円錐形状の周知のタンブラピン(以下、「補助タンブラピン2’」)が使用される。この補助タンブラピン2’は、後述する解錠キー4の解錠コード形成凹部3の深さのみを検知してコードを判定するもので、当該補助タンブラピン2’が挿入されるタンブラ挿入孔15には回転規制用の突起15aは設けられない。
一側のタンブラ列面(St2、St3)に配列されるタンブラピン2を図5に示す。このタンブラピン2は、一端に截頭円錐面を外周面とするドライブ部5を有する(以下、記述を明瞭にするために、ドライブ部5が形成される側を下方、反対側を上方として説明する。)。ドライブ部5を形成する円錐の回転中心Ct(母線を回転させて円錐形状を得る際の回転中心)は、タンブラピン2の移動方向中心線11に対して所定間隔(δ)オフセットされる。また、ドライブ部5は、対向する弦が切り落とされて移動方向中心線11に対して線対称な小判形状断面を有し、対向する平面5aは、円錐の回転中心(Ct)とタンブラピン2の移動方向中心線11の双方を含む面に対する平行面となっている。後述するように、タンブラピン2が180°回転した状態で異なった解錠コードとなるこの実施の形態において、上記平面5aは、タンブラ挿入孔15に挿入された状態で、タンブラ回転規制用の突起15aに当接し、タンブラピン2の回転範囲を規制する。
一方、タンブラピン2の上端には円筒状曲率面2aが形成される。円筒状曲率面2aの曲率半径(R)はプラグ1の半径に等しく、さらに、曲率中心は、図5(a)に示すように、プラグ1の外周に曲率面を合致させた際のプラグ1の回転中心線(Cp)に合致する。
鍵違いを得るために、上記タンブラピン2と同形で、全長が異なる複数種が設定され(以下、「長さ要素」)、さらに、長さ要素が一致するタンブラピン2間に、鍵違いの回転要素が加えられる。回転要素は、ドライブ部5の円錐の回転中心(Ct)と移動方向中心線11とを含む面と、上記円筒状曲率面2aの中心線を含む面との移動方向中心線11に直交する面(投影面)上での交差角度(図5(d)における角度θ)を変えることにより与えられる。θは、図5(d)において、0°から360°まで変化させることが可能であり、この実施の形態においては、図5(c)に示す0°、これから時計回りに、45°(図5(d))、図5(d)が上下反転した135°、図5(c)が上下反転した180°、これらが左右反転した225°、315°の6種類の鍵違いが設定される。
上述したように、一側のタンブラ列面(St2、St3)は互いに線対称位置に配置されるために、同一のタンブラピン2は、対称位置に使用されたときには、180°回転した他の回転要素をもつタンブラピン2として利用される。
これに対し、シリンダケース8にはタンブラピン2、および補助タンブラピン2’とほぼ同一径のドライブピン7、7’が配置される。ドライブピン7、7’は、プラグ1が施錠回転位置にあるときに各タンブラピン2、2’に正対し、プラグ1側のタンブラ挿入孔15に進入することができ、タンブラピン2、2’もシリンダケース8内に進入することができる。また、各ドライブピン7は、圧縮スプリング16によりプラグ1中央部に向けて付勢される。
図4に示すように、タンブラピン2に対応するドライブピン7の一端には、タンブラピン2の上端に形成される円筒状曲率面2aに合致する円筒状曲率面が形成され、補助タンブラピン2’に対応する補助ドライブピン7’には先端が截頭円錐形状をした周知のものが使用される。これらタンブラピン2とドライブピン7との境界は施錠部9を構成し、補助タンブラピン2’と補助ドライブピン7’との境界は補助施錠部9’を構成する。
以上のように構成されるシリンダ錠10とともにシリンダ錠装置を構成する解錠キー4を図3に示す。解錠キー4は、キーブレード部4aの一端に握り部4bを設けて形成される。キーブレード部4aの表裏両面には、複数の解錠コード形成凹部3がディンプル状に形成される。表裏反転した使用を可能にするために、キーブレード部4aは解錠コード形成凹部3の形成箇所を含め、板厚中心と幅方向中心との交点に対して点対称断面形状に形成される。なお、図3において4cはプラグ1のキー挿入部6側に設けた突起1bが嵌合してプラグ1内での挿入姿勢を規制するためのガイド溝を示す。
解錠コード形成凹部3のうち、補助タンブラピン2’に対応する解錠コード形成凹部(以下、「補助ピン用解錠コード形成凹部3’」)は、底壁部3a’に補助タンブラピン2’の先端が当接することにより、解錠コード形成凹部3’の深さと補助タンブラピン2’の長さの一致を確認するためのもので、図9に示すように、解錠キー4を正規位置まで挿入した位置(コード判定位置)において、底壁3a’の中心が補助タンブラピン2’の移動方向中心線11に一致する位置を所定深さでディンプル形状に切削等による加工をして得られる。
