以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
図1〜図12は本発明の車両衝突箇所判断装置の第1実施形態を示し、図1は変形検出手段と衝突箇所判定手段と保護装置作動手段の配置状態を概略的に示す車体側面図、図2は車体の骨格構造を示す全体斜視図、図3は変形検出手段の配置状態を示す平面図、図4はルーフ周囲の骨格構造を示す分解斜視図、図5は変形検出手段を配置する補強部材の拡大斜視図、図6は図5中A部の拡大斜視図、図7は変形検出手段の内部構造を示す斜視図、図8は変形検出手段に発生する磁場を示す平面図、図9は(a)にロールオーバー時にルーフ左側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)にセンサの電圧波形を高速フーリエ変換した信号波形と(c)に高速フーリエ変換した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図10は(a)にロールオーバー時にルーフ右側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)にセンサの電圧波形を高速フーリエ変換した信号波形と(c)に高速フーリエ変換した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図11は(a)にロールオーバー時にルーフ中央部から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)にセンサの電圧波形を高速フーリエ変換した信号波形と(c)に高速フーリエ変換した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図12はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
この第1実施形態の車両衝突箇所判断装置は、図1に示すように乗員Cを緊急時に保護する複数の乗員保護装置としての左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bと、ロールオーバー時に車体としてのルーフRが接地した際の変形箇所を検出する変形検出手段としてのセンサ20と、このセンサ20からの出力信号を所定のアルゴリズムに従って処理する参照データベース30Dを内蔵して自動車Mの衝突箇所を判定し、その衝突箇所に応じて前記左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動させる保護装置作動手段としてのコントローラ30と、を備えている。
本実施形態では、車両前部にロールオーバーを検知するRO検知センサ31が設けられ、このRO検知センサ31によるロールオーバー検知信号がコントローラ30に入力されるようになっている。
また、本実施形態のロールオーバー時の車両衝突箇所判断方法は、前記ルーフRの変形箇所を検出した前記センサ20の出力信号を、所定のアルゴリズムに従って処理して自動車Mの衝突箇所を判定し、この衝突箇所に応じて前記左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動させるようになっている。
前記ルーフRには、ロールオーバー時にルーフRが接地する衝突領域A1に上面補強部材10を設け、前記センサ20をその上面補強部材10に設けてある。
前記衝突領域A1は、図3に示すように車両前方左側上端部(左側フロントピラー2Aの上端部)P1と車両前方右側上端部(右側フロントピラー2Bの上端部)P2とを結ぶ直線Laと、その車両前方左側上端部P1と車両上端部左側縁(左側ルーフサイドレール3A)の前後方向略中央部(左側センタピラー4Aの上端部)P3とを結ぶ直線Lbと、前記車両前方右側上端部P2と車両上端部右側縁(右側ルーフサイドレール3B)の前後方向略中央部(右側センタピラー4Bの上端部)P4とを結ぶ直線Lcと、前記車両上端部左・右側縁の前後方向略中央部P3,P4どうしを結ぶ直線Ldと、で囲まれた範囲として特定される。
前記左右一対のルーフサイドレール3A,3Bは、それぞれの前端部間および後端部間に跨ってフロントルーフレール5およびリアルーフレール6が連結され、これらルーフサイドレール3A,3Bおよびフロント,リアルーフレール5,6により平面矩形状のルーフ骨格を成している。
前記補強部材10は、図2,図3に示すように車両前方左側上端部P1と前記車両上端部右側縁(右側ルーフサイドレール3B)の前後方向略中央部P4とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、車両前方右側上端部P2と車両上端部左側縁(左側ルーフサイドレール3A)の前後方向略中央部P3とを結ぶ第2補強フレーム10Bとによって、前記衝突領域A1内でその四隅部分に跨るようにX字状に配置構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくし、その交差接合部10Cに前記センサ20を配置してある。
前記第1・第2補強フレーム10A,10Bと、左・右側フロントピラー2A,2Bおよび左・右側センターピラー4A,4Bとの接続部分を含めたルーフR周囲の構造を自動車Mの左側に例をとって図4に示すと、第1・第2補強フレーム10A,10Bは、図5にも示すように下方に突出する逆ハット形断面に形成され、フロントピラー2A,2Bおよびセンターピラー4A,4Bは、それぞれピラーインナ2c,4cおよびピラーアウター2d,4dと、これらインナ,アウター部材間に配置されるピラーレインフォース2e,4eと、により3重構造に形成される。
また、左・右側ルーフサイドレール3A,3Bにあっても、ルーフサイドレールインナ3c、ルーフサイドレールアウター3dおよびルーフサイドレールレインフォース3eの3重構造として形成される。
ルーフサイドレールインナ3cの前端部には、フロントピラー2A,2Bのピラーインナ2cの上端部からルーフR中央側へ延長した方向にフロントピラー接合部3fを形成してあるとともに、ルーフサイドレールインナ3cの中央部には、センターピラー4A,4Bのピラーインナ4cの上端部からルーフ中央側へ延長した方向にセンターピラー接合部3gを形成してある。
そして、第1補強フレーム10Aの前端部10Afをフロントピラー接合部3fに嵌合して重ね合わせ接合するとともに、第2補強フレーム10Bの後端部10Brをセンターピラー接合部3gに嵌合して重ね合わせ接合してある。
一方、ルーフサイドレールインナ3cの前端部には、前記フロントピラー接合部3fと分岐するように車幅方向内側に向けてフロントルーフレール接合部3hを形成し、この接合部3hにフロントルーフレール5の車幅方向端部を接合してある。尚、リアルーフレール6にあってもフロントルーフレール5と同様の構造をもってルーフサイドレール3A,3Bに接合される。
ところで、上述したルーフR左側の周辺構造は右側にあっても同様となり、第2補強フレーム10Bの前端部10Bfをフロントピラー接合部3fに嵌合して重ね合わせ接合するとともに、第1補強フレーム10Aの後端部10Arをセンターピラー接合部3gに嵌合して重ね合わせ接合してある。
また、前記第1・第2補強フレーム10A,10Bおよびフロント,リアルーフレール5,6は、これらの両端部を結合する接合部3f,3g,3hを含めて、それぞれの逆ハット形断面となった上方開放側のフランジKにルーフパネルを接合することにより閉断面として構成される。
前記第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cは、図5に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの逆ハット形断面が交差して矩形状若しくは菱形状の交差部分が形成され、この交差部分の内周を囲うようにその内周形状に沿った矩形状若しくは菱形状の補強リブ11を接合することにより、上述したように前記交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくしてある。
ここで、前記センサ20は、図6,図7に示すように4箇所の突出部20T1〜20T4を設けて全体的に十字状に形成し、それぞれの突出部20T1〜20T4内に前記変形検出部20a〜20dを内蔵してある。
前記各突出部20T1〜20T4の先端部には取付穴20Thが形成され、図6に示すようにそれら取付穴20Thに挿通した図外のボルトを介してセンサ20を、交差接合部10Cに設けた矩形状の補強リブ11内の底板10Cbに取り付けるようになっている。
前記第1〜第4変形検出部20a〜20dは、それぞれ直方体状の磁性体20mとこの磁性体20mに巻き付けた銅線20cuとによって構成することにより、それぞれを部材の変形により生ずる応力/歪の変化を検出する応力/歪センサとして構成してあり、図8に示すように発生する磁場Mfの変化により生ずる電圧の値を出力するようになっている。
尚、前記磁性体20mは第1〜第4変形検出部20a〜20dでそれぞれ同一断面形状および同一長さに形成してあり、また、前記銅線20cuの巻数は各第1〜第4変形検出部20a〜20dで同じにしてある。
また、図7に示すように十字に配置された前記各変形検出部20a〜20dの中心部間に、それぞれの磁場Mfが相互に干渉するのを防止する非磁性体13Aを設けてある。
このとき、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dは、図8に示すようにそれぞれの磁性体20mのN・S極は、互いに隣り合う磁性体20mで異極となるように配置することにより、各変形検出部20a〜20dで独立した磁場Mfを発生させるようになっている。
そして、前記センサ20の配置方向は、第1変形検出部20aと第2変形検出部20bとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2に対して直角となり、第2変形検出部20bと第3変形検出部20cとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1に対して直角となり、第3変形検出部20cと第4変形検出部20dとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1に対して直角となり、かつ、第4変形検出部20dと第1変形検出部20aとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2に対して直角となるように配置してある。
従って、自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地して第1・第2補強フレーム10A,10Bが部分的に変形すると、この変形をセンサ20で検出して第1〜第4変形検出部20a〜20dから電圧信号を出力するようになっており、ロールオーバー時にルーフRの左側から接地する場合、ルーフRの右側から接地する場合、ルーフRの略中央から接地する場合のそれぞれの信号波形の特徴を図9〜図11に示す。
このとき、前記コントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、前記センサ20の第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号を高速フーリエ変換(FFT)により処理して、特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを判定するための衝突箇所や乗員保護装置を作動制御するための衝突加速度などの衝突情報を検出するアルゴリズムを備えている。
(1)ルーフ左側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv1を図9(a)に示すと、第1変形検出部20aでは、時間ΔTa1時に第1ピーク電圧Va1が発生するとともに、時間ΔTa2時に第2ピーク電圧Va2が発生し、第2変形検出部20bでは、時間ΔTb1時に第1ピーク電圧Vb1が発生するとともに、時間ΔTb2時に第2ピーク電圧Vb2が発生し、第3変形検出部20cでは、時間ΔTc1時に第1ピーク電圧Vc1が発生するとともに、時間ΔTc2時に第2ピーク電圧Vc2が発生し、第4変形検出部20dでは、時間ΔTd1時に第1ピーク電圧Vd1が発生するとともに、時間ΔTd2時に第2ピーク電圧Vd2が発生する。
