JP4551548B2 - 発電設備およびこれを用いる発電方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液化天然ガス(以下、「LNG」と略称することもある)を主原料として都市ガスを製造する発電設備およびこれを用いる発電方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からLNGを主原料として都市ガスが製造されている。都市ガスは、たとえば標準状態で単位体積当り46MJ(11000kcal)の規定熱量を保有しなければならない。LNGの保有する熱量は、規定熱量よりも低いので、液化石油ガス(以下、「LPG」と略称する)など、より高熱量を保有する原料を加えて、規定熱量を保有するように調整している。
【0003】
LNGは、メタン(CH4)を主成分としている。メタンは、LNGの成分中でも沸点が低い軽質分であり、また低熱量分でもある。したがって、比較的低温の状態のLNGが気化すると、気化したガス中ではLNG中よりもメタンの割合がさらに大きくなる。またこのガスが保有する熱量は、元のLNGが保有する熱量よりも低くなるので、重質分として残留する液化ガスが保有する熱量は、元のLNGが保有する熱量よりも高くなる。このような分留を利用しても、LNG中から低熱量成分の軽質分ガスを分離して、残留する重質分の液化ガスに都市ガスとして必要な規定熱量を保有させることができる。分留を利用すれば、LNGに比較して高価格なLPGの使用量を少なくして、都市ガスの製造コストを低減することができる。
【0004】
一方、LNGは産地からLNGタンカーなどで運送され、LNGタンクに貯蔵しながら、需要に応じてLNG気化器で気化されて使用される。LNGは−150℃〜−160℃程度の極低温であり、LNGタンクでは完全な断熱は不可能であるので、周囲の常温環境からの入熱を避けることはできず、メタンなどの低熱量成分が気化してボイルオフガスが発生する。ボイルオフガスの発生を放置しておくと、LNGタンクの圧力が上昇してしまう。このため、ボイルオフガスにLPG等の高熱量成分を加えて熱量を調整し、LNGタンクから取出されるLNGを気化した後のガス状態に混ぜて都市ガスとして市中に送出したり、圧縮して冷却し、液化させてLNG中に戻すなどの対策が採られている。
【0005】
ボイルオフガスを直接燃料として使用すれば、対策は容易となる。LNGの主用途には、都市ガスの原料とともに火力発電用の燃料がある。そこで、ボイルオフガスを主な燃料とし、ガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関を用いる発電技術も開発されてきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
LNGを都市ガスの原料として使用する以上、LNGタンクでの貯蔵中にボイルオフガスが発生し、その処理が必要となる。都市ガスなど、汎用の用途に使用可能なように、熱量調整のため単価の高いLPGを使用してボイルオフガスを市中に送出することは、燃料コストの上昇を招いてしまう。分留を利用して都市ガスを製造すれば、LPGを使用しないで熱量を高めることができる。ただし、分留で高熱量成分である重質分から分離される低熱量成分の軽質分の利用にボイルオフガスと同様な問題がある。
【0007】
ボイルオフガスを使用することを前提に発電設備などを設置しても、ボイルオフガスはLNGタンクから自然発生するため、設置する発電設備の要求する燃料の必要量に発生量が必ずしも一致することはない。そこで、ボイルオフガスに加え、ガスタービンやガスエンジンの仕様から求められる燃料必要量と、ボイルオフガス量との流量差分を、LNG気化器出口に設置した流量調整弁により流量制御されたLNG気化ガスを燃料とする発電技術が開発されている。しかし重質分を含むLNG気化ガスを燃料とすると、発電設備の運転で燃料コストの上昇を招いてしまう。
【0008】
また、ガスタービンやガスエンジンでは、吸気冷却によって効率を改善可能なことが知られている。吸気冷却の方法としては、LNGタンクからのLNGの冷熱を用いる方法や、冷凍機を用いる方法等が開発され用いられている。ただし、ガスタービンやガスエンジン用吸気冷却の方法として冷凍機を用いると、LNGを燃料として発電される電力を用いて冷凍機を運転しなければならず、ガス燃焼機関自体では燃料消費を少なくすることができるとしても、全体的には燃料ガス等が多く必要となってしまう。
【0009】
本発明の目的は、LNGを原料として分留によって都市ガスを製造しながら、分留の過程で分離される低熱量成分や、LNGの貯蔵で発生するボイルオフガスを有効に利用して、低コストで発電を行うことができる発電設備およびこれを用いる発電方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスを用いて、規定熱量を保有する都市ガスの原料を送出する発電設備であって、
液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと前記LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスに含まれる低熱量ガスとを燃料とするガス燃焼機関と、
