JP4557321B2 - 画像再構成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体にX線を曝射し、これにより得られる投影データに基づく再構成演算を行うことにより当該被写体の断層像を得るX線コンピュータ断層撮影装置に関し、特に、円錐状のX線ビーム(「コーンビーム」とも称する)を用いてヘリカルスキャン(「螺旋状スキャン」とも称する)を行うX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1に示されるように、X線コンピュータ断層撮影装置はコリメーター11から、一般的に円錐形のX線を照射するX線管10および患者13(一般に、寝台天板14に横たわっている)等の被写体(物体)を透過したX線を検出するための検出器アレイを有している。被写体をスキャンして、投影されたデータを再現するために、検出器12は被写体をはさんでX線管10とは反対側に位置しており、被写体を中心にしてX線管10と検出器12とが一体的に回転することによりスライス画像を得ることができる(軌道15にて図示)。一般に、螺旋軌道を得るために患者13が搬送される間、X線管10及び検出器12はガントリ(図示せず)において環状に回転する。回転の中心16は通常、スキャンされる被写体の断面中心近傍に位置付けられる。
【0003】
螺旋状スキャンにおいて、その軌道は被写体が載置された寝台天板の体軸方向への移動速度vに回転周期Tを掛けることによって求める。もし、基準スライス幅(スキャナの回転中心に投影した検出器アレイ一素子の軸方向開口幅)をwとするとき、螺旋ピッチの比率、すなわち、(回転中心に投影した)検出器素子の軸方向開口幅に対する螺旋ピッチ(ガントリが一回転する間の寝台天板の移動量)の割合はrH=vT/Wにより求まる。
【0004】
患者のスクリーリング及びCTアンギオグラフィ(CTA)などといった幾つかの応用分野においては、診断画像の画質をその最高レベルまで追求することよりも、スループットの方が重要となる場合がある。CTAの場合、スキャン時間を短縮することは患者の体動による影響を低減できるため画質の向上につながる。しかしながら、従来のCTスキャナでは、検出器アレイが一列であるため、興味ある被写体の箇所をカバーするために多数の回転が必要となり、rH<2となっていた。したがって、所定の画質を維持しつつもスキャン時間を短縮することは困難であるという問題点があった。
【0005】
また、画像再構成演算は積分限界を固定とする逆投影法に従って実行される。換言すれば、画像再構成においては、一般に、再構成画素に最も近いビームの補間演算が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、診断画像の画質を維持しつつもスキャン時間を短縮できるX線コンピュータ断層撮影装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、二次元の完全条件を満足するように螺旋状スキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置を提供することである。
【0008】
本発明の更に別の目的は、オブジェクトの各々の画素が画像再構成のための最小データ範囲を有するように、当該オブジェクトを螺旋状スキャンするX線コンピュータ断層撮影装置を提供することである。
【0009】
本発明の更に別の目的は、各々の画素に逆投影範囲を与えて画像再構成を行うX線コンピュータ断層撮影装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は次のように構成されている。
【0011】
本発明の画像再構成装置は、コーン形のX線ビームによる三次元のスキャンジオメトリにおいて画像再構成に必要な完全条件を設定する完全条件回路と、前記完全条件に従って、β2(x,y)−β1(x,y)=π+2γm βはy軸とX線ビーム中央軸とがなす角度、β1は積分限界の上端角度、β2は積分限界の下端角度、2γmは前記投影データの生成に用いられるX線ビームのファン角、を満足するように逆投影演算の積分限界を設定する逆投影範囲回路と、fi(x,y)をスライスiの位置x,yにおける再構成画素とし、請求項1に係る特定の式(13a)乃至(13c)を満足し、g(γ−γ’,n)をフィルタリング関数とし、W(β,γ’,x,y)を重み付け関数とするとき、請求項1に係る式(14)に示される演算を実行する逆投影回路とを具備する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、全図にわたって同一の部分には同一の参照符号が付してある。