JP4553235B2 - 日射熱遮断ガラス及びそれを用いた日射熱遮断方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ガラス基板に常温熱放射の波長域における熱放射が小さい被膜を設けた新規な日射熱遮断ガラスに関する。詳しくは、本発明は、日射により加熱されて温度上昇したガラス面からの熱放射(常温熱放射の波長域における熱放射)を遮断することにより、日射熱放射を遮断することができる日射熱遮断ガラス、及びそれを用いた日射熱遮断方法に関する。
背景技術
一般に、建物や車両などのガラス窓を有する閉鎖空間をもつものにおいては、ガラス面が日射により加熱されて高温となり、そのガラスに吸収された日射熱が室内や車内などの閉鎖空間内部に放射されて内部の温度が上昇し、特に夏期等にエアコンの効きが悪くなるなどの様々な問題を引き起こす場合がある。
このような日射熱の放射を遮断するために、従来より、各種の無機質又は有機質の物質を用いた日射を吸収する熱線吸収ガラスや日射を反射する熱線反射ガラスなどが開発されている。しかし、これらはガラスを透過して直接閉鎖空間内に入射する日射熱を遮断させるために、日射熱そのものを吸収する有機物や無機物を用いたり、日射熱を反射する金属や無機物などを用いたりするものである。
このような日射熱を直接吸収したり反射したりする熱線吸収ガラスや熱線反射ガラスにおいて、その日射熱遮断効果を高めるには、日射熱を吸収したり反射したりする物質を増加させる方法があるが、コストが高くなる、あるいは可視光線帯域の透明度が大きく低下するため内部が暗くなる、などの実用面での不利を伴う。
また、日射熱を吸収するガラスは、ガラスに吸収された熱が、時間をおいて、再度内部に熱放射されるので、閉鎖空間内部の熱負荷の低減は大きく見込めないという欠点があった。
一方、日射熱を反射するガラスは、常温熱放射の波長域の波長をほとんど吸収しないので再放射の原因とはならないが、これらも同様に、赤外線を反射させる金属やセラッミクスなどを用いているので、可視光線まで反射して中が暗くなる欠点があった。
これらのことを解決するために金属層を中央に配置して、その両側に金属カバー層を形成することにより屈折率を調整し可視光線透過率を70%程度まで上げて、ガラスに貼着することにより赤外線を反射させる多層系の保温材(特開昭59−103749)や、放射を低下させる低放射膜としてSnO2:F膜を用いて、色ムラを低減させるためにSnO2膜とSiO2膜をガラス基板との中間に積層した低放射ガラスと該低放射ガラスを使用したガラス物品(特開2001−2449)などがあるが、可視光線帯域の透明度はいまだ充分とはいえない。
また、これらのガラスやフィルムを作成するには、金属やセラミックスをガラスにコートさせるために、真空蒸着やスパッタリングなどの装置を用いなければならず、経済的にも大きく不利となる。
これらのことから、可視光線帯域における透明度が高く、且つ日射による熱負荷を低減できる安価な日射熱遮断ガラスが待たれていた。
発明の開示
上述したように、今日市場では、ガラス本来の可視光線の透過を損なうことなく、夏期等の日射による熱負荷を低減できるガラスを安価に提供することが望まれていた。特に、可視光帯域における透明度が必要な車両においては大きな要望があった。
しかし、上記の従来技術は、日射による熱負荷を低減させるために可視光線の透過を犠牲にしなければならず、今日の市場ニーズに合致した可視光線帯域の透明度が高く、安価な窓用ガラスを得ることはできていない。
本発明は、このような問題を解決して、ガラス本来の可視光線の透明度を損なうことなく、日射による熱負荷を低減することができる安価な日射熱遮断ガラスを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ガラス基板の片面に、可視光線透過率が大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が小さくなるように被膜を形成した複合ガラスを用い、被膜面を閉鎖空間すなわち建物や車両などの内部へ向けて配置することにより、日射を吸収して高温となったガラス基板から閉鎖空間内部への、常温熱放射の波長域における熱放射を有効に遮断し、閉鎖空間内部の熱負荷が低減できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)に示す日射熱遮断ガラス及びそれを用いた日射熱遮断方法に関する。
(1) ガラス基板の片面に、可視光線透過率が前記ガラス基板の可視光線透過率より大きく、且つ日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共に前記ガラス基板の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率より小さい被膜を設けたことを特徴とする、日射熱遮断ガラス。
(2) 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%であることを特徴とする、(1)記載の日射熱遮断ガラス。