そして、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形をFFT処理した後の信号波形Wω1を図9(b)に示すと、第1変形検出部20aでは周波数Δωa1時に第1ピークエネルギーS(ωa1)が発生するとともに、周波数Δωa2時に第2ピークエネルギーS(ωa2)が発生し、第2変形検出部20bでは周波数Δωb1時に第1ピークエネルギーS(ωb1)が発生するとともに、周波数Δωb2時に第2ピークエネルギーS(ωb2)が発生し、第3変形検出部20cでは周波数Δωc1時に第1ピークエネルギーS(ωc1)が発生するとともに、周波数Δωc2時に第2ピークエネルギーS(ωc2)が発生し、第4変形検出部20dでは周波数Δωd1時に第1ピークエネルギーS(ωd1)が発生するとともに、周波数Δωd2時に第2ピークエネルギーS(ωd2)が発生する。
次に、図9(c)に示すように、それらFFT処理後の信号波形Wω1を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ia1を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得る。
(2)ルーフ右側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv2を図10(a)に示し、かつ、第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形をFFT処理した後の信号波形Wω2を図10(b)に示すが、図10(a)は前記図9(a)と略同様であり、かつ、図10(b)は前記図9(b)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとし、そして、図10(c)に示すように、FFT処理後の信号波形Wω2を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ia2を出力させて、ルーフ右側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得る。
(3)ルーフ中央部から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv3を図11(a)に示し、かつ、第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形をFFT処理した後の信号波形Wω3を図11(b)に示すが、図11(a)は前記図9(a)と略同様であり、かつ、図11(b)は前記図9(b)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとし、そして、図11(c)に示すように、FFT処理後の信号波形Wω3を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ia3を出力させて、ルーフ右側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得る。
従って、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力される電圧の信号波形Wv1,Wv2,Wv3を読み取って、これをFFT処理した後の信号波形Wω1,Wω2,Wω3から衝突情報Ia1,Ia2,Ia3を得ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図12のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させることができる。
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS1でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS2で第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力したそれぞれの電圧信号を検知する。
そして、ステップS3ではFFT処理して得られる衝突情報Ia1,Ia2,Ia3から初期接地箇所を判断し、ステップS4でルーフ左側初期接地と判断した場合、ステップS5で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、その衝突エネルギーに応じてステップS6で初期接地側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開し、次にステップS7により所定時間の経過後に反対側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開する。
また、ステップS8でルーフ右側初期接地と判断した場合、ステップS9で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、そのエネルギーに応じてステップS10で初期接地側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開し、次にステップS11により所定時間の経過後に反対側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開する。
更に、ステップS12でルーフ中央部初期接地と判断した場合、ステップS13で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、そのエネルギーに応じてステップS14で左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開する。
以上の構成によりこの第1実施形態の車両衝突箇所判断装置およびロールオーバー時の接地箇所検出方法によれば、ロールオーバー時にルーフRの初期接地箇所の変形をセンサ20の第1〜第4変形検出部20a〜20dで検出して、それらの出力信号からコントローラ30によりルーフRの変形箇所を検知するようになっている。
このとき、前記コントローラ30は、車体Bの実際の変形箇所を検出した信号から所定のアルゴリズムに従って車両の衝突箇所を判定するようになっており、この衝突箇所に応じて複数のカーテンエアバッグ10A,10Bのうちの特定のカーテンエアバッグ10Aまたは10Bを作動できるため、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応したカーテンエアバッグ10A,10Bの作動が可能となり、乗員Cの保護性能を向上することができる。
また、本実施形態にあっては前記センサ20でルーフRの変形箇所を検出する際に、ロールオーバー時にルーフRが接地する衝突領域A1に上面補強部材10を設け、センサ20をその上面補強部材10に設けたので、ルーフRの変形箇所を剛性の高い上面補強部材10を介して精度良く検出できるようになる。
更に、前記補強部材10は、前記衝突領域A1内でその四隅部分に跨るようにX字状に配置構成した第1・第2補強フレーム10A,10Bを設け、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくして、その交差接合部10Cに前記センサ20を配置したので、ロールオーバー時にルーフRが初期接地する箇所、つまりルーフ左側部か、ルーフ右側部か、またはルーフ中央部かを確実かつ精度良く検出できる。
更にまた、コントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、前記センサ20の第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号を高速フーリエ変換(FFT)により処理するアルゴリズムを備えたので、そのセンサ20の出力信号から加速度を求めて衝突エネルギーといった衝突情報Ia1,Ia2,Ia3を検出でき、更にFFT処理後の信号の特徴を予め用意している衝突箇所を特定するための参照データベース30Dと比較することで、衝突箇所を特定できるようになる。
従って、初期接地した側に応じてより適切なタイミングでカーテンエアバッグ1A,1Bを作動させることが可能となり、乗員Cの保護性能の更なる向上を図ることができる。
また、前記センサ20の第1〜第4変形検出部20a〜20dは、部材の変形により生ずる応力/歪の変化を検出する応力/歪センサとして構成したので、発生する磁場Mfの変化により生ずる電圧の値を出力して軸応力と曲げ応力を伝達し易くでき、ロールオーバー時の変形の検出精度を高めるとともに、出力する電圧信号波形から変形箇所を明確に判断できるようになり、カーテンエアバッグ1A,1Bの作動をより正確に行うことができる。
図13〜図16は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図13は(a)にロールオーバー時にルーフ左側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)にセンサの電圧波形をゼロクロッシングした信号波形と(c)にゼロクロッシングした信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図14は(a)にロールオーバー時にルーフ右側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)にセンサの電圧波形をゼロクロッシングした信号波形と(c)にゼロクロッシングした信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図15は(a)にロールオーバー時にルーフ中央部から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)にセンサの電圧波形をゼロクロッシングした信号波形と(c)にゼロクロッシングした信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図16はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
この第2実施形態の車両衝突箇所判断装置は、基本的に第1実施形態に示した図1〜図8と略同様のハード構成となっており、図1に示したように左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bと、センサ20からの出力信号を所定のアルゴリズムに従って処理する参照データベース30Dを内蔵したコントローラ30とを備え、このコントローラ30によって自動車Mの衝突箇所を判定し、その衝突箇所に応じて前記左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動させるようになっている。
また、図3に示したようにルーフRには、衝突領域A1内の四隅部分に跨るように第1・第2補強フレーム10A,10BをX字状に配置構成して、それら第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cに前記センサ20を配置してある。勿論、その交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくしてある。
そして、前記センサ20は、図6,図7に示したように4箇所の突出部20T1〜20T4によって全体的に十字状に形成し、それぞれの突出部20T1〜20T4内に応力/歪センサとして構成される変形検出部20a〜20dを内蔵してあるとともに、第1変形検出部20aと第2変形検出部20bとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2に対して直角となり、第2変形検出部20bと第3変形検出部20cとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1に対して直角となり、第3変形検出部20cと第4変形検出部20dとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1に対して直角となり、かつ、第4変形検出部20dと第1変形検出部20aとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2に対して直角となるように配置してある。
従って、本実施形態にあっても自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地して第1・第2補強フレーム10A,10Bが部分的に変形すると、この変形をセンサ20で検出して第1〜第4変形検出部20a〜20dから電圧信号を出力するようになっており、ロールオーバー時にルーフRの左側から接地する場合、ルーフRの右側から接地する場合、ルーフRの略中央から接地する場合のそれぞれの信号波形の特徴を図13〜図15に示す。
