JP4556067B2 - ワクチンの滅菌方法およびワクチンの製造方法 - Google Patents

ワクチンの滅菌方法およびワクチンの製造方法 Download PDF

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  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Description

【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
この出願は1998年6月15日に出願された米国出願番号09/097,852号,及び1998年10月2日に出願された米国出願番号09/165,829号について優先権を主張する。これらの出願は全てこの中で引用され参照される。
【0002】
<発明の背景>
この発明は材料を殺菌する方法及びワクチンを調製する方法に関する。
【0003】
生物学的及び非生物学的材料の滅菌、除染、あるいは殺菌については様々な方法および装置が存在する。これらの方法としては、加熱駆除(例えば、焼却)、加熱殺菌、照射(例えば、紫外線照射または電離放射線)、ガス滅菌(例えば、エチレンオキシドを用いて)、光感作、メンブラン滅菌、及び化学消毒剤(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルコール類、水銀化合物類、第四級アンモニウム化合物類、ハロゲン化化合物類、溶剤/洗浄剤系、あるいは過酸化物)を用いるものなどが挙げられる。
【0004】
例えば、医療用溶液を患者に使用する前に滅菌するために、加熱殺菌(例えば、オークレーブ殺菌)がしばしば使用される。加熱殺菌では典型的には、オークトクレーブ中で加圧下、121℃まで最低15分間、溶液を加熱し、その加熱、加圧条件を十分な時間維持し、溶液中の細菌、真菌及び原生生物を死滅させウイルスを不活性化させることが必要である。
【0005】
多くの再使用可能な医療用品および材料はオートクレーブ中での殺菌または滅菌には適していない。例えば、医療用機器のプラスチック部分、血液透析装置及び光ファイバ装置は一般に、化学的な殺菌剤処理により滅菌される。一般に、殺菌剤により微生物を不活性化するには数時間の処理が必要である。
【0006】
薬剤製造において確実に滅菌するために、ガス滅菌がしばしば使用される。しかしながら、ガス滅菌(例えば、エチレンオキシドを用いる)は時間がかかり、サンプルチャンバの予備加湿、加熱、排気を行い、その後、一度に20時間まで高濃度のガスを用いて処理することが必要である。
【0007】
適当に用いれば、従来の消毒剤により、増殖期細菌、一定の真菌、及び脂質親和性ウイルスあるいは中型のウイルスを不活性化することができる。しかしながら、これらの消毒剤ではしばしば、結核菌、胞子形成細菌及び非脂質親和性ウイルスあるいは小型ウイルスを阻止することができない。細胞を溶解させ、これによりサンプルを滅菌する他の方法は、微生物学(Microbiology)(デイビス(Davis)ら、ハーパー&ロウ(Harper&Row)、ヘイゲルスタウン(Hagerstown)、MD、1980)において説明されている。サンプルを凍結・解凍するこの手順は、細菌の懸濁液を凍結させた時の細胞内の微小ポケットの形成によりその効果が発揮されると考えられる。氷の結晶及び局在化した高濃度の塩の両方により、細菌にダメージが与えられる。いくらかの細菌を死滅させるだけであれば、一回の凍結で一般には十分であるが、凍結−解凍サイクルを繰り返すと、生存度が連続的に減少する。致死率は緩慢な凍結及び迅速な解凍と相関する。
【0008】
従来の凍結−解凍法は、サンプルの中心まで及び中心からの熱伝達により相変化を起こすのに必要な時間により、凍結−解凍サイクルの速度において限りがある。大容積のサンプル(例えば、約100ml以上)の場合、平衡速度は特に遅くなる。従来の方法の滅菌効率は、それらの方法では多数の凍結−解凍サイクルを実行することができないことにより制限される。
【0009】
食品保存の従来の方法としては低温殺菌法が挙げられる。この方法では、食品は一定の時間、高温で保持される。
【0010】
滅菌のための改良方法を開発する必要がある。特に、保持することが望ましい活性を有する蛋白質、例えば、凝固因子、抗体、血液酵素(例えば、リパーゼ、ホスファターゼ)及び成長因子、をも含む材料中のウイルス及び他の微生物を不活性化するための改良方法を開発する必要がある。無包性ウイルスを不活性化する方法の開発はとりわけ興味深い。というのは、そのようなウイルスの外皮には、保持することが望ましい蛋白質と同様の蛋白質が含まれるからである。
【0011】
<発明の概要>
この発明は、生物学的及び非生物学的材料が、相対的に高い圧力及び低い圧力の間でサイクルを繰り返すことにより滅菌、除染あるいは殺菌できることを見出したことに基づくものである。圧力サイクルは、低温、室温、あるいは高温(例えば、約−40℃から約95℃)で実行することができる。この発見に基づく新規方法は、例えば、ワクチンの調製、血漿あるいは血清の滅菌、軍用装置の除染、食品及び飲料の製造、医療用機器の殺菌において適用することができる。新規方法はまた、製造プロセスまたはリサーチ手順に組み込むこともできる。
【0012】
一般に、この発明は材料を滅菌するための方法に関する。この方法は、初期圧力(例えば、1atm)、初期温度(例えば、25℃;0℃、−5℃、−25℃、−40℃あるいはそれ以下のより低い温度)の材料を提供する工程と、圧力を上昇させて、材料中に含まれる少なくともいくらか(例えば、少なくとも10%、25%、50%、75%、90%、95%、99%あるいは実質的に全て)の微生物を不活性化するのに十分な圧力(例えば、約5,000psiから約95,000psiまでの範囲、あるいは約10,000psiから約75,000psiまでの範囲、あるいは約95,000psiから約150,000psi)とする工程と、続いて圧力を下げ、初期圧力とほぼ同じ、より低い、あるいはより高い圧力(例えば、約1atm)である減圧とする工程と、を含み、滅菌材料(すなわち、微生物の力価が減少した材料)を提供する。
【0013】
場合によっては、材料は蛋白質を含む。そのような場合、高圧は、その高圧レベルにある間に蛋白質が不可逆的に変性するには十分な圧力であることが望ましい。当業者は、「蛋白質が変性する」が十分な量の蛋白質の変性により特別の用途のための蛋白質の有用性が減少するあるいは破壊されることを意味することを理解するであろう。典型的には、サンプル中の蛋白質分子のうち非可逆的に変性したものが約50%を超えると、サンプルは蛋白質源として不十分なものとなる。しかしながら、場合によっては、蛋白質活性の10%以下でさえ保持されれば十分である。
【0014】
材料は、圧力を増加させる前あるいは後に、零下の温度(例えば、約−40℃から約0℃、とりわけ約−20℃と約−5℃の間)まで冷却する。温度は、圧力を減少させる前あるいは後に、実質的に上げることができる。
【0015】
圧力は必要に応じて、高圧と初期圧力との間で繰り返し、(例えば、2,3,5,10回あるいは100回以上でさえも)サイクルさせることができる。そのようなサイクルは初期温度で、低温(例えば、−40℃と0℃の間、あるいは−20℃と−5℃との間などの零下温度)で、あるいは材料を低温まで冷却させながら、実行することができる。サイクルのタイミングは、材料の温度が各サイクルの前に平衡(例えば、この方法が実行される反応容器の壁の温度)に達することができるようなものとしてもよい。
【0016】
場合によっては、低温の材料は、初期圧力では固体(すなわち、凍結)状態であるが、高圧では液体(すなわち、溶融あるいは解凍)状態となる。そのような場合、圧力サイクルにより、付随する凍結−解凍サイクルが引き起こされる。パルセーションの一時的なパターンは必要に応じて変更することができる。各サイクル中に、圧力は交互に、上げられその後下げられる。高圧での時間の低圧での時間に対する比は「パルセーションパターン比」と呼ぶ。パルセーションパターン比が1:1より大きい(例えば、2:1以上)であれば、ほとんどの場合不純物の最適な不活性化が得られ、パルセーションパターン比が1:1よりも小さいと、適当に折りたたまれた、感受性蛋白質の保持が大きくなる。
【0017】
滅菌材料は、例えば、生物学的サンプル、血漿、血漿から導いた治療用及び/または診断生成物、生物学的流体、医療用流体、薬剤、リサーチ用溶液及び試薬、血清、生組織、医療用あるいは軍用機器、食料品、調剤、あるいはワクチンとすることができる。滅菌材料は始めに、1つ以上の細菌、ウイルス、真菌、原生生物、胞子形成体、原生動物寄生体、マラリア誘発生物、ジアルジア、あるいはウイルス感染細胞により感染、あるいは汚染されている可能性があり、あるいはそうでなければそれらを含む可能性がある。
【0018】
この発明はまた、材料中のウイルスを不活性化する方法に関する。この方法は、初期圧力及び初期温度の材料を提供する工程と、その材料を繰り返し圧力サイクル(例えば、2から100サイクル、約3、10、50、100、1,000あるいは10,000サイクルを超える)に暴露する工程と、を含む。各圧力サイクルは、圧力を一定の高圧(例えば、約10,000psiと約120,000psiとの間、約40,000psiと約100,000psiとの間、あるいは約70,000psiと約90,000psiとの間)まで上げる工程と、一定の高圧を期間tの間維持する工程と、圧力を一定の減圧まで下げる工程と、材料を一定の減圧(例えば、前記高圧よりも低い圧力、及び初期圧力よりも低い、同じ、あるいは高い圧力)で、一定期間tの間維持する工程と、を含む。前記高圧は、その高圧が時間tの間(例えば、約0.5と約300秒の間、あるいは約5または10と約30秒の間)維持されると、材料中のウイルスの少なくともいくらか(例えば、少なくとも約1%、5%、10%、25%、50%以上)が各サイクルで不活性化されるのに十分なものとされる。
【0019】
場合によっては、材料は蛋白質を含む。そのような場合、高圧は、tより実質的に長い時間(例えば、2、3、5、10あるいは100倍のt以上)、その高圧を維持すると蛋白質の実質的に全て(例えば、50%、75%、90%、95%以上)が不可逆的に変性するのに十分であるが、高圧をt以下の時間のみ維持しても蛋白質が不可逆的に変性するには不十分な圧力である。
【0020】
蛋白質としては、例えば、血液凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、及び/または第XIII因子)、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM)、単量体蛋白質、多量体蛋白質、あるいは蛋白質の混合物が挙げられる。
【0021】
ウイルスは被包性あるいは無包性ウイルス(例えば、ヒトパーボウイルスB19、ブタパーボウイルス、ウシパーボウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、単純疱疹ウイルス、A型肝炎ウイルス、バクテリオファージMS2、あるいは輸血伝達ウイルス)とすることができる。