(3) 前記放射熱吸収率における常温熱放射の波長域が5〜50μmである、(1)又は(2)記載の日射熱遮断ガラス。
(4) 前記被膜を形成する材料が、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びスチレン樹脂からなる群から選択されるプラスチックスである、(1)〜(3)のいずれかに記載の日射熱遮断ガラス。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の日射熱遮断ガラスを、前記ガラス基板面が日射熱の照射される側に向くように配置して、前記被膜面側からの熱放射を遮断することを特徴とする、日射熱遮断方法。
ガラスは、太陽光線から照射される日射熱等の照射熱を吸収する。ここで、太陽光線の波長範囲は0.3μm〜3.0μmであるが、通常、一般的な透明板ガラスにおいても2.5μm以上の赤外線帯域の吸収ばかりでなく、2.5μm以下の可視光線、近赤外線も吸収する。そして、その日射熱の吸収によりガラスの温度は上昇し、ガラスに吸収された熱は、対流、放射により室内側または外気へ放熱される。
ここで、室内や車内などの閉鎖された空間内部の空気の対流は小さいので、対流熱伝達は比較的小さい。一方、放射による熱伝達は、ガラスと中の物体や空気との間の直接の熱伝達であり、空気の対流にはほとんど影響されない。つまり、高温となったガラスから空間内部に入射する熱は、閉鎖空間内においては、放射による熱伝達の割合が大きくなる。
また、ガラスに吸収される日射熱は、ガラスの厚さが厚くなるほど大きくなり3mmガラスにおいても約6%以上になる。そして、ガラスからの熱放射は、閉鎖空間内においては大きな熱負荷となる。したがって、ガラスに吸収された日射熱が再放射により閉鎖空間内に入射するのを阻止して、外気に多く放射させれば、閉鎖空間内の熱負荷の低減を図ることができると考えられる。
また、太陽光線から照射される波長の範囲は0.3μm〜3.0μmであるが、日射熱を吸収して温度が高くなったガラスから放射される波長の範囲は5μm〜50μmの常温熱放射の波長域である。したがって、ガラスに吸収された熱が放射により閉鎖空間内部に入射することを阻止するには、少なくとも5μm〜50μmの波長域の熱放射を遮断すればよい。
固体から空気中に伝達される熱は、固体中を伝導で伝達し、そして、固体表面から対流、放射により空気中へ伝達される。したがって、ガラスからの熱放射を遮断するには、ガラス表面の放射率を小さくすれば良い。すなわち、ガラス表面の常温熱放射の波長域の吸収率を小さくすれば良い。つまり、常温熱放射の波長域5μm〜50μmにおいて吸収率の小さい物体からなる被膜を、ガラスの表面に形成すればよい。そして、かかる被膜を形成した面を閉鎖空間の内側に向けて配置することにより、ガラスと中の物体との間の放射熱伝達量は減少する。
一方、ガラス表面に形成された被膜自体の日射熱吸収率がガラスより大きくなると、ガラスを透過した日射熱がガラスだけの場合より被膜に多く吸収され、その熱が外気側に放熱されるときガラスが放熱を阻害するため被膜のに吸収された熱のほとんどは閉鎖空間の内側に放出される。すなわち、被膜の日射熱吸収率がガラスより大きくなると、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がガラスより小さくても閉鎖空間内の温度が高くなることとなる。よって、被膜の放射の波長域における放射熱吸収率のみならず、日射熱吸収率も、ガラスから閉鎖空間内部への放射熱伝達量に関係していることがわかる。
一般に、有機物は無機物と異なり可視光線帯域および赤外線帯域の吸収、反射が小さく透過が大きい。したがって、赤外線帯域の吸収、反射が小さく透過が大きいプラスチックスからなる被膜をガラスの片面に形成して、その被膜を閉鎖空間の内側に向けて配置すれば、ガラスの可視光線透過率をほとんど低下させずに空間内部の熱負荷を低減できると考え、実験により被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射における波長域の吸収率の関連を見出し、本発明を完成したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.日射熱遮断ガラス
本発明の日射熱遮断ガラスは、ガラス基板の片面に特定の被膜を設けたものである。
(1)ガラス基板
本発明でガラス基板に用いられるガラスの種類には、特に制限はなく、透明板ガラスのみならず、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラスなどであってもよい。日射を受けて吸収した日射熱を放射しうる性質を有するものであれば、いずれも本発明の効果を十分発揮することができる。
熱線吸収ガラス、熱線反射ガラスなどは、さらに片面に本発明の前記被膜を形成することにより、直接入射する日射を阻止するとともに、日射を吸収して高温となったガラスからの熱放射も阻止できるので、本発明の熱負荷の低減効果がさらに向上する。