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(CT)の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、X線管10と検出器12とが患者13の如き被写体の周囲を、円を描くように回転する。X線管10と検出器12とは一般的にはガントリ内に配置されており、スリップリング機構により連続回転が可能となっている。X線管10から照射されたX線を形作るために、コリメーター11が用いられる。患者13は、そのほぼ断面中心を回転中心が通るように位置合わせされているが、これは必ずしも必要ではない。X線管10と検出器12とが回転している間に寝台天板14は搬送される。これにより患者13の周囲においてX線管10及び検出器12が螺旋軌道を描く。
【0016】
図2は本発明に係るシステム構成を示すブロック図である。例えば、CTスキャナ20は、図1において説明した構成要素を有しており、被写体をスキャンし、投影データ、好ましくは円錐形ビーム投影データを生成する。投影データはメモリ21にストアされる。
【0017】
この画像(投影)データは、CTスキャナ20又はメモリ21から再構成回路22に送出される。再構成回路22は画像データから被写体の一枚又は複数枚のスライスを再構成し、中間又は最終処理の結果をメモリ21にストアする。この再構成データは画像端末のようなディスプレイ23に表示することができる。
【0018】
本システムの構成要素は、キーボード及び/又はマウスのような入力装置25からの情報入力に基づき、中央プロセッサ24によって制御される。中央プロセッサ24はシステムを操作し制御すべく設計されたソフトウエアを備えたコンピュータ、又は専用のマイクロプロセッサから成る。操作者は入力装置25を一般的に用い、スキャナによるスキャン動作を制御するためのパラメータ、再構成回路による再構成処理を制御するためのパラメータ、及び情報の表示を制御するためのパラメータを入力する。なお、動作パラメータの大部分が制御ソフトウエア内において事前に設定されていても良く、スキャン動作及び再構成処理の所定のパラメータセットを操作者が選択可能となっていても良い。
【0019】
図3は再構成回路22の概略構成を示すブロック図である。逆投影回路33はフィルタ30、重み付け回路31、完全条件回路32、及び範囲回路34からの入力を用いて逆投影演算を実行する。
【0020】
なお、図2及び図3に示した回路は汎用コンピュータ又は専用マイクロプロセッサ上にソフトウェアとしてインプリメントしても良い。このプログラムを例えば中央プロセッサ24に実行させても良い。
【0021】
以下、再構成回路22の動作について説明する。本システムのパラメータは例えば次のように定義される。
【0022】
v:寝台天板の一定移動速度
T:ガントリの回転周期
w:基準スライス幅;検出器アレイ一素子の軸方向開口幅
rH:螺旋ピッチ率
螺旋ピッチ率rHは、(回転中心に投影した)検出器素子の軸方向開口幅に対する螺旋ピッチ(ガントリが一回転する間の寝台天板の移動量)の割合であって、次式(1)により与えられる。
【0023】
rH=vT/w (1)
尚、次式(2)に示すように、螺旋ピッチを(回転中心に投影した)検出器アレイの体軸方向の長さで除することにより、正規化された螺旋ピッチ比率rH’を定義しても良い。なお、Nは検出器アレイの列数である。
【0024】
rH’/N=vT/Nw’ (2)
二次元検出器アレイはX線源に対向するように配置され、円筒の一部を切り取ったような形状を有するが、この形状のみに限定されない。検出器アレイが例えば平坦な形状を有するような場合は、後述する演算式を変形して用いれば良い。
【0025】
以上のような三次元のスキャン・ジオメトリにおいて、比較的アーチファクトの少ない適切な画質を期待できるか否かに関する指標として、本発明に係る二次元の(緩やかな;弱い)完全条件を用いることにより、ラドン空間の数学的完全条件の問題を無視できる。すなわち、「全ての平面は、スキャンされた被写体と交差し且つ焦点軌道と交差しなければならない」という三次元の完全条件は、「再構成スライスを貫く全ての線はスライス平面上への焦点軌道の投影と交差しなければならない」という条件に置きかえられる。
