JP3726100B2 - 保温ガラス - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、隔壁に取り付けたときに高い保温力を示す板ガラスに関するものである。さらに詳しくいえば、本発明は、保温空間例えば建物の部屋や車両の内部と外部とを遮断するために取り付けられた板ガラスであって、外部から保温空間内への熱の移動を促進するが、保温空間から外部への熱の移動を抑制することにより、室内の温度を高く保持しうる板ガラスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、保温ガラスとしては、透明ガラス、遠赤外線透過ガラスのように輻射線を透過しやすい材料から成るガラスやガラス内に加熱用電熱線を組み込んだガラスが知られている。しかしながら、前者は熱源からの輻射線を入射して、室温を温める一方、室内から輻射線を室外に放射するため、夜間などにおいては、むしろ室内の温度低下を促進する傾向があるし、後者は継続的な保温を得るには、常時電気エネルギーを供給する必要があり、エネルギー消費の点ではあまり得策でない。
ところで、エネルギーの有効利用という面からは、室外や車外からの熱エネルギー例えば太陽光を円滑に取り入れるとともに、室内からの熱エネルギーの放射を阻止する機能をもつ保温ガラスが望ましいが、このようなものはまだ実現していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、建物用や車両用の窓ガラスのように、保温を要する室内や車内への熱エネルギーの入射を円滑に行い、しかも室内や車内からの熱エネルギーの放射を阻止する機能をもつ保温ガラスを提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、外部からの熱エネルギーの入射を促進し、内部からの熱エネルギーの放射を抑制して、効率よく内部を保温しうる窓ガラスを開発するために、鋭意研究を重ねた結果、ガラス基体の内部側に特定の熱移動関係を有する単数又は複数の透明層を積層し、外部から内部へ向って熱傾斜を形成させることによりその目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、保温空間と外部とを遮断するための板ガラスであって、保温空間側の表面に、ガラス基体の熱容積及び放射熱吸収率に対し、それぞれ10%以下、好ましくは5%以下及び60%以下、好ましくは50%以下の熱容積及び放射熱吸収率を有する透明熱傾斜形成層を場合により単数又は複数の透明中間層を介して積層したことを特徴とする保温ガラスを提供するものである。
【0006】
ここでいう熱容積とは、これをQとしたとき、次式で表わされるものである。
Q=V・d・C …(1)
=W・C …(1′)
ただしVは全容積(cm3)、dは密度(g/cm3)、Cは比熱(cal/g/℃)、Wは全重量(g)を示す。
【0007】
この式中の比熱Cは、各材料に固有のもので、温度により若干変化するが、本発明においては、外気温度において、各材料ごとに測定した数値が使用される。この測定は、常法に従い、比熱測定装置を用いて行うことができる。
【0008】
次に、ここでいう放射熱吸収率とは、太陽光の放射温度と太陽光が所定材料を通過したときに低下する温度との割合を百分比で表わしたものであって、所定材料の放射熱吸収率Xは、次の式に従って求めることができる。
【0009】
【数1】
【0010】
ただし、Tは太陽光の放射温度、T′は太陽光が所定材料を通過した後の放射温度である。
次に本発明の基本的原理を説明すると、熱の移動には、対流、伝導及び放射の3形式があり、通常その組合せによって行われている。
【0011】
そして、通常状態における対流及び伝導による熱の流れqは次式によって表わされる。
q=α1(Tr−T1)=λ/L(T1−T2)=α0(T2−T0) …(2)
ここでα1は高温の流体の熱伝達係数、α0は低温の流体の熱伝達係数、Trは高温の流体の温度、T1は高温側の隔壁表面の温度、T2は低温側の隔壁表面の温度、T0は低温の流体の温度、λは隔壁の熱伝導率、Lは隔壁の厚さである。
【0012】
この式から分るように、熱は高温流体から隔壁の高温側表面に流れ、次いで隔壁の中を、高温流体に接している面から低温流体に接している面に向って熱伝導で流れ、隔壁の低温側表面から低温流体に流れる。
【0013】