【0022】
この方法はまた、材料を高圧に暴露させる前に、材料を温度T(例えば、約−40℃から約10℃、あるいは約−25℃から約−10℃)まで冷却する工程を含む。
【0023】
以上で説明した新規方法のいずれもまた、特定の微生物に対するワクチンを製造するのに使用することができる。例えば、微生物細胞の懸濁液を入手し、新規方法の1つ(例えば、零下での、圧力サイクル、潜在的な凍結/解凍サイクルを含む方法)により滅菌し、アジュバントと結合させ、ワクチンを製造することができる。懸濁液中に毒素が存在する場合、これらの除去が可能である(例えば、滅菌工程後に)。
【0024】
場合によっては、相転移触媒(例えば、ガラス粒子)、蛋白質−安定化剤(例えば、糖、グリセロール、親水性ポリマー、シクロデキストリン、カプリレート、アセチルトリプトファノエート、ポリエチレングリコール、抗酸化剤、あるいは蛋白質特異配位子)、あるいは、核酸結合化合物(例えば、ソラレンなどの光増感剤)などの添加剤を、滅菌される材料と共に含むと効果的である。そのような添加剤のいくつかはその後、必要であれば、遠心分離あるいは濾過により除去することができる。
【0025】
上記方法のいずれかにより滅菌された材料もまた、本発明の観点にかかるものであると考えられる。
【0026】
他の実施の形態においては、本発明は材料を滅菌するための装置に関する。その装置は、その中の材料に外圧を伝達するように適合された加圧容器を含む。容器は高圧(例えば、上記新規方法のいずれかを実行する際に用いられる圧力)に耐える必要があり、圧力サイクル装置(例えば、PCT US97/03232において説明されているものなど)内に適合することができなければならない。また、この容器は滅菌された材料の無菌回収を可能とするバルブを含んでもよい。場合によっては、この装置はまた、加熱、冷却装置(例えば、ヒーター及び冷凍器)を含むこともできる。
【0027】
更に他の実施の形態では、この発明は蛋白質を含む材料の滅菌方法に関する。この方法は、初期圧力の材料を提供する工程と、迅速に圧力を増加させ、微生物を不活性化するのに十分な圧力とする工程と、迅速に初期圧力に戻す工程と、を含み、滅菌材料を提供すると共に蛋白質の実質的な凝集を阻止するものである。高圧は、圧力サイクルの短い期間(例えば、約1秒から約300秒の間)、場合によっては、低温(例えば、約−10℃から約−40℃の間)により、ほとんどの蛋白質を変性させるに十分なもの(例えば、約65,000psiと約85,000psiとの間)としてもよい。しかしながら、新規方法は、この方法により滅菌された材料中の蛋白質の不可逆的な変性を過剰に引き起こさないようにする。
【0028】
さらに他の実施の形態では、この発明は蛋白質を含む材料を滅菌する他の方法に関する。この方法は、初期圧力の材料を提供する工程と、1以上の蛋白質−安定化剤(例えば、グルコースなどの糖;グリセロール;親水性ポリマー;シクロデキストリン;カプリレート;アセチルトリプトファノエート;ポリエチレングリコール;抗酸化剤;あるいは蛋白質特異配位子)をその材料に添加する工程と、圧力を上昇させ一定の高圧(例えば、蛋白質の安定性により、約10,000から70,000−80,000psiまで)とする工程と、蛋白質の機能を実質的に損なわずに滅菌を行うのに十分な時間材料を保温する工程と、圧力を初期圧力に戻す工程と、を含み、滅菌材料を提供するものである。また、圧力は繰り返しサイクルさせてもよい。
【0029】
以上の方法のいずれにおいても、滅菌される材料はその最終パッケージング中で提供することができる。パッケージングは破壊せずに圧力を伝達することができる。例えば、パッケージングは可撓性プラスチック(例えば、PVCまたはポリエチレン)中に密閉することができる。その代わりに、パッケージングはシリンジとすることができ、圧力はプランジャを介して伝達される。
【0030】
この発明はまた、感染材料に加圧するための方法に関する。この方法は、外圧を材料に伝達するように適合された容器内に材料を充填する工程と、その容器を滅菌化学溶液(例えば、酸化剤、アルコール、尿素、グアニジニウム塩、酸あるいは塩基を含む)中に沈める工程と、その容器内の材料に加圧する工程と、を含む。
【0031】
以上の方法のいずれにおいても、滅菌される材料のpHは必要に応じて、圧力を上げる前に、約10以上(例えば、10から14の間、あるいは11から12の間)あるいは約4以下(例えば、0から4までの間、あるいは2から3の間)に調整することができる。そのようなpH調整は、例えば、pH−感応微生物(例えば、パーボウイルス)や、極端なpHに耐性のある蛋白質(例えば、IgG)を含む材料中の微生物の不活性化に対しては有効であり、滅菌法を促進することができ、場合によっては、全体としてより低い圧力でその方法を実行することを可能とする。
【0032】
この中で使用されているように、用語「零下温度」は、0℃より低い温度(例えば、−1℃、−5℃、−10℃、−20℃以下)を意味する。この中の温度は全て、特記がなければ、摂氏温度であり、単に「℃」と表示する。この中の圧力の単位はポンド/平方インチ(psi)または気圧(atm)で表す。1気圧は約14.5psi、1barまたは101.3キロパスカルである。
【0033】
「クリオバリックプロセス」は、零下温度で実行する少なくとも1度の圧力変化を含むプロセスである。いくつかのクリオバリックプロセスでは、温度を1つの零下温度に維持しながら、あるいは、零下温度範囲内で変化させながら、圧力を2つの圧力(例えば、約14.5psiから約5,000psi、35,000psi、70,000psi、80,000psi、100,000psi以上まで)の間でサイクルさせる。
【0034】
用語「滅菌する」、「殺菌する」、「不活性化する」、「除染する」はこの中では、特にその文脈で要求されいなければ、互換性のあるものとして使用されている。「滅菌」(全ての生物の死滅)は、不純物が蛋白質やプリオンなどの非生物である場合、一定の操作においては、「除染」とは類義語ではないことに注意すべきである。
【0035】
新規方法はいくつかの利点を有する。例えば、この方法は零下温度(例えば、約−40℃から0℃の間)で実行することができる。零下温度で実行する圧力サイクルは、好都合なことに、生物学的不純物の細胞あるいは液胞内外の水の異なる相間の振動を誘発することができる。液体状態と固体状態間の転移は膜、壁、液胞に物理的応力を与えることができ、これにより、意図するプロセスが容易になる。新規方法において一般に使用される零下温度の範囲は、特定の要求に適合する形状及びサイズの範囲内で容易に入手可能な比較的高価でない機器(例えば、市販の冷却装置)を用いて容易に利用できるものである。同様に、この方法の標準操作において必要とされる圧力の範囲(例えば、約14.5psiから約30,000psi、70,000psi、80,000psi、100,000psi以上)は、PCT US97/03232において説明されている装置により発生させることができる。
【0036】
クリオバリックプロセスにより材料を滅菌するための装置は一般に、材料を含有すると共に選択された高圧で操作することができるチャンバと、チャンバ内の温度及び圧力を制御、変化、あるいは調整するためのシステムと、を含む。装置は、圧力サイクルの加圧及び減圧工程中における蛋白質の変性を避けるのに十分迅速な速度で、圧力を増加及び減少させることができる。最適な迅速性は、例えば、プロセスで使用する温度に依存する。一般的には、温度が高いほど高い速度が必要となる。装置はまた、チャンバから無菌状態で滅菌材料を取り出すためのシステムも提供する。さらに、新規方法と共に使用する典型的な滅菌装置は、様々な制御装置、調節器及び温度及び/または圧力センサを含む。加圧媒質としては、例えば、水/エチレングリコール溶液あるいは他の不凍溶液あるいは粉末タルクなどの固体とすることができる。
【0037】
新規方法を実行するために必要な装置は、特別の適用の要求に従うように容易に適合させることができる。例えば、小型の携帯用装置を得ることができる。これにより、(例えば、パラメディカル員あるいは軍医療員により)現場で滅菌あるいは除染手順を実行することが可能となる。
【0038】
温度の変更はまた、微生物の溶解を助けることができる。温度、圧力、サイクル数、あるいはサイクル頻度を変更し、滅菌プロセスの有効性を最大とすることができる。
【0039】
新規方法は非常に迅速である。例えば、圧力は約1mHzから約10Hzの頻度でサイクルさせることができる。これにより、典型的には、数分内に完全な滅菌プロセスを完了させることが可能となる。
【0040】
新規方法は、蛋白質の変性を伴わずに、材料中の病原生物を中和させることが可能である。新規方法は、生物学的材料の滅菌でしばしば起こる変性を避けることができる。
【0041】
迅速で経済的な滅菌は、蛋白質の破壊あるいは変性を最小に抑えながら、達成することができる。このように、新規方法は、高活性ワクチンの製造に使用するのに好都合である。これらのワクチンはより高い温度で製造されたワクチンよりも優れている。というのは、高温では、蛋白質中の共有結合及び非共有結合の両方の破壊が引き起こされ、ここでクレームした方法に比べ不可逆的な変性の程度がより大きくなることがあるからである。高温ではまた、酸化グルコースなどの小分子への蛋白質の共有結合が引き起こされることもある。この発明の他の利点は、分析前に患者のサンプル中のウイルス及び細菌を不活性化するために使用することができることである。研究所で働いている人々は、分析用に患者から採取した組織、細胞あるいは流体サンプルを取り扱う際に、(例えば、ヒト免疫不全ウイルス及びB型肝炎ウイルスなどのウイルスから)感染する危険を受けやすい。この危険を避けるために、そのようなサンプルは、加圧サイクル装置に挿入するように設計された容器内に収集することができる。適した容器は圧縮可能で、あるいは圧力を伝達するためのピストンまたはプランジャを有してもよい。その後、病原体の不活性化前にサンプルを暴露せずに、この発明の方法を容器内のサンプルに関し実行することができる。1つの例では、シリンジ内に集められた血液は蓋をし、蓋をしたシリンジは、70%エタノールなどの滅菌圧力−伝達媒質で満たされた加圧チャンバ内に置かれる。その後、サンプルはこの発明の方法により処理され、分析用に取り出される。
【0042】
新規方法の他の利点としては、血液画分への化学添加剤の添加の必要性の排除あるいは減少、このプロセスの単一ユニットから大量のプールサンプルあるいは連続オンラインプロセスへの概算性、蛋白質成分に対する熱不活性化プロセスの副作用の除去が挙げられる。
【0043】
特に規定がなければ、この中で使用されている全ての技術用語及び科学用語はこの発明の属する分野の通常の当業者により普通に理解されるものと同じ意味である。この中で説明されているものと同じあるいは等価な方法及び材料は、本発明の実行あるいは試験において使用することができるが、適した方法及び材料について以下に説明する。この中で触れた全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は全て、完全にこの中で引用され参照される。矛盾があった場合、定義を含むこの明細書により調整する。さらに、材料、方法及び実施例は説明するためだけのものであり、限定するものではない。