ガラス基板の厚さについても特に制限はないが、好ましくは0.1〜20mm、より好ましくは1〜20mmである。ガラスの素材が同じでも、厚さが厚くなればなるほど日射熱吸収率は増加してガラスからの熱放射が増加するので、ガラスからの熱放射を遮断する効果は大きくなる。
(2)被膜
本発明でガラス基板の片面に設けられる被膜は、可視光線透過率が前記ガラス基板のそれより大きく、且つ日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共にガラス基板のそれより小さいものである。
▲1▼可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率
ここで、放射熱伝達量と、物質の可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率との関係について以下に述べる。
<放射熱伝達量と物体の放射率との関係>
放射熱伝達における放射熱Qは、次の式で表わされ、これは真空中においても伝達可能である。
Q=σ・ε・(T/100)4
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、εは物体の放射率、Tは物体の絶対温度である。この式から明らかなように、放射率を小さくすればその物体から放射される熱量は少なくなる。
また、物体表面から低温帯域の流体等の物体に伝達される放射熱伝達(放射伝熱)による熱伝達量Q2は、式で表すと次のようになる。
Q2=σ×f(ε)×[(Tr/100)4−(T0/100)4]
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、f(ε)は物体間の放射伝熱の放射係数、Trは物体の表面温度(K)、T0は低温帯域の物体の表面温度(K)である。
この式から明らかなように、物体表面間の放射伝熱の放射係数を小さくすれば、その物体間の放射熱伝達量は減少する。
そして、放射伝熱係数は次の式で表される。
f(ε)=1/(1/ε1)+(1/ε2)−1
ただし、ε1=高温帯域側の物質の放射率、ε2=低温帯域側の物質の放射率。
したがって、物体間の一方の放射率を小さくすれば、放射伝熱係数f(ε)は小さくなり放射熱伝達量は減少する。
すなわち、ガラスの両側に同じ物体があるとガラス表面からの放射による熱伝達は同じになる。したがって、ガラスの片面に放射率の小さい物質からなる被膜を形成すると、被膜を形成した面の放射率は小さくなるので、被膜を形成した面と物体間の放射伝熱係数も小さくなり、被膜が形成されていないガラス表面からの放射熱伝達量に対して減少する。
つまり、閉鎖された建物や車両などに設けられた窓ガラスの室内側表面に放射率の小さい物質からなる被膜を形成すると、日射を受けて高温となったガラスの室内側表面と、室内(閉鎖空間内部)にある空気等の物質や内部の物体との間の放射熱伝達量は減少し、ガラスに吸収された熱は外気に多く放熱されるので、内部の熱負荷は低減される。
<物体の放射率と放射熱吸収率との関係>
通常、金属のような物体は、日射熱等の一部を吸収して、他をすべて反射するので吸収率α、反射率ρの間に次の関係式「α+ρ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過しないことが分かる。しかし、ガラスやプラスチックスなどの物体は、日射熱等を一部吸収し、一部反射し、さらに一部透過する灰色体である。このような灰色体の場合は、吸収率α、反射率ρ及び透過率τの間に次の関係式「α+ρ+τ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過する放射熱があることが分かる。
キルヒ・ホッフの法則によると、かかる熱の吸収率と放射率とは等しいので、日射により高温となったガラスからの放射熱を遮断させるには、かかるガラスからの熱放射の波長範囲、すなわち常温熱放射における波長域において、透過が大きく、放射熱の吸収率(放射熱吸収率)の小さい物質を選択すればよい。このときの常温熱放射の波長域は5〜50μmの範囲である。
すなわち、5〜50μmの波長域において放射熱吸収率の小さいプラスチックス等の物質を選択してガラスの表面に被膜を形成させれば、その被膜表面からの放射熱伝達量は減少する。
このように、本発明の日射熱遮断ガラスに用いられる被膜は、その可視光線透過率がガラス基板の可視光線透過率より大きく、且つその日射熱吸収率がガラス基板の日射熱吸収率より小さく、さらにその常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がガラス基板の常温熱放射の波長域における放射熱吸収率より小さいものである。好ましくは、可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%である。更に好ましくは、可視光線透過率が92%以上、日射熱吸収率が0.09〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.48〜17%である。
可視光線透過率が上記範囲より小さいと、透明感の高い日射熱遮断ガラスは得られない。また、日射熱吸収率及び放射熱吸収率が上記範囲より高いと、閉鎖空間内部への熱放射を効率よく遮断することができず、内部の熱負荷を低減させる本発明の効果が十分に発揮されない。