ここで、本実施形態では前記コントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号をゼロクロッシングにより処理して、特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを判定するための衝突箇所や乗員保護装置を作動制御するための衝突加速度などの衝突情報を検出するアルゴリズムを備えている。
(1)ルーフ左側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv1を図13(a)に示すと、第1実施形態(図9(a)参照)と略同様に第1変形検出部20aでは、時間ΔTa1時に第1ピーク電圧Va1が発生するとともに、時間ΔTa2時に第2ピーク電圧Va2が発生し、第2変形検出部20bでは、時間ΔTb1時に第1ピーク電圧Vb1が発生するとともに、時間ΔTb2時に第2ピーク電圧Vb2が発生し、第3変形検出部20cでは、時間ΔTc1時に第1ピーク電圧Vc1が発生するとともに、時間ΔTc2時に第2ピーク電圧Vc2が発生し、第4変形検出部20dでは、時間ΔTd1時に第1ピーク電圧Vd1が発生するとともに、時間ΔTd2時に第2ピーク電圧Vd2が発生する。
そして、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形をゼロクロッシング処理した後の信号波形Ws1を図13(b)に示すと、第1変形検出部20aでは、時間Δτa1時に第1ピークエネルギー+Sa1と−Sa1が発生するとともに、時間Δτa2時に第2ピークエネルギー+Sa2と−Sa2が発生し、第2変形検出部20bでは、時間Δτb1時に第1ピークエネルギー+Sb1と−Sb1が発生するとともに、時間Δτb2時に第2ピークエネルギー+Sb2と−Sb2が発生し、第3変形検出部20cでは、時間Δτc1時に第1ピークエネルギー+Sc1と−Sc1が発生するとともに、時間Δτc2時に第2ピークエネルギー+Sc2と−Sc2が発生し、第4変形検出部20dでは、時間Δτd1時に第1ピークエネルギー+Sd1と−Sd1が発生するとともに、時間Δτd2時に第2ピークエネルギー+Sd2と−Sd2が発生する。
次に、図13(c)に示すように、それらゼロクロッシング処理後の信号波形Ws1を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ib1を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得、更にそのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の速度を得る。
(2)ルーフ右側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv2を図14(a)に示し、かつ、第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形をゼロクロッシング処理した後の信号波形Ws2を図14(b)に示すが、図14(a)は前記図13(a)と略同様であり、かつ、図14(b)は前記図13(b)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとし、そして、図14(c)に示すように、FFT処理後の信号波形Ws2を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ib2を出力させて、ルーフ右側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得る。
(3)ルーフ中央部から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv3を図15(a)に示し、かつ、第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形をゼロクロッシング処理した後の信号波形Ws3を図15(b)に示すが、図15(a)は前記図13(a)と略同様であり、かつ、図15(b)は前記図13(b)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとし、そして、図15(c)に示すように、FFT処理後の信号波形Ws3を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ib3を出力させて、ルーフ右側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得る。
従って、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力される電圧の信号波形Wv1,Wv2,Wv3を読み取って、これをゼロクロッシング処理した後の信号波形Ws1,Ws2,Ws3から衝突情報Ib1,Ib2,Ib3を得ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図16のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させることができる。
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS20でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS21で第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力したそれぞれの電圧信号を検知する。
そして、ステップS22ではゼロクロッシング処理して得られる衝突情報Ib1,Ib2,Ib3から初期接地箇所を判断し、ステップS23でルーフ左側初期接地と判断した場合、ステップS24で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS25で衝突速度を算出し、それら衝突エネルギーと衝突速度に応じてステップS26で初期接地側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開し、次にステップS27により所定時間の経過後に反対側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開する。
また、ステップS28でルーフ右側初期接地と判断した場合、ステップS29で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS30で衝突速度を算出し、それら衝突エネルギーと衝突速度に応じてステップS31で初期接地側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開し、次にステップS32により所定時間の経過後に反対側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開する。
更に、ステップS33でルーフ中央部初期接地と判断した場合、ステップS34で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS35で衝突速度を算出し、それら衝突エネルギーと衝突速度に応じてステップS36で左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開する。
以上の構成によりこの第2実施形態の車両衝突箇所判断装置にあっても、第1実施形態と略同様の作用効果を奏することができ、特に本実施形態ではコントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号をゼロクロッシングにより処理するアルゴリズムを備えたので、ある程度リアルタイムに近い時間軸に応じて処理することができるので、少なくとも衝突加速度や衝突速度といった衝突情報Ib1,Ib2,Ib3を検出でき、更にゼロクロッシング処理後の信号の特徴を予め用意している衝突箇所を特定するための参照データベース30Dと比較することで、衝突箇所を特定できる。
従って、初期接地した側に応じてより適切なタイミングでカーテンエアバッグ1A,1Bを作動させることが可能となり、乗員Cの保護性能の更なる向上を図ることができる。
図17〜図20は本発明の第3実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図17は(a)にロールオーバー時にルーフ左側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)に自己相関関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を自己相関関数で処理した信号波形と(d)に自己相関関数で処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図18は(a)にロールオーバー時にルーフ右側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)に自己相関関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を自己相関関数で処理した信号波形と(d)に自己相関関数で処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図19は(a)にロールオーバー時にルーフ中央部から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)に自己相関関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を自己相関関数で処理した信号波形と(d)に自己相関関数で処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図20はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
この第3実施形態の車両衝突箇所判断装置は、第2実施形態と同様に基本的に第1実施形態に示した図1〜図8と略同様のハード構成となっており、図1に示したように左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bと、センサ20からの出力信号を所定のアルゴリズムに従って処理する参照データベース30Dを内蔵したコントローラ30とを備え、このコントローラ30によって自動車Mの衝突箇所を判定し、その衝突箇所に応じて前記左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動させるようになっている。
また、図3に示したようにルーフRには、衝突領域A1内の四隅部分に跨るように第1・第2補強フレーム10A,10BをX字状に配置構成して、それら第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cの曲げ強度を大きくして前記センサ20を配置してあるとともに、前記センサ20は、図6,図7に示したように4箇所の突出部20T1〜20T4内に応力/歪センサとして構成される変形検出部20a〜20dを内蔵してあり、また、第1変形検出部20aと第2変形検出部20bとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2に対して直角となり、第2変形検出部20bと第3変形検出部20cとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1に対して直角となり、第3変形検出部20cと第4変形検出部20dとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1に対して直角となり、かつ、第4変形検出部20dと第1変形検出部20aとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2に対して直角となるように配置してある。