【0044】
この発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び請求の範囲により明らかになるであろう。
【0045】
<詳細な説明>
この発明は、約5,000から約95,000psiまでの範囲、好ましくは30,000から75,000psiまでの範囲の高圧により、材料を滅菌あるいは除染することができる方法を提供する。材料は加圧前あるいは加圧後に、材料の所望の特性を保存すると共に、不純物の破壊をも可能とする特別な温度まで調整される。
【0046】
サイクルの温度、圧力、数及び持続時間及び圧力と温度の変化の相対的なタイミングは変更することができるが、この新規方法は一般的には以下の手順に従い実行される。材料を初期圧力(例えば、大気圧、14.5psi)及び初期温度(例えば、大気温度、25℃、あるいは0℃から4℃までなどの冷却温度、あるいは−80℃から−20℃までなどの凍結温度)で提供する。その後、材料を一定の高圧まで加圧する。圧力は高圧と大気圧との間で繰り返しサイクルすることができる。最終減圧後、材料を凍結状態で得ることができる。あるいは減圧前に0℃以上まで温め、凍結していない滅菌生成物を製造することもできる。
【0047】
上記プロセスはまた、周知の静圧及び/または特別の圧力を所定の時間維持する方法と共に使用することもできる。場合によっては、圧力は、微生物の不活性化には十分であるが不可逆的な蛋白質の変性には不十分な時間の間、非常に高いレベルで維持してもよい。
【0048】
滅菌プロセスのいずれかにおいて相転移が関係する場合、その転移を促進するために触媒を添加してもよい。例えば、微粉砕したガラスあるいは他の材料の存在により、サンプルあるいは材料の凍結のための核形成部位を提供することができる。
【0049】
<一般>
新規方法の適用には、(例えば、輸血において使用するための)ドナーからの血漿などの材料の滅菌、血液から誘導された精製あるいは部分的に精製された治療用及び診断用蛋白質、医学サンプル(血液、尿、糞、毛、生検材料、あるいは他の組織サンプル)、製剤(例えば、生合成アンチセンス薬)、生物薬剤、及び遺伝子導入により製造した蛋白質の滅菌を含む。新規方法は、培養された材料中のウイルスの増殖を抑制するために、そのような材料を滅菌するために使用することができる。新規方法はまた、化粧品、製剤及び工業製品の滅菌を確実にするために使用することもできる。
【0050】
この新規方法により不活性化することができる微生物の例としては、親水性、親脂質性ウイルスの両方共と;ほとんど全ての細菌、例えば、ブドウ球菌、小球菌、化膿連鎖球菌、ジフテロイド菌(例えば、プロピオバクテリウムなどの親脂質性、非−親脂質性、嫌気性ジフテロイド菌)、グラム陰性小腸桿菌(例えば、大腸菌、腸内細菌、クレブシェラ、プロテウス、セラチア)、ナイセリア、好気性胞子形成体、マイコバクテリウム;真菌、例えば、酵母菌、ピチロスポルン・オバーレ、ピチロスポルン・オービクラーレ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・パラプシロシス、トルロプシス・グラバラタ、皮膚糸状菌種;原生生物及び低次多細胞生物、例えば、原生動物寄生体;及び蠕虫寄生体;マラリア誘発生物;ジアルディア;及びウイルス感染細胞が挙げられる。
【0051】
この新規方法により不活性化することができるウイルスの例としては、DNAウイルス及びRNAウイルスの両方とも、例えば、ヒトパーボウイルスB19(「B19」)、ブタパーボウイルス(「PPV」)、バクテリオファージMS2(「MS2」)、及びA型肝炎ウイルス(HAV)が挙げられる。B19及びHAVはどちらも小さく(約15−30nm)、脂質から成る外膜を有しておらず(ノン−エンベロープ)、熱及び化学処理に対し耐性があり、ナノ濾過により除去するのは困難である。PPV及びMS2も同様に、ヒト病原体B19及びHAVに対するリサーチモデルとして機能することができる耐性ウイルスである。エンベロープウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)もまた、新規方法の潜在的なターゲットである。現在キャラクタリゼーションがなされていないウイルス、例えば、いくつかの新たに認識された型の肝炎ウイルス及び輸血伝達ウイルスもまた新規方法に対し脆弱である。
【0052】
血漿プールはしばしばC型肝炎ウイルス(HCV)を含む。このように、血液製剤を製造するための手順はHCV及び他のウイルスを不活性化するプロセスの恩恵を受ける。ヒトパーボウイルスB19(B19)は他の一般的な血漿不純物である。A型肝炎ウイルス(HAV)不純物はそれほど一般的ではないが、それでも厄介である。B19及びHAVはどちらも小さく(約15−30nm)、脂質からなる外膜を有しておらず(ノン−エンベロープ)、熱及び化学的処理に対し耐性があり、ナノ濾過により除去するのは困難である。エンべロープウイルス(例えば、HIV、HBV、HCV)もまた新規方法の潜在的なターゲットである。現在キャラクタリゼーションがなされていないウイルス、例えば、いくつかの新たに認識された型の肝炎ウイルス及び輸血により伝達されたウイルスもまた新規方法に対し脆弱である。さらに、伝染性海綿様脳症などのプリオン系病原菌はスクリーン、不活性化するのが困難である。しかしながら、この発明は適した条件下で蛋白質の変性を誘発するので、この発明の方法によりそのような病原菌を不活性化することは可能かもしれない。
【0053】
破壊されたウイルス粒子が圧力処理後に再構築する可能性により、ウイルス中に含まれる核酸を不可逆的に分解することが望ましい。中位の高圧(例えば、20,000psiから60,000psi)により、ヌクレアーゼとその内在性阻害因子の複合体を破壊することができる。活性化ヌクレアーゼは核酸を分解する働きをし、これによりウイルスの不可逆的な不活性化が強化される。さらに、中位の圧力は阻害されていない酵素の活性を促進することができる。プロセスはヌクレアーゼを添加することにより強化してもよい。場合によっては、クエン酸塩添加血漿の処理における場合のように、マグネシウム独立ヌクレアーゼを添加することが望ましい。というのは、クエン酸はマグネシウムイオンと結合しこのためマグネシウム依存性ヌクレアーゼを阻害するからである。
【0054】
その代わりに、ずっと高い圧力(例えば、50,000psiから150,000psi)を使用して、圧力に対し安定な材料、例えば小分子製剤または熱安定性蛋白質の滅菌を行うことができる。圧力サイクル凍結−解凍滅菌法(例えば、氷III、氷IV、氷Vまたは氷VIなどの高圧氷のサイクリック形成を利用する方法)も使用してよい。
【0055】
生物学的不純物が比較的圧力安定であり、材料が保持する必要のある不安定な蛋白質を含む場合、この方法の変更を使用することができる。この変更では、圧力を迅速に(例えば、5秒以内で、あるいは1秒以内で)上昇させ、非常に高い最大圧(例えば、100,000psi以上)とし、高圧をほんの短い期間のみ(例えば、5秒以内)維持する。圧力及び時間は、微生物の高い不活性化の程度を提供するように選択されるが、時間は高圧条件により変性する蛋白質が再び折り畳まれ天然形態とならず、凝集して十分な程度に不可逆的な複合体となる時間がないほど十分短いものとする。その後、圧力を迅速に(例えば、5秒以内に、あるいは1秒以内に)減少させる。ウイルスなどの微生物の不活性化の進行速度は、蛋白質分子の不可逆的凝集あるいは変性よりも、ずっと大きい。
【0056】
低温で圧力サイクルを実行すると、凝集速度が遅くなり、蛋白質が再び折り畳まれる速度が増加することにより、さらに活性蛋白質の保持が向上する。高圧及び低温の一定条件下(例えば、100,000psi及び−20℃)では、高圧氷(すなわち、氷Vまたは氷VI)が形成することができる。高圧氷の格子構造内に閉じ込められた蛋白質は凝集しにくい。高圧氷が溶解するのにかかる時間は有限であるが、この時間は材料中の蛋白質が固体中に閉じ込められている間に再び折り畳まれるのに十分なものである。グルコースを添加してもまた、蛋白質の折り畳み(folding)速度が増加する。
【0057】
圧力はまた、多くの酵素の活性を増加させることが示されている。例えば、リボヌクレアーゼ活性は高静水圧により促進される。この効果は、ウイルスを不活性化するための新規方法と共に利用することができる。RNAウイルスは高圧処理により容易に分解される。
【0058】
<輸血>
新規方法は輸血の安全性を向上させるために使用することができる。静脈免疫グロブリン(「IVIg」)、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XIII因子、アルブミン、フォン・ウィルブランド因子、フィブリノーゲン、抗トロンビンIII、C蛋白質、C1−阻害剤、α−1抗トリプシン、及びフィブリン密閉剤などの血漿蛋白質製剤が、例えば、血友病患者、癌患者及び腎臓透析患者にとって、必要である。しかしながら、血液製剤中に存在するウイルスは、それらの血液製剤を必要とする患者を危険にさらすことがある。多くの細胞を除去する新規濾過技術を使用したとしても、一定の細菌及びウイルスは血液製剤中に残存することがある。
【0059】
通常、血漿は、(例えば、抗凝血剤を含む管内に収集された)血液サンプルを入手し、血漿分離管中のサンプルを遠心分離機にかけ、管中の沈殿から血漿のデカンテーションを行うことにより単離する。この方法は血漿から大部分の細胞を取り除くが、必然的にいくらかの細胞が血漿中に残存する。残存する細胞が、例えば、細菌やウイルスを含んでいれば、輸血により病気が広がることもある。この新規方法は上記デカンテーション法により得られた血漿について実行することができる。血漿中に残存する不純物はこの新規方法により不活性化することができる。
【0060】
<試薬及び倍地の滅菌>
この新規方法はまた、工業製品の滅菌に使用することができる。例えば、ウシ血清はしばしば分子生物学研究所において細胞培養のために使用される。供給者からの原料の微生物汚染はめったに起こらない。しかしながら、微生物汚染が起こると、経済的なコスト及び時間の遅れがしばしば重要となる。ウシ胎児血清を滅菌する現在の方法(例えば、加熱または濾過)は、機能的に重要な蛋白質(例えば、成長ホルモン)を不活性化し、ロット間で大きな変動が生じる。さらに、原料が最初無菌であったとしても、研究室内で開封した時に偶然汚染されることもある。この新規方法はどちらの製造プロセス(例えば、バッチまたは連続)においても使用することができ、あるいは実験を開始する前に血清または他の倍地の前処理のために個々の研究所において使用することができる。
【0061】
<ワクチン製造>
ワクチンは典型的には、培養ウイルスの溶液に、不活性化処理(例えば、加熱、あるいは化学的変性剤の添加及び除去)を施すことにより調製される。
【0062】