一方、ガラスのような透明体については、太陽光の短かい波長の光を透過するが二次的に発生する長い波長の光を吸収するので、これを隔壁とした室内では、太陽光により内部が加温されるが、内部からの熱を外部に放熱することがなく、放射熱により内部温度は次第に上昇する傾向にある。例えば窓ガラスにより外気と遮断された室内に外部から太陽光が照射されると、太陽光の短い波長の光により室内は加温され、室内で二次的に発生した長い波長の光例えば遠赤外線を遮断するため室内温度は次第に上昇する。この際に窓ガラスは室内からの放射を抑制して保温効果を高める役割を果たしている。
【0014】
すなわち、通常、放射熱を吸収して高温になった窓ガラスは、その厚みの方向の中央部の温度が高く、外側の大気に接し冷却されている表面の温度は低くなっている。そして、太陽光の照射が強いときには、ガラスの厚みの方向の中央部の温度は、室内に閉じ込められて、高温に温められている空気の温度よりも高く、少なくとも同じ温度以下になることはないので、室内の熱がガラスを通過して外部に流れることはない。
【0015】
ところで、大気中に置かれている高温の物体は、空気の対流により絶えず熱を奪われ、温度が降下している。そして、この温度の降下速度は、物体の比熱が小さいほど、またその容積が小さいほど速くなる。すなわち、比熱と容積との積、いわゆる熱容積が小さいほど速くなる。
【0016】
したがって、ガラス基体の大気側に熱容積の小さい層を形成させると、空気の対流により奪われる熱に変わりがなければ大気側の透明層表面の温度は急速に降下する。
そして、ガラスの厚み方向中央部の温度と大気側のガラス表面の温度との間の差が大きくなるので、熱エネルギーは大気側のガラス表面に向って流れ、ガラス全体に蓄積されていた熱エネルギーが減少し、ガラスの温度が低下する。結果、室内の熱エネルギーも外部に向って流れはじめる。
【0017】
これとは逆に、ガラス基体の室内側表面すなわち大気に接する表面に、熱容積が小さい層を形成させると熱エネルギーの流れは、大気側から室内に向うようになる。
【0018】
また、一般に放射熱吸収が多いと、太陽光が照射されたときその物体の温度は上昇するので、上記のガラス表面に形成させた層の放射、吸収率が大きいと、その層の温度がガラスよりも高くなり、大気側から入射する放射線エネルギーの移動が阻止され、室内の温度上昇に寄与しなくなる。
【0019】
また、太陽光の照射が弱くなったり、照射がなくなるとガラス基体の温度は放射熱吸収による温度上昇より、大気の対流による温度下降が大きくなり、ガラス基体の温度は低くなる。そして、ガラス基体の温度上昇により外部へ放熱されなかった熱が、ガラス基体の温度が下がることにより外部に放熱し始める。
ガラス基体の室内側表面に放射熱吸収率の小さい透明層を形成させるとガラス表面に向かう放射熱は、放射熱吸収率の小さい透明層を透過して、ガラス面に多く吸収され、そしてガラス面の温度は上昇する。
そして、ガラス基体の室内側表面に熱容積の小さい透明層を形成させると対流により冷却される時は、その温度下降速度は透明層が速くなる。
したがって、ガラス基体の室内側表面にガラス基体に対して放射熱吸収率が小さく、かつ熱容積が小さい透明層すなわち、ガラス基体に対し温度降下速度が速く、かつ温度上昇の小さい透明層を積層することにより、外気側に面したガラス面の表面温度と室内側に面した透明層の温度差を少なくすることができる。
【0020】
そして、伝導による熱の流れqは、前記式(2)により
q=λ/L(T1−T2)
で表わされるから、(T1−T2)すなわち室内側の表面温度と外気側の表面温度の差が小さくなれば、熱伝導率λを小さくしたり、またガラスの厚さLを大きくしなくても熱の流れを少なくすることができる。
【0021】
対流、伝導により熱が高温側から低温側に流れる場合、前記式(2)の熱の流れの式から分るように
(イ)内部の熱が室内側のガラス表面に対流により流れる熱と、
(ロ)室内側のガラス表面から外気側のガラス表面に流れる熱と、
(ハ)外気側のガラス表面から外気に流れる熱と
は、すべて等しくなっている。
したがって、室内側のガラス表面から外気側のガラス表面に流れる熱、すなわち伝導による熱の流れを、室内側の温度を低くして減少させることにより、全体の対流、伝導による熱の流れを減少させ、内部の保温効果を得ることができる。すなわち、内部から外気に向かう放射熱を利用して、対流、伝導により外気に放熱する熱を減少させ、保温効果を高めることができる。
【0022】