【0026】
二次元の完全条件を利用することにより、適切な画質が得られる最大のヘリカルピッチを推定する。これは、少なくとも例えば被検体の主に全身を診断するスクリーニング及びCTアンギオグラフィーに応用できる。かかるCTアンギオグラフィーにおいては、スキャン時間の短縮によって、被検体の体動によるモーションアーチファクトを低減でき、動的な診断範囲を拡大できる。
【0027】
二次元の完全条件は再構成におけるラドン空間の条件よりも緩やかであり、このため横断面内のパラレルビームへの変換は、かかる二次元の完全条件を損なうことなく、変換を行わない場合よりも高い螺旋ピッチ率を実現可能にする。
【0028】
図4は円錐形ビーム・ジオメトリの横断面を示す図である。焦点40として示されるX線源からFOV42内の回転中心41までの距離はRによって与えられる。ファンビームは、検出器12に入射するファンビームX線の幅(ファン角)2γと、回転中心41を通るファンビームのレイとy軸とがなす角βとによって表される。パラレルビームは同図に示すように変数θ及びtによって表される。
【0029】
ここで、円錐形ビーム投影データを、コーン角を維持した横断面のパラレルビームのレイ集合に変換する場合と、かかる変換を行わずに横断面上のファンビーム・レイのままとした場合の二通りの方法に従って行われた分析について説明する。二通りの方法とは、図4において、パラレルビーム表現のための変数θ、tを用いる場合と、ファンビーム表現のための当初の値(変数)β、γを用いる場合を意味する。
【0030】
発散型の投影p(β、γ、n)からセミパラレル投影p(θ、t、n’)への等式は次式(3)によって与えられる。なお、n’は検出器の列インデックスである。
【0031】
θ=β+γ (3a)
t=Rsinγ (3b)
n’=n−(γ/2π)rH (3c)
上式(3c)においては、ビュー角をθとするとき、異なるレイtの集合の間において生じる被検体の移動に応じた検出器列のシフトを表す。
【0032】
次に、コーン(円錐形)ビームによりヘリカル(螺旋)スキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置の不完全再構成アルゴリズム(Inconsistent Helical Cone−Beam、以下、「IHCB」と略称する)に関する幾つかの実施例を説明する。具体的には、パラレルビーム又はファンビームのいずれかを用いてスキャンし、これにより得られた全データセット又は最小データセットのいずれかを用いるという各々の場合に対応する4つの実施例について説明する。なお、全データセットを用いる再構成とは、一つの画素に当たる全てのビームに基づくデータが再構成に用いられることである。再構成アルゴリズムについて述べる前に、次のことを留意しておくべきである。すなわち、コーンビーム・ヘリカルCTにおいて所定の断層スライスはコーンビームの回転期間中に平行移動するため、かかる断層スライスは、あるときは広いコーン角からのX線照射を受け、またあるときはコーンビームのMidplaneからのX線照射を受けるという具合に、連続的なX線照射を受ける。画質という観点から見て、本CTによって得られる全てのスライスは等価であり、単一のスライスのみを考慮(非ヘリカルのコーンビームCTの場合とは異なる)する。
【0033】
最初に、コーンビーム−パラレルビーム変換を行わない、ファンビーム版のIHCBに関する第1実施例について説明する。最小データセットを用いる第1実施例の再構成アルゴリズムにおいて、再構成回路22はヘリカルFeldkampアルゴリズムの変形を実現する。すなわち、このアルゴリズムは適切な三次元逆投影を行うに当たり、各々の画素が自身の逆投影範囲を有するものであって、次式(4)のように表される。
【0034】
【数11】
Figure 0004557321
【0035】
なお、fi(x,y)はスライスiの位置x,yにおける再構成画素、g(γ−γ’,n)は任意列の重み付けを行うコンボリューション・フィルタ、W(β,γ’,x,y)は後述するParker−likeのような重み付けを表す。また、次式(5a)〜(5c)に示す条件を満足する。
【0036】
【数12】
Figure 0004557321
【0037】