前記LNGタンクから取出された液化天然ガスから低熱量ガスを分離することによって、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整する分留設備であって、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスを前記ガス燃焼機関に供給する分留設備と、
前記LNGタンクから前記分留設備に供給する液化天然ガスを取出すLNG送出ラインと、
液化天然ガスを気化昇温して送出するLNG気化器と、
前記LNGタンクから液化天然ガスをLNG気化器に向けて送出するLNG送出管と、
前記LNG送出管から送出される液化天然ガスに、前記分留設備から取出される高熱量液化ガスを混合し、前記LNG気化器に送出する混合液送出管とを有し、
前記ガス燃焼機関の仕様に基づいて燃料必要量が求められ、
液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に出るボイルオフガス量と燃料必要量との流量差を分留装置からの前記低熱量ガスとしてガス燃焼機関に供給するため、分留設備の入口側に設けられ、分留設備に流入する液化天然ガスの流量を制御する流量調整弁をさらに有し、
前記LNG送出ラインは、前記混合液送出管が接続されるLNG気化器とは別のLNG気化器に接続され、
前記LNGタンクからLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出され、
前記分留設備に供給される液化天然ガスは、LNGタンクからLNG気化器に延びるLNG送出ラインの途中から分岐して分留設備に接続されるLNG配管によって導かれることを特徴とする発電設備である。
【0011】
本発明に従えば、液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスに加え、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスを燃料としてガス燃焼機関に供給する。ボイルオフガスおよび低熱量ガスは、LNG中のメタンなどの軽質分であり、ガス燃焼機関において同様に取扱うことができる。自然発生するボイルオフガスばかりではなく、熱量を調整して市中に送出する都市ガスの製造に分留設備を用いる際に発生する低熱量ガスを燃料として発電を行うので、低コストの燃料を多く利用することができる。LNG貯蔵中に発生するボイルオフガスや、分留で発生する低熱量ガスの処理にコストをかけないで済むので、都市ガスの製造コストも低減することができる。これによって、LNGを原料として分留によって都市ガスを製造しながら、低コストで発電を行うことができる。
【0013】
また、ガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関の仕様より求められる燃料必要量と、液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガス量との流量差を、分留設備から供給する。ガス燃焼機関で必要とする燃料の量を、分留設備の入口側に設ける流量調整弁による流量制御の範囲内としておくことによって、ボイルオフガスと低熱量ガスとで発電を行い、発電コストを低減することができる。なお、都市ガスの需要量が入口側で流量制御される分留設備からの高熱量液化ガスの供給量よりも大きいときは、LNGにLPG等を添加して熱量調整をして補うようにすればよい。都市ガスの需要量の全部を、LPG等の添加で熱量調整して製造する場合に比較すれば、低コストで都市ガスを製造することができる。またLNGタンクから取出されLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出されるので、LNGを原料として分留によって都市ガスを製造しながら、発電を行うことができる。
【0014】
また本発明は、LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスを用いて、規定熱量を保有する都市ガスの原料を送出する発電設備であって、
液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと前記LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスに含まれる低熱量ガスとを燃料とするガス燃焼機関と、
前記LNGタンクから取出された液化天然ガスから低熱量ガスを分離することによって、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整する分留設備であって、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスを前記ガス燃焼機関に供給する分留設備と、
前記LNGタンクから前記分留設備に供給する液化天然ガスを取出すLNG送出ラインと、
液化天然ガスを気化昇温して送出するLNG気化器と、