本発明者らは、このような基本的原理に基づき、種々検討した結果、ガラスとその内側表面に熱傾斜を形成させるために積層する透明層とが、ガラス基体の熱容積に対する透明熱傾斜形成層の熱容積の割合が10%以下、好ましくは5%以下で、ガラス基体の放射熱吸収率に対する透明熱傾斜形成層の放射熱吸収率の割合が60%以下、好ましくは50%以下とした場合に、実用的な保温ガラスとしての効果が発揮されることを見出したのである。
【0023】
したがって、本発明においては、ガラス基体の熱容積Q1、放射熱吸収率X1と、その内側表面に積層する透明熱傾斜形成層の熱容積Q2、放射熱吸収率X2との間に次の関係があることが必要である。
0.10Q1≧Q2 …(3)
0.60X1≧X2 …(4)
【0024】
そして、そのために、透明熱傾斜形成層の材料として比熱の小さい材料を用い、かつ太陽光線を吸収しうる物質を混合して、材料自体の単位容量当りの熱容積及び放射熱吸収率を低くしたり、層厚を小さくするとともに、ガラス基体として比熱や放射熱吸収率の大きい材料を選んだり、厚みを大きくして熱容積を大きくすることにより、上記の関係式を満たしたものを作成する。
【0025】
本発明において用いる板ガラスとしては、透明である限り、普通ガラス、カリガラス、鉛ガラス、特殊ガラス例えば熱線吸収ガラスや熱線反射ガラスなどの任意のものを用いることができるが、前記の式(3)及び(4)の関係を満たしやすいという点で比熱や放射熱吸収率の大きいものを選ぶのが有利である。また、この板ガラスとしては、通常無色透明なものが用いられるが、所望に応じ青色、赤色、黄色、淡かっ色、グレーなどに着色されたものを用いることもできる。この板ガラスの厚さは、通常1〜10mm程度である。
【0026】
他方、透明熱傾斜形成層の材料としては、ガラス基体と異なる組成をもつガラスや、金属、セラミックスの蒸着膜などでもよいが、多種多様の物性のものを容易かつ安価に入手でき、しかも積層加工が簡単であるという点でプラスチックが好ましい。
【0027】
この透明熱傾斜形成層の材料として好適なプラスチックには、例えば高圧法ポリエチレン、低圧法ポリエチレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸又はアクリル酸エステル共重合体、含金属エチレン‐アクリル酸共重合体、エチレン‐プロピレン共重合体、エチレン‐塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン‐塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらのプラスチックには、慣用されている各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤の種類、組み合せ、添加量を変えることによって、その熱容量や放射熱吸収率を調整することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよいが、透明状態を保ったままガラス基体上に積層されることが必要である。
【0028】
本発明におけるガラス基体と透明熱傾斜形成層との積層方法は、あらかじめフィルム状又はシート状に形成した透明層をガラス基体表面に熱融着や接着により貼着する方法、プラスチックを適当な溶剤に溶かしてガラス基体上に塗布し乾燥、固化させる方法、化学蒸着、真空蒸着、無電界めっきなどで固着する方法など、これまでガラス基板上に他の材料を積層するのに慣用されている方法の中から任意に選ぶことができる。
このようにして、ガラス基板上に1〜1000μm、好ましくは10〜500μmの厚さの透明熱傾斜形成層を積層させる。
【0029】
本発明のもう1つの好ましい実施態様は、ガラス基体と透明熱傾斜形成層との間に単数又は複数の透明中間層を介在させることである。
最終的に、ガラス基体と透明熱傾斜形成層との間に前記した式(3)及び(4)の関係が満たされている限り、中間層としては、任意の透明層を用いることができるが、外部から保温空間内に向っての熱エネルギーの移動が円滑に行われる熱傾斜を形成させるためには、ガラス基体の熱容積及び放射熱吸収率よりは小さく、かつ透明熱傾斜形成層のそれらよりは大きい熱容積及び放射熱吸収率をもつ透明層を用いるのが有利である。
【0030】
【発明の効果】
本発明の保温ガラスは、建物の窓ガラスやドアガラス、自動車、電車用の窓ガラスやドアガラスとして用いると、外部から室内への熱エネルギーの入射を促進するが、室内から外部への熱エネルギーの放射を抑制するため、非常に優れた保温効果を示す。
【0031】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0032】
参考例