これに対し、タンブラピン2に対応する解錠コード形成凹部3は、上記タンブラピン2のドライブ部5における円錐面を介してタンブラピン2に回転トルクを与える周壁を有してディンプル形状に形成される。上記周壁、正確にはコード判定位置においてタンブラピン2のドライブ部5に当接する可能性のある周壁は、ドライブ部5における円錐面と同一の円錐面により形成される。
また、この解錠コード形成凹部3は、タンブラピン2の長さの変化に対応して深さのみが異なる複数種が設定され、解錠コード形成凹部3の位置は、解錠キー4表面での凹部領域での面積が最小となる最浅コードであっても、円錐の回転中心(截頭平面を有するこの実施の形態においては截頭平面)が上記凹部領域内に含まれるように設定される。
後述するように、タンブラピン2のドライブ部5の当接位置、および深さを容易に管理することができるように、解錠コード形成凹部3は、以下のように配置される。まず、図6に示すように、同一タンブラ列面(St)に対応して解錠キー4の幅広面上に3本、計6本の基準線(L21、L22、L23、L31、L32、L33)が設定される(但し、Lmnは、タンブラ列面Stmの第n番基準線を示す。)。基準線(L)は解錠キー4の長手方向に平行な直線であり、幅方向に等間隔(p)に配置される。解錠コード形成凹部3は、円錐面の回転中心が上記いずれかの基準線(L)上に乗り、かつ、隣接する回転中心間の間隔(Pt)がプラグ1における同一タンブラ列面(St)内での隣接するタンブラ挿入孔15間の間隔(Pt)(図2参照)に一致するように配置される。
以上のように配置して解錠コード形成凹部3の円錐面の母線を統一すると、中間に位置する基準線(L22、L32)に対して対称位置にある基準線(L)上の解錠コード形成凹部3は深さが一致すると、他側に対して回転方向が反転した解錠コード(図5(c)、(d)において上下反転したもの)となる。また、後述するように、タンブラピン2の回転姿勢は、タンブラピン2の移動方向中心線11と解錠コード形成凹部3の回転中心との位置関係により決定されるために、基準線(L)を選択するだけで中央、左右回転姿勢の3種類の解錠コードが管理できる。さらに、プラグ1への装着姿勢により、解錠コード形成凹部3の前方部を使用するか後方部を使用するか、すなわち、図5(c)、(d)において左右反転したものを選択できるために、合計6種類の解錠コードが同一深さで設定できる。
また、この実施の形態において、中間に位置する基準線(L22、L32)は解錠キー4の幅中心線に対して対称位置にあり、さらに、いずれか一方がプラグ1の回転中心(Cp)を含む。この結果、補助ピン用解錠コード形成凹部3’は、解錠コード形成凹部3と同一基準線(L)上に属することになり、位置重複の可能性がある。これを防止するために、図6に示すように、解錠コード形成凹部3と、補助ピン用解錠コード形成凹部3’とが交互に配置されるように、タンブラピン2と補助タンブラピン2’の相対間隔(図1(a)における寸法d)が決定される。
なお、以上においては、各タンブラ列面(St)に対して3本の基準線(L)を対応させる場合を示したが、基準線数は、2本、あるいは3本以上であってもよい。また、中央部の基準線(L22、L32)上に配置される解錠コード形成凹部3は、実質的に前後方部のみが使用されるために、図6に示すように、周壁が他のディンプルと同様の傾きを有する長円形状で代用できる。
したがってこの実施の形態において、解錠キー4を挿入しない状態においては、図4に示すように、圧縮スプリング16によりプラグ1中心方向に付勢されるドライブピン7、7’はプラグ1のタンブラ収容孔15内に進入する。この状態において、プラグ1とシリンダケース8との回転境界は閉塞されるために、プラグ1を回転させることができない(施錠状態)。
この状態から、解錠キー4を挿入すると、まず、図7(a)、(b)に示すように、タンブラピン2の下端は解錠キー4の先端により拾われて上方に移動する。次いで、図7(c)、(d)に示すように、解錠キー4がコード判定位置まで挿入されると、タンブラピン2のドライブ部5は解錠コード形成凹部3の周縁に当接する。タンブラピン2には突出方向の付勢力が与えられているために、図8に示すように、タンブラピン2の解錠コード形成凹部3の周縁との接触線17には、解錠コード形成凹部3の中心方向に向かう分力(F17)が発生する。このようにして発生する分力(F17)の作用線上にタンブラピン2の移動方向中心線(点)11は含まれないために、タンブラピン2には所定方向の(図においては時計回り)回転力(T)が発生し、タンブラピン2が所定回転位置まで回転する。