▲2▼被膜の材質
一般的に、反射率の大きい金属やセラミックスなどの物質は、可視光帯域と常温熱放射における波長域において同じように反射するので、常温熱放射における波長域の反射を大きくして放射熱吸収率を小さくさせようとすると、可視光帯域における反射率まで大きくなり透明度が低くなってしまう。しかし、一般的に、プラスチックス等の灰色体は、可視光帯域と常温熱放射における波長域の透過率が大きく、吸収率の小さい物質である。
そして、ランバート・ベールの法則によると物質の厚さを薄くすれば薄くするほど透過率が大きくなる。つまり、プラスチックス等の灰色体を薄く形成して常温熱放射における波長域の透過率を大きくして吸収率が小さくなるように被覆すると、被膜の可視光線の透過率も大きくなる。したがって、ガラスの片面にプラスチックス等の灰色体の薄い被膜を形成してもガラスの可視光線帯域の透過率の低減はほとんどなく、ガラス本来の透明度を損なうことはない。
そして、その薄い被膜面を閉鎖された空間すなわち建物や車両などの内部(室内又は車内)側へ向けて配置すると、透明度が高く、且つガラスが吸収した熱を内部に入射させず、その熱を外気に多く放射させて内部の熱負荷を低減させる日射熱遮断ガラスを得ることができる。
このように、本発明の被膜の材料としては、可視光線透過率が大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率の小さい物質を用いるのが好ましい。
したがって、被膜の材料としては、上記条件を満たす限り特に制限はないが、好ましくはプラスチックス、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル、ケイ素樹脂、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルブチラール、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、アクリル酸・塩化ビニル共重合体、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル、ナイロン66、エポキシ樹脂、ブタジエン・スチレン樹脂、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、MBS樹脂、ポリブタジエン、ポリエーテルスルホンなどの各種物質やこれらの混合物を挙げることができる。
これらのうち、より好ましいものとしては、スチレン樹脂(ポリスチレン)、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂(ポリアクリル酸)、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチルブチル等を挙げることができる。より好ましいものとしては、スチレン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・スチレン共重合体等を挙げることができる。特に好ましいものとしては、スチレン樹脂、アクリル樹脂、又はシリコーン樹脂を挙げることができる。
このような被膜材料を用いて所定の可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率を有する被膜を形成する方法は特に限定されないが、例えば、上記被膜材料を溶剤により希釈して一定濃度の溶液を作成し、所望の被膜を得ることができる。
ここで用いられる好ましい溶剤としては、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、シンナー等が挙げられる。これらの溶剤を用いて所定の被膜を得るためには、濃度0.01〜10%程度とするのが好ましい。
▲3▼被膜の厚み
本発明の被膜の厚みは特に限定されるものではないが、ランバート・ベールの法則によると、光を吸収する材料の厚さを大きくすると熱吸収量が増加し、小さくすると熱吸収量は減少する傾向にあることから、本発明においても、その被膜の厚みをある程度薄くすることにより熱吸収を減らし、可視光線透過率を大きくし、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率を小さくすることができる。
したがって、本発明の被膜の厚みとしては、好ましくは下限が0.01μm、より好ましくは0.02μm、さらに好ましくは0.04μm、特に好ましくは0.1μmであり、上限が10μm、より好ましくは5μmである。被膜が厚すぎると可視光線透過率が低下するのみならず、熱吸収量が増加し、日射熱吸収率及び放射熱吸収率が大きくなる傾向にある。一方、被膜の厚みは薄すぎると、ガラス基板からの剥離が起きやすくなる場合がある。
▲4▼放射熱吸収率の測定方法
本発明の日射熱遮断ガラスにおける、被膜の常温熱放射の波長域における放射熱吸収率の測定方法を示す。