フィルタ回路30及び重み付け回路31は逆投影アルゴリズムに用いられるフィルタ重み付け演算を実現する。使用される重み付け量又は重み付け方法は、ユーザーからの要求によリ変更されても良い。範囲回路34は各々の画素の逆投影範囲を決定する。
【0038】
不完全逆投影は、各々の画素(x,y)が自身の逆投影範囲を有することを意味する。この範囲は、逆投影の積分限界であって且つ関数としてのβ1(x,y)及びβ2(x,y)によって表される。これら積分区間は、x,yに依存しない従来の再構成方法とは対照的に、x,yに依存する。角度βによって示される線源位置の角度範囲、又はビューは、x,yにおける画素を通る線源焦点から検出器アレイまでのX線パスを含み、次式(6)に示す不等式が成立する場合に与えられる。
【0039】
【数13】
Figure 0004557321
【0040】
β1’(x,y)及びβ2’(x,y)は、等式化した式(6)の平方根によって与えられる。
【0041】
【数14】
Figure 0004557321
【0042】
図5は、βの関数であって選択された画素について検出器アレイの所定列を通るレイ集合の軌跡を示すグラフである。この例では、FOV=500mm、R=600mm、rH’=1.5とした場合の、回転中心及び東西南北の最端に位置する各々画素が選択されている。(検出器列±1/2の部分を横断する)曲線が検出器アレイ列を離れる各々のガントリ角度は、各々の画素毎でβ1’,β2’である。
【0043】
本発明に係る不完全条件に関して適切な画質を得るために逆投影アルゴリズムにおいて必要となる最小データセットは回路32により決定される。実際には、逆投影範囲を次式(8)に限定する。
【0044】
【数15】
Figure 0004557321
【0045】
したがって、弱完全条件を満足させるために逆投影範囲を次式(9)に限定する。なお、2γmは横断面におけるファン角を示す。
【0046】
【数16】
Figure 0004557321
【0047】
β1及びβ2は、上式(8)を満たすと共に1/2(β1+β2)が可能な限り「0」に近くなるような、包括的なβ1’とβ2’の区間内に収まる。
【0048】
図6及び図7は32×32の再構成マトリックスをベースにした再構成スライスのマップを示す図及び同マップに基づくグラフである。ここで、マップ内の位置は画像の(x,y)に相当し、マップ値はβ2’(x,y)−β1’(x,y)である。この数値は、スライスの所定領域がコーンビーム内に含まれる範囲を角度(degree)によって表す。例えば、最北端の画素がコーンビーム中となる角度範囲は339゜であり、一方、最南端の画素の場合は223゜である。
このデータは、正規化ヘリカルピッチ=1.5、R=600mm、FOV直径500mm、再構成半径250mmの条件下で作成された。
【0049】
図8はコーンビームによりヘリカルスキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置の従来例に係る完全再構成アルゴリズム(コーンビーム−パラレルビーム変換は行わない)によって得られた再構成スライスのマップを示す図である。この再構成アルゴリズムにおいては、弱完全条件π+2γmにてクリッピングされるが完全逆投影条件:β1’(x,y)≧−(π/2+γm)及びβ2’(x,y)≦(π/2+γm)を包含するβ2’(x,y)及びβ1’(x,y)が用いられた。このデータは図6において説明したものと同じ条件を用いて作成された。本例においては、弱完全条件を満足させるために、各々の画素は−115゜から115゜まで(±1/2[180゜+50゜ファン角])のスライス内に存在しなければならない。このため、π+2γmよりも小さい図8のエントリは、無矛盾の完全(弱完全条件)データセットではその位置の再構成が不可能であることを意味している。画素のわずか26%が完全条件(値231は±215゜を含む整数角度へのコンピュータ量子化によるものである)に合致する。一方、図6のエントリがπ+2γmよりも大である限り、弱完全条件を満足する不完全逆投影が可能である。
【0050】
図9及び図10は上端エントリであるβ1’(x,y)の値及び下端エントリであるβ2’(x,y)の値のマップを示す図である。上端エントリはX線照射の最初のガントリ角度であり、下端エントリは照射の最後のガントリ角度である。最初と最後の角度の違いが図6に示される範囲である。
【0051】