従って、本実施形態にあっても自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地して第1・第2補強フレーム10A,10Bが部分的に変形すると、この変形をセンサ20で検出して第1〜第4変形検出部20a〜20dから電圧信号を出力するようになっており、ロールオーバー時にルーフRの左側から接地する場合、ルーフRの右側から接地する場合、ルーフRの略中央から接地する場合のそれぞれの信号波形の特徴を図17〜図19に示す。
ここで、本実施形態では前記コントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号を自己相関関数により処理して、特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを判定するための衝突箇所や乗員保護装置を作動制御するための衝突加速度などの衝突情報を検出するアルゴリズムを備えている。
(1)ルーフ左側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv1を図17(a)に示すと、第1実施形態(図9(a)参照)と略同様に第1変形検出部20aでは、時間ΔTa1時に第1ピーク電圧Va1が発生するとともに、時間ΔTa2時に第2ピーク電圧Va2が発生し、第2変形検出部20bでは、時間ΔTb1時に第1ピーク電圧Vb1が発生するとともに、時間ΔTb2時に第2ピーク電圧Vb2が発生し、第3変形検出部20cでは、時間ΔTc1時に第1ピーク電圧Vc1が発生するとともに、時間ΔTc2時に第2ピーク電圧Vc2が発生し、第4変形検出部20dでは、時間ΔTd1時に第1ピーク電圧Vd1が発生するとともに、時間ΔTd2時に第2ピーク電圧Vd2が発生する。
そして、図17(b)に示すように前記信号波形Wv1を遅延回路32に入力し、得られたラグτ分を遅らせた信号波形Wv1′(x(t−τ))と元の信号波形Wv1(x(t))とを乗算回路33に入力することにより、自己相関関数C(τ)による信号波形Wτ1が得られる。
信号波形Wτ1の特徴は、図17(c)に示すように第1変形検出部20aでは、時間Δτa1時に第1ピーク電圧V′a1が発生するとともに、時間Δτa2時に第2ピーク電圧V′a2が発生し、第2変形検出部20bでは、時間Δτb1時に第1ピーク電圧V′b1が発生するとともに、時間Δτb2時に第2ピーク電圧V′b2が発生し、第3変形検出部20cでは、時間Δτc1時に第1ピーク電圧V′c1が発生するとともに、時間Δτc2時に第2ピーク電圧V′c2が発生し、第4変形検出部20dでは、時間Δτd1時に第1ピーク電圧V′d1が発生するとともに、時間Δτd2時に第2ピーク電圧V′d2が発生する。
次に、図17(d)に示すように、それら自己相関関数処理後の信号波形Wτ1を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ic1を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得、更にそのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の速度を得る。
(2)ルーフ右側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv2を図18(a)に示し、そして、その信号波形Wv2を図18(b)に示すように遅延回路32に入力し、得られたラグτ分を遅らせた信号波形Wv2′(x(t−τ))と元の信号波形Wv2(x(t))とを乗算回路33に入力することにより、自己相関関数C(τ)による信号波形Wτ2が得られる。
また、前記信号波形Wτ2の特徴を図18(c)に示すが、その自己相関関数処理後の信号波形Wτ2を、図18(d)に示すように予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ic2を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得、更にそのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の速度を得る。
尚、図18(a)は前記図17(a)と略同様であり、また、図18(c)は図17(c)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとする。
(3)ルーフ中央部から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv3を図19(a)に示し、そして、その信号波形Wv3を図19(b)に示すように遅延回路32に入力し、得られたラグτ分を遅らせた信号波形Wv3′(x(t−τ))と元の信号波形Wv2(x(t))とを乗算回路33に入力することにより、自己相関関数C(τ)による信号波形Wτ3が得られる。
前記信号波形Wτ3の特徴を図19(c)に示すが、その自己相関関数処理後の信号波形Wτ3を、図19(d)に示すように予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Ic3を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得、更にそのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の速度を得る。
尚、図19(a)は前記図17(a)と略同様であり、また、図19(c)は図17(c)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとする。
従って、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力される電圧の信号波形Wv1,Wv2,Wv3を読み取って、これを自己相関関数処理した後の信号波形Wτ1,Wτ2,Wτ3から衝突情報Ic1,Ic2,Ic3を得ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図20のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させることができる。
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS40でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS41で第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力したそれぞれの電圧信号を検知する。
そして、ステップS42では自己相関関数処理して得られる衝突情報Ic1,Ic2,Ic3から初期接地箇所を判断し、ステップS43でルーフ左側初期接地と判断した場合、ステップS44で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS45で衝突速度を算出し、それら衝突エネルギーと衝突速度に応じてステップS46で初期接地側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開し、次にステップS47により所定時間の経過後に反対側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開する。
また、ステップS48でルーフ右側初期接地と判断した場合、ステップS49で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS50で衝突速度を算出し、それら衝突エネルギーと衝突速度に応じてステップS51で初期接地側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開し、次にステップS52により所定時間の経過後に反対側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開する。
更に、ステップS53でルーフ中央部初期接地と判断した場合、ステップS54で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS55で衝突速度を算出し、それら衝突エネルギーと衝突速度に応じてステップS56で左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開する。
以上の構成によりこの第3実施形態の車両衝突箇所判断装置にあっても、第1実施形態と略同様の作用効果を奏することができ、特に本実施形態ではコントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号を自己相関関数により処理するアルゴリズムを備えたので、よりリアルタイムに近い時間軸に応じて処理することができるので、少なくとも衝突加速度や衝突速度といった衝突情報Ic1,Ic2,Ic3をより精度良く検出でき、更に自己相関関数による信号処理は、各変形検出部20a〜20dからの信号の特徴をより顕著に表すため、予め用意している衝突箇所を特定するための参照データベース30Dと比較し易くなり、より精度良く衝突箇所を特定できるようになる。
従って、初期接地した側に応じてより適切なタイミングでカーテンエアバッグ1A,1Bを作動させることが可能となり、乗員Cの保護性能の更なる向上を図ることができる。
図21〜図24は本発明の第4実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図21は(a)にロールオーバー時にルーフ左側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)に相互共分散関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を相互共分散関数で処理した信号波形と(d)に相互共分散関数で処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図22は(a)にロールオーバー時にルーフ右側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)に相互共分散関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を相互共分散関数で処理した信号波形と(d)に相互共分散関数で処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図23は(a)にロールオーバー時にルーフ中央部から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)に相互共分散関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を相互共分散関数で処理した信号波形と(d)に相互共分散関数で処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図24はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
この第4実施形態の車両衝突箇所判断装置は、第2,第3実施形態と同様に基本的に第1実施形態に示した図1〜図8と略同様のハード構成となっており、図1に示したように左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bと、センサ20からの出力信号を所定のアルゴリズムに従って処理する参照データベース30Dを内蔵したコントローラ30とを備え、このコントローラ30によって自動車Mの衝突箇所を判定し、その衝突箇所に応じて前記左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動させるようになっている。
また、図3に示したようにルーフRには、衝突領域A1内の四隅部分に跨るように第1・第2補強フレーム10A,10BをX字状に配置構成して、それら第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cの曲げ強度を大きくして前記センサ20を配置してあるとともに、前記センサ20は、図6,図7に示したように4箇所の突出部20T1〜20T4内に応力/歪センサとして構成される変形検出部20a〜20dを内蔵してあり、また、第1変形検出部20aと第2変形検出部20bとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2に対して直角となり、第2変形検出部20bと第3変形検出部20cとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1に対して直角となり、第3変形検出部20cと第4変形検出部20dとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1に対して直角となり、かつ、第4変形検出部20dと第1変形検出部20aとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2に対して直角となるように配置してある。