以上のようにして、タンブラピン2の回転角は、解錠コード形成凹部3の状態によって一義的に決定され、解錠コード形成凹部3が真正であると、図9(a)に示すように、タンブラピン2の上端の円筒状曲率面2aはプラグ1とシリンダケース8の回転境界面に完全に一致し、プラグ1を回転させることができる。
これに対し、回転角が適正でない場合には、深さが同一であっても図9(b)に示すように、タンブラピン2とドライブピン7との境界部はいずれかに進入するためにプラグ1を回転させることはできない。
この結果、この実施の形態においては、タンブラピン2の長さに加え、回転角度も鍵違いの要素となるために、鍵違い数が飛躍的に増加する。
さらに、この実施の形態において、解錠キー4には複製を困難にするためのフローティングボール18が装着される。上述したように、表裏いずれでも使用可能なように、フローティングボール18は、解錠キー4の終端部で、ガイド溝4c上に2個配置される。
このフローティングボール18は、図10に示すように、プラグ1内の一方の補助タンブラピン2’により支え突起19に押し付けられる。フローティングボール18の補助タンブラピン2’の押しつけが確実に行われるように、補助タンブラピン2’側のドライブピン7’には、この補助タンブラピン2’に正対する位置に配置される他方の補助タンブラピン2”に比して大きな付勢力が与えられる。この状態で、補助タンブラピン2’と、これらに対応するドライブピン7’との境界は、プラグ1の回転境界に一致し解錠される。
これに対し、フローティングボール18が装着されていない解錠キー4を挿入した場合には、一方の補助タンブラピン2’に対応するドライブピン7’がプラグ1内に進入して施錠状態となる。また、フローティングボール18の双方の補助タンブラピン2’、2”の保持位置を解錠キー4に形成すると、図10に示すように、フローティングボール18と他方の補助タンブラピン2”との境界はガイド溝4cより飛び出した位置にあるために、解錠キー4をタンブラ挿入孔15内に挿入できなくなる。
この結果、解錠キー4を入手しても、このプロフィールを単にトレースしただけでは解錠することができないために、複製が不可能になる。
図11に本発明の他の実施の形態を示す。この実施の形態は、タンブラピン2とサイドバー12とにより施錠部9を構成する場合を示すもので、タンブラピン2の上端とドライブピン7の先端は、補助タンブラピン2’と同様に、截頭円錐形状に形成される。また、タンブラピン2の下端には、ドライブ部5が形成されるとともに、側壁には、所定長に渡って逃げ溝20が形成される。
12はタンブラピン2の移動方向中心線11に対して直交方向に移動してタンブラ挿入孔15に進退するサイドバーであり、シリンダケース8には、プラグ1が施錠回転位置にあるときにサイドバー12に正対するストッパ溝21が形成される。
いま、解錠コード形成凹部3の深さが異なった場合にはタンブラピン2と、圧縮スプリング16により中心方向に付勢されるドライブピン7との境界がプラグ1の回転境界面に一致しないために、施錠状態が維持される。また、解錠コード形成凹部3の深さが真正で、タンブラピン2とドライブピン7との境界がプラグ1の回転境界面に一致したとしても、サイドバー12に対して逃げ溝20が正対しないために、サイドバー12はプラグ1内に退避することができない。この結果、プラグ1とシリンダケース8との回転境界は開放されることなく、施錠状態が維持される。
本発明を示す図で、(a)は(b)の1B-1B線断面図、(b)は正面図である。 図1(a)の2A-2A線断面図である。 解錠キーの平面図である。 シリンダ錠をタンブラピン、補助タンブラピンの移動方向中心線に沿って切断した断面図である。 タンブラピンを示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)の5C方向矢視図、(d)は鍵違いを示す(a)の5C方向矢視図である。 解錠キーのキーブレード部の拡大図である。 本発明の動作を示す図で、(a)は(b)の7A-7A線断面図、(b)は解錠キーがタンブラーピンを押し上げた状態を示す図、(c)は(d)の7C-7C線断面図、(d)は解錠コード形成凹部に嵌合した状態を示す図である。 タンブラピンの動作を示す図で、(a)はタンブラピンの側面図、(b)は解錠コード形成凹部への嵌合初期を示す(a)の8B-8B線断面図、(c)は(b)の8C-8C線断面図である。 施解錠状態を示す図で、(a)は解錠状態における図4に対応する図、(b)は施錠状態を示す断面図である。 解錠キーを挿入した状態の図1(a)の10A-10A線断面図である。 本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