図11及び図12は上端エントリであるβ1(x,y)の値及び下端エントリであるβ2(x,y)の値のマップを示す図である。このマップは、各々の画素が自身の逆投影範囲を有するというIHCBアルゴリズムの図6の場合と同様の制限において要求される最小データセットのためのデータ使用量を表す。約50%のスライスは弱完全条件を満たしている(最初と最終の角度差は180゜+ファン角(230゜)である)。
【0052】
上式(4)及び(5)は、β=0におけるビューがスライス平面内の焦点位置を有するように、ガントリ角度が各スライス毎にリセットされることを前提とする。このため、もし本アルゴリズムを記載の通りに実現すると、各スライスは2πΔz/vT(Δzはスライス間の軸ピッチ)で隣接スライスに対して回転する。スライスが正確な角度配向を呈し、1/2(β1+β2)が可能な限り0に近付く条件のために、βの実際の値又はβの絶対値が、上式(5b)の分子を除く上式(4)及び(5)に用いられ、あるいはβの相対値が用いられる。
【0053】
オーバーカウントを防ぐためにParker−likeの重み付けを用いる場合、式(4)は実現に際し冗長となり得る。Parker−likeの重み付けは各々の画素毎で異なり、このため各々の画素は自身が畳み込まれたデータセットを必要とする。第2及び第3実施例において、本発明は横断面内のパラレル・レイへの変換を採用する。Parker−likeの重み付けは本分析には入れていない。ここに、再構成アルゴリズムは次式(10)の通りである。
【0054】
【数17】
Figure 0004557321
【0055】
ここで、f1(x,y)はスライスiの位置x,yにおいて再構成された画素である。また、次式(11)を満足する。
【0056】
【数18】
Figure 0004557321
【0057】
また、g(t−t’、n’)は任意列の重み付けを行うコンボリューションフィルタであり、ω(θ,x,y)は重み付け又は補間関数である。
【0058】
上述したように不完全逆投影は各々の画素(x,y)が自身の逆投影範囲を有することを意味し、この範囲は逆投影の積分限界であって且つ関数としてのθ1(x,y)及びθ2(x,y)によって表される。
【0059】
角度θで規定される二次元投影の角度範囲、又はビューは、x,yにおける画素を通る線源焦点から検出器アレイまでのX線パスを含み、次式(12)に示す不等式が成立する場合に与えられる。
【0060】
【数19】
Figure 0004557321
【0061】
式(3c)は当初の検出器列を溯って参照するために用いられる。θ’1(x,y)とθ’2(x,y)は等式化した上式の平方根によって与えられる。
【0062】
【数20】
Figure 0004557321
【0063】
図13はθの関数であって選択された画素について検出器アレイの所定列を通るレイ集合の軌跡を示すグラフである。図5の場合と同様にし、横断面におけるパラレルビーム変換後の東西南北の最端に位置する各々画素の軌跡が与えられている。(検出器列±1/2の部分を横断する)曲線が検出器アレイ列を離れる各々の投影角度は、各々の画素毎でθ1’,β2’である。
【0064】
本実施例においても、不完全条件に関して適切な画質を得るために逆投影アルゴリズムにおいて必要となる最小データセットが決定され、利用される。実際には、逆投影範囲を次式(14)に限定する。
【0065】
【数21】
Figure 0004557321
【0066】
したがって、弱完全条件を満足させるために逆投影範囲を次式(15)に限定する。
【0067】
【数22】
Figure 0004557321
【0068】
θ1及びθ2は、上式(14)を満たすと共に1/2(θ1+θ2)が可能な限り「0」に近くなるような、包括的なθ1’とθ2’の区間内に収まる。図11は再構成スライスのマップを示す図である。ここで、マップ内の位置は画像の(x,y)に相当し、マップ値はθ2’(x,y)−θ1’(x,y)である。
図14及び図15は弱完全条件πにてクリッピングされるが完全逆投影条件:θ1’(x,y)>−π/2及びθ2’(x,y)<π/2を包含するθ2’(x,y)−θ1’(x,y)のマップを示す図である。このため、πよりも小さい図14及び図15のエントリは、無矛盾の完全(弱完全条件)データセットではその位置を再構成できないことを意味している。一方、図11のエントリがπよりも大である限り、弱完全条件を満足する不完全逆投影が可能である。
【0069】