前記LNGタンクから液化天然ガスをLNG気化器に向けて送出するLNG送出管と、
前記LNG送出管から送出される液化天然ガスに、前記分留設備から取出される高熱量液化ガスを混合し、前記LNG気化器に送出する混合液送出管とを有する発電設備を用い、
前記分留設備を用いて液化天然ガスから低熱量ガスを分離し、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整しながら発電を行う発電方法であって、
液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスとを燃料としてガス燃焼機関に供給し、
前記ガス燃焼機関の仕様に基づいて、ガス燃焼機関に供給すべき燃料の温度を求め、
求められる温度に供給する燃料の温度を適合させるため、ガス燃焼機関入口で燃料温度を測定しながら、分留設備出口側で前記低熱量ガスに必要熱量を熱交換器によって加えることを特徴とする発電設備を用いる発電方法である。
【0015】
本発明に従えば、ガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関の仕様から求められる燃料温度に対し、実際に供給する燃料温度を適合させる。求められる燃料温度を目標として、ガスタービンやガスエンジンなどへ燃料を供給する入口で燃料温度を測定しながら、分留設備出口において必要熱量を熱交換器により加えるので、自然発生するボイルオフガスだけでは不安定な燃料温度を安定化して、ガス燃焼機関の仕様に適合させ、効率的に発電を行うことができる。
【0016】
また本発明は、LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスを用いて、規定熱量を保有する都市ガスの原料を送出する発電設備であって、
液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと前記LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスに含まれる低熱量ガスとを燃料とするガス燃焼機関と、
前記LNGタンクから取出された液化天然ガスから低熱量ガスを分離することによって、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整する分留設備であって、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスを前記ガス燃焼機関に供給する分留設備と、
前記LNGタンクから前記分留設備に供給する液化天然ガスを取出すLNG送出ラインと、
液化天然ガスを気化昇温して送出するLNG気化器と、
前記LNGタンクから液化天然ガスをLNG気化器に向けて送出するLNG送出管と、
前記LNG送出管から送出される液化天然ガスに、前記分留設備から取出される高熱量液化ガスを混合し、前記LNG気化器に送出する混合液送出管とを有する発電設備を用い、
前記分留設備を用いて液化天然ガスから低熱量ガスを分離し、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整しながら発電を行う発電方法であって、
液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスとを燃料としてガス燃焼機関に供給し、
前記分留設備で分留によって得られる高熱量液化ガスと1次冷媒とを熱交換させ、その1次冷媒と2次冷媒とを熱交換させ、更に2次冷媒と空気とを熱交換させて、高熱量液化ガスの冷熱をガス燃焼機関用吸気冷却の熱源とすることを特徴とする発電設備を用いる発電方法である。
【0017】
本発明に従えば、分留により得られる高熱量液化ガスと1次冷媒とを熱交換させ、極低温の高熱量液化ガスから冷熱を1次冷媒に与える。1次冷媒と2次冷媒とを熱交換させ更に2次冷媒と空気とを熱交換させることで、高熱量液化ガスをガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関用吸気冷却の冷熱源とする。冷熱源となる極低温の高熱量液化ガスから2段階の冷媒を用いる熱交換で、常温付近のガス燃焼機関用吸気を冷却するので、ガス燃焼機関を効率よく運転することができる。分留設備からの低熱量液化ガスは熱交換によって加温され、気化させることができるので、気化用の熱交換器を別途設ける必要がなくなる。
また本発明は、前記ガス燃焼機関の仕様に基づいて燃料必要量が求められ、
液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に出るボイルオフガス量と燃料必要量との流量差を分留装置からの前記低熱量ガスとしてガス燃焼機関に供給するため、分留設備の入口側に設けられ、分留設備に流入する液化天然ガスの流量を制御する流量調整弁をさらに有し、
前記LNG送出ラインは、前記混合液送出管が接続されるLNG気化器とは別のLNG気化器に接続され、
前記LNGタンクからLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出され、