JIS−R−3106の常温熱放射の波長域における測定に準拠して、一般の化学分析用の赤外分光光度計を用い、アルミニウム板の上に被膜を形成してJIS−R−3106の標準反射率の値を用いて反射率を測定した。そして、灰色体の吸収率αと反射率ρと透過率τの間に関係式「α+ρ+τ=1」が成り立つことに基づいて、吸収率αを「吸収率α=1−(反射率ρ+透過率τ)」により求めた。なお、透過率については、アルミニウム板の反射率とアルミニウム板に被膜を形成したときの反射率とを求めて、その差を被膜の透過率とした。
また、アルミニウム板の上に形成されたときの被膜の放射熱吸収は、放射熱の入射したときと反射して出るときの2回生じるので、吸収率αは、測定値の1/2とした。この数値を理論値として用い、ガラス表面およびポリエステルフィルム表面に形成した被膜の常温熱放射の波長域における放射熱吸収率とした。また、被膜の表面に生じる反射は0として計算した数値を用いた。
可視光線透過率及び日射熱吸収率は、JIS−R−3106によりガラスとガラスに被膜を形成した状態で測定し、その差を被膜の可視光線透過率及び日射熱吸収率とした。
(3)日射熱遮断ガラス
次に添付図面に従って、本発明の日射熱遮断ガラスについて説明する。
図1は、本発明の日射熱遮断ガラスの一例の構造を示す断面図であって、ガラス基板1の片面に、可視光線透過率がガラス基板のそれより大きく(好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上)、且つ日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共にガラス基板のそれより小さい(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%の)被膜2が設けられている。なお、図1中、Aは日射熱の照射される側であり、Bは閉鎖空間の内部側に相当する。
本発明の日射熱遮断ガラスの形状には特に制限はなく、方形状、円形状、筒状、半球状、球状など任意の形状に形成できるし、また、波形表面、凸凹表面、突起状表面などの表面形状に加工されたガラスでもよい。
ガラス基板上に被膜を形成して本発明の日射熱遮断ガラスを製造する方法としては、上述した被膜材料をあらかじめフィルム状又はシート状に形成し、それを熱融着や接着、粘着などにより貼着する方法、被膜材料を適当な溶剤に溶かして慣用されている方法により塗布し、乾燥、固化させる方法など、他の材料への積層に慣用されている方法の中から任意に選択することができる。また、被膜材料を分散、溶解などのこれまで慣用されている方法により処理した後、上記と同様の方法を用いて被覆することもできる。
なお、図1に示した日射熱遮断ガラスの一例は、ガラス基板及び被膜が各々単層の場合の例であるが、本発明においては、ガラス基板及び被膜の一方あるいは両者をさらに多層に構成した複合体とすることもできる。この場合においては、被膜層のうち、閉鎖空間内部側の空気層に接する層(最内層)の可視光線透過率がガラス基板のそれより大きく(好ましくは90%以上)、且つ日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共にガラス基板のそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)なるように、被膜を形成するのが望ましい。
本発明の日射熱遮断ガラスは、構築物や建物、車両などの窓ガラスとして用いることができるほか、従来からある構築物や建物、車両などの窓ガラスに後から被膜を形成することもできる。また、本発明の日射熱遮断ガラスは、従来の熱線吸収ガラスや熱線反射ガラスと併用することもできる。
このような本発明の日射熱遮断ガラスは、具体的には、住宅、保冷倉庫、天井、壁、車両、各種容器などの窓ガラスやガラス建材として効果的に利用することができる。
なお、高温となったガラスからの熱放射を小さくさせるには、反射率が大きく吸収率の小さい金属やセラミックスなどを、ガラス面に被覆して放射熱吸収率を小さくさせることもできるので、従来の技術による製品でも結果的に高温となったガラスからの放射を低減することは可能であるが、可視光線も反射するので内部が暗くなってしまう。また、反射率の大きい金属層の配置を外気側にするとガラスに吸収された熱は中に多く入射して、内部の熱負荷は増加する。そして、金属層を多層系の中央に配置すると低放射面が閉鎖空間の内部側に配置されないので、やはり内部の熱負荷は低減されず、本発明の効果を得ることはできない。
つまり、本発明のように、建物や車両などの窓ガラスの内側に放射熱吸収率の小さいプラスチックス等の被膜を形成させることにより、ガラス本来の可視光線の透明度を損なわずに、高温となったガラスからの常温熱放射だけを遮断させ、室内や車内の日射による熱負荷を低減させることを可能にした日射熱遮断ガラスはない。
2.日射熱遮断方法