図16及び図17は上端エントリであるθ1’(x,y)の値及び下端エントリであるθ2’(x,y)の値のマップを示す図である。また図18及び図19は上端エントリであるθ1(x,y)の値及び下端エントリであるθ2(x,y)の値のマップを示す図である。重み付け関数ωは無視する(1にセットする)。
【0070】
第3実施例においては、利用可能な全てのデータが用いられ、逆投影範囲はθ1(x,y)=θ’1(x,y)、θ2(x,y)=θ’2(x,y)をセットし、重み付け関数ωが導入される。すなわち、コンボリューション/バックプロジェクション(逆投影)し、最小データ逆投影制限を用いる以前に、以下に列挙した重み付け条件を用いることで投影データを平均化することができる。殆どの画素が180゜以上のθ範囲を有し、したがって重み付け関数は次式(16)に従う。
【0071】
【数23】
Figure 0004557321
【0072】
ここにkは次式(17)を満たす整数である。
【0073】
【数24】
Figure 0004557321
【0074】
大きなコーン角でのアーチファクトを低減するためθ+kπ=0で最大となる距離の重み付け関数は、好ましくはωである。
【0075】
上述したIHCBアルゴリズムはコーンビームによりヘリカルスキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置の完全再構成アルゴリズム(consistent Helical Cone−Beam、以下、「CHCB」と略称する)と対比される。コーンビーム−パラレルビーム変換後の最も簡単なCHCBアルゴリズムは、重み付け関数を使用せず、逆投影の積分限界をθ1,2=±π/2とするものである。しかしながら、ビュー全体にわたって弱完全条件を阻害しない最大のヘリカルピッチ率は、IHCBよりも極めて小さい。以下の表は、図5に関連して述べたスキャンパラメータを用いた場合における各々の再構成方法のrH’の応用例をまとめたものである。変換を行う場合はrH’≦1.14であり、変換をを行わない場合はrH’≦0.90であり、IHCBアルゴリズムとCHCBアルゴリズムとが同一であることに注目すべきである。
【0076】
【表1】
Figure 0004557321
【0077】
これらの値はFOV=500mm、R=600mmとして求めた値であり、パラメータが異なる他のスキャナーでは、結果として得られる値が異なってくる。
【0078】
上述した分析は、さらに、最小データセットを用いる場合について実行可能である。何分の一の画像が弱完全条件を満足するのか、及びデータの何パーセントが画像再構成に利用可能であるのか、をヘリカルピッチ率の関数として決定する。
【0079】
図20は変換なしの場合の結果を示す図である。図20において右側の縦軸は弱完全条件に従う再構成画像の割合を示す。ダイヤ型のプロットを含む実線は本発明の方法によるものである。一点鎖線は、従来のアルゴリズム(CHCB)を示すものである。左側の縦軸は使用データの割合を示している。円形プロットを伴う曲線は左軸に対応し、この曲線は両アルゴリズムにおいて同様である。図21は横断面のパラレルビームを変換した場合の結果を示す図である。曲線及び軸の定義は図20の場合と同様である。全ての画素が弱完全条件を満足する最も高いヘリカルピッチ率(上記の例では「1.68(変換あり)」)ではレイ集合の82%が使用される。より高いヘリカルピッチ率は、再構成されたFOVのある領域の画質を犠牲にするが、利用可能データの割合増加に寄与する。一方、より低いヘリカルピッチ率は、完全性を満足し、おそらくは画質を向上でき、スライス感度プロファイルをより狭めることができるが、利用可能データの割合が低下する。もちろん、第3実施例は、その定義により、図21と同じ完全条件曲線であって、どのrH’に対してもデータの100%を用いる再構成に適用され、第2実施例よりもスライス感度プロファイルを拡大できる。
【0080】