前記分留設備に供給される液化天然ガスは、LNGタンクからLNG気化器に延びるLNG送出ラインの途中から分岐して分留設備に接続されるLNG配管によって導かれる発電設備を用いることを特徴とする。
本発明に従えば、ガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関の仕様より求められる燃料必要量と、液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガス量との流量差を、分留設備から供給する。ガス燃焼機関で必要とする燃料の量を、分留設備の入口側に設ける流量調整弁による流量制御の範囲内としておくことによって、ボイルオフガスと低熱量ガスとで発電を行い、発電コストを低減することができる。なお、都市ガスの需要量が入口側で流量制御される分留設備からの高熱量液化ガスの供給量よりも大きいときは、LNGにLPG等を添加して熱量調整をして補うようにすればよい。都市ガスの需要量の全部を、LPG等の添加で熱量調整して製造する場合に比較すれば、低コストで都市ガスを製造することができる。またLNGタンクから取出されLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出されるので、LNGを原料として分留によって都市ガスを製造しながら、発電を行うことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態である発電設備およびこれを用いる発電方法を適用している一例として、発電出力15万kWクラスの発電設備の概略的な構成を示す。本実施形態の発電設備は、ガス燃焼機関としてガスタービン(図1では、「G/T」と略称する)1を用いる。LNGタンク2には、LNGが貯蔵される。LNGタンク2に貯蔵されるLNGからは、分留設備3で高熱量液化ガスである高カロリー液化ガスが得られる。分留設備3に供給するLNGは、LNGタンク2から昇圧ポンプ4で昇圧して取出され、LNG送出ライン5からLNG気化器6に送られるLNGの一部を、LNGライン5の途中から分岐させる。LNG気化器6では、LNGを海水ポンプ7で送込まれる海水と熱交換し、LNGが気化昇温されて送出ライン8から都市ガス原料の天然ガスとして送出される。送出ライン8から送出する天然ガスの気化昇温用の熱源となった海水は、排水ライン9から排出される。
【0019】
LNGライン5の途中から分岐するLNG配管10は、LNGを流量調整弁11を介して分留設備3に導く。分留設備3では、LNGの成分のうち、メタンを主とする軽質分の低熱量ガスが気化して分離される。残存する高熱量液化ガスの保有する熱量は、高熱量液化ガス中に残存している低熱量成分の量によって変化する。高熱量液化ガス中では低熱量成分は飽和濃度に達しており、飽和濃度は温度と圧力との影響も受けるので、分留設備3では温度と圧力とを調整して、必要な熱量を保有する高熱量液化ガスが得られるようにしている。
【0020】
分留設備3で分留された低熱量ガスは、流量調整弁12で流量が調整され、海水ポンプ13で熱交換器14に送込まれる海水と熱交換し、温度が調整されてガスタービン1の燃料として供給される。ガスタービン1の燃料としては、LNGタンク2で発生するボイルオフガス(以下、図面では「BOG」と略称する)も使用される。LNGタンク2中では、大気圧に近い圧力でボイルオフガスが発生するので、BOGコンプレッサ15で昇圧し、BOG配管16を介してガスタービン1の燃料として送込む。BOG配管16には、熱交換器14で加温された低熱量ガスが合流し、燃料供給管17を介してガスタービン1に供給される。
【0021】
ガスタービン1で、燃料供給管17を介して供給される燃料を燃焼するための空気は、吸気配管18を介して供給される。吸気配管18の途中には、熱交換器19が設けられ、分留設備3で得られる高カロリー液化ガスの有する冷熱を利用して、ガスタービン1への吸気を冷却する。常温の吸気と極低温の高カロリー液化ガスとの温度差は大きく、吸気と高カロリー液化ガスとを直接熱交換しようとすれば、吸気中の水分が凍結や着霜を生じさせ、効率的な熱交換が困難となる。
本実施形態では1次冷媒と2次冷媒との2種類の冷媒を中間段階の熱媒体として用いる。1次冷媒は、熱交換器20で分留設備3で得られる高カロリー液化ガスと熱交換する。1次冷媒は冷却され、高カロリー液化ガスは加温される。冷却された1次冷媒は、1次冷媒管路21内を循環するように使用される。2次冷媒は、2次冷媒管路22内を循環し、1次冷媒と熱交換器23で熱交換する。1次冷媒および2次冷媒の循環は、1次冷媒ポンプ23および2次冷媒ポンプ24によって、それぞれ行われる。
【0022】
分留設備3で熱量調整を行って都市ガスの原料として送出すためのLNGは、LNGタンク2から昇圧ポンプ26に吸引されて昇圧され、LNG送出管27に送出される。分留設備3で得られる高カロリー液化ガスは、熱交換器20で1次冷媒との間で熱交換して加温された後、LNG送出管27を流れるLNGと混合される。分留設備3で、LNGと混合した状態で保有する熱量が規定熱量となるように高カロリー液化ガスの熱量を調整しておけば、混合後、混合液送出管28を介して送出する液化ガスは、LPG添加での熱量調整量を削減することが可能となる。この液化ガスは、LNG気化器29で気化昇温され、送出ライン30を介して送出される。海水ポンプ31は、LNG気化器29に海水を供給する。