本発明の日射熱遮断方法は、上述した本発明の日射熱遮断ガラスを、ガラス基板面が日射熱の照射される側に向くように配置して(日射熱を吸収し)、前記被膜面側からの熱放射を遮断することを特徴とする方法である。すなわち、日射熱遮断ガラスの、可視光線透過率がガラス基板のそれより大きく(好ましくは90%以上)、且つ日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共にガラス基板のそれより小さい(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)被膜の形成された面を、建物や車両などの閉鎖空間の内部側に向けて配置する。これにより、内部を暗くすることなく、日射を吸収して高温となったガラスから内部への熱放射を効果的に遮断することができる。
また、従来からある構築物や建物、車両などの窓ガラスの、室内又は車内等の閉鎖空間内部側の側面に、上記被膜を形成することによっても、高温となったガラスからの常温熱放射を遮断させ、室内や車内の日射による熱負荷を低減させることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
実施例1
メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−スチレン共重合体を酢酸エチルにより希釈して濃度の異なる溶液(各濃度;試料1=0.1重量%、試料2=5.0重量%、試料3=5.0重量%、試料4=5.0重量%、試料5=10.0重量%、試料6=15.0重量%)を作成した。そして、各試料の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率は、着色剤と赤外線吸収剤を各試料について以下に示すように処方することによって調整した。
試料1・2=着色剤・赤外線吸収剤の混合なし
試料3=着色剤を添加(全体の溶液濃度:0.0001重量%)
試料4=着色剤及び赤外線吸収剤を添加(全体の溶液濃度:着色剤;0.0002重量%、赤外線吸収剤;0.0005重量%)
試料5=着色剤及び赤外線吸収剤を添加(全体の溶液濃度:着色剤;0.001重量%、赤外線吸収剤;0.001重量%)
試料6=着色剤及び赤外線吸収剤を添加(全体の溶液濃度:着色剤;0.01重量%、赤外線吸収剤;0.01重量%)
ここで、着色剤としては「RED BW」(日本化薬(株)製)0.01重量%と、「Ultra Sky SE」(日本化薬(株)製)0.01重量%とを酢酸エチルに溶解した混合溶液を用いた。また、赤外線吸収剤としては、「エポライト2057」の1.0重量%溶液(溶剤;MEK・IPA・酢酸エチル・トルエンの混合溶剤)を使用した。
この溶液を、流し塗りの方法を用いて縦50cm、横50cmの同一のガラス板の片面に塗布し、被膜を形成した。このときの常温熱放射の波長域における吸収率の値は、前記に示した理論値を用いた。ここで、ガラス板の厚みは5mmである。また、被膜の厚みは、試料1=0.04μm、試料2=3.2μm、試料3=3.7μm、試料4=3.9μm、試料5=5.5μm、試料6=8.9μmである。
なお、被膜の厚みの測定は次の方法で行った。上記ガラス板(縦0.5m×横0.5mで面積が0.25m2)に各試料の液剤(例えば濃度0.1重量%の試料1溶液)を流し塗りによりコーティングした際、流れ落ちた液剤の重量を計測し、減少した液剤分をガラスに付着した分としてその固形分重量を計算で求め、「固形分重量÷ガラスの面積」を膜厚とし、この数値を膜厚の理論値として用いた。他の試料についても同様である。
次に、厚さ5mmの発泡スチロール板で一面のみを開放した立方体の箱(50×50×50cm)7個を作成し、その箱の開口部に被覆していないガラス板及び被覆したガラス板を被膜面が中側になるように配置して取り付けた。
被覆したガラス板及び被覆していないガラス板を取り付けた開口部を上に向けて、20℃に設定された室内に置き、ガラスの上50cmから60W−赤外線ランプで箱の中の温度が平衡になるまで加熱し、そのときの箱の中の温度を測定した。結果を表1に示す。
試料1〜3(実施例)の結果から明らかなように、赤外線ランプにより加熱したときの箱内の平衡温度は、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共にガラス板のみの場合より小さいときにガラスより0.2〜1.7℃低くなり、赤外線ランプにより加熱されて高温になったガラス表面からの放射熱が減少したことが分かる。そして、このときの被膜の可視光線透過率は94.2〜99.8%であり、被膜を形成したガラスの可視光線透過率は85%以上あるので、ガラス本来の透明度をほとんど低減させないことが分かる。
一方、試料4〜6(比較例)の場合は、被膜の常温熱放射の波長域における放射熱吸収率はガラス板より小さいが、日射熱吸収率はガラス板より大きい。被膜の日射熱吸収率がガラスより大きくなると、ガラスを透過した日射熱が、ガラスだけの場合より被膜に多く吸収され、その熱が外気側に放熱されるときガラスが放熱を阻害するため被膜に吸収された熱のほとんどは箱内に入る。