従って、本実施形態にあっても自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地して第1・第2補強フレーム10A,10Bが部分的に変形すると、この変形をセンサ20で検出して第1〜第4変形検出部20a〜20dから電圧信号を出力するようになっており、ロールオーバー時にルーフRの左側から接地する場合、ルーフRの右側から接地する場合、ルーフRの略中央から接地する場合のそれぞれの信号波形の特徴を図21〜図23に示す。
ここで、本実施形態では前記コントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号を相互共分散関数により処理して、特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを判定するための衝突箇所や乗員保護装置を作動制御するための衝突加速度などの衝突情報を検出するアルゴリズムを備えている。
(1)ルーフ左側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv1を図21(a)に示すと、第1実施形態(図9(a)参照)と略同様に第1変形検出部20aでは、時間ΔTa1時に第1ピーク電圧Va1が発生するとともに、時間ΔTa2時に第2ピーク電圧Va2が発生し、第2変形検出部20bでは、時間ΔTb1時に第1ピーク電圧Vb1が発生するとともに、時間ΔTb2時に第2ピーク電圧Vb2が発生し、第3変形検出部20cでは、時間ΔTc1時に第1ピーク電圧Vc1が発生するとともに、時間ΔTc2時に第2ピーク電圧Vc2が発生し、第4変形検出部20dでは、時間ΔTd1時に第1ピーク電圧Vd1が発生するとともに、時間ΔTd2時に第2ピーク電圧Vd2が発生する。
そして、図21(b)に示すように前記信号波形Wv1を遅延回路32に入力し、得られたラグκ分を遅らせた信号波形Wv1′(y(n−κ))と元の信号波形Wv1(y(n))とを乗算回路33に入力することにより、相互共分散関数C(i,j)による信号波形Wc1が得られる。
信号波形Wc1の特徴は、図21(c)に示すように各変形検出部20a〜20dの相互共分散関数により処理した信号波形C(1,1)、C(2,2)、C(3,3)、C(4,4)を出力するとともに、各変形検出部20a〜20dから出力される信号同士の相互の関係を相互共分散関数により処理した信号波形C(1,2)〜C(1,4)、C(2,1)、C(2,3)、C(2,4)、C(3,1)、C(3,2)、C(3,4)、C(4,1)〜C(4,3) を出力し、それらはマトリックス形式で表示される。
また、これら相互共分散関数により処理した信号波形Wc1において、第1変形検出部20aからの信号波形であるC(1,1)は、時間T1(1,1)時に第1ピーク電圧V1(1,1)が発生するとともに、時間T2(1,1)時に第2ピーク電圧V2(1,1)が発生し、かつ、第2変形検出部20bからの信号波形であるC(2,2)は、時間T1(2,2)時に第1ピーク電圧V1(2,2)が発生するとともに、時間T2(2,2)時に第2ピーク電圧V2(2,2)が発生し、かつ、第3変形検出部20cからの信号波形であるC(3.3)は、時間T1(3,3)時に第1ピーク電圧V1(3,3)が発生するとともに、時間T2(3.3)時に第2ピーク電圧V2(3.3)が発生し、かつ、第4変形検出部20dからの信号波形であるC(4.4)は、時間T1(4,4)時に第1ピーク電圧V1(4,4)が発生するとともに、時間T2(4,4)時に第2ピーク電圧V2(4,4)が発生する。
他方、信号波形C(1,2)は時間T1(1,2)時にピーク電圧V1(1,2)が発生し、信号波形C(1,4)は時間T1(1,4)時にピーク電圧V1(1,4)が発生し、信号波形C(2,3)は、時間T1(2,3)時にピーク電圧V1(2,3)が発生し、かつ、信号波形C(3,4)は時間T1(3,4)時にピーク電圧V1(3,4)が発生する。尚、この場合C(1,3)、C(2,4)はピーク電圧を発生していない。
一方、信号波形C(2,1)はC(1,2)と、C(3,1)はC(1,3)と、C(3,2)はC(2,3)と、C(4,1)はC(1,4)と、C(4,2)はC(2,4)と、C(4,3)はC(3,4)と略対称となる。
次に、図21(d)に示すように、それら相互共分散関数処理後の信号波形Wc1を予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Id1を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得、また、そのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の速度を得、更に衝突時の入力角度を得る。
(2)ルーフ右側から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv2を図22(a)に示し、そして、その信号波形Wv2を図22(b)に示すように遅延回路32に入力し、得られたラグκ分を遅らせた信号波形Wv2′(y(n−κ))と元の信号波形Wv2(y(n))とを乗算回路33に入力することにより、相互共分散関数C(i,j)による信号波形Wc2が得られる。
また、信号波形Wc2の特徴を図22(c)に示すが、その相互共分散関数処理後の信号波形Wc2を、図22(d)に示すように予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Id2を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得、また、そのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の速度を得、更に衝突時の入力角度を得る。
尚、図22(a)は前記図21(a)と略同様であり、また、図22(c)は前記図21(c)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとする。
(3)ルーフ中央部から接地する場合の第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号波形Wv3を図23(a)に示し、そして、その信号波形Wv3を図23(b)に示すように遅延回路32に入力し、得られたラグκ分を遅らせた信号波形Wv3′(y(n−κ))と元の信号波形Wv3(y(n))とを乗算回路33に入力することにより、相互共分散関数C(i,j)による信号波形Wc3が得られる。
また、信号波形Wc3の特徴を図23(c)に示すが、その相互共分散関数処理後の信号波形Wc3を、図23(d)に示すように予め用意された前記参照データベース30Dと比較することで衝突情報Id3を出力させて、ルーフ左側接地の判断を行い、かつ、ルーフ衝突時のエネルギー(加速度)を得、また、そのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の速度を得、更に衝突時の入力角度を得る。
尚、図23(a)は前記図21(a)と略同様であり、また、図23(c)は前記図21(c)と略同様であるため、それらの重複する説明を省略するものとする。
従って、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力される電圧の信号波形Wv1,Wv2,Wv3を読み取って、これを相互共分散関数処理した後の信号波形Wc1,Wc2,Wc3から衝突情報Id1,Id2,Id3を得ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図24のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させることができる。
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS60でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS61で第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力したそれぞれの電圧信号を検知する。
そして、ステップS62では相互共分散関数処理して得られる衝突情報Id1,Id2,Id3から初期接地箇所を判断し、ステップS63でルーフ左側初期接地と判断した場合、ステップS64で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS65で衝突速度を算出し、かつ、ステップS66で衝突時の入力角度を算出する。
次に、それら衝突エネルギーと衝突速度と入力角度に応じてステップS67で初期接地側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開し、次にステップS68により所定時間の経過後に反対側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開する。
また、ステップS69でルーフ右側初期接地と判断した場合、ステップS70で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS71で衝突速度を算出し、かつ、ステップS72で衝突時の入力角度を算出する。
次に、それら衝突エネルギーと衝突速度と入力角度に応じてステップS73で初期接地側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開し、次にステップS74により所定時間の経過後に反対側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開する。
更に、ステップS75でルーフ中央部初期接地と判断した場合、ステップS76で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS77で衝突速度を算出し、かつ、ステップS78で衝突時の入力角度を算出する。
次に、それら衝突エネルギーと衝突速度と入力角度に応じてステップS79で左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開する。
以上の構成によりこの第4実施形態の車両衝突箇所判断装置にあっても、第1実施形態と略同様の作用効果を奏することができ、特に本実施形態ではコントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号を相互共分散関数により処理するアルゴリズムを備えたので、よりリアルタイムに近い時間軸に応じて処理することができるので、少なくとも衝突加速度や衝突速度といった衝突情報Id1,Id2,Id3をより精度良く検出でき、更に相互共分散関数による信号処理は、各変形検出部20a〜20dからの信号の特徴をより顕著に表すため、予め用意している衝突箇所を特定するための参照データベース30Dと比較し易くなり、より精度良く衝突箇所を特定できるようになる。
従って、初期接地した側に応じてより適切なタイミングでカーテンエアバッグ1A,1Bを作動させることが可能となり、乗員Cの保護性能の更なる向上を図ることができる。
図25,図26は本発明の第5実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図25は(a)にロールオーバー時にルーフ左側から接地した場合のセンサの電圧波形と(b)に高速フーリエ変換、ゼロクロッシング、自己相関関数および相互共分散関数で処理して信号波形を求める流れと(c)に信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図26はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