【0023】
次に、本実施形態の運転状態の一例を説明する。LNGタンク2からは、ボイルオフガスが15t/hの割合で発生する場合を想定する。分留設備3へのLNG配管10の入口部に設置した流量調整弁11によって、流入LNG量を24t/hに調整する。−155℃のLNG24t/hに6280MJ/h(1500Mcal/h)の熱量を加えて−96℃に温度を保つと、6t/hのメタンと、18t/hの標準状態で単位体積当り46MJ(11000kcal)の熱量を保有する液化ガスとが生成される。この液化ガスは、10050MJ/h(2400Mcal/h)の熱量を与えることで常温(20℃)まで暖められ、更に付臭されて13A都市ガスとして市中に送出される。
【0024】
−96℃で生成された6t/hのメタンは、燃料供給管17でガスエンジン1への入口部に設置される温度計32によって測定される温度に基いて供給燃料設定温度(20℃)とするために、熱交換器14の上流側に設置する海水用の流量調整弁12の開度をコントローラ33によって調整する。この調整では、必要な熱量として840MJ/h(200Mcal/h)を加え、LNGタンク2から発生し、BOGコンプレッサ15により2940kPa(30kgf/cm2)まで昇圧されたボイルオフガス15t/h(20℃)と共にガスタービン1に供給し、発電の燃料として使用される。
【0025】
また分留設備3により生成される高カロリー液化ガスを気化するのに必要な熱量は10050MJ/h(2400Mcal/h)となる。この液化ガスに1次冷媒および2次冷媒を介して空気と熱交換を行なわせ、空気を15℃まで冷す。
この15℃まで冷やされた空気を使用し、ガスタービン1の入口での吸気冷却を行なう。大気温度を33℃とした場合、この吸気冷却に必要な熱量は46000MJ/h(11000Mcal/h)であり、これにより高カロリー液化ガスの気化熱量を賄う。
【0026】
以上説明した実施形態では、発電設備としてガスタービン1を用いているけれども、ガスエンジンなど、ガス燃焼機関を同様に用いても、吸気冷却と、燃料温度調整とによって、効率良く発電を行わせることができる。
【0027】
また、ガスエンジンや、ガスタービン1に必要な熱量を全てメタンを主成分とするボイルオフガスと分留設備3からの低カロリーガスとによって賄うことが可能となり、ガス燃焼機関側から見て燃料コストが削減される。
【0028】
分留設備3の稼動によって、24t/hの処理能力の分留によって生成される市中送出用高カロリーガス分の熱量調整用にLPG3t/hを用いる必要がなくなるので、都市ガスの製造所側から見て燃料コストが削減される。
【0029】
LNGタンク2から発生するボイルオフガスの流量変化に、分留設備3から得られる低カロリーガスを対応させて補うことが可能となり、また必要なガスエンジンやガスタービン1の入口温度が得られることで、15万kW級の発電機側から見て安定した21t/hで20℃の燃料供給が可能になる。
さらに、1次冷媒と2次冷媒とを用いて吸気と熱交換を行うので、高カロリー液化ガスを気化するための熱交換器を別途設ける必要がない。
なお、発電設備として、ガスタービン1やガスエンジンなどのガス燃焼機関を用いる場合について説明しているけれども、燃料がメタンの単一成分に近いので、燃料電池を用いる発電にも本発明を適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ガス燃料機関の燃料を、液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスとで賄うことが可能となり、ガス燃料機関側から見て燃料コストを削減することができる。LNG貯蔵中に発生するボイルオフガスや、分留で発生する低熱量ガスの処理にもコストをかけないで済み、熱量調整のために必要な高コストの原料を削減することができるので、都市ガスの製造コストの低減も図ることができる。これによって、LNGを原料として分留によって都市ガスを製造しながら、低コストで発電を行うことができる。
【0031】
た、ガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関に供給する燃料の必要量とボイルオフガス量との流量差を、分留設備の入口側に設ける流量調整弁による流量制御で分留設備に供給するLNG流量に対応して分離される低熱量ガスの流量で補う。ボイルオフガスと低熱量ガスとで発電を行うので、発電コストを低減することができる。なお、都市ガスについても、分留設備で分離される高熱量液化ガスに対応する流量分については、LNGにLPG等を添加して熱量調整をして製造する必要がなくなるので、低コストで製造することができる。またLNGタンクから取出されLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出されるので、LNGを原料として分留によって都市ガスを製造しながら、発電を行うことができる。