成功したワクチン調製法では理想的には高程度のウイルスの不活性化が達成されなければならないが、患者の体内で免疫防御応答を刺激する能力を製品に保持させなければならない。高圧手順は成功するワクチン製造のために必要な基準を満たすようにうまく適合されている。冷・圧力変性蛋白質は、加熱され、あるいは化学的に変性された蛋白質に比べ、より天然に近い構造を保持しているので、圧力により不活性化させたウイルスはより免疫原性が良好である。圧力変性蛋白質はまた、凝集しにくく、これにより、ワクチン収率が高くなる。この中で説明している圧力不活性化法は規模を拡大しても経済的である。というのは、一般に化学薬品を添加あるいは除去せず、熱とは異なり圧力は大量のサンプルを介して迅速に伝達させることができるからである。
【0063】
ワクチン製造に必要な特定の条件は不活性化させる特別の微生物により変更させることができる。例えば、胞子形成生物の場合、必要に応じて、低圧及び中くらいの温度(例えば、10,000psi及び40℃)による前処理を適用して、胞子を発芽させることができる。発芽した胞子はその後、この発明の方法により不活性化することができる。
【0064】
<圧力により向上した核酸の光感作>
滅菌する製品を、DNAまたはRNAと選択的に結合し核酸と反応することができる化学試薬と共に混合する滅菌方法についてはすでに説明されている(ラドセビッチ(Radosevich)、「血栓症と止血におけるセミナー」、Vol.24、No.2、pp.157−161、1998)。場合によっては、化学的な部分を活性化するのに光が使用されることがある。そのような方法の欠点としては、(例えば、化学薬品とのあるいは照射による非特異的反応により、あるいは微生物の内部への不活性化薬品の不完全なあるいは遅い浸透により)滅菌する製品の所望の分子成分に与えられる副行のダメージが挙げられる。圧力を上昇させて適用すると、細胞及びウイルスに浸透性を付与し不活性化剤の浸入を可能とすることにより、これらの問題を実質的に克服することができる。圧力を上昇させることにより、分子の核酸に対する親和性及び選択性も向上し、これにより薬品濃度を低くし、あるいは照射量を低くすることができる。このように、より速く、より低コストの、より高効率の方法が得られる。
【0065】
光化学法を実行するための装置としては、PCT出願US96/03232に説明されているような、高圧フロースルーシステムが挙げられる。このシステムは、石英あるいはサファイアなどの材料で製造することができる少なくとも1つの耐圧ウインドウを含む反応チャンバと、そのウインドウを介して材料の照射を行うための装置と、を有する。液体の流量は材料のすべてがその照射領域を通過するようなものとする。その後、材料は無菌状態で収集することができる。材料は高圧あるいは低圧で反応チャンバ内に導入し、その後照射前に加圧することができる。
【0066】
<ウイルスの化学的不活性化>
様々な化学薬品(例えば、ヨウ素、エチレンイミン、アスコルビン酸、チオホスファミド、コンゴーレッド、パラホルムアルデヒド)を使用して不安定な蛋白質を含む溶液を滅菌することができる。しかしながら、そのような化学薬品を使用すると、不活性化が遅く、蛋白質の損傷の可能性がある、あるいは化合物が微生物の内部まで浸透することができない、などの負の効果が得られることがある。圧力を上昇させると、(例えば、パーボウイルス及びA型肝炎ウイルスなどの熱安定性無包ウイルスに対する化学薬品の効力を増加させることにより)負の効果を激化させること無く、これらの化学薬品の滅菌活性を向上させることができる。
【0067】
<蛋白質及び酵素の安定化>
場合によっては、上記滅菌手順に必要な圧力で不可逆的に変性してしまう不安定な蛋白質を含む溶液あるいは他の材料を滅菌することが望ましいこともある。このような場合、安定化剤(例えば、グリシンなどのアミノ酸、あるいは混合物中の蛋白質の特異的な配位子、回復される蛋白質の配位子、あるいはグリセロール、キシロース、グルコースなどの糖)を、加圧前に材料に添加することができる。例えば、ヒト血清アルブミン安定化剤であるカプリレート及びアセチルトリプトファノエートを血漿サンプルに添加し、その後、血漿サンプルについてクリオバリック滅菌プロセスを実行することができる。この場合、特定の血漿蛋白質の過剰な不安定化は起こらない。その後、安定化剤は標準の方法(例えば、透析、濾過、クロマトグラフィー)により除去することができる。
【0068】
<感染材料の圧力処理>
感染症の因子を含んでいる可能性のある材料に対し、滅菌、細胞及びウイルスの破壊、ヌクレアーゼの不活性化を実行するためには静水圧あるいはパルス圧は有効である。さらに、一般的な安全性を考慮すると、その材料を扱う人間への感染防止、他の材料の汚染防止が要求される。そのような汚染を防止する1つの方法は加圧媒質として、滅菌溶液(例えば、10%クロロックス(CLOROX、登録商標)漂白剤;70%エタノール;濃縮尿素;あるいはグアニジウム塩)あるいは酸化剤を使用するものである。
【0069】
例えば、材料を閉鎖形の柔軟な容器内に置き、その後、それを化学的滅菌溶液中に浸漬させることができる。溶液はその後、第2の化学的に不活性な容器の内側に密封することができる(すなわち、加圧チャンバの内側にある金属部分と接触しないようにする)。その後、不活性な加圧媒質を使用して、加圧チャンバの内側と、材料と滅菌溶液とを保持する容器との間の容積を充填させることができる。滅菌溶液を保持する容器は、例えば、プラスチックバッグ、ねじ蓋プラスチック容器、蓋つきシリンジ、あるいは収縮ラッピングとすることができる。
【0070】
この発明についてさらに、以下の実施例で説明する。これらの実施例はクレームにおいて記載された発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
<実施例>
実施例1:ラムダファージのクリオバリック不活性化
4サンプルのそれぞれについて、約248μlの子ウシ血清を添加して2.5μlのラムダファージ株(5×1011pfu/ml)を100倍に希釈した。5番目の2.5μlラムダファージ株サンプルは懸濁液媒質中で100倍に希釈した。2つのファージ−血清サンプル(250μl)は管をエタノール−ドライアイス浴中に浸漬することにより凍結させた。3つの他のサンプルは氷上に置いた。
【0072】
凍結ファージ血清サンプルの1つについて、36,000psi(30秒)と14.7psi(30秒)の間で5分間、サイクルさせた。圧力処理中、このサンプルの温度は−10℃に維持した。残りの凍結サンプルは、対照標準として実験を通して14.7psiに維持した。この実験を繰り返すと、ドライアイスサンプルを−10℃まで5分間温めた。3番目のファージ−血清サンプルは、23℃で10分間36,000psiまで加圧した。残りの2つのサンプルは、陽性対照として使用するものであり、それぞれ、圧力処理を施さずに23℃で10分間培養したファージ−血清サンプル、及び圧力処理も温度処理も施さないファージ懸濁媒質(すなわち、0.0496Mの塩化ナトリウム、4.06mMの硫酸マグネシウム、50mMのトリス−Cl pH7.5、1.0g/lのゼラチン)とした。加圧処理後、ファージサンプルの10、10、10倍希釈を懸濁媒質中で行った。
【0073】
アンピシリン耐性大腸菌の培養物はラムダブロス(すなわち、10g/lのトリプトン、0.042Mの塩化ナトリウム)、0.2%のマルトース、10mMの硫酸マグネシウム中では増殖し飽和に達した(分子生物学における最新プロトコル、1.11.1ページ)。
【0074】
感染を誘発するために、100μlのファージサンプルを以上のように調製した300μlの大腸菌培養物に添加し、この培養物を37℃で10分間培養させた。2.5mlのラムダトップ寒天(すなわち、10.0g/lのトリプトン、42mMの塩化ナトリウム、7g/lの寒天)を各ファージ−大腸菌混合物に添加し、渦状に攪拌し、直ちにラムダプレート(すなわち、90mmのペトリ皿中の、10g/lのトリプトン、0.042Mの塩化ナトリウム、10.0g/lの寒天)上に広げた。
【0075】
プレートを37℃で16時間培養した後、ラムダプラークをそれぞれ計数した。あるいは、融合性が高いプレートに対しては、プラークにより占められた総表面積を評価した。希釈係数に、各プレート上に現れたプラークの数をかけることにより、1mlあたりのプラーク形成単位(pfu/ml)を計算した。
【0076】
ラムダファージのプラーク形成活性は、−10℃で静水圧を交互に替えることにより5桁減少した。凍結させた圧力サイクルサンプルの密度は9.4×10pfu/mlであることがわかった。一方、凍結させた、加圧していない対照標準の密度は3.2×1011pfu/mlであった。第2の実験では、プラーク形成活性は、交替圧力処理後、9×1010pfu/mlから6.4×10pfu/mlに減少した。凍結サンプルとは対照的に、室温サンプルでは、プラーク形成活性は3倍しか減少しなかった。23℃で5分間、36,000psiで保持したサンプルでは、1.2×1011pfu/mlが得られ、14.7psiで維持した対照標準では、3.1×1011pfu/mlが得られた。
【0077】
プラーク形成活性には、血清はほとんど影響しなかった。懸濁液媒質中で希釈したサンプルでは50×1011pfuであったが、血清中で100倍に希釈したサンプルでは3.1×1011pfuまで減少したにすぎなかった。大気圧(14.7psi)で一度だけ凍結しても、見掛け上、プラーク形成活性には影響はなかった。凍結サンプルでは3.2×1011pfuであり、室温(23℃)で保温したサンプルでは3.1×1011pfuであった。
【0078】
実施例2:ウイルスの不活性化に対するパルスセイション頻度の効果
血清中のラムダバクテリオファージの不活性化に対するパルセイション頻度の効果を決定するために実験を行った。
【0079】
血清サンプルにウイルスを接種し、パルセイション頻度を変化させ、最大圧力を40,000psiとする以外は実施例と同様に処理した。全サンプルは−6℃で処理し、全サンプルに対する総処理時間は15分とし、高圧及び低圧での時間は各実験において7.5分であった。実験は実験条件の各組に対し2度行った。ウイルスの力価を実施例1のように測定した。
【0080】
治療蛋白質のモデルについて、その活性化が維持されるかどうか確認するために、並行実験を行った。抗フルオレセインヤギIgG(ケミコンインターナショナル(Chemicon International);テクマ(Tecuma)、CA)は、5%のグルコースと0.3%のNaCl中で濃度4mg/mlに調整した。その後、溶液に対しバクテリオファージ不活性化実験と同様の処理を行い、フルオレセインの50nM溶液の蛍光の消光能力を測定することにより分析した。以下のデータが得られた。
【0081】
【表1】
Figure 0004556067
この実験により、低温での圧力のパルセイションはウイルスの不活性化率に重要な効果を持つこと、及び治療及び診断血液製剤の製造において有用であることが証明される。プロセスは適当に折り畳まれた治療蛋白質の高い回復と一致する圧力及び温度条件下で行うことができると共に多くの型のウイルスに対して効果的である。