通常、ガラスに吸収された熱は閉鎖空間内に入る熱と外気に出る熱があり、閉鎖空間内(箱内)の温度はガラスを透過して直接中に入る熱と日射熱を吸収して高温となったガラスから中に入る熱の合計によって決まる。試料4〜6の場合、ガラスを透過して直接中に入る熱は減少したが、被膜に吸収された熱はガラスが阻害して外気に殆ど放熱されず、被膜に吸収された熱の殆どが箱内に入ったため、ガラスを透過して直接入る熱と日射熱を吸収して高温となったガラス及び被膜から箱内に入る熱の合計が大きくなり、ガラスだけの場合より箱内の温度が高くなったと考えられる。すなわち、被膜の日射熱吸収率がガラス板より大きい試料4〜6は、その常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がガラスより小さくても箱内の温度がガラスだけの場合より高くなったものである。
実施例2
実施例1で用いたものと同様の、被覆していないガラス板及び被覆したガラス板を被膜面が中側になるように配置した厚さ5mmの発泡スチロールの箱(50×50×50cm)を用意した。
被覆したガラス板及び被覆していないガラス板を取り付けた開口部を上に向けて、太陽光線の良く当たる広い場所に設置し、太陽光線を照射したときの箱の中が平衡になったときの温度を測定した。被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率は、実施例1と同じく理論値を用いた。このときの外気温は34.6℃であった。この結果を表2に示す。
試料1〜3(実施例)の結果から、太陽光線を照射したときの箱内の最高温度は、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率がともにガラス板より小さいときに、ガラスだけの場合より0.1〜2.5℃低くなり、発泡スチロール製の箱の開口部に取り付けたガラスの中側表面からの放射熱が減少し、外部へ多く放熱したことが分かる。そして、このときの被膜の可視光線透過率は94.2〜99.8%であり、被膜を形成したガラスの可視光線透過率は85%以上あるので、ガラス本来の透明度をほとんど低減させないことが分かる。
一方、被膜の常温熱放射の波長域における放射熱吸収率はガラス板より小さいが、日射熱吸収率はガラス板より大きい試料4〜6(比較例)の場合は、ガラスを透過して直接中に入る熱は減少したが、被膜に吸収された熱はガラスが阻害して外気に殆ど放熱されず、被膜に吸収された熱の殆どが箱内に入ったため、ガラスを透過して直接入る熱と日射熱を吸収して高温となったガラス及び被膜から箱内に入る熱の合計が大きくなり、ガラスだけの場合より箱内の温度が高くなったと考えられる。
実施例3
鉄筋コンクリート造9階建の建物の8階部分において、容積が55m3であって、東向きの壁に厚さ5mmの窓ガラスをはめた縦1.5m、横2.8mの長方形の窓がある隣り合わせた同一の部屋3個を用意し、その窓ガラスの室内側に、1つの部屋のガラス窓には実施例1で作成した日射熱吸収率0.09%で常温熱放射の波長域における放射熱吸収率(理論値)が0.48%となる塗料を流し塗りの方法を用いて塗布し、被膜(厚さ;0.04μm)を形成した(試料1)。
そして、もう1つの部屋の窓ガラスには、ガラスに貼着する側に粘着層を設けたポリエステルフィルムであって、その該粘着層と反対の側に、上と同様に日射熱吸収率が0.09%で常温熱放射の波長域における吸収率(理論値)が0.48%となる液を塗布したもの(塗布層の厚さ;0.07μm、フィルムの厚さ;50μm、粘着層の厚さ;20μm)を、室内側に貼った(試料2)。そして、もう1つの部屋は窓ガラスのみとした(試料3)。
窓ガラスに被膜を形成した部屋(試料1)とポリエステルフィルムを貼った部屋(試料2)と窓ガラスのみの部屋(試料3)において、太陽光線が照射されたときの室内の窓際から1m離れた地点での経時的な温度変化を測定した。被膜の日射熱吸収率及び放射熱吸収率は、実施例1と同じく理論値を用いた。この結果を表3に示す。なお、表中の数値の単位は℃である。
試料1と試料2の両方とも太陽光線が照射した7:00の時点での試料3との温度差3.3〜3.5℃となり、被膜の常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が小さくなり、ガラスの中側表面から室内への放射熱伝達が減少し、外部へ多く放熱したことが分かる。室内の経時的な温度変化のグラフを図2に表す。
実施例4
実施例1で用いたものと同じ厚さ5mmの発泡スチロール板で一面のみを開放した立方体の箱(50×50×50cm)7個を作成し用意した。
粘着層を25μm設けた厚さ50μmのポリエステルフィルムの粘着層とは反対側の面に、実施例1で用いたのと同じ塗料を流し塗りの方法で塗布し、被膜を形成した。
このフィルムを、粘着層を介して厚さ5mmのガラス板に貼り(被膜を形成していないポリエステルフィルムのみを貼ったものも用意した)、フィルムの被膜形成面が箱の中側になるように配置した。太陽光線の良く当たる広い場所にガラス面を上に向けて設置し、太陽光線を照射したときの箱の中が平衡になったときの温度を測定した。このときの外気温は34.9℃であった。被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率は、実施例1と同じく理論値を用いた。その結果を表4に示す。
放射熱吸収率及び可視光線透過率