【0032】
また本発明によれば、ガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関の仕様から求められる燃料温度に調整して、ボイルオフガスと低熱量ガスとを供給することができる。発電設備に必要な燃料の入口温度が得られるので、発電設備を効率良く安定して運転させ、発電を行わせることができる。
【0033】
また本発明によれば、分留により得られる極低温の高熱量液化ガスの冷熱を有効に利用して、発電設備に用いるガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関用吸気冷却の冷熱源とすることができる。冷熱源となる極低温の高熱量液化ガスから2段階の冷媒を用いる熱交換で、常温付近のガス燃焼機関用吸気を冷却するので、ガス燃焼機関を効率よく運転することができる。分留設備からの低熱量液化ガスも、ガス燃焼機関用吸気を熱源として加温され、気化させることができるので、気化用の熱交換器を別途設ける必要がなくなる。
また本発明によれば、ガスタービンやガスエンジンなどのガス燃焼機関に供給する燃料の必要量とボイルオフガス量との流量差を、分留設備の入口側に設ける流量調整弁による流量制御で分留設備に供給するLNG流量に対応して分離される低熱量ガスの流量で補う。ボイルオフガスと低熱量ガスとで発電を行うので、発電コストを低減することができる。なお、都市ガスについても、分留設備で分離される高熱量液化ガスに対応する流量分については、LNGにLPG等を添加して熱量調整をして製造する必要がなくなるので、低コストで製造することができる。またLNGタンクから取出されLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出されるので、LNGを原料として分留によって都市ガスを製造しながら、発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態としての発電設備およびこれを用いる発電方法の概要を示す配管系統図である。
【符号の説明】
1 ガスタービン
2 LNGタンク
3 分留設備
4,26 昇圧ポンプ
5 LNG送出ライン
6,29 LNG気化器
8,30 送出ライン
10 LNG配管
11,12 流量調整弁
14,19,20,23 熱交換器
15 BOGコンプレッサ
17 燃料供給管
18 吸気供給管
21 1次冷媒管路
22 2次冷媒管路
28 混合液送出管
32 温度計
33 コントローラ

Claims (4)

  1. LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスを用いて、規定熱量を保有する都市ガスの原料を送出する発電設備であって、
    液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと前記LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスに含まれる低熱量ガスとを燃料とするガス燃焼機関と、
    前記LNGタンクから取出された液化天然ガスから低熱量ガスを分離することによって、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整する分留設備であって、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスを前記ガス燃焼機関に供給する分留設備と、
    前記LNGタンクから前記分留設備に供給する液化天然ガスを取出すLNG送出ラインと、
    液化天然ガスを気化昇温して送出するLNG気化器と、
    前記LNGタンクから液化天然ガスをLNG気化器に向けて送出するLNG送出管と、
    前記LNG送出管から送出される液化天然ガスに、前記分留設備から取出される高熱量液化ガスを混合し、前記LNG気化器に送出する混合液送出管とを有し、
    前記ガス燃焼機関の仕様に基づいて燃料必要量が求められ、
    液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に出るボイルオフガス量と燃料必要量との流量差を分留装置からの前記低熱量ガスとしてガス燃焼機関に供給するため、分留設備の入口側に設けられ、分留設備に流入する液化天然ガスの流量を制御する流量調整弁をさらに有し、
    前記LNG送出ラインは、前記混合液送出管が接続されるLNG気化器とは別のLNG気化器に接続され、
    前記LNGタンクからLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出され、
    前記分留設備に供給される液化天然ガスは、LNGタンクからLNG気化器に延びるLNG送出ラインの途中から分岐して分留設備に接続されるLNG配管によって導かれることを特徴とする発電設備。
  2. LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスを用いて、規定熱量を保有する都市ガスの原料を送出する発電設備であって、