符号の説明
1 プラグ
2 タンブラピン
3 解錠コード形成凹部
4 解錠キー
5 ドライブ部
6 キー挿入部
7 ドライブピン
8 シリンダケース
9 施錠部
10 シリンダ錠

Claims (6)

  1. プラグ内にタンブラピンを移動自在に収容してなり、タンブラピンの移動方向中心線周りの回転姿勢により施解錠状態が決定されるシリンダ錠と、
    プラグ内に挿入され、コード判定位置においてタンブラピンの回転姿勢を決定する解錠コード形成凹部を備えた解錠キーとを有し、
    前記タンブラピンの先端部には、先端に行くに従って漸次縮経し、回転中心が移動方向中心線から偏心した回転体の母線に一致する傾斜辺を有するドライブ部が形成され、
    コード判定位置において、傾斜辺を解錠コード形成凹部の側壁面に形成され、ドライブ部の傾斜辺と母線がほぼ一致する回転体曲率面に圧接させてタンブラピンの回転姿勢が決定され、
    かつ、前記解錠キーは、プラグ内に一直線状に配置されたタンブラピンの複数からなる一のタンブラ列内の各タンブラピンに対する解錠コード形成凹部のドライブ部への対応周壁が、プラグへの挿入方向に沿って平行な複数列のいずれかに回転中心を有する回転体曲率面により形成されるシリンダ錠装置。
  2. 前記ドライブ部は、傾斜辺を母線とする回転体曲率面により形成される請求項1記載のシリンダ錠装置。
  3. 中央部にキー挿入部を長手通しに備え、タンブラピンをキー挿入部への進退方向に移動自在、かつ、移動方向中心周りに回転自在に収容したプラグと、
    プラグが回転自在に挿入され、プラグの初期回転位置において前記タンブラピンにキー挿入部突出側への付勢力を付与するドライブピンを備えたシリンダケースと、
    タンブラピンの回転位置によりプラグとシリンダケースとの回転境界面を開閉する施錠部とを有するシリンダ錠であって、
    前記タンブラピンのキー挿入部側端部には、先端に行くに従って漸次縮経し、回転中心が移動方向中心線から所定間隔偏心した回転体曲率面を周壁とし、ほぼ同一の母線を有する回転体曲率面に圧接された際にタンブラピンを回転させるドライブ部が形成され、
    前記施錠部は、前記回転中心が移動方向中心線周りの所定方位に位置する回転位置をタンブラピンがとるときにプラグとシリンダケースとの回転境界を開放し、
    前記回転中心の移動方向中心線周りにおける所定方位を360°の範囲内で変更して鍵違いが設定されるシリンダ錠。
  4. 前記施錠部が、
    タンブラピンとドライブピンの双方の接触端面がプラグとシリンダケースとの円筒状回転境界面に一致する曲率面からなる双方の接触側端部である請求項3記載のシリンダ錠。
  5. シリンダ錠のプラグに挿入され、タンブラピンの回転姿勢を解錠コード形成凹部の周壁により制御する解錠キーであって、
    前記プラグは、中央部にキー挿入部を長手通しに備え、タンブラピンをキー挿入部への進退方向に移動自在、かつ、移動方向中心周りに回転自在に収容し、
    前記シリンダ錠は、
    プラグが回転自在に挿入され、プラグの初期回転位置において前記タンブラピンにキー挿入部突出側への付勢力を付与するドライブピンを備えたシリンダケースと、
    タンブラピンの回転位置によりプラグとシリンダケースとの回転境界を開閉する施錠部とを有し、
    前記タンブラピンのキー挿入部側端部には、先端に行くに従って漸次縮経し、回転中心が移動方向中心線から偏心した回転体曲率面を周壁とし、ほぼ同一の母線を有する回転体曲率面に圧接された際にタンブラピンを回転させるドライブ部が形成され、
    プラグ内に一直線状に配置されたタンブラピンの複数からなる一のタンブラ列内の各タンブラピンに対する解錠コード形成凹部のドライブ部への対応周壁が、プラグへの挿入方向に沿って平行な複数列のいずれかに回転中心を有する回転体曲率面により形成される解錠キー。
  6. 前記回転体曲率面の回転中心は、中央部がタンブラ列の移動方向中心線方向の投射線に一致する3列から所定順序で選択された一上に配置される請求項5記載の解錠キー。
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