【0082】
実施例3:高圧滅菌プロセスにおけるヌクレアーゼ活性の促進
成体ウシ血清を水を用いて希釈し50%(v/v)とし、0℃まで冷却する。血清の4アリコットを250μlの微小遠心分離管に分配し、各管内には25μlの空気が存在するようにする。管を氷上で使用するまで保存する。5μlの50mMトリス緩衝液、pH8.0中の2μgのpUC19プラスミドDNAと2μgの酵母菌の全RNA(シグマ)を各サンプルに適当な時間に添加する。加圧前に、5μlの水をサンプル#4に添加する。10mMのバナジルリボヌクレオシド錯体を添加し、サンプルを氷上に置くことにより反応を停止させる。これらのサンプルの処理は以下の通りである。
【0083】
サンプル#1:対照標準サンプル(すなわち、核酸のみ)。このサンプルでは、核酸の前にバナジルリボニクレオシドが添加される。
【0084】
サンプル#2:血清及び核酸混合物が25℃で10分間保温される。反応は以上のように直ちに停止される。
【0085】
サンプル#3:血清及び核酸混合物が60,000psiまで25℃で10分間加圧される。反応は上述のように停止される。
【0086】
サンプル#4:血清が60,000psiまで25℃で10分間加圧される。その後、核酸が添加され、混合物は10分間保温され、反応は上述のように停止される。
【0087】
サンプルは全て、同じ量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール混合物を用いて抽出して蛋白質を除去し、その後、70%エタノール中の核酸の沈降析出を行う。核酸ペレットは20μlのTE緩衝液中に再び溶解する。得られた溶液10μlを電気泳動のために0.8%のアガロースゲル上に載せる。電気泳動後、DNAはエチジウムブロミド蛍光により可視化する。残りのサンプルの5μlはピコグリーン及びリボグリーン染料(モレキュラープローブ)を用いて定量する。
【0088】
サンプル#3及び#4ではどちらもサンプル#2に比べ、分解が増加する。サンプル#4中の核酸はサンプル#3中の核酸よりも分解が進む。これらの結果により、圧力は、直接活性を刺激すること及び阻害物質を放出させることの両方により、血液ヌクレアーゼを促進することができることが実証される。
【0089】
実施例4:サッカロマイセス・セレビシェの圧力及び温度誘発不活性化
サッカロマイセス・セレビシェをYPD液体倍地(1%酵母菌抽出物、2%ペプトン、2%デキストロース)で、培養物密度が2×10細胞/mlに到達するまで増殖させた。その後、サッカロマイセス・セレビシェサンプルを子ウシ血清中で1:10に希釈し、その後、様々な圧力及び温度を適用した。
【0090】
最初に、温度を23.8℃で一定に保持しながら、加圧プロセスを実行した。第1のサンプルは23.8℃で10分間、36,000psiで維持した。第2のサンプルは23.8℃で10分間、30秒間隔で、36,000psiと14.7psiの間でサイクルさせた。第3のサンプルは陽性対照として、圧力及び温度をそれぞれ、14.7psi、23.8℃で一定に維持した。
【0091】
次の3つのサンプルに対しては、同様の圧力処理を実行する間、温度を下降させた。このように、第4のサンプルは−3.6℃まで冷却し、その後36,000psiで10分間加圧した。第5のサンプルもまたは−3.6℃まで冷却し、その後36,000psiと14.7psiとの間で30秒の間隔で圧力交替させるサイクルを10回実行した。陽性対照として、第6のサンプルは−3.6℃まで冷却させたが、圧力処理を行わなかった。
【0092】
必要な圧力及び温度処理の後、サンプルは全て10、100、1000の係数で希釈し、LPDプレート(1%酵母菌抽出物、2%ペプトン、2%デキストロース、1.5%寒天)上に広げ、32℃で24時間増殖させた。コロニー形成単位(cfu)の数を、コロニーの数に希釈係数を掛けることにより計算した。
【0093】
サッカロマイセス・セレビシェは圧力処理により著しく不活性化されることが、23.8℃及び−3.6℃の両方において観察された。加圧サンプルのコロニー形成活性の範囲は、加圧サンプルに対し1×10cfuから5.6×10cfuの範囲であった。陽性対照のコロニー形成活性は1.1×10cfuから9.2×10cfuの範囲であった。このように、サッカロマイセス・セレビシェのコロニー形成能力は約2から3桁減少した。
【0094】
実施例5:モロニーネズミ白血病ウイルスの圧力及び温度誘発不活性化
Phi+(拡大ウイルスパッケージングシグナル)とネオマイシン耐性マーカー(Neo)を含むが、ウイルス構造遺伝子を欠くレトロウイルスベクターpLNCXを、パッケージング細胞系NIH−Cyt2と共に使用した。NIH−Cyt2細胞は、粒子形成及び複製のために必要なgag、pol、envウイルス構造遺伝子を発現させるが、RNAパッケージングシグナルPhi+は発現させない。このように、pLNCXベクターとNIH−Cyt2細胞系は共に、モロニーネズミ白血病ウイルス(MMLV)と構造的に同じ感染性の複製−不能な粒子を生成する。これらの感染性MMLV粒子はpLNCXベクターをコードするRNAを含む。
【0095】
MMLV感染性粒子については、10%の子ウシ血清(CS)を含むDMEM中に懸濁させ、以下の温度及び圧力処理中以外は、4℃、14.7psiで維持する。第1のサンプルでは、静水圧を30秒の間隔で35,000psiと14.7psiとの間でサイクルさせ、その間、温度を2℃に維持する。陽性対照として、第2のサンプルの温度は、14.7psiで10分間、2℃で維持する。第3のサンプルは、−10℃において、30秒の間隔で35,000psiと14.7psiとの間でサイクルさせる。第4のサンプルは、−10℃で5分間、35,000psiで保持する。陽性対照として、第5のサンプルはドライアイス中で凍結させ、その後−10℃まで5分間温めた。
【0096】
サンプルをNIH−Cyt2細胞の皿に添加し、37℃で30分間保温し、細胞にレトロウイルスベクターpLNCXをトランスフェクトさせる。陰性対照として、細胞の1プレートをウイルスを含まないDMEM−CSを用いて、偽−トランスフェクトさせる。細胞を10%の子ウシ血清と、NeOと共にある時にのみ細胞を増殖させ、このため、安定な形質転換細胞を選択するG418を含むDMEM中で増殖させる。10日後、皿をPBSですすぎ、メチレンブルーで染色し、再びPBSですすぎ、その後、コロニーを計数する。コロニー形成単位(cfu)として表されるウイルスの力価を、希釈係数にコロニー数を掛けることにより計算する。
【0097】
実施例6:大腸菌接種血清の圧力−サイクル不活性化
LB/amp倍地(50μg/mlのアンピシリンを含むルリアブロス)中のアンピシリン耐性大腸菌株の培養物を増殖させ飽和させた。成体ウシ血清(シグマ)のサンプルに、1ml血清あたり30μlの大腸菌を接種した。接種させた血清のアリコット(それぞれ280μl)を9つの微小遠心分離管内に入れた。9つの管内のサンプルを以下の実験条件に暴露した。
【0098】
サンプル1は対照として処理せず放置した。
【0099】
サンプル2は大気圧(すなわち、約14.7psi)に維持し、温度を約−17℃と室温(すなわち、約25℃)との間で20回、20分にわたりサイクルさせた。
【0100】
サンプル3〜6は大気圧で−15℃まで冷却した。サンプルは確実に熱平衡に達するように2分間静置した。その後、サンプルに対し、約30秒/サイクルあるいは2Hzの速度で圧力サイクルを実行した。サンプル3は約14.7psiと約15,000psiとの間で、5分間にわたり、10回サイクルさせた。サンプル4は、約14.7psiと約35,000psiとの間で、5分間にわたり、10回サイクルさせた。サンプル5及び6は、約14.7psiと約35,000psiとの間で、10分間にわたり、20回サイクルさせた。
【0101】
サンプル7は、室温において、約14.7psiと約35,000psiとの間で、6分40秒にわたり、20回サイクルさせた。
【0102】
サンプル8及び9については、2.5分間静圧を加圧した。サンプル8は室温で加圧し、サンプル9は−15℃で加圧した。
【0103】
サンプルをLB/amp倍地で希釈し、サンプルを培養した。1mlあたりのコロニー形成単位(CFU/ml)を、対数減少(すなわち、対照に対して)と共に以下に示す。
【0104】
【表2】
Figure 0004556067
このように、最も効果的な処理はサンプル#7、約25℃での35,000psiまでのサイクル、に対応するものであった。結果から、同じ温度では静的加圧に比べ、サイクリングはより効果的であることが示唆される(サンプル#8参照)。
【0105】
実施例7:大腸菌汚染針の滅菌
2つの20G針を、プラスチックマウントに取り付けた3mmの金属シャフトを残して、切り取った。3mlシリンジのプラスチックシャフトの端を切り取り、その端を2つのプランジャーからのゴム部分でふさぐことにより管を構成した。大腸菌を一晩培養したもの1mlを、各針を通って通過させた。各針を1mlのルリアブロス(LB)倍地を有する管内に置いた。各管の上部には空気が約0.2ml残っていた。
【0106】
1つの管について、22.2℃で、10サイクルの圧力処理(各サイクルは37,000psiで30秒、その後、14.7psiで30秒からなる)を実行した。第2の管は22.2℃で10分間圧力チャンバ内に置いたが、圧力処理は行わなかった。
【0107】
圧力処理後、管から針を取り出し、各針を通って0.2mlのLBを通過させた。0.2mlのLBの半分をLBプレート上に広げた。残りの0.1mlのLBを希釈し(1:10、1:100、1:1,000、1:10,000)、4つのLBプレート上に広げた。全てのプレートを一晩37℃で増殖させた。各プレート上のコロニーを計数し、各LBサンプル内のコロニー形成単位(cfu)の数を計算した。
【0108】
処理針及び未処理針を通して通過させたLB倍地のコロニー形成活性において著しい差が観察された。圧力処理針を通して通過させた0.2mlにおいては10cfuであったが、未処理針を通して通過させたLB中には9.2×10cfuも存在し、約100,000倍もの違いであった。
【0109】
実施例8:圧力−ショック滅菌
病原性ウイルスのモデルとして、新鮮な凍結血漿に、10%グルコースと4mMのカプリル酸ナトリウムで安定化させた、10プラーク形成ユニット(pfu)/mlのラムダバクテリオファージを添加する。血漿を、圧力伝達媒質として50%エチレングリコールを含む高圧容器内に入れ、温度平衡を−10℃とする。圧力を1秒にわたって150,000psiまで上昇させ、その圧力を更に1秒間保持する。その後、圧力を2秒にわたって下げる。血漿サンプルを取り出し、希釈物を大腸菌芝上で培養する。血漿サンプルは実質的に感染ウイルスを有していないことが見出されている。血漿蛋白質について、HPLC、IgG抗原結合、HSAによるダンシルサルコシンの蛍光強化、及び凝固因子の完全性を評価する凝固分析(活性化部分トロンボプラスチン時間分析、APTTを含む)などの様々な方法により分析する。
【0110】
実施例9:ウイルスの圧力−強化光化学不活性化