この第5実施形態の車両衝突箇所判断装置は、第2〜第4実施形態と同様に基本的に第1実施形態に示した図1〜図8と略同様のハード構成となっており、図1に示したように左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bと、センサ20からの出力信号を所定のアルゴリズムに従って処理する参照データベース30Dを内蔵したコントローラ30とを備え、このコントローラ30によって自動車Mの衝突箇所を判定し、その衝突箇所に応じて前記左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動させるようになっている。
また、図3に示したようにルーフRには、衝突領域A1内の四隅部分に跨るように第1・第2補強フレーム10A,10BをX字状に配置構成して、それら第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cの曲げ強度を大きくして前記センサ20を配置してあるとともに、前記センサ20は、図6,図7に示したように4箇所の突出部20T1〜20T4内に応力/歪センサとして構成される変形検出部20a〜20dを内蔵してあり、また、第1変形検出部20aと第2変形検出部20bとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2に対して直角となり、第2変形検出部20bと第3変形検出部20cとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1に対して直角となり、第3変形検出部20cと第4変形検出部20dとを結ぶ直線が第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1に対して直角となり、かつ、第4変形検出部20dと第1変形検出部20aとを結ぶ直線が第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2に対して直角となるように配置してある。
従って、本実施形態にあっても自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地して第1・第2補強フレーム10A,10Bが部分的に変形すると、この変形をセンサ20で検出して第1〜第4変形検出部20a〜20dから電圧信号を出力するようになっており、ロールオーバー時にルーフRの左側から接地する場合、ルーフRの右側から接地する場合、ルーフRの略中央から接地する場合のそれぞれの信号波形を出力する。
ここで、本実施形態では前記コントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号を高速フーリエ変換(FFT)、ゼロクロッシング、自己相関関数および相互共分散関数の組み合わせにより処理して、特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを判定するための衝突箇所や乗員保護装置を作動制御するための衝突加速度などの衝突情報を検出するアルゴリズムを備えている。
即ち、ルーフ左側から接地する場合(または、ルーフ右側から接地する場合、若しくはルーフ中央部から接地する場合)の第1〜第4変形検出部20a〜20dのそれぞれの信号波形Wv1(Wv2,Wv3)を図25(a)に示すと、第1実施形態と略同様に第1変形検出部20aでは、時間ΔTa1時に第1ピーク電圧Va1が発生するとともに、時間ΔTa2時に第2ピーク電圧Va2が発生し、第2変形検出部20bでは、時間ΔTb1時に第1ピーク電圧Vb1が発生するとともに、時間ΔTb2時に第2ピーク電圧Vb2が発生し、第3変形検出部20cでは、時間ΔTc1時に第1ピーク電圧Vc1が発生するとともに、時間ΔTc2時に第2ピーク電圧Vc2が発生し、第4変形検出部20dでは、時間ΔTd1時に第1ピーク電圧Vd1が発生するとともに、時間ΔTd2時に第2ピーク電圧Vd2が発生する。
そして、図25(b)に示すように前記信号波形Wv1(Wv2,Wv3)をそれぞれFFT、ゼロクロッシング、自己相関関数および相互共分散関数で処理して信号波形Wα1(Wα2,Wα3)を得る。
次に、図25(c)に示すように前記第1〜第4変形検出部20a〜20dの信号処理後のそれぞれの信号波形Wα1(Wα2,Wα3)の特徴を、予め用意した参照データベース30Dと比較することでそれぞれに対応した衝突情報Ie1(Ie2,Ie3)を出力させてルーフ左側接地、ルーフ右側接地、またはルーフ中央部接地を判断し、かつ、ルーフ衝突時の各エネルギー(加速度)を得、また、そのエネルギー(加速度)を時間積分することでルーフ衝突時の各速度を得、更に衝突時の各入力角度を得る。
従って、前記第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力される電圧の信号波形Wv1(Wv2,Wv3)を読み取って、これをFFT、ゼロクロッシング、自己相関関数および相互共分散関数処理した後の信号波形Wα1(Wα2,Wα3)から衝突情報Ie1(Ie2,Ie3)を得ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図26のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させることができる。
即ち、前記アルゴリズムは、第4実施形態に示した図24の処理と同様となり、ステップS60でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS61で第1〜第4変形検出部20a〜20dから出力したそれぞれの電圧信号を検知する。
そして、ステップS62ではFFT、ゼロクロッシング、自己相関関数および相互共分散関数処理して得られる衝突情報Ie1,Ie2,Ie3から初期接地箇所を判断し、ステップS63でルーフ左側初期接地と判断した場合、ステップS64で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS65で衝突速度を算出し、かつ、ステップS66で衝突時の入力角度を算出する。
次に、それら衝突エネルギーと衝突速度と入力角度に応じてステップS67で初期接地側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開し、次にステップS68により所定時間の経過後に反対側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開する。
また、ステップS69でルーフ右側初期接地と判断した場合、ステップS70で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS71で衝突速度を算出し、かつ、ステップS72で衝突時の入力角度を算出する。
次に、それら衝突エネルギーと衝突速度と入力角度に応じてステップS73で初期接地側の右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開し、次にステップS74により所定時間の経過後に反対側の左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開する。
更に、ステップS75でルーフ中央部初期接地と判断した場合、ステップS76で衝突エネルギー(加速度G)を算出するとともに、ステップS77で衝突速度を算出し、かつ、ステップS78で衝突時の入力角度を算出する。
次に、それら衝突エネルギーと衝突速度と入力角度に応じてステップS79で左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開する。
以上の構成によりこの第5実施形態の車両衝突箇所判断装置にあっても、第1実施形態と略同様の作用効果を奏することができ、特に本実施形態ではコントローラ30に内蔵した参照データベース30Dは、第1〜第4変形検出部20a〜20dからの出力信号をFFT、ゼロクロッシング、自己相関関数および相互共分散関数の組み合わせにより処理するアルゴリズムを備えたので、各信号処理単独では出力し難かった特徴を互いに補完し合うことができる。
その結果、各変形検出部20a〜20dからの信号の特徴をより顕著に表すことができるようになり、予め用意した衝突箇所を特定するための参照データベース30Dと比較し易くなるため、より精度よく変形箇所の特定が可能となり、かつ、衝突加速度や衝突速度および衝突時の入力角度といった情報もより精度良く出力することができる。
従って、初期接地した側に応じてより適切なタイミングでカーテンエアバッグ1A,1Bを作動させることが可能となり、乗員Cの保護性能の更なる向上を図ることができる。
図27〜図32は本発明の第6実施形態を示し、図27は車体側面構造を示す斜視図、図28はセンサの取付け箇所を(a)〜(f)にそれぞれ示す斜視図、図29はセンサの配置箇所を示す車体側面図、図30は側面衝突箇所に対応した領域1〜6を示す側面図、図31は(a)に側面衝突時の各センサの電圧波形と(b)に相互共分散関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を相互共分散関数により処理した信号波形と(d)に相互共分散関数により処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図32は側面衝突から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
本発明の車両衝突箇所判断装置は自動車Mの側面衝突に適用したもので、図27に示すように側面衝突時に衝突荷重を受ける衝突領域A2に側面補強部材100を設け、変形検出手段としての第1〜第6センサ21a〜21fをその側面補強部材100に設けてある。
また、前記側面補強部材100は、車両下部の車幅方向側部に車両前後方向に延在する下部前後部材としてのサイドシル101と、そのサイドシル101の車両前後方向略中央部と車両上端部側縁としてのルーフサイドレール102の前後方向略中央部とを連結する中央部上下部材としてのセンターピラー103と、車両側面の前方・後方開口部104,105を開閉可能に閉止する前・後扉部材としてのフロントドア106,リアドア107内の車両前後方向間に跨ってそれぞれ結合した前・後扉内部材としてのフロント・リアインパクトビーム108,109と、を備える。
即ち、車体Bの側面構造は、前記センターピラー103の車体前後方向にそれぞれ所定間隔をおいてフロントピラー110とリアピラー111が設けられ、フロントピラー110、センターピラー103、サイドシル101およびルーフサイドレール102で囲まれる部分に前記前方開口部104が形成され、この前方開口部104に前記フロントドア106が開閉自在に取り付けられるとともに、センターピラー103、リアピラー111、サイドシル101およびルーフサイドレール102で囲まれる部分に前記後方開口部105が形成され、この後方開口部105に前記リアドア107が開閉自在に取り付けられる。
前記フロントドア106の内部には、フロントピラー110とセンターピラー103の上下方向略中央部をそれぞれ結ぶ直線に沿って前方フレーム112が設けられるとともに、前記リアドア107の内部には、センターピラー103とリアピラー111の上下方向略中央部をそれぞれ結ぶ直線に沿って後方フレーム113が設けられる。
そして、前記フロントインパクトビーム108は上部インパクトビーム108Aと下部インパクトビーム108Bとで構成され、それぞれがフロントドア106内部の下縁と前記前方フレーム112との間に車両前後方向に配置されるとともに、同様に前記リアインパクトビーム109にあっても上部インパクトビーム109Aと下部インパクトビーム109Bとで構成され、それぞれがリアドア107内部の下縁と前記後方フレーム113との間に車両前後方向に配置される。
尚、上述した車体Bの側面構造は車両左側を説明したが、車両右側にあっても同様の構造となる。
そして、前記第1センサ21aを、図28(a)に示すようにフロントインパクトビーム108の上部インパクトビーム108Aの前後方向略中央部に取り付け、前記第2センサ21bを、図28(b)に示すようにセンターピラー103の上下方向略中央部の内部に取り付け、前記第3センサ21cを、図28(c)に示すようにリアインパクトビーム109の上部インパクトビーム109Aの前後方向略中央部に取付け、前記第4センサ21dを、図28(d)に示すようにサイドシル101の車両前半部の前後方向略中央部の内部に取り付け、前記第5センサ21eを、図28(e)に示すようにセンターピラー103の下部の内部に取り付け、前記第6センサ21fを、図28(f)に示すようにサイドシル101の車両後半部の前後方向略中央部の内部に取り付けてある。