    液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと前記LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスに含まれる低熱量ガスとを燃料とするガス燃焼機関と、
    前記LNGタンクから取出された液化天然ガスから低熱量ガスを分離することによって、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整する分留設備であって、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスを前記ガス燃焼機関に供給する分留設備と、
    前記LNGタンクから前記分留設備に供給する液化天然ガスを取出すLNG送出ラインと、
    液化天然ガスを気化昇温して送出するLNG気化器と、
    前記LNGタンクから液化天然ガスをLNG気化器に向けて送出するLNG送出管と、
    前記LNG送出管から送出される液化天然ガスに、前記分留設備から取出される高熱量液化ガスを混合し、前記LNG気化器に送出する混合液送出管とを有する発電設備を用い、
    前記分留設備を用いて液化天然ガスから低熱量ガスを分離し、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整しながら発電を行う発電方法であって、
    液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスとを燃料としてガス燃焼機関に供給し、
    前記ガス燃焼機関の仕様に基づいて、ガス燃焼機関に供給すべき燃料の温度を求め、
    求められる温度に供給する燃料の温度を適合させるため、ガス燃焼機関入口で燃料温度を測定しながら、分留設備出口側で前記低熱量ガスに必要熱量を熱交換器によって加えることを特徴とする発電設備を用いる発電方法。
  3. LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスを用いて、規定熱量を保有する都市ガスの原料を送出する発電設備であって、
    液化天然ガスをLNGタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと前記LNGタンクに貯蔵される液化天然ガスに含まれる低熱量ガスとを燃料とするガス燃焼機関と、
    前記LNGタンクから取出された液化天然ガスから低熱量ガスを分離することによって、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整する分留設備であって、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスを前記ガス燃焼機関に供給する分留設備と、
    前記LNGタンクから前記分留設備に供給する液化天然ガスを取出すLNG送出ラインと、
    液化天然ガスを気化昇温して送出するLNG気化器と、
    前記LNGタンクから液化天然ガスをLNG気化器に向けて送出するLNG送出管と、
    前記LNG送出管から送出される液化天然ガスに、前記分留設備から取出される高熱量液化ガスを混合し、前記LNG気化器に送出する混合液送出管とを有する発電設備を用い、
    前記分留設備を用いて液化天然ガスから低熱量ガスを分離し、残留する高熱量液化ガスの熱量を、元の天然ガスの熱量より高い規定熱量に調整しながら発電を行う発電方法であって、
    液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に発生するボイルオフガスと、液化天然ガスを分留することで得られる低熱量ガスとを燃料としてガス燃焼機関に供給し、
    前記分留設備で分留によって得られる高熱量液化ガスと1次冷媒とを熱交換させ、その1次冷媒と2次冷媒とを熱交換させ、更に2次冷媒と空気とを熱交換させて、高熱量液化ガスの冷熱をガス燃焼機関用吸気冷却の熱源とすることを特徴とする発電設備を用いる発電方法。
  4. 前記ガス燃焼機関の仕様に基づいて燃料必要量が求められ、
    液化天然ガスをタンクに貯蔵する際に出るボイルオフガス量と燃料必要量との流量差を分留装置からの前記低熱量ガスとしてガス燃焼機関に供給するため、分留設備の入口側に設けられ、分留設備に流入する液化天然ガスの流量を制御する流量調整弁をさらに有し、
    前記LNG送出ラインは、前記混合液送出管が接続されるLNG気化器とは別のLNG気化器に接続され、
    前記LNGタンクからLNG送出ラインとLNG送出管とに送出される液化天然ガスは、それぞれ個別の昇圧ポンプを介して取出され、
    前記分留設備に供給される液化天然ガスは、LNGタンクからLNG気化器に延びるLNG送出ラインの途中から分岐して分留設備に接続されるLNG配管によって導かれる発電設備を用いることを特徴とする請求項2または3に記載の発電設備を用いる発電方法。
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