ウシ血清サンプルに、10プラーク形成単位(pfu)/mlのラムダバクテリオファージを接種する。0.15mMのソラレンを添加する。サンプルを3つのアリコットに分割する。3つのサンプルについて以下のように処理する。
【0111】
(1) それ以上処理はしない。
【0112】
(2) 30,000psiまで加圧する。
【0113】
(3) 30,000psiまで加圧し、同時にUVA光に10分間暴露する。
【0114】
全てのサンプルは実験を通して25℃に維持する。圧力及び光による処理は、ポリエチレンキャップを有する石英瓶中にサンプルを入れることにより実行する。瓶を、エタノール−充填高圧分光セル(ISS、チャンペイン(Champaign)、IL)中に置き、加圧する。分光セルのウインドウを一定距離のUVAランプに合わせ、サンプル照射を行う。処理後、血清を連続希釈し、大腸菌と混合し、寒天上で培養する。37℃で一晩中培養した後、プレート上のプラークを計数し、加圧により、及び加圧と照射により、ウイルスの力価がかなり減少していることがわかった。サンプル#1及び#2に対し、サンプル#3において観察されたウイルスの不活性化の程度は非常に大きいことが見出された。より濃度の低いソラレンを用いて実験を繰り返すと、圧力とUVA光の組み合わせにより、UVAのみで得られる率と同様の不活性化率が得られるが、治療用蛋白質の損傷はより小さいことがわかった。同様の実験により、サンプルが加圧される場合、必要な光の強度あるいは照射時間は少なくなることが明らかとなった。実験により、酸素と共に作用する核酸結合染料(例えば、メチレンブルー)では、ソラレンにより得られた結果と同様の結果が得られることも示された。
【0115】
実施例10:ウイルスの圧力強化化学不活性化
ウシ血清サンプルに、10プラーク形成単位(pfu)/mlのラムダバクテリオファージを接種する。サンプルを4つのアリコットに分割する。サンプルについて以下のように処理する。
【0116】
#1 処理なし。
【0117】
#2 0.1mMのヨウ素を添加し10分間保温する。
【0118】
#3 0.1mMのヨウ素を添加し30,000psiまで10分間加圧する。
【0119】
#4 30,000psiで10分間加圧する。
【0120】
サンプルは全て、実験を通して、25℃の温度で維持する。処理後、反応を還元剤により停止させ、血清は連続希釈し、大腸菌と混合し、寒天上で培養する。37℃で一晩中培養した後、プレート上のプラークを計数し、加圧により、及び加圧と化学処理により、ウイルスの力価がかなり減少していることがわかった。(サンプル#1と比較した)サンプル#3のウイルス力価の減少は、サンプル#2とサンプル#4で観察された減少の合計に比べ、非常に大きいことがわかった。これにより圧力とヨウ素の相乗効果が実証された。化学添加物の濃度をより低くして同様の実験を実行すると、加圧すると、より低い濃度のヨウ素により、あるいはより短い保温時間により、同様のウイルスの不活性化が可能となることがわかった。
【0121】
実施例11:凝固時間に関する圧力サイクル処理の効果
ヒト血漿サンプル(BBI)に対し、40,000psiでの2分の圧力サイクル及び−70℃から20℃の範囲の温度による処理を10回行い、使用するまで−70℃で凍結保存した。分析は、100μlのキュベットに、60μlの血漿と、60μlのAPTT試薬(シグマ)(37℃)と、60μlの25mMのCaCl(37℃)とを添加することにより開始した。550nmで吸光度を測定し、凝固時間を0.8の光学的密度(極大の約1/2)までの時間として記録した。より低い温度を用いると、凝固活性において著しい向上が得られることがわかった。
【0122】
実施例12:クリオバリック処理におけるIgG、IgM、HSA、fXの完全性
IgG及びIgM.サイトメガロウイルス(CMV)抗体力価に対するヒト血漿対照標準の市販の製剤(アクルン(ACCURUN、登録商標)、ボストンバイオメディカ(Boston Biomedica)社)について、圧力サイクリング技術を用いて処理し、IgG及びIgMのCMV抗原結合能力をアボット及びウォルポウル(Walpole)CMV−抗体酵素免疫学的アッセイを用いて測定した。このアッセイは、熱不活性化CMV抗原でコートしたポリスチレンビーズを用いてサンプルを培養する工程を含む。その後、ビーズを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識抗−ヒト免疫グロブリンと反応させる。再び、ビーズを洗浄し、結合した抗−CMV抗体を暗示する速度で発色する発色基質と共に培養する。アクルン材料の希釈は、アッセイが線形であることを示し、活性化が減少すれば検出されることを示唆する。アクルンの260μlサンプルについては−5℃で平衡をとり、高圧で1分、大気圧で1分の処理を含む10の圧力サイクルを用いて処理する。約10,000から約50,000psiまでの最大圧力を使用した。サンプルを取り出し、抗−CMVレベルを測定した。約50,000psiまでの圧力では、IgGあるいはIgM活性において有意な損失は観察されなかった。
【0123】
HSA.ヒト血清アルブミン(HSA)完全性は、ダンシルサルコシンの蛍光の強化能力により決定した。このアッセイは、蛋白質のドメインIIIにおける変化及び凝集の全体的なレベルに感応する。ミクロコン−30スピンフィルタを用いて濾過しウシアルブミン及びそれより大きな蛋白質を除去したウシ血清に、40mg/mlのHSAを添加した。サンプルについて、−5℃で、約34,000psiの最大圧を15分間、パルセイション頻度を変えて適用する圧力パルセイションを実行した。蛋白質活性は、PBS中の過剰のダンシルサルコシン溶液を10μl容積ずつ3mlまで連続添加することにより、測定した。結果から、この圧力パルセイションは蛋白質の完全性にとって有利であることが示唆された。
【0124】
第X因子.酵素血液因子に対するクリオバリックプロセスの効果の試験を行うために、いくつかの圧力で処理したヒトACD血漿に対し色素産性アッセイを行った。使用した条件はIgG実験と同一とした:−5℃、約19,000psiから約50,000psiまでの2分サイクル10回。80%を超える第X因子の活性が維持された。
【0125】
<結 論>
このデータから、圧力サイクルにより、ノンエンべロープウイルスの力価において15分で10を超える減少が可能となること、しかしながら、同時に、IgG、IgM、第X因子、HSAの活性は許容レベルで維持することができることが実証された。圧力パルセイションは蛋白質活性の保持を向上させると考えられる。
【0126】
実施例13:非常に低い温度でのヒト血漿中のブタパーボウイルス(PPV)の 圧力サイクル不活性化
ブタパーボウイルス(ATCC)は、非常に多数の0.1の感染で感染させ、6日間培養することによりブタの睾丸(PT)中で増殖させる。細胞を3回の凍結−解凍サイクルにより溶離させ、その溶液から遠心分離により不純物を除去する。得られたPPVの力価は約1×1010感染量/mlである。
【0127】
PPV株を1:100でヒト血漿中で希釈させ、260μl容積中に懸濁させ、2つの可撓性ポリエチレン微小遠心分離管(コウルパーマー(Cole Parmer))中に入れる。1つの管は「対照標準」とし残りの管を「実験用」とする。ダウコーニングシリコーン高真空グリースを用いて管を密閉し、パラフィルム(PARAFILM,登録商標)(アメリカンナショナルカン、メナシャ、ウィスコンシン州)で包む。
【0128】
高圧反応チャンバに70%エタノールとトレーサーとしての0.2%ロダミンBを満たし、−40℃まで冷却する。試験管を高圧反応チャンバ内に6分間置き温度平衡をとり、圧力を5秒にわたって上昇させ80,000psiとする。圧力を80,000psiで10分間保持し、その後、2秒にわたり減少させる。その後、5分間、温度の平衡をとる。このプロセスを合計20サイクル繰り返す。対照サンプルは同じ時間、−10℃で培養する。
【0129】
対照及び実験サンプルのPPV力価は、ハンクス緩衝生理食塩水溶液(HBSS)中で、半対数連続希釈を実行することにより決定する。各希釈物は、50%の融合性PT細胞を含む96ウエル培養プレート中の6ウエルに接種するために使用する。
【0130】
7.5%の胎児ウシ血清を追加したMEM倍地で細胞を5日間培養した後、80%アセトン中で20分間プレートを固定し、各ウエルを50μlのフルオレセイン−複合抗PPV抗体(VMRD社、プルマン ワシントン州)を用いて37℃で40分間培養し、水で3度洗浄し、エピフルオレセンス顕微鏡で観察することにより、ウイルスの存在を決定する。TCID50は、スピアマン−カーバー法により決定する。実験サンプルには検出可能なウイルスは存在せず、対照サンプルは10感染量/mlの力価を有することが見出された。凝固時間分析は、一段階活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定により実行し、凝固時間は対照、実験サンプルの両方において約30秒であることがわかった。これにより、血漿は血液製剤及び輸血の精製に適していることが示唆される。
【0131】
実施例14:細菌及び真菌の圧力サイクル不活性化
様々な種の細菌について、圧力サイクルプロトコルを実行し、不活性化率を決定した。各々の種の250μl容積をコウルパーマーポリエチレン管中に等分した。その管を−70℃で凍結させ、高真空グリースの層を凍結液層の一番上に加えた。その後、パラフィルム(登録商標、アメリカンナショナルカン、メナシャ、ウィスコンシン州)の層で、各管を包んだ。
【0132】
以下の細菌種について試験した:バシラス・セレウスATCC14579(初期力価:6.6×10cfu/ml)、エンテロコッカス・ファエシウムATCC49032(3.3×10)、2つのサンプル大腸菌ATCC43894(8.6×10、5.4×10)、シュードモナス・アエルギノーザATCC14502(9.5×10)、黄色ブドウ球菌ATCC9144(9.9×10)。
【0133】
2分の圧力サイクル(すなわち、大気圧で1分、50,000psiまでで1分)を10回、各細菌培養物に対し−10℃で実行した。各種の一定のサンプルについてはまた、約29,000と約50,000psiの両方の静圧を10分間適用した。各サンプルは加圧前に、5分間チャンバ温度と平衡をとった。チャンバは50%エチレングリコール水で満たし、1%ロダミンを追加し、チャンバ液が加圧中にサンプル内に漏れて入らないか確認した。圧力サイクル手順後、サンプルは分析するまで−70℃で放置した。
【0134】
サンプルについて、加圧プロセス後の力価(cfu/ml)を決定するためにアッセイを行った。各サンプルの1アリコットから連続希釈を行った。各希釈物を10mlの固体寒天上に置き、37℃で一晩中培養した。各プレートの力価を計数し、不活性化率(最終力価)を決定した。初期力価を最終力価で割って、微生物数の減少を決定した。
【0135】