このようにして取付けられた前記第1〜第6センサ21a〜21fは、図29に示すように乗員Cの居住空間となる車体側面の衝突領域A2に、上下二段となって前後方向に3個づつ配置されるようになっており、勿論、これら第1〜第6センサ21a〜21fは車体Bの両側面に略対称に配置される。
そして、図30に示すように第1センサ21aの配置箇所に対応する所定範囲が領域1となり、第2センサ21bの配置箇所に対応する所定範囲が領域2となり、第3センサ21cの配置箇所に対応する所定範囲が領域3となり、第4センサ21dの配置箇所に対応する所定範囲が領域4となり、第5センサ21eの配置箇所に対応する所定範囲が領域5となり、第6センサ21fの配置箇所に対応する所定範囲が領域6として設定してある。 また、本実施形態にあっても前記第1〜第6センサ21a〜21fは、前記各実施形態と同様に部材の変形により生ずる応力/歪の変化を検出する応力/歪センサとして構成し、発生する磁場Mfの変化により生ずる電圧の値を出力するようになっている。
ところで、本実施形態の自動車Mは、乗員保護装置として非常時に作動・展開して前席乗員の側面を保護する図外の前方側面エアバッグと、後席乗員の側面を保護する図外の後方側面エアバッグと、前席乗員の頭部を保護する前方頭部保護エアバッグと、後席乗員の頭部を保護する後方頭部保護エアバッグと、を備えている。
そして、車体Bに側面衝突して衝突領域A2が部分的に変形すると、その変形を第1〜第6センサ21a〜21fが検出して電圧信号を出力するようになっており、その信号を処理するために自動車Mには、図29に示すように出力信号を所定のアルゴリズムに従って処理する参照データベース40Dを内蔵して衝突箇所を判定し、その衝突箇所に応じて前記各エアバッグのうちの特定のエアバッグを作動させる保護装置作動手段としてのコントローラ40を備えている。
従って、前記コントローラ40に内蔵した参照データベース40Dは、例えば、前記第1〜第6センサ21a〜21fからの出力信号を相互共分散関数により処理して、特定のエアバッグを判定するための衝突箇所および乗員保護装置を作動制御するための衝突加速度および衝突速度および衝突箇所への入力角度などの衝突情報を検出するアルゴリズムを備えている。
即ち、この場合の側面衝突は車体の左側面と右側面とで同様の処理となり、衝突領域A2に衝突した場合の第1〜第6センサ21a〜21fの信号波形Wv4を図31(a)に示すと、第1センサ21aでは時間ΔT1時にピーク電圧V1を発生し、第2センサ21bでは時間ΔT2時にピーク電圧V2を発生し、第3センサ21cでは時間ΔT3時にピーク電圧V3を発生し、第4センサ21dでは時間ΔT4時にピーク電圧V4を発生し、第5センサ21eでは時間ΔT5時にピーク電圧V5を発生し、第6センサ21fでは時間ΔT6時にピーク電圧V6を発生する。
そして、図31(b)に示すように前記信号波形Wv4を遅延回路42に入力し、得られたラグκ分を遅らせた信号波形Wv4′(y(n−κ))と元の信号波形Wv4(y(n))とを乗算回路43に入力することにより、相互共分散関数C(i,j)による信号波形Wc4が得られる。
信号波形Wc4の特徴は、図31(c)に示すように第1〜第6センサ21a〜20fの相互共分散関数により処理した信号波形C(1,1)、C(2,2)、C(3,3)、C(4,4)、C(5,5)、C(6,6)を出力するとともに、各センサ21a〜20fから出力される信号同士の相互の関係を相互共分散関数により処理した信号波形C(1,2)〜C(1,6)、C(2,1)、C(2,3)〜C(2,6)、C(3,1)、C(3,2)、C(3,4)〜C(3,6)、C(4,1)〜C(4,3)、C(4,5)、C(4,6)、C(5,1)〜C(5,4)、C(5,6)、C(6,1)〜C(6,5)を出力し、それらはマトリックス形式で表示される。
また、これら相互共分散関数により処理した信号波形Wc4において、第1センサ21aからの信号波形であるC(1,1)は、時間ΔT(1,1)時にピーク電圧V(1,1)が発生し、第2センサ21bからの信号波形である(2,2)は、時間ΔT(2,2)時にピーク電圧V(2,2)が発生し、第3センサ21cからの信号波形であるC(3,3)は、時間ΔT(3,3)時にピーク電圧V(3,3)が発生し、第4センサ21dからの信号波形であるC(4,4)は、時間ΔT(4,4)時にピーク電圧V(4,4)が発生し、第5センサ21eからの信号波形であるC(5,5)は、時間ΔT(5,5)時にピーク電圧V(5,5)が発生し、第6センサ21fからの信号波形であるC(6,6)は、時間ΔT(6,6)時にピーク電圧V(6,6)が発生する。
他方、信号波形C(1,2)は時間ΔT(1,2)時にピーク電圧V(1,2)が発生し、信号波形C(1,4)は時間ΔT(1,4)時にピーク電圧V(1,4)が発生し、信号波形C(1,5)は、時間ΔT(1,5)時にピーク電圧V(1,5)が発生し、信号波形C(2,4)は時間ΔT(2,4)時にピーク電圧V(2,4)が発生し、信号波形C(2,5)は、時間ΔT(2,5)時にピーク電圧V(2,5)が発生し、かつ、信号波形C(4,5)は時間ΔT(4,5)時にピーク電圧V(4,5)が発生する。尚、この場合C(1,3)、C(2,3)、C(3,4)、C(3,5)、C(1,6)〜C(5,6)はピーク電圧を発生していない。
一方、信号波形C(2,1)はC(1,2)と、C(3,1)はC(1,3)と、C(3,2)はC(2,3)と、C(4,1)はC(1,4)と、C(4,2)はC(2,4)と、C(4,3)はC(3,4)と、C(5,1)はC(1,5)と、C(5,2)はC(2,5)と、C(5,3)はC(3,5)と、C(5,4)はC(4,5)と、C(6,1)はC(1,6)と、C(6,2)はC(2,6)と、C(6,3)はC(3,6)と、C(6,4)はC(4,6)と、C(6,5)はC(5,6)と略対称となる。
次に、図31(d)に示すように、それら相互共分散関数処理後の信号波形Wc4を予め用意された前記参照データベース40Dと比較することで衝突情報Ifを出力させて、車両左側の衝突領域A2への衝突の判断を行い、かつ、衝突時のエネルギー(加速度)を得、また、そのエネルギー(加速度)を時間積分することで衝突時の速度を得、更に衝突時の入力角度を得る。
従って、前記第1〜第6センサ21a〜21fから出力される電圧の信号波形Wv4を読み取って、これを相互共分散関数処理した後の信号波形Wc4から衝突情報Ifを得ることにより、側面衝突時の衝突箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図32のアルゴリズムにより複数の前方側面エアバッグ、後方側面エアバッグ、前方頭部保護エアバッグ、後方頭部保護エアバッグのうち特定のエアバッグを選択して作動・展開させることができる。
即ち、前記アルゴリズムは、側面衝突時にステップS100では第1〜第6センサ21a〜21fから出力される信号を検知して衝突情報Ifを出力してステップS101で衝突箇所を判定し、ステップS102で車両側面領域1衝突(図30参照)と判断したとき、ステップS103で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS104で衝突速度を算出し、次にステップS105で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS106で前方側面エアバッグと前方頭部保護エアバッグを略同時に作動させ、次にステップS107でその所定時間後に後方側面エアバッグと後方頭部保護エアバッグを同時に作動させる。
ステップS108で車両側面領域2衝突(図30参照)と判断したとき、ステップS109で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS110で衝突速度を算出し、次にステップS111で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS112で前方側面エアバッグと前方頭部保護エアバッグと後方側面エアバッグと後方頭部保護エアバッグとを同時に作動させる。
ステップS113で車両側面領域3衝突(図30参照)と判断したとき、ステップS114で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS115で衝突速度を算出し、次にステップS116で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS117で後方側面エアバッグと後方頭部保護エアバッグを同時に作動させ、次にステップS118でその所定時間後に前方側面エアバッグと前方頭部保護エアバッグを同時に作動させる。
ステップS119で車両側面領域4衝突(図30参照)と判断したとき、ステップS120で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS121で衝突速度を算出し、次にステップS122で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS123で前方側面エアバッグを作動させ、ステップS124でその所定時間後に前方頭部保護エアバッグを作動させ、ステップS125でその所定時間後に後方側面エアバッグを作動させ、ステップS126でその所定時間後に後方頭部保護エアバッグを作動させる。
ステップS127で車両側面領域5衝突(図30参照)と判断したとき、ステップS128で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS129で衝突速度を算出し、次にステップS130で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS131で前方側面エアバッグと後方側面エアバッグを同時に作動させ、ステップS132でその所定時間後に前方頭部エアバッグと後方頭部保護エアバッグを同時に作動させる。
ステップS133で車両側面領域6衝突(図30参照)と判断したとき、ステップS134で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS135で衝突速度を算出し、次にステップS136で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS137で後方側面エアバッグを作動させ、ステップS138でその所定時間後に後方頭部保護エアバッグを作動させ、ステップS139でその所定時間後に前方側面エアバッグを作動させ、ステップS140でその所定時間後に前方頭部保護エアバッグを作動させる。
以上の構成によりこの第6実施形態の車両衝突箇所判断装置によれば、側面衝突時に車体側面の衝突領域A2の変形を第1〜第6センサ21a〜21fで検出して、それらの出力信号からコントローラ40により車体側面の衝突箇所1〜6のいずれかを検知できるようになっており、このとき、前記コントローラ40は、車体側面の実際の変形箇所を検出した信号から所定のアルゴリズムに従って車両の衝突箇所を判定するので、この衝突箇所に適正に対応した特定のエアバッグを作動できるため、乗員Cの保護性能を向上することができる。
また、本実施形態にあっては前記第1〜第6センサ21a〜21fで車体側面の変形箇所を検出する際に、衝突衝突領域A2に側面補強部材100を設け、各センサ21a〜21fをその側面補強部材100に設けたので、変形箇所を剛性の高い側面補強部材100を介して精度良く検出できるようになる。
更に、前記側面補強部材100を、第1センサ21aを取り付けるフロントインパクトビーム108の上部インパクトビーム108Aと、第2センサ21bおよび第5センサ21eを取り付けるセンターピラー103と、第3センサ21cを取り付けるリアインパクトビーム109の上部インパクトビーム109Aと、第4センサ21dおよび第6センサ21fを取り付けるサイドシル101と、で構成したので、剛性の高い既存部材をそれぞれ利用して衝突箇所を精度良く検出することができる。
更にまた、本実施形態にあっても第1〜第6センサ21a〜21fを、部材の変形により生ずる応力/歪の変化を検出する応力/歪センサとして構成したので、発生する磁場Mfの変化により生ずる電圧の値を出力して軸応力と曲げ応力を伝達し易くでき、衝突時の変形の検出精度を高めるとともに、出力する電圧信号波形から変形箇所を明確に判断できるようになる。
尚、本実施形態のアルゴリズムは相互共分散関数を用いて衝突情報Ifを求めるようにしたが、これに限ることなく高速フーリエ変換、ゼロクロッシング、自己相関関数のいずれか、若しくは相互共分散関数を含めた全ての組み合わせで前記衝突情報を求めることができる。