厚さ3mmの透明普通ガラス(放射熱吸収率7.9%)の半分に、放射熱吸収率の異なる材料から成る5種の市販フィルム、すなわち、熱遮断性ポリエステルフィルム(A)、塩化ビニル樹脂フィルム(B)、ポリエステルフィルム(C)、変性アクリル樹脂フィルム(D)、アクリル樹脂フィルム(E)を積層して試料を作成し、フィルム側とは反対の側から赤外線ランプを照射して、ガラスのみの部分とフィルムを積層した部分の表面にそれぞれ接触して配置した温度計により、表面温度の変化を測定した。
この結果を表1に示す。なお、表1における対ガラス吸収熱比は、ガラスの放射熱吸収率に対する各試料の放射熱吸収率の割合である。
【0033】
【表1】
【0034】
この結果から、ガラス基体の放射熱吸収率に対し、60%以下の放射熱吸収率を有する透明フィルム(D)、(E)を積層すれば表面温度がガラスよりも低下し、ガラス側からフィルム側への熱移動が促進されるが、これよりも放射熱吸収が大きいと表面温度が高くなり、熱移動が阻止されることが分る。
【0035】
実施例1、比較例1
カヤクリルレジンP4838(日本化薬社製、アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の商品名)を溶媒に溶解し、この中に変性ジメチルシリコーンオイルSF8419(東レ・ダウコーニングシリコーンオイル社製の商品名)を加えて塗膜形成用組成物を調製した。
前面のみを開放した発泡スチロール製の箱(縦33cm、横39cm、奥行24cm)の開放面に、厚さ3mmの透明普通板ガラス(放射熱吸収率7.9%、熱容積193.1cal/℃)(対照)、そのガラスの内側面に上記の塗膜形成用組成物を塗布し、放射熱吸収率1.9%、熱容積0.26cal/℃の層を形成させたもの(実施例1)及びガラスの外側面に上記の層を形成させたもの(比較例1)をそれぞれ装着した試験箱3個を準備し、これらを太陽に対し、同じ方向になるように並列的に配置して、それぞれの箱内温度の経時的変化を測定した。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
この結果から、ガラスの室内側に所定のフィルムを積層した場合(実施例1)には、保温効果は向上するが、大気側に積層した場合(比較例1)には、むしろ保温効果の低下が認められることが分る。
なお、30分経過以降における内部温度の低下は、日照量の減少に基づくものである。
【0038】
実施例2
厚さ3mmの板ガラス(50×50cm、放射熱吸収率7.9%、熱容積375cal/℃)の表面を清浄化したのち、シランカップリング剤としてオルガノシランKBM503(信越化学社製)をコーティングし、この上にカヤクリルレジンP4838(日本化薬社製、アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の商品名)を酢酸エチルとトルエンとイソプロパノールと酢酸ブチルとメタノールから成る混合溶媒に溶かし、変性ジメチルシリコーンオイルSF8419(東レ・ダウコーニングシリコーンオイル社製の商品名)0.03重量部を加え混合したものを塗布し、乾燥させることにより厚さ5μmの中間層を形成させた。この塗膜の放射熱吸収率はガラス基体の放射熱吸収率に対し1.9%であり、熱容積は0.5cal/℃(ガラス基体の熱容量に対し24.1%)であった。
【0039】
この塗膜を十分に乾燥させたのち、さらにこの上にエマルション型ジメチルシリコーンオイルSH7028(東レ・ダウコーニングシリコーンオイル社製、商品名、固形分含有量30%)を水で5倍に希釈してコーティングすることにより厚さ1μmの塗膜を形成させた。この塗膜の放射熱吸収率は上記中間層に対し58%、熱容積は0.09cal/℃であった。
【0040】
厚さ5mmの発泡スチロール板により1面を開放した50cm立方の箱を作製し、内壁前面を黒布で覆い、開放面に上記の保温ガラス又は3mm透明ガラスとを装着して2個の保温箱を準備した。
この保温箱を用いて実施例1と同様の太陽光照射実験を行い、その結果を図1に示す。図中の実線は本発明の保温ガラスを、また破線は透明ガラスについてのグラフである。
【0041】
実施例3
厚さ3mmの透明板ガラス(50×50cm、放射熱吸収率7.9%、熱容積375cal/℃)に、ポリエステル樹脂(密度0.92g/cm3、比熱0.55)の溶液を塗布し、乾燥することにより厚さ50μmの中間層(放射熱吸収率15.8%、熱容積6.3cal/℃)を形成させた。次に、この中間層の上に、実施例2の中間層を形成させる場合と同様の方法で、アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体及び変性ジメチルシリコーンオイルから成る塗膜(放射線吸収率は中間層に対して1.9%、熱容積は中間層に対して3.2%)を2μmの厚さで形成させることにより3層構造の保温ガラスを作製した。