最小データセットを忠実に守ることにより、レイ集合を用いる場合と用いない場合の第1実施例(変換なし)と第2実施例(変換あり)を求めることができる。これにより、ヘリカルピッチの関数、およびレイ集合がどの検出器例に属しているかを表す関数を得ることができる。図22(変換なし)及び図23(変換あり)は、幾つかのヘリカルピッチ率に対する、検出器の相対列上のレイ集合のヒストグラム分布を示すグラフである。ヒストグラムの1の値はその検出器列のすべてのレイ集合が逆投影されることを意味する。なお、平面検出器の中央部分は全て用いられ、検出器の端の部分は用いられない。このため、検出器12は検出器の中央部の列が精密な軸ピッチを有し、外側列は粗い軸ピッチ有するように設計されても良く、かかる設計はスライス感度プロファイルにほとんど影響を及ぼさない。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず種々変形して実施可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、各々が自身の逆投影範囲を有する画素を用いて逆投影が実行される。この範囲は二次元完全条件に従って決定され、すなわち再構成スライス上の各ラインはスライス平面上への焦点軌道の投影と交差しなければならない。完全条件はより高い螺旋ピッチ率を可能にする一方、再構成画像の画質を維持しながらも逆投影のデータの適正量を与える。これは被検体のスクリーニング及びCT−アンギオグラフィーなどの高速スキャンにとって効果的である。
【0083】
本発明は、円錐型ビーム(コーンビーム)を用いて螺旋状(ヘリカル)スキャンを行うのX線コンピュータ断層撮影装置に好適である。逆投影においては、螺旋スキャンにより得られた円錐型ビーム投影データはそのまま用いられるか、又はコーン角を維持したままの横断面内のパラレルビームに変換される。かかる変換によれば、螺旋ピッチ率を増加させることができ、スキャン速度を向上でき、これによりスキャン時間を短縮できる。また、本発明の逆投影は、全投影データセットを用いるもの、又は完全条件に基づいて決定された最小データセットを用いるものという二つの類型を有する。
【0084】
したがって、本発明によれば以下のX線コンピュータ断層撮影装置を提供できる。
【0085】
(1)診断画像の画質を維持しつつもスキャン時間を短縮できるX線コンピュータ断層撮影装置。
【0086】
(2)二次元の完全条件を満足するようにヘリカルスキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置。
【0087】
(3)オブジェクトの各々の画素が画像再構成のための最小データ範囲を有するように、当該オブジェクトをヘリカルスキャンするX線コンピュータ断層撮影装置。
【0088】
(4)各々の画素に逆投影範囲を与えて画像再構成を行うX線コンピュータ断層撮影装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】X線コンピュータ断層撮影装置により螺旋(ヘリカル)スキャンを行う様子を示す図
【図2】本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図
【図3】再構成回路の概略構成を示すブロック図
【図4】円錐形ビーム・ジオメトリの横断面を示す図
【図5】検出器アレイの所定列を通るレイ集合の軌跡を示すグラフ
【図6】32×32の再構成マトリックスをベースにした再構成スライスのマップを示す図
【図7】32×32の再構成マトリックスをベースにした再構成スライスのマップに基づくグラフを示す図
【図8】コーンビームによりヘリカルスキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置の従来例に係る完全再構成アルゴリズム(コーンビーム−パラレルビーム変換は行わない)によって得られた再構成スライスのマップを示す図
【図9】上端エントリであるβ1’(x,y)の値及び下端エントリであるβ2’(x,y)の値のマップの半分を示す図
【図10】上端エントリであるβ1’(x,y)の値及び下端エントリであるβ2’(x,y)の値のマップの残り半分を示す図
【図11】上端エントリであるβ1(x,y)の値及び下端エントリであるβ2(x,y)の値のマップの半分を示す図
【図12】上端エントリであるβ1(x,y)の値及び下端エントリであるβ2(x,y)の値のマップの残り半分を示す図
【図13】θの関数であって選択された画素について検出器アレイの所定列を通るレイ集合の軌跡を示すグラフ
【図14】再構成スライスのθ2’(x,y)−θ1’(x,y)の値のマップの半分を示す図
【図15】再構成スライスのθ2’(x,y)−θ1’(x,y)の値のマップの残り半分を示す図
【図16】上端エントリであるθ1’(x,y)の値及び下端エントリであるθ2’(x,y)の値のマップの半分を示す図