図33〜図38は本発明の第7実施形態を示し、図33は車体前面構造を示す正面図、図34はセンサの取付け箇所を(a),(b)にそれぞれ示す斜視図、図35はセンサの配置箇所を示す車体正面図、図36は前面衝突箇所に対応した領域1〜6を示す正面図、図37は(a)に前面衝突時の各センサの電圧波形と(b)に相互共分散関数の演算流れと(c)にセンサの電圧波形を相互共分散関数により処理した信号波形と(d)に相互共分散関数により処理した信号波形から衝突情報を判定するデータベースとを示す説明図、図38は前面衝突から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
本発明の車両衝突箇所判断装置は自動車Mの前面衝突に適用したもので、図33に示すように前面衝突時に衝突荷重を受ける衝突領域A3に前面補強部材200を設け、変形検出手段としての第7〜第12センサ22a〜22fをその前面補強部材200に設けてある。
また、前記前面補強部材200は、車両前端部上部の車幅方向に延在する上部車幅方向部材としてのバンパレインフォース201と、車両前端部下部の車幅方向に延在する下部車幅方向部材としてのフロントクロスメンバ202と、を備えており、前記第7〜第12センサ22a〜22fを、前記バンパレインフォース201および前記フロントクロスメンバ202それぞれの車幅方向両側部および車幅方向中央部に配置してある。
即ち、車体Bの前面構造は、図33に示すように車幅方向両側部に車体前後方向(紙面直角方向)に延在する左右一対のフロントサイドメンバ203の前端に跨って、前記バンパレインフォース201がバンパステー204を介して結合されている。
また、前記フロントクロスメンバ202は、前記一対のフロントサイドメンバ203の下側に結合した井桁状のサスペンションメンバ(またはサブフレーム)205の構造部材であり、フロントサイドメンバ203に沿って車体前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム206の前端に跨って前記フロントクロスメンバ202が結合されている。
そして、図34(a)に示すように前記バンパレインフォース201の上面の車幅方向右端部に前記第7センサ22aを、車幅方向中央部に前記第8センサ22bを、車幅方向左端部に前記第9センサ22cをそれぞれ取り付けてある。
また、図34(b)に示すように前記フロントクロスメンバ202の上面の車幅方向右端部に前記第10センサ22dを、車幅方向中央部に前記第11センサ22eを、車幅方向左端部に前記第12センサ22fをそれぞれ取り付けてある。
このようにして取付けられた前記第7〜第12センサ22a〜22fは、図35に示すように車体前面の衝突領域A3に、上下二段となって車幅方向に3個づつ配置されるようになっている。
そして、図36に示すように第7センサ22aの配置箇所に対応する所定範囲が領域1となり、第8センサ22bの配置箇所に対応する所定範囲が領域2となり、第9センサ22cの配置箇所に対応する所定範囲が領域3となり、第10センサ22dの配置箇所に対応する所定範囲が領域4となり、第11センサ22eの配置箇所に対応する所定範囲が領域5となり、第12センサ22fの配置箇所に対応する所定範囲が領域6として設定してある。
また、本実施形態にあっても前記第7〜第12センサ22a〜22fは、前記各実施形態と同様に部材の変形により生ずる応力/歪の変化を検出する応力/歪センサとして構成し、発生する磁場Mfの変化により生ずる電圧の値を出力するようになっている。
ところで、本実施形態の自動車Mは、乗員保護装置として非常時に作動・展開して左・右の前席乗員Cの前方を個別に保護する左・右の前席前面衝突用(前席前突)エアバッグと、左・右の前席乗員Cの膝部を個別に保護する左・右の前席ニーエアバッグと、を備えている。
そして、車体Bに前面衝突して衝突領域A3が部分的に変形すると、その変形を第7〜第12センサ22a〜22fが検出して電圧信号を出力するようになっており、その信号を処理するために自動車Mには、図35に示すように出力信号を所定のアルゴリズムに従って処理する参照データベース50Dを内蔵して衝突箇所を判定し、その衝突箇所に応じて前記各エアバッグのうちの特定のエアバッグを作動させる保護装置作動手段としてのコントローラ50を備えている。
従って、前記コントローラ50に内蔵した参照データベース50Dは、例えば、前記第7〜第12センサ22a〜22fからの出力信号を相互共分散関数により処理して、特定のエアバッグを判定するための衝突箇所および乗員保護装置を作動制御するための衝突加速度および衝突速度および衝突箇所への入力角度などの衝突情報を検出するアルゴリズムを備えている。
即ち、車両前面の衝突領域A3に衝突した場合、図37(a)に示すように第7〜第12センサ22a〜22fから信号波形Wv5が出力され、そして、図37(b)に示すように前記信号波形Wv5を遅延回路52に入力し、得られたラグκ分を遅らせた信号波形Wv5′(y(n−κ))と元の信号波形Wv5(y(n))とを乗算回路53に入力することにより、相互共分散関数C(i,j)による信号波形Wc5が得られる。
そして、その信号波形Wc5を図37(c)に示すように第1〜第6センサ21a〜20fの相互共分散関数により処理して、図37(d)に示すように、それら相互共分散関数処理後の信号波形Wc5を予め用意された前記参照データベース50Dと比較することで衝突情報Igを出力させて、車両左側の衝突領域A3への衝突の判断を行い、かつ、衝突時のエネルギー(加速度)を得、また、そのエネルギー(加速度)を時間積分することで衝突時の速度を得、更に衝突時の入力角度を得る。
尚、図37(a)に示す第7〜第12センサ22a〜22fの信号波形Wv5の特徴は、第6実施形態の図31(a)に示す信号波形Wv4と略同様であり、また、これら第7〜第12センサ22a〜22fの信号波形Wv5を相互共分散関数により処理した後の信号波形Wc5の特徴は、第6実施形態の図31(c)に示す信号波形Wv4と略同様であるため、それら信号波形Wv5,Wc5の重複する説明は省略するものとする。
従って、前記第7〜第12センサ22a〜22fから出力される電圧の信号波形Wv5を読み取って、これを相互共分散関数処理した後の信号波形Wc5から衝突情報Igを得ることにより、前面衝突時の衝突箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図38のアルゴリズムにより複数の左・右前席前突エアバッグおよび左・右前席ニーエアバッグのうち特定のエアバッグを選択して作動・展開させることができる。
即ち、前記アルゴリズムは、前面衝突時にステップS130では第7〜第12センサ22a〜22fから出力される信号を検知して衝突情報Igを出力してステップS131で衝突箇所を判定し、ステップS132で車両前面領域1衝突(図36参照)と判断したとき、ステップS133で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS134で衝突速度を算出し、次にステップS135で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS136で右前席前突エアバッグを作動し、ステップS137でその所定時間後に右前席ニーエアバッグを作動し、ステップS138でその所定時間後に左前席前突エアバッグを作動し、ステップS139でその所定時間後に左前席ニーエアバッグを作動する。
ステップS140で車両前面領域2衝突(図36参照)と判断したとき、ステップS141で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS142で衝突速度を算出し、次にステップS143で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS144で左・右前席前突エアバッグを作動し、次にステップS145でその所定時間後に左・右前席ニーエアバッグを作動する。
ステップS146で車両前面領域3衝突(図36参照)と判断したとき、ステップS147で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS148で衝突速度を算出し、次にステップS149で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS150で左前席前突エアバッグを作動し、ステップS151でその所定時間後に左前席ニーエアバッグを作動し、ステップS152でその所定時間後に右前席前突エアバッグを作動し、ステップS153でその所定時間後に右前席ニーエアバッグを作動する。
ステップS154で車両前面領域4衝突(図36参照)と判断したとき、ステップS155で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS156で衝突速度を算出し、次にステップS157で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS158で右前席ニーエアバッグを作動し、ステップS159でその所定時間後に右前席前突エアバッグを作動し、ステップS160でその所定時間後に左前席ニーエアバッグを作動し、ステップS161で左前席前突エアバッグを作動する。
ステップS162で車両前面領域5衝突(図36参照)と判断したとき、ステップS163で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS164で衝突速度を算出し、次にステップS165で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS166で左・右前席ニーエアバッグを作動し、ステップS167でその所定時間後に左・右前席前突エアバッグを作動する。
ステップS168で車両前面領域6衝突(図36参照)と判断したとき、ステップS169で衝突エネルギー(加速度G)を算出し、次にステップS170で衝突速度を算出し、次にステップS171で衝突時入力角度を算出し、それらエネルギー、速度および入力角度に応じてステップS172で左前席ニーエアバッグを作動し、ステップS173でその所定時間後に左前席前突エアバッグを作動し、ステップS174でその所定時間後に右前席ニーエアバッグを作動し、ステップS175でその所定時間後に右前席前突エアバッグを作動する。
以上の構成によりこの第7実施形態の車両衝突箇所判断装置によれば、前面衝突時に車体前面の衝突領域A3の変形を第7〜第12センサ22a〜22fで検出して、それらの出力信号からコントローラ50により車体前面の衝突箇所1〜6のいずれかを検知できるようになっており、このとき、前記コントローラ50は、車体前面の実際の変形箇所を検出した信号から所定のアルゴリズムに従って車両の衝突箇所を判定するので、この衝突箇所に適正に対応した特定のエアバッグを作動できるため、乗員Cの保護性能を向上することができる。
また、本実施形態にあっては前記第7〜第12センサ22a〜22fで車体前面の変形箇所を検出する際に、衝突領域A3に前面補強部材200を設け、各センサ21a〜21fをその補強部材200に設けたので、変形箇所を剛性の高い前面補強部材200を介して精度良く検出できるようになる。
更に、前記前面補強部材200を、第7〜第9センサ22a〜22cを取り付けるバンパレインフォース201と、第10〜第12センサ22d〜22fを取り付けるフロントクロスメンバ202と、で構成したので、剛性の高い既存部材をそれぞれ利用して衝突箇所を精度良く検出することができる。
更にまた、本実施形態にあっても第7〜第12センサ22a〜22fを、部材の変形により生ずる応力/歪の変化を検出する応力/歪センサとして構成したので、発生する磁場Mfの変化により生ずる電圧の値を出力して軸応力と曲げ応力を伝達し易くでき、衝突時の変形の検出精度を高めるとともに、出力する電圧信号波形から変形箇所を明確に判断できるようになる。
尚、本実施形態のアルゴリズムは相互共分散関数を用いて衝突情報Igを求めるようにしたが、これに限ることなく高速フーリエ変換、ゼロクロッシング、自己相関関数のいずれか、若しくは相互共分散関数を含めた全ての組み合わせで前記衝突情報を求めることができる。
ところで、本発明の車両衝突箇所判断装置は前記第1〜第7実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができ、例えば、乗員保護装置はエアバッグに限ることなく、シートベルトやその他の乗員を保護するための装置であってもよい。