調べた全てのグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌は不活性化された。バシラス・セレウスは5対数でエンテロコッカス・ファエシウムは6対数、大腸菌は7対数、シュードモナス・アエルギノーザは8対数、黄色ブドウ球菌は6対数、カンジダ・アルビカンスは5対数で不活性化された。全ての細菌について、圧力パルセイションは静圧に比べ効果的であった。最も著しい差異は、エンテロコッカスを用いた場合に見られた。このエンテロコッカスの不活性化は圧力サイクルが無いと1対数未満であるが、50,000psiでの圧力サイクルを用いると約6対数で不活性化された。シュードモナスは圧力サイクルを用いると約6対数で不活性化され、約29,000psiの静圧を用いると不活性化は2.5対数となった。圧力サイクルを用いた50,000psiでのシュードモナス不活性化率は8対数を超えたが、静圧では6対数のままであった。ブドウ球菌サンプルは29,000psi及び50,000psiでの圧力サイクルを用いると、それぞれ、2対数、6対数で不活性化されたが、静圧下で同じ条件を用いた場合の不活性化はそれぞれ1及び3対数に過ぎなかった。29,000psiでの低力価大腸菌の不活性化率の差異は、サイクルを用いると67倍、静圧を用いると6.4倍であった。50,000psiでの不活性化率はサイクルを用いると4対数に増加したが、静圧を用いた場合の増加は2対数にすぎなかった。高力価大腸菌では、29,000psi及び50,000psiの両方において、圧力サイクルを用いると、静圧に比べ、不活性化が4対数増加した。
【0136】
このように、圧力パルセイションにより、試験を行った最近の全ての種において、静圧の場合に比べ不活性化が向上した。この圧力サイクルの利点は、全ての種について、29,000psiよりも50,000psiを用いた場合により明白となった。
【0137】
実施例15:エンベロープウイルスの不活性化
エンベロープウイルスに対するクリオバリック処理の効力を試験するために、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)及び単純疱疹ウイルス(HSV−1)について処理を行い、その感染力を測定した。HIV実験では、クリオバリック処理は、−10℃において2分の圧力サイクルを5回とした。各サイクルは、高圧で1分、大気圧で1分とした。圧力を50,000psiまで上昇させると、HIV感染において約6対数の減少が達成できた。単純疱疹1もまた、この圧力において6対数で不活性化された。この処理では、例えば、実施例21で示されるように、ほとんどの治療蛋白質の完全性及び活性が保持されている。
【0138】
実施例16:MS2の不活性化:静圧条件
MS2−感染血漿サンプルを−26℃で加圧して80,000psiとし、その後、5、10、15、30、及び60分間、温度を−14℃まで上昇させた。各実験に対し2つの血漿サンプルの処理を行った。1つは不活性化研究用にファージを用い、もう1つは因子分析のためにファージ無しのものである。
【0139】
クリオバリック処理後、MS2感染力について以下のプロトコルに従い分析した。宿主大腸菌を、0.2%マルトースと10mMの硫酸マグネシウムを追加したMS2ブロス(10g/lのトリプトンと42mMの塩化ナトリウムとを含む)中で一晩中飽和するまで増殖させた。必要に応じて、処理したファージの希釈後、100μlのファージサンプルを100μlの大腸菌に添加し、23℃で20分間培養し、その後37℃で10分間培養した。ファージ−大腸菌混合物を2.5mlの溶融トップ寒天(10g/lのトリプトン、42mMの塩化ナトリウム、7g/lの寒天、47℃)に添加し、渦攪拌し、直ちに、10g/lのトリプトン、42mMの塩化ナトリウム、10g/lの寒天を含む90mmのペトリ皿上に広げた。37℃で約16時間培養した後、プラークを計数した。
【0140】
第VIII因子分析に対するサンプルはアッセイまで−70℃で保存した。第VIII因子アッセイは、アメリカ診断色素産性分析キット(グリーンウィッチ(Greenwich)、コネチカット州)を用いて実行した。
【0141】
結果は以下の通りであった。「不活性化」は未処理サンプルに対する力価(pfu/ml)を各所定のサンプルに対する力価で割ったものであり、「fVIII」は圧力処理後、各サンプルについて残っている第VIII因子活性の割合(すなわち、未処理サンプルに対する割合)を示したものである。
【0142】
【表3】
Figure 0004556067
これらのデータから、第VIII因子の損失については約1次の速度論が観察された。一方、MS2不活性化は培養時間とは比較的無関係であった。このことより、ウイルスの不活性化は−26℃では80,000psiまでの最初のパルスで起きたことが示唆される。
【0143】
実施例17:MS2の不活性化:温度最適化
MS2不活性化のための最適温度を決定する実験では、各サンプルについて、下記のデータ表に示した対応する開始温度と5分間平衡をとること以外は実施例16で示した条件を使用した。サンプルに約80,000psiまで2分間加圧し、その後、減圧し、5分間温度平衡をとった。加圧サイクルをもう2回繰り返した。結果は以下の通りであった。
【0144】
【表4】
Figure 0004556067
これらのデータにより、fVIIIの50%の回復が得られる条件(−20℃)下における、MS2の重大な(すなわち、3対数)不活性化が実証された。温度が高いほど、MS2の不活性化は向上したが、fVIIIの回復が減少した。
【0145】
実施例18:MS2の不活性化:圧力最適化
MS2不活性化のための最適圧力を決定する実験では、各サンプルについて、5分間−17℃と平衡をとり、下記のように、60,000psiと80,000psiとの間まで加圧すること以外は実施例16で示した条件を使用した。指示した圧力を60秒間保持し、その後、減圧し、5分間温度平衡をとった。加圧時間(約3秒)と減圧時間(約1秒)は報告した加圧時間に含まない。結果は以下の通りであった。
【0146】
【表5】
Figure 0004556067
データから、これらの温度及びタイミング条件下での最適圧力は約75,000psiであることが示唆された。
【0147】
実施例19:MS2の不活性化:パルセイションタイミング最適化
各パルスに対し、高圧での時間の関数としてのMS2不活性化の相対率及びfVIII活性の損失を測定するために、実施例18と同様の条件を使用した。各サンプルについて、5分間−20℃と平衡をとった。サンプルについて、約80,000psiまで加圧し、下記のように、その圧力で15から120秒の間維持し、その後、減圧し、5分間温度平衡をとった。加圧サイクルをもう2回繰り返した。加圧に必要な時間(すなわち、約3秒)と減圧に必要な時間(すなわち、約1秒)は報告した加圧時間には含まれない。第2ラウンドの実験を10から120秒の圧力パルス持続時間を用いて行った。2つの実験の結果は以下の通りであった。
【0148】
【表6】
Figure 0004556067
これらのデータから、圧力パルス持続時間が10秒という短い時間まで減少すると、fVIIIの保持には正の効果を与えるが、MS2不活性化レベルにはほとんどあるいはまったく効果がない。
【0149】
実施例20:MS2の不活性化:pH効果
3mlのヒト血漿に、LB中の50μlのMS2株を添加した。10Xの3−[シクロ−ヘキシルアミノ]−1−プロパンスルホン酸(CAPS)のストック溶液を調製し、添加血漿を用いて1:10に希釈した。このサンプルと血漿だけの対照サンプルとを−70℃で凍結させ、シリコングリース及びパラフィルム(登録商標)を用いて密閉した。処理前に、各サンプルを反応チャンバ内に4分間置き、実験温度と平衡をとった。
【0150】
100μlの各サンプルを連続希釈のために取り出した。ファージは微小遠心分離管内で、ラムダブロス中で、100倍に連続希釈した。適当に混合されるように、管の渦攪拌を行い、その後、さらに希釈した。100μlの各希釈物を対数期のMS2−宿主大腸菌100μlと共に統合し、室温で10分間培養し、37℃で20分間培養した。3mlのラムダトップ寒天(47〜50℃)を添加し、その後、管の渦攪拌を簡単に行い、ラムダ寒天プレート上に注いだ。サンプルを60,000psiで10分間加圧し、その後分析した。
【0151】
結果は以下の通りであった。
【0152】
【表7】
Figure 0004556067
データから、緩衝液を添加してpHを増加させると、中性溶液での処理後では不活性化が起こらない圧力で、ウイルスの不活性化を起こすことが可能となることが示唆された。
【0153】
実施例21:臨床試料中の病原体の不活性化
ヒト血漿サンプルについて、4分間にわたり、−10℃と平衡をとった。圧力を1分間20,000psiの高圧まで上昇させた。圧力を大気圧まで減少させ、1分間平衡をとった。このプロセスをもう9回繰り返した。同様の処理を30,000、40,000、50,000及び60,000psiの高圧を用いて実行した。対照サンプルは同等の時間の間(約20分間)、−10℃に維持し、圧力は上昇させなかった。
【0154】
処理後、臨床分析を実行し、様々な分析物の活性を決定した。以下の分析物はどの圧力サイクル処理の影響も受けなかった。
【0155】
尿酸
カルシウム
リン
グルコース
クレアチニン
尿窒素
Na、K、Cl、Mg、重炭酸塩
トリグリセリドGB
総ビリルビン
総蛋白質
アルブミン
コレステロール
リパーゼ
アニオンギャップ
BUN/クレアチニン比
アルブミン/グロブリン比
アルカリ性ホスファターゼ
以下の多量体酵素の活性は、30,000psi以上の圧力に暴露したサンプルでは、減少した。
【0156】
クレアチンキナーゼ(CK)
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
肝臓アルコールデヒドロゲナーゼ(LD)
ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)
例えば、肝不全の患者において起こるこれらの酵素の通常レベルと上昇したレベルとの差異を測定するためには、十分な量の活性が残っていたが、多量体酵素の活性を減少させない滅菌法が望ましい。
【0157】
このため、以下の実験を実行した。ヒト血漿サンプルについて4分間−10℃と平衡をとり、圧力を約5秒にわたって80,000psiまで上昇させ、一定期間保持した。その後、圧力を約2秒にかけて大気圧まで減少させた。このプロセスをもう2回繰り返した。試験した高圧持続時間は1、5、10、30、60、120、240秒であった。その後、血漿サンプルについて酵素活性の試験を行った。
【0158】
試験した2つの単量体酵素、リパーゼとアミラーゼの活性はどの圧力持続時間でも影響されなかった。
【0159】
30秒以上の持続時間を用いると、LD、CK、AST及びALTの活性はほとんど完全に排除され、一方、GGT及びアルカリ性ホスファターゼ(ALK)の活性は約2分の1だけ減少した。持続時間を5秒とすると、酵素活性のすべてが向上した。持続時間が1秒では、ALT、GGT及びALKはほとんどの完全な活性を有したが、LD、AST及びCKの活性は未処理対照標準の活性の40%から70%となった。
【0160】
短い持続時間でも、病原体の不活性化のレベルは、例えば、前記実施例においては、許容レベルであった。