【図17】上端エントリであるθ1’(x,y)の値及び下端エントリであるθ2’(x,y)の値のマップの残りを示す図
【図18】上端エントリであるθ1(x,y)の値及び下端エントリであるθ2(x,y)の値のマップの半分を示す図
【図19】上端エントリであるθ1(x,y)の値及び下端エントリであるθ2(x,y)の値のマップの残り半分を示す図
【図20】変換なしの場合の結果を示す図
【図21】横断面のパラレルビームを変換した場合の結果を示す図
【図22】幾つかのヘリカルピッチ率に対する、検出器の相対列上のレイ集合のヒストグラム分布(変換なし)を示すグラフ
【図23】幾つかのヘリカルピッチ率に対する、検出器の相対列上のレイ集合のヒストグラム分布(変換あり)を示すグラフ
【符号の説明】
10…X線管
11…コリメータ
12…検出器
13…患者(被写体)
14…寝台天板
15…軌道
16…回転中心

Claims (8)

  1. コーン形のX線ビームによる三次元のスキャンジオメトリにおいて、前記コーン形のX線ビームを用いたスキャンにより生成された投影データに基づく画像再構成に必要な完全条件を設定する完全条件回路と、
    前記完全条件に従って、
    次式[15]、
    β2(x,y)−β1(x,y)=π+2γm [15]
    βはy軸とX線ビーム中央軸とがなす角度
    β1は積分限界の上端角度
    β2は積分限界の下端角度
    γはβにより与えられた投影内のレイ集合の角度
    2γmは前記投影データの生成に用いられるX線ビームのファン角
    を満足するように逆投影演算の積分限界を設定する逆投影範囲回路と、
    fi(x,y)をスライスiの位置x,yにおける再構成画素とし、次式[13a]乃至[13c]、
    Figure 0004557321
    を満足し、g(γ−γ’,n)をフィルタリング関数とし、W(β,γ’,x,y)を重み付け関数とするとき、次式[14]すなわち、
    Figure 0004557321
    nは変換前の検出器列インデックス
    に示される演算を実行する逆投影回路とを具備することを特徴とする画像再構成装置。
  2. 前記完全条件回路は、画像再構成のための投影データの最小セットを決定する手段により構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像再構成装置。
  3. 前記完全条件回路は、スライス平面への焦点軌道の投影と交差するように再構成スライスを貫く線を特定する手段により構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像再構成装置。
  4. 前記逆投影回路は、投影データの最小セットを用いて前記逆投影演算を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像再構成装置。
  5. 前記逆投影回路は、ほぼ全ての投影データを用いて前記逆投影演算を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像再構成装置。
  6. 複数列を有する検出器と、投影データを作成する手段と、次式[16a]乃至[16c]すなわち、
    θ=β+γ [16a]
    t=Rsinγ [16b]
    n’=n−(γ/2π)rH [16c]
    ここで、rHは螺旋ピッチ率、Rは焦点距離、nは変換前の検出器列インデックス、n’は変換後の検出器列インデックス、θはx軸を基準とする変換後のビュー角度、
    を満足するように前記投影データを変換する手段と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の画像再構成装置。
  7. 前記逆投影範囲回路は、次式[20]すなわち、 θ2(x,y)−θ1(x,y)=π [20]
    を満足するように前記逆投影演算の積分限界を設定することを特徴とする請求項に記載の画像再構成装置。
  8. 中心部の素子列が第1のアキシャルピッチを有し、他の部分の素子列が前記第1のアキシャルピッチよりも広い第2のアキシャルピッチを有し、投影データを検出する検出器を具備することを特徴とする請求項1に記載の画像再構成装置。
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