【0042】
次に、この保温ガラスについて、実施例2と同様の太陽光照射実験を行い、その結果を図2に実線グラフで示した。
なお、比較のために、同じ透明板ガラスに中間層のみを積層した保温ガラス(一点鎖線)及び透明板ガラスのみ(破線)について同じ実験を行った結果を併記した。
これらの結果より中間層を介在させた場合は、さらに保温効果が向上することが分る。
【0043】
実施例4
縦33cm、横39cm、厚さ5mmの熱線吸収板ガラス(放射熱吸収率32.8%、熱容積321.8cal/℃)と厚さ1mmの普通の透明板ガラス(放射熱吸収率7.9%、熱容積64、3cal/℃)を貼り合わせて二重ガラスとし、透明ガラスの表面に、実施例2の中間層と同じ厚さ5μmの塗膜(放射熱吸収率は普通の厚さ1mmの透明板ガラスに対し24.1%、熱容積は0.39%)を積層した。
このものについて、実施例1と同様にして初期温度19℃における保温効果を試験した結果を表3に示す。なお、対照としては二重ガラスのみを用いた場合を示した。
【0044】
【表3】
【0045】
この結果から、二重ガラスについても塗膜層を設けることにより、平均2℃高い内部温度が得られることが分る。
【0046】
実施例5
縦1.8m、横1.8mの窓をもつ高さ2.2m、間口2.7m、奥行3.6mの同じ広さの2つの部屋の、それぞれの窓に普通の透明板ガラス(厚さ3mm)と、実施例1で得た保温ガラスとを取り付け、この室内に同じ能力の暖房機を設置し、夜間に作動させて、室温の変化を調べた。その結果をグラフとして図3に示す。図中の実線は保温ガラス、破線は普通の板ガラスである。
この結果から、本発明の保温ガラスは、普通の板ガラスに比べ1.5〜3℃も高い保温効果を示すことが分る。
【0047】
実施例6
東京都千代田区に存在する鉄筋コンクリート造12階建マンションの同じ方向に面した8階と9階の同一構造の部屋を使用し、各期の朝10時から夜9時にわたって、実施例2で得た保温ガラスと普通の透明板ガラスについての実装試験を行った。
この部屋の床面積は31m2、高さは2.7m、窓ガラス面積は12m2であった。この場合のガラスの熱容積は30000cal/℃、塗膜の熱容積は23.87cal/℃であった。その結果を図4に示す。なお、参考のために外気温度(鎖線)を併記した。
この図から分るように、本発明の保温ガラスを用いると、24時間にわたって、普通ガラスの場合よりも1.5〜4℃も高い保温効果が得られる。
【0048】
実施例7
車内床面積55.1m2、車内高さ2.1m、窓面積20m2の同型車両を2両連結し、11月下旬北九州のJR線支線を利用して、本発明の保温ガラスの実装試験を行った。
計測器としては、神栄株式会社製コンピュータ内蔵型温湿度計を用い、これを車内中央部高さ1mの位置に設置した。
このときの気候は雨、外気温は約13.5℃であった。各駅通過時における車内温度を記録し、グラフとして図5に示す。図中の破線は普通の窓ガラス(厚さ5mm、熱容積50000cal/℃、放射熱吸収率12.5%)を取り付けた車両の温度測定値、実線はその車内側表面に厚さ5μmの塗膜(熱容積39.78cal/℃、放射熱吸収率1.9%)
を積層した保温ガラスを取り付けた車両の温度測定値を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2における保温効果を示すグラフ。
【図2】 実施例3における保温効果を示すグラフ。
【図3】 実施例5における保温効果を示すグラフ。
【図4】 実施例6における保温効果を示すグラフ。
【図5】 実施例7における保温効果を示すグラフ。
Claims (2)
- 保温空間と外部とを遮断するための板ガラスであって、保温空間側の表面に、ガラス基体の熱容積及び放射熱吸収率に対し、それぞれ10%以下及び60%以下の熱容積及び放射熱吸収率を有する透明熱傾斜形成層を積層したことを特徴とする保温ガラス。
- ガラス基体と透明熱傾斜形成層との間に、ガラス基体の熱容積及び放射熱吸収率よりは小さく、透明熱傾斜形成層のそれらよりは大きい熱容積及び放射熱吸収をもつ透明中間層を単数又は複数介在させる請求項1記載の保温ガラス。
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