【0161】
<他の実施の形態>
以上、この発明について詳細な説明を行ってきたが、これらの記述は、添付のクレームの範囲により規定される発明の範囲を説明するためのものであり、限定するものではないことを理解すべきである。他の観点、利点及び変更も以下のクレームの範囲内である。

Claims (57)

  1. 初期圧力及び0℃未満の初期温度のワクチンを提供する工程と、
    圧力を5,000から150,000psiまでの範囲の高圧に上昇させて、ワクチン中の微生物を不活性化する工程と、
    圧力を降下させて減圧とし、これにより滅菌ワクチンを提供する工程と、
    を含むことを特徴とする微生物を含むワクチンの滅菌方法。
  2. 前記ワクチンはさらに蛋白質を含み、前記高圧は不可逆的に蛋白質を変性させるには不十分なものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記高圧はワクチン中の微生物の少なくとも10%を不活性化するのに十分なものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記減圧は1atmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 前記初期温度は−20℃から−5℃の間であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記高圧は5,000psiから95,000psiまでの範囲であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 前記高圧は30,000から75,000psiまでの範囲であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  8. 前記高圧は95,000から150,000psiまでの範囲であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. さらに、前記高圧と前記減圧との間の圧力を繰り返しサイクルさせる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  10. 病原細胞の懸濁液を得る工程と、
    請求項9の方法により懸濁液を滅菌する工程と、
    滅菌した懸濁液にアジュバントを添加しワクチンを製造する工程と、
    を含むことを特徴とする病原体に対するワクチンの製造方法。
  11. さらに、滅菌工程後に、懸濁液から、その懸濁液中に存在する可能性のあるどの毒素も実質的に全て除去する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
  12. 前記初期温度は−40℃と0℃との間であることを特徴とする請求項9記載の方法。
  13. さらに、圧力を上昇させる各工程前に、ワクチンの温度が平衡に達するのに十分な時間を提供する工程を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
  14. さらに、前記ワクチンを冷却する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  15. 前記冷却工程は圧力上昇工程の前に実行されることを特徴とする請求項14記載の方法。
  16. 前記冷却工程は、圧力上昇工程後であって圧力減少工程の前に実行されることを特徴とする請求項14記載の方法。
  17. 前記ワクチンは−40℃から0℃までの範囲の温度まで冷却されることを特徴とする請求項14記載の方法。
  18. 前記ワクチンは−20℃から−5℃までの範囲の温度まで冷却されることを特徴とする請求項14記載の方法。
  19. さらに、圧力減少工程前に、ワクチン加温する工程を含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
  20. さらに、圧力減少工程後に、ワクチン加温する工程を含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
  21. さらに、圧力上昇工程前に、ワクチンのpHを10を超える値に調整する工程を含むことを特徴とする請求項1記載方法。
  22. さらに、圧力上昇工程前に、ワクチンのpHを4未満の値に調整する工程を含むことを特徴とする請求項1記載方法。
  23. 微生物は、細菌、ウイルス、真菌、原生生物、胞子形成体、原生動物寄生体、蠕虫寄生体、マラリア誘発生物、ジアルディア、ウイルス感染細胞からなるグループの1以上の要素であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  24. 滅菌前に、ワクチンに相転移触媒を添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
  25. 滅菌前に、ワクチンに蛋白質安定化剤を添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
  26. 前記蛋白質安定化剤は、糖、グリセロール、親水性ポリマー、シクロデキストリン、カプリレート、アセチルトリプトファノエート、ポリエチレングリコール、抗酸化剤、及び蛋白質特異配位子からなるグループから選択されることを特徴とする請求項25記載の方法。
  27. 滅菌前に、前記ワクチンに核酸−結合化合物を添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
  28. 核酸−結合化合物は光増感剤であることを特徴とする請求項27記載の方法。
  29. 光増感剤はソラレンであることを特徴とする請求項28記載の方法。
  30. 滅菌するワクチンは、最終的なパッケージングで提供され、そのパッケージングは破壊無しで圧力が伝達されるように適合されていることを特徴とする請求項1記載の方法。
  31. 前記パッケージングは可撓性プラスチック中に密閉されることを特徴とする請求項30記載の方法。
  32. 前記パッケージングはシリンジであり、圧力はプランジャーを介して伝達されることを特徴とする請求項30記載の方法。
  33. (a)初期圧力及び0℃未満の初期温度のワクチンを提供する工程と、
    (b)そのワクチンを繰り返される圧力サイクルに暴露する工程と、
    を含むワクチン中のウイルスを不活性化するための方法において、各サイクルが、
    (i)圧力を5,000から150,000psiまでの範囲の高圧まで上昇させる工程と、
    (ii)5,000から150,000psiまでの範囲の高圧を所定の期間teの間維持する工程と、
    (iii)圧力を減圧まで減少させる工程と、
    (iv)ワクチンを減圧で一定の期間tlの間維持する工程と、
    を含み、
    5,000から150,000psiまでの範囲の高圧をteの時間維持すると各サイクルにおいてワクチン中のウイルスが不活性化されることを特徴とする方法。
  34. 前記ワクチンは蛋白質を含み、
    前記高圧は、その高圧をteより実施的に長い時間維持すると実質的に全ての蛋白質が不可逆的に変性するには十分であるが、teの期間あるいはそれより短い期間その高圧を維持しても蛋白質の不可逆的な変性が起こるには不十分なものであることを特徴とする請求項33記載の方法。
  35. 前記高圧は、その高圧をteの10倍よりも長い期間維持すると実質的に全ての蛋白質が変性するのに十分なものであることを特徴とする請求項34記載の方法。
  36. 前記高圧は、その高圧をteの3倍よりも長い期間維持すると実質的に全ての蛋白質が変性するのに十分なものであることを特徴とする請求項34記載の方法。
  37. 前記蛋白質は1以上の血液凝固因子を含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
  38. 前記蛋白質は1以上の免疫グロブリンを含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
  39. 前記蛋白質は1以上の単量体蛋白質を含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
  40. 前記蛋白質は1以上の多量体蛋白質を含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
  41. 前記ワクチンは、血漿と、血漿から誘導される治療及び診断生成物、生物学的流体、医療用流体、薬剤、リサーチ溶液、生組織、及び製剤からなるグループから選択されることを特徴とする請求項34記載の方法。
  42. 前記ウイルスは無包ウイルスを含むことを特徴とする請求項33記載の方法。
  43. 前記ウイルスは、ヒトパーボウイルスB19、ブタパーボウイルス、ウシパーボウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、単純疱疹ウイルス、A型肝炎ウイルス、輸血伝達ウイルスからなるグループから選択されることを特徴とする請求項33記載の方法。
  44. 前記高圧は10,000psiから120,000psiであることを特徴とする請求項33記載の方法。
  45. 前記高圧は40,000psiから100,000psiであることを特徴とする請求項33記載の方法。
  46. 前記高圧は70,000psiから90,000psiであることを特徴とする請求項33記載の方法。
  47. 前記減圧は初期圧力と高圧との間の中間値であることを特徴とする請求項33記載の方法。
  48. 前記時間teは0.5から300秒であることを特徴とする請求項33記載の方法。
  49. 前記時間teは10から30秒であることを特徴とする請求項48記載の方法。
  50. 前記ワクチンは2から100の間のサイクルに暴露されることを特徴とする請求項33記載の方法。
  51. 前記ワクチンは少なくとも3サイクルに暴露されることを特徴とする請求項33記載の方法。
  52. 前記ワクチンは少なくとも10サイクルに暴露されることを特徴とする請求項33記載の方法。
  53. 前記ワクチンは少なくとも100サイクルに暴露されることを特徴とする請求項33記載の方法。
  54. さらに、暴露工程前に、ワクチンを温度Teまで冷却する工程を含むことを特徴とする請求項33記載の方法。
  55. 前記温度Teは−40℃から10℃であることを特徴とする請求項54記載の方法。
  56. 前記温度Teは−25℃から−10℃であることを特徴とする請求項55記載の方法。
  57. (a)ウイルスの懸濁液を獲得する工程と、
    (b)請求項33記載の方法によりウイルスを不活性化する工程と、
    (c)不活性化されたウイルスを含む懸濁液にアジュバントを添加してワクチンを製造する工程と、
    を含むことを特徴とするワクチン製造方法。
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