太陽光線を照射したときの箱内の最高温度は、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率が共にポリエステルフィルムのみを貼ったガラス板のそれより小さいときに、箱内の最高温度が、ポリエステルフィルムのみを貼ったガラス板の場合より0.1〜2.0℃低くなり、発泡スチロール製の箱の開口部に取り付けたガラスの中側表面からの放射熱が減少し、外部へ多く放熱したことが分かる。
一方、被膜の常温熱放射の波長域における放射熱吸収率はポリエステルフィルムのみを貼ったガラス板より小さいが、日射熱吸収率はポリエステルフィルムのみを貼ったガラス板より大きい試料4〜6(比較例)の場合は、ガラスを透過して直接中に入る熱は減少したが、被膜に吸収された熱はガラスが阻害して外気に殆ど放熱されず、被膜に吸収された熱の殆どが箱内に入ったため、ガラスを透過して直接入る熱と日射熱を吸収して高温となったガラス及び被膜から箱内に入る熱の合計が大きくなり、ガラスだけの場合より箱内の温度が高くなったと考えられる。
実施例5
実施例1で用いたものと同じ厚さ5mmの発泡スチロール板で一面のみを開放した立方体の箱(50×50×50cm)7個を作成し用意した。
そして、日射熱吸収率が33.6%の熱線吸収ガラスに、実施例1で作成した塗料を実施例1と同じ方法で塗布した。
次に、実施例1と同様に被膜面が箱の中側になるように、熱線吸収ガラスを箱に配置して、ガラス面を上に向けて設置した。そして、太陽光線の良く当たる広い場所に設置し、太陽光線を照射したときの箱の中が平衡になったときの温度を測定した。このときの外気温は33.2℃であった。その結果を表5に示す。
太陽光線を照射したときの密閉された箱内の平衡温度は、被膜の日射熱吸収率が0.09〜10.3%で被膜の常温熱放射の波長域における吸収率が0.48〜16.9%のときに、密閉された箱内の最高温度は熱線吸収ガラスだけより1.2〜6.1℃低くなり、熱線吸収ガラスにおいても効果があることが分かる。
産業上の利用可能性
本発明の日射熱遮断ガラスは、ガラス基板の片面に可視光線帯域の透過率が大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域の吸収率が小さい被膜を形成したものである。この日射熱遮断ガラスからなるガラス窓を、被膜面が建物や車両などの閉鎖空間の内部側(室内又は車内側)に向くように設置することにより、ガラス面が日射により加熱されて温度上昇したのちに生じるガラスからの熱放射が内部に入射することを阻止して、外気側に多く放射させ、室内等の熱負荷を低減させることができる。
また、ガラス本来の可視光線の透明度を損なうことがないため、室内や車内を暗くすることなく、中の温度上昇を抑えることができる。さらに、従来の金属やセラミックスを用いたものと異なり、簡便に製造することができ、安価である。よって、住宅、保冷倉庫、天井、壁、車両、各種容器などの窓ガラスやガラス建材等として効果的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の日射熱遮断ガラスの構造を示す断面図である。図2は本発明の実施例3における室内の経時的な温度変化を表すグラフである。
図1中、1はガラス基板、2は被膜、Aは日射熱の照射される側、Bは閉鎖空間内を示す。図2中、aは試料1、bは試料2、cは試料3を示す。
Claims (6)
- 閉鎖空間内部の熱負荷を低減するための複合ガラスであって、ガラス基板の閉鎖空間側の片面に、アクリル樹脂からなり且つ可視光線透過率が前記ガラス基板の可視光線透過率より大きく、且つ日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共に前記ガラス基板の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率より小さい膜厚0.01〜10μmの被膜を設けたことを特徴とする、日射熱遮断ガラス。
- 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%であることを特徴とする、請求項1記載の日射熱遮断ガラス。
- 前記放射熱吸収率における常温熱放射の波長域が5〜50μmである、請求項1又は2記載の日射熱遮断ガラス。
- 前記アクリル樹脂が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、及びポリメタクリル酸メチルブチルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の日射熱遮断ガラス。
- 前記被膜の厚みが、0.01〜3.2μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の日射熱遮断ガラス。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の日射熱遮断ガラスを、前記ガラス基板面が日射熱の照射される側に向くように配置して、前記被膜面側からの熱放射を遮断することを特徴とする、日射熱遮